太陽集光システム及び太陽熱発電システム
【課題】 集光率を向上させることができる太陽集光システム及び太陽熱発電システムを提供する。
【解決手段】本発明は、レシーバ11に対して太陽光Tを集光する集光ミラー12を備えた太陽集光システム10であって、集光ミラー12は、太陽光Tが入射する表面15aと表面15aの反対側の裏面15bとを有する透明基板15と、透明基板15の裏面15bに形成された反射層17と、を備え、集光ミラー12は、中心軸線Cを中心として回転可能に構成され、透明基板15のうち中心軸線Cに垂直な断面は、反射層17側に向かって凹む弧形状を成している。
【解決手段】本発明は、レシーバ11に対して太陽光Tを集光する集光ミラー12を備えた太陽集光システム10であって、集光ミラー12は、太陽光Tが入射する表面15aと表面15aの反対側の裏面15bとを有する透明基板15と、透明基板15の裏面15bに形成された反射層17と、を備え、集光ミラー12は、中心軸線Cを中心として回転可能に構成され、透明基板15のうち中心軸線Cに垂直な断面は、反射層17側に向かって凹む弧形状を成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽集光システム及び太陽熱発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇や二酸化炭素排出による諸問題に鑑み、再生可能な自然エネルギーである太陽光の利用が広く検討されている。太陽光エネルギーの利用には、太陽電池により太陽光を直接電気に変換する手法と太陽光を太陽熱として吸収して利用する手法とが知られている。太陽熱として利用する手法には、その熱を利用してタービンなどにより間接的に発電するものも含まれる。
【0003】
太陽熱の利用は、蓄熱による安定供給を行うことができ、この点が太陽電池に対する優位性として注目されている。特に、発電せずに熱そのものを利用する場合に効率が高く、太陽熱を利用する意義が大きい。このため、特に産業用の蒸気の供給などの中規模なプラントにおいて太陽熱を利用できる太陽集光システムが日本だけではなく欧州などの世界各国でも検討されている。
【0004】
太陽集光システムとしては、リニアフレネル方式、タワー方式、トラフ方式、ディッシュ方式などが知られており、ここではリニアフレネル方式について説明する。例えば特許文献1には、複数列並べた短冊状のミラーにより太陽光を反射することで直線状のレシーバに集光するリニアフレネル方式の太陽集光システムが開示されている。このようなリニアフレネル方式の太陽熱発電システムでは、管状のレシーバ内部を熱媒体が流れており、集光によってレシーバが受けた熱が熱媒体を介して蒸気タービンなどの発電設備へと送られることで、太陽熱を利用した発電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開2051022A2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リニアフレネル方式で用いるミラーには、表面がフラットなタイプと表面がレシーバに向かって樋状に湾曲したタイプとが存在する。フラットタイプは、ミラー幅以下に集光することはできないため、より集光率を上げたい場合は湾曲タイプのミラーが採用される。
【0007】
ところで、リニアフレネル方式の特徴の一つとして、レシーバは地面に対して固定され、ミラーは太陽の動きに追従して回転する点が挙げられる。この構成では、湾曲タイプのミラーを用いた集光がいわゆる軸外の集光となり像面湾曲が発生するため、多くの場合、一本のレシーバの幅内に集光させることはできない。
【0008】
このため、レシーバを複数列並べたり、レシーバの後方に逸れた光を再反射してレシーバに集光させる二次ミラーを設けたりすることで、反射光の漏れを少なくする手法が通常取られる。しかし、レシーバを複数列並べる手法では、レシーバ一本当たりの集光率が低下して伝熱損失が大きくなってしまう。一方、二次ミラーを設ける手法においても、入射した光を100%レシーバに向けて集光させることは難しく、20%程度の光がレシーバに到達せずに外へ逃れることが知られている。
【0009】
そこで、本発明は、集光率を向上させることができる太陽集光システム及び太陽熱発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、レシーバに対して太陽光を集光する集光ミラーを備えた太陽集光システムであって、集光ミラーは、太陽光が入射する表面と表面の反対側の裏面とを有する透明基板と、透明基板の裏面に形成された反射層と、を備え、集光ミラーは、中心軸を中心として回転可能又は揺動可能に構成され、中心軸に垂直な透明基板の断面は、反射層側に向かって凹む弧形状を成していることを特徴とする。
【0011】
この太陽集光システムによれば、透明基板による太陽光の屈折及び反射層による反射を行う反射屈折系の集光ミラーとすることにより、表面反射である従来の集光ミラーと比べて、像面湾曲の影響を抑制することができるので、レシーバに対する集光率を大幅に向上させることができる。その結果、レシーバや二次ミラーに対する集光スポットの大きさが小さくなるので、太陽に対する追尾制御の精度が緩和されると共に、レシーバに到達しない漏れ光を減少させることができる。
【0012】
上記太陽集光システムにおいては、透明基板は射出成形により成形されても良い。
この場合、フロート法で作成した板ガラスを湾曲させることで透明基板を製造する従来の場合と比べて、正確な湾曲形状の透明基板を高い効率で製造することができる。
【0013】
上記太陽集光システムにおいては、透明基板の表面には、反射防止膜が形成されていても良い。
この構成によれば、太陽光が透明基板の表面でレシーバ以外の方向に反射される可能性を低減することができるので、太陽光の集光率を一層向上させることができる。
【0014】
上記太陽集光システムは、レシーバが中心軸に沿う方向で直線状に延在しており、集光ミラーがレシーバに向けて太陽光を集光するように樋状に形成されているリニアフレネル方式の太陽集光システムであっても良い。
この構成によれば、いわゆるリニアフレネル方式の太陽集光システムにおいて、集光率を大幅に向上させることができる。その結果、ある流速でレシーバ内を流れる熱媒を所望の温度にするために必要となるレシーバの長さ(流路の長さ)を短縮できるため、レシーバ内を流れる熱媒が伝熱及び放射により熱損失が生じることを抑制することができ、より効率的な太陽熱の利用を実現することができる。
【0015】
上記太陽集光システムは、レシーバが地上に立設されたタワー上に設けられており、集光ミラーがレシーバに向けて太陽光を集光するように皿状に形成されているタワー方式の太陽集光システムであっても良い。
この構成によれば、いわゆるタワー方式の太陽集光システムにおいて、集光率を大幅に向上させることができる。
【0016】
本発明に係る太陽熱発電システムは、上述した太陽集光システムを備え、レシーバが得た熱を利用して発電を行うことを特徴とする。
本発明に係る太陽熱発電システムによれば、上述した太陽集光システムを備えることにより太陽光の集光率を大幅に向上させることができる。その結果、効率的に太陽光を吸収して太陽熱を得ることができるので、太陽熱発電の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、集光率を向上させることができる。その結果、レシーバや二次ミラーに対する集光スポットの大きさが小さくなるので、太陽に対する追尾制御の精度が緩和されると共に、レシーバに到達しない漏れ光を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る太陽熱発電システムを示す斜視図である。
【図2】(a)太陽が真上に位置する場合の集光状態を説明するための側面図である。(b)太陽が真上以外に位置する場合の集光状態を説明するための側面図である。
【図3】集光ミラーによる集光状態を説明するための側面図である。
【図4】YZ平面に沿った集光ミラーの拡大断面図である。
【図5】集光ミラーを基準とした太陽光の反射状況を示す図である。
【図6】集光ミラーにおける2β+αとφ1との関係を示すグラフである。
【図7】従来の集光ミラーにおける2β+αとφ0との関係を示すグラフである。
【図8】従来の集光ミラーの像面湾曲の発生を示す図である。
【図9】従来の集光ミラーにおける画角と像面湾曲との関係を示すグラフである。
【図10】本実施形態に係る集光ミラーの像面湾曲の発生を示す図である。
【図11】本実施形態に係る集光ミラーにおける画角と像面湾曲との関係を示すグラフである。
【図12】第1の実施形態に係る太陽熱発電システムの変形例を示す側面図である。
【図13】第2の実施形態に係る太陽集光システムを示す側面図である。
【図14】第2の実施形態に係る集光ミラーの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1に示されるように、第1の実施形態に係る太陽熱発電システム1は、太陽光の集光により得られる太陽熱を利用して発電を行うシステムであり、太陽光を集光するリニアフレネル方式の太陽集光システム10を備えている。
【0021】
リニアフレネル方式の太陽集光システム10は、直線状に延在するレシーバ11と、レシーバ11に向かって太陽光Tを集光する複数列の集光ミラー12と、を備えている。以下、レシーバ11の延在方向をX軸方向、鉛直方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向の両方に直交する方向をY軸方向として説明を行う。
【0022】
レシーバ11は、内部を熱媒体が流れる管状の部材である。熱媒体はガス状であっても液体状であっても良い。レシーバ11は、地面に対して固定されており、左右の支持台13によって高所に支持されている。集光ミラー12の集光によりレシーバ11が得た太陽熱は、内部を流れる熱媒体を通じて発電設備に供給される。発電設備としては、例えば、蒸気タービンなどを用いることができ、熱媒体を通じて供給された太陽熱を利用して発電を行う。
【0023】
集光ミラー12は、レシーバ11に沿ってX軸方向に列をなしており、この集光ミラー12の列がY軸方向で複数配列されている。これらの集光ミラー12は、支持脚14によって支持され、太陽の動きに追従して回転可能に構成されている。
【0024】
図2(a)及び図2(b)は、太陽の動きに追従して集光ミラー12が回転する様子を示す側面図である。図2(a)は、太陽が太陽集光システム10の真上に位置する場合を示している。また、図2(b)は、太陽が太陽集光システム10の真上から外れて位置する場合を示している。図3は、一列の集光ミラー12の反射状態を示す側面図である。図3に、集光ミラー12の中心軸線Cを示す。集光ミラー12は、X軸方向に延びる中心軸線Cを中心として回転可能に構成されている。
【0025】
図2(a)、図2(b)、及び図3に示されるように、樋状に湾曲した集光ミラー12が中心軸線Cを中心として回転することにより、太陽の動きに追従した太陽光Tの集光が行われる。なお、集光ミラー12は、図示しないアクチュエータによって回転駆動されている。
【0026】
図2(a)及び図2(b)に示されるように、リニアフレネル方式の太陽集光システム10では、太陽光Tが集光ミラー12の光軸以外の方向から入射してレシーバ11に反射する状況(いわゆる軸外反射の状況)がほとんどであり、この軸外反射に起因して像面湾曲が発生する。
【0027】
図4は、YZ平面に沿った集光ミラー12の拡大断面図である。図3及び図4に示されるように、集光ミラー12は、透明基板15、反射防止膜16、及び反射層17を備えている。
【0028】
透明基板15は、アクリル樹脂などの透明性の高い樹脂材料から構成されている。透明基板15は、樋状に湾曲した板状の部材であり、中心軸線Cに垂直な断面(YZ平面に沿った断面)は反射層17側に向かって凹む弧形状を成している。透明基板15は、その形状を維持するために十分な剛性を備えている。
【0029】
透明基板15は、レシーバ11側(表側)の表面15aと、表面15aの反対側の裏面15bと、を有している。樋状の透明基板15では、表面15a及び裏面15bのYZ平面に沿った断面形状(中心軸線Cに直交する断面上の形状)が円弧形状を成している。
【0030】
なお、表面15a及び裏面15bは、断面形状の円弧の曲率が同一であっても異なっていても良い。また、表面15a及び裏面15bのYZ平面に沿った断面形状は、円弧形状ではなく放物線形状などであっても良い。更に、表面15a及び裏面15bの断面形状のうち一方が円弧形状、他方が放物線形状であっても良い。
【0031】
透明基板15の表面15aには、太陽光Tの反射を防止するための反射防止膜16が形成されている。反射防止膜16は、例えばフッ化マグネシウムMgF2からなる膜である。反射防止膜16は、複数の材料からなる多層の膜であっても良い。このような反射防止膜16を形成することで、太陽光Tが表面15aで反射することを避けることができる。なお、反射防止膜16を必ずしも備える必要はない。
【0032】
透明基板15の裏面15bには、反射層17が形成されている。反射層17は、例えばアルミニウムAlや銀Agなどから形成されている。反射層17は、裏面15bの全面に形成されていても良く、一部に形成されていても良い。
【0033】
この透明基板15は、加熱溶融させた樹脂材料を金型内に射出注入し、金型内で冷却することで成形を行う射出成形により製造される。射出成形は、複雑な形状の成形品を大量に製造することに適している。
【0034】
次に、本実施形態に係る集光ミラー12の基礎設計について説明する。図5は、集光ミラー12を基準としたレシーバ11の位置変化を示す図である。図5のT1〜T4は、各時刻における太陽光及び反射光を示している。
【0035】
図5に示されるように、集光ミラー12の中心(集光ミラー12の中心軸線Cの位置に等しい)とレシーバ11との距離fは常に一定であるため、各時刻におけるレシーバ11の移動軌跡は集光ミラー12を中心とした半径fの円弧を描く。このため、集光ミラー12は、太陽光の入射角度に関わらず、距離fだけ離れた位置に像面(集点)が形成されるよう構成されることが好ましい。
【0036】
ここで、三次の像面湾曲収差の収差係数αは、三次の非点収差の収差係数β及びペッツバール和Pを用いて下記の式(1)で表されることが知られている。
【数1】
なお、αの逆数がサジタル像面の像面湾曲の曲率半径に相当する。
【0037】
本実施形態に係る樋状の集光ミラー12のように曲率方向に画角を持つ線集光シリンドリカル系の場合、サジタル像面は無限遠となるためメリジオナル像面の像面湾曲が意味を持つことになる。また、集光ミラー12の中心とレシーバ11との距離(集点距離)fはメリジオナル像面の像面湾曲の曲率半径に等しい。このため、下記の式(2)を満たすことで像面湾曲を円弧状に近似してコントロールすることが可能となる。
【数2】
なお、式(2)に式(1)を適用することで下記の式(3)を得ることができる。
【数3】
【0038】
次に、集光ミラー12における全系のパワーΦについて考える。光入射時の透明基板15の表面15aのパワーをΦ1、反射層17(透明基板15の裏面15b)のパワーをΦ2、光出射時の表面15aのパワーをΦ3、とする。この場合、全系のパワーΦは、集光ミラー12の透明基板15の厚さをゼロと仮定する薄肉近似により、下記の式(4)として表される。なお、Φ1及びΦ3は同じ表面15aのパワーであるため、等しい値となる。
【数4】
パワーΦは集点距離fの逆数であるため、下記の式(5)が得られる。
【数5】
【0039】
以上の式(2)及び式(5)が満たされる場合、集点距離fを半径とする円弧状に像面湾曲を近似的にコントロールすることができる。なお、Φ1及びΦ3は、表面15aの曲率半径r1と透明基板15の屈折率nとの関数として下記の式(6)で表される。
【数6】
上記の式(6)より、屈折率nを固定値とすれば、Φ1又はΦ3とr1とは一対一の対応関係となる。
【0040】
また、Φ2は、裏面15bの曲率半径r2と透明基板15の屈折率nとの関数として下記の式(7)で表される。なお、表面15aの曲率半径r1とは、表面15aのYZ平面に沿った断面形状である円弧の曲率半径である。裏面15bの曲率半径r2も同様である。
【数7】
上記の式(7)より、屈折率nを固定値とすれば、Φ2はr2と一対一の対応関係となる。
【0041】
一方、三次の像面湾曲収差の収差係数α及び三次の非点収差の収差係数βは、透明基板15の屈折率nと厚みdとを固定値とすることで、Φ1及びΦ2の関数として表すことができる。すなわち、透明基板15の屈折率nと厚みdとを固定値とすることで、式(2)の左項である2β+αは、Φ1及びΦ2の関数として表せる。なお、このような関数の導出については、例えばレンズ設計法(松居吉哉 著 共立出版(株))を参照することができる。
【0042】
図6は、2α+βとφ1との関係を示すグラフである。このグラフは、Φ1及びΦ2の関数として表した2α+βをプロットすることで得ることができる。このグラフにおいて、fを10000mmとすると、fの逆数は0.00010となる。この値をグラフに反映させることで、Φ1の最適値である−0.000070が導かれる。グラフからΦ1の最適値を導出する状況を破線の矢印として視覚的に示す。
【0043】
得られたΦ1の最適値を式(6)に代入することで、表面15aの曲率半径r1の最適値が求められる。また、Φ1の最適値を式(5)に代入することで、Φ2の最適値を得ることができる。得られたΦ2の最適値を式(7)に代入することで、裏面15bの曲率半径r2の最適値が求められる。これらの最適値を曲率半径として有する表面15a及び裏面15bとすることで、レシーバ11の位置に像面(集点)が形成されるように像面湾曲をコントロールすることができる。これにより、像面湾曲の影響の少ない集光ミラー12の基本設計が達成される。
【0044】
ここで、表面反射である従来の集光ミラーの場合について考える。従来の集光ミラーにおける表面(反射面)のパワーをΦ0とする。また、従来の集光ミラーの中心とレシーバとの距離をfとする。この場合、レシーバに太陽光を集光させる必要性から、従来の集光ミラーのパワーΦ0はfの逆数となるように設定される。
【0045】
図7は、従来の集光ミラーにおける2α+βとφ0との関係を示すグラフである。図7に示されるように、従来の集光ミラーにおいては、パワーΦ0がfの逆数から一意に決まるため、ミラー表面の曲率半径に関する選択肢がない。
【0046】
従来の集光ミラーの中心とレシーバとの距離fを10000mmとすると、fの逆数であるパワーΦ0は0.000100に決まる。このパワーΦ0に対応する2α+βは0.0002となり、2α+βとfの逆数とは一致しない。この状況を破線の矢印を用いて視覚的に示す。図7のグラフから、表面反射である従来の集光ミラーにおいては上記式(2)を満足する条件が存在せず、曲率の変更により像面湾曲をコントロールできないことが明らかとなる。
【0047】
なお、図7では、2α+βの値がfの逆数の二倍に等しいため、従来の集光ミラーによる像面はfの半分の距離(5000mm)を半径とした円弧状に湾曲を発生させてしまう。その結果、従来の集光ミラーから距離f(10000mm)離れたレシーバに対する集光性の低下を招く。
【0048】
続いて、表面反射である従来の集光ミラー50と本実施形態に係る裏面反射の集光ミラー12との比較シミュレーションの結果について説明する。このシミュレーションでは、上述した基本設計に基づいて最適化による微調整を行い、詳細設計を行った状態を演算した。
【0049】
このシミュレーションでは、集光ミラー12の中心からレシーバ11までの距離fを10000mm、ミラー幅(中心軸線Cと直交する方向の幅)を500mm、最大画角を±45degとした。この場合の開口率NAは、0.025となる。
【0050】
また、透明基板15の厚みを5mmとし、透明基板15における屈折率をアクリル樹脂の屈折率と同じとした。具体的には、20℃、1気圧の環境下のアクリル樹脂の屈折率、1.50724857(光の波長が400nmの場合)、1.49358005(光の波長が550nmの場合)、1.48327291(光の波長が1000nmの場合)を採用した。また、表面15aのYX平面に沿った断面形状(中心軸線Cと直交する断面上の形状)を曲率半径9219.71mmの円弧形状、裏面15bのYZ平面に沿った断面形状を曲率半径14499.19mmの円弧形状とした。
【0051】
従来の集光ミラー50についても、集光ミラー50の中心からレシーバ11までの距離fを10000mm、ミラー幅を500mm、最大画角を±45degとした。この場合の開口率NAも、0.025となり、集光ミラー12と同じ値となる。また、従来の集光ミラー50の表面(反射面)のYZ平面に沿った断面形状を曲率半径21920.72mmの円弧形状とした。
【0052】
従来の集光ミラー50におけるシミュレーションの結果を図8及び図9に示す。図8は、従来の集光ミラー50における像面湾曲の発生を示す図である。図8のUは、従来の集光ミラー50の反射光の形成する像面(集点)の軌跡(像面湾曲の状態)を示している。図8のWは、集点距離fを半径とする円弧であり、レシーバ11の移動軌跡を示している。図9は、従来の集光ミラー50における画角と像面湾曲との関係を示すグラフである。画角に対する像面湾曲の変化をF0として示す。
【0053】
図8及び図9に示されるように、従来の集光ミラー50では、±1000mmを超える大きな像面湾曲が発生する結果となった。
【0054】
続いて、本実施形態に係る集光ミラー12におけるシミュレーションの結果を図10及び図11に示す。図10は、集光ミラー12における像面湾曲の発生を示す図である。図11は、集光ミラー12における画角と像面湾曲との関係を示すグラフである。集光ミラー12では、透明基板15で起きる屈折により光が波長によって分けられる。波長が400nmの光の画角に対する像面湾曲の変化をF1、波長が550nmの光の画角に対する像面湾曲の変化をF2、波長が1000nmの光の画角に対する像面湾曲の変化をF3として示す。
【0055】
図10及び図11に示されるように、本実施形態に係る集光ミラー12では、最大でも200mmの像面湾曲しか発生しなかった。本実施形態に係る集光ミラー12では、従来の集光ミラー50の結果と比べて、集光性の悪化が約五分の一となった。
【0056】
以上説明した第1の実施形態に係る太陽集光システム10によれば、透明基板15による太陽光Tの屈折及び反射層17による反射を行う反射屈折系の集光ミラー12とすることにより、表面反射である従来の集光ミラー50と比べて、像面湾曲の影響を抑制することができ、レシーバ11に対する集光率を大幅に向上させることができる。その結果、ある流速でレシーバ11内を流れる熱媒を所望の温度にするために必要となるレシーバ11の長さ(流路の長さ)を短縮できるため、レシーバ11内を流れる熱媒が伝熱及び放射により熱損失が生じることを抑制することができ、より効率的な太陽熱の利用を実現することができる。その結果、レシーバ11に対する集光スポットの大きさが小さくなるので、太陽に対する追尾制御の精度が緩和されると共に、レシーバ11に到達しない漏れ光を減少させることができる。
【0057】
また、この太陽集光システム10では、射出成形により透明基板15の成形を行うことで、フロート法で作成した板ガラスを湾曲させることで透明基板を製造する従来の場合と比べて、正確な湾曲形状の透明基板15を高い効率で製造することができる。更に、射出成形によれば、表面15a及び裏面15bの曲率半径が大きく異なっている透明基板15を製造することも容易となる。
【0058】
なお、反射層17をインサート材とした射出成形により、反射層17を備えた透明基板15を一工程で製造するようにしても良い。この場合、集光ミラー12の製造効率をより一層向上させることができる。
【0059】
また、この太陽集光システム10によれば、集光ミラー12における透明基板15の表面15aに反射防止膜16が形成されているので、太陽光Tが表面15aでレシーバ11以外の方向に反射される可能性を低減することができるので、太陽光Tの集光率を一層向上させることができる。
【0060】
本実施形態に係る太陽熱発電システム1は、太陽集光システム10を備えることにより太陽光Tの集光率を大幅に向上させることができる。その結果、効率的にレシーバ11に太陽光Tを吸収させて太陽熱を得ることができるので、太陽熱発電の効率を向上させることができる。
【0061】
ここで、図12を参照して第1の実施形態に係る太陽集光システム10の変形例を説明する。図12に示されるように、第1の実施形態に係る太陽集光システム10は、レシーバ11の上方を覆う二次ミラー20を備えることができる。
【0062】
略樋状の二次ミラー20は、レシーバ11に向かって下向きに開口して配置されている。二次ミラー20は、レシーバ11に沿ってX軸方向に延在して配置されている。この二次ミラー20は、集光ミラー12からの反射光がレシーバ11を逸れた場合に、再反射によって太陽光Tをレシーバ11に到達させるためのものである。
【0063】
二次ミラー20は、開口面積が大きいほど多くのレシーバ11から離れた反射光を拾うことができるが、開口面積が大きくなると再反射した光がレシーバ11に到達せずに逃れる確率が高くなる。開口面積の大きい従来の二次ミラーを破線で図12に示す。
【0064】
図12に示す構成の太陽集光システム10によれば、二次ミラー20を備えることで、レシーバ11から逸れた光を再反射してレシーバ11に到達させることができるので、システム全体の集光率の更なる向上を図ることができる。しかも、集光ミラー12の集光率向上により反射光がレシーバ11に集まるので、従来と比べて二次ミラー20の小型化を実現することができる。このことは、システム全体の低コスト化に有利である。
【0065】
また、小型化により二次ミラー20の開口面積を小さくすることができるので、二次ミラー20で再反射した光が開口から再び外へ逃れる確率を低減させることができる。
【0066】
なお、太陽集光システム10では、集光率の向上により集光スポットを小さくすることができるので、従来のシステムにおいては二次ミラーが必須な場合でも、二次ミラーを不要とすることもできる。その結果、太陽集光システム10では、システムのコスト削減を図ることができると共に、一次ミラー(集光ミラー12)上にできる二次ミラーの影による効率低下を避けることができる。
【0067】
[第2の実施形態]
図13に示されるように、第2の実施形態に係る太陽集光システム30は、いわゆるタワー方式の太陽集光システムである。太陽集光システム30は、地上に立設されたタワー31と、タワー31の上部に設けられたレシーバ32と、レシーバ32に対して太陽光Tを集光する集光ミラー33と、を備えている。
【0068】
円筒形状のレシーバ32は、タワー31を介して地面に固定されている。レシーバ32の内部には熱媒体の循環流路が形成されており、集光によりレシーバ32が得た熱は熱媒体を通じて各種設備に供給される。
【0069】
集光ミラー33は、いわゆるディッシュ状(皿状)のミラーである。皿状の集光ミラー33の反射光は、レシーバ32に向かって一点に集光する。集光ミラー33は、タワー31の周囲に配置されている。これらの集光ミラー33は、二つの回転軸線(中心軸線)を有しており、これらの回転軸線に対してそれぞれ回転可能に構成されている。集光ミラー33は、太陽の一日の動き及び太陽の一年間の軌道の変化に対応できるよう、直交する二つの回転軸線を有している。
【0070】
図14は、集光ミラー33のYZ平面に沿った拡大断面図である。図14に示されるように、集光ミラー33は、透明基板34、反射防止膜35、及び反射層36を有している。皿状の集光ミラー33は、第1の実施形態に係る樋状の集光ミラー12と比べて、全体形状のみが異なっている。
【0071】
樹脂製の透明基板34は、中央に向かって凹む皿状に形成されている。この透明基板34も、射出成形により成形される。透明基板34の表面34a及び裏面34bは、球面形状であり、YZ平面に沿った断面形状(中心軸線に直交する断面上の形状)は円弧形状を成している。
【0072】
なお、表面34a及び裏面34bは、断面形状の円弧の曲率が同一であっても異なっていても良い。また、表面34a及び裏面34bの断面形状は、円弧形状ではなく放物線形状などであっても良い。更に、表面34a及び裏面34bの断面形状のうち一方が円弧形状、他方が放物線形状であっても良い。
【0073】
透明基板34の表面34aには、反射防止膜35が形成されている。また、透明基板34の裏面34bには、反射層36が形成されている。反射防止膜35及び反射層36の機能については、第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0074】
以上説明した第2の実施形態に係る太陽集光システム30によれば、第1の実施形態に係る太陽集光システム10と同様に、透明基板34による太陽光Tの屈折及び反射層36による反射を行う反射屈折系の集光ミラー33とすることにより、表面反射である従来の集光ミラーと比べて、像面湾曲の影響を抑制することができ、レシーバ32に対する集光率を大幅に向上させることができる。その結果、レシーバ32内を流れる熱媒を所望の温度にするために必要となる集光ミラー33の合計面積が少なくなるので、より効率的な土地利用を実現することができる。
【0075】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0076】
例えば、本実施形態に係る太陽集光システム10は、太陽熱発電への利用に限られない。太陽熱を利用した給湯、蒸気供給、暖房空調、冷房空調(吸収式冷凍機の高温熱源)など、様々な分野に活用することができる。特に、中規模プラントにおける工場の空調や蒸気供給などの用途に適している。また、レシーバ11に太陽電池を配置することにより、集光型の太陽電池システムとして活用することもできる。
【0077】
また、集光ミラー12,33は、必ずしも360度回転可能な構成である必要はなく、360度未満で揺動可能な構成であっても良い。集光ミラー12,33の構成は、上述したものに限られず、支持フレームなどの他の部材を備えていても良く。また、透明基板15,34における表面15a,34a及び裏面15b,34bの形状は、全ての面の断面形状が弧状である必要はなく、一部に断面形状が異なる部位を有していても良い。なお、弧状とは、円弧状や放物線状を含む形状を意味する。例えば、透明基板34の表面34a及び裏面34bは、非球面形状であっても良い。
【符号の説明】
【0078】
1…太陽熱発電システム 10,30…太陽集光システム 11,32…レシーバ 12,33…集光ミラー 15,34…透明基板 15a,34a…表面 15b,34b…裏面 16,35…反射防止膜 17,36…反射層 20…二次ミラー 31…タワー 50…従来の集光ミラー C…中心軸線 T…太陽光
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽集光システム及び太陽熱発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の枯渇や二酸化炭素排出による諸問題に鑑み、再生可能な自然エネルギーである太陽光の利用が広く検討されている。太陽光エネルギーの利用には、太陽電池により太陽光を直接電気に変換する手法と太陽光を太陽熱として吸収して利用する手法とが知られている。太陽熱として利用する手法には、その熱を利用してタービンなどにより間接的に発電するものも含まれる。
【0003】
太陽熱の利用は、蓄熱による安定供給を行うことができ、この点が太陽電池に対する優位性として注目されている。特に、発電せずに熱そのものを利用する場合に効率が高く、太陽熱を利用する意義が大きい。このため、特に産業用の蒸気の供給などの中規模なプラントにおいて太陽熱を利用できる太陽集光システムが日本だけではなく欧州などの世界各国でも検討されている。
【0004】
太陽集光システムとしては、リニアフレネル方式、タワー方式、トラフ方式、ディッシュ方式などが知られており、ここではリニアフレネル方式について説明する。例えば特許文献1には、複数列並べた短冊状のミラーにより太陽光を反射することで直線状のレシーバに集光するリニアフレネル方式の太陽集光システムが開示されている。このようなリニアフレネル方式の太陽熱発電システムでは、管状のレシーバ内部を熱媒体が流れており、集光によってレシーバが受けた熱が熱媒体を介して蒸気タービンなどの発電設備へと送られることで、太陽熱を利用した発電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開2051022A2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リニアフレネル方式で用いるミラーには、表面がフラットなタイプと表面がレシーバに向かって樋状に湾曲したタイプとが存在する。フラットタイプは、ミラー幅以下に集光することはできないため、より集光率を上げたい場合は湾曲タイプのミラーが採用される。
【0007】
ところで、リニアフレネル方式の特徴の一つとして、レシーバは地面に対して固定され、ミラーは太陽の動きに追従して回転する点が挙げられる。この構成では、湾曲タイプのミラーを用いた集光がいわゆる軸外の集光となり像面湾曲が発生するため、多くの場合、一本のレシーバの幅内に集光させることはできない。
【0008】
このため、レシーバを複数列並べたり、レシーバの後方に逸れた光を再反射してレシーバに集光させる二次ミラーを設けたりすることで、反射光の漏れを少なくする手法が通常取られる。しかし、レシーバを複数列並べる手法では、レシーバ一本当たりの集光率が低下して伝熱損失が大きくなってしまう。一方、二次ミラーを設ける手法においても、入射した光を100%レシーバに向けて集光させることは難しく、20%程度の光がレシーバに到達せずに外へ逃れることが知られている。
【0009】
そこで、本発明は、集光率を向上させることができる太陽集光システム及び太陽熱発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、レシーバに対して太陽光を集光する集光ミラーを備えた太陽集光システムであって、集光ミラーは、太陽光が入射する表面と表面の反対側の裏面とを有する透明基板と、透明基板の裏面に形成された反射層と、を備え、集光ミラーは、中心軸を中心として回転可能又は揺動可能に構成され、中心軸に垂直な透明基板の断面は、反射層側に向かって凹む弧形状を成していることを特徴とする。
【0011】
この太陽集光システムによれば、透明基板による太陽光の屈折及び反射層による反射を行う反射屈折系の集光ミラーとすることにより、表面反射である従来の集光ミラーと比べて、像面湾曲の影響を抑制することができるので、レシーバに対する集光率を大幅に向上させることができる。その結果、レシーバや二次ミラーに対する集光スポットの大きさが小さくなるので、太陽に対する追尾制御の精度が緩和されると共に、レシーバに到達しない漏れ光を減少させることができる。
【0012】
上記太陽集光システムにおいては、透明基板は射出成形により成形されても良い。
この場合、フロート法で作成した板ガラスを湾曲させることで透明基板を製造する従来の場合と比べて、正確な湾曲形状の透明基板を高い効率で製造することができる。
【0013】
上記太陽集光システムにおいては、透明基板の表面には、反射防止膜が形成されていても良い。
この構成によれば、太陽光が透明基板の表面でレシーバ以外の方向に反射される可能性を低減することができるので、太陽光の集光率を一層向上させることができる。
【0014】
上記太陽集光システムは、レシーバが中心軸に沿う方向で直線状に延在しており、集光ミラーがレシーバに向けて太陽光を集光するように樋状に形成されているリニアフレネル方式の太陽集光システムであっても良い。
この構成によれば、いわゆるリニアフレネル方式の太陽集光システムにおいて、集光率を大幅に向上させることができる。その結果、ある流速でレシーバ内を流れる熱媒を所望の温度にするために必要となるレシーバの長さ(流路の長さ)を短縮できるため、レシーバ内を流れる熱媒が伝熱及び放射により熱損失が生じることを抑制することができ、より効率的な太陽熱の利用を実現することができる。
【0015】
上記太陽集光システムは、レシーバが地上に立設されたタワー上に設けられており、集光ミラーがレシーバに向けて太陽光を集光するように皿状に形成されているタワー方式の太陽集光システムであっても良い。
この構成によれば、いわゆるタワー方式の太陽集光システムにおいて、集光率を大幅に向上させることができる。
【0016】
本発明に係る太陽熱発電システムは、上述した太陽集光システムを備え、レシーバが得た熱を利用して発電を行うことを特徴とする。
本発明に係る太陽熱発電システムによれば、上述した太陽集光システムを備えることにより太陽光の集光率を大幅に向上させることができる。その結果、効率的に太陽光を吸収して太陽熱を得ることができるので、太陽熱発電の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、集光率を向上させることができる。その結果、レシーバや二次ミラーに対する集光スポットの大きさが小さくなるので、太陽に対する追尾制御の精度が緩和されると共に、レシーバに到達しない漏れ光を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る太陽熱発電システムを示す斜視図である。
【図2】(a)太陽が真上に位置する場合の集光状態を説明するための側面図である。(b)太陽が真上以外に位置する場合の集光状態を説明するための側面図である。
【図3】集光ミラーによる集光状態を説明するための側面図である。
【図4】YZ平面に沿った集光ミラーの拡大断面図である。
【図5】集光ミラーを基準とした太陽光の反射状況を示す図である。
【図6】集光ミラーにおける2β+αとφ1との関係を示すグラフである。
【図7】従来の集光ミラーにおける2β+αとφ0との関係を示すグラフである。
【図8】従来の集光ミラーの像面湾曲の発生を示す図である。
【図9】従来の集光ミラーにおける画角と像面湾曲との関係を示すグラフである。
【図10】本実施形態に係る集光ミラーの像面湾曲の発生を示す図である。
【図11】本実施形態に係る集光ミラーにおける画角と像面湾曲との関係を示すグラフである。
【図12】第1の実施形態に係る太陽熱発電システムの変形例を示す側面図である。
【図13】第2の実施形態に係る太陽集光システムを示す側面図である。
【図14】第2の実施形態に係る集光ミラーの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1に示されるように、第1の実施形態に係る太陽熱発電システム1は、太陽光の集光により得られる太陽熱を利用して発電を行うシステムであり、太陽光を集光するリニアフレネル方式の太陽集光システム10を備えている。
【0021】
リニアフレネル方式の太陽集光システム10は、直線状に延在するレシーバ11と、レシーバ11に向かって太陽光Tを集光する複数列の集光ミラー12と、を備えている。以下、レシーバ11の延在方向をX軸方向、鉛直方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向の両方に直交する方向をY軸方向として説明を行う。
【0022】
レシーバ11は、内部を熱媒体が流れる管状の部材である。熱媒体はガス状であっても液体状であっても良い。レシーバ11は、地面に対して固定されており、左右の支持台13によって高所に支持されている。集光ミラー12の集光によりレシーバ11が得た太陽熱は、内部を流れる熱媒体を通じて発電設備に供給される。発電設備としては、例えば、蒸気タービンなどを用いることができ、熱媒体を通じて供給された太陽熱を利用して発電を行う。
【0023】
集光ミラー12は、レシーバ11に沿ってX軸方向に列をなしており、この集光ミラー12の列がY軸方向で複数配列されている。これらの集光ミラー12は、支持脚14によって支持され、太陽の動きに追従して回転可能に構成されている。
【0024】
図2(a)及び図2(b)は、太陽の動きに追従して集光ミラー12が回転する様子を示す側面図である。図2(a)は、太陽が太陽集光システム10の真上に位置する場合を示している。また、図2(b)は、太陽が太陽集光システム10の真上から外れて位置する場合を示している。図3は、一列の集光ミラー12の反射状態を示す側面図である。図3に、集光ミラー12の中心軸線Cを示す。集光ミラー12は、X軸方向に延びる中心軸線Cを中心として回転可能に構成されている。
【0025】
図2(a)、図2(b)、及び図3に示されるように、樋状に湾曲した集光ミラー12が中心軸線Cを中心として回転することにより、太陽の動きに追従した太陽光Tの集光が行われる。なお、集光ミラー12は、図示しないアクチュエータによって回転駆動されている。
【0026】
図2(a)及び図2(b)に示されるように、リニアフレネル方式の太陽集光システム10では、太陽光Tが集光ミラー12の光軸以外の方向から入射してレシーバ11に反射する状況(いわゆる軸外反射の状況)がほとんどであり、この軸外反射に起因して像面湾曲が発生する。
【0027】
図4は、YZ平面に沿った集光ミラー12の拡大断面図である。図3及び図4に示されるように、集光ミラー12は、透明基板15、反射防止膜16、及び反射層17を備えている。
【0028】
透明基板15は、アクリル樹脂などの透明性の高い樹脂材料から構成されている。透明基板15は、樋状に湾曲した板状の部材であり、中心軸線Cに垂直な断面(YZ平面に沿った断面)は反射層17側に向かって凹む弧形状を成している。透明基板15は、その形状を維持するために十分な剛性を備えている。
【0029】
透明基板15は、レシーバ11側(表側)の表面15aと、表面15aの反対側の裏面15bと、を有している。樋状の透明基板15では、表面15a及び裏面15bのYZ平面に沿った断面形状(中心軸線Cに直交する断面上の形状)が円弧形状を成している。
【0030】
なお、表面15a及び裏面15bは、断面形状の円弧の曲率が同一であっても異なっていても良い。また、表面15a及び裏面15bのYZ平面に沿った断面形状は、円弧形状ではなく放物線形状などであっても良い。更に、表面15a及び裏面15bの断面形状のうち一方が円弧形状、他方が放物線形状であっても良い。
【0031】
透明基板15の表面15aには、太陽光Tの反射を防止するための反射防止膜16が形成されている。反射防止膜16は、例えばフッ化マグネシウムMgF2からなる膜である。反射防止膜16は、複数の材料からなる多層の膜であっても良い。このような反射防止膜16を形成することで、太陽光Tが表面15aで反射することを避けることができる。なお、反射防止膜16を必ずしも備える必要はない。
【0032】
透明基板15の裏面15bには、反射層17が形成されている。反射層17は、例えばアルミニウムAlや銀Agなどから形成されている。反射層17は、裏面15bの全面に形成されていても良く、一部に形成されていても良い。
【0033】
この透明基板15は、加熱溶融させた樹脂材料を金型内に射出注入し、金型内で冷却することで成形を行う射出成形により製造される。射出成形は、複雑な形状の成形品を大量に製造することに適している。
【0034】
次に、本実施形態に係る集光ミラー12の基礎設計について説明する。図5は、集光ミラー12を基準としたレシーバ11の位置変化を示す図である。図5のT1〜T4は、各時刻における太陽光及び反射光を示している。
【0035】
図5に示されるように、集光ミラー12の中心(集光ミラー12の中心軸線Cの位置に等しい)とレシーバ11との距離fは常に一定であるため、各時刻におけるレシーバ11の移動軌跡は集光ミラー12を中心とした半径fの円弧を描く。このため、集光ミラー12は、太陽光の入射角度に関わらず、距離fだけ離れた位置に像面(集点)が形成されるよう構成されることが好ましい。
【0036】
ここで、三次の像面湾曲収差の収差係数αは、三次の非点収差の収差係数β及びペッツバール和Pを用いて下記の式(1)で表されることが知られている。
【数1】
なお、αの逆数がサジタル像面の像面湾曲の曲率半径に相当する。
【0037】
本実施形態に係る樋状の集光ミラー12のように曲率方向に画角を持つ線集光シリンドリカル系の場合、サジタル像面は無限遠となるためメリジオナル像面の像面湾曲が意味を持つことになる。また、集光ミラー12の中心とレシーバ11との距離(集点距離)fはメリジオナル像面の像面湾曲の曲率半径に等しい。このため、下記の式(2)を満たすことで像面湾曲を円弧状に近似してコントロールすることが可能となる。
【数2】
なお、式(2)に式(1)を適用することで下記の式(3)を得ることができる。
【数3】
【0038】
次に、集光ミラー12における全系のパワーΦについて考える。光入射時の透明基板15の表面15aのパワーをΦ1、反射層17(透明基板15の裏面15b)のパワーをΦ2、光出射時の表面15aのパワーをΦ3、とする。この場合、全系のパワーΦは、集光ミラー12の透明基板15の厚さをゼロと仮定する薄肉近似により、下記の式(4)として表される。なお、Φ1及びΦ3は同じ表面15aのパワーであるため、等しい値となる。
【数4】
パワーΦは集点距離fの逆数であるため、下記の式(5)が得られる。
【数5】
【0039】
以上の式(2)及び式(5)が満たされる場合、集点距離fを半径とする円弧状に像面湾曲を近似的にコントロールすることができる。なお、Φ1及びΦ3は、表面15aの曲率半径r1と透明基板15の屈折率nとの関数として下記の式(6)で表される。
【数6】
上記の式(6)より、屈折率nを固定値とすれば、Φ1又はΦ3とr1とは一対一の対応関係となる。
【0040】
また、Φ2は、裏面15bの曲率半径r2と透明基板15の屈折率nとの関数として下記の式(7)で表される。なお、表面15aの曲率半径r1とは、表面15aのYZ平面に沿った断面形状である円弧の曲率半径である。裏面15bの曲率半径r2も同様である。
【数7】
上記の式(7)より、屈折率nを固定値とすれば、Φ2はr2と一対一の対応関係となる。
【0041】
一方、三次の像面湾曲収差の収差係数α及び三次の非点収差の収差係数βは、透明基板15の屈折率nと厚みdとを固定値とすることで、Φ1及びΦ2の関数として表すことができる。すなわち、透明基板15の屈折率nと厚みdとを固定値とすることで、式(2)の左項である2β+αは、Φ1及びΦ2の関数として表せる。なお、このような関数の導出については、例えばレンズ設計法(松居吉哉 著 共立出版(株))を参照することができる。
【0042】
図6は、2α+βとφ1との関係を示すグラフである。このグラフは、Φ1及びΦ2の関数として表した2α+βをプロットすることで得ることができる。このグラフにおいて、fを10000mmとすると、fの逆数は0.00010となる。この値をグラフに反映させることで、Φ1の最適値である−0.000070が導かれる。グラフからΦ1の最適値を導出する状況を破線の矢印として視覚的に示す。
【0043】
得られたΦ1の最適値を式(6)に代入することで、表面15aの曲率半径r1の最適値が求められる。また、Φ1の最適値を式(5)に代入することで、Φ2の最適値を得ることができる。得られたΦ2の最適値を式(7)に代入することで、裏面15bの曲率半径r2の最適値が求められる。これらの最適値を曲率半径として有する表面15a及び裏面15bとすることで、レシーバ11の位置に像面(集点)が形成されるように像面湾曲をコントロールすることができる。これにより、像面湾曲の影響の少ない集光ミラー12の基本設計が達成される。
【0044】
ここで、表面反射である従来の集光ミラーの場合について考える。従来の集光ミラーにおける表面(反射面)のパワーをΦ0とする。また、従来の集光ミラーの中心とレシーバとの距離をfとする。この場合、レシーバに太陽光を集光させる必要性から、従来の集光ミラーのパワーΦ0はfの逆数となるように設定される。
【0045】
図7は、従来の集光ミラーにおける2α+βとφ0との関係を示すグラフである。図7に示されるように、従来の集光ミラーにおいては、パワーΦ0がfの逆数から一意に決まるため、ミラー表面の曲率半径に関する選択肢がない。
【0046】
従来の集光ミラーの中心とレシーバとの距離fを10000mmとすると、fの逆数であるパワーΦ0は0.000100に決まる。このパワーΦ0に対応する2α+βは0.0002となり、2α+βとfの逆数とは一致しない。この状況を破線の矢印を用いて視覚的に示す。図7のグラフから、表面反射である従来の集光ミラーにおいては上記式(2)を満足する条件が存在せず、曲率の変更により像面湾曲をコントロールできないことが明らかとなる。
【0047】
なお、図7では、2α+βの値がfの逆数の二倍に等しいため、従来の集光ミラーによる像面はfの半分の距離(5000mm)を半径とした円弧状に湾曲を発生させてしまう。その結果、従来の集光ミラーから距離f(10000mm)離れたレシーバに対する集光性の低下を招く。
【0048】
続いて、表面反射である従来の集光ミラー50と本実施形態に係る裏面反射の集光ミラー12との比較シミュレーションの結果について説明する。このシミュレーションでは、上述した基本設計に基づいて最適化による微調整を行い、詳細設計を行った状態を演算した。
【0049】
このシミュレーションでは、集光ミラー12の中心からレシーバ11までの距離fを10000mm、ミラー幅(中心軸線Cと直交する方向の幅)を500mm、最大画角を±45degとした。この場合の開口率NAは、0.025となる。
【0050】
また、透明基板15の厚みを5mmとし、透明基板15における屈折率をアクリル樹脂の屈折率と同じとした。具体的には、20℃、1気圧の環境下のアクリル樹脂の屈折率、1.50724857(光の波長が400nmの場合)、1.49358005(光の波長が550nmの場合)、1.48327291(光の波長が1000nmの場合)を採用した。また、表面15aのYX平面に沿った断面形状(中心軸線Cと直交する断面上の形状)を曲率半径9219.71mmの円弧形状、裏面15bのYZ平面に沿った断面形状を曲率半径14499.19mmの円弧形状とした。
【0051】
従来の集光ミラー50についても、集光ミラー50の中心からレシーバ11までの距離fを10000mm、ミラー幅を500mm、最大画角を±45degとした。この場合の開口率NAも、0.025となり、集光ミラー12と同じ値となる。また、従来の集光ミラー50の表面(反射面)のYZ平面に沿った断面形状を曲率半径21920.72mmの円弧形状とした。
【0052】
従来の集光ミラー50におけるシミュレーションの結果を図8及び図9に示す。図8は、従来の集光ミラー50における像面湾曲の発生を示す図である。図8のUは、従来の集光ミラー50の反射光の形成する像面(集点)の軌跡(像面湾曲の状態)を示している。図8のWは、集点距離fを半径とする円弧であり、レシーバ11の移動軌跡を示している。図9は、従来の集光ミラー50における画角と像面湾曲との関係を示すグラフである。画角に対する像面湾曲の変化をF0として示す。
【0053】
図8及び図9に示されるように、従来の集光ミラー50では、±1000mmを超える大きな像面湾曲が発生する結果となった。
【0054】
続いて、本実施形態に係る集光ミラー12におけるシミュレーションの結果を図10及び図11に示す。図10は、集光ミラー12における像面湾曲の発生を示す図である。図11は、集光ミラー12における画角と像面湾曲との関係を示すグラフである。集光ミラー12では、透明基板15で起きる屈折により光が波長によって分けられる。波長が400nmの光の画角に対する像面湾曲の変化をF1、波長が550nmの光の画角に対する像面湾曲の変化をF2、波長が1000nmの光の画角に対する像面湾曲の変化をF3として示す。
【0055】
図10及び図11に示されるように、本実施形態に係る集光ミラー12では、最大でも200mmの像面湾曲しか発生しなかった。本実施形態に係る集光ミラー12では、従来の集光ミラー50の結果と比べて、集光性の悪化が約五分の一となった。
【0056】
以上説明した第1の実施形態に係る太陽集光システム10によれば、透明基板15による太陽光Tの屈折及び反射層17による反射を行う反射屈折系の集光ミラー12とすることにより、表面反射である従来の集光ミラー50と比べて、像面湾曲の影響を抑制することができ、レシーバ11に対する集光率を大幅に向上させることができる。その結果、ある流速でレシーバ11内を流れる熱媒を所望の温度にするために必要となるレシーバ11の長さ(流路の長さ)を短縮できるため、レシーバ11内を流れる熱媒が伝熱及び放射により熱損失が生じることを抑制することができ、より効率的な太陽熱の利用を実現することができる。その結果、レシーバ11に対する集光スポットの大きさが小さくなるので、太陽に対する追尾制御の精度が緩和されると共に、レシーバ11に到達しない漏れ光を減少させることができる。
【0057】
また、この太陽集光システム10では、射出成形により透明基板15の成形を行うことで、フロート法で作成した板ガラスを湾曲させることで透明基板を製造する従来の場合と比べて、正確な湾曲形状の透明基板15を高い効率で製造することができる。更に、射出成形によれば、表面15a及び裏面15bの曲率半径が大きく異なっている透明基板15を製造することも容易となる。
【0058】
なお、反射層17をインサート材とした射出成形により、反射層17を備えた透明基板15を一工程で製造するようにしても良い。この場合、集光ミラー12の製造効率をより一層向上させることができる。
【0059】
また、この太陽集光システム10によれば、集光ミラー12における透明基板15の表面15aに反射防止膜16が形成されているので、太陽光Tが表面15aでレシーバ11以外の方向に反射される可能性を低減することができるので、太陽光Tの集光率を一層向上させることができる。
【0060】
本実施形態に係る太陽熱発電システム1は、太陽集光システム10を備えることにより太陽光Tの集光率を大幅に向上させることができる。その結果、効率的にレシーバ11に太陽光Tを吸収させて太陽熱を得ることができるので、太陽熱発電の効率を向上させることができる。
【0061】
ここで、図12を参照して第1の実施形態に係る太陽集光システム10の変形例を説明する。図12に示されるように、第1の実施形態に係る太陽集光システム10は、レシーバ11の上方を覆う二次ミラー20を備えることができる。
【0062】
略樋状の二次ミラー20は、レシーバ11に向かって下向きに開口して配置されている。二次ミラー20は、レシーバ11に沿ってX軸方向に延在して配置されている。この二次ミラー20は、集光ミラー12からの反射光がレシーバ11を逸れた場合に、再反射によって太陽光Tをレシーバ11に到達させるためのものである。
【0063】
二次ミラー20は、開口面積が大きいほど多くのレシーバ11から離れた反射光を拾うことができるが、開口面積が大きくなると再反射した光がレシーバ11に到達せずに逃れる確率が高くなる。開口面積の大きい従来の二次ミラーを破線で図12に示す。
【0064】
図12に示す構成の太陽集光システム10によれば、二次ミラー20を備えることで、レシーバ11から逸れた光を再反射してレシーバ11に到達させることができるので、システム全体の集光率の更なる向上を図ることができる。しかも、集光ミラー12の集光率向上により反射光がレシーバ11に集まるので、従来と比べて二次ミラー20の小型化を実現することができる。このことは、システム全体の低コスト化に有利である。
【0065】
また、小型化により二次ミラー20の開口面積を小さくすることができるので、二次ミラー20で再反射した光が開口から再び外へ逃れる確率を低減させることができる。
【0066】
なお、太陽集光システム10では、集光率の向上により集光スポットを小さくすることができるので、従来のシステムにおいては二次ミラーが必須な場合でも、二次ミラーを不要とすることもできる。その結果、太陽集光システム10では、システムのコスト削減を図ることができると共に、一次ミラー(集光ミラー12)上にできる二次ミラーの影による効率低下を避けることができる。
【0067】
[第2の実施形態]
図13に示されるように、第2の実施形態に係る太陽集光システム30は、いわゆるタワー方式の太陽集光システムである。太陽集光システム30は、地上に立設されたタワー31と、タワー31の上部に設けられたレシーバ32と、レシーバ32に対して太陽光Tを集光する集光ミラー33と、を備えている。
【0068】
円筒形状のレシーバ32は、タワー31を介して地面に固定されている。レシーバ32の内部には熱媒体の循環流路が形成されており、集光によりレシーバ32が得た熱は熱媒体を通じて各種設備に供給される。
【0069】
集光ミラー33は、いわゆるディッシュ状(皿状)のミラーである。皿状の集光ミラー33の反射光は、レシーバ32に向かって一点に集光する。集光ミラー33は、タワー31の周囲に配置されている。これらの集光ミラー33は、二つの回転軸線(中心軸線)を有しており、これらの回転軸線に対してそれぞれ回転可能に構成されている。集光ミラー33は、太陽の一日の動き及び太陽の一年間の軌道の変化に対応できるよう、直交する二つの回転軸線を有している。
【0070】
図14は、集光ミラー33のYZ平面に沿った拡大断面図である。図14に示されるように、集光ミラー33は、透明基板34、反射防止膜35、及び反射層36を有している。皿状の集光ミラー33は、第1の実施形態に係る樋状の集光ミラー12と比べて、全体形状のみが異なっている。
【0071】
樹脂製の透明基板34は、中央に向かって凹む皿状に形成されている。この透明基板34も、射出成形により成形される。透明基板34の表面34a及び裏面34bは、球面形状であり、YZ平面に沿った断面形状(中心軸線に直交する断面上の形状)は円弧形状を成している。
【0072】
なお、表面34a及び裏面34bは、断面形状の円弧の曲率が同一であっても異なっていても良い。また、表面34a及び裏面34bの断面形状は、円弧形状ではなく放物線形状などであっても良い。更に、表面34a及び裏面34bの断面形状のうち一方が円弧形状、他方が放物線形状であっても良い。
【0073】
透明基板34の表面34aには、反射防止膜35が形成されている。また、透明基板34の裏面34bには、反射層36が形成されている。反射防止膜35及び反射層36の機能については、第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0074】
以上説明した第2の実施形態に係る太陽集光システム30によれば、第1の実施形態に係る太陽集光システム10と同様に、透明基板34による太陽光Tの屈折及び反射層36による反射を行う反射屈折系の集光ミラー33とすることにより、表面反射である従来の集光ミラーと比べて、像面湾曲の影響を抑制することができ、レシーバ32に対する集光率を大幅に向上させることができる。その結果、レシーバ32内を流れる熱媒を所望の温度にするために必要となる集光ミラー33の合計面積が少なくなるので、より効率的な土地利用を実現することができる。
【0075】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0076】
例えば、本実施形態に係る太陽集光システム10は、太陽熱発電への利用に限られない。太陽熱を利用した給湯、蒸気供給、暖房空調、冷房空調(吸収式冷凍機の高温熱源)など、様々な分野に活用することができる。特に、中規模プラントにおける工場の空調や蒸気供給などの用途に適している。また、レシーバ11に太陽電池を配置することにより、集光型の太陽電池システムとして活用することもできる。
【0077】
また、集光ミラー12,33は、必ずしも360度回転可能な構成である必要はなく、360度未満で揺動可能な構成であっても良い。集光ミラー12,33の構成は、上述したものに限られず、支持フレームなどの他の部材を備えていても良く。また、透明基板15,34における表面15a,34a及び裏面15b,34bの形状は、全ての面の断面形状が弧状である必要はなく、一部に断面形状が異なる部位を有していても良い。なお、弧状とは、円弧状や放物線状を含む形状を意味する。例えば、透明基板34の表面34a及び裏面34bは、非球面形状であっても良い。
【符号の説明】
【0078】
1…太陽熱発電システム 10,30…太陽集光システム 11,32…レシーバ 12,33…集光ミラー 15,34…透明基板 15a,34a…表面 15b,34b…裏面 16,35…反射防止膜 17,36…反射層 20…二次ミラー 31…タワー 50…従来の集光ミラー C…中心軸線 T…太陽光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシーバに対して太陽光を集光する集光ミラーを備えた太陽集光システムであって、
前記集光ミラーは、
太陽光が入射する表面と前記表面の反対側の裏面とを有する透明基板と、
前記透明基板の前記裏面に形成された反射層と、を備え、
前記集光ミラーは、所定の中心軸線を中心として回転可能又は揺動可能に構成され、
前記透明基板のうち前記中心軸線に垂直な断面は、前記反射層側に向かって凹む弧形状を成していることを特徴とする太陽集光システム。
【請求項2】
前記透明基板は、射出成形により成形される樹脂製の基板であることを特徴とする請求項1に記載の太陽集光システム。
【請求項3】
前記透明基板の前記表面には、反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽集光システム。
【請求項4】
前記レシーバは前記中心軸に沿う方向で直線状に延在しており、前記集光ミラーは前記レシーバに向けて太陽光を集光するように樋状に形成されているリニアフレネル方式の太陽集光システムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の太陽集光システム。
【請求項5】
前記レシーバは地上に立設されたタワー上に設けられており、前記集光ミラーは前記レシーバに向けて太陽光を集光するように皿状に形成されているタワー方式の太陽集光システムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の太陽集光システム。
【請求項6】
請求項1〜5のうち何れか一項に記載の太陽集光システムを備え、前記レシーバが得た熱を利用して発電を行うことを特徴とする太陽熱発電システム。
【請求項1】
レシーバに対して太陽光を集光する集光ミラーを備えた太陽集光システムであって、
前記集光ミラーは、
太陽光が入射する表面と前記表面の反対側の裏面とを有する透明基板と、
前記透明基板の前記裏面に形成された反射層と、を備え、
前記集光ミラーは、所定の中心軸線を中心として回転可能又は揺動可能に構成され、
前記透明基板のうち前記中心軸線に垂直な断面は、前記反射層側に向かって凹む弧形状を成していることを特徴とする太陽集光システム。
【請求項2】
前記透明基板は、射出成形により成形される樹脂製の基板であることを特徴とする請求項1に記載の太陽集光システム。
【請求項3】
前記透明基板の前記表面には、反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽集光システム。
【請求項4】
前記レシーバは前記中心軸に沿う方向で直線状に延在しており、前記集光ミラーは前記レシーバに向けて太陽光を集光するように樋状に形成されているリニアフレネル方式の太陽集光システムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の太陽集光システム。
【請求項5】
前記レシーバは地上に立設されたタワー上に設けられており、前記集光ミラーは前記レシーバに向けて太陽光を集光するように皿状に形成されているタワー方式の太陽集光システムであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の太陽集光システム。
【請求項6】
請求項1〜5のうち何れか一項に記載の太陽集光システムを備え、前記レシーバが得た熱を利用して発電を行うことを特徴とする太陽熱発電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−79787(P2013−79787A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220990(P2011−220990)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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