説明

太陽電池の電極と導電性ペーストの製造方法

【課題】太陽電池の電極と導電性ペーストの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、半導体基板の前面、裏面、または前面および裏面の両方の上に予備形成された電極を有する半導体基板を作製する工程と、導電性粉末と、50℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する非晶質飽和ポリエステル樹脂と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを予備形成された電極上に適用する工程と、適用された導電性ペーストを乾燥させる工程と、タブ電極を乾燥された導電性ペースト上に置く工程と、タブ電極をはんだ付けする工程とを含む、太陽電池の電極を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池の電極に関し、より具体的には、太陽電池の電極を形成するための導電性ペーストおよび太陽電池の電極を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2種類の導電性ペーストがある。一方は、高温において、例えば500℃以上において焼成する間に溶融することによって基板に付着するガラスフリットを含有する焼成タイプである。他方は、ガラスフリットを実質的に含有せず、比較的低温において、例えば300℃以下において加熱されることによって導電性ペースト中のポリマー樹脂それ自体によって基板に付着する導電性ペーストのポリマータイプである。焼成工程において高温を必要としないので、ポリマータイプの導電性ペーストを使用することによって製造された太陽電池の電極が必要とされる。しかしながら、ポリマータイプの導電性ペーストから製造された太陽電池の電極は時々、はんだ付けの熱の影響によって剥離する。
【0003】
(特許文献1)には、導電性粒子を含有する導電性組成物、および熱硬化性エポキシ樹脂組成物によって形成された太陽電池の電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0196757号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、基板と電極との間ならびに電極とはんだ付けによって付着された銅リボンとの間の十分な接着性を有する太陽電池の電極を形成するためのポリマータイプの導電性ペーストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、半導体基板の前面、裏面、または前面および裏面の両方の上に予備形成された電極を有する半導体基板を作製する工程と、導電性粉末と、50℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する非晶質飽和ポリエステル樹脂と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを予備形成された電極上に適用する工程と、適用された導電性ペーストを80〜250℃において乾燥させる工程と、タブ電極を乾燥された導電性ペースト上に置く工程と、タブ電極をはんだ付けする工程とを含む、太陽電池の電極を製造する方法に関する。
【0007】
本発明の別の態様は、導電性ペーストの全重量に基づいて、導電性粉末40〜90重量パーセントと、
溶剤5〜50重量パーセントと、50℃以下のTgを有する非晶質飽和ポリエステル樹脂3〜20重量パーセントとを含む、太陽電池の電極を製造するための導電性ペーストに関する。
【0008】
本発明による太陽電池の電極は十分な接着性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ハイブリッドタイプの太陽電池の断面図である。
【図2A】ハイブリッドタイプの太陽電池の電極を形成する方法を説明するための図面である。
【図2B】ハイブリッドタイプの太陽電池の電極を形成する方法を説明するための図面である。
【図2C】ハイブリッドタイプの太陽電池の電極を形成する方法を説明するための図面である。
【図2D】ハイブリッドタイプの太陽電池の電極を形成する方法を説明するための図面である。
【図3A】結晶タイプの太陽電池の電極を前面に形成する方法を説明するための図面である。
【図3B】結晶タイプの太陽電池の電極を前面に形成する方法を説明するための図面である。
【図3C】結晶タイプの太陽電池の電極を前面に形成する方法を説明するための図面である。
【図4A】結晶タイプの太陽電池の電極を前面に形成する方法を説明するための図面である。
【図4B】結晶タイプの太陽電池の電極を前面に形成する方法を説明するための図面である。
【図4C】結晶タイプの太陽電池の電極を前面に形成する方法を説明するための図面である。
【図5A】結晶タイプの太陽電池の電極を裏面に形成する方法を説明するための図面である。
【図5B】結晶タイプの太陽電池の電極を裏面に形成する方法を説明するための図面である。
【図5C】結晶タイプの太陽電池の電極を裏面に形成する方法を説明するための図面である。
【図6A】有機薄膜太陽電池の電極を形成する方法を説明するための図面である。
【図6B】有機薄膜太陽電池の電極を形成する方法を説明するための図面である。
【図6C】有機薄膜太陽電池の電極を形成する方法を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の太陽電池の電極を製造する方法ならびに方法において使用された導電性ペーストが図面と共に以下に説明される。
【0011】
太陽電池の電極を製造する方法
ハイブリッドタイプ、結晶タイプ、非晶質タイプ、または薄膜タイプなどの太陽電池のいくつかのタイプがある。しかしながら、太陽電池のタイプは限定されない。
【0012】
実施形態において、太陽電池はハイブリッドタイプの太陽電池でありうる。ハイブリッドタイプの場合、基板は、半導体基板101、および透明電極102を含むことができる。図1に示されるように透明電極102を半導体層101の前面および裏面の両方の上に形成することができる。透明電極102はインジウムチタン酸化物(ITO)から製造されてもよい。予備形成された電極は、この場合、透明電極102である。
【0013】
ハイブリッドタイプの太陽電池の半導体層101は、単結晶半導体層、および単結晶半導体層の前面および裏面の両方の上の非晶質半導体層の少なくとも3層状でありうる。
【0014】
「前面」は、日光から電気を発生させるために導入される時に日光を受容する面として本明細書において定義される。「裏面」は、前面の反対側の面として定義される。
【0015】
集電極103を前面および裏面の両方において透明電極102上に形成することができる。タブ電極104を使用することによって前面上の集電極103を隣接する太陽電池の裏面上の集電極に接続することができる。タブ電極104がはんだ105によって被覆されて付着することができる。本発明の導電性ペーストを集電極103のために使用することができる。従って、太陽電池は、はんだ付けの後でも集電極とタブ電極との強固な接着性を確実にすることができる。
【0016】
太陽電池を製造する方法が図2〜図4によって説明される。
【0017】
実施形態において、予備形成された電極として透明電極202を有する半導体基板201が図2Aに示されるように作製される。透明電極202を半導体基板201の少なくとも前面上に形成することができる。しかしながら、図2Aに示されるように前面および裏面の両方の上に透明電極202を形成することも可能である。透明電極202を例えばITOによる化学蒸着(CVD)によって形成することができる。
【0018】
導電性ペースト203を前面の透明電極層202上に適用して、集電極を形成する。適用は、特に、細線パターンを形成する時に導電性ペースト203をスクリーン印刷することによって行われてもよい。適用された導電性ペースト203のパターンは、図2Bに示されるように母線203(a)の少なくとも1つの線と多くの細い指線203(b)とを含むくし形状としうる。母線203(a)が指線203(b)の上で交差して、半導体層101が発生する電気を透明電極202、および指線203(b)を通して移動させる。
【0019】
導電性ペーストの粘度は、適用方法の観点から10rpmにおいて50〜300パスカル秒であってもよい。例えば、それをスクリーン印刷によって適用するとき、粘度は10rpmにおいて100〜300パスカル秒であってもよい。粘度は、室温で10rpmにおいてスピンドル#14を用いて粘度計ブルックフィールドHBT SSA14/6Rによって測定されてもよい。
【0020】
次に、乾燥は炉内またはホットプレート上で行われる。乾燥温度は50〜250℃とすることができる。乾燥時間は1〜30分とすることができる。この乾燥温度および時間で、有機溶剤は十分に蒸発して完全に乾燥することができる。次に、導電性ペーストは固化され、完全に乾燥した後に電極になる。
【0021】
集電極203の厚さは、実施形態において少なくとも10μm、別の実施形態において少なくとも15μm、別の実施形態において少なくとも20μmとすることができる。このような厚さによって、電極の接着性は以下の実施例に示されるように十分でありうる。電極の厚さが増すと、電極の抵抗が低くなるので、最大厚さの制限はない。しかしながら、細いパターンが太陽電池の電極上に必要とされることを考慮して、電極の厚さは実施形態において100μm以下、別の実施形態において80μm以下、別の実施形態において70μm以下とすることができる。
【0022】
図2Cに示されるように太陽電池を相互接続するためのタブ電極204を母線203(a)上に置くことができる。次に、図2Dに示されるようにタブ電極204がはんだ205で被覆されて付着することができる。はんだ205を200〜300℃において加熱して溶融し、母線203(a)を被覆することができる。はんだ付けしたとき、導電性ペーストを熱によって十分に溶融して基板に強固に付着させることができる。導電性ペースト中で熱可塑性である非晶質飽和ポリエステル樹脂は、接着性に影響を与える。実施形態において、はんだペーストでコートされたタブ電極として銅リボンを含むはんだリボンを使用して、形成工程をさらに簡単にすることができる。
【0023】
図3は、結晶タイプの太陽電池の別の実施形態を示す。結晶タイプの太陽電池において、図3Aに示されるように半導体基板301の前面に少なくとも母線302(a)と指線302(b)とを含む集電極を有する半導体基板を作製する。集電極302は、導電性粉末と、ガラス粉末と、有機媒体とを含む導電性ペーストを適用する工程と、次に導電性ペーストを400℃〜900℃において焼成する工程とによって形成されうる。予備形成された電極は、この場合、集電極302である。
【0024】
次に、導電性ペースト303を予備形成された母線302(a)上に適用する。導電性ペースト303をバス電極上に少なくとも部分的に適用することができる。それをバス電極の表面全体に適用することは必要ではない。しかしながら、太陽電池の電極の接着性を増加させることを望むとき、導電性ペースト303を母線302(a)上に全体に適用することができる。導電性ペースト304を適用および乾燥させる方法は、上に説明されたのと同じ方法としうる。
【0025】
次に、図3Cに示されるように、タブ電極304が、乾燥された導電性ペースト303上に置かれ、次いではんだ305で被覆されて付着する。はんだ付け方法は、上に説明されたのと同じ方法としうる。
【0026】
図4に示されるように別の実施形態において、導電性ペーストを使用して半導体基板の前面に母線を形成することができる。図4Aに示されるように、少なくとも、半導体基板401の前面である1つの面上に指線402を有する半導体基板401を作製する。予備形成された電極は、この場合、指線402である。
【0027】
図4Bに示されるように、導電性ペースト403を半導体基板401の前面上に形成された予備形成された指線402上に適用する。この時に、導電性ペースト403が指線402の上で交差し、半導体基板401に、もしくは不活性化層、例えば窒化ケイ素層が半導体基板上に形成される場合には不活性化層に部分的に付着する。導電性ペースト403が、予備形成された電極だけでなく窒化ケイ素層にも十分に付着することが以下の実施例において観察される。
【0028】
次に、乾燥工程が上に説明されたように行われる。図4Cに示されるように、タブ電極404が、乾燥された導電性ペースト403上に置かれ、次に、はんだ405で被覆されて付着する。はんだ付け方法は、上に説明されたのと同じとしうる。
【0029】
図5に示されるように実施形態において、導電性ペーストを半導体基板の裏面において使用することができる。図5Aに示されるように半導体基板501の裏面に裏面電極502を有する半導体基板501を作製する。裏面電極502は、少なくとも導電性粉末と有機媒体とを含む導電性ペーストを適用する工程と、それを焼成する工程とによって形成されうる。裏面が直射日光をほとんど受光しない場合、裏面電極502は半導体基板の最大表面上に形成することができる。裏面電極502のための導電性ペーストにおいて使用された導電性粉末はアルミニウム粉末としうる。予備形成された電極は、この場合、裏面電極502である。
【0030】
図5Bに示されるように、導電性ペースト503を予備形成された裏面電極502上に適用することができる。図5Cに示されるように、タブ電極504が、乾燥された導電性ペースト503上に置かれ、次に、はんだ505で被覆されて付着する。乾燥およびはんだ付け工程を上に説明されたように行うことができる。
【0031】
図6に示されるように別の実施形態において、導電性ペーストを有機薄膜太陽電池において使用することができる。図6(a)に示されるように、透明電極602を前面に有し裏面電極604を半導体基板601の裏面に有する半導体基板601を作製する。支持基材としてガラス基板を半導体基板601の透明電極602の側に備えている。この実施形態において、直射日光がガラス基板603の側から半導体基板601に入射する。半導体層601は、100μm以下の厚さのケイ素による化学蒸着(CVD)によって形成することができる。透明電極602は、ITOによるスパッタリングによって形成することができる。裏面電極604は一般に、銀、ニッケルまたはアルミニウムなどの金属をスパッタリングすることによって形成しうる。
【0032】
図6(b)に示されるように、導電性ペースト605(a)を透明電極602の一部の上に適用することができる。予備形成された電極は、この場合、透明電極602である。図6(c)に示されるように、タブ電極606(a)が、適用された導電性ペースト605(a)上に置かれ、次に、はんだ607(a)によって付着する。
【0033】
図6(b)に示されるように別の実施形態において、導電性ペースト605(b)を裏面電極604の一部に上に適用することができる。予備形成された電極は、この場合、裏面電極604である。図6(c)に示されるように、タブ電極606(b)が、適用された導電性ペースト605(b)上に置かれ、次に、はんだ607(b)で被覆されて付着する。
【0034】
上述のどの実施形態においても導電性ペーストを適用する方法は限定されないが、しかしながら、それは、例えばスクリーン印刷またはノズル放出、オフセット印刷法、ドクターブレード法または転写法としうる。
【0035】
上述の実施形態において使用された導電性ペーストを以下に詳細に説明する。導電性ペーストはポリマータイプであり、ガラスフリットを実質的に含有しない。ガラスフリットが含有されない場合でも、その量は、導電性ペーストの全重量に基づいて、実施形態において0.5wt%以下、別の実施形態において0.1wt%以下としうる。
【0036】
導電性粉末
導電性粉末は、電極内で電流を送るための粉末である。
【0037】
導電性粉末は、実施形態において、293ケルビンで1.00×107ジーメンス(S)/m以上の導電率を有する金属粉末としうる。このような導電性粉末は、鉄(Fe、1.00×107S/m)、アルミニウム(Al、3.64×107S/m)、ニッケル(Ni、1.45×107S/m)、銅(Cu、5.81×107S/m)、銀(Ag、6.17×107S/m)、金(Au、4.17×107S/m)、モリブデン(Mo、2.10×107S/m)、マグネシウム(Mg、2.30×107S/m)、タングステン(W、1.82×107S/m)、コバルト(Co、1.46×107S/m)、亜鉛(Zn、1.64×107S/m)およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0038】
導電性粉末の導電率は、別の実施形態において293ケルビンにおいて3.00×107S/m以上としうる。このような導電性粉末は、Al、Cu、Agおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。太陽電池の電気的性質は、比較的高い導電率を有するこれらの導電性粉末を使用することによってさらに改良しうる。導電性粉末は、別の実施形態においてAl、Cu、Ni、Feおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。400℃などの高温において加熱することによって容易に酸化されうるこれらの金属粉末は、このような高温において焼成も硬化もされない導電性ペースト中の導電性粉末として適している場合がある。
【0039】
導電性粉末の形状に制限はない。しかしながら、フレーク状の導電性粉末、球状の導電性粉末またはそれらの混合物が一般にしばしば使用される。実施形態において、導電性粉末の形状はフレーク状の導電性粉末としうる。フレーク状の導電性粉末は互いの接触面積を増加させることができ、従ってそれは十分な導電率を得る。また、導電性粉末は球状粉末とフレーク状の粉末との混合物としうる。
【0040】
導電性粉末の粒径(D50)は、実施形態において0.1〜10.0μm、別の実施形態において0.5〜8μm、別の実施形態において1〜5μmとしうる。範囲内の粒径は、有機媒体中に十分に分散されうる。異なった粒径を有する導電性粉末の2つ以上の混合物を含む導電性粉末を実施形態において使用することができる。電極の導電率を高めるために小さめの粒子が大きめの粒子の空隙を埋めることができる。例えば、導電性粉末は、0.1〜3μmの粒径を有する導電性粉末と4〜10μmの粒径を有する導電性粉末との混合物としうる。
【0041】
平均直径(D50)は、MicrotracモデルX−100でレーザー回折散乱方法を使用して粉末直径の分布を測定することによって得られる。
【0042】
導電性粉末は、99%以上の通常高純度とすることができる。しかしながら、電極パターンの電気的要求条件に応じて、より低めの高純度導電性粉末を使用することもできる。導電性粉末の純度は、別の実施形態において95%以上、別の実施形態において90%以上であってもよい。
【0043】
導電性粉末は、導電性ペーストの全重量に基づいて、実施形態において40〜90重量パーセント(wt%)、別の実施形態において50〜80wt%、別の実施形態において55〜70wt%であってもよい。導電性粉末の含有量のこの範囲内で、太陽電池の電極の導電率は十分でありうる。
【0044】
非晶質飽和ポリエステル樹脂
非晶質飽和ポリエステル樹脂は、ポリカルボン酸などの酸成分とポリアルコールなどのアルコール成分とのポリエステル化反応によって合成により調製された化合物である。非晶質飽和ポリエステル樹脂は、無秩序構造、例えば、ポリマー主鎖ポリマーおよび主鎖ポリマーに無秩序に結合した側鎖ポリマーの構造を含む。
【0045】
非晶質飽和ポリエステル樹脂は、実質的に結晶性を示さず、示差走査熱量測定、例えばセイコーインスツル株式会社製のEXSTAR6000によって毎分10℃の加熱勾配で測定された時に融点を示さないポリエステルを意味するものとする。
【0046】
太陽電池の電極は、非晶質飽和ポリエステル樹脂を使用することによって基板に強固に付着することができる。非晶質飽和ポリエステル樹脂は、熱可塑性の性質を有する。ここにおいて「熱可塑性の」は、ポリエステル樹脂のTgの温度において加熱された時に外力によって変形される性質として本明細書において定義される。
【0047】
酸成分は、実施形態において脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸およびそれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0048】
脂肪族カルボン酸は、実施形態においてアゼライン酸、コハク酸、ダイマー酸、セバシン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、およびそれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0049】
芳香族カルボン酸は、実施形態においてイソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸およびそれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0050】
脂環式カルボン酸は、実施形態においてシクロヘキサンジカルボン酸またはデカンジカルボン酸とすることができる。
【0051】
アルコール成分は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチルグリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オルトキシレングリコール、パラキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール、およびビスフェノール−Aからなる群から選択することができる。また、これらのアルコールエチレンオキシド付加物を使用することもできる。
【0052】
非晶質飽和ポリエステル樹脂は、酸成分とアルコール成分との脱水および縮合反応などの公知の方法によって製造されうる。
【0053】
非晶質飽和ポリエステル樹脂の平均分子量は2,000〜50,000でありうる。平均分子量が範囲内にあるとき、ペースト粘度は適切でありうる。
【0054】
非晶質飽和ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以下である。範囲内のTgを有する非晶質飽和ポリエステル樹脂は、以下の実施例に示されるようにはんだ付けの後でも十分な接着性を得ることができる。
【0055】
実施形態において、非晶質飽和ポリエステル樹脂は、導電性ペーストの全重量に基づいて少なくとも3wt%、別の実施形態において4,5wt%、別の実施形態において、5wt%、別の実施形態において、6wt%としうる。非晶質飽和ポリエステル樹脂は、導電性ペーストの全重量に基づいて、実施形態において20wt%以下、別の実施形態において18wt%以下、別の実施形態において15wt%以下、別の実施形態において、10wt%以下としうる。非晶質飽和ポリエステル樹脂のこのような量によって、導電性粉末およびガラスフリットは十分に分散することができる。
【0056】
有機溶剤
有機溶剤は、非晶質飽和ポリエステル樹脂を溶解する有機化合物である。
【0057】
有機溶剤は、実施形態においてケトン溶剤、芳香族溶剤、エステル溶剤、グリコールエーテル溶剤、グリコールエーテルアセテート溶剤、およびテルペノイド溶剤を含むことができる。
【0058】
ケトン溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、1−ノナナール、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびそれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0059】
芳香族溶剤は、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、アルキルベンゼンおよびそれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0060】
エステル溶剤は、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、アミルアセテート、イソアミルアセテート、およびそれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0061】
グリコールエーテル溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0062】
グリコールエーテルアセテート溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、およびそれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0063】
テルペン溶剤は、テルピネオール、リモネン、ピネン、およびそれらの混合物からなる群から選択されうる。
【0064】
有機溶剤は、実施形態においてグリコールエーテル、グリコールエーテルアセテート、アルキルベンゼン、テルピネオールまたはそれらの混合物を含むことができる。これらの有機溶剤は急速に蒸発する。
【0065】
任意の他の溶剤を前述の溶剤に添加することができる。添加する溶剤は、前述の溶剤と相溶性である脂肪族溶剤、アルコール溶剤またはそれらの混合物としうる。
【0066】
溶剤の引火点は、導電性ペーストを適用する方法に応じて調節可能である。例えば、引火点は、導電性ペーストがスクリーン印刷によって適用されるとき、少なくとも70℃でありうる。
【0067】
また、蒸発速度は、導電性ペーストを適用する方法に応じて調節可能である。例えば、ブチルアセテートの蒸発速度が100である時の相対値によって表わされる蒸発速度は、導電性ペーストがスクリーン印刷によって適用されるとき、50以下でありうる。
【0068】
非晶質飽和ポリエステル樹脂または導電性粉末のタイプまたは量によって有機溶剤の含有量を調節することができる。有機溶剤は、導電性ペーストの全重量に基づいて、別の実施形態において5〜50wt%、別の実施形態において10〜40wt%、実施形態において15〜30wt%としうる。このような含有量によって、非晶質飽和ポリエステル樹脂を十分に分散させることができ、または導電性粉末を樹脂と溶剤との混合物中に十分に分散させることができる。
【0069】
添加剤
添加剤として増粘剤、安定剤、粘度調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、または界面活性剤を導電性ペーストに添加することができる。添加剤の量は、得られた電気導電性ペーストの所望の特性に依存し、当業者によって選択されうる。また、多数のタイプの添加剤を添加することができる。
【実施例】
【0070】
本発明は以下の実施例によって説明されるが、それらに限定されない。
【0071】
導電性ペーストの調製
導電性ペーストを以下の材料を用いて製造した。特記されない限り、ここにおいて重量パーセント(wt%)は導電性ペーストの全重量に基づいての重量パーセントを意味する。
【0072】
導電性粉末:60wt%の銀(Ag)粉末を使用した。形状はフレークであった。粒径(D50)は、レーザー散乱型粒度分布測定装置(MicrotracモデルX−100)で測定された時に3.0μmであった。
【0073】
有機溶剤:32wt%のプロピレングリコールフェニルエーテル(Dow Chemical CompanyのDowanol PPh)
非晶質飽和ポリエステル樹脂:8wt%の非晶質飽和ポリエステル樹脂を使用した。各々の実施例の非晶質飽和ポリエステル樹脂および樹脂のTgを表1に示す。
【0074】
Tgは、示差走査熱量計(DSC)、セイコーインスツル株式会社製のEXSTAR6000を用いて以下の手順によって測定された。15mgの非晶質飽和ポリエステル樹脂を載せたアルミニウム鍋をDSCのセル内に置くと共に空試料としてのアルミニウム鍋も置いた。セル内の温度を10℃/分で150℃まで徐々に上昇させ、25℃の室温まで冷却した。第2の運転として温度を再び10℃/分で150℃まで上昇させた。第2の温度上昇においての最初の転移温度をTgとして記録し、表1に示す。30℃未満のTgはこの測定環境において測定可能でなかったので、<30℃として示される。
【0075】
重量平均分子量(Mw)は、高性能液体クロマトグラフィー、SpectraLab Scientific Inc.製のWatersLC600を用いて以下の手順によって測定された。測定条件は以下の通りである。カラム:昭和電工株式会社製のShodex GPC K−806L × 2、溶剤:テトラヒドロフラン、流量:1.0ml/分、カラム温度:35℃、検出器:反射率、注入量:100μl、試料濃度:0.20%、標準:ポリスチレン。測定された重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0076】
導電性ペーストを以下の手順によって調製した。非晶質飽和ポリエステル樹脂と有機溶剤とをガラスバイアル内で48時間100℃において混合した。Ag粉末を樹脂と溶剤との混合物に添加し、導電性ペーストになるように遊星遠心混合機(planetary centrifugal mixer)によって5分間混合した。
【0077】
試験片の製造
導電性ペーストをインジウムチタン酸化物(ITO)層がコートされたガラス基板上にドクターブレード法によって適用した。導電性ペーストの適用パターンは四角形の形状(幅50mm×長さ50mm×厚さ58μm)であった。ガラス基板上の導電性ペーストを150℃において5分間乾燥させ、次に、200℃において12分間、炉(KOYO IRベルト炉)内でさらに乾燥させて電極を形成した。電極の厚さは、導電性ペーストに応じて29〜47μmに変化した。
【0078】
接着性の測定
電極の接着性を以下の手順によって測定した。電極を有するガラス基板を90℃のホットプレート上に置いた。Sn/Pbはんだ(Cu−O−155−2−B、丸正株式会社)でコートされた銅リボンをはんだ付け溶剤(Kester−955、Kester,Inc.)に浸漬し、次に、空気中で5秒間乾燥させた。はんだがコートされた銅リボンの半分を電極上に置き、はんだ付けをはんだ付け装置(Hakko−926、Hakko Corporation)によって実施した。はんだこての設定温度は400℃であり、はんだこての先端部の実際の温度は、K−タイプの熱電対によって測定されたとき、230〜240℃であった。はんだ付けされた電極を有するガラス基板をホットプレートから取り除き、室温に冷却した。
【0079】
電極に付着しなかった銅リボンの残りの部分を水平方向に折り、機械(剥離力606、MOGRL Technology Co.,Ltd.)によって120mm/分で引っ張った。銅リボンが外れる強度(ニュートン、N)を電極の接着性として記録した。
【0080】
結果
各々の実施例の接着性を表1に示す。実施例1〜5において、太陽電池の電極は0.5Nを超える十分な接着性があったが、比較例1〜3はゼロの接着性であった。
【0081】
【表1】

【0082】
次に、電極の厚さの影響を検査した。太陽電池の電極は、導電性ペーストの適用パターンの厚さと基板以外は実施例3と同じ方法で作製された。適用された導電性ペーストの厚さはそれぞれ6、13、26、39、52μmであった。基板は、ITO層でコートされたガラス基板の代わりに窒化ケイ素層またはアルミニウム(Al)層でコートされた結晶タイプのケイ素ウエハであった。導電性ペーストを窒化ケイ素層またはAl層上に適用した。図4Bに示されるように導電性ペーストを指線上に母線として適用するものとして、窒化ケイ素上の電極の接着性を試験した。
【0083】
接着性は、電極の各々について同じ方法で測定された。結果を表2に示す。1Nを超える接着性が実施例6〜実施例9において得られ、そこにおいて導電性ペーストは窒化ケイ素層上に厚さ13、26、39および52μmで適用された。
【0084】
アルミニウム層上に形成されるとき、1Nを超える接着性が実施例10および実施例11において得られ、そこにおいて導電性ペーストは厚さ39および52μmで適用された。
【0085】
【表2】

【符号の説明】
【0086】
101 半導体層
102 透明電極
103 集電極
104 タブ電極
105 はんだ
201 半導体基板
202 透明電極
203 導電性ペースト
203(a) 母線
203(b) 指線
204 タブ電極
205 はんだ
301 半導体基板
302 集電極
302(a) 母線
302(b) 指線
303 導電性ペースト
304 導電性ペースト
305 はんだ
401 半導体基板
402 指線
403 導電性ペースト
404 タブ電極
405 はんだ
501 半導体基板
502 裏面電極
503 導電性ペースト
504 タブ電極
505 はんだ
601 半導体基板
602 透明電極
603 ガラス基板
604 裏面電極
605(a) 導電性ペースト
605(b) 導電性ペースト
606(a) タブ電極
606(b) タブ電極
607(a) はんだ
607(b) はんだ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の前面、裏面、または前記前面および前記裏面の両方の上に予備形成された電極を有する前記半導体基板を作製する工程と、
導電性粉末と、50℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する非晶質飽和ポリエステル樹脂と、有機溶剤とを含む導電性ペーストを前記予備形成された電極上に適用する工程と、
適用された前記導電性ペーストを乾燥させる工程と、
タブ電極を乾燥された前記導電性ペースト上に置く工程と、
前記タブ電極をはんだ付けする工程と
を含む、太陽電池の電極を製造する方法。
【請求項2】
前記導電性ペーストの全重量に基づいて、前記導電性粉末が40〜90重量パーセントであり、前記非晶質飽和ポリエステル樹脂が3〜20重量パーセントであり、前記有機溶剤が5〜50重量パーセントである、請求項1に記載の太陽電池の電極を製造する方法。
【請求項3】
前記予備形成された電極が透明電極である、請求項1に記載の太陽電池の電極を製造する方法。
【請求項4】
前記予備形成された電極が、前記半導体基板の前記前面に母線と指線とを含む集電極である、請求項1に記載の太陽電池の電極を製造する方法。
【請求項5】
前記予備形成された電極が、前記半導体基板の前記裏面上の裏面電極である、請求項1に記載の太陽電池の電極を製造する方法。
【請求項6】
前記導電性ペーストが前記乾燥工程において80〜250℃において乾燥される、請求項1に記載の太陽電池の電極を製造する方法。
【請求項7】
太陽電池の電極を製造するための導電性ペーストであって、前記導電性ペーストの全重量に基づいて、
導電性粉末40〜90重量パーセントと、
溶剤5〜50重量パーセントと、
50℃以下のTgを有する非晶質飽和ポリエステル樹脂3〜20重量パーセントと
を含む、太陽電池の電極を製造するための導電性ペースト。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2013−70056(P2013−70056A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−207198(P2012−207198)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】