説明

太陽電池の出力特性の測定方法、並びに、そのソーラーシミュレータ、及び、ソーラーシミュレータに適用する照度設定用モジュールと光量調整部

【課題】太陽電池の出力特性測定用のソーラーシミュレータにおいて、光源装置側ではなく、その光を受ける測定対象の受光面側において照度の場所むらの抜本的改善をしたソーラーシミュレータを使用する測定方法、並びに、そのソーラーシミュレータに使用する光量調整手段を提供する。
【解決手段】光源ランプ,ランプ光の反射部を備えた光源装置6と、光源装置6の光放射面に対し測定対象の受光面を対向配置できる測定対象のセット部とを具備したソーラーシミュレータSsにより測定対象を太陽電池Msとしてその出力特性を測定するとき、太陽電池Msの受光面全域を複数の受光区画に仮想分割し、仮想分割した各区画受光面に対し選択した光量調整部材8を配置することにより、各区画受光面ごとに光源装置6による照度を均一化乃至ほぼ均一化してから、光源装置6の光を測定対象の受光面に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の出力特性を照度均一な状態で測定することができる測定方法、並びに、そのソーラーシミュレータ、及び、前記ソーラーシミュレータとそれによる測定方法に使用する照度設定用モジュールなどに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池はクリーンなエネルギ源として増々その重要性が認められて需要が高まり、また、大型機器類のパワーエネルギ源から精密な電子機器分野での小型電源まで、様々な分野での需要も高まっている。なお、本明細書において、太陽電池とは太陽電池モジュール(以下、単に「モジュール」ということもある)と太陽電池セル(以下、単に「セル」ということもある)を含む概念である。
【0003】
太陽電池が様々な分野で広く利用されるには、当該電池の特性、とりわけ出力特性が正確に測定されていないと、太陽電池を使用する側においても様々な不都合が予測される。このため従来から太陽電池の出力特性を測定するための擬似太陽光照射装置(以下、ソーラーシミュレータという)が提案され実用にも供されているが、未だ解決すべき問題もある。
【0004】
即ち、ソーラーシミュレータは、パネル状の太陽電池の受光面に均一な照度の人工光(擬似太陽光)を照射して、太陽電池の出力特性を測定するために使用されるが、光源ランプが点又は線とみなされる形態であるため、面状の受光面を有する太陽電池の受光面の全面(又は全域)に対して均一照度での光の照射はきわめて困難であるという点である。
【0005】
従来、上記のような均一照度での光の照射問題を改善することが試みられているが、そのための手法は、その大半が光源装置側の光学系の改善乃至は発光(点灯)回路系の改善対策に止まっている。
【0006】
ソーラーシミュレータの光源装置における光学系乃至発光回路系の改善については、特許文献1〜3などによる提案があるが、光源装置側に改善が施されても、測定対象の受光面での照度むらは±2〜3%より良好にすることが困難であった。
【0007】
また、太陽電池モジュールの一般的な測定においては、有効照射面上の放射照度を1000W/mとしている。そして、そのような照度で照射された測定対象(太陽電池モジュール)の出力特性を示すI-Vカーブは、模式的には図1に例示する態様となる。ここで、Iは電流、Vは電圧である。
【0008】
ところで、ソーラーシミュレータの照射光に受光面における照度むらがあると、図2に模式的に例示するように、I-Vカーブが変化するので、測定している太陽電池の正しい出力特性が測定できているとはいえない。因みに、図2においては、96枚の太陽電池セルを直列した太陽電池モジュール(以下、「96直モジュール」という)を測定対象とし、照射光を10%遮光したセルの枚数を0枚、1枚、2枚、3枚、10枚として照度むらがないとみなした「96直モジュール」と人為的に程度の異なる照度むらを作った「96直モジュール」におけるI-Vカーブを測定した例であり、曲線(a)は照度の場所むらが±1.0%以下の理想的状態、曲線(b)〜(e)は、測定対象(「96直モジュール」)を構成しているセルの、10%遮光セルを、順に、1枚,2枚,3枚,10枚として人為的に程度の異なる照度むらを作った該測定対象のI-Vカーブの例である。
【0009】
図2の線図に示されるように照度むらに起因してI-Vカーブに変化があると、同一構成の太陽電池モジュールであっても、形状因子FF=Pmax/(Isc×Voc)(ここで、Pmaxは、当該モジュールの最大出力、Iscは短絡電流、Vocは開放電圧である)が変化してしまう。この点について図3により説明する。
【0010】
図3は、上記の「96直モジュール」において、横軸に照度むらのレベル(程度)を、遮光率10%で遮光したセルの枚数で示し、縦軸の左側をFF(形状因子、%)の値、縦軸の右側をPmax(最大出力、W)の値として、数値をプロットした線図で、遮光セルの枚数がゼロ(即ち、照度むらが±1.0%以下の理想的状態)のときのPmaxは159.1(W)、FF値は70.7%であるのに対し、照度むらを人為的に作るために用いた遮光セルの枚数を1〜4枚,6枚,8枚,10枚,12枚にした各モジュールでは、Pmaxが154.2〜152.0(W)とバラつき、また、FF値も68.8%から74.1%の間でバラついて変動していることを表している。
【0011】
また、図4は、図3におけるテストモジュールにおいて、一般的な測定方法ではモジュールの受光面の5箇所(セル四隅の4箇所と中央の1箇所)で測定した照度の平均値とテストモジュールの受光面を形成する全てのセルにおける照度の平均値との比率を示す曲線A1と、遮光セルが0枚(照度むらなし)におけるPmax値と、10%遮光セルを1枚〜12枚使用した各モジュールのPmax値の比率を示す曲線B1を示しており、曲線A1とB1において、照度むらのない(±1.0%以下)理想的状態(即ち、遮光セルが0枚)で、Pmax値の比率と照度比率の間に乖離がきわめて少ないが、照度むらを作った各テストモジュールでは、2つの曲線A1とB1の数値の間に大きな乖離があることを示しており、照度むらがあると正確な出力特性の測定が困難であることを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−235903号公報
【特許文献2】特開平9−306201号公報
【特許文献3】特公平6−105280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、太陽電池の特性測定用のソーラーシミュレータにおける光源装置側の光学系の改善や発光回路系の改善によっては、照度の場所むらに起因する出力特性の測定精度に関する問題の根本的解決にはなっていない現状に鑑み、本発明者が鋭意研究,実験を重ねた結果、測定対象の受光面側において照度むらを吸収乃至抑制できるのではないかとの知見を得て本発明の完成を見たものである。
即ち、本発明は、太陽電池の出力特性測定用のソーラーシミュレータにおいて、光源装置側ではなく、その光を受ける測定対象の受光面側において照度の場所むらの抜本的改善をしたソーラーシミュレータを使用する測定方法、並びに、そのソーラーシミュレータに使用する光量調整手段などを提供することを、その課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明測定方法の第一の構成は、光源ランプ,ランプ光の反射部などを備えた光源装置と、該光源装置の光放射面に対し測定対象の受光面を対向配置できる測定対象のセット部とを具備したソーラーシミュレータにより測定対象を太陽電池としてその出力特性を測定するとき、前記太陽電池の受光面全域を複数の受光区画に仮想分割し、仮想分割した各区画受光面に対し選択した光量調整部材を配置することにより、各区画受光面ごとに前記光源装置による照度を均一化乃至ほぼ均一化してから、前記光源装置の光を測定対象の受光面に照射することを特徴とするものである。
【0015】
上記の各区画受光面に対して配置する光量調整部材は、その支持手段に保持させ前記受光面に接近させて配置する。ここで、光量調整部材は、遮光網,遮光テープ,遮光シートのいずれかで形成したものを使用する。
【0016】
本発明では、光量調整部材の支持手段を、光透過性の高い無色透明樹脂板や無色透明ガラス板、或は、各光量調整部材の外周縁に沿った格子状支持パターンを有する枠体により形成した。
【0017】
また、光量調整部材を配置した光量調整部は、測定対象となる太陽電池に仮想形成される区画受光面の大きさや数に合せて光量調整部材を予め複数の支持手段に配備して複数の光量調整ユニットを用意し、測定対象に合せた所要の光量調整部材が配備された光量調整部を選択してソーラーシミュレータにセットする。
【0018】
上記の本発明測定方法では、測定対象の太陽電池と同一構成で形成したモジュールの受光面を複数区画に仮想分割し、仮想分割された各区画受光面にソーラーシミュレータの光源装置から照射される光による出力特性を調整するための光量調整部材を配置し、当該各区画受光面ごとの出力特性のバラつきを補正することにより前記光源装置からの照射光による前記モジュールの受光面の照度が所要値となるように形成した照度設定用モジュールを用いてソーラーシミュレータの光源装置の出力を調整する。
【0019】
上記測定方法で使用する照度設定用モジュールは、測定対象となる複数種の太陽電池の大きさやセル数などにより定まる形態に合せて予め複数種類を形成しておき、測定対象となる太陽電池の形態の違い、即ち、機種に応じた所要の照度設定用モジュールを選択して、ソーラーシミュレータの測定対象セット部にセットし、ソーラーシミュレータの光源装置の出力調整するために使用すると段取り替えの効率が上がる。
【0020】
次に、上記の本発明測定方法を実施するために使用する本発明ソーラーシミュレータの構成は、光源ランプ,ランプ光の反射部などを備えた光源装置と、該光源装置の光放射面に対し測定対象である太陽電池の受光面を対向配置できる測定対象のセット部とを具備したソーラーシミュレータにおいて、前記太陽電池の受光面全域を複数区画に仮想分割して形成される各区画受光面に近接対向させて、当該各区画受光面について選択された光量調整部材を配置した光量調整部をセットし、前記光源装置が放射する光を配置された光量調整部材を通して前記太陽電池の受光面に照射することにより、照度の場所むらのない均一乃至ほぼ均一な光源装置からの光を前記太陽電池の受光面に照射するようにしたことを特徴とするものである。
【0021】
上記ソーラーシミュレータにおいては、測定前に光源装置の照度が適切であるか否かをチェックして調整するための照度設定用モジュールを使用することが望ましいが、そのために好適な照度設定用モジュールの構成は、次の通りである。即ち、測定対象の太陽電池と同一構成で形成した太陽電池モジュールの受光面全域を複数区画に仮想分割し、仮想分割された各区画受光面にソーラーシミュレータの光源装置から照射される光による出力特性を調整するための光量調整部材を配置し、当該各区画受光面ごとの出力特性のバラつきを補正することにより、前記光源装置からの照射光による前記モジュールの受光面の照度が所要値となるように形成したことを特徴とするものである。
【0022】
上記の照度設定用モジュールの受光面全域に形成する複数の区画受光面は、照度設定用モジュールを形成する個々の太陽電池セル単位で、又は、複数の太陽電池セル単位で形成することができる。
【0023】
また、照度設定用モジュールは、その区画受光面を形成する個々の太陽電池セル単位で、又は、複数の太陽電池セル単位で出力特性を検出できるように形成し、各区画受光面での出力特性を均一化乃至ほぼ均一化するようにした構成のものでもよい。
【0024】
更に、上記照度設定用モジュールは、測定対象となる複数種の太陽電池の大きさやセル数などにより定まる形態(太陽電池の機種)に合せて予め複数種類を形成しておき、測定対象の機種に合せて所要の照度設定用モジュールを選択してソーラーシミュレータの測定対象セット部にセットして使用できるようにすると、段取り替えの効率を上げることができる。
【0025】
次に、上記の本発明ソーラーシミュレータに使用する受光側での照度むらを無くすために使用する光量調整部の構成については説明する。
即ち、本発明ソーラーシミュレータの測定対象の受光側近傍に配備される光量調整部の構成は、測定対象である太陽電池の受光面全域を複数区画に仮想分割して形成される各区画受光面が受ける光源装置からの光の照度に合わせて選択される光量調整部材と当該調整部材を配置して支持する支持手段を備えて光量調整部を形成し、該光量調整部を、ソーラーシミュレータにセットされた前記太陽電池の受光面に近接させて当該ソーラーシミュレータにセットするようにしたことを特徴とするものである。
【0026】
上記光量調整部における光量調整部材の支持手段は、測定対象となる複数種の太陽電池にそれぞれに形成される区画受光面の大きさや数などに合せて予め選択された光量調整部材が配置された複数の支持手段を形成しておき、ソーラーシミュレータにセットされる測定対象の機種などに合わせて選択される支持手段をそのセット部に装着することにより、光量調整部の段取り替え効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、光源ランプ,ランプ光の反射部などを備えた光源装置と、該光源装置の光放射面に対し測定対象の受光面を対向配置できる測定対象のセット部とを具備したソーラーシミュレータにより測定対象を太陽電池としてその出力特性を測定するとき、前記太陽電池の受光面全域を複数の受光区画に仮想分割し、仮想分割した各区画受光面に対し選択した光量調整部材を配置することにより、各区画受光面ごとに前記光源装置による照度を均一化乃至ほぼ均一化してから、前記光源装置の光を測定対象の受光面に照射するようにしたので、従来技術では±2〜3%の照度むらを甘受していたが、この照度むらを±1.0%以下に押え込むことが可能になり、測定精度の良好な太陽電池の出力特性の測定を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】太陽電池モジュールの出力特性(I-Vカーブ)の一例の線図。
【図2】照度むらの影響を受けた出力特性の例を示した線図。
【図3】照度むらによる出力特性の影響の度合を説明するための線図。
【図4】図3のテストモジュールにおける照度比率とPmax値の比率を例示した線図。
【図5】本発明を適用する太陽電池の一例を模式的に示した平面図。
【図6】図5の縦断正面図。
【図7】本発明方法により出力特性の測定をする本発明ソーラーシミュレータの例を模式的に例示した断面図。
【図8】図7のソーラーシミュレータにセットされる光量調整部における光量調整部材とその支持手段の例を模式的に示した斜視図。
【図9】照度設定用モジュールの一例の断面図。
【図10】照度設定用モジュールの別例の断面図。
【図11】図10の照度設定用モジュールの使用態様例の断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に本発明の実施の形態例について、図を参照して説明する。
図5は本発明を適用する太陽電池の一例を模式的に示した平面図、図6は図5の縦断正面図、図7は本発明方法により出力特性の測定をする本発明ソーラーシミュレータの例を模式的に例示した断面図、図8は図7のソーラーシミュレータで測定される太陽電池の受光側にセットした光量調整部において光量調整部材の配置例とその支持手段の例を模式的に示した斜視図、図9は照度設定用モジュールの一例の断面図、図10は照度設定用モジュールの別例の断面図、図11は図10の照度設定用モジュールの使用態様例の断面図である。
【0030】
図5,図6に例示した測定対象である太陽電池(以下、単に「モジュールMs」という)は、複数の太陽電池セルCs(以下、単に「セルCs」という)を並べて各セルCsを図の例では直列に接続したもので、ここでは四角形のフレーム1に透明ガラス板などの透明板による受光側2を設け、図では受光側2の上に置かれるEVAなどの封止材3を介して前記セルCsがその封止材3に埋設され、封止材3の表面が樹脂シートなどの裏面材4により被覆されて、モジュールMsの一例に形成されている。なお、各セルCsを接続するリード線Rsはリボン又はタブと称される。また、5はこのモジュールMsの出力電極(端子)である。
【0031】
上記のようなモジュールMsは、公知のソーラーシミュレータの光源装置の光放射面側に、そのモジュールMsの受光側2を対向させて配置し、光源装置の光を照射して、その出力特性を出力端子5から取出して測定している。しかし、この測定態様では受光側2が受ける光源装置から来る光に照度むらがあって、出力特性の測定精度の向上が難かしい点は先に述べたとおりである。
【0032】
図7の光源装置6は、一例として遮光性材料により上面を光学的に開放して形成したハ
ウジング6aと、ハウジング6aの内部のほぼ中心に配置した光源となるランプ6bとランプ6bの下面側に配した断面円弧状の反射部6c、ランプ6bの上面側のリフレクタ6d、リフレクタ6dの上方に配置されたスペクトル調整用のフィルタ6eなどを備えて形成されている。なお、6fは光量の粗調整用部材で、選択的に用いられるものであり、また、光源装置の使用ランプによってはスペクトル調整用フィルタ6eを用いないものもある。
【0033】
公知のソーラーシミュレータでは、図7に例示したような光源装置6の上方に、測定対
象となるモジュールMsをその受光側2を下向きにして配置支持する測定対象(モジュール)セット部(図7では省略)が設置され、出力特性の測定装置や電源装置を備えてソーラーシミュレータとして使用されているが、光源装置6から放射される擬似太陽光BsがモジュールMsの受光側2の場所によって照度むらとなり、精度の高い出力特性の測定の阻害要因となっていた。
【0034】
そこで本発明では、この照度むらを、測定対象の受光側2に近接して配置する光量調整部Lcによって抑制乃至解消するようにしたので、以下にこの点について説明する。
【0035】
図8に例示した本発明の光量調整部Lcを形成するには、まず、図5,図6に例示したモジュールMsに、この例では各セルCsごとに仮想的に区画した仮想の区画受光面に形成する。即ち、図5においては、縦方向の5個の帯区画A〜Eと横方向の4つの帯区画i〜ivのマトリックスによりモジュールMsを形成している個々のセルCs単位の区画が、本発明における区画受光面の単位の一例となる。
【0036】
上記のように区画受光面を設定したモジュールMsに関しては、まず、そのモジュールMsの受光面と同じ形態の区画受光面を設定したアクリルなどの透光性の板材により形成した透光板(図示せず)をソーラーシミュレータSsの測定対象のセット部にセットし、この透光板の各区画受光面に対して照度測定基準となる基準セルを、各区画受光面にトレースする形態で逐次位置付け、各区画受光面での出力特性を測定することによって、各場所(区画受光面ごと)での光源装置6の照射光の照度むらの程度を検出し、この透光板上で照度の最も低い場所(区画)を特定する。次いで、図8に例示したように、前記透光板と同じ仕様の透光性の板材により支持手段7を形成し、この支持手段7に設定される前記受光板と同じ区画受光面における最も暗い照度の区画受光面8Dの照度を基準にして、他の区画受光面の照度が前記受光面8Dの基準照度に揃うよう、この支持手段7における他の各区画受光面に、図8の例では遮光率が異なる3種類の光量調整部材8(8a〜8c)を配置することにより、本発明光量調整部Lcの一例を形成した。なお、上記の透光板に代えて、基準セルを逐次セットできるように、区画受光面状の輪郭を格子枠状に形成した治具を用いることもできる。
【0037】
図8の光量調整部Lcでは、各区画受光面の照度を、最も暗い基準照度の区画受光面8Dの照度に合せるべく、説明の便宜上、3種類の異なる遮光率の光量調整部材8a〜8cを使用したモデル例を模式的に示したものであるから、区画受光面の数や大きさ、或は、使用する光量調整部材8の種類は、上記モデル例に限られるものではない。
【0038】
上記のようにして各区画受光面の照度を均一に揃えた光量調整部材8a〜8cと、これらを配置した支持手段7により形成される本発明光量調整部Lcを、図7に例示するようにソーラーシミュレータSsにセットされたモジュールMsの受光側2に、一例として50〜100mm程度近接させて配置し、この状態で光源装置6から光を照射してモジュールMs全体の出力特性を測定すると、照度の場所むらのない光による出力特性の測定が可能になる。
【0039】
ここで、光量調整部Lcに使用する光量調整部材8a〜8cは、反射を押える塗装を施したメッシュの粗密度が異なる(遮光率が異なる)遮光網や全面に小孔をあけた遮光率が異なる遮光テープ、或は、各区画受光面ごと光通過面積を狭める側に調整できる遮光シートなどであればよい。また、支持手段7としては、光透過性が良好なプラスチック板やガラス板、或は、各光量調整部材8の輪郭状に穴パターンを形成した格子状穴あきの枠板などを用いることができる。
【0040】
上記の光量調整部Lcを、図7に例示したソーラーシミュレータSsに適用すると、測定対象モジュールMsの受光面(受光側2)において、照度むらのない均一な照度の光を光源装置6から照射することができる。この場合において、前記モジュールMsの受光面での光量は、遮光性の光量調整部材8を用いて受光面全体の照度むらが解消されているので、当該受光面が基準照度(例えば、1000W/m)にあるかどうかを検証するする必要がある。
【0041】
そこで本発明においては、上記の測定対象モジュールMsと同一構成の照度測定用モジュールMLを図9に例示したように形成して用いる。即ち、照度設定用モジュールMLは、その受光側2において、区画受光面を形成すると共に各区画受光面のセルの出力特性のバラつきに応じて遮光率が異なる光量調整部材8を夫々に配置してから、このモジュールMLの受光面全域で受けた光源装置6の照射光による照度が所定値(例えば、1000W/m)を満たすかどうかを、出力端子5から取出す出力特性を測定することにより検証し、この検証結果に基づいて光源装置6の光出力を、前記所定値を満たすように調整するのである。
【0042】
図9の照度設定用モジュールMLは、測定対象モジュールMsと同一構成のモジュールにおいて選別したセルCsを用いても±2〜3%程度の特性バラつきがあるので、各セルCsごとの出力特性のバラつきを抑制乃至は無くすために、各区画受光面(ここでは、各セルCs単位)で光量調整部材8を受光側2の表面に貼設している。このためこの照度設定用モジュールMLでその受光面が受ける照度は、受光面全体が受ける照射光による出力特性をモジュールML全体の一つの出力端子5から検出して測定,検証することになる。
【0043】
本発明では、図10に例示するように、照度設定用モジュールMLを形成するすべてのセルCsから、各セルCsごとにチェック用端子TcをこのモジュールMLの外側に取出し、個々のセルCsごとに受光側2に貼着する光量調整部材8を選択しつつ各セルCsごとにその出力特性を各端子Tcにおいて測定し、セルCsごとの出力特性のバラつきが無くなるように調整した照度設定用モジュールMLを使用して、測定対象モジュールMsの受光面での照度が所定値になるようにすることもできる。
【0044】
図10に例示した各セルCsごとに端子(電極)Tcをモジュールの外に出した照度設定用モジュールMLでは、各セルCsの端子Tcを、図11に例示するように接続リードTrを用いて直列接続し、図9に例示した照度設定用モジュールMLと同じ接続のモジュールMLに形成し、このモジュールMLを使用して受光面全体の照度を確認することができる。従って、本発明では上記モジュールMLを図7のソーラーシミュレータSsの測定対象セット部にセットして光源装置6から照射される光の照度を調整してから、この光源装置6の光出力によって測定対象モジュールMsの出力特性を測定することになる。図11において、図9,図10と同一部材,同一部位は同一符号で示している。
【0045】
以上に述べてきたように、本発明では、ソーラーシミュレータSsにおける測定対象モジュールMsのセット部で当該モジュールの受光面2の近くにおいて、前記モジュールMsの受光面が受ける照度を光量調整部材8を用いた光量調整部Lcを通して均一化し、受光面全域において照度むらのない状態で光源装置6の光を照射して出力特性の測定をすることができる。
【0046】
また、本発明においては、測定対象モジュールMsの受光側2が受ける光源装置6からの照射光の照度が所定の照度となっているかどうかを、照度設定用モジュールMLをソーラーシミュレータの測定対象セット部にセットし、受光側の照度を予め測定して調整できるようにしたから、前記の照度むらのない照射光を、所要の照度で測定対象モジュールMsに照射して測定対象モジュールの出力特性の測定をすることができる。
【0047】
更に、本発明においては、光量調整部Lcと照度設定用モジュールMLを、測定対象モジュールMsの形態(モジュールの大きさやセルの数など)に応じて予め複数機種をユニット化して作成しておき、測定対象モジュールMsの機種が変更されるごとに、ユニット化した複数種類の光量調整部Lcと照度設定用モジュールMLの中から適切なユニットを選択してソーラーシミュレータに適用した測定態様を採ることが可能になるので、測定対象モジュールMsの機種が変更されても、いつでもいわば無調整で出力特性の測定を実現できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は以上の通りであって、従来、ソーラーシミュレータにおいては、光源装置側の光学系又は発光回路系の改善による均質照度の実現を図っていたが、それでも受光面での照度むらが±2%〜3%以下となることはなかった点に鑑み、測定対象の受光面において照度むらを解消乃至押え込むため、受光面を小区画の受光面に分けて各区画受光面単位で受光面全体に照度むらのない照射光の均一化を図ることができると共に、照度むらのない受光面全体の照度が所定値にあるかどうかを検出してそれを容易に所定レベルに調整できるようにしたので、以下の効果を得られる。
(1)高精度に太陽電池の出力特性の測定が可能となる。
(2)形状因子FFの『場所むら』による変化を可及的に小さくできる。
(3)狙った区画(小面積)ごとに直接照度の調整ができるので、照度むらを無くすため
の調整を容易、かつ、高精度に行うことができる。
(4)測定対象となる太陽電池の態様に応じて、光量調整部及び/又は照度設定用モジュ
ールを予め製作しておくことにより、測定対象モジュールの構成や形態が変わっても、各
モジュール構成や形態に対応した光量調整部及び/又は照度設定用モジュールを選択して
使用することにより、各測定対象モジュールの機種変更に迅速に対応した高精度の測定を
実現できる。
【符号の説明】
【0049】
Ms 太陽電池モジュール
Cs セル
Rs リード
1 フレーム
2 受光側
3 封止材
4 裏面材
5 出力電極(端子)
6 光源装置
Lc 光量調整部
7 支持手段
8 光量調整部材
ML 照度設定用モジュール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源ランプ,ランプ光の反射部を備えた光源装置と、該光源装置の光放射面に対し測定対象である太陽電池の受光面を対向配置できる測定対象のセット部とを具備したソーラーシミュレータにおいて、
前記太陽電池の受光面全域を略矩形状の複数区画に分割して形成される各区画受光面に近接対向させて、当該各区画受光面について選択された複数種類の光量調整部材を配置した光量調整部をセットし、前記光源装置の照射光をセットされた光量調整部を通して前記太陽電池の受光面に照射することにより、照度の場所むらのない均一乃至ほぼ均一な光源装置からの光を前記太陽電池の受光面に照射するようにしたことを特徴とする太陽電池の出力測定用のソーラーシミュレータ。
【請求項2】
測定対象の太陽電池と同一構成で照度設定用モジュールを形成すると共に該モジュールの受光面全域を略矩形状の複数区画に分割し、分割された各区画受光面にソーラーシミュレータの光源装置から照射される光による出力特性を調整するための複数種類の光量調整部材を配置して前記各区画受光面ごとの出力特性のバラつきを補正することにより、前記光源装置からの照射光による前記モジュールの受光面の照度が所要値となるように形成したことを特徴とするソーラーシミュレータで使用する照度設定用モジュール。
【請求項3】
照度設定用モジュールの受光面に形成される複数の区画受光面は、照度設定用モジュールを形成する個々の太陽電池セル単位で、又は、複数の太陽電池セル単位で形成した請求項2に記載の照度設定用モジュール。
【請求項4】
照度設定用モジュールは、その区画受光面を形成する個々の太陽電池セル単位で、又は、複数の太陽電池セル単位で出力特性を検出できるように形成し、各区画受光面での出力特性を均一化乃至ほぼ均一化するようにした請求項2又は3に記載の照度設定用モジュール。
【請求項5】
照度設定用モジュールは、測定対象となる複数種の太陽電池の大きさやセル数により定まる形態に合せて予め複数種類を形成しておき、測定対象となる太陽電池の形態に合せて所要の照度設定用モジュールを選択してソーラーシミュレータの測定対象セット部にセットするようにした請求項2〜4のいずれかに記載の照度設定用モジュール。
【請求項6】
測定対象である太陽電池の受光面全域を略矩形状の複数区画に分割した各区画受光面が受ける光源装置からの光の照度に合わせて選択される光量調整部材を支持手段に保持させて光量調整部を形成し、該光量調整部を、ソーラーシミュレータにセットされた測定対象の太陽電池の受光面に近接させて当該ソーラーシミュレータにセットするようにしたことを特徴とするソーラーシミュレータで使用する光量調整部。
【請求項7】
光量調整部は、測定対象となる複数機種の太陽電池にそれぞれに形成される区画受光面の大きさや数に合せて予め選択される光量調整部材を複数の支持手段に配置して複数の光量調整ユニットに形成し、ソーラーシミュレータにセットされる測定対象の太陽電池に合わせて選択される前記ユニットをそのセット部に装着するようにした請求項6のソーラーシミュレータの光量調整部。
【請求項8】
光源ランプ,ランプ光の反射部を備えた光源装置と、該光源装置の光放射面に対し測定対象の受光面を対向配置できる測定対象のセット部とを具備したソーラーシミュレータにより測定対象を太陽電池としてその出力特性を測定するとき、前記太陽電池の受光面と前記光源装置の間に前記受光面に近接させて光量調整部を設け、該光量調整部の全域を複数の略矩形状の受光区画に分割し、分割した各区画に対し選択した複数種類の光量調整部材を配置することにより、前記各区画に対応する前記受光面における前記光源装置による照度を測定し、前記受光面全域における照度を均一化乃至ほぼ均一化し、更に請求項2〜5のいずれかに記載の照度設定用モジュールを用いて前記ソーラーシミュレータの光源装置の出力を調整するようにしてから、前記光源装置の光を測定対象としての太陽電池の受光面に照射することを特徴とする太陽電池の出力特性の測定方法。
【請求項9】
照度設定用モジュールは、測定対象となる複数種の太陽電池の大きさやセル数などにより定まる形態に合せて予め複数種類を形成しておき、測定対象となる太陽電池の形態に合せて所要の照度設定用モジュールを選択し、ソーラーシミュレータの測定対象セット部にセットしてソーラーシミュレータの光源装置の出力を調整するようにした請求項8に記載の太陽電池の出力特性の測定方法。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−54596(P2012−54596A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243068(P2011−243068)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2005−25534(P2005−25534)の分割
【原出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】