説明

太陽光発電設備

【課題】脈動分を抑制した出力電力を三相交流系統に供給できる太陽光発電設備を提供することである。
【解決手段】
二次電池またはキャパシタが並列接続された電力変換器14を三相交流系統の各相にカスケードに接続して2個のカスケード変換器システム13A、13Bを構成し、2個のカスケード変換システムの中性点間に太陽電池15を接続し、制御装置16は、太陽電池15の動作点が最大電力を取り出す最適動作点になるように制御したときの太陽電池15の出力電流の変動分を2個のカスケード変換器システム13A、13Bの直流ループに循環させ、その変動分の電力を二次電池またはキャパシタに充放電して出力電力を平均化し、平均化した出力電力を三相交流系統11に出力するように、2個のカスケード変換器システム13A、13Bの電力変換器14を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を利用して発電し電力系統に連系して運転制御される太陽光発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電設備は、日射強度及び温度により最大電力を発生させる動作点が異なるため、太陽電池の発電電力を有効に活用するには、刻々変化していく最適動作点に追従させて発電することが重要となる。
【0003】
このような最大電力を取り出す最適動作点を求めるには、太陽電池の出力が最大となる最適動作点に追従制御させる最大電力追従制御{MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御}が用いられる。例えば、現状の動作点で得られる出力電力と、現状の動作点から少しだけ移動させた動作点で得られる出力電力とを比較して最適動作点への方向判断を行い、最適動作点へと追従させる山登り法などが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、太陽光発電設備は、夜間には発電できないので、太陽光発電設備と系統との間に二次電池を設置して、昼間において発電した発電電力を二次電池に充電するようにしたものもある。一方、電力変換器をカスケードに接続してカスケード変換器を構成し、各々の電力変換器に二次電池を接続して構成された電力貯蔵装置がある(例えば、非特許文献1参照)。この電力貯蔵装置は、カスケード変換器の直流電圧部はそれぞれ独立しており、二次電池と単相ブリッジコンバータを1つのセル構造としており、拡張性が高く高耐圧設計や低歪みの出力波形を実現できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−295688号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】平成21年電気学会全国大会、4−166、2009/3/17〜19北海道、電池電力貯槽装置に使用するカスケードPWM変換器の実験的検討
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽光発電設備の出力電力には脈動分が含まれるが、その脈動分を含んだ出力電力が三相交流系統に供給されると、三相交流系統の電圧変動や周波数変動が増加するなどの問題が顕在化する虞がある。今後は太陽光発電設備の導入が増加することが予想されるので、太陽光発電設備の出力電力による電圧変動対策や周波数変動対策が必要となる。
【0008】
本発明の目的は、太陽光発電設備の出力電力の変動分を平均化して三相交流系統に供給できる太陽光発電設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る太陽光発電設備は、二次電池またはキャパシタが並列接続された電力変換器を三相交流系統の各相にカスケードに接続して構成された2個のカスケード変換器システムと、前記2個のカスケード変換システムの中性点間に接続された太陽電池と、前記2個のカスケード変換器システムの電力変換器を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記太陽電池の動作点が最大電力を取り出す最適動作点になるように制御したときの前記太陽電池の出力電流の変動分を2個のカスケード変換器システムの直流ループに循環させ、その変動分の電力を前記二次電池またはキャパシタに充放電して出力電力を平均化し、平均化した出力電力を前記三相交流系統に出力するように、前記2個のカスケード変換器システムの電力変換器を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、太陽電池の動作点が最大電力を取り出す最適動作点になるように制御したときの太陽電池の出力電力の変動分を二次電池またはキャパシタに充放電して出力電力を平均化し、平均化した出力電力を三相交流系統に出力するので、変動分を抑制した出力電力を三相交流系統に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽光発電設備の構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る2個のカスケード変換器システムの電力の流れの説明図。
【図3】本発明の実施の形態における2個のカスケード変換器システムの電力の時間的な変化を示す図。
【図4】本発明の実施形態における制御装置の回路構成図。
【図5】本発明の実施形態における電力変換器に並列接続された二次電池またはキャパシタの充放電電力の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る太陽光発電設備の構成図である。三相交流系統11に設けられた受電変圧器12の二次側には、2個のカスケード変換器システム13A、13Bが並列接続されている。カスケード変換器システム13A、13Bは、受電変圧器12の二次側において、三相の各相に、二次電池またはキャパシタが並列接続された複数の電力変換器14をカスケードに接続して構成され、各相はY接続されている。図1では各々の電力変換器14に、それぞれ二次電池及びキャパシタが並列接続された場合を示している。そして、2個のカスケード変換システム13A、13Bの間に太陽電池15が接続されている。
【0013】
制御装置16は、2個のカスケード変換器システム13A、13Bの各々の電力変換器14を制御するものであり、直流ループ電流制御部17と電力制御部18とを有している。
【0014】
太陽電池15の出力電力Pdcは直流電力検出器19で検出され、直流電力検出器19で検出された出力電力Pdcは制御装置16の直流ループ電流制御部17及び電力制御部18に入力される。
【0015】
直流ループ電流制御部17は、太陽電池15の動作点が最大電力を取り出す最適動作点になるように制御したときの太陽電池15の出力電流を、2個のカスケード変換器システム13A、13Bと太陽電池15とで形成される直流ループ(太陽電池15−カスケード変換器システム13A−カスケード変換器システム13B−太陽電池15)に循環させ、直流ループの各相に流れる直流ループ電流を制御するものである。
【0016】
直流ループ電流制御部17では、2台のカスケード変換器システム13A、13Bの直流電流検出器20rA、20sA、20tA及び20rB、20sB、20tBで検出された電流を各相ごとに差をとり各相の直流ループ電流Idr{=(IdrA−IdrB)}、Ids{=(IdsA−IdsB)}、Idt{=(IdsA−IdsB)}を演算し、この直流ループ電流Idr、Ids、Idtおよび直流電圧検出器21で検出された直流電圧Vdcから太陽電池15の動作点が最大電力を取り出す最適動作点になるように制御するときの制御指令gを演算して電力制御部18に出力する。
【0017】
電力制御部18は、太陽電池15の出力電力の変動分を二次電池またはキャパシタに充放電して出力電力を平均化し、平均化した出力電力を三相交流系統11に出力するように制御するものである。
【0018】
電力制御部18は、直流電力検出器19からの太陽電池15の出力電力Pdc、電力検出器22A、22Bで検出されたカスケード変換器システム13A、13Bの電力PA、PB、電流検出器23で検出されたシステム出力電流Ir、Is、It、電圧検出器24で検出された受電変圧器12の二次側電圧Vr、Vs、Vt、及び直流ループ電流制御部17で演算された制御指令gを入力し、太陽電池15の出力電流の変動分の電力を二次電池またはキャパシタに充放電して出力電力を平均化し、平均化した出力電力を三相交流系統11に出力するように、2個のカスケード変換器システム13A、13Bの電力変換器14を制御する。
【0019】
図2は、2個のカスケード変換器システム13A、13Bの電力PA、PB、二次電池またはキャパシタ電力PbatA、PbatB、太陽電池電力Pdcの流れを説明する図である。太陽電池電力PdcはPdcAとPdcBに分流し、PdcAはPAとPbatAに、またPdcBはPBとPbatBに分流する。さらにカスケード変換器システム13Aの直流電力PdcAは、三相のR、S、T相ごとに分流し、PdcAr、PdcAs、PdcAtとなり、カスケード変換器システム13Aの交流電力PAはR相への電力PAr、S相への電力PAs、T相への電力PAtとなる。
【0020】
同様に、カスケード変換器システム13Bの直流電力PdcBは、三相のR、S、T相ごとに分流し、PdcBr、PdcBs、PdcBtとなり、カスケード変換器システム13Bの交流電力PBはR相への電力PBr、S相への電力PBs、T相への電力PBtとなる。
【0021】
また、直流ループに流れる直流ループ電流Idは、太陽電池15→カスケード変換器システム13A→カスケード変換器システム13B→太陽電池15に流れる電流となる。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態における2個のカスケード変換器システムの電力の時間的な変化を示す図である。日射強度が変動して太陽電池出力Pdcが変動すると、カスケード変換器システム13A、13Bは太陽電池出力の平均的な電力を出力するように制御されているため、太陽電池出力と平均電力の差分が二次電池またはキャパシタに流入する。
【0023】
図4は、本発明の実施形態における制御装置の回路構成図である。直流電力検出器19で検出された太陽電池15の直流電力Pdcは、制御装置16の直流ループ電流制御部17及び電力制御部18に入力される。直流ループ電流制御部17では、太陽電池15の直流電力Pdcは最大電力追従制御部25に入力され、太陽電池15の動作点が最大電力を取り出す最適動作点になるように制御される。最大電力追従制御部25は、最大電力を取り出す最適動作点の直流電圧Vd1を加算器26に出力する。加算器26では現在の直流電圧Vdcと最適動作点の直流電圧Vd1との偏差が求められ、直流電圧制御要素27によりその制御指令が演算され加算器28に出力される。
【0024】
加算器28では、直流電圧制御要素27からの出力と三相一括直流ループ電流算出部29からの三相一括直流ループ電流との偏差{=(IdrA+IdsA+IdtA)−(IdrB+IdsB+IdtB)}が求められ、直流電流制御要素30によりその制御指令gが演算され、電力制御部18に出力される。
【0025】
制御指令gは、太陽電池15の動作点が最大電力を取り出す最適動作点になるように制御したときにそれぞれのカスケード変換器システム13A、13Bが出力すべき直流電圧に比例する信号である。
【0026】
電力制御部18は、カスケード変換器システム13Aの電力変換器14を制御するA系制御部31Aと、カスケード変換器システム13Bの電力変換器14を制御するB系制御部31Bとを備えている。
【0027】
直流電力検出部19からの太陽電池15の直流電力Pdcは、移動平均演算部32に入力され、太陽電池15の直流電力Pdcの移動平均値を求めることにより変動分が除去される。移動平均演算部32の出力は係数器33A、33Bに入力され、カスケード変換器システム13A、13Bでの太陽電池15の直流電力Pdcを流す分担比率が決められる。図3では、1/2ずつ均等に分担する場合を示している。
【0028】
係数器33A、33Bで分担を決定された分担電力P1A、P1Bは加算器34A、34Bに入力され、電力検出器22A、22Bで検出されカスケード変換器システム13A、13Bを流れる電力PA、PBと比較され、電力制御要素35A、35Bによりその制御指令が演算される。その制御指令及び分担電力P1A、P1Bは加算器36A、36Bにより加算され、加算器37A、37Bに出力される。
【0029】
三相/dq変換部38A、38Bは、電流検出器23rA、23sA、23tA及び23rB、23sB、23tBで検出されたシステム出力電流IrA、IsA、ItA及びIrB、IsB、ItBをdq軸の電流に変換するものであり、このd軸電流と加算器36A、36Bの出力とが加算器37A、37Bで比較され、d軸電流制御要素39A、39Bによりその制御指令が演算され、加算器40A、40Bに出力される。
【0030】
三相/dq変換部41は、電圧検出器24で検出された受電変圧器12の二次側電圧Vr、Vs、Vtをdq軸の電圧に変換するものであり、このd軸電圧は加算器40A、40Bに出力され、d軸電流制御要素39A、39Bからの制御指令に加算され、dq/三相変換部42A、42Bに出力される。
【0031】
三相のシステム出力電流IrA、IsA、ItA及びIrB、IsB、ItBに対するq軸の電流に関しても同様に、電力検出器20A、20Bで検出されたカスケード変換器システム13A、13Bの無効電力QA、QBは無効電力目標値Q1A、Q1Bと加算器43A、43Bで比較され、無効電力制御要素44A、44Bによりその制御指令が演算される。この制御指令及び無効電力目標値Q1A、Q1Bは加算器45A、45Bにより加算され、加算器46A、46Bに出力される。
【0032】
そして、加算器46A、46Bにより、三相/dq変換部38A、38Bからのq軸電流が加算器45A、45Bの出力に加算され、q軸電流制御要素47A、47Bによりその制御指令が演算され、加算器48A、48Bに出力される。加算器48A、48Bでは、q軸電流制御要素47A、47Bからの制御指令に三相/dq変換部41からのd軸電圧が加味され、dq/三相変換部42A、42Bに出力される。
【0033】
dq/三相変換部42A、42Bは、dq軸電流指令値を三相のシステム出力電流IrA、IsA、ItA及びIrB、IsB、ItBに対するそれぞれの指令値に変換し、加算器49A、50A、51A、加算器49B、50B、51Bに出力する。加算器49A、50A、51Aでは、直流ループ電流制御部17からの制御指令gを加算して、カスケード変換器システム13Aの電力変換器14に出力する。一方、加算器49B、50B、51Bでは、直流ループ電流制御部17からの制御指令gを符号反転器52で反転した制御指令を加算して、カスケード変換器システム13Bの電力変換器14に出力する。
【0034】
これにより、カスケード変換器システム13A、13Bの電力変換器14は、太陽電池15の出力電力Pdcを三相交流系統11に出力する際に、カスケード変換器システム13A、13Bの直流ループに、太陽電池15の動作点が最大電力を取り出す最適動作点になるように制御したときの太陽電池15の出力電流を直流ループ電流Idとして流すように制御される。この場合、直流ループの各相には、直流ループ電流Idの3分の1ずつ流すことになる。
【0035】
図5は、電力変換器14に並列接続された二次電池またはキャパシタの充放電電力の説明図である。図5において、Pdcは太陽電池15の出力電力、Poutは三相交流系統11への供給電力、Pxは二次電池またはキャパシタの充放電電力である。
【0036】
図5に示すように、太陽電池15の出力電力Pdcには脈動分を含んでおり、太陽電池15の出力電力Pdcを三相交流系統11に供給する際に、カスケード変換器システム13A、13Bの出力は、太陽電池出力の平均的な電力となるように制御されているから、太陽電池出力とカスケード変換器システム13A、13Bの出力の和との差分{=Pdc−(PA+PB)}がカスケード変換器システム13A、13Bの二次電池またはキャパシタに脈動分電力Pxとして充放電される。
【0037】
例えば、時点t1〜時点t2においては、二次電池またはキャパシタに脈動分電力Px1が充電され、時点t2〜時点t3においては、二次電池またはキャパシタに脈動分電力Px2が放電される。以下同様に、時点t3〜時点t4、時点t5〜時点t6、時点t7〜時点t8、時点t9〜時点t10…において、二次電池またはキャパシタに脈動分電力Px3、Px5、Px7、Px9…が充電され、時点t4〜時点t5、時点t6〜時点t7、時点t8〜時点t9……において、二次電池またはキャパシタに脈動分電力Px4、Px6、Px8…が放電される。
【0038】
これにより、三相交流系統11には、平均化された電力が出力されるので、三相交流系統11に供給される供給電力Poutには太陽電池15で発電した際の脈動分が除去された電力となる。
【0039】
本発明の実施形態によれば、太陽電池15の動作点が最大電力を取り出す最適動作点になるように制御したときの太陽電池15の出力電力Pdcの変動分を、電力変換器14に並列接続された二次電池またはキャパシタに充放電して出力電力を平均化するので、三相交流系統11に供給される供給電力Poutは脈動分が除去された電力となり、三相交流系統11には、脈動分を抑制した出力電力を供給できる。
【符号の説明】
【0040】
11…三相交流系統、12…受電変圧器、13…カスケード変換器システム、14…電力変換器、15…太陽電池、16…制御装置、17…直流ループ電流制御部、18…電力制御部、19…直流電力検出器、20…直流電流検出器、21…直流電圧検出器、22…電力検出器、23…電流検出器、24…電圧検出器、25…最大電力追従制御部、26…加算器、27…直流電圧制御要素、28…加算器、29…三相一括直流ループ電流算出部、30…直流電流制御要素、31A…A系制御部、31B…B系制御部、32…移動平均演算部、33…係数器、34…加算器、35…電力制御要素、36…加算器、37…加算器、38…三相/dq変換部、39…d軸電流制御要素、40…加算器、41…三相/dq変換部、42…dq/三相変換部、43…加算器、44…無効電力制御要素、45…加算器、46…加算器、47…q軸電流制御要素、48…加算器、49…加算器、50…加算器、51…加算器、52…符号反転器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池またはキャパシタが並列接続された電力変換器を三相交流系統の各相にカスケードに接続して構成された2個のカスケード変換器システムと、
前記2個のカスケード変換システムの中性点間に接続された太陽電池と、
前記2個のカスケード変換器システムの電力変換器を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記太陽電池の動作点が最大電力を取り出す最適動作点になるように制御したときの前記太陽電池の出力電流の変動分を2個のカスケード変換器システムの直流ループに循環させ、その変動分の電力を前記二次電池またはキャパシタに充放電して出力電力を平均化し、平均化した出力電力を前記三相交流系統に出力するように、前記2個のカスケード変換器システムの電力変換器を制御することを特徴とする太陽光発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−85373(P2012−85373A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226905(P2010−226905)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】