説明

太陽電池の検査装置

【課題】 太陽電池に順方向の電流を流してEL発光させる検査装置であって、構造が簡単で安価な太陽電池の検査装置を提供する。
【解決手段】 上面に開口部112を有する暗室110と、前記暗室の上面111に設けられ、被測定物を載せる支持手段と、前記暗室110の内部に設けられたカメラ120と、を有する太陽電池の検査装置に、前記開口部および前記開口部112と前記支持手段に載せられた前記太陽電池との境界の隙間から前記暗室内に入る光を遮光するための遮光カバーを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池セル、太陽電池セルを一列に接続したストリング、ストリングを平行に複数配置した太陽電池パネルなど、太陽電池一般の性能を検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの利用方法として、シリコン型の太陽電池が知られている。太陽電池の製造においては、太陽電池が目的の発電能力を有しているかどうかの性能評価が重要である。性能評価には、通常、出力特性の測定がされる。
【0003】
出力特性は、光照射下において、太陽電池の電流電圧特性を測定する光電変換特性として行われる。光源としては、太陽光が望ましいのであるが、天候により照射強度が変化することから、ソーラシミュレータが使用されている。ソーラシミュレータでは、太陽光に代えてキセノンランプやメタルハライドランプ等を使用している。また、これらの光源を長時間点灯していると、温度上昇などにより光量が変化する。そこで、これらのランプのフラッシュ光を用い、横軸を電圧、縦軸を電流として、収集したデータをプロットすることにより太陽電池の出力特性曲線を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ソーラシミュレータと異なる方法として、特許文献2では、シリコンの多結晶型の太陽電池素子に対して順方向に電圧を印加することで、エレクトロルミネッセンス(EL)を生じさせる方法を提案している。太陽電池素子から発光されるELを観察することによって、電流密度分布が分かり、電流密度分布の不均一から太陽電池素子の欠陥を知ることができる。すなわち、発光しない部分が欠陥部分と判断でき、この欠陥部分の面積が予め決められた量より少なければ、所定の発電能力を有するものと判断できることになる。
【0005】
図11は、特許文献2に記載された検査装置の構成を模式的に示す図である。検査装置10は、暗室11と、この暗室11の上部に設けられたCCDカメラ12と、暗室11の床面に載置された太陽電池セル13に電流を流す電源14と、CCDカメラ12からの画像信号を処理する画像処理装置15とから構成されている。
【0006】
暗室11には窓11aがあり、ここにCCDカメラ12のファインダー12aがあって、ここから肉眼で覗くことで、CCDカメラ12の撮影画像を確認することができる。画像処理装置15としては、パソコンを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−88419
【特許文献2】WO/2006/059615
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図11に示す検査装置10は、太陽電池セル13を下に置いて、上からカメラで撮影するのであるが、太陽電池セル13から発光されるELは、1,000nmから1,300nmの波長の微弱な光であり、暗室11でなければ検知できない。被測定物が1枚の太陽電池セルであれば、100mm平方程度なので、暗室11も小さいものでよい。
【0009】
しかし、太陽電池になると、2m×1m程度の大きさとなり、暗室11もこれを収容できる大きさが必要となる。また、被測定物となる太陽電池は、暗室内に入れなければカメラ12で撮影できないので、暗室に太陽電池の出し入れができる扉を設けなければならない。検査装置をこのような暗室内に搬入する構成とすると、設置した扉が閉じた場合の遮光性も確保しなければならない。また検査装置に搬入された太陽電池の位置決め部材や搬送ガイド部材も暗室内に設ける必要がある。さらに、太陽電池に電流を通すための通電手段も暗室内に設ける必要がある。という具合に構造的に複雑になり、高価なものとなる。
さらにこのような検査装置を太陽電池の製造ラインの一装置として組み込む場合に以下のような問題が発生する。被測定物である太陽電池の大型化により、太陽電池全体をカメラで撮影して検査する場合に、そのカメラを太陽電池より下方に設けた場合、太陽電池とカメラとの間の距離を長く設定する必要がある。従って製造ラインにおける太陽電池のパスライン(工場床面から太陽電池を搬送する位置までの高さ寸法)を統一しようとすると、この検査装置を設置する場所のみ、工場床面を掘り下げて設置しなくてはならないこともある。したがって装置を導入する場合の付帯コストが高価なものとなる。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなされたもので、太陽電池に順方向の電流を流してEL発光させる検査装置であって、構造が簡単で安価な太陽電池の検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明の太陽電池の検査装置は、上面に開口部を有する暗室と、該暗室の前記上面に設けられ、被測定物となる太陽電池を載せる支持手段と、前記暗室の内部に設けられたカメラと、を有する太陽電池の検査装置であって、前記開口部および前記開口部と前記支持手段上に載せられた前記太陽電池との境界の隙間から前記暗室内に入る光を遮光するための遮光カバーを備えたことを特徴としている。
【0012】
また上記の目的を達成するために本発明の太陽電池の検査装置は、平らな上面を備えた暗室と、該暗室の前記上面に設けられ、被測定物となる太陽電池を載せる透明板と、前記暗室の内部に設けられたカメラと、を有する太陽電池の検査装置であって、前記透明板、および前記透明板と前記透明板上に載せられた前記太陽電池との境界の隙間から前記暗室内に入る光を遮光するための遮光カバーを備えたことを特徴としている。
【0013】
前記検査装置の遮光カバーは、その側面に被測定物となる太陽電池を搬入搬出するための開閉式の扉を設けた構成とすることもできるし、また遮光カバーの上面に開閉式の扉を設けた構成とすることもできる。
【0014】
前記検査装置は、その撮影用カメラの移動機構を設けた構成とすることもできるし、検査装置の前記暗室の内部にあって前記暗室上面に対して傾斜して反射板を設けた構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の太陽電池の検査装置は、暗室の外側から暗室の上面に被測定物となる太陽電池を置いた場合、遮光カバーにより暗室上面と被測定物である太陽電池の境界の隙間から光を遮蔽することができ、暗室の中にあるカメラが画像を撮影することができる。撮影時には、太陽電池に電流を流しておくので、太陽電池は、EL発光をしている。この発光状態をカメラで撮影し、カメラに接続された画像処理装置で分析することによって、太陽電池の欠陥の有無を知ることができる。
【0016】
本発明の検査装置の遮光カバーの上面に開閉式の扉を設けたので太陽電池セルに順方向の電流を流す場合にその太陽電池の電極へのコネクターの接続を容易に行うことができる。さらに本検査装置の遮光カバーの側面に開閉式の扉を設けたので被測定物である太陽電池を装置内に容易に搬入搬出することが可能となった。
また本発明の検査装置の遮光カバーにより、太陽電池の製造ラインに設置した場合に被測定物の搬入搬出や太陽電池の電極にコネクターを接続する作業を自動化することが容易となった。
【0017】
太陽電池は、暗室の外から暗室の上面に載せることで検査でき、被測定物としての太陽電池を暗室に出し入れするための扉を設ける必要がない。そのため、暗室を小型化でき、その構造を簡単にすることができる。
特に、前記暗室上面に対して傾斜して反射板を設けているので、カメラを暗室の側面に配置することができる。したがって被測定物である太陽電池が大型化しても、暗室の高さを低くすることがでる。これにより製造ラインのパスラインを本発明の検査装置の前工程や後工程と統一することができる。
【0018】
さらに太陽電池の場合、製造ライン(ラミネート装置などの製造装置など)では、受光面を下にして搬送される。したがって本発明の検査装置を暗室上面に被測定物である太陽電池の支持手段や暗室上面に透明板を設ける構成とすることにより、太陽電池を反転することなく本検査装置に載せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の太陽電池の検査装置を示す平面図である。
【図2】本発明の太陽電池の検査装置を示す正面図である。
【図3】本発明の太陽電池の検査装置を示す左側面図である。
【図4】本発明の太陽電池の検査装置の遮光カバーの説明図で、(a)は、平面図で、(b)は正面図である。
【図5】本発明の太陽電池の検査装置の遮光カバーの説明図で、(a)は、被測定物の搬入方向(A方向)から見た側面図で、(b)は、被測定物の搬出方向(B方向)から見た側面図である。
【図6】本発明の太陽電池の検査装置の遮光カバーの平面図であり上面の開閉式の扉が開いた状態の説明図である。
【図7】本発明の検査装置にて測定する太陽電池の構成の説明図で、(a)は、太陽電池の内部の太陽電池セルが分かるように記載した平面図で、(b)はその断面図である。
【図8】暗室内に反射板を設けた本発明の太陽電池の検査装置を示す平面図である。
【図9】暗室内に反射板を設けた本発明の太陽電池の検査装置を示す左側面図である。
【図10】本発明の検査装置に使用するカメラ移動機構の説明図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図11】従来の太陽電池の検査装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を添付の図面を参照して説明する。
【0021】
<1>被測定物(太陽電池)
まず本発明の検査装置が扱う対象である被測定物200の例について説明する。図7は、本発明の検査装置にて測定する太陽電池の構成の説明図で、(a)は、太陽電池の内部の太陽電池セルが分かるように記載した平面図で、(b)はその断面図である。
【0022】
図7(a)の平面図に示す様に、被測定物200である太陽電池は角型の太陽電池セル28がリード線29により複数個直列に接続されたストリング25を形成し、さらにそのストリングを複数列リード線29により接続した構成となっている。
【0023】
被測定物200である太陽電池としては、太陽電池セル28が1枚のみのものでもよく、太陽電池セル28を複数枚直線的につないだストリング25の状態でもよく、ストリング25を平行に複数列並べ、太陽電池セル28がマトリックス状に配置された太陽電池パネル30でもよい。
【0024】
また被測定物の断面構造は、図7(b)に示す様に、上側に配置された裏面材22と下側に配置された透明カバーガラス21の間に、充填材23、24を介して複数列のストリング25をサンドイッチした構成を有する。
【0025】
裏面材22は例えばPETあるいは、フッ素系樹脂などの材料が使用される。充填材23、24には例えばEVA樹脂(ポリエチレンビニルアセテート樹脂)などが使用される。ストリング25は、上記のように電極26、27の間に、太陽電池セル28をリード線29を介して接続した構成である。
【0026】
このような太陽電池は、上記のように構成部材を積層しラミネート装置などにより、真空の加熱状態下で圧力を加え、EVAを架橋反応させてラミネート加工して得られる。
【0027】
また被測定物200としては、一般に薄膜式と呼ばれる太陽電池を対象とすることができる。
【0028】
この薄膜式の代表的な構造例では、下側に配置された透明カバーガラスには、予め透明電極、半導体、裏面電極からなる発電素子が蒸着してある。そして、このような薄膜型太陽電池を、透明カバーガラスを下向きに配置し、ガラス上の太陽電池素子の上に充填材を被せ、更に、充填材の上に裏面材を被せた構造で、同じようにラミネート加工することにより得られる。
【0029】
このように被測定物200としての薄膜式の太陽電池は、結晶系セルが蒸着された発電素子に変わるだけで、基本的な封止構造は前記した結晶系セルの場合と同じである。
【0030】
<2>検査装置の全体構造
図1は本発明の検査装置の構成を示す平面図、図2は正面図、図3は左側面図である。これらの図に示す本発明の太陽電池の検査装置100は、四角の箱形の暗室110およびその平らな上面111には、開口部112が設けられている。尚この開口部112は、暗室内部への埃や異物の侵入を防止すること、また被測定物が暗室内に落下することを防止するために透明板を設けることもできる。透明板は、アクリル樹脂などの合成樹脂製又はガラス製の透明板を取り付ける構成としてもよい。暗室内には、被測定物200である太陽電池を検査測定するカメラ120が設けられている。カメラは、暗室内に固定して使用してもよいし、カメラ120を移動させて使用する場合もあり、その場合は移動機構を設けることもできる。カメラ移動機構は、後述する。
【0031】
暗室110は、上面111の開口部(透明板)112以外は、暗室110内に光を入れないような遮光性の素材からなる構成にしている。もっとも、上面111に被測定物200として太陽電池を載せた後、被測定物200を含む上面111の全体を、遮光手段にて覆うことにすれば、上面111全体を開口部としてもよいし透明板にしてもよい。また、上面以外の4つの側面と底面は遮光性の部材としている。
尚暗室上面111の開口部112に透明板を設けない場合には、被測定物である太陽電池の支持手段を設ける。支持手段は、後述する被測定物の搬送ガイド機構でもよいし、被測定物である太陽電池の両端や4隅をサポートできるような部材を設けることでもよい。
【0032】
<3>被測定物の搬送および位置決め
上面111の上部には、被測定物200を本検査装置への搬入、前工程および後工程に受け渡しするために搬送装置220が設けられている。本搬送装置は、電気モータ起動のチェーンコンベアまたはベルトコンベアを使用することができる。この搬送装置220は、被測定物200を搬送およびガイドする機能を有する搬送ガイド部221R/Lが設けられている。搬送ガイド部221R、221L間の距離は、被測定物200のサイズに合わせて変更可能な構成となっている。
【0033】
本発明の検査装置の前工程から被測定物である太陽電池が搬送されてくると、本検査装置の搬入コンベア210により本検査装置の搬送ガイド部221R/Lに移載される。被測定物200は、搬送ガイド部のコンベア装置220により移動搬送される。したがって被測定物200を搬送中および測定中に下面のカバーガラス21が検査装置100の上面の透明板112に接触することはない。被測定物200は、本検査装置内を搬送され、以下のような方法により測定位置に位置決めされる。
【0034】
搬送ガイド部221R/Lの側面には、アクチュエーター等により出し入れ可能な位置決め金具があり、搬送された被測定物200は、この位置決め金具を突出させることにより搬送方向の位置決めがされる。位置決め金具は、搬送ガイド部材221R/Lの側面から出し入れする構成ではなく、ガイド部材の上方から上下させる方法またガイド部材から旋回下降させるなどの構成とすることも可能である。
位置決めが完了しコンベア装置が停止し検査が開始される。検査方法は、後述する。検査が完了すると、コンベア装置220が作動し被測定物200は搬出コンベア230に移載され次工程に搬送される。
【0035】
また被測定物である太陽電池の搬送手段としては、図10に示すような構成でもよい。暗室上面のガイド部材114は、矩形断面の細長いレール状で、本発明の検査装置100の上面に、被測定物200の流れ方向に沿って一対設けられている。各ガイド部材114の内側側面には、複数個のローラが配置され被測定物200は、このローラー上を移動搬送される。移動手段は、手動でもよいし、ローラを電気モータなどにより駆動する構成でもよい。
【0036】
<4>撮影用カメラ
被測定物200から発するEL発光は、1,000nmから1,300nmの波長の微弱な光であり、暗室内で発光させ、撮影用カメラ120でこの微弱な光を撮影する。このため、撮影用カメラ120としては微弱な光に対する感度の良いCCDカメラを用いる必要がある。
【0037】
実施例の図1、図2、図3では、カメラ移動機構は図示していないが、カメラ移動機構を設けることによりカメラ120をx−y平面内の任意の位置に移動し被測定物200の隅から隅までの全面を撮影することも可能である。またカメラ120の移動機構は、設けることなくカメラ120を固定して使用することも可能である。
【0038】
<5>暗室内部のカメラ移動機構
図10にカメラの移動機構の構成を示す。暗室110内には、カメラ120と、このカメラ120をy軸方向に移動するy軸ガイド部130がある。y軸ガイド部130の一端には、モータ132があり、これが回転することで、カメラ120をy軸方向に進退させることができる。
【0039】
y軸ガイド部130の両端は、x軸ガイド部140、140に支持されている。そして、モータ142と両側のタイミングベルト144とによって、y軸ガイド部130は、x軸ガイド部上を、x軸方向に沿って進退可能となっている。以上の構成において、x軸ガイド部140、140、y軸ガイド部130、モータ132、142、タイミングベルト144とで、カメラ120の駆動機構を構成している。x軸ガイド部140、140及びy軸ガイド部130は、各種のリニアアクチュエータを使用することができるが、この実施例では、ボールネジおよびモータを使用している。
【0040】
駆動機構のモータ132、142を回転制御することで、カメラ120を、x−y平面内の任意の位置に移動し、被測定物200の隅から隅までの全面を撮影することが可能となっている。
【0041】
なお、駆動方式は、モータ及びボールネジを使用した上記の実施例に限定されるものではなく、各種のリニアアクチュエータを使用することができる。
【0042】
<6>暗室内部の反射板
本検査装置は、暗室内部に、暗室上面111に対して傾斜するように反射板190を設けた構成とすることもできる。図8は暗室内に反射板を設けた検査装置の構成を示す平面図、図9はその左側面図である。反射板は、アルミニウム製またはステンレス製などの金属板を表面加工して使用される。ただしその材質は、金属に限定することなく光を透過吸収することなく反射率の大きな材質であれば使用可能である。この反射板は、反射板支持部材191により開口部(透明板)112に対して傾斜して支持されている。これにより暗室の側面に取り付けられたカメラ120が開口部(透明板)112の上に載置された被測定物200の像を写すことができる。実施例の図9では、傾斜角はほぼ45゜としているが、この角度に限定されるものではない。
【0043】
図8、図9では、カメラ120の移動機構は、設けていない。カメラ120は、カメラ収納部121に固定して使用する。なお図10で説明した移動機構を設けることにより、カメラ120を、z−x平面内の任意の位置に移動し、被測定物200の隅から隅までの全面を撮影することも可能である。この場合、図8および図9のカメラ収納部121はx方向に移動ストローク分延長しカメラが移動可能な構造にすれば良い。
【0044】
<7>その他機器
上記の他に、図示を省略するが、図11の従来例で示した電源14やパソコンを利用した画像処理装置15が設けられている。これらは、図2の制御装置400に収納されている。さらに、パソコンを利用して、カメラ120の移動機構を制御し、被測定物200としての太陽電池全体を1枚の写真に撮影したり、個々の太陽電池セル28毎に撮影したりすることができる。
【0045】
<8>検査装置の使用方法
被測定物200として太陽電池を例にして、本発明の太陽電池の検査装置の使用方法を説明する。
【0046】
ラミネート装置などで製造され搬出された太陽電池は、次に、搬入コンベア210により本発明の太陽電池の検査装置の前まで搬送される。搬送されてきた太陽電池は、一対の搬送ガイド部221R、221Lの間で搬送ガイドされ暗室110の上に達する。その後搬送ガイド部221R/Lの側面にアクチュエータ等により出し入れ可能に設けられた位置決め金具を突出させることにより搬送方向の位置決めがされる。
【0047】
暗室上面111の開口部(または透明板)112と被測定物200との間の隙間等から、光が暗室110内に入らないように遮光カバー240が設けられている。
【0048】
暗室上面111の所定の位置に到達した被測定物200である太陽電池は、透明なカバーガラス板を下に向けて暗室110の開口部(透明板)112の上で停止し、図示しない電源との間でコネクター接続がされる。被測定物200の方が開口部(透明板)112より小さいので、周囲から暗室内に光が入るから、被測定物200の上から暗室110の上面全体を後述する遮光カバーなどで覆う。次に被測定物200に電源から順方向の電流を流す。これにより被測定物200がEL発光するので、カメラ120で撮影する。
【0049】
本検査装置100により被測定物200の全体を撮影し、その画像により検査する場合は、カメラの移動機構を設けることなく、または移動機構を使用することなくカメラ120を暗室110の底部のほぼ中央の位置に固定して撮影することができる。尚暗室内に反射板を使用する場合は、カメラを図8の位置に固定して撮影することができる。この場合の被測定物200としては、太陽電池セル28、太陽電池セルを複数個リード線で接続したストリング25、さらにストリング25を複数列リード線で接続したマトリックス状の太陽電池パネル30のいずれでもよい。
【0050】
本検査装置100により太陽電池パネル30にマトリックス状に配置された太陽電池セルを1枚ずつ撮影してその画像により検査する場合は、暗室内でカメラを移動できるように図10のようなカメラ移動機構を設ける。
【0051】
パソコンを利用した制御装置400によって、カメラ移動機構を駆動し、カメラ120は、太陽電池パネル30にマトリックス状に配置されている太陽電池セル28を1枚ずつ撮影し、パソコンなどからなる画像処理装置に画像データを送る。画像処理装置は、各太陽電池セルの画像から発光しない部分を取り出して分析し、太陽電池セル28ごとの合否を判断し、全ての太陽電池セルについての合否の結果から、太陽電池パネル30全体としての合否を判断する。
【0052】
なお、カメラ120による撮影も、カメラを移動し太陽電池セル1枚ごとでもよいし、数枚ずつでもよく、カメラの移動をせずに固定し太陽電池パネル30全体としてもよい。
【0053】
<9>遮光カバー
本発明の検査装置の遮光カバーの実施の形態について図4、図5、図6により説明する。図4(a)は、遮光カバーの平面図であり図4(b)は、正面図である。図5(a)は、遮光カバーを被測定物の搬入側(A方向)から見た側面図であり、図5(b)は、遮光カバーを被測定物の搬出側(B方向)から見た側面図である。図6は、遮光カバーの上面の開閉式の扉を開いた状態の説明図である。
【0054】
図4のとおり遮光カバー240は、暗室に固定されていて暗室上面110の上部全てを覆うものである。241は被測定物を搬入および搬出するための開閉式の扉、242は遮光カバー上面の開閉式の扉、243はメンテナンス用の取り外し可能な蓋である。これらの部材は、全て遮光性の部材で構成されている。また開閉式の扉と遮光カバーの本体との合わせ部分には光がはいることがないように扉側または遮光カバーの本体側にゴムシートなどによるバックシートを貼り付けることが好ましい。
【0055】
扉241の開閉は、エアシンダーなどにより自動開閉する構成でも良いし、また作業者が手動操作にて開閉する構成でも良い。前工程から被測定物が搬送され、搬入コンベア上を移動し本検査装置の直前までくると、この入り口側の扉が開き被測定物が本検査装置内に搬入完了し、またこの扉が閉じる構成となっている。また検査が完了すると出口側の扉が開き被測定物200が搬出される。このように検査中は、被測定物を搬出入する扉は閉じており被測定物が載置されている部分さらには暗室内へは外部からの光が入ることは無い。
【0056】
また遮光カバーの上面には開閉式の扉242が設けられている。扉242の開閉は、エアシンダーなどにより自動開閉する構成でも良いし、また作業者が手動操作にて開閉する構成でも良い。前工程から被測定物が搬送され、先に述べた開閉式の入り口側の扉241を開き、被測定物が検査装置に搬入され所定の位置に到達すると、この扉242を開く。この扉242が開くと図6のように被測定物200が現れる。遮光カバー内のコネクター244を被測定物の電極26、27に接続する。接続が完了したら扉241と242を閉じる。これにより暗室内へは外部から光が入ることは無いので被測定物に通電しEL発光させて検査を行う。検査が完了したら扉242を再度開き、電極からコネクター244を取り外しする。その後出口側の扉241を再度開き、被測定物が本検査装置から搬出されることになる。尚電極へのコネクターの接続および取り外し作業は、作業者が手作業で行っても良いしロボットなどで自動化しても良い。
【0057】
本検査装置の遮光カバーには適宜メンテナス用の開口部を設けることが好ましい。例として図4では、この開口部は遮光カバーの上面に2箇所2点鎖線部として設けてあり蓋243で覆われている。これに限ることはなく、このような開口部は蓋で覆うことにより遮光カバーの上面や側面に適宜設けることができる。
【0058】
本実施形態の説明では、遮光カバー240を暗室上面全てを覆い暗室に固定する構成としたが、この遮光カバー240をアクチュエータにより上下に可動式とした構成とすることも可能である。
また太陽電池の樹脂製の裏面材22は、不透明であり、遮光性が十分である。また、暗室110の上面111も、開口部(透明板)112以外は遮光性の部材で構成されている。したがって暗室110の開口部(透明板)112と被測定物200との間の隙間部分のみを遮光部材でカバーするような構成とすることも可能である。
【0059】
本発明の太陽電池の検査装置100では、被測定物200としての太陽電池を暗室の外側に載置すればよいので、暗室には被測定物200を出し入れするためのドアは不要となる。また、太陽電池に電流を流す電源や配線も暗室110の外でよく、暗室内には一切不要である。そのため、暗室110の構造を簡単にすることができる。
本発明の検査装置の遮光カバーの上面に開閉式の扉を設けたので太陽電池セルに順方向の電流を流す場合にその太陽電池の電極へのコネクターの接続を容易に行うことができる。さらに本検査装置の遮光カバーの側面に開閉式の扉を設けたので被測定物である太陽電池を装置内に容易に搬入搬出することが可能である。
【0060】
また本発明の検査装置の遮光カバーにより、被測定物に搬入搬出や太陽電池の電極にコネクターを接続する作業を自動化することが容易となった。したがって本発明の検査装置は、太陽電池の製造ラインの自動化に適している。
【0061】
特に、反射板190を被測定物200に対して傾斜させて取り付けることにより、カメラを暗室内で横向きに設置することにより暗室110の高さを低くすることができ、装置のさらなる小型化を実現することができる。これにより製造ラインのパスラインを統一するために装置を設置する部分の床面を掘り下げるなどの付帯工事が不要となる。
【0062】
さらに本発明の太陽電池の検査装置100は、太陽電池などの製造ラインに配置して使用するが、このとき、暗室110の上面111に太陽電池の受光面を下側にして載置している。太陽電池のラミネート加工など、通常の加工工程では、太陽電池の受光面を下にして搬送しているので、検査装置100に載置するとき、反転する必要がないので製造工程を簡略化できる。
【符号の説明】
【0063】
28 太陽電池セル
30 太陽電池パネル
100 太陽電池の検査装置
110 暗室
111 上面
112 開口部(透明板)
114 ガイド部材
120 カメラ
121 カメラ収納部
130 y軸ガイド部
132、142 モータ
140 x軸ガイド部
144 タイミングベルト
190 反射板
191 反射板支持部材
200 被測定物
210 搬入コンベア
220 コンベア装置
221R/L 搬送ガイド部
230 搬出コンベア
240 遮光カバー
241 扉
242 扉
243 蓋
244 コネクター
400 制御装置
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部を有する暗室と、該暗室の前記上面に設けられ、被測定物となる太陽電池を載せる支持手段と、前記暗室の内部に設けられたカメラと、を有する太陽電池の検査装置であって、前記開口部および前記開口部と前記支持手段上に載せられた前記太陽電池との境界の隙間から前記暗室内に入る光を遮光するための遮光カバーを備えたことを特徴とする太陽電池の検査装置。
【請求項2】
前記検査装置の前記遮光カバーの側面に被測定物となる太陽電池を搬入搬出するための開閉式の扉を設けたことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項3】
前記検査装置の前記遮光カバーの上面に開閉式の扉を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項4】
前記カメラの移動機構を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
【請求項5】
前記暗室の内部にあって前記暗室上面に対して傾斜して設けられた反射板を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
【請求項6】
平らな上面を備えた暗室と、該暗室の前記上面に設けられ、被測定物となる太陽電池を載せる透明板と、前記暗室の内部に設けられたカメラと、を有する太陽電池の検査装置であって、前記透明板、および前記透明板と前記透明板上に載せられた前記太陽電池との境界の隙間から前記暗室内に入る光を遮光するための遮光カバーを備えたことを特徴とする太陽電池の検査装置。
【請求項7】
前記検査装置の前記遮光カバーの側面に被測定物となる太陽電池を搬入搬出するための開閉式の扉を設けたことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項8】
前記検査装置の前記遮光カバーの上面に開閉式の扉を設けたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の太陽電池の検査装置。
【請求項9】
前記カメラの移動機構を設けたことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
【請求項10】
前記暗室の内部にあって前記暗室上面に対して傾斜して設けられた反射板を設けたことを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の太陽電池の検査装置。
















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−272617(P2009−272617A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78637(P2009−78637)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3143169号
【原出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【Fターム(参考)】