説明

太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物および太陽熱集熱用反射板の製造方法

【課題】耐熱性、耐水性等の耐久性に優れ、密着性、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性等に優れた塗膜を表面に有する太陽熱集熱用反射板を高い生産性で製造する。
【解決手段】フルオロオレフィンに基づく単位(α1)と側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位(α2)とを有する含フッ素共重合体(A)、および光反応開始剤(B)を含有することを特徴とする太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。また、反射基板の表面に、前記太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、光照射を行って該塗布層を硬化させて塗膜を形成する太陽熱集熱用反射板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物および太陽熱集熱用反射板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題の観点から、化石燃料の使用量を抑える試みが多くなされており、その一つとして太陽熱を利用する太陽熱集熱システムが知られている。太陽熱集熱システムとしては、例えば、水、無機塩等の熱媒を備えた集熱管と、太陽光を反射して前記集熱管に集める反射鏡とを有する太陽熱集熱システムが挙げられる。該太陽熱集熱システムでは、太陽熱集熱用反射板で太陽光を反射して集熱管に集め、その太陽光の熱で集熱管の熱媒を加熱することで熱エネルギーを得る。
【0003】
太陽熱集熱用反射板としては、例えば、ガラス基板と、該ガラス基板上に形成された銀膜等の反射層とからなる反射基板の反射層上に、塗膜(裏止め塗膜)が形成された鏡が広く用いられている。裏止め塗膜は、反射層の腐食および変質の抑制を目的として形成される。裏止め塗膜の形成には防錆塗料が用いられる。防錆塗料としては、アルキッド樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料等が挙げられる。しかし、前記防錆塗料による裏止め塗膜の形成は、塗料の乾燥、硬化に時間を要するため、鏡の生産性が低下する。また、塗料の乾燥、硬化に大量の熱エネルギーを必要とするため、生産コストが高騰する。
【0004】
屋内で使用される鏡では、塗料の主成分としてアクリル系モノマーおよびアクリル系オリゴマーを使用し、紫外線や電子線の照射によって裏止め塗膜を形成する方法が示されている(特許文献1、2)。該方法は、硬化速度が速く生産性の面で有利である。しかし、該方法は、屋内で使用される鏡を想定しているため、太陽熱集熱用反射板にそのまま適用すると以下の問題を生じる。太陽熱集熱用反射板は、砂漠等の苛酷な環境下で長期間使用される。そのため、(1)熱による膨張、収縮によって塗膜が剥離する、(2)塗膜の吸湿、吸水に起因する反射層の酸化によって反射率が低下する、(3)砂等の衝突や太陽光によって塗膜が劣化する、といった問題がある。
このように、太陽熱集熱用反射板に形成する塗膜には、生産性に優れ、製造工程の管理が容易であることに加え、防湿性、耐水性等の耐久性に優れ、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性等に優れていることが求められる。
【0005】
一方、太陽熱集熱用反射板としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の金属からなる反射基板の表面に、鏡面仕上げ面(反射面)を形成した太陽熱集熱用反射板も広く用いられている。該太陽熱集熱用反射板は、高い反射率を長時間維持する目的で、反射面を保護する試みがなされている。例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる反射基板上に、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体樹脂を被覆して保護層を形成した太陽熱集熱用反射板(特許文献3)や、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる反射基板上に、ポリシロキサンのゾル−ゲルラッカーからなる保護層を形成した太陽熱集熱用反射板(特許文献4)が知られている。
しかし、これらの太陽熱集熱用反射板は、耐候性が充分とは言えず、また塗膜の機能と生産性の両立の面でも充分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭54−100414号公報
【特許文献2】特開昭59−174546号公報
【特許文献3】特開昭58−64452号公報
【特許文献4】特表2003−532925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐熱性、耐水性等の耐久性に優れ、密着性、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性等に優れた塗膜を表面に有する太陽熱集熱用反射板を高い生産性で製造できる太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物、および、該塗料組成物を使用した太陽熱集熱用反射板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]フルオロオレフィンに基づく単位(α1)と側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位(α2)とを有する含フッ素共重合体(A)、および光反応開始剤(B)を含有することを特徴とする太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
[2]前記エチレン性不飽和基が、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、マレオイル基、スチリル基、シンナモイル基からなる群より選ばれる1種以上である[1]に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
[3]前記含フッ素共重合体(A)が、アルキルビニルエーテル類、アルキルビニルエステル類、アルキルアリルエーテル類、α−不飽和環状エーテル類および(メタ)アクリル酸エステル類からなる群から選ばれる1種以上の単量体に基づく単位(α3)を有する[1]または[2]に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
[4]1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有し、かつ分子内にフッ素原子を有さない化合物(C)を含有する[1]〜[3]のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
[5]溶媒(D)を含有する[1]〜[4]のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
[6]顔料(F)を含有する[1]〜[5]のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
[7]前記含フッ素共重合体(A)が、側鎖にエチレン性不飽和基以外の架橋性基を有する単位(α4)を有する重合体である[1]〜[6]のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
[8]前記塗料組成物が、前記単位(α4)の架橋性基と反応する硬化剤(E)を含有する[7]に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
[9]反射基板の表面に、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、光照射を行って該塗布層を硬化させて塗膜を形成する太陽熱集熱用反射板の製造方法。
[10]反射基板の表面に、[7]または[8]に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、下記工程(x)および工程(y)を行って該塗布層を硬化させて塗膜を形成する太陽熱集熱用反射板の製造方法。
(x)光照射によって、含フッ素共重合体(A)中のエチレン性不飽和基を反応させる工程。
(y)含フッ素共重合体(A)中のエチレン性不飽和基以外の架橋性基を反応させる工程。
[11]反射基板が、一方の面に金属および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる反射層を有するガラス基板からなる反射基板(I)である[9]または[10]に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
[12]反射基板が、金属からなる基板の反射面側が鏡面仕上げになっている反射基板(II)である[9]または[10]に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
[13]反射基板が、金属からなる基板の反射面側に金属および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる反射層が形成された反射基板(III)である[9]または[10]に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
[14]前記金属からなる基板が、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる基板である[12]または[13]に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物は、耐熱性、耐水性等の耐久性に優れ、密着性、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性等に優れた塗膜を表面に有する太陽熱集熱用反射板を高い生産性で製造できる。
また、太陽熱集熱用反射板の製造方法によれば、耐熱性、耐水性等の耐久性に優れ、密着性、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性等に優れた塗膜を表面に有する太陽熱集熱用反射板を高い生産性で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の太陽熱集熱用反射板の製造工程を示した断面図である。
【図2】本発明の太陽熱集熱用反射板の製造工程を示した断面図である。
【図3】本発明の太陽熱集熱用反射板の製造工程を示した断面図である。
【図4】本発明の太陽熱集熱用反射板の製造工程を示した断面図である。
【図5】本発明の太陽熱集熱用反射板の製造工程を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明においては、単量体が重合することで直接形成される重合単位と、単量体の重合によって形成される重合単位の一部を化学変換することで得られる重合単位とを総称して「単位」という。また、本明細書においては、(メタ)アクリル酸との記載は、アクリル酸とメタクリル酸の少なくとも一方を示す。(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル基についても同様である。
【0012】
<太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物>
本発明の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物(以下、単に「塗料組成物」ともいう。)は、フルオロオレフィンに基づく単位(α1)と側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位(α2)とを有する含フッ素共重合体(A)、および光反応開始剤(B)を必須成分として含む塗料組成物である。また、本発明の塗料組成物は、含フッ素共重合体(A)および光反応開始剤(B)に加えて、後述する、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有し、かつ分子内にフッ素原子を有さない化合物(C)、溶媒(D)、硬化剤(E)、および顔料(F)を含有してもよく、さらに後述する他の成分を含有してもよい。
【0013】
[含フッ素共重合体(A)]
本発明における含フッ素共重合体(A)は、後述する光反応開始剤(B)の存在下、光照射により硬化して塗膜を形成できる含フッ素共重合体である。含フッ素共重合体(A)は、フルオロオレフィンに基づく単位(α1)と、側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位(α2)とを有する。
【0014】
(単位(α1))
単位(α1)は、フルオロオレフィンに基づく単位である。
フルオロオレフィンは、オレフィン炭化水素(一般式C2n)の水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された化合物である。
フルオロオレフィンの炭素数は、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
フルオロオレフィンにおけるフッ素原子の数(以下、「フッ素付加数」という。)は、2以上が好ましく、3〜4がより好ましい。フッ素付加数が2以上であれば、塗膜の耐候性が向上する。フルオロオレフィンにおいては、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
【0015】
フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンおよびフッ化ビニルからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンがより好ましい。
含フッ素共重合体(A)に含まれる単位(α1)は、1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
単位(α1)としては、フルオロオレフィンを重合することで直接形成される単位が好ましい。
【0016】
(単位(α2))
単位(α2)は、側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位である。
エチレン性不飽和基を有することによって含フッ素共重合体(A)は、後述する光反応開始剤(B)の存在下、光照射により硬化反応が進行する。エチレン性不飽和基は、反応性が高く、硬化速度が速い。また、塗布、硬化の際に作業環境(特に、水分)の影響を受けない。そのため、塗布から硬化完了までの時間が短縮でき、優れた生産性が得られる。また、塗料組成物を一液化することができ、また塗装中に塗料組成物が増粘しないことから、カーテンフロー性が良好な点も有利である。さらに、熱による硬化反応と異なり冷却工程を設けなくてもよいため、ガラス基板を有する太陽熱集熱用反射板を製造する場合に、急冷によってガラス基板が割れることがない点でも有利である。
【0017】
前記エチレン性不飽和基としては、光照射による硬化がより速やかに進行する点から、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、マレオイル基、スチリル基およびシンナモイル基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0018】
単位(α2)としては、官能基(水酸基、カルボキシル基等。)を有する単量体に基づく前駆体の単位(α2’)の該官能基を、重合後に化学変換してエチレン性不飽和基を導入した単位が好ましい。例えば、以下の単位(α21)〜(α28)が挙げられる。なかでも、光照射による硬化がより速やかに進行する点から、単位(α22)、単位(α26)、単位(α27)が特に好ましい。
単位(α21):水酸基を有する単量体を重合して形成される単位の水酸基に、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル化合物をエステル化反応させて得られる単位。
単位(α22):水酸基を有する単量体を重合して形成される単位の水酸基に、エチレン性不飽和基を有するイソシアネート化合物を付加反応させて得られる単位。
単位(α23):水酸基を有する単量体を重合して形成される単位の水酸基に、(メタ)アクリル酸クロライドを反応させて得られる単位。
単位(α24):水酸基を有する単量体を重合して形成される単位の水酸基に、無水マレイン酸を反応させて得られる単位。
単位(α25):水酸基を有する単量体を重合して形成される単位の水酸基に、ビニルエーテル化合物またはビニルエステル化合物を反応させて得られる単位。
単位(α26):水酸基を有する単量体を重合して形成される単位の水酸基に、(メタ)アクリル酸無水物を反応させて得られる単位。
単位(α27):カルボキシル基を有する単量体を重合して形成される単位のカルボキシル基に、エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を反応させて得られる単位。
単位(α28):カルボキシル基を有する単量体を重合して形成される単位のカルボキシル基に、ビニルエーテル基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られる単位。
含フッ素共重合体(A)が有する単位(α2)は、1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0019】
前記単位(α21)〜(α28)を形成する方法としては、下記方法(1)〜(8)が好ましい。
(1)水酸基を有する単量体を共重合して得られる含フッ素共重合体の水酸基に、エチレン性不飽和基を有するカルボキシル化合物をエステル化反応させる(例えば、特開2005−139363号公報参照)。
(2)水酸基を有する単量体を共重合して得られる含フッ素共重合体の水酸基に、エチレン性不飽和基を有するイソシアネート化合物を付加反応させる(例えば、特開昭62−25104号公報)。
(3)水酸基を有する単量体を共重合して得られる含フッ素共重合体の水酸基に、(メタ)アクリル酸クロライドを反応させる(例えば、特開昭64−51418号参照)。
(4)水酸基を有する単量体を共重合して得られる含フッ素共重合体の水酸基に、無水マレイン酸を反応させる(例えば、特開昭59−41315号公報参照)。
(5)水酸基を有する単量体を共重合して得られる含フッ素共重合体の水酸基に、ビニルエーテル化合物またはビニルエステル化合物を反応させる(例えば、特開2001−220364号公報参照)。
(6)水酸基を有する単量体を共重合して得られる含フッ素共重合体に、(メタ)アクリル酸無水物を反応させる。
(7)カルボキシル基を有する単量体を共重合して得られる含フッ素共重合体のカルボキシル基に、エチレン性不飽和基を有するエポキシ化合物を反応させる(例えば、特開平5−279435号公報参照)。
(8)カルボキシル基を有する単量体を共重合して得られる含フッ素共重合体のカルボキシル基に、ビニルエーテル基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させる(特開2005−202134号公報参照)。
【0020】
水酸基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のエチレングリコールモノビニルエーテル類;ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類;ヒドロキシエチルビニルエステル等のヒドロキシアルキルビニルエステル類;ヒドロキシエチルアリルエステル等のヒドロキシアルキルアリルエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類等が挙げられる。
カルボキシル基を有する単量体としては、10−ウンデセン酸、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;ビニルオキシ吉草酸、3−ビニルオキシプロピオン酸、3−(2−ビニルオキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニルオキシエトキシカルボニル)プロピオン酸等の飽和カルボン酸ビニルエーテル類;アリルオキシ吉草酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸等の飽和カルボン酸アリルエーテル類;3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸等のカルボン酸ビニルエーテル類;アジピン酸モノビニル、コハク酸モノビニル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル等の飽和多価カルボン酸モノビニルエステル類;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸類またはその分子内酸無水物;イタコン酸モノエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル等の不飽和カルボン酸モノエステル類等が挙げられる。
【0021】
(単位(α3))
本発明における含フッ素共重合体(A)は、太陽熱集熱用反射板における塗膜と、該塗膜が形成される基材との密着性をより一層向上させる点から、単位(α1)および単位(α2)に加えて、アルキルビニルエーテル類、アルキルビニルエステル類、アルキルアリルエーテル類、α−不飽和環状エーテル類、(メタ)アクリル酸エステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(以下、「単量体(a3)」という。)に基づく単位(α3)を有することが好ましい。
【0022】
アルキルビニルエーテル類としては、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル等が挙げられる。
アルキルビニルエステル類としては、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
アルキルアリルエーテル類としては、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等が挙げられる。
α−不飽和環状エーテル類としては、2,3−ジヒドロフラン、4−メチル−2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル等が挙げられる。
【0023】
前記単量体(a3)のなかでも、塗膜の耐擦傷性、耐チッピング性、柔軟性の点から、炭素数1〜10のアルキル基を有する単量体が好ましく、エチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基を有する単量体がより好ましく、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルがさらに好ましく、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルが特に好ましい。
含フッ素共重合体(A)に含まれる単位(α3)は、1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0024】
(単位(α4))
本発明における含フッ素共重合体(A)は、単位(α1)および単位(α2)に加えて、側鎖にエチレン性不飽和基以外の架橋性基を有する単位(α4)を有することが好ましい。これにより、太陽光照射面が凹状となるように湾曲した反射基板の表面に塗膜を形成する場合に光の照射強度にばらつきが生じたとしても、光の照射強度が低い部分は単位(α4)中の架橋性基によって硬化させることにより、硬化不良が発生することを容易に抑制できる。
エチレン性不飽和基以外の架橋性基とは、エチレン性不飽和基以外で、該架橋性基同士または硬化剤との反応により化学結合(架橋)を形成できる基である。エチレン性不飽和基以外の架橋性基としては、架橋性基として作用するだけでなく、塗膜と該塗膜を形成する基材(反射層、もしくは、本発明の塗料組成物により形成する塗膜と反射層の間に形成された塗膜層)との密着性を向上させる点から、水酸基、アルコキシシリル基が好ましい。
【0025】
単位(α4)としては、エチレン性不飽和基以外の架橋性基を有する単量体(以下、「単量体(a4)」という。)を重合することで直接形成される単位が好ましい。単量体(a4)としては、水酸基を有する単量体(以下、「単量体(a41)」という。)、アルコキシシリル基を有する単量体(以下、「単量体(a42)」という。)が好ましい。
【0026】
単量体(a41)としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル等のエチレングリコールモノビニルエーテル類;ヒドロキシエチルアリルエーテル、ヒドロキシブチルアリルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類;ヒドロキシエチルビニルエステル、ヒドロキシブチルビニルエステル等のヒドロキシアルキルビニルエステル類;ヒドロキシエチルアリルエステル、ヒドロキシブチルアリルエステル等のヒドロキシアルキルアリルエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類等が挙げられる。
なかでも、単量体(a41)としては、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類が好ましく、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルがより好ましく、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルがさらに好ましい。
【0027】
単量体(a42)としては、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。また、イソシアネート基と、アルコキシシリル基を有する化合物を、単量体(a41)と反応させることで得られる単量体も挙げられる。
なかでも、単量体(a42)としては、ビニルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物を、前記単量体(a41)と反応させることで得られる単量体が好ましく、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物を、前記単量体(a41)と反応させることで得られる単量体がより好ましい。
【0028】
また、単位(α4)は、水酸基、カルボキシル基等の反応性を有する基を有する単量体を用いて重合を行った後、得られた重合体の中の該反応性を有する基の一部または全部を化学変換してエチレン性不飽和基以外の架橋性基を導入する方法により形成してもよい。例えば、水酸基を有する単量体を用いて重合を行った後、得られた重合体の水酸基に、イソシアネート基とアルコキシシリル基を有する化合物を反応させる方法、カルボキシル基を有する単量体を用いて重合を行った後、得られた重合体のカルボキシル基に、ジオール化合物を反応させる方法等が挙げられる。
含フッ素共重合体(A)に含まれる単位(α4)は、1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0029】
さらに、含フッ素重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、単位(α1)〜単位(α4)以外の単位を有してもよい。例えば、形成される塗膜の柔軟性を向上させる目的で、エチレン、イソブチレン等のオレフィン類に基づく単位を有してもよい。また、塗膜の難燃性を付与する目的で、ビニルリン酸、ビニルリン酸ジメチルエステル等のリン原子を有する単量体に基づく単位を有してもよい。
【0030】
含フッ素共重合体(A)としては、単位(α1)および単位(α2)を必須の単位として有し、さらに単位(α3)および単位(α4)の少なくとも一方を有する共重合体が好ましい。
【0031】
含フッ素共重合体(A)としては、以下の組み合わせの単位を有する含フッ素共重合体(A1)が好ましい。
(A1)テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンおよびフッ化ビニルからなる群から選ばれる1種以上に基づく単位(α1)と、
側鎖のエチレン性不飽和基が、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、マレオイル基、スチリル基およびシンナモイル基からなる群から選ばれる1種以上である単位(α2)と、
アルキルビニルエーテル類に基づく単位(α3)と、
単量体(a41)に基づく単位(α4)とを有する含フッ素共重合体。
【0032】
さらに、以下の組み合わせの単位を有する含フッ素共重合体(A11)が好ましい。
(A11)テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンの少なくとも一方に基づく単位(α1)と、
側鎖のエチレン性不飽和基が(メタ)アクリロイル基である単位(α2)と、
2−エチルへキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテルおよびシクロヘキシルビニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上に基づく単位(α3)と、
2−ヒドロキシエチルビニルエーテルおよび4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの少なくとも一方に基づく単位(α4)とを有する含フッ素共重合体。
【0033】
含フッ素共重合体(A)中の単位(α1)の割合は、含フッ素共重合体(A)における全単位の合計に対して、20〜80モル%が好ましく、30〜70モル%がより好ましく、40〜60モル%がさらに好ましい。単位(α1)の割合が下限値以上であれば、耐候性が向上する。単位(α1)の割合が上限値以下であれば、必要に応じて使用する溶媒(D)への溶解性が向上する。
含フッ素共重合体(A)中の単位(α2)の割合は、含フッ素共重合体(A)における全単位の合計に対して、0.1〜70モル%が好ましく、1〜50モル%がより好ましく、2〜30モル%がさらに好ましい。単位(α2)の割合が下限値以上であれば、光硬化性がより良好となり、未反応物が塗膜に残存して塗膜の耐久性が低下することを抑制しやすい。単位(α2)の割合が上限値以下であれば、含フッ素共重合体(A)の安定性が向上し、塗料組成物のポットライフが向上する。
含フッ素重合体(A)において、単位(α1)と単位(α2)を合計した割合は、含フッ素重合体(A)における全単位の合計に対して、30モル%以上が好ましく、40〜90モル%がより好ましく、50〜80モル%がさらに好ましい。前記単位(α1)と単位(α2)を合計した割合が前記範囲内であれば、耐候性が向上し、かつ架橋密度が高くなることで、塗膜の耐熱性、耐湿性、耐擦傷性、耐衝撃性が向上する。なお、前記単位(α1)と単位(α2)を合計した割合が100モル%とは、含フッ素重合体(A)が単位(α1)と単位(α2)からなる共重合体であることを意味する。
【0034】
含フッ素共重合体(A)中の単位(α3)の割合は、含フッ素共重合体(A)における全単位の合計に対して、5〜50モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましい。単位(α3)の割合が前記下限値以上であれば、形成した塗膜と基材との密着性が向上する。単位(α3)の含有量が上限値以下であれば、塗膜の耐候性の低下を抑制しつつ、基材との密着性が向上する等の効果が得られる。
【0035】
含フッ素共重合体(A)中の単位(α4)の含有量は、含フッ素共重合体(A)における全単位の合計に対して、1〜20モル%が好ましく、3〜15モル%がより好ましい。単位(α4)の含有量が下限値以上であれば、塗膜の強靭性、耐溶剤性が向上する。単位(α4)の含有量が上限値以下であれば、塗膜の耐候性の低下を抑制しつつ、塗膜の強靭性、耐溶剤性が向上する等の効果が得られる。
【0036】
また、含フッ素共重合体(A)が単位(α3)および単位(α4)を有する場合、単位(α3)と単位(α4)のモル比(α3/α4)は、5/20〜50/1が好ましい。モル比(α3/α4)が下限値以上であれば、ゲル化等による貯蔵安定性の低下を抑制しやすい。モル比(α3/α4)が上限値以下であれば、必要に応じて使用する溶媒(D)との相溶性に優れ、均一な硬化膜が得られやすい。また、顔料(F)の分散性にも優れる。
含フッ素共重合体(A)における各単位の含有量は、含フッ素共重合体(A)を得るための重合反応における、各単量体の仕込み量および反応条件により制御できる。
【0037】
含フッ素共重合体(A)としては、単位(α1)を40〜60モル%有し、単位(α2)を2〜30モル%有し、単位(α3)を10〜40モル%有し、単位(α4)を3〜15モル%有する共重合体が好ましい。
【0038】
また、含フッ素共重合体(A)としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンおよびフッ化ビニルからなる群から選ばれる1種以上に基づく単位(α1)を40〜60モル%有し、側鎖のエチレン性不飽和基が、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、マレオイル基、スチリル基およびシンナモイル基からなる群から選ばれる1種である単位(α2)を2〜30モル%有し、アルキルビニルエーテル類に基づく単位(α3)を10〜40モル%有し、単量体(a41)に基づく単位(α4)を3〜15モル%有する共重合体がより好ましい。
【0039】
また、含フッ素共重合体(A)としては、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンの少なくとも一方に基づく単位(α1)を40〜60モル%有し、側鎖のエチレン性不飽和基が(メタ)アクリロイル基である単位(α2)を2〜30モル%有し、2−エチルへキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテルおよびシクロヘキシルビニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上に基づく単位(α3)を10〜40モル%有し、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルおよび4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの少なくとも一方に基づく単位(α4)を3〜15モル%有する共重合体が特に好ましい。
【0040】
本発明の塗料用組成物に含有される含フッ素共重合体(A)は、1種のみでもよく、2種以上であってもよい。
本発明の塗料組成物における含フッ素共重合体(A)の含有量は、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。含フッ素共重合体(A)の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の耐熱性、耐水性等の耐久性、密着性、耐候性、耐衝撃性、耐擦傷性が向上し、また耐酸性も向上する。含フッ素共重合体(A)の含有量が前記上限値以下であれば、塗料組成物の粘度がより低くなり、塗布作業が容易になる。
【0041】
(含フッ素共重合体(A)の製造方法)
含フッ素共重合体(A)の製造方法としては、例えば、公知のラジカル重合法により、単位(α1)と、エチレン性不飽和基を導入するための官能基を有する前駆体の単位(α2’)を必須単位として有する含フッ素共重合体を得た後、該含フッ素共重合体の単位(α2’)にエチレン性不飽和基を導入して単位(α2)を形成する方法が挙げられる。エチレン性不飽和基を導入する方法は、例えば、前述した方法(1)〜(8)が挙げられる。
例えば、フルオロオレフィン、単量体(a3)および単量体(a41)を共重合し、得られる含フッ素共重合体の単位(α4)の水酸基の一部または全部を化学変換して単位(α2)を形成する方法が挙げられる。
【0042】
[光反応開始剤(B)]
光反応開始剤(B)としては、光照射により硬化反応を開始できるものであればよく、光ラジカル重合開始剤が好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物、ジスルフィド化合物、フルオロアミン化合物、芳香族スルホニウム類等が挙げられる。
アセトフェノン類としては、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
ベンゾイン類としては、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノン等が挙げられる。
ホスフィンオキシド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
本発明の塗料用組成物に含有される光反応開始剤(B)は、1種のみでもよく、2種類以上であってもよい。
これらの光ラジカル重合開始剤を使用する場合は、増感色素を併用することが好ましい。
【0043】
光反応開始剤(B)の含有量は、含フッ素共重合体(A)と後述する化合物(C)の合計量100質量部に対して、0.05〜25質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.3〜5質量部が特に好ましい。前記合計量は、本発明の塗料組成物が化合物(C)を含有しない場合は、含フッ素共重合体(A)のみの量である。
光反応開始剤(B)の含有量が下限値以上であれば、光反応開始剤(B)の感度を確保しやすく、塗布層の硬化をより少ない光照射エネルギーで、短時間で充分に進行させることが容易になる。また、光反応開始剤(B)の含有量が上限値以下であれば、塗膜中に未反応の光反応開始剤(B)が残存し、塗膜の物性低下や、塗膜の着色が生じることを抑制しやすい。また、光反応開始剤(B)の使用量が少なくて済むので、経済的にも好ましい。
【0044】
[化合物(C)]
本発明の塗料組成物は、塗膜の耐薬品性、耐衝撃性、防湿性、破断強度および伸び率等を調整する目的で、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有し、かつ分子内にフッ素原子を有さない化合物(C)を含有することが好ましい。化合物(C)は、エチレン性不飽和基を有するので、光反応開始剤(B)の存在下、光照射により含フッ素共重合体(A)と共に硬化反応が進行する。特に、防湿性については、化合物(C)を含有することで、塗膜の架橋密度が増し、水分の浸入をより一層低減できる。
また、種類によっては化合物(C)によって粘度を適度に低下させることができるため、この場合は溶媒(D)を使用しなくても塗布作業が容易になる。
化合物(C)が有するエチレン性不飽和基としては、含フッ素共重合体(A)の単位(α2)の側鎖として挙げたエチレン性不飽和基と同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。含フッ素共重合体(A)が有するエチレン性不飽和基と、化合物(C)が有するエチレン性不飽和基は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
化合物(C)における1分子中のエチレン性不飽和基の数は、2〜16が好ましく、2〜8がより好ましい。化合物(C)の1分子中のエチレン性不飽和基の数が下限値以上であれば、塗膜の架橋密度が増し、水分の浸入を低減することができる。化合物(C)の1分子中のエチレン性不飽和基の数が上限値以下であれば、硬化収縮による基材からの塗膜剥離が発生しにくい。
また、化合物(C)は、炭素数8〜32の化合物であることが好ましい。
【0045】
化合物(C)としては、例えば、ジビニル(チオ)エーテル類、トリビニル(チオ)エーテル類、テトラビニル(チオ)エーテル類、ヘキサビニル(チオ)エーテル類等が挙げられる。(チオ)エーテル類とは、エーテル類またはチオエーテル類を意味する。
具体的には、トリメチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ビスビニルオキシメチルシクロヘキサン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,5−ペンタンジオールジビニルエーテル、1,6−へキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の脂肪族ジビニルエーテル類;1,4−ベンゼンジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル等の芳香族ジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル等の脂肪族トリビニルエーテル類;ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等の脂肪族テトラビニルエーテル類;ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の脂肪族ヘキサビニルエーテル類;さらに、これらに対応する脂肪族ジビニルチオエーテル類;芳香族ジビニルチオエーテル類;脂肪族トリビニルチオエーテル類;脂肪族テトラビニルチオエーテル類;脂肪族ヘキサビニルチオエーテル類が挙げられる。なかでも、入手性および経済性の点から、脂肪族ジビニルエーテル類が好ましい。
本発明の塗料組成物が化合物(C)を含有する場合には、化合物(C)は1種のみでもよく、2種以上であってもよい。
【0046】
本発明の塗料組成物が化合物(C)を含有する場合、本発明の塗料組成物(100質量%)中の化合物(C)の含有量は、0.5〜60.0質量%が好ましく、1.0〜50.0質量%がより好ましい。化合物(C)の含有量が前記下限値以上であれば、化合物(C)による効果が得られやすい。化合物(C)の含有量が前記上限値以下であれば、塗膜の耐候性が低下し難い。
【0047】
[溶媒(D)]
本発明の塗料組成物は、粘度が低下することで塗布作業がより容易になる点から、溶媒(D)を含有することが好ましい。
溶媒(D)は、含フッ素共重合体(A)、光反応開始剤(B)等の各成分を溶解または分散できるものであれば特に限定されない。溶媒(D)としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル等のエステル類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレピン油、ソルベッソ♯100(登録商標、エクソン化学社製)、ソルベッソ♯150(登録商標、エクソン化学社製)等の芳香族炭化水素類;ジオキキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸メトキシブチル等のエーテルエステル類;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等、公知の有機溶剤を使用できる。
溶剤(D)としては、場合によっては含フッ素共重合体(A)の重合時に使用した重合溶媒を使用してもよい。
本発明の塗料用組成物が溶媒(D)を含有する場合には、溶剤(D)は、1種のみでもよく、2種以上であってもよい。
【0048】
本発明の塗料組成物が溶媒(D)を含有する場合、本発明の塗料組成物(100質量%)中の溶媒(D)の含有量は、0.1〜30.0質量%が好ましく、0.5〜10.0質量%がより好ましい。溶媒(D)の含有量が下限値以上であれば、塗布作業が容易になる。溶媒(D)の含有量が上限値以下であれば、溶媒(D)を揮発させる際に、塗膜に発泡跡が生じ難い。
【0049】
[硬化剤(E)]
本発明の塗料組成物は、含フッ素共重合体(A)が単位(α4)を有する場合、単位(α4)の架橋性基と反応して化学結合(架橋)を形成する硬化剤(E)を含有することが好ましい。これにより、反射基板の形状に起因して光照射強度にばらつきが生じても、全体的に充分に硬化反応を進行させて均一な塗膜とすることが容易になる。
硬化剤(E)は、単位(α4)の架橋性基と反応する硬化剤であれば特に限定されない。例えば、単位(α4)の架橋性基が水酸基またはアルコキシシリル基である場合は、イソシアネート系硬化剤、オルガノシラン系硬化剤、メラミン系硬化剤が好ましく、光照射以外の方法で化学結合(架橋)を形成するのが容易であることがら、イソシアネート系硬化剤、オルガノシラン系硬化剤が特に好ましい。
【0050】
イソシアネート系硬化剤としては、無黄変ポリイソシアネート、または無黄変ポリイソシアネートの変性体が好ましい。
無黄変ポリイソシアネートとしては、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、HDI(ヘキサンジイソシアネート)等が挙げられる。
無黄変ポリイソシアネートの変性体としては、前記無黄変ポリイソシアネートにおいて、イプシロンカプロラクタム(E−CAP)、メチルエチルケトンオキシム(MEK−OX)、メチルイソブチルケトンオキシム(MIBK−OX)、ピラリジンまたはトリアジン(TA)によってイソシアネート基をブロックした変性体、無黄変ポリイソシアネート同士をカップリングしてウレトジオン結合とした変性体等が挙げられる。また、前記無黄変ポリイソシアネートにおいて、常温で固形を呈すようにアダクト体としたり、水分散しやすいよう、親水性部位や乳化剤を用いて乳化状態とした変性体が挙げられる。
イソシアネート系硬化剤を使用する場合は、イソシアネート化合物の1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
本発明の塗料組成物がイソシアネート系硬化剤を含有する場合、その含有量は、含フッ素共重合体(A)100質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。イソシアネート系硬化剤の含有量が下限値以上であれば、光照射強度にばらつきが生じても、養生することで強靭な塗膜が得られる。また、イソシアネート系硬化剤の含有量が上限値以下であれば、塗膜の耐候性が低下することを抑制しやすい。
【0052】
オルガノシラン系硬化剤としては、下式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」という。)が好ましい。
(R4−kSi(OR (1)
(前記式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、kは2〜4の整数を示す。)
【0053】
の1価の炭化水素基は、置換基を有してもよい。すなわち、Rの1価の炭化水素基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていてもよい。該置換基はハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
は、メチル基、エチル基、ヘキシル基、デシル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましい。化合物(1)中にRが複数存在する場合、原料の供給性の点から、複数のRが互いに同じであることが好ましい。ただし、複数のRは互いに異なっていてもよい。
の1価の炭化水素基は、炭素数1〜10のアルキル基であり、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。化合物(1)中にRが複数存在する場合、アルコキシ基の反応性が同じになって塗膜を均一に形成しやすい点から、複数のRが互いに同じであることが好ましい。ただし、複数のRは互いに異なっていてもよい。
化合物(1)におけるkは2〜4の整数であり、3〜4が好ましい。
【0054】
化合物(1)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等の4官能性アルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の2官能性アルコキシシラン等が挙げられる。なかでも、硬化速度、および得られる塗膜の物性の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。
オルガノシラン系硬化剤を使用する場合は、オルガノシラン系化合物の1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
化合物(1)は、部分的に加水分解されて縮合した部分加水分解縮合物として使用してもよい。該部分加水分解縮合物は、前記化合物(1)を、分子中に2以上の加水分解性基(−OR基)が残るように、部分的に加水分解して縮合することで得られる化合物である。該部分加水分解縮合物の全体構造は明らかではないが、−Si−O−結合からなる骨格とアルコキシ基からなるポリ珪酸エステルであって、その骨格は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状構造であってもよい。
化合物(1)の部分加水分解縮合物は、縮合度が低いほど好ましい。部分加水分解縮合物の縮合度が低いほど、含フッ素共重合体(A)との相溶性が向上する。また、形成される塗膜と該塗膜が形成される基材の層(反射層等。)の熱膨張係数がより近くなり、熱による膨張、収縮に起因する塗膜の基材からの剥離が起き難くなる。
【0056】
化合物(1)の部分加水分解縮合物を製造する方法は、特に限定されず、公知の部分加水分解縮合物の製造方法を採用できる。例えば、化合物(1)に、水、酸、および溶剤の少なくとも1種を加え、部分的に加水分解縮合させる方法が挙げられる。
【0057】
化合物(1)の部分加水分解縮合物としては、縮合度、構造、アルコキシ基の種類が異なるものが市販されており、例えば、商品名「KR−500」、「KR−510」、「KR−213」(以上、信越化学工業社製)、商品名「MKCシリケートMS51」、「MKCシリケートMS56」(以上、三菱化学社製)、商品名「Mシリケート51」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート45」(以上、多摩化学工業社製)等の有効シリカ分が28〜70質量%程度である縮合物、または、該縮合物をエタノールもしくはイソプロパノールに溶解した商品名「HAS−1」、「HAS−6」、「HAS−10」(以上、コルコート社製)等が挙げられる。前記「有効シリカ分」とは、製品中に含まれるポリアルキルシリケートを100質量%としたときの、SiO換算としてのシリカの含有量を示す値である。
化合物(1)の部分加水分解縮合物を使用する場合は、該加水分解縮合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
本発明の塗料組成物がオルガノシラン系硬化剤を含有する場合、その含有量は、含フッ素共重合体(A)100質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。オルガノシラン系硬化剤の含有量が下限値以上であれば、光照射強度にばらつきがあっても強靭な硬化塗膜が得られやすくなる。また、オルガノシラン系硬化剤の含有量が上限値以下であれば、塗膜の柔軟性が低下することを抑制しやすい。
【0059】
[顔料(F)]
本発明の塗料組成物は、太陽熱集熱用反射板における反射基板の太陽光が照射される面(以下、「太陽光照射面」という。)以外の面に塗布する場合、防錆、着色、補強等を目的として、顔料(F)を含有することが好ましい。
顔料(F)としては、防錆顔料、着色顔料および体質顔料からなる群から選ばれる1種以上の顔料が好ましい。
防錆顔料は、反射鏡の腐食や変質を防止するための顔料である。環境への負荷が少ない点から無鉛防錆顔料が好ましい。無鉛防錆顔料としては、シアナミド亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムマグネシウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸バリウム、シアナミド亜鉛カルシウム等が挙げられる。
着色顔料は、塗膜を着色するための顔料である。着色顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等が挙げられる。酸化チタン顔料を使用する場合には、塗膜の耐候性をさらに向上させる目的で、セリウムコート等の顔料表面に光触媒作用を抑制するための表面処理が施されたものが好ましい。D918(商品名、堺化学社製)、PFC105(商品名、石原産業社製)が特に推奨できる。
体質顔料は、塗膜の硬度を向上させ、かつ、厚みを増すための顔料である。体質顔料としては、タルク、硫酸バリウム、マイカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
顔料(F)としては、耐候性に優れる点から、酸化チタンが特に好ましい。
【0060】
反射基板の太陽光照射面以外の面に塗布する場合の塗料組成物中の顔料(F)の含有量は、塗料組成物における顔料以外の固形分100質量部に対して、10〜500質量部が好ましく、30〜400質量部がより好ましい。顔料(F)の含有量が前記下限値以上であれば、顔料(F)の機能が得られやすい。顔料(F)の含有量が前記上限値以下であれば、砂等が衝突しても塗膜が傷付き難くなり、また塗膜の耐候性が向上する。
反射基板の太陽光照射面側に塗布する場合の本発明の塗料組成物は、該太陽光照射面における反射率の低下を防ぐため、顔料(F)の含有量を極力少なくすることが好ましい。この場合の塗料組成物中の顔料(F)の含有量は、塗料組成物における顔料以外の固形分100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、ゼロが特に好ましい。
【0061】
[他の成分]
本発明の塗料組成物は、前述した各成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、光増感剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱硬化触媒、レオロジーコントロール剤、防錆剤、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤、防汚剤、シランカップリング剤、つや消し剤、帯電防止剤、含フッ素共重合体(A)以外のその他樹脂等が挙げられる。
【0062】
含フッ素共重合体(A)以外の他の樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、シリコーン変成アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂等の非フッ素系樹脂、含フッ素共重合体(A)以外のフッ素樹脂等が挙げられる。他の樹脂は、光反応性架橋基を有する硬化性樹脂であってもよい。
本発明の塗料組成物に他の樹脂を配合する場合、他の樹脂の含有量は、含フッ素共重合体(A)の100質量部に対して1〜200質量部が好ましい。
【0063】
本発明の塗料組成物は、含フッ素共重合体(A)、光反応開始剤(B)等の各成分を、必要に応じて化合物(C)や溶媒(D)で適宜粘度調整しながら混合することで製造できる。各成分の混合順序は特に限定されない。
【0064】
以上説明した本発明の塗料組成物は、光反応開始剤(B)の存在下、光照射によって含フッ素共重合体(A)を硬化して架橋を有する塗膜を形成するため、耐熱性、耐水性等の耐久性に優れ、密着性、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性等に優れた塗膜が得られる。また、含フッ素共重合体(A)の硬化に寄与するエチレン性不飽和基は反応性に優れ、硬化速度が速い。そのため、本発明の塗料組成物を使用すれば、塗膜形成の時間を短縮でき、硬化不良の発生を抑制できるため、優れた性能の塗膜を有する太陽熱集熱用反射鏡を高い生産性で製造できる。
【0065】
<太陽熱集熱用反射板の製造方法>
本発明の太陽熱集熱用反射板の製造方法は、太陽熱を集めて熱エネルギーとして利用する太陽熱集熱システムにおける太陽光を反射する反射板の製造方法である。
本発明の太陽熱集熱用反射板の製造方法では、反射基板の表面に、前述した本発明の塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、光照射を行って該塗布層を硬化させて塗膜を形成させる。
【0066】
反射基板は、太陽熱集熱用反射板の本体をなす部分である。本発明における反射基板は、太陽光を反射する性能を有している基板であれば特に制限されない。反射基板の素材としては、例えばガラス、金属、樹脂およびこれらの複合物等が挙げられる。反射基板としては、これらの素材からなり、板状やフィルム状である基板の表面に、鏡面仕上げ加工、反射層の形成などにより、太陽光を反射する性能を付与された反射基板が好ましい。
反射基板としては、一方の面に金属および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる反射層を有するガラス基板からなる反射基板(I)、金属からなる基板の反射面側が鏡面仕上げになっている反射基板(II)、金属からなる基板の反射面側に金属および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる反射層が形成された反射基板(III)のいずれかが好ましい。
【0067】
本発明の製造方法における塗料組成物を塗布する反射基板の表面とは、反射基板の太陽光照射面、太陽光照射面と反対側の面、および側面の少なくとも1つの面である。本発明の製造方法では、太陽熱集熱用反射板における反射基板の太陽光照射面と反対側に塗膜を形成してもよく、反射基板の側面に塗膜を形成してもよく、反射基板の太陽光照射面側に塗膜を形成してもよい。
本発明の製造方法においては、反射基板の太陽光照射面と反対側の面および側面の少なくとも一方に、本発明の塗料組成物により塗膜を形成することが好ましい。また、反射基板(II)、反射基板(III)の場合は、高い反射率を長時間維持する目的で太陽光照射面側に塗膜を形成することも好ましい。
【0068】
本発明の太陽熱集熱用反射板の製造方法は、本発明の塗料組成物を塗布する反射基板の種類によって、例えば下記方法(α)〜(γ)が挙げられる。
(α)一方の面に金属および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる反射層を有するガラス基板からなる反射基板(I)の表面に、前述した本発明の塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、光照射を行って該塗布層を硬化させて塗膜を形成する方法。
(β)金属からなる基板の反射面側が鏡面仕上げになっている反射基板(II)の表面に、前述した本発明の塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、光照射を行って該塗布層を硬化させて塗膜を形成する方法。
(γ)金属からなる基板の反射面側に金属および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる反射層が形成された反射基板(III)の表面に、前述した本発明の塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、光照射を行って該塗布層を硬化させて塗膜を形成する方法。
【0069】
方法(α):
方法(α)における反射基板(I)は、一方の面に金属および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる反射層(以下、「反射層(i)」という。)を有するガラス基板からなる反射基板である。反射基板(I)の太陽光照射面とは、ガラス基板側の面であり、太陽光照射面と反対側の面とは、反射層(i)側の面である。
反射基板(I)のガラス基板としては、鏡用の公知のガラスが使用でき、例えば、ソーダライムガラス等が挙げられる。ガラス基板の厚みは、0.5〜10mmが好ましい。
【0070】
反射層(i)は、太陽光を反射する層である。反射層(i)を形成する金属、金属酸化物は、反射層とした時に高い反射率を確保できるものであれは特に限定されない。
反射層(i)が金属からなる場合、該金属としては、チタン、モリブデン、マンガン、アルミニウム、銀、銅、金およびニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、特に銀を含有することが好ましい。その場合の反射層(i)における銀の含有量は、60質量%以上が好ましく、100質量%が特に好ましい。
反射層(i)が金属酸化物からなる場合、該金属酸化物は1種でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。反射層(i)を形成する金属酸化物としては、酸化チタンが好ましい。
また、反射層(i)は、金属と金属酸化物が組み合わされた層であってもよい。
反射層(i)の厚みは、300〜1500mg/mが好ましい。
【0071】
反射基板(I)は、ガラス基板の一方の面に、スパッタリング、銀鏡反応等の化学反応を利用する方法等の公知の方法で反射層(i)を設けることにより製造できる。
反射層(i)は、1層でもよく、2層以上であってもよい。
本発明の塗料用組成物の塗布面は、反射基板(I)の太陽光照射面、太陽光照射面と反対側の面、および側面の少なくとも1つの面であるが、太陽光照射面と反対側の面であることがこのましい。
【0072】
以下、方法(α)の一例を図1〜3に基づいて説明する。
本実施形態では、図1に例示した反射基板(I)11の表面に塗膜を形成する。反射基板(I)11は、ガラス基板11aと、該ガラス基板11aの一方の面に形成された反射層(I)11bとからなる。
本実施形態の製造方法では、図2に示すように、反射基板(I)11の反射層(i)11b側に、本発明の塗料組成物を塗布して塗布層12Aを形成する。
塗料組成物の塗布方法としては、刷毛、ローラ、スプレー、フローコータ、アプリケータ等を使用する方法が挙げられる。塗料組成物の塗布量は、目的とする乾燥膜厚に応じて適宜選定すればよい。
【0073】
次いで、本発明の塗料組成物が溶媒(D)を含有する場合は溶媒(D)を除去し、光照射を行って塗布層12Aを硬化させて塗膜12を形成する。
溶媒(D)の除去は、例えば、加熱、減圧等により行える。溶媒(D)を除去する際の温度は、使用する溶剤の沸点を考慮して適宜定めればよく、15〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。前記温度が下限値以上であれば、溶媒(D)が除去されやすい。前記温度が上限値以下であれば、塗膜12に発泡跡が生じ難い。
【0074】
本発明の塗料組成物が溶媒(D)を含有する場合、光照射は、溶媒(D)の除去を行った後に行うことが好ましい。光照射の際の雰囲気は、特に制限されず、空気中もしくは不活性ガス雰囲気中が好ましい。
塗布層12Aに照射する光は、紫外線が好ましく、波長150〜450nmの紫外線がより好ましい。紫外線照射源としては、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽が好ましい。特に光照射を空気中で行う場合には、高圧水銀ランプがより好ましい。
光の照射時間は、充分に硬化反応を進行させやすい点から、3秒以上が好ましい。また、生産性の点から、600秒以下が好ましい。
光照射による硬化に使用する装置としては、特に制限はなく、密閉式硬化炉、連続硬化が可能なトンネル炉等の硬化装置を採用できる。具体的には、アイグラフィックス社製のインバーター式コンベア「ECS−401GX」、ウシオ電機社製の紫外線照射装置「UVC−02516S1AA01」等が挙げられる。
【0075】
また、本発明の製造方法では、本発明の塗料組成物における含フッ素共重合体(A)が単位(α4)を含有する場合、さらに硬化剤(E)を含有する場合は、塗布層12Aを形成した後、下記工程(x)および工程(y)を行って塗布層12Aを硬化させて塗膜を形成させる。
(x)光照射によって、含フッ素共重合体(A)中のエチレン性不飽和基を反応させる工程。
(y)含フッ素共重合体(A)中のエチレン性不飽和基以外の架橋性基を反応させる工程。
【0076】
工程(x)は、前述した光照射の条件が採用でき、好ましい態様も同じである。本発明の塗料組成物が化合物(C)を含有する場合、含フッ素共重合体(A)のエチレン性不飽和基と共に、化合物(C)のエチレン性不飽和基も反応する。
工程(y)では、単位(α4)の架橋性基を反応させる。架橋性基を反応させる、すなわち、架橋性基同士または架橋性基と硬化剤を反応させる方法は、架橋性基や硬化剤の種類によって異なるが、加熱を伴わない養生または加熱のいずれかによって単位(α4)の架橋性基を反応させることが好ましい。
加熱を伴わない養生の温度および時間の条件は、単位(α4)の架橋性基、硬化剤(E)、熱硬化触媒の種類によっても異なるが、10〜80℃で1〜240時間硬化させる条件が好ましく、20〜60℃で3〜120時間硬化させる条件がより好ましい。
加熱方法は特に限定されず、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等の方法を採用できる。加熱温度および時間の条件は、単位(α4)の架橋性基、硬化剤(E)、熱硬化触媒の種類によっても異なるが、50〜200℃で10秒〜5時間硬化させる条件が好ましく、50〜150℃で30秒〜1時間硬化させる条件がより好ましい。
【0077】
本発明の塗料組成物が溶媒(D)を含有する場合、工程(y)では同時に溶媒(D)が除去される。そのため、工程(x)と工程(y)の順序としては、工程(y)において架橋性基を反応させると同時に溶媒(D)を除去した後、工程(x)でエチレン性不飽和基を反応させることが好ましい。ただし、工程(x)と工程(y)の順序は特に限定されず、工程(x)の後に工程(y)を行ってもよく、工程(x)と工程(y)を同時に行ってもよい。
形成する塗膜12の膜厚は、0.5〜100μmが好ましい。
【0078】
次いで、図3に示すように、反射基板(I)11の側面11cに、本発明の塗料組成物を塗布して塗布層13Aを形成する。
塗料組成物の塗布方法としては、反射基板(I)11の側面11cに均一に塗布しやすい点から、刷毛、スプレー等を使用して手作業で塗布する方法が好ましい。塗料組成物の塗布量は、目的とする乾燥膜厚に応じて適宜選定すればよい。
【0079】
その後、塗膜12の形成と同様にして塗布層13Aを硬化させて塗膜13を形成し、太陽熱集熱用反射板10を得る。塗布層13Aの硬化は、塗布層12Aの硬化と同様にして行える。
形成する塗膜13の膜厚は、0.5〜100μmが好ましい。
塗膜12、13は、同時に形成してもよく、順次形成してもよい。
なお、方法(α)においては、前記工程に従って、反射基板(I)の側面も本発明の塗料組成物を塗布することが好ましいが、別の手段によって側面の耐水性等が確保されている場合には、側面への塗布は必要ない場合がある。
【0080】
方法(β):
方法(β)における反射基板(II)は、金属からなる基板の反射面側が鏡面仕上げになっている反射基板である。反射基板(II)の太陽光照射面とは、鏡面仕上げされた面である。反射基板(II)は、反射基板(I)のガラス基板に比べて、破損のおそれが少ない点、軽量化が容易で設置費用を削減できる点、曲げ等の加工が容易である点で有利である。
反射基板(II)の厚みは、0.1〜10mmが好ましく、0.5〜5mmがより好ましい。
【0081】
反射基板(II)における金属からなる基板としては、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる基板が好ましい。なかでも、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板が特に好ましい。
前記鏡面仕上げは、例えば物理的な研磨が一般的だが、化学的または電気的研磨方法によって行うことができる。このとき、研磨後の反射基板(II)の鏡面仕上げ面の表面粗さRaは、0.3μm以下、さらには0.1μm以下であることが好ましい。
本発明の塗料用組成物の塗布面は、反射基板(II)の太陽光照射面、太陽光照射面と反対側の面、および側面の少なくとも1つの面である。
【0082】
以下、方法(β)の一例を図4に基づいて説明する。
方法(β)では、図4に示すように、反射基板(II)21の表面に塗膜を形成する。反射基板(II)21は、金属からなる基板の反射面側が鏡面仕上げになっている反射基板である。反射基板(II)21の太陽光照射面21a(反射面)側、太陽光照射面の反対側、および側面に本発明の塗料組成物を塗布して塗布層22A、23A、24Aを形成し、硬化させて塗膜22、23、24を形成し、太陽熱集熱用反射板20を得る。
反射基板(II)の表面に塗料組成物を塗布する方法、塗布層22A、23A、24Aから溶媒(C)を除去する方法、塗布層22A、23A、24Aを硬化する方法は、方法(α)の場合と同様にして行える。
【0083】
塗膜22、23、24は、同時に形成してもよく、順次形成してもよい。
なお、方法(β)においては、反射基板(II)の側面も本発明の塗料組成物を塗布することが好ましいが、別の手段によって側面の耐水性等が確保されている場合には、側面への塗布は必要ない場合がある。
【0084】
方法(γ):
方法(γ)における反射基板(III)は、金属からなる基板の反射面側に金属および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる反射層(以下、「反射層(iii)」という。)が形成された反射基板である。反射基板(III)の太陽光照射面とは、反射層(iii)側の面である。反射基板(III)は、反射基板(II)と同様、反射基板(I)のガラス基板に比べて、破損のおそれが少ない点、軽量化が容易で設置費用を削減できる点、曲げ等の加工が容易である点で有利である。
反射基板(III)の厚みは、0.1〜10mmが好ましく、0.5〜5mmがより好ましい。
【0085】
反射基板(III)における金属からなる基板としては、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる基板が好ましい。なかでも、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板が特に好ましい。
【0086】
反射層(iii)を形成する金属、金属酸化物は、反射層とした時に高い反射率を確保できるものであれは特に限定されない。
反射層(iii)が金属からなる場合、該金属は、チタン、モリブデン、マンガン、アルミニウム、銀、銅、金およびニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましい。反射層(iii)を形成する金属は、1種でもよく、2種以上の合金であってもよい。
また、反射層(iii)が金属酸化物からなる場合、該金属酸化物は1種でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。反射層(iii)を形成する金属酸化物としては、酸化チタンが好ましい。
【0087】
反射層(iii)は、リン酸塩処理、陽極酸化処理、真空蒸着処理等により形成できる。
反射層(iii)の厚さは、5〜1500nmが好ましい。
反射層(iii)は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
本発明の塗料用組成物の塗布面は、反射基板(III)の太陽光照射面、太陽光照射面と反対側の面、および側面の少なくとも1つの面である。
【0088】
以下、方法(γ)の一例を図5に基づいて説明する。
方法(γ)では、図5に示すように、反射基板(III)31の表面に塗膜を形成する。反射基板(III)31は、金属からなる基板31aの反射面側に反射層(iii)31bが形成された反射基板である。反射基板(III)31の太陽光照射面側(反射層(iii)31b側)、太陽光照射面の反対側(基板31a側)、および側面に本発明の塗料組成物を塗布して塗布層32A、33A、34Aを形成し、硬化させて塗膜32、33、34を形成し、太陽熱集熱用反射板30を得る。
反射基板(III)の表面に塗料組成物を塗布する方法、塗布層32A、33A、34Aから溶媒(C)を除去する方法、塗布層32A、33A、34Aを硬化する方法は、方法(α)の場合と同様にして行える。
【0089】
塗膜32、33、34は、同時に形成してもよく、順次形成してもよい。
なお、方法(γ)においては、反射基板(III)の側面も本発明の塗料組成物を塗布することが好ましいが、別の手段によって側面の耐水性等が確保されている場合には、側面への塗布は必要ない場合がある。
【0090】
以上説明した製造方法によれば、太陽熱集熱用反射板を高い生産性で簡便に製造できる。また、太陽熱集熱用反射板の表面に、耐熱性、耐水性等の耐久性に優れ、かつ密着性、耐候性、耐擦傷性および耐衝撃性に優れた塗膜を形成できる。さらに当該塗膜は、耐酸性にも優れており、塗膜をラジカル重合により形成することで塗膜の架橋密度がより緻密になるので防湿性も向上する。
【0091】
なお、本発明の製造方法は、前述した方法には限定されない。例えば、反射基板の太陽光照射面と反対側の面のみに本発明の塗料組成物による塗膜を形成してもよく、反射基板の側面側のみに本発明の塗料組成物による塗膜を形成してもよい。また、反射基板の太陽光照射面側のみに本発明の塗料組成物による塗膜を形成してもよい。ただし、本発明の塗料組成物による塗膜を形成しない表面には、公知の塗膜を形成することが好ましい。
また、例えば、反射基板(I)の反射層(i)側に本発明の塗料組成物による塗膜を形成する場合、該塗膜と反射層(i)との間に、屋内で使用される鏡の裏面に設けられる公知の塗膜(裏止め塗膜)を形成してもよい。
【0092】
また、本発明の塗料組成物は、金属からなる基板に鏡面仕上げを行い、さらに反射層(以下、「反射層(iv)」という。)を設けた反射基板(以下、「反射基板(IV)」という。)にも使用できる。反射基板(IV)における鏡面仕上げは、反射基板(II)における鏡面仕上げと同様である。反射層(iv)は、反射基板(III)の反射層(iii)と同じものが挙げられる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
<含フッ素共重合体(A)の製造>
[例1]
温度計、還流冷却器および撹拌器を備えた容量300mLの4つ口フラスコに、ルミフロンLF800Y(水酸基を有する含フッ素共重合体のキシレン溶液、不揮発分60質量%、水酸基価36mgKOH/g、旭硝子社製)の100g、カレンズAOI(イソシアネートプロピルアクリレート、昭和電工社製)の5.4g、2−エチルヘキサン酸錫の0.05g、およびキシレンの25.4gを加え、窒素雰囲気下、50℃で5時間反応を行った。
得られた溶液の赤外吸収スペクトルを測定したところ、イソシアネート基の吸収帯には、吸収ピークは観測されず、逆にウレタン結合の吸収帯に大きな吸収ピークが観測された。これにより、側鎖のエチレン性不飽和基がアクリロイル基である単位(α2)を有する含フッ素共重合体(A−1)の生成を確認した。その後、ろ過を行って、含フッ素共重合体(A−1)のキシレン溶液(不揮発分50質量%)を得た。
【0094】
<塗料組成物の製造>
[例2]
例1で得られた含フッ素共重合体(A−1)のキシレン溶液(不揮発分50質量%)の100.0gに、光反応開始剤(B)としてイルガキュア184(1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、BASF社製)の0.8gおよびイルガキュア907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製)の0.8gと、トリメチロールプロパンの6.7gを加え、ペイントシェーカーで30分撹拌した。撹拌後、ろ過を行うことで、塗料組成物iを得た。
【0095】
<裏止塗膜付試験板の製造>
[例3]
クロメート処理したアルミニウム板の表面に、鉛を含まないミラー用裏止め塗料(大日本塗料社製、商品名「SM COAT DF」)を、乾燥塗膜の膜厚が30μmとなるように塗布し、170℃のオーブンで5分間乾燥硬化させることにより裏止め塗膜を形成して、裏止塗膜付試験板−1を得た。
【0096】
<塗料組成物により形成した塗膜(硬化塗膜)の評価(1)>
[例4]
裏止塗膜付試験板−1の裏止塗膜上に、例2で得られた塗料組成物iを、乾燥塗膜の膜厚が15μmとなるように塗布して塗布層を形成し、25℃の恒温室中で、24時間養生させた。その後、コンベアー式紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、商品名:インバーター式コンベア「ECS−401GX」)を用いて、紫外線(UV)を照射することによって前記塗布層を硬化させ、試験板−1を得た。
得られた試験板−1について、塗料組成物iにより形成した塗膜の硬度、耐衝撃性、裏止め塗膜との初期密着性、高温高湿条件下(85℃×85%RH)で1ヶ月放置した後の裏止め塗膜との密着性、促進耐候性を評価した。
【0097】
<塗料組成物により形成した塗膜(硬化塗膜)の評価(2)>
[例5]
鏡面仕上げ後に、酸化チタンが蒸着されたアルミ板の蒸着面に、例2で得られた塗料組成物iを、乾燥塗膜の膜厚が10μmとなるように塗布して塗布層を形成し、200℃のオーブンで5分間乾燥硬化させ、試験板−2を得た。
得られた試験板−2について、塗料組成物iにより形成した塗膜の硬度、耐衝撃性、初期密着性、40℃の温水中に1ヶ月浸漬した後の密着性、促進耐候性を評価した。
【0098】
<太陽熱集熱用反射板の製造とその評価>
[例6]
ガラス基板の片面に、厚みが800mg/mになるように銀メッキ処理を施し、次に、該銀メッキ膜上に、鉛を含まないエポキシ樹脂系のミラー用裏止塗料(大日本塗料社製、「SM商品名 COAT DF」)を乾燥塗膜の膜厚が30μmとなるようにカーテンフローコーターで塗布し、180℃の乾燥炉で硬化させた。その後、除冷炉で室温まで冷却することで、防錆塗膜付き反射板を得た。
次に、該防錆塗膜付き反射板の防錆塗膜上に、例2で得られた塗料組成物iを膜厚が25μmとなるように塗布し、その後、コンベアー式紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、商品名:インバーター式コンベア「ECS−401GX」)を用いて、紫外線(UV)を照射することによって前記塗布層を硬化させ、試験用の太陽熱集熱用反射板を得た。得られた太陽熱集熱用反射板について、促進耐候性試験を実施した。
【0099】
[評価方法]
各例で得られた試験板の塗料組成物iにより形成した塗膜の評価方法は以下のとおりである。
(硬度)
JIS K 5600−5−4(2009)に準拠した方法で塗膜の硬度を測定した。
【0100】
(耐衝撃性)
JIS K 5600−5−3(2009)に準拠した方法で塗膜の耐衝撃性試験を行い、以下の基準に従って評価した。おもり落下としては、デュポン式を採用し、重り質量500g、高さ50cmの条件で実施した。
「○」:塗膜に割れ、損傷等が確認されなかった。
「×」:塗膜に割れ、損傷等が確認された。
【0101】
(裏止め塗膜との密着性)
JIS K 5600−6−1(2009)に準拠した方法で裏止め塗膜との密着性を測定した。評価は、JIS K 5600−6−1(2009)の「表1.試験結果の分類」に従って行った。
【0102】
(促進耐候性)
サンシャインウェザーメータ(スガ試験機社製)を用いて、促進耐候性評価を実施し、5000時間暴露後と初期とを比較した。初期の光沢の値を100%としたときの、試験後の光沢の値の割合を光沢保持率(単位:%)として算出し、以下の基準に従って耐候性を評価した。
「○」:光沢保持率が80%以上であった。
「△」:光沢保持率が60%以上80%未満であった。
「×」:光沢保持率が60%未満であった。
例4、5の評価結果を表1に示す。
【0103】
[太陽熱集熱用反射板の評価方法]
(促進耐候性試験)
Accelerated Weathering Tester(Q−PANEL LAB PRODUCTS社製、モデル:QUV/SE)を用い、5000時間暴露後と初期とを比較して、塗膜の光沢保持率、塗膜剥離の有無、銀反射層の異常について評価した。
1.塗膜の光沢保持率
塗膜表面の光沢を、PG−1M(光沢計:日本電色工業社製)を用いて測定し、以下の基準に従って耐候性を評価した。
「○」:光沢保持率が80%以上であった。
「△」:光沢保持率が60%以上80%未満であった。
「×」:光沢保持率が60%未満であった。
2.塗膜剥離の有無
以下の基準に従って耐候性を評価した。
「○」:塗膜剥離が観察されなかった。
「×」:塗膜剥離が観察された。
3.銀反射層の異常
以下の基準に従って耐候性を評価した。
「○」:銀ひけ、さび等による反射板の反射率低下が観察されなかった。
「×」:銀ひけ、さび等による反射板の反射率の低下が観察された。
例6の評価結果を表2に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
表1および表2に示すように、本発明の塗料組成物により形成した塗膜は、耐熱性、耐水性等の耐久性に優れ、密着性、耐擦傷性、耐衝撃性、耐候性等に優れていた。
【符号の説明】
【0107】
10、20、30 太陽熱集熱用反射板
11 反射基板(I)
11a ガラス基板
11b 反射層(i)
12A、13A 塗布層
12、13 塗膜
21 反射基板(ii)
22A、23A、24A 塗布層
22、23、24 塗膜
31 反射基板(iii)
31a 金属からなる基板
31b 反射層(iii)
32A、33A、34A 塗布層
32、33、34 塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロオレフィンに基づく単位(α1)と側鎖にエチレン性不飽和基を有する単位(α2)とを有する含フッ素共重合体(A)、および光反応開始剤(B)を含有することを特徴とする太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和基が、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、マレオイル基、スチリル基、シンナモイル基からなる群より選ばれる1種以上である請求項1に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
【請求項3】
前記含フッ素共重合体(A)が、アルキルビニルエーテル類、アルキルビニルエステル類、アルキルアリルエーテル類、α−不飽和環状エーテル類および(メタ)アクリル酸エステル類からなる群から選ばれる1種以上の単量体に基づく単位(α3)を有する請求項1または2に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
【請求項4】
1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有し、かつ分子内にフッ素原子を有さない化合物(C)を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
【請求項5】
溶媒(D)を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
【請求項6】
顔料(F)を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
【請求項7】
前記含フッ素共重合体(A)が、側鎖にエチレン性不飽和基以外の架橋性基を有する単位(α4)を有する重合体である請求項1〜6のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
【請求項8】
前記塗料組成物が、前記単位(α4)の架橋性基と反応する硬化剤(E)を含有する請求項7に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物。
【請求項9】
反射基板の表面に、請求項1〜8のいずれか一項に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、光照射を行って該塗布層を硬化させて塗膜を形成する太陽熱集熱用反射板の製造方法。
【請求項10】
反射基板の表面に、請求項7または8に記載の太陽熱集熱用反射板の表面塗布用塗料組成物を塗布して塗布層を形成した後、下記工程(x)および工程(y)を行って該塗布層を硬化させて塗膜を形成する太陽熱集熱用反射板の製造方法。
(x)光照射によって、含フッ素共重合体(A)中のエチレン性不飽和基を反応させる工程。
(y)含フッ素共重合体(A)中のエチレン性不飽和基以外の架橋性基を反応させる工程。
【請求項11】
反射基板が、一方の面に金属および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる反射層を有するガラス基板からなる反射基板(I)である請求項9または10に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
【請求項12】
反射基板が、金属からなる基板の反射面側が鏡面仕上げになっている反射基板(II)である請求項9または10に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
【請求項13】
反射基板が、金属からなる基板の反射面側に金属および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる反射層が形成された反射基板(III)である請求項9または10に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。
【請求項14】
前記金属からなる基板が、アルミニウム、アルミニウム合金およびステンレスからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる基板である請求項12または13に記載の太陽熱集熱用反射板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−167226(P2012−167226A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30863(P2011−30863)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】