説明

太陽熱複合発電所を運転するための方法ならびにこの方法を実施するための太陽熱複合発電所

【課題】太陽熱複合発電所を運転するための方法と、この方法を実施する太陽熱複合発電所を提供する。
【解決手段】水−蒸気循環サイクル20が、ガスタービン11にかかる全負荷のためにだけ構成されていること、および補充的な負荷を太陽電池アレイ33から水−蒸気循環サイクル20内に供給する場合に、太陽熱複合発電所10の総出力電力がほぼ一定のままである程度に、太陽電池アレイ33から補助的に供給される電力に基づいて、ガスタービン11にかかる負荷が各場合において低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所技術の分野に関する。本発明は特に水−蒸気循環サイクルと太陽電池アレイを有する太陽熱複合発電所を運転するための方法に関しており、水−蒸気循環サイクルは、蒸気タービンと熱回収蒸気発生器を備えており、熱が太陽電池アレイから水−蒸気循環サイクルへと補助的に供給される。さらに本発明は特にこの方法を実施するための太陽熱複合発電所にも関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱複合発電所を形成するための、ガスタービンと水−蒸気循環サイクルを有する複合発電所内の太陽熱手段により生成される電力の統合により、このような発電所設備からのCOの排出を減らすことができる。太陽熱による解決手段は、この場合光起電力技術とは対照的に、このような統合にとってとりわけ特に大いに適している。これらのような解決手段は、太陽エネルギーが蒸気(いわゆる太陽蒸気)を直接もしくは間接的に発生させるために使用されることを特徴とし、このことはガスタービンを備えた複合サイクル回路内で様々な方式で使用することができる。好ましい一形態は、ガスタービンそれ自体の中で太陽蒸気を使用する代わりに、太陽蒸気に水−蒸気循環サイクル(WSC)を加えることである。さらに、太陽蒸気は放射状の集熱器(groove collector)に適した太陽電池アレイ内で発生されるのが好ましい。
【0003】
図1にはこのような太陽熱複合発電所の発電所レイアウトの極めて簡略化された実例が示してある。図1に示した太陽熱複合発電所10は、二段燃焼部と、蒸気タービン21を有する水−蒸気循環サイクル20と、太陽電池アレイ33を有する太陽電池回路30を備えている。現在の実例において、ガスタービン11は二つのコンプレッサ13a,13bから成り、これらのコンプレッサは後方で接続しており、空気入口12介して吸引される燃焼空気を圧縮し、かつ燃料を燃やすために第一燃焼室14まで燃焼空気を通過させる。生産される高温ガスは、第一タービン15内で膨張し、有用な電力を生産し、第二燃焼室16内で再度加熱され、かつ第二タービン17を通過する。コンプレッサ13a,13bとタービン15,17は、シャフト18を介して発電機19と接続している。
【0004】
第二タービン17から発生し、かつ依然として高温である排ガスは、熱回収蒸気発生器(HRSG)26を通過し、熱回収蒸気発生器において排ガスは、熱回収蒸気発生器26を備えた水−蒸気循環サイクル20のための蒸気を発生させる。熱回収蒸気発生器26を通って流れた後、排ガスは排ガス煙突27を通って排ガスラインを介して外部へ流れる。基本的に水−蒸気循環サイクル20は蒸気タービン21から形成されており、この蒸気タービンは発電機25,コンデンサ22,給水ボイラ24,給水ポンプ23および熱回収蒸気発生器26に接続している。熱エネルギーは太陽電池回路30から水−蒸気循環サイクル2へと補助的に供給され、この太陽電池回路は放射状集熱器37を備えた太陽電池アレイ33,ポンプ33および熱交換器32から形成されている。日光がほとんど無いかあるいは全く無い場合の期間中に運転するための太陽熱を蓄積するための蓄積手段は、当然ながら、太陽電池回路30に補助的に関連している。同様に、放射状集熱器37の代わりに、フレネルの複鏡またはヘリオスタットの装置(heliostat installations)を備えた集熱器を使用することが可能である。太陽熱は様々な点で水−蒸気循環サイクル20内に導入することができ、従って様々な解決手段として、図1には熱交換器32と熱回収蒸気発生器26の間に両方向矢印としてのただ一つの関係が示してある。
【0005】
以前の調査と研究によれば、少なからず使用が証明された技術でできているという理由ではないので、これらのような複合発電所は、技術的かつ経済的に可能であり、かつ価値があり、同時に太陽エネルギーの使用に適している。実際に、太陽熱複合発電所は以下のように列挙した多くの長所を有している。
・出願人からの、GT26のガスタービンの使用に基づいたKA26型の複合発電所のために、総合効率は約57%から65%に増大させることができ、太陽エネルギーの寄与は約15%だけである。従ってCOの排出は大幅に減る。
・従来の複合発電所(CCPSs)内にすでにある構成要素の大部分は、太陽蒸気の利用に使用され、従って(例えばISCCの場合の300ユーロ/MWhから180ユーロ/MWhまで)純粋な太陽発電所に比べて太陽熱複合発電所での電力コスト(CoE)は著しく減る。
・当てにできる供給からの大量の電力を一日24時間、一週間に7日、気候条件とは無関係に起こすことができる。
・発電所は太陽電池アレイが熱を放出すのと同時に運転を開始し、結果として最大使用
は太陽エネルギーで作られる。
【0006】
多数の研究と提案は、太陽電池アレイで発生した太陽蒸気が如何にして複合発電所内で統合できるのかということに関する従来技術においてすでになされてきた。
・特許文献1と特許文献2は、太陽電池アレイからの熱を使用している太陽蒸気を発生させるために、中間回路を提案している。
・その他の文献は複合発電所における放射状集熱器太陽電池アレイの統合経済的かつ電力の状況を研究している(非特許文献1)。
・蒸気を中間回路を介して太陽電池アレイから生成し、負荷変動を調節するために追い焚きバーナ(SF)を使用することも提案されている(非特許文献2)。
・特許文献3も負荷変動に適応させるための追い焚きバーナの使用を提案している。
・特許文献4には特に太陽熱複合発電所とガスタービンを備えた複合発電所を組合わせるための、以前の提案(上記参照)による数多くのオプションが記載されている。目的は複合発電所からソーラ機器を最小化し、かつ存在しているかあるいは改造された発電所を運転することにより総出力電力を最大化する。この発電所は過剰設計された熱回収蒸気発生器と蒸気タービンを備えており、追い焚きバーナはレベルが高い。
【0007】
複合発電所における太陽蒸気の含有が、同時に電力単位当たりのCOを減らす間、電力出力の増加の方向で確実なステップを意味するのは確かであるが、内部の研究により、公知の解決手段が効果的な燃料利用(と従ってCOの回避)と経済的パラメータ(電気コスト)に関して最適化されていないことがわかった。しかしながら、これらの側面は、例えば太陽熱複合発電所の場合、これらのような新しい技術の受入れおよび実施のためには特に重要である。
【0008】
すでに述べたように、発電所にかかる負荷に合わせおよび/または出力電力を増やすために、従来技術は追い焚きバーナに基づいている。しかしながら、蒸気タービンにより電力を発生させるための補助的蒸気を生産するために、負い焚きバーナは熱回収蒸気発生器(図1の追い焚きバーナ)において、(例えばチャンネルバーナによる)補助的燃料の燃焼を必要とする。このことは電力出力と運転の融通性の両方を明らかに増大させるが、熱力学の考慮は、これが発電所の総合効率を減らすことを指し示している(なぜなら補助的熱は比較的低温で生産されるからである)。このことは特定のCO放出も燃料コストもどちらも最小化されないことを意味する。追い焚きバーナは約10%だけ電力発生を増大させることは明らかである。しかしながら同時に、典型的太陽熱複合発電所からのCOの特定の出力は、約3%だけ増大する(追い焚きバーナを使用しないで350kgCO/MW,追い焚きバーナを使用して360kgCO/MW)。
【0009】
太陽電池アレイおよび追い焚きバーナからの補助的蒸気を処理できるように、従来技術は、(50%までの分)熱回収蒸気発生器(HRSG)と蒸気タービンの両方の過剰設計を前提としている。この結果として投資コストが高くなる。さらに発電所がフルパワーで運転されない場合(すなわち追い焚きおよび/または太陽熱が完全な100%に達していない場合)、総合効率は下がる。なぜなら運転は公称の運転ポイントでは起こらないからである。
【0010】
すでに引用された特許文献4は、実際現存する発電所の改造を提案しており、この発電所は広い範囲の追い焚きバーナ(15〜50%)をすでに備えており、過剰設計された熱回収蒸気発生器と過剰設計された蒸気タービンを使用している(すなわち熱回収蒸気発生器と蒸気タービンはガスタービンと補助的に太陽熱および追い焚きバーナから100%排ガス熱で運転するために設計されている。
【0011】
図2には、ガスタービンにかかる相対負荷と対比して描かれた総合出力電力(NWelでの総合総計出力)のこの状況のためのダイヤグラムが示してある(%で表したGT相対負荷)。破線は計画された設計スペースDS1に境界を設けている。発電所は(図2の運転ポイントA’で運転している)太陽電池アレイ(+110MW)と追い焚きバーナ(+110MW)からのピーク電力の消費のために設計しなければならないが、(日中と夜間の間の変化および大気と天気の条件の変化により)発電所は、100%の太陽熱を受けることはほとんど滅多にない。この設計は、いつ100%未満の太陽光が提供されても、発電所が過剰設計されており、かつ計画された(最適な)運転ポイント(すなわちA’とC’の間で)から離れて運転されていることを意味する。
【0012】
太陽エネルギーはまったくコストがかからないが、装備、基盤施設、土地および他の太陽エネルギーの使用に必要な物(例えば太陽電池アレイにおいて鏡を洗浄するための水)は高価である。従って、太陽熱複合発電所の太陽熱利用システムを単に最大化することは、環境の保護、性能および経済的側面の間のバランスに関する最適な解決手段を必ずしも表しているわけではない。相応する方法で、前に記載した発電所は効率を最大化しないが、同時に経済的かつ環境のコストを最小化し、従ってさらに太陽エネルギーの全能力も活用しない。実際、以前の解決手段は、太陽電池構成要素を最小化するためにだけ考えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0260314号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0174622号明細書
【特許文献3】国際特許出願公開第95/11371号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0127647号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Dersch et al.,”Through Integration into Power Plants“, Energy, vol.29, pages 947 - 959, 2004
【非特許文献2】Hosseini et al., ”Technical & economic assessment of the ISCC power plants in Iran“, Renewable Energy, vol. 30, pages 1541- 1555, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って本発明の課題は、公知の方法の短所を避け、かつ特に経済、性能および環境上の見地に対して等しい重要性をもたらすことにより認められる太陽熱複合発電所を運転するための方法と、この方法を実施するための太陽熱複合発電所を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は請求項1および7の特徴の全体により達せられる。水−蒸気循環サイクルがガスタービンにかかる総負荷(full load)に対してだけ設計されていること、および太陽電池アレイから水−蒸気循環サイクル内に補助の電力を供給する場合に、ガスタービンにかかる負荷が、太陽電池アレイから補助的に供給される電力を基にして、太陽熱複合発電所の総出力電力がほぼ一定のままであるような程度まで、各々の場合において減ることが本発明による方法にとって真髄である。
【0017】
本発明による方法の改良点の一つは、太陽熱複合発電所が部分負荷に減少されていると、太陽電池アレイから補助的に供給される電力が維持され、ガスタービンにかかる負荷が相応して減ることを特徴とする。
【0018】
太陽電池アレイにかかる全負荷は、各々の場合において水−蒸気循環サイクル内に供給されるのが好ましく、その場合、日中の間に利用できる平均電力は太陽電池アレイにかかる全負荷として太陽電池アレイから引出されるのが有利である。
【0019】
本発明による方法の別の改良点は、追い焚きバーナが水−蒸気循環サイクル内での蒸気発生のために設けられていること、および追い焚きバーナが過渡的段階において一時的にだけ使用されることを特徴とする。
【0020】
本発明による方法の場合、この方法自体が特に部分負荷際に効率が高いので、二段燃焼部(sequential combustion)を備えたガスタービンがガスタービンとして使用されるのが好ましい。
【0021】
本発明による太陽熱複合発電所は、蒸気タービンと、ガスタービンからの高温排ガスが流れる熱回収蒸気発生器を有する水−蒸気循環サイクルを備えており、その際、熱が太陽電池アレイから水−蒸気循環サイクルに補助的に供給される様式の太陽熱複合発電所において、前記水−蒸気循環サイクルが、ガスタービンにかかる全負荷のためにだけ構成されていること、および制御装置がガスタービンのために設けられており、太陽熱複合発電所の総出力電力がほぼ一定のままであるように、太陽電池アレイから補助的に供給される電力に基づいて、制御装置が各々の場合において、ガスタービンにかかる負荷を制御していることを特徴とする。
【0022】
本発明による太陽熱複合発電所の改良点の一つは、ガスタービンが二段燃焼部を備えたガスタービンとして使用されていることを特徴とする
【0023】
ガスタービンにかかる全負荷における状態でかつ太陽電池アレイからのいかなる補助的電力も無い状態での太陽熱複合発電所の出力電力が、太陽電池アレイにかかる全負荷における状態でかつスタービンにかかる全負荷のたった85〜90%の状態での出力電力と同じであるように、水−蒸気循環サイクルと太陽電池アレイが設計されているのが好ましい。
【0024】
別の改良点は、太陽電池アレイが放射状の集熱器から形成されていること、および水−蒸気循環サイクル内のフレッシュ蒸気温度(fresh-steam temperature)を上昇させるための手段が設けられていることを特徴とする。
【0025】
本発明を代表的な実施例に関して、また図について以下の文章の中で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のための基礎に使用できるような、太陽熱複合発電所の基本設計を示す図である。
【図2】追い焚きバーナを用いた従来の発電所のための運転ポイントと設計スペースを示すために、ガスタービンにかかる負荷と対比してプロットされた太陽熱複合発電所の出力電力のダイヤグラムを使用した図である。
【図3】本発明の代表的一実施例による、方法と発電所のための図2に匹敵するダイヤグラムである。
【図4】図2および3で示したような、設計スペースと運転ポイントの比較を示すために、図2に相当したダイヤグラムを使用した図である。
【図5】本発明による方法を実施するためのガスタービン制御系の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0027】
本発明は太陽熱複合発電所の基本設計のための斬新な構想に関し、この構想により総合効率が最大限に活用される(メガワット当たり最小のCO排出量)一方で、同時に総コストは最小になる(最小の発電コスト)。
【0028】
この構想の真髄は、電力、効率そして経済変数の面での、太陽熱と燃料(天然ガス)の最も効率的な利用である。
・追い焚きバーナの使用は、連続運転中は避けるのが常である。追い焚きバーナ(34)はせいぜい
過渡的な相の間暫定的に使用される。
・水−蒸気循環サイクル(20)は、ガスタービン(11)にかかる負荷が、(例えば約120バールあるいは標準総負荷圧の約75%に対して)100%である場合に、熱回収蒸気発生器(26)内の低ピーク圧のために設計されている。相応する運転ポイントは図3の参照符号Aで示してある。全体的に、過剰設計の極めて低いレベルに相当する。しかしながら、熱回収蒸気発生器、シャフト、蒸気タービン、変圧器および高圧スイッチパネル(high-voltage switchpanel)が使用される。言い換えれば、これらは過剰設計ではない

・図3に示したような水−蒸気循環サイクル(20)は、100%の太陽熱およびガスタービンにかかる85〜90%の負荷のために設計されている。これは(88%のガスタービン発電のために示した)図3に注釈した運転ポイントCに相当する。
・太陽電池アレイ(33)は最大レベルのためにではなく、太陽光発電手段(solar means)
により発生した電力のコストのために設計されている。
・太陽光発電手段により発生された電力とガスタービン−蒸気タービン複合発電所(CCPS)からの電力は、この結果として全負荷での出力電力がほぼ一定である(出力電力が図3のポイントCとAの間でほぼ一定である)ように設定されている。すなわちポイントAにおける全負荷出力(cc,ベースロード)でのガスタービン−蒸気タービン複合発電所の出力電力と、ポイントCでの太陽電池アレイを備えた複合発電所の出力電力(太陽光+cc,部分負荷)と、ポイントAとCの間のガスタービン負荷ポイントでの出力電力(太陽光+cc,部分負荷)は、破線で示したようにほぼ同じである。太陽光発電手段により生産される電力出力の変化は、ガスタービンにかかる適当な負荷の変化により補正される。極端な状態で(例えば夜間でかつ備蓄が無い状態)、発電所は100%負荷のガスタービンにより運転される。目的が部分負荷だけの発電所を運転することである場合、太陽光発電の電力(the solar component)はその全体に対して維持され、ガスタービンからの電力だけが低減される。この構想は、“ガスタービン制御”とみなすことができる。
太陽光発電の全負荷は、太陽電池アレイの最大可能な太陽電力に相当する必要はない。実際、太陽光発電の全負荷は日中に達成可能な平均電力に相当してもよい。太陽電池アレイの最大可能な太陽電力は、総時間の所定の期間の間にだけ達する。平均電力を基準変量として使用すると、発電所は長い期間の間、公称運転ポイント近くで運転する。
【0029】
本発明による構想の長所は、図3から明らかである。
・一定の出力電力は常にガスタービンの単純な制御により達せられる。
総合効率はガスタービンにかかる負荷の関数としてわずかに変動するにすぎない。例えば
、ポイントBでの効率η(cc,部分負荷)は、ポイントAでの効率η(cc,ベースロード)に比べて約0.1%低いだけである。発電所の効率は、太陽電力が最大限使用されると増大する。例えば、ポイントCでの効率η(太陽光+cc,部分負荷)は、ポイントAでの効率η(cc,ベースロード)に比べて6.5%高い。
【0030】
本発明による構想の長所は、従来の解決手段と直接比べられる場合に、さらにいっそう明瞭になる。従来タイプの水−蒸気循環サイクルが設計領域DS1(すなわち100%ガスタービン負荷+100%追い焚きバーナ)におけるポイントA’のために設計されているが、太陽エネルギーが不足しているために、水−蒸気循環サイクルは実際のところポイントB’でしか相当な長さの時間(約50%)の運転を行わないことが図4からわかる。さらにたとえ効率を下げる追い焚きバーナを停止したとしても、従来の発電所は、発電所のコストが高いので電気代が高くなるポイントC’で運転する。
【0031】
対照的に、本発明はより狭い出力電力範囲(図4の設計領域DS2)をカバーする発電所の設計を提案しているが、それにより総合効率は高くなり、かつ電気代は下がる。
【0032】
ここで提案した新しい構想の別の長所は、図1に示したように二段燃焼を用いたガスタービンを使用した場合、ガスタービンにかかる負荷が100%から88%に低減されると、第二燃焼室(図1の符号16)から運転下流側のタービン入口温度(TIT)が下がることである。このことは燃焼室およびタービン(図1の符号17)にかかる熱負荷が減少すること、および図3に示したように太陽熱が工程内にますます増えるように導入されると燃焼室およびタービンの寿命が長くなることを意味する。
【0033】
図5には本発明による方法を実施するためのガスタービン制御系の一実施例が示してある。水−蒸気循環サイクル20はガスタービン11と太陽電池アレイ33の双方から熱を受取り、かつ出力時に電力を放出する。同様にガスタービン11はその発電機でもって電力を発生する。双方の電力とも、電力センサ36により測定され、値はガスタービン11のための制御装置35に渡される。同時に制御装置35は太陽電池アレイ33により生産された太陽熱の値を太陽電池アレイから受取る。太陽熱が増えると、制御装置35によりガスタービン11にかかる負荷は減少し、逆に出力電力は全体的にほぼ一定に維持される。
【0034】
太陽光発電に依存しているコストのかなりの割合は、熱交換器(図1の参照符号32)によるものと見られており、この熱交換器は太陽電池アレイと水−蒸気循環サイクルの間の連結要素を形成する。太陽光電力コストを分析すると、すなわち太陽熱回収兼処理のための補足的発電所部分によりかかるコストを分析すると、熱交換器に対するコストが急激に上昇するために、太陽熱複合発電所に対する太陽エネルギーの貢献が限定されているはずであることを覚えておかねばならない。重要なのは、このような限定が従来技術において提案された解決手段の場合に比べて少ないことである。
【0035】
放射状集熱器(37)が太陽電池アレイ(図1の参照符号33)に使用されると、熱油は太陽電池回路(solar circuit)(30)内の放射状集熱器(37)を通って流れ、太陽水蒸気は熱回収蒸気発生器(26)の高圧過熱器内において380℃で供給することができる。しかしながら、蒸気タービン(21)に対する入口でのフレッシュ蒸気の温度が80℃よりも多く下がったのはそのためであり、従って発電所の効率は低下し、電力コストは増大する。従って、これを達するために、新水蒸気温度を580℃へと上げることは有利であり、熱回収蒸気発生器の高圧区間の表面積は、早々して拡張される。
【0036】
さらに、二段燃焼部を備えたガスタービンが夜間低負荷の範囲で(低負荷運転コンセプト(LLOC))使用されると、発電所を運転するのが有利である。電力の販売が価格が低いと、これにより電力の発生のための燃料の消費を避けられる。その場合、太陽エネルギーが(日中)再度利用と同時に出力電力を増やすことができる。
【0037】
さらに、補助的太陽エネルギー(‘ソーラーブースト’)を加えたガスタービン/蒸気タービン複合発電所部分において100%負荷のための発電所を設計することは可能である。その際、発電所の構成要素(発電器、シャフト、変圧器、高圧スイッチパネル)は、より高い電力を得るために設計されている。
【0038】
図3に示したようなガスタービンの調整に加えて、追い焚きバーナも調整できる。二つのタイプの調整の間の移行は円滑になる。
【符号の説明】
【0039】
10 太陽熱複合発電所
11 ガスタービン
12 空気入口
13a コンプレッサ
13b コンプレッサ
14 燃焼室
15 タービン
16 燃焼室
17 タービン
18 シャフト
19 発電機
20 水−蒸気循環サイクル
21 蒸気タービン
22 コンデンサ
23 給水ポンプ
24 給水ボイラ
25 発電機
26 熱回収蒸気発生器(HRSG)
27 排ガス煙突
28 接続部
29 排ガスライン
30 太陽電池回路
31 ポンプ
32 熱交換器
33 太陽電池アレイ
34 追い焚きバーナ
35 制御装置
36 電力センサ
37 放射状集熱器
DS1 設計スペース
DS2 設計スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱複合発電所(10)を運転するための方法であって、
水−蒸気循環サイクル(20)を備えており、
この水と蒸気の回路が、蒸気タービン(21)とガスタービン(11)からの高温排ガスが流れる熱回収蒸気発生器(26)を有しており、
その際、水−蒸気循環サイクル(20)が、太陽電池アレイ(33)から熱を補助的に供給される様式の
方法において、
前記水−蒸気循環サイクル(20)が、ガスタービン(11)にかかる全負荷のためにだけ構成されていること、
補助的な負荷を太陽電池アレイ(33)から水−蒸気循環サイクル(20)内に供給する場合に、太陽熱複合発電所(10)の総出力電力がほぼ一定のままである程度に、太陽電池アレイ(33)から補助的に供給される電力に基づいて、ガスタービン(11)にかかる負荷が各場合において低減されることを特徴とする方法。
【請求項2】
太陽熱複合発電所(10)が部分負荷に減少されていると、太陽電池アレイ(33)から補助的に供給される電力が維持され、ガスタービン(11)にかかる負荷が相応して減ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
太陽電池アレイ(33)にかかる全負荷が、各々の場合において水−蒸気循環サイクル(20)内に供給されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
日中の間に利用できる平均電力が、太陽電池アレイ(33)にかかる全負荷として太陽電池アレイ(33)から引出されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
追い焚きバーナ(34)が水−蒸気循環サイクル(20)内での蒸気発生のために設けられていること、および追い焚きバーナ(34)が過渡的段階において一時的にだけ使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
二段燃焼部(14〜17)を備えたガスタービンがガスタービン(11)として使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法を実施するための太陽熱複合発電所(10)であって、
太陽熱複合発電所(10)が蒸気タービン(21)とガスタービン(11)からの高温排ガスが流れる熱回収蒸気発生器(26)を有する水−蒸気循環サイクル(20)とを備えており、
その際、熱が太陽電池アレイ(33)から水−蒸気循環サイクル(20)に補助的に供給される様式の太陽熱複合発電所において、
前記水−蒸気循環サイクル(20)が、ガスタービン(11)にかかる全負荷のためにだけ構成されていること、および
制御装置(35)がガスタービン(11)のために設けられており、
太陽熱複合発電所(10)の総出力電力がほぼ一定のままであるように、太陽電池アレイ(33)から補助的に供給される電力に基づいて、制御装置(35)が各々の場合において、ガスタービン(11)にかかる負荷を制御していることを特徴とする太陽熱複合発電所(10)。
【請求項8】
ガスタービン(11)が二段燃焼部(14〜17)を備えたガスタービンとして使用されていることを特徴とする請求項7に記載の太陽熱複合発電所。
【請求項9】
ガスタービン(11)にかかる全負荷における状態でかつ太陽電池アレイ(33)からのいかなる補助的電力も無い状態での太陽熱複合発電所(10)の出力電力が、太陽電池アレイにかかる全負荷における状態でかつスタービン(11)にかかる全負荷のたった85〜90%の状態での出力電力と同じであるように、水−蒸気循環サイクル(20)と太陽電池アレイ(33)が設計されていることを特徴とする請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
太陽電池アレイ(33)が放射状の集熱器(37)から形成されていること、および水−蒸気循環サイクル(20)内のフレッシュ蒸気温度を上昇させるための手段が設けられていることを特徴とする請求項7または8に記載の太陽熱複合発電所。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−220329(P2011−220329A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−65257(P2011−65257)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】