説明

太陽光発電装置

【課題】落雷によってパワーコンディショナーに印加される過電圧を簡単な構成及び低コストにて低減可能とし、過電圧によるパワーコンディショナーの故障や誤動作を防止する。
【解決手段】太陽光パネルを設置するための構造体100の各辺を複数の導体により構成し、これらの導体によって包囲される内部空間に、太陽光パネルによる直流発電電力を交流電力に変換するためのパワーコンディショナー41を配置すると共に、前記構造体100の一部または全部を覆うように導体メッシュ等の導電体を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メガソーラー発電所(大規模太陽光発電所)等に適用される太陽光発電装置に関し、詳しくは、雷撃による過電圧からパワーコンディショナーを保護するようにした太陽光発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メガソーラー発電所の建設には広大に土地が必要であり、より多くの太陽光エネルギーを得るために、発電所の周囲には高い建造物が少ないことが多い。このため、メガソーラー発電所自体はそれほど高い建造物でなくても、雷撃対象となりやすく、避雷針やサージ保護装置(SPD)等を用いた雷害対策が必要不可欠である。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1には、電力系統に連系された太陽光発電装置の近辺に雷が発生したことを検出して太陽光発電装置を解列し、雷サージから内部電気回路を保護するようにした太陽光発電装置用制御装置、太陽光発電装置の雷サージ保護システム、及び雷サージ保護方法が記載されている。
この従来技術は、要約すると、電力系統に連系された太陽光発電装置の発電電力値を取得し、雷の発生を検知したときに、前記発電電力値が予め設定された値よりも小さかった場合に、当該太陽光発電装置を解列するための指示を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−116857号公報(段落[0070]〜[0142]、図1〜図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2007−116857号公報に係る従来技術によれば、落雷時に電力系統から太陽光発電装置に雷サージが侵入するのを未然に防止することができ、太陽光パネルによる直流発電電力を交流電力に変換するパワーコンディショナー等の内部電気回路を雷サージから保護することが可能である。
しかしながら、上記従来技術では、太陽光発電装置を解列するための開閉器や制御装置等の回路構成が複雑であり、装置の大型化やコストの増加を招く等の問題があった。
【0006】
そこで、本発明の解決課題は、雷撃時にパワーコンディショナーに印加される過電圧を簡単な構成及び低コストにて低減可能とし、過電圧によるパワーコンディショナーの故障や誤動作を防止するようにした太陽光発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、太陽光パネルを設置するための構造体の各辺を複数の導体により構成し、これらの導体によって包囲される内部空間に、前記太陽光パネルによる直流発電電力を交流電力に変換するためのパワーコンディショナーを配置すると共に、前記構造体の一部または全部を覆うように導体メッシュ等の導電体を配置したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メガソーラー発電所等において、太陽光発電装置の構造体の内部空間にパワーコンディショナーを配置し、かつ、導体メッシュ等の導電体を構造体の一部または全部を覆うように配置することにより、雷撃時にパワーコンディショナーに印加される過電圧を抑制することができ、パワーコンディショナーの故障や誤動作を防止することができる。
特に、従来技術のように解列用の開閉器や制御装置が不要であるため、回路構成の簡略化、コストの低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽光発電装置の過電圧解析モデルの主要部を示す構成図である。
【図2】図1の過電圧解析モデルに注入した擬似的な雷電流の波形図である。
【図3】図1のA〜F点に図2の雷電流を注入したときの電圧V,Vの波形図である。
【図4】導体メッシュを所定箇所に配置して図1のA点に図2の雷電流を注入したときの電圧V,Vの波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、本発明では、数値電磁界解析法の一つであるFDTD(Finite-Difference Time-Domain)法を用いて、太陽光発電装置に雷撃があった場合に発生する過電圧を解析する。なお、FDTD法(時間領域差分法、有限差分時間領域法などとも呼ばれる)は、マクスウェルの方程式を、空間と時間を離散化して電界及び磁界を交互に計算する解析手法であり、例えば、宇野亨「FDTD法による電磁界およびアンテナ解析」(コロナ社発行,1998年)等に詳しく説明されている。
【0011】
図1は、既存のメガソーラー発電所を基に構築した太陽光発電装置の解析モデルの主要部を示す構成図である。
図1において、100は太陽光パネルが設置される構造体であり、11,12,15は互いに平行な長尺かつ水平の導体、13,14は導体11,12を相互に連結する水平の導体、16,17は導体12,15を相互に連結する垂直の導体、18,19は導体11,15を相互に連結する斜めの導体である。
ここで、導体11,15,18,19によって形成される矩形の斜面は、太陽光パネル(図示を省略する)が設置される受光面を形成している。
【0012】
また、導体11,12,15の長さは130[m]、導体13,14,16,17の長さは5[m]であり、導体11〜14は地上面から1[m]の高さに設置されている。
更に、21は、深さ15[m]に埋設された28本の導電性の基礎杭であり、これらの基礎杭は、大地(抵抗率:100[Ωm]、比誘電率:10)に固定されている。
【0013】
31〜33は構造体100の背後に設置された避雷針であり、その地上高は11[m]、構造体100からの距離は2[m]である。
41は、太陽光パネルによる直流発電電力を交流電力に変換するパワーコンディショナーであり、構造体100の内部空間において、導体11,12,15の長手方向のほぼ中央に配置してある。また、51,52はこのパワーコンディショナー41と太陽光パネルとを接続するための電力線(長さはいずれも63[m])である。
なお、構造体100の形状や構造、各部の寸法、並びに、構造体100の内部におけるパワーコンディショナー41の位置は、上記の例になんら限定されるものではない。
【0014】
次に、図2は、上記解析モデルに注入される擬似的な雷電流波形(波高値1[A]、波頭長約1[μs])を示している。
図示されていないが、電流源と抵抗(500[Ω])とを並列接続した電源を図1のA〜F点の直上に設置し、雷道を模擬した細線導体を介して電源からA〜F点に図2の雷電流を注入することとした。
ここで、A〜C点は導体15上の点、D〜F点は避雷針31〜33の先端部である。
【0015】
通常、太陽光パネルを支持する構造体やその近傍の避雷針等が雷撃を受けた場合、雷道や構造体を流れる電流により、電力線に誘導電圧が発生する。この誘導電圧により電力線が接続されているパワーコンディショナーに過電圧が加わり、パワーコンディショナーが故障したり誤動作するおそれがある。
メガソーラー発電所における雷事故の主たるものは、パワーコンディショナーの故障であると予想されるため、本実施形態では、擬似的な雷電流注入時における、図1の電力線51,52とパワーコンディショナー41の筐体との間の電圧(パワーコンディショナー41の直流側に発生する電圧)V,VをFDTD法により計算し、検討した。
【0016】
図3(a)〜(f)は、図1におけるA〜F点に図2の雷電流を注入した場合の電圧V,Vの計算結果である。
また、これらの解析結果による過電圧最大値(絶対値)を表1にまとめる。なお、表1において、Aは、後述するように導体メッシュを使用してA点に雷電流を注入した場合のデータである。
【0017】
【表1】

【0018】
例えば、一般的な雷電流(波高値24[kA])による雷撃時に発生する過電圧は、表1に示した電圧V,Vを24×10倍すればよい。なお、異なる波頭長における検討を行いたい場合は、FDTD法を用いた計算を再度行う必要がある。
【0019】
図3(c)から明らかなように、パワーコンディショナー41の近傍に雷撃があった場合(C点から雷電流を注入した場合)に、電圧V,Vの最大値が最も大きくなっている。これらの最大値を一般的な雷電流(波高値24[kA])が流れた場合に換算すると、460[kV]にも達する。
【0020】
図1に示したように電力線51,52が構造体100の内部に配置されている場合、この構造体100を導体メッシュ等の導電体によって覆い、構造体100と導電体とによりファラデーゲージを構成することで、電圧V,Vが過大になるのを抑制することができると考えられる。
【0021】
一例として、構造体100の背面(避雷針31〜33と電力線51,52との間)、及び、構造体100の側面(導体13,16,18及び導体14,17,19によってそれぞれ構成される三角形の部分)に導体メッシュを挿入し、A点から擬似的な雷電流を注入した場合の計算結果を図4に示す。また、このときのV,Vの最大値は、前記表1にAとして示したとおりである。
上記のように導体メッシュを配置すると、完全なファラデーゲージを構成しているわけではないにも関わらず、過電圧最大値を導体メッシュのない場合に比べて約25%程度に抑制することが可能である。
【0022】
以上のように、この実施形態によれば、パワーコンディショナー41を太陽光発電装置の構造体100の内部空間に配置し、かつ、導体メッシュ等の導電体を構造体の一部または全部を覆うように配置することで、パワーコンディショナー41の筐体と電力線との間に印加される過電圧を抑制することができ、パワーコンディショナー41の故障や誤動作を防止することができる。
【符号の説明】
【0023】
11〜19:導体
21:基礎杭
31〜33:避雷針
41:パワーコンディショナー
51,52:電力線
100:構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネルを設置するための構造体の各辺を複数の導体により構成し、これらの導体によって包囲される内部空間に、前記太陽光パネルによる直流発電電力を交流電力に変換するためのパワーコンディショナーを配置すると共に、前記構造体の一部または全部を覆うように導体メッシュ等の導電体を配置したことを特徴とする太陽光発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−54180(P2012−54180A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197446(P2010−197446)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)研究集会名:平成22年電気学会全国大会 (2)主催者名:社団法人電気学会 (3)開催日:平成22年3月17日
【出願人】(509155782)
【出願人】(000145954)株式会社昭電 (22)
【Fターム(参考)】