説明

太陽光発電設備の発電出力の推定方法および装置

【課題】電力系統に複数接続された太陽光発電設備の発電出力を発電出力の変動周期成分ごとに推定する。
【解決手段】所定の代表地点における太陽光発電設備の発電出力の実測データを変動周期成分に分解する。予め導出された代表地点の太陽光発電出力と電力系統における他の地点の太陽光発電出力との合成によって出力変動が平滑化する出力変動の縮小比を前記変動周期成分ごとのモデル式に前記代表地点の分解した変動周期成分のデータと電力系統における太陽光発電設備の導入量とを入力し、変動周期成分ごとに太陽光発電出力を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に複数設置された太陽光発電設備の発電出力の推定に係り、特に複数設置された太陽光発電設備の発電出力を出力変動の変動周期成分ごとに推定する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題などを契機として、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電設備の導入が増加している。太陽光発電は無尽蔵の太陽の光エネルギーを利用した発電方式であるため、発電時に二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして、導入の拡大が期待されているが、従来の発電方式と比較して発電コストが高いことなどから、主として住宅の屋根への設置など、数kW程度の比較的小容量の太陽光発電システムが導入されている状況にある。今後、住宅団地への集中的な導入や地域全体への計画的な導入なども進められつつあり、今後は大幅な導入の拡大が予想されている。
【0003】
また、太陽光発電設備は、太陽の光エネルギーのみで発電できることから、例えば、風況の良好な特定の地域に偏って設置される風力発電設備のような設置する場所の制約が少なく、今後、小規模な太陽光発電設備が広範囲に分散して設置されることが予想される。
しかし、太陽光発電設備の発電出力は、太陽の光エネルギーによるものであるため、気象状況により大きく変動する不安定な電源であり、電力系統と接続(連系)して使用される場合、電力系統側から見ると、太陽光発電設備の発電状況によって供給する負荷が大きく変動することになる。
【0004】
このような発電電力の変動に対し、電気事業者は、火力発電や水力発電など、機械的な慣性を有する発電機を調整する需給制御により瞬時的な電力需要の変動に対応している。
今後、太陽光発電設備が大量に導入された状況において、例えば天候の急変により太陽光発電設備の発電出力の変動が想定を超えて大になった場合、電気事業者の既存の設備では、需給制御の対応が困難になり、電力系統の電圧変動など電力の品質低下が生ずるなど、電力の安定供給に係わる様々な問題の発生が懸念されている。
【0005】
これらに対応するためには、あらかじめ、電力系統全体、或いは地域などにおいてどの程度の太陽光発電出力があるのか、また、どの程度の太陽光発電の出力変動が発生するのかを把握することが重要となる。
太陽光発電出力を把握するためには、設置された太陽光発電設備の全ての発電量を計測することにより、合計の太陽光発電出力やその変動を把握することが可能であるが、広域的に分散設置された太陽光発電設備の全てについて発電量を計測し、更に通信などによりデータを取り纏めることは現実的ではない。
このため、太陽光発電出力やその変動を推定し、これら推定した発電出力を基に、電力系統側における各種の必要な対策を立案し、これら対策により、太陽光発電設備による影響を低減させなければならない。
【0006】
特許文献1、特許文献2に電力系統と連系された太陽光発電設備の出力を推定する技術が開示されている。
特許文献1には、配電系統に接続された1または複数の太陽光発電設備の最大発電出力の推定手法について、予めモデル地域で実測した太陽光発電設備の発電出力及び日射量のデータと、当該太陽光発電設備の設備容量とから係数を算出しておき、配電系統に接続された太陽光発電設備の設備容量と予測期間内における最大日射量から前記係数を用いて最大発電出力を算出・推定することが開示されている。
【0007】
特許文献2には、同じく、配電系統に接続された所定の太陽光発電設備と同じ系統に設置された他の太陽光発電設備の発電出力量(率)を実測して両者の発電量の実測値の相関を示す近似式を導出し、前記所定の太陽光発電設備の発電量の測定値を用い、前記導出した近似式に基づいて他の太陽光発電設備の発電量を推定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−193594号公報
【特許文献2】特開2009−50064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術は、配電系統に接続された1または複数の太陽光発電設備の発電出力あるいは最大発電出力を推定するものである。しかし、前述のように電力系統の運用・制御のためには、系統に接続(連系)された太陽光発電設備の発電出力や最大発電出力を推定するだけでは不十分であり、発電出力の変動についても的確に推定しなければならない。
【0010】
即ち、電力系統の時々刻々変動する需要と供給力との均衡を図るため、一般的に需給制御においては、微小変動分のような速い周期の変動は、ガバナフリー(GF:governor free operation)と呼ばれる発電機の調速機運転により吸収され、短周期変動分については、需要と供給力との差を周波数偏差として検出し、負荷周波数制御(LFC:load frequency control)により供給力を調整する。また、長周期変動分の負荷変動については、経済性を加味した経済負荷配分制御(ELD:economic load dispatching control)により供給力を調整している。
それ故、電力系統の需給制御においては、太陽光発電設備の出力変動に対しても、変動周期成分の大きさに応じて、調整可能な供給力を需給調整力として確保して対応しなければならない。
本発明は、今後の太陽光発電設備の設置の普及・拡大に対応し、多数の太陽光発電設備が広範囲に分散設置された状況で、天候次第で変動する太陽光発電設備の発電出力を電力系統の需給制御の態様に対応して、発電出力を変動周期成分ごとに推定・把握するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の技術手段は、電力系統に導入された複数の太陽光発電地点の中の代表地点の太陽光発電出力の実測データおよび、前記電力系統における太陽光発電の導入量に基づいて、予め取得したモデル式を用いて電力系統における太陽光発電出力を推定する太陽光発電出力推定方法において、前記代表地点の太陽光発電出力データを所定の変動周期成分に分解し、予め取得した所定の平均距離で分散して立地された複数地点の太陽光発電出力の合成により平滑化する太陽光発電出力の変動の縮小比を演算する変動周期成分ごとのモデル式を用い、前記分解した各周期成分と前記電力系統における太陽光発電の導入量とに基づいて、当該電力系統における太陽光発電出力を変動周期成分ごとに算出する太陽光発電出力推定方法を特徴とする。
【0012】
第2の技術手段は、第1の技術手段の太陽光発電出力推定方法において、前記モデル式は、前記代表地点の太陽光発電出力と合成する他の太陽光発電出力の地点数と前記縮小比との関係を示す第1の関係式を導出し、さらに、前記合成する地点間の距離が前記縮小比に与える影響を示す第2の関係式を導出し、該第2の関係式により前記合成する地点間の平均距離における前記影響を算出し、前記第1の式の前記地点数を太陽光発電設備の導入量に変換した式を、前記平均距離により算出した影響によって補正して導出することを特徴とする。
【0013】
第3の技術手段は、第2の技術手段の太陽光発電出力推定方法において、前記モデル式は、前記代表地点における太陽光発電出力の実測データおよび、当該データと他の複数の導入地点における太陽光発電出力の実測データとを平均した合成データをそれぞれ前記変動周期成分に分解し、分解した周期成分ごとに前記代表地点のデータと前記合成データのそれぞれの分解した周期成分を比較して周期成分ごとに、前記縮小比と合成地点数との関係を示す前記第1の関係式を導出し、さらに前記代表地点における太陽光発電出力の実測データおよび、当該データと合成する地点ごとの太陽光発電出力の実測データとを平均した合成データをそれぞれ変動周期成分に分解し、分解した周期成分ごとに前記代表地点のデータと前記2地点の合成データのそれぞれの分解した周期成分とを比較し、周期成分ごと、合成した地点ごとに合成地点間の距離が変動縮小比に与える影響を示す第2の関係式を導出し、該第2の関係式により前記合成地点間の平均距離における影響を算出することを特徴とする。
【0014】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれかの技術手段の太陽光発電出力推定方法において、前記推定する発電出力の変動周期成分は、少なくとも電力系統の需給制御におけるガバナフリー(GF)の制御領域に相当する周期成分、負荷周波数制御(LFC)領域に相当する周期成分、経済負荷配分制御(ELD)領域に相当する周期成分を含むことを特徴とする。
【0015】
第5の技術手段は、実測された代表地点の太陽光発電出力データを所定の変動周期成分に分解する周期成分分解部と、電力系統における太陽光発電の導入量設定部と、分解された周期成分と前記設定部に設定された同入量に基づき、太陽光発電出力の合成により平滑化する出力変動の縮小を周期成分ごとに算出する平滑化演算部とを備え、電力系統の太陽光発電出力を変動周期成分ごとに推定する太陽光発電出力推定装置を特徴とする。
【0016】
第6の技術手段は、第5の技術手段の太陽光発電出力推定装置において、前記変動周期成分ごとに推定された太陽光発電出力を合成する周期成分合成部を備え、電力系統における太陽光発電出力を推定することを特徴とする。
【0017】
第7の技術手段は、コンピュータに請求項1〜4のいずれかに記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所定の代表地点における太陽光発電設備の実測データにより電力系統に複数導入された太陽光発電設備の発電出力を電力系統における需給制御の態様に対応した変動周期成分ごとに推定することができる。また、電力系統における太陽光発電設備の連系可能な導入量を推定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】太陽光発電設備の代表観測地点の説明図。
【図2】本発明の発電出力推定手法の説明図。
【図3】本発明の発電出力推定モデル式の導出における観測地点の説明図。
【図4】本発明における発電出力推定モデル式の導出手法の説明図。
【図5】太陽光発電設備導入量に基づくモデル式の説明図。
【図6】モデル式導出のための指標のばらつきを示す図。
【図7】モデル式の距離を考慮した補正の説明図。
【図8】本発明における発電出力の推定手順の説明図。
【図9】供給区域全域の発電出力推定の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
太陽光発電設備の発電出力の変動の原因は天候の変化であるが、所定の域内に分散設置された各太陽光発電設備の設置地点の相互の天候変化は互いに相関はあるものの一様ではない。各太陽光発電設備の発電出力の変動も一様ではないので、分散設置された各太陽光発電設備の発電出力を合成すると出力変動は個々の太陽光発電設備の発電出力の変動よりも平滑化される平滑化効果が得られる。
【0021】
しかし、分散設置された各太陽光発電設備の設置地点相互における天候変化の傾向は、各太陽光発電設備の設置地点の場所、設置地点相互間の距離により異なるので、前記の平滑化効果も各太陽光発電の立地点の分散状況により異なるものとなる。
さらに、天候の変化が発電出力の変動に与える影響も一様ではないので、出力変動周期ごとの平滑化効果も同様に異なってくる。
本発明では、上記のように太陽光発電の立地点、立地点相互の距離による影響等を補正して発電出力を変動周期成分ごとに推定するものである。
【0022】
図1は、東北地方を例に広範囲に分散立地される太陽光発電出力を推定する例を説明する図である。図1では、東北地方全体を「全域」、各県を「広域」、市町村を「地域」として区分し、各地域内に分散して立地される太陽光発電設備の中の1つを地域の代表地点の太陽光発電設備とすることを示している。
【0023】
図2は本発明の基本的手法を示す図で、上記代表地点の太陽光発電出力の実測値データ1を取得し、太陽光発電出力推定装置10に入力する。入力された変動する代表地点の太陽光発電出力データは、周期成分分解部11によって所定の変動周期成分に分解され、周期成分ごとに平滑化演算部12に入力される。導入量設定部14には電力系統における太陽光発電の導入地点数に対応する太陽光発電導入量2が設定される。
平滑化演算部12は導入量設定部14に設定された太陽光発電導入量および周期成分分解部11で分解された代表地点の周期成分に分解された実測データに基づいて系統に接続され合成されて平滑化する太陽光発電出力の変動の縮小比を変動周期成分ごとに算出し、変動周期成分ごとの発電推定出力3を算出し出力する。
平滑化演算部12における演算は、予め取得した前記合成により平滑化にされる太陽光発電出力の変動周期成分ごとの変動の縮小比を算出するモデル式13により行なわれる。
周期成分合成部15は、前記変動周期成分ごとの発電推定出力3を合成して電力系統における太陽光発電推定出力4を算出し出力する。
【0024】
図3〜図7は、前記モデル式を説明する図であり、図3は、図1のある地域に分散立地された太陽光発電の分布を模式的に示している。
モデル式の導出にあたり、先ず地域における代表地点(ポイント)を定める。代表地点は気象予報区分や日射気候区分などをもとに選定すると良い。
選定した代表地点の太陽光発電出力を実測し、図4に示すように、実測した発電出力データを所定の変動周期成分に分解してデータA〜Eを算出する。
【0025】
図4において、分解する周期成分は、電力系統における出力変動に対する制御態様に対応し、ガバナフリー(GF)の制御領域に相当する5分以下周期成分(図4におけるE)、負荷周波数制御(LFC)領域に相当する5〜20分周期成分(同D)、経済負荷配分制御(ELD)領域に相当する20分以上周期成分を、当日の需給運用の中で自動制御にて対応する領域に相当する20〜90分周期成分(同C)と、需要想定に基づく翌日の需給運用計画の対象領域に相当する90分以上の周期成分のうち、基本的な天候の特性を表す480分以上の周期成分(同A)と、それ以外の90〜480分周期成分(同B)の5つに分解している。
この5分類の分解区分は必須ではないが、少なくともガバナフリー(GF)の制御領域、負荷周波数制御(LFC)領域、経済負荷配分制御(ELD)領域の区分は必要である。
【0026】
図における周期成分A〜Eを示す図の縦軸は、代表地点の太陽光発電出力の定格出力に対する比率を示しており、横軸は1日の時刻である。
発電出力の実測データは、例えば、0.2秒ごとに測定し1秒単位で平均して取得する。
周期成分に分解するに当たっては、例えば、時系列の発電出力データをフーリエ変換して周波数空間の出力データに変換し、帯域フィルタにより変動周期に相当する周波数成分を抽出し、それを逆フーリエ変換することにより当該周期の時系列データを算出することができる。
【0027】
分解した発電出力データから、各々の周期成分についての発電出力値や出力変動の大きさを表す指標r1A〜r1Eを算出する。この指標rとしては、当該周期の出力値の標準偏差や二乗平均平方根などの統計値や最大変動幅などを適宜選定して用いる。
次いで、代表地点を含めて任意の地点の太陽光発電出力を順次選定し、2〜Nポイント(地点)の太陽光発電出力の実測データを平均した平均発電出力データについて、同じく図4に示すように同様に各周期成分に分解し、分解した周期成分ごとに出力値や出力変動の大きさを表す指標rNA〜rNEを算出する。
【0028】
Nポイントの太陽光発電出力を合成した発電出力の変動は前述のとおり平滑化され出力変動は縮小されるので、この変動縮小比R'と合成するポイント数Nとの対応を式1により分解した周期成分ごとに算出する。
R'=r/r ・・・ 式1
【0029】
図示の実験例は、1日の発電出力を4時から20時まで1ケ月実測したデータを用いたものであるが、発電出力の推定の目的に応じて、着目したい時間帯に合わせて任意のデータ長に区切ってR'を算出すればよい。
実験では略同規模の太陽光発電設備が分散設置されるものとして、10地点を選定して観測して算出した。表1は算出したポイント数Nごと、算出された周期成分ごとの変動縮小比R'である。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に基づいて、最小二乗法などを用いて近似曲線を算出し、分解した周期成分ごとの変動縮小比(R')と設置地点(測定ポイント)数Nとの関係式を導出した結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
住宅の屋根などに設置される太陽光発電設備は、様々な定格出力のものが存在するが、平均的には略同規模の設備と見ることができるので、図5に示すように、上述の関係式におけるNを太陽光発電設備の導入量(P=N×k)に換算し、式2を求める。
R'=f(P) ・・・ 式2
【0034】
実験では、一般住宅に設置される太陽光発電設備の一般的な定格出力として4kWを想定して、N=P/4として、太陽光発電設備の導入量P(kW)に対する変動縮小比R'の関係式が表3のように求められた。
【0035】
【表3】

【0036】
図6は、実験結果の、N=10(P=40kW)における変動縮小比R'の1ケ月の算出データであるが、日によるばらつきが見られる。そのため、式2のR'の算出にあたっては、1ヶ月平均値や最大値などの統計値を用いる。
【0037】
また、各太陽光発電出力の測定ポイント間の距離により日々の天候変化による発電出力の変動の相関は異なるものと考えられるので、各太陽光発電出力の測定地点間の距離を考慮して補正する。
【0038】
補正の手法は、図7に示すように、代表ポイントの太陽光発電出力を同様に変動周期成分に分解し、各周期成分の変動指標r1A〜r1Eを算出する。次いで、代表ポイントからxkmはなれた太陽光発電出力を合成するポイントについて、代表ポイントの実測データと合成する他の地点(ポイント)の実測データをポイントごとに平均した平均発電出力データを変動周期成分に分解し、各周期成分の変動指標r2Ax〜r2Exを算出し、ポイントごとに2地点間の距離と対応した変動縮小比R”を式3により求める。
R”=r/r2x ・・・ 式3
なお、図7における各周期成分を示す表示は、図4の例と同じである。
【0039】
表4は、太陽光発電出力の合成地点間の距離に対応する変動縮小比を周期成分ごとに示す実験結果である。
【0040】
【表4】

【0041】
表4のデータから、2地点のポイント間の距離と、太陽光発電出力値や出力変動の平滑化度合いを示した変動縮小比の関係を、最小二乗法などを用いて近似直線または曲線を算出し、各々の周期成分における地点間距離x(km)と変動縮小比R”の関係式が表5のように導出される。
【0042】
【表5】

【0043】
この関係式を基に、市町村レベル範囲の想定地域における分散設置された各太陽光発電設備の平均的な地点間距離x0(km)における変動縮小比R”(x0)を用い、太陽光発電導入量Pに対する変動縮小比Rの関係を補正することで地点間の距離による太陽光発電設備の出力値や出力変動の平滑化度合いを考慮した次に示す式4を算出する。
R=R’/R”(x0)=f(P)/R”(x0) ・・・ 式4
【0044】
実験結果では、想定地域における平均的な地点間距離x0(km)を10(km)と想定し、変動縮小比のモデルが以下のように求められる。
【0045】
【表6】

【0046】
図8は、本発明の推定手法を図示したものであり、代表地点の実測データ1は周期成分分解部11で図に示すように各周期成分に分解され、平滑化演算部12に入力され、また、導入量設定部14に設定された系統の太陽光発電導入量2が入力され、数式4に示す周期成分ごとのモデル式13により当該系統における変動周期成分ごとに発電出力3を推定し出力する。さらに、変動周期成分ごとの推定出力3は周期成分合成部15によって合成され、系統の太陽光発電出力が推定される。
図8における周期成分の表示も図4の例と同じであり、縦軸は太陽光発電設備の定格出力に対する比率を示している。
【0047】
地域系統に設置された太陽光発電出力は上位系統を介してさらに広域、全域に連系されるので、図9に示すように地域ごとに推定した変動周期成分ごとの発電出力は連系する電力系統における損失等に係わる定数を考慮して加算し、広域における太陽光発電出力5、さらに全域で合計することにより供給区域全体における太陽光発電出力6を推定することができる。
また、以上では、地域に導入(設置)された太陽光発電設備の出力変動周期ごとの発電出力の推定について記述したが、この手法により、今後太陽光発電設備の設置が普及した場合、地域単位ごとに設置が予想される導入量に基づいて、変動周期ごとの太陽光発電出力が推定できるので、電力系統における必要な対策を事前に的確に講じることができる。
さらに、電力系統の需給調整能力に応じた連系可能な太陽光発電設備の導入量を推定することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1…代表地点の太陽光発電設備の出力実測データ、2…太陽光発電の導入量、3…変動周期成分ごとの太陽光発電出力の推定値、4…太陽光発電出力の推定値、10…太陽光発電出力推定装置、11…周期成分分解部、12…平滑化演算部、13…モデル式、14…導入量設定部、15…周期成分合成部、4a〜n…地域における太陽光発電出力の推定値、5a〜m…広域における太陽光発電出力の推定値、6…全域域における太陽光発電出力の推定値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に導入された複数の太陽光発電地点の中の代表地点の太陽光発電出力の実測データおよび、前記電力系統における太陽光発電の導入量に基づいて、予め取得したモデル式を用いて電力系統における太陽光発電出力を推定する太陽光発電出力推定方法において、
前記代表地点の太陽光発電出力データを所定の変動周期成分に分解し、予め取得した所定の平均距離で分散して立地された複数地点の太陽光発電出力の合成により平滑化する太陽光発電出力の変動の縮小比を演算する変動周期成分ごとのモデル式を用い、前記分解した各周期成分と前記電力系統における太陽光発電の導入量とに基づいて、当該電力系統における太陽光発電出力を変動周期成分ごとに算出することを特徴とする太陽光発電出力推定方法。
【請求項2】
前記モデル式は、前記代表地点の太陽光発電出力と合成する他の太陽光発電出力の地点数と前記縮小比との関係を示す第1の関係式を導出し、さらに、前記合成する地点間の距離が前記縮小比に与える影響を示す第2の関係式を導出し、該第2の関係式により前記合成する地点間の平均距離における前記影響を算出し、前記第1の式の前記地点数を太陽光発電設備の導入量に変換した式を、前記平均距離により算出した影響によって補正して導出することを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電出力推定方法。
【請求項3】
前記モデル式は、前記代表地点における太陽光発電出力の実測データおよび、当該データと他の複数の導入地点における太陽光発電出力の実測データとを平均した合成データをそれぞれ前記変動周期成分に分解し、分解した周期成分ごとに前記代表地点のデータと前記合成データのそれぞれの分解した周期成分を比較して周期成分ごとに、前記縮小比と合成地点数との関係を示す前記第1の関係式を導出し、さらに前記代表地点における太陽光発電出力の実測データおよび、当該データと合成する地点ごとの太陽光発電出力の実測データとを平均した合成データをそれぞれ前記変動周期成分に分解し、分解した周期成分ごとに前記代表地点のデータと前記2地点の合成データのそれぞれの分解した周期成分とを比較し、周期成分ごと、合成した地点ごとに合成地点間の距離が変動縮小比に与える影響を示す第2の関係式を導出し、該第2の関係式により前記合成地点間の平均距離における影響を算出することを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電出力推定方法。
【請求項4】
前記推定する発電出力の変動周期成分は、少なくとも電力系統の需給制御におけるガバナフリー(GF)の制御領域に相当する周期成分、負荷周波数制御(LFC)領域に相当する周期成分、経済負荷配分制御(ELD)領域に相当する周期成分を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の太陽光発電出力推定方法。
【請求項5】
実測された代表地点の太陽光発電出力データを所定の変動周期成分に分解する周期成分分解部と、電力系統における太陽光発電の導入量設定部と、分解された周期成分と前記設定部に設定された同入量に基づき、太陽光発電出力の合成により平滑化する出力変動の縮小を周期成分ごとに算出する平滑化演算部とを備え、電力系統の太陽光発電出力を変動周期成分ごとに推定することを特徴とする太陽光発電出力推定装置。
【請求項6】
前記変動周期成分ごとに推定された太陽光発電出力を合成する周期成分合成部を備え、電力系統における太陽光発電出力を推定することを特徴とする請求項5に記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項7】
コンピュータに請求項1〜4のいずれかに記載の方法を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−99228(P2013−99228A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243232(P2011−243232)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【Fターム(参考)】