説明

太陽放射から発せられた電磁波の効果により分解可能なバイオポリマーを含む粒子

【課題】化粧品、皮膚科学、製薬、農産食品又は農産業分野で主に使用可能な粒子を提供すること。
【解決手段】電磁波、特にその波長が太陽放射スペクトルの波長内にある電磁波、の効果により分解可能な少なくとも一つのバイオポリマーであって、ヌクレオシドを含むことを特徴とする粒子。本発明は、また、有効成分を送達するために、そのような粒子を含む組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波、特にその波長が太陽放射スペクトルの波長内にある電磁波、の効果により分解可能な少なくとも一つのバイオポリマーであって、ヌクレオシドを含むことを特徴とする粒子に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、電磁波を受けた場合に、この粒子に含まれる有効成分が放出されることを、化粧品、皮膚科学、製薬、農産食品又は農産業へ利用することを見出すものである。
【背景技術】
【0003】
微少なカプセル化された有効成分の生体利用性と放出とを、より良く行うために多くの研究がなされており、pH又は温度等の物理的要因の影響下で当該有効成分を放出するマイクロカプセル又はミクロスフェアが開発されている。
【0004】
製薬用途では、Eudragit(登録商標)S 及びL(バイエル社)等のpH依存性ポリマー、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの使用が、酸媒体(0.1HCl)中での有効成分の放出は僅かであるが、pHの急激な増大(6〜7へ)後は非常に速い放出速度を有する耐胃液性ミクロスフェアの開発を可能とした(Palmieri et al., 2002, J. Microencaps., 19, 1, 111-119; Lorenzo et al., 1997, J. Microencaps., 14, 5, 607-616)。実際に、これらのポリマーは酸性pHでは不溶性で、5〜6に近いpHでのみ溶解する特性を有している。したがって、微少なカプセル化された有効成分は胃液媒体(非常に酸性)中ではあまり速く放出されることがなく、これは例えば多くの化学化合物で観察された胃粘膜の刺激のリスクを減少することを可能とする。
【0005】
さらに近年では、N−イソプロピルアクリルアミド、ブチルメタクリレート及びアクリル酸についての研究が、pHと熱の両者に敏感なミクロスフェアを開発することを可能としている(Ramkissoon-Ganorkar et al., 1999, J. Control. Release, 59, 287-298; Ichikawa et al., 2000, J. Control. Release, 63, 107-119)。これらの技術は、ミクロスフェアへ有効成分を取り込み、又は、微少なカプセル化された有効成分の放出を引き起こすための、様々なpHと温度の使用を可能としている。しかし、これらの化合物は非常に毒性が強く、化粧品への使用が制限される(Vyas et al., 1985, Neurotoxicology, 6, 3, 123-132; Hayashi et al., 1989, Arch. Toxicol., 63, 4, 308-313)。
【0006】
pH又は温度等の刺激ではなく、光及び/又は紫外線(UV)の作用下で有効成分を放出するミクロスフェア又はミクロカプセルを開発することが特に興味深く思われる。そのようにして得られたスフェア又はカプセルは実際に皮膚が本当に必要としている場合だけ抗酸化剤、太陽光遮蔽剤又はバリア効果誘起可能分子を放出するでろうし、そのカプセル化は特に刺激性でアレルギー性でさえありうるある種の有効成分(ビタミンA、ビタミンE、太陽光遮蔽剤、香料等)の皮膚接触及び浸透を回避可能であろう。
【0007】
しかし、ミクロカプセル化に通常使用される多くのポリマーは、紫外線により開裂して、その構成化学構造の転移が直ちに発生する(光重合)ので、架橋が発生し、時にはより耐性の高いポリマーを形成することになる。これは、特にコラーゲン(Weadock et al., 1996, J. Biomed. Mater. Res., 32, 2, 221-226; Lee et al., 2001, Yonsei Med. J., 42, 2, 172-179)や、ある種のゼラチン誘導体(Murthy et al., 1989, Pharm. Technol., 13, 72; Van Den Bulcke et al., 2000, Biomacromolecules, 1, 1, 31-38)にあてはまる。
【0008】
あるポリマーは光又は紫外線で分解する。これは、ある種のポリエチレンフィルム(Geetha et al., 1987, Polym. Deg. Stab., 19, 279-292)、特にある種のスチレンブタジエン共重合体(Getlichermann et al., 1994, Polym. Deg. Stab., 43, 343-352)にあてはまる。これらのフィルムは、太陽放射の作用下で光酸化を受け、その構造が分解する。工業的には、求められる効果として、太陽露光の関数としての漸進的な放出を備えるこれらの製品は農業用肥料のコーティングに使用されている。しかし、フィルムの分解に必要な太陽エネルギー量は非常に大きく(500000kJ/m)、それは完全な夏の15日間の露光に対応する量より大きい(Getlichermann et al., 1994, Polym. Deg. Stab., 43, 343-352)。したがって、それらは1日の太陽への露光中に期待される高速分解には適合しない(1日に受ける太陽エネルギーは5000〜10000kJ/mである)。
【0009】
N−イソプロピルアクリルアミドのある種の誘導体も、ビス(4−ジメチルアミノ)フェニルメチルロイコシアニド等のUV光感受性分子のグラフトによって、紫外線への非常に興味深い反応性を獲得することができる(Mamada et al., 1990, Macromolecules, 23, 1517-1519)。紫外線は、最初に、このポリマーから形成されたゲル中でイオン化反応を発生し、これが初期浸透圧を増大させてゲルを膨潤させる。紫外線の不存在下では、平衡が逆転してゲルが破壊される。これをゲルが「崩壊」するという。
【0010】
同様に、例えば、クロロフィリン−銅錯体又はその三ナトリウム塩等の光に敏感な発色団をN−イソプロピルアクリルアミドポリマーにグラフト化することによって、可視光に反応性のゲルを得ることが可能である(Suzuki et al., 1990, Nature, 1990, 346, 26, 345-347; Qiu et al., 2001, Adv. Drug. Deliv. Rev., 53, 321-339)。
【0011】
光が上記(ヒドロ)ゲルに照射されると、発色団は太陽エネルギーを吸収して部分的にそれを熱に変換して、ゲルの温度が増大する。得られているゲルは熱感受性なので、温度の上昇はゲルの収縮を導く。ミクロスフェアにおけるこれらのゲルの使用は、ゲルの収縮時に有効成分の放出を可能とするであろう。
【0012】
しかし、イソプロピルアクリルアミドから形成された分子の高い毒性のために、化粧品におけるこの技術の使用は容易でない(Vyas et al., 1985, Neurotoxicology, 6, 3, 123-132; Hayashi et al., 1989, Arch. Toxicol., 63, 4, 308-313)。
【0013】
カプセル化された有効成分の、紫外線又は光の下での、放出特性を有するミクロスフェア又はマイクロカプセルの製造のために天然ポリマーを使用することを記述している研究は僅かである。そこで、以下においては、これを念頭において頂きたい。
【0014】
Yuiらのグループはミクロスフェアの支持媒体として、光感受性化剤であるメチレンブルーとカップル化されたヒアルロン酸のゲルの使用を提案している(Yui et al., 1993, J. Controlled Release, 26, 141-145)。光の作用下でOH゜ラジカルが生成し、ヒアルロン酸ゲルを脱重合化して流動化することによって、前記(ミクロ)スフェアのの分解と有効成分の放出を可能とする。
【0015】
Askerらの研究(Asker et al., 1997, PDA J. Pharm. Sci. Technol., 51, 3, 125-129)はエチルセルロースからなるマイクロカプセルが特に紫外線下で分解したことを示している。しかし、それには230〜270nm(UVC)の波長下で7日間サンプルを照射することが必要であった。現在のところ、非常に強いエネルギー放射であるUVCは地球表面の条件にはあまり合わない(Cesarini, 2002, Nouv. Dermatol., 21, 2, 30-36)。したがって、この選択された実験条件は化粧品用途のケースにおける実際の使用条件からはかなり離れているものである。
【0016】
太陽光及び/又は紫外線照射後に有効成分を送達するミクロスフェア又はマイクロカプセルの開発に関する文献はほとんどない。開発された製品は地球上で受ける太陽スペクトルに殆ど適合しない電磁波(例えばUVC)のみに反応するか、或いは、ポリマーの分解に必要なエネルギー量が日々の使用、特に化粧品、皮膚科学、製薬、農産食品又は農産業の使用、における迅速な作用機構を予期するにはあまりに多い。さらに、これまでの有機合成により得られた全ての光反応性ポリマーの毒性はその化粧における使用に対してブレーキとなっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Palmieri et al., 2002, J. Microencaps., 19, 1, 111-119
【非特許文献2】Lorenzo et al., 1997, J. Microencaps., 14, 5, 607-616
【非特許文献3】Ramkissoon-Ganorkar et al., 1999, J. Control. Release, 59, 287-298
【非特許文献4】Ichikawa et al., 2000, J. Control. Release, 63, 107-119
【非特許文献5】Vyas et al., 1985, Neurotoxicology, 6, 3, 123-132
【非特許文献6】Hayashi et al., 1989, Arch. Toxicol., 63, 4, 308-313
【非特許文献7】Weadock et al., 1996, J. Biomed. Mater. Res., 32, 2, 221-226
【非特許文献8】Lee et al., 2001, Yonsei Med. J., 42, 2, 172-179
【非特許文献9】Murthy et al., 1989, Pharm. Technol., 13, 72
【非特許文献10】Van Den Bulcke et al., 2000, Biomacromolecules, 1, 1, 31-38
【非特許文献11】Geetha et al., 1987, Polym. Deg. Stab., 19, 279-292
【非特許文献12】Getlichermann et al., 1994, Polym. Deg. Stab., 43, 343-352
【非特許文献13】Mamada et al., 1990, Macromolecules, 23, 1517-1519
【非特許文献14】Suzuki et al., 1990, Nature, 1990, 346, 26, 345-347
【非特許文献15】Qiu et al., 2001, Adv. Drug. Deliv. Rev., 53, 321-339
【非特許文献16】Yui et al., 1993, J. Controlled Release, 26, 141-145
【非特許文献17】Asker et al., 1997, PDA J. Pharm. Sci. Technol., 51, 3, 125-129
【非特許文献18】Cesarini, 2002, Nouv. Dermatol., 21, 2, 30-36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の主目的は、電磁波、特にその波長が太陽から放射されるスペクトルの波長内にある電磁波、の作用下で、任意に(粒子に)包含された有効成分を送達可能な、天然バイオポリマーから形成された粒子を提供するという新しい技術的な問題を解決することである。
【0019】
本発明の他の目的は、化粧品、皮膚科学、製薬、農産食品(agri-food)又は農産業(agri-industry)の分野で有効な有効成分を含むそのような粒子を提供するという新しい技術的な問題を解決することである。
【0020】
本発明の他の目的は、少なくとも一つの上記の粒子を含む、化粧品組成物、皮膚科学組成物、製薬組成物、農産食品組成物又は農産業組成物を提供するという新しい技術的な問題を解決することである。
【0021】
本発明の他の目的は、電磁波、特に太陽から放射されるものに対応する波長の電磁波、への露光に関連して、有効成分を放出可能な解決策を提供するという新しい技術的な問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、1日のオーダーの中程度の露光により適合する量の、例えば、化粧品を塗布している2〜3時間の間の、光の作用下で、有効成分(化粧品用、皮膚科学用、製薬用、農産食品用又は農産業用有効成分)を送達可能な天然バイオポリマーから形成された粒子を得る技術を提供する。
【0023】
本発明で説明されるミクロスフェア又はマイクロカプセル、ナノスフェア及びナノカプセル、リポソームは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオシドの使用によって作製される。これらの化合物は、実際に、そのUV照射への感受性が古くから知られており、in vivoで、例えば染色体中でこれらの構造に保持される遺伝子の変異を誘起することができる。
【0024】
すなわち、UV光と酸素の存在下ではフリーラジカルが発生し、多くの部位で、DNA分子、オリゴヌクレオチド、並びにRNA分子を開裂させる(Dobrov et al., 1989, Photochem. Photobiol., 49, 5, 595-598)。本発明者らは、一般に、ネガティブで、細胞の染色体特性の完全性に有害であると考えられているこの特性を、本発明においては、有益な特性として使用するアイデアを想起し、DNA分子、RNA分子、オリゴヌクレオチド、及び、オリゴヌクレオシドを、かくして形成されるスフェア又はリポソームの膜を構成するポリマーとして使用している。
【0025】
したがって、太陽放射、そして、より特にはUV下で、形成されたフリーラジカル(Hanson et al., 2002, Photochem. Photobiol., 76, 1, 57-63)は、スフェア、カプセル又はリポソームの膜を構成するDNA分子、RNA分子、オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオシドを「加水分解」する。そして、受ける放射量に比例して、例えば皮膚上で発生するフリーラジカルがスフィア、カプセル又はリポソームの膜を、漸進的に、部分的に破裂させて、有効成分の放出を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明に従って製造されたミクロスフェアの顕微鏡像(20倍)であり、照射前に得られたものである。
【図2】図2は、本発明のミクロスフェアに相当し、3800kJ/mの量の太陽光(太陽照射機)下での照射後に観察されたものである。この顕微鏡像は本発明のミクロスフェアの分解を観測可能としている。
【図3】図3は、従来技術に従って及び例3の方法で製造されたミクロスフェアの顕微鏡像(20倍)である。
【図4】図4は、図3で観測されたミクロスフェアであって、3800kJ/mの量の太陽光(太陽照射機)下での照射後に観察されたものである。図4はミクロスフェアに分解が生じていないことを観測可能としている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の最初の態様では、本発明は、電磁波、特にその波長が太陽放射スペクトルの波長内にある電磁波、の作用下で分解可能な少なくとも一つのバイオポリマーを含む粒子であって、当該バイオポリマーがヌクレオシドを含む粒子に関する。
【0028】
有利には、前記バイオポリマーはDNA、RNA、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、又は、これらの混合物の一つ、からなる群から選択される。
【0029】
有利には、前記バイオポリマーは、海産物由来のDNA、海産物由来のRNA、植物由来のDNA、植物由来のRNA、オリゴアンチセンス、ポリアミド核酸(PNA)、スモールインターフェリングRNA(siRNAs)、メッセンジャーRNA(mRNAs)オリゴヌクレオシド及び/又はオリゴヌクレオチド部を含むハイブリッド分子、及び、疎水性分子のグラフト等の化学変性を受けたオリゴヌクレオシド及びオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。
【0030】
有利には、前記粒子は、マイクロカプセル、ナノカプセル、ミクロスフェア、ナノスフェア、リポソーム、又はこれらの粒子のあらゆる混合物である。
【0031】
有利には、前記マイクロカプセル又はミクロスフェアのサイズは1〜100μm、好ましくは2〜80μm、である。
【0032】
有利には、前記ナノカプセル又はナノスフェアのサイズは10nm〜1μm未満、好ましくは20〜900nmである。
【0033】
有利には、前記粒子は、好ましくは局所的に許容可能であり、太陽光放射及び/又はUV光放射の効果により放出されうる少なくとも一つの有効成分を含む。
【0034】
本発明は、特に、前記有効成分の放出が前記光放射エネルギーの強度に関連してもたらされるという利点を有する。
【0035】
非常に有利なことには、本発明は、そのような放出を生じるのに十分なエネルギーの放射光に露光後約24時間の期間内に、前記有効成分の十分な量の放出を可能とする。
【0036】
有利には、200kJ/mより大きい、好ましくは4000kJ/mより大きい、エネルギーの放射光への露光中に前記有効成分の十分な量の放出がもたらされる。
【0037】
本発明は、特に、脂溶性又は水溶性の有効成分のカプセル化に、とりわけ好ましい。
【0038】
有利には、前記有効成分は、抗酸化剤、モイスチャライズ剤、太陽光遮蔽剤、ビタミン類、補酵素、香料、抗菌剤、保存剤、保湿剤、抗老化剤、皮膚バリアトニック、太陽放射及び/又は紫外線から保護する有効成分、太陽放射及び/又は紫外線への露光中又は後に皮膚を修復する有効成分、並びに、照射光、特に照射紫外線、の量に応じた制御のために漸進的な放出が必要なあらゆる有効成分、皮膚から吸収されにくい有効成分、及び、これらの混合物の一つ、からなる群から選択される。
【0039】
相乗効果を有する又は有しない様々な有効成分の混合物は、特に、組み合わせ及び/又は強化作用の実現を可能とすることができる。
【0040】
本発明は、特に、フマル酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、フタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の有機酸の二塩化物、クエン酸等のトリカルボン酸の二塩化物、クエン酸等のトリカルボン酸の三塩化物、酸無水物、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド及びホルムアルデヒド等のジアルデヒド、並びに、ジエポキシドから選択される架橋剤を用いた架橋、特に界面重合、により得ることができる。
【0041】
本発明の第2の態様では、本発明は、上記で定義された粒子の少なくとも一つ、或いは、これらの粒子の様々な可能な混合物の一つ、を含むことを特徴とする、化粧品組成物、皮膚科学組成物、製薬組成物、農産食品組成物又は農産業組成物に関する。
【0042】
有利には、この組成物は、保存剤、親水性又は親脂(油)性ゲル化剤、溶媒、乳化剤、共乳化剤、保湿剤、増粘剤、安定化剤、抗酸化剤、太陽光遮蔽剤、顔料、着色剤、有機又は無機充填剤、香料、及び、防臭剤からなる群から選択される添加剤等の賦形剤を更に含む。
【0043】
有利には、この組成物は、化粧品、皮膚科学、製薬、農産食品又は農産業において許容可能な形態、特に、水性又は油性溶液、クリーム又は水性ゲル又は油性ゲル、特に、ポット又はチューブ入り、特に、シャワーゲル、シャンプー;乳液;エマルジョン、ミクロエマルジョン又はナノエマルジョン、特に、水中油型又は油中水型又は多重型又はシリコーン含有型;ローション、特にガラスボトル、プラスチックボトル、メジャーボトル、エアゾール又はスプレー入り;アンプル;液体石鹸;皮膚科学用バー;軟膏;フォーム;好ましくは液体、ペースト、又は固体であり、例えば、スティック、特にリップスティック、の形状である無水製品からなる群から選択される形態に処方される。
【0044】
本発明の第3の態様では、本発明は、電磁波、特にその波長が太陽放射スペクトルの波長内にある電磁波、に前記粒子を露光中に、有効成分を、特に前記電磁波のエネルギー強度に関連して、放出させるための、上記に定義された粒子又は組成物の使用に関する。
【0045】
有利には、これらの粒子又は組成物は、太陽放射スペクトルの波長内にある電磁波への露光中又は後に、特に太陽光及び/又は紫外光への露光中又は後に、皮膚を保護又は修復するために使用される。
【0046】
したがって、有効成分は、皮膚がそれを必要とするときに、同時に、迅速に放出される。
【0047】
これらの粒子又は組成物は、有利には、放射光のエネルギー強度に従って、皮膚に許容されにくい又は皮膚への浸透が速すぎる太陽光遮蔽剤等の有効成分を、特にこの有効成分が必要な場合にのみ放出するために使用される。
【0048】
本発明は、実際に、吸収が速すぎる、或いは、皮膚にはあまり耐性がないことが知られている有効成分(例えば太陽光遮蔽剤)の浸透を最大限に遅くするためにも使用することができる。この事実から、この有効成分は本当に必要な場合、すなわち特に長時間の太陽への曝露の場合、にのみ放出されるであろう。
【0049】
本発明は、また、1日を通して有効成分を長時間にわたって放出するためにも使用することができ、終日その放出を改善するという目的(例えば、皮膚を保護するために抗酸化剤を徐々に放出する;皮膚のバリアを徐々に再構築するために該再構築を可能とする物質を徐々に放出する;1日中香料を放出する;紫外線に対する長時間の保護のためにUV遮蔽剤を徐々に放出する;長期間の保湿のために保湿剤を徐々に放出する;1日中抗老化剤を徐々に放出する;1日を通して徐々に進行する抗菌効果のために抗菌剤又は保存剤を徐々に放出する等)をもって使用することができる。この事実から、そのような粒子にカプセル化されたこれらの有効成分は本当に必要な場合、すなわち特に長時間の太陽への曝露の場合、にのみ放出されるであろう。
【0050】
本発明は、これらの粒子又は組成物を局所的経路で、特にヒト又は動物の生体上に適用することによる化粧品的、皮膚科学的又は製薬的用途を見出すものである。この事実から、本発明は、太陽への曝露の関数として制御された態様で患者の皮膚を保護又は修復しうる有効成分を粒子内に包含することによって非常に有利に実施することができる。
【0051】
特に、種子の周囲、植物の葉の上、植物全体、植物の一部、植物の基部、植物の根、又は植物の周囲への適用というこれらの粒子又は組成物の農産食品又は農産業用の使用は、それを必要としているであろう種子又は植物に有効成分を放出する、又は、当該種子又は植物の必要の表示を提供するという点に有利に見出すことができる(例えば、肥料、殺菌剤、除草剤)。
【0052】
本発明の第4の態様では、本発明は、少なくとも一つの美容有効成分を含む、上記に定義される粒子又は組成物を、皮膚、及び/又は体毛、及び/又は毛髪に塗布する美容処理方法であって、化粧品組成物を構成する単一の又は混合物である前記粒子が太陽への露光中に分解して少なくとも一つの有効成分を放出し、皮膚、及び/又は体毛、及び/又は毛髪上での太陽の作用を防止し、及び/又は、太陽への露光中に、皮膚、及び/又は体毛、及び/又は毛髪への有益な作用を提供することを可能とすることを特徴とする美容処理方法に関する。
【0053】
本発明の第5の態様では、本発明は、少なくとも一つの食品有効成分を含む、上記に定義された粒子又は組成物を、種子の周囲、植物の葉、植物全体、植物の一部、植物の基部、植物の根、又は、植物の周囲に適用する植物の処理方法であって、農産食品組成物を構成する単一の又は混合物である前記粒子が太陽への露光中に分解して少なくとも一つの有効成分を放出し、種子又は植物への太陽の作用を防止し、及び/又は、太陽への露光に関連する少なくとも一つの有害な作用を処理し、及び/又は、太陽への露光に関連する利点を改善することを可能とすることを特徴とする処理方法に関する。
【0054】
本発明では、「電磁波」とは同一の波長を有する又は有しない電磁波の全体を意味する。
【0055】
本発明では、太陽から放射される波長は、特に、赤外線、そして、より特には紫外線であって、これに制限されるものではないが、おおよそ10−8〜4.10−7mの間の波長を有する紫外線(UV)、そして、可視光であって、これに制限されるものではないが、おおよそ400〜800nmの波長に相当する可視光、の範囲に相当する電磁波の波長から構成されている。
【実施例】
【0056】
添付図は、最初に本発明の製品への、そして次に比較製品への、電磁波の効果を可視化するものである。
【0057】
図1及び2を製造するために使用された本発明の組成物は例1で製造されたものに相当する。
【0058】
図3及び4を製造するために使用された比較対照組成物は例3で製造されたものに相当する。
【0059】
他の目的、本発明の特徴及び利点は、単に実証を与え、発明の範囲を何ら限定しない「例」を参照する以下の説明記述を読解すれば当業者には明確に現れるであろう。
【0060】
ここでの例は本発明の不可欠な部分を構成するが、例を含むその全体の記述から自明な、当該技術分野の技術水準に対して新規であるあらゆる特徴は、その機能及び一般性において、本発明の不可欠な部分を構成する。
【0061】
したがって、全ての例は一般的な範囲を有する。
【0062】
さらに、例では、特に断らない限り、全ての百分率は重量で表されており、温度は℃単位であり、そして、圧力は大気圧である。
【0063】
例1: 海産物DNAに基づくマイクロカプセルの製造方法
a)4.8%(W/W)の炭酸ナトリウム及び0.4%(W/W)のメチルパラベンを含む溶液(1kg)が純粋な実験室水で調製された。機械的撹拌下、2%(W/W)の高分子量DNA(魚精抽出物)が添加された。透明なゲルが得られるまで撹拌が続けられた。
b)9.6mlの塩化セバコイル(sebacoyl chloride)が320gのカプリル/カプリン酸トリグリセリド油(油性基剤)に添加された。Ultra Turax(登録商標)型装置(IKA社)による強力な撹拌下で全体を960gのDNAゲルに注いだ。力を落として機械的撹拌が45分間続けられた。
c)次に、遠心分離(3800rpmで5分間)により、反応媒体からスフェアが分離された。
d)水を用いて何回か洗浄が行われ、未反応の過剰のDNAゲルがセバシン酸ナトリウムと共に除去された。
e)回収されたマイクロカプセルは2〜80μmの径サイズを有していた。
次に、それらは、任意の化粧品又は医薬品に使用可能な、任意に保存剤を含む、ゲル(親水性、親油性又はシリコーン型)中に懸濁状態で置かれる。これらのマイクロカプセルは、乾燥形態が好ましいあらゆるタイプの用途(例えば、油性又はシリコーン溶液中)に使用されるために、(例えば噴霧により)乾燥され、次に、光照射により滅菌されることができる。
【0064】
例2:海産物DNAに基づくミクロスフェアの製造方法
a)4.8%(W/W)の炭酸ナトリウム及び0.4%(W/W)のメチルパラベンを含む溶液(1kg)が純粋な実験室水で調製された。機械的撹拌下、2%(W/W)の高分子量DNA(魚抽出物)が添加された。透明なゲルが得られるまで撹拌が続けられた。
b)144gのテレフタル酸二塩化物が3600gのカプリル/カプリン酸トリグリセリド油に分散された。
c)セル中で、54gのソルビタントリオレエート(Span85,ICI社)が2700gのカプリル/カプリン酸トリグリセリド油に分散された。
d)次に、900gの上記工程a)で製造されたDNAゲルを機械的撹拌下でセルに入れた。次に、上記工程b)で製造した溶液を機械的撹拌下でその全体に添加し、全体がUltra Turax(登録商標)型撹拌システム(IKA社)で10分間撹拌された。力を落として機械的撹拌が更に20分間続けられた。
e)次に、遠心分離(2000rpmで3分間)により、反応媒体から5〜80μmのサイズの得られたスフィアが分離された。
f)トリグリセリド油を用いて何回か洗浄が行われ、過剰の酸塩化物を除去した。
g)回収されたマイクロカプセルは、任意の化粧品又は医薬品に使用可能な、任意に保存剤を含む又は含まない、ゲル(親水性、親油性又はシリコーン型)中に懸濁状態で任意に置かれる。これらのマイクロカプセルは、乾燥形態が好ましいあらゆるタイプの用途(例えば、油性又はシリコーン溶液中)に使用されるために、(例えば噴霧により)乾燥され、次に、光照射により滅菌されることができる。
【0065】
例3:様々なポリマーの太陽放射に対する感受性
化粧品においてマイクロカプセル化に古くから使用されている様々なポリマーが、例1に記載されたプロトコルに従って、比較対照用マイクロカプセルの製造に使用された。例えば、ミクロスフェアは仏国特許第2642329号(米国特許第5395620号)(COLETICA社)に従ってコラーゲン及びグリコサミノグリカンから製造され、仏国特許第2766090号(米国特許第5912016号)(COLETICA社)に従って小麦又はルピナスからの植物蛋白から製造され、又は、仏国特許第2688422号(米国特許第5562924号)(COLETICA社)に従ってアカシア等の多糖類から製造された。582nmに吸収ピークを有する脂溶性着色剤が油性相に導入された。
【0066】
例1で製造されたミクロスフェアと上記の様々なポリマーによって製造されたものとをカーボマー(Carbomer)ゲル中で25%(W/W)に希釈した。次に、0.5%のクエン酸三ナトリウムを含む87.5gの純粋な実験室水が12.5gの得られたゲルに添加された。こうして得られたスフィアの懸濁液のpHは1NのHClで5に調整された。
【0067】
この懸濁液の0.5mlをパイレックス(登録商標)加水分解チューブ中に載置した。次に、このチューブは、太陽光スペクトルを再生する太陽光放射機(Suntest CP+, Atlas社)下に置かれた。照射後、3.5mlの純粋な実験室水と次に2mlの有機溶媒(イソブチルメチルケトン)が各チューブに添加された。次に、各テスト物は2000rpmで30秒、旋回させられた。次に、カプセル化されていない又は照射下で放出されたオイルが有機相に抽出され、582nmでの光学密度(OD)の測定が行われた。放出されたオイル量が多いほど、ODは高くなる。非照射サンプルで得られたOD値を差し引いて、この値を完全に加水分解したスフェアで得られる最大OD値と比較して、放出されたオイル量に相当する、太陽光放射下でのスフェアの開口率が得られる。
【0068】
使用された太陽光放射機はそのキセノンアークランプのために太陽光を最も正確に再現する(スペクトル範囲:300−3000nm)ものである。
【0069】
表1は、地球上の様々な地点で受け取る平均的な毎日の放射光のデータである(300〜800nmの間でエネルギーを測定)。更に、サンプルが受けるエネルギー量を正確に定量するために、300〜800nmで受けるエネルギーを測定するソーラーラジオメーター(Sunstest CP+, Atlas社)、又は、UVA光(365nmのピーク)又はUVB光(312nmのピーク)を特に測定するUVラジオメーター(VLX 3W, Fisher社)を使用した。
【表1】

【0070】
製造された様々なマイクロカプセルは3804kJ/mの太陽放射を受け、次に、太陽放射下での開口率が計算された。結果を表2に示す。
【表2】

DNAから製造されたマイクロカプセル、すなわち例1のもの、が太陽放射下で最も多くの開口を有していた。
【0071】
例4:海産物由来のDNAから製造されたマイクロカプセルの開口へのpHの影響の研究
行われたプロトコルは例3に記載のものと同じである。2000kJ/mの放射を受ける前に、スフィアの懸濁液のpHは5、6、7及び8に調整された。そして、太陽放射下での開口率が計算された。
【表3】

スフィアの開口はpH5とpH8とで最も多く発生していたが、化粧品又は皮膚科学的処方の全ての範囲で有意のままであった。
【0072】
例5:受けるエネルギー量の関数としてのスフィアの開口の進展
3つのタイプのマイクロカプセルが、例1に記載されたプロトコルに従って、コラーゲンと海産物由来のグリコサミノグリカン、アカシアから抽出された多糖類と植物性蛋白との混合物、及び、海産物由来DNA、から製造された。
次に、マイクロカプセルは様々な量で照射を受け、放出されたオイルの量が例3に記載の技術に従って定量された。得られた開口率は表4のとおりである。
【表4】

エネルギーの伝達が多いほど、海産物由来のDNAを含むスフィアの開口は多くなった。さらに、海産物由来のDNAに基づくマイクロカプセルと他のマイクロカプセルとの間の開口率の標準偏差は、照射エネルギーが大きくなるほど増大した。
【0073】
例6:太陽照射後のマイクロカプセルの顕微鏡観察
例1に従って製造されたDNAに基づくスフィアと、例5のコラーゲンとグリコサミノグリカンから製造された対照物としてのミクロスフェアが2800kJ/mの量の太陽光(太陽光照射機)で照射された。本発明の製品(図1及び2)並びに比較例としてのミクロスフェア(図3及び4)が照射前後で観察された。本発明のミクロスフェアだけがUVの作用下で劣化した膜を有し、比較例のミクロスフェアの膜は同一の条件下では劣化していないことが観察された。
【0074】
例7:本発明のマイクロカプセルのサイズの変更
例1に記載されたものと同一の方法で全てが行われた。例1の工程b)では、乳化剤の存在下又は非存在下でRayneri型(0-8000rpm)又はUltraturrax型(20000rpmまで)の機械的撹拌機を用いて、幾らか高速の撹拌下で乳化工程が行われ、エマルジョン(すなわちマイクロカプセル)のサイズは1μmから100μmの範囲で非常に正確に固定されることができた。それ以外は、例1の他の工程は同一とされた。
【0075】
例8:本発明のミクロスフェアのサイズの変更
例2に記載されたものと同一の方法で全てが行われた。例1の工程d)では、増量されたSpan85(ICI社)型の乳化剤の存在下でRayneri型(0-8000rpm)又はUltraturrax型(20000rpmまで)の機械的撹拌機を用いて、幾らか高速の撹拌下で乳化工程が行われ、エマルジョン(すなわちマイクロカプセル)のサイズは1μmから100μmの範囲で非常に正確に固定されることができた。それ以外は、例2の他の工程は同一とされた。
【0076】
例9:本発明の方法によるナノカプセルの製造
例1に記載されたものと同一の方法で全てが行われた。例1の工程b)では、乳化剤の存在下又は非存在下で、食品の均一化に一般的に使用される商業的高圧ホモジナイザー(APV, Alpha-Laval等)の助けを用いて乳化工程が行われた。均一化圧は800バールから3000バールであった。こうして得られたナノカプセルのサイズは50nm(高圧)から900nm(低圧)の間であった。それ以外は、例1の他の工程は同一とされた。
【0077】
例10:本発明の方法によるナノスフェアの製造
例2に記載されたものと同一の方法で全てが行われた。例2の工程d)では、乳化剤の存在下又は非存在下で、食品の均一化に一般的に使用される商業的高圧ホモジナイザー(APV, Alpha-Laval等)の助けを用いて乳化工程が行われた。均一化圧は800バールから3000バールであった。こうして得られたナノカプセルのサイズは50nm(高圧)から900nm(低圧)の間であった。それ以外は、例2の他の工程は同一とされた。
【0078】
例11:本発明の製品を製造するための海産物由来RNAの使用
例1、2、及び、7〜10に記載のものと同一の方法で全てが行われたが、海産物由来のRNA(例えば、魚精から抽出されたRNA;市販のもの(Javenech, France))が使用され、その割合は例1で使用されたものと同一であった。得られた粒子は紫外線に感受性であり、太陽照射下で加水分解性であった。
【0079】
例12:本発明の製品を製造するための植物性DNA又は植物性RNAの使用
例1、2、及び、7〜10に記載のものと同一の方法で全てが行われたが、植物由来のDNA又は植物由来のRNA(市販のもの(Inocosm))が使用され、その割合は例1で使用されたものと同一であった。得られた粒子は紫外線に感受性であり、太陽照射下で加水分解性であった。
【0080】
例13:本発明の製品を製造するためのオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオシドの使用
例1、2、及び、7〜10に記載のものと同一の方法で全てが行われたが、化学合成で製造された、或いは、オーダーによってこれらのヌクレオチド又はヌクレオシドを製造する会社から入手可能な、オリゴヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドがこれらの粒子を製造するために使用され、その割合は例1で使用されたものと同一であった。
得られた粒子は例1で得られた粒子よりも小さいサイズ(1〜50μm)であり、紫外線に感受性であり、太陽照射下で加水分解性であった。
本発明で使用可能なヌクレオチド又はヌクレオシドの中では、以下のものが挙げられる:
オリゴアンチセンス、ポリアミド核酸(PNA)、スモールインターフェリングRNA(small interfering RNA: siRNA)と呼ばれるRNA、mRNA、オリゴヌクレオシド及びオリゴヌクレオチド部を含むハイブリッド分子、そして、例えば疎水性分子のグラフト等によって化学的に修飾されたオリゴヌクレオシド及びオリゴヌクレオチド。
【0081】
例14:様々な架橋剤の使用
例1、2、及び、7〜13に記載のものと同一の方法で全てが行われたが、使用された架橋剤は以下のものから選択された。
例えば、フマル酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、フタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の有機酸の二塩化物;クエン酸等のトリカルボン酸の二塩化物;クエン酸等のトリカルボン酸の三塩化物;酸無水物
ジイソシアネート
・グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド等のジアルデヒド
・ジエポキシド
得られた粒子は紫外線に感受性であり、太陽照射下で加水分解性であった。
【0082】
例15:紫外線又は太陽放射に感受性であるリポソーム型の粒子の製造
1)ホスファチジルコリン(T60、Lipoid)でリッチ化された50gの大豆リン脂質が500mlの脱ミネラル水に添加され、常温でリン脂質が完全に溶解するまで撹拌が維持された(500rpm)。
2)完全溶解後(約4時間)、400gの脱ミネラル水に50gの海産物由来のDNAを予め溶解しておいた調製物を、この溶液に添加した。
3)伝統的な手法で、全体のpHを商業的に許容可能なpH、すなわち4〜8の間(より好ましくは5〜7の間)とする。
4)非常に強力な撹拌(10000rpm)下、0.5gのビタミンEアセテートをゆっくり導入し、生成物の完全な均一性が得られるまで撹拌を維持した(約30分〜7時間)。可能であれば、所定の撹拌時間後に撹拌速度を500rpmに減速する。全体は20〜80℃の温度範囲、大気圧から3500バールの圧力下で実行することができる。
5)得られた生成物は、DNAの存在又は不存在下、例3に記載されるように、紫外線又は太陽光に照射又は非照射され、放出されたビタミンEアセテートの量が評価される。
【表5】

したがって、紫外線及び太陽光に感受性のDNAがリポソームの膜の作製に使用される場合には、活性物質の放出がある。
【0083】
例16:本発明の製品の製造のための海産物由来RNAの使用
例15に記載のものと同一の方法で全てが行われたが、市販の、海産物由来のRNAが例15に記載されたものと同一の量で使用された。
得られた粒子(リポソーム)は紫外線に感受性であり、太陽照射下で加水分解性であった。
これらのリポソームにカプセル化されたトコフェロール等の抗酸化剤は、皮膚の紫外線適合保護のために、UV照射下で徐々に放出され(照射3時間後40%、6時間後80%)た。
【0084】
例17:本発明の製品の製造のための植物性DNA又は植物性RNAの使用
例15に記載のものと同一の方法で全てが行われたが、市販の(Inocosm)、植物由来のDNA又は植物由来のRNAが例15に記載されたものと同一の量で使用された。
得られた粒子(リポソーム)は紫外線に感受性であり、太陽照射下で加水分解性であった。
これらのリポソームにカプセル化されたParsol MCX等の太陽光遮蔽剤は、皮膚の紫外線適合保護のために、UV照射下で徐々に放出され(照射3時間後60%、6時間後96%)た。
【0085】
例18:本発明の製品の製造のためのオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオシドの使用
例15に記載のものと同一の方法で全てが行われたが、化学合成により製造された、並びに、オーダーによりこれらのヌクレオシド又はヌクレオチドを製造する会社から入手可能なオリゴヌクレオシド又はオリゴヌクレオチドがこれらの粒子を製造するために、例15に記載されたものと同一の割合で使用された。
得られた粒子(リポソーム)は紫外線に感受性であり、太陽照射下で加水分解性であった。
本発明で使用可能なヌクレオチド又はヌクレオシドの中では、以下のものが挙げられる:
オリゴアンチセンス、ポリアミド核酸(PNA)、スモールインターフェリングRNA(small interfering RNA: siRNA)と呼ばれるRNA、mRNA、オリゴヌクレオシド及びオリゴヌクレオチド部を含むハイブリッド分子、そして、例えば疎水性分子のグラフト等によって化学的に修飾されたオリゴヌクレオシド及びオリゴヌクレオチド。
これらのリポソームにカプセル化された商業的な香料(Dragoco)は、皮膚上での紫外線適合放出のために、UV照射下で徐々に放出され(1回の塗布後6時間たっても、紫外線照射から常に知覚可能な香り)た。
【0086】
例19:水中油型エマルジョン型の化粧品又は製薬処方における本発明の製品の使用
【0087】
処方19a

水 qsp 100
ブチレングリコール 2
グリセロール 3
ジヒドロキシセチルナトリウム 2
ホスフェート,
イソプロピルヒドロキシセチルエーテル


グリコール ステアレートSE 14
トリイソノナオイン(triisononaoin) 5
オクチルココエート 6


ブチレングリコール, 2
メチルパラベン,
エチルパラベン,プロピルパラベン,
pHを5.5に調整


本発明の製造物 0.01−10%
【0088】
処方19b

水 qsp 100
ブチレングリコール 2
グリセロール 3
ポリアクリルアミド,イソパラフィン, 2.8
ラウレス−7(Laureth-7)


ブチレングリコール, 2
メチルパラベン,
エチルパラベン,プロピルパラベン;

フェノキシエタノール,
メチルパラベン,
プロピルパラベン,ブチルパラベン,
エチルパラベン 0.5
ブチレングリコール


本発明の製造物 0.01−10%
【0089】
処方19c

カーボマー 0.50
プロピレングリコール 3
グリセロール 5
水 qsp 100


オクチルココエート 5
ビサボロール 0.30
ジメチコーン 0.30


水酸化ナトリウム 1.60


フェノキシエタノール, 0.50
メチルパラベン,
プロピルパラベン,ブチルパラベン,
エチルパラベン


香料 0.30


本発明の製造物 0.01−10%
【0090】
例20:
油中水型の処方中での本発明の製造物の使用


PEG30−ジポリヒドロキシステアレート 3
カプリン酸トリグリセリド 3
セテアリルオクタノエート 4
アジピン酸ジブチル 3
グレープシードオイル 1.5
ホホバ油 1.5
フェノキシエタノール, 0.5
メチルパラベン,
プロピルパラベン,ブチルパラベン,
エチルパラベン


グリセロール 3
ブチレングリコール 3
硫酸マグネシウム 0.5
EDTA 0.05
水 qsp100


シクロメチコーン 1
ジメチコーン 1


香料 0.3


本発明の製造物 0.01−10%
【0091】
例21:
シャンプー又はシャワーゲル型の処方中での本発明の製造物の使用


キサンタンガム 0.8
水 qsp100


ブチレングリコール, 0.5
メチルパラベン,
エチルパラベン,プロピルパラベン
フェノキシエタノール, 0.5
メチルパラベン,
プロピルパラベン,ブチルパラベン,
エチルパラベン


クエン酸 0.8


硫酸ナトリウムラウレス(Sodium Laureth Sulfate) 40.0


本発明の製造物 0.01−10%
【0092】
例22:
口紅又は他の無水製品の処方中での本発明の製造物の使用


ミネラルワックス 17.0
イソステアリル イソステアレート 31.5
プロピレングリコールジペラルゴネート 2.6
プロピレングリコールイソステアレート 1.7
PEG8 ビーズワックス 3.0
水素化パーム核油 3.4
グリセリド,
水素化パームグリセリド
ラノリン油 3.4
ごま油 1.7
乳酸セチル 1.7
ミネラル油,ラノリンアルコール 3.0


ひまし油 qsp100
二酸化チタン 3.9
CI 15850:1 0.616
CI 45410:1 0.256
CI 19140:1 0.048
CI 77491 2.048


本発明の製造物 0.01−5%
【0093】
例23:
水性ゲル処方(目の周囲、スリマー(slimmer)等)中での本発明の製造物の使用


水 qsp100
カーボマー 0.5
ブチレングリコール 15
フェノキシエタノール,メチルパラベン, 0.5
プロピルパラベン,ブチルパラベン,
エチルパラベン


本発明の製造物 0.01−10%
【0094】
例24:少なくとも一つの本発明の製品を含む調製物の化粧受容性の評価
例1で得られたマイクロカプセルを0.4%カーボマーゲルで25%に希釈して毒性テストを行った。テストは、ウサギの皮膚及び目の刺激の評価、ラットへの1回の経口投与による異常毒性の欠如の研究、及び、モルモットにおける感受性化の研究から構成されていた。さらに、0.4%カーボマーゲルでミクロスフェアを5%に希釈した後にヒト志願者への感受性化の研究が行われた。
【0095】
ウサギの皮膚の一次刺激の評価
「皮膚の急性刺激/腐食効果」の研究に関するOECD指令により推奨される方法に従って、3匹のウサギの皮膚に上記の調製物を希釈せずに0.5ml塗布した。製品は1982年2月21日のJORF(Journal of French Republic)に発表された1982年2月1日の決定において定義される基準に従って分類された。これらのテストの結果は、テストされた調製物が皮膚に対して非刺激性であると分類可能なものであった。
【0096】
ウサギの目の刺激の評価
「目の急性刺激/腐食効果」の研究に関するOECDの1987年2月24日の第405指令により推奨される方法に従って、上記の調製物が3匹のウサギの目に0.1mlの割合で1回のバッチで純粋な状態でしみ込まされた。
【0097】
ラットへの1回の経口投与による異常毒性の欠如のテスト
1987年2月24日のOECD第401指令から推奨され、化粧品に適合するプロトコルに従って、5匹の雄のラットと5匹の雌のラットに、体重1kg当たり5gの量で1回のバッチで上記の調製物を経口投与した。LD0及びLD50は5000mg/kgより大きい。したがって、テストされた調製物は消化により危険な調製物には分類されない。
【0098】
モルモットへの皮膚感受性化能の評価
上記の調製物がMagnussonとKligmannにより記載された最大化テストにかけられた。そのプロトコルはOECDの第406指令に沿ったものである。調製物は接触によって皮膚を感受性化しないものに分類された。
【0099】
健康な志願者への皮膚感受性化能の評価
上記の調製物(カーボマーゲルで5%に希釈されたカプセル)が100人の健康な志願者のパネルへのアレルギー能の欠如の証明テストを受けた。
製品は、吸蔵パッチ下で24時間適用され、次に、パッチ下で2日間再適用され、全体で9回の適用であった(誘導相)。2週間後、製品を含む他のパッチが志願者の皮膚に貼付され、24時間接触状態のままとされた。刺激及び皮膚感受性化の臨床的徴候がパッチの除去から24、48及び72時間後に評価された(試験相)。
これらの実験条件下では、テストされた製品は接触により皮膚を感受性化しないものに分類された。並行して導かれた研究でも、本発明の製品が非光感受性化及び非光毒性でないという結論を導くことができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽放射スペクトルの波長内に波長を有する電磁波の作用下で分解可能な粒子であって、マイクロカプセル又はナノカプセルの形態にあり、当該マイクロカプセル又はナノカプセルの膜が、架橋剤で架橋された、架橋DNA、架橋RNA、架橋オリゴヌクレオチド、及び、架橋オリゴヌクレオシドからなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする粒子。
【請求項2】
前記粒子が、1〜100μmのサイズを有するマイクロカプセルである、請求項1記載の粒子。
【請求項3】
前記粒子が、2〜80μmのサイズを有するマイクロカプセルである、請求項1記載の粒子。
【請求項4】
前記粒子が、10nm〜1μm未満のサイズを有するナノカプセルである、請求項1記載の粒子。
【請求項5】
前記粒子が、20nm〜900nmのサイズを有するナノカプセルである、請求項1記載の粒子。
【請求項6】
局所的に許容可能であり、太陽放射又はUV放射の作用下で放出される少なくとも一つの有効成分を含むことを特徴とする、請求項1記載の粒子。
【請求項7】
前記放出を生じるのに十分なエネルギー放射への露光後最大24時間の期間内に、前記有効成分の十分な量の放出がもたらされる、請求項6記載の粒子。
【請求項8】
4000kJ/mより大きい、エネルギー放射への露光中に前記有効成分の十分な量の放出がもたらされる、請求項6記載の粒子。
【請求項9】
前記有効成分が脂溶性又は水溶性である、請求項6記載の粒子。
【請求項10】
前記有効成分が、抗酸化剤、モイスチャライズ剤、太陽光遮蔽剤、ビタミン類、補酵素、香料、抗菌剤、保存剤、保湿剤、抗老化剤、皮膚バリアトニック、太陽放射又は紫外線から保護する有効成分、太陽放射又は紫外線への露光中又は後に皮膚を修復する有効成分、照射光の量に応じた制御のために漸進的な放出が必要なあらゆる有効成分、皮膚から吸収されにくい有効成分、及び、これらの混合物の一つ、からなる群から選択される、請求項6記載の粒子。
【請求項11】
有機酸の二塩化物、トリカルボン酸の二塩化物、酸無水物、ジイソシアネート、ジアルデヒド、ホルムアルデヒド、並びに、ジエポキシドから選択される架橋剤を用いて架橋して得られる、請求項1記載の粒子。
【請求項12】
前記DNAをフマル酸の二塩化物、セバシン酸の二塩化物、アゼライン酸の二塩化物、テレフタル酸の二塩化物、フタル酸の二塩化物、コハク酸の二塩化物、グルタル酸の二塩化物、アジピン酸の二塩化物、クエン酸の二塩化物、グルタルアルデヒド、並びに、ホルムアルデヒドから選択される架橋剤を用いて架橋して得られる、請求項1記載の粒子。
【請求項13】
界面重合により得られる、請求項1記載の粒子。
【請求項14】
請求項1記載の粒子の少なくとも一つ、或いは、これらの粒子の様々な可能な混合物の一つ、を含むことを特徴とする、化粧品組成物、皮膚科学組成物、製薬組成物、農産食品組成物又は農産業組成物。
【請求項15】
保存剤、親水性又は親脂性ゲル化剤、溶媒、乳化剤、共乳化剤、保湿剤、増粘剤、安定化剤、抗酸化剤、太陽光遮蔽剤、顔料、着色剤、有機又は無機充填剤、香料、及び、防臭剤からなる群から選択される許容可能な賦形剤を更に含む、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
ポット又はチューブ入りの、水性又は油性溶液、クリーム又は水性ゲル又は油性ゲル;シャワーゲル、シャンプー;乳液;エマルジョン、ミクロエマルジョン又はナノエマルジョン;水中油型又は油中水型又は多重型又はシリコーン含有型エマルジョン;ガラスボトル、プラスチックボトル、メジャーボトル、エアゾール又はスプレー入りのローション;アンプル;液体石鹸;皮膚科学用バー;軟膏;フォーム;液体、ペースト、又は固体である無水製品;スティック;リップスティックからなる群から選択される形態に処方されることを特徴とする請求項14記載の組成物。
【請求項17】
太陽放射スペクトルの波長内にある電磁波への露光中又は後に、或いは、太陽放射又は紫外線放射への露光中又は後に、皮膚を保護又は修復するための請求項1記載の粒子。
【請求項18】
皮膚に許容されにくい又は皮膚への浸透が速すぎる有効成分を、太陽放射への露光時にのみ皮膚上に放出するための請求項1記載の粒子。
【請求項19】
前記有効成分が太陽光遮蔽剤である、請求項18記載の粒子。
【請求項20】
皮膚、体毛又は毛髪に塗布される少なくとも一つの美容有効成分を含み、太陽への露光中に分解して前記有効成分を放出し、皮膚、体毛又は毛髪上での太陽の作用を防止し、又は、太陽への露光中に、皮膚、体毛又は毛髪への有益な作用を提供する、美容処理用の請求項1記載の粒子。
【請求項21】
種子の周囲、植物の葉、植物全体、植物の一部、植物の基部、植物の根、又は、植物の周囲に適用される少なくとも一つの農産食品有効成分を含み、太陽への露光中に分解して前記有効成分を放出し、種子又は植物への太陽の作用を防止し、又は、太陽への露光による少なくとも一つの有害な作用を処理し、又は、太陽への露光による有益な作用を改善する、植物処理用の請求項1記載の粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−31042(P2010−31042A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255265(P2009−255265)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【分割の表示】特願2003−63999(P2003−63999)の分割
【原出願日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【出願人】(500226948)ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス (21)
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean−de−Dieu 69007 LYON, FRANCE
【Fターム(参考)】