説明

太陽電池アレイの基礎構造

【課題】この発明は、広大な工場遊休地や産業廃棄物処理場、或いは有効利用が困難視される塩田の跡地、耕作放棄地、その他の砂漠や荒れ地などを利用して大規模な太陽光発電所を建設する場合に実施される、太陽電池アレイの支持に好適な基礎構造を提供する。
【解決手段】太陽電池アレイに作用する風荷重に対して必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させた杭又は地盤アンカーにより、地表部に配置した台材が支持されており、前記台材の上に、一定高さの支持材を垂直姿勢に設けて、同支持材により太陽電池アレイが支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、広大な工場遊休地や産業廃棄物処理場、或いは有効利用が困難視される塩田の跡地、耕作放棄地、その他の砂漠や荒れ地など(以下、遊休地と総称する。)を利用して大規模な太陽光発電所を建設する場合に実施される、太陽電池アレイの支持に好適な基礎構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池アレイを太陽光に向かって設置して発電を行う太陽光発電所が自然エネルギの活用として注目され、実施化が進められている。太陽光発電の多くは、戸建て住宅やビル等の建物をはじめとする各種構造物の屋根や壁部分へ太陽電池アレイを設置する方式で多く実施されている。
のみならず、近年では図4に例示したように、広大な遊休地11などを利用してその敷地内一杯に、多数の太陽電池アレイ10を、地面上に複数の長い列状に設置して大規模な太陽光発電所を建設する実施例が既に行われている。
因みに、図4に示す遊休地11は、1ヘクタールとか10ヘクタールの如く広大な敷地面積であり、その敷地全体を効率的に有効活用するべく、太陽電池アレイ10の長大な列が、具体的には図5に例示したように地面に固定して構築された架台2を利用して、整然と規則的な配列で可能な限り多数設置されている。
因みにここでいう太陽電池アレイ10は、太陽電池セルの集合体である電池モジュール1を複数単位組み合わせて一定の面積、形状に構成したものを意味し、図5に示したように同太陽電池アレイ10は同大の架台12上へ貼り付けるように設置され、架台12はその支柱13で地面上一定の高さ位置に、太陽光に向かって一定の角度に傾斜した姿勢で支持されている。因みに、前記太陽電池アレイ10および架台12の規模は、一列当たり30m〜50mの長さに構築されている。
【0003】
図4、図5に例示したように広大な遊休地11に建設される大規模な太陽光発電所の建設技術上の問題点は、太陽電池アレイ10の自重量は1m当たり40Kg程度と軽いのに対して、この太陽電池アレイ10及び架台12が受ける風荷重の方は、例えば1m当たり80Kg程度と大きい(ただし、設計最大風速により前記の数値は変動する。)ことである。そのため地震時の慣性力よりも、むしろ風荷重対策を重大に検討しなければならないのである。
戸建て住宅やビルその他の構造物を利用して太陽光発電を行う場合には、前記風荷重に抵抗して耐えるように、アンカー等を用いて太陽電池アレイを構造物へ固定することで容易に実施できる。
しかし、広大な遊休地11を利用してその地面上に大規模な太陽光発電所を建設する場合に、太陽電池アレイ10の架台12が上記の風荷重に抵抗して耐えるように、基礎構造を強固な安定状態に建設することは容易ではない。従来の対策技術としては、上記大きさの風荷重に抵抗できる重さの基礎構造を構築するか、又は基礎の下に打設する地盤アンカーを長大に造成してアンカーの引き抜き抵抗力を確保することが検討されている程度にすぎない。
その上、太陽光発電所を建設しようとする遊休地などの地盤が軟弱であったり、地下に液状化層が存在する場合には、地震時の不同沈下や液状化対策も必要となるから、基礎構造の建設に要する対策技術は一層面倒で困難な内容になる。
【0004】
たとえば従来の図5、図6に例示した基礎構造について説明すると、太陽電池モジュール1を集合した太陽電池アレイ10を支持する架台12を支える各支柱13は、地表部から地中に深く設置したコンクリート柱14の上端(杭頭)へ固定して支持させている。そして、前記コンクリート柱14の下端は、図6に例示したように地下一定の深さ位置(例えば地下1m乃至1.5m程度)に水平な盤状に構築したコンクリート底板15と接合し一体化して支持させた構成とされている。
しかし、図4の例で言えば、太陽電池アレイ10及びその架台12の一列の長さは、平均して30m超にも及ぶ。このように長い架台12を支持するコンクリート柱14及びコンクリート底板15を地中に構築する工事は、地盤の掘削と、それに続くコンクリート打設工事に大変な手間と時間を要するから大工事になる。当然、大量のコンクリート資材類を必要とするから工事費用が莫大になり不経済であるほか、工事期間も長期にわたることになる。
のみならず地盤が軟弱であったり、地中に構築したコンクリート底板15の周辺に液状化層が存在する場合には、長期にわたる地盤の圧密沈下(不同沈下)や、地震による液状化現象などでコンクリート底板15が地中で動いたり傾いたりするほか、部分的な沈下や浮揚、破損などを生じやすい。その結果、同コンクリート底板15で支持された架台12及び太陽電池アレイ10も、同様に大きく傾いたり破損を生じる場合があるから、太陽光発電の効率が低下したり、発電自体を継続できない事態も起こり得る。そして、その修復工事や保全に莫大な手間と費用がかかる等々の問題点が懸念される。
【0005】
ところで、下記特許文献1に記載された「太陽電池パネル架台構造」は、太陽電池パネル(太陽電池アレイと推定される。)を貼り付けた架台(フレーム材)が、平面視を三角形に形成して同三角形の各頂点部位に設けた支柱を、直下の地盤上に配置した三つの基礎ブロックで支持させた構成と説明されている。
そして、各基礎ブロックは鉄筋コンクリート製が好適であること、同基礎ブロックの大きさは太陽電池アレイの架台が風荷重等で転倒などしない大きさと重量にすること、架台を三つの基礎ブロックを頂点とする三角形に形成した理由は、基礎ブロックの一部が不等沈下(不同沈下と推定する。)しても太陽電池パネルやその架台に捻れ等の構造的な影響を受けないようにした、等々が説明されている。
しかし、上述した風荷重の大きさや、地盤の不同沈下、或いは液状化現象による甚大な悪影響を考慮すると、特許文献1に記載された架台の基礎構造の構成では、とうてい上記の問題点が解決されるとは理解しがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−77194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、地盤の不同沈下、或いは液状化現象の悪影響を受け難い基礎構造を提供することであり、太陽電池アレイに作用する風荷重等に対しては、杭或いはアンカーの有効長さの適切な設計、施工により、必要十分に大きな支持力ないし引き抜き抵抗力を確保でき、しかも施工性に優れて地盤性状に対する適切な対応措置を実行でき、更に建設工期の短縮、及び工事費の低減化を期待できる、太陽電池アレイの基礎構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した従来技術の課題を解決する手段として、請求項1に記載した発明に係る太陽電池アレイの基礎構造は、
太陽電池アレイに作用する風荷重に対して必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させた杭又は地盤アンカーにより、地表部に配置した台材が支持されており、
前記台材の上に、一定高さの支持材を垂直姿勢に設けて、同支持材により太陽電池アレイが支持されている構成を特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した発明に係る太陽電池アレイの基礎構造は、
太陽電池アレイ10に作用する風荷重に対して必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させた杭2又は地盤アンカーにより、地表部に一定の間隔を開けて配置した複数の縦梁材3、3が支持されており、
前記複数の縦梁材3、3の間に、横梁材4、4が、相互間に一定の間隔を開けて複数本それぞれ前記縦梁材3と一体的に接合して支持台8が構成されており、
前記横梁材4、4の上に、一定高さの支持材5を垂直姿勢に設けて、同支持材5により太陽電池アレイ10が支持されている構成を特徴とする。
【0010】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した太陽電池アレイの基礎構造において、
請求項1記載の台材、又は請求項2記載の縦梁材3とこれに一体的に接合した横梁材4とで構成する支持台8は、地表部における地面G.Lよりも下方へ一定深さの地中位置に、又は地表部における地面G.Lよりも上方へ一定高さの空中位置に設置されている構成を特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した太陽電池アレイの基礎構造において、
台材又は支持台8が空中位置に支持されている場合は、台材又は支持台8と地面G.Lとの間に介物6を設置して少なくとも台材又は支持台8の自重量程度は地盤で支持させる構成を特徴とする。
【0011】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した太陽電池アレイの基礎構造において、
杭又は地盤アンカーは、台材又は縦梁材3との接合部を交点として、地中へそれぞれ異なる方向に向けて傾斜状態に設置した斜杭2又は傾斜アンカーとして、又は上端部を台材又は縦梁材3と接合して地中へ垂直下向きに設置された直杭2’又は垂直アンカーとしてそれぞれ構成されていることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した太陽電池アレイの基礎構造において、
杭2又は2’は、杭体の長手方向にPC鋼線を配置しプレストレスを導入したPHC杭で施工されている構成を特徴とする。
請求項7に記載した発明は、請求項1〜4に記載した太陽電池アレイの基礎構造において、
杭2又は2’及び地盤アンカーは、地中の液状化層9’を貫通してその下方の非液状化層9へ届く長さで設置されている構成を特徴とする。
【0012】
請求項8に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した太陽電池アレイの基礎構造において、
杭は、その設置位置の地盤を水平方向に一定の範囲まで、及び深さ方向には液状化層を貫通してその下方の非液状化層9へ到達する位置までを地盤改良した地盤改良体と、その地盤改良体の中心部位に貫入して設置した芯材とで構成され、前記芯材の上端部が台材又は縦梁材3と接合されている構成を特徴とする。
【0013】
請求項9に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一に記載した太陽電池アレイの基礎構造において、
請求項1に記載した台材、又は請求項2〜4に記載した縦梁材3と、これと一体的に接合した横梁材4とで構成した地表部の支持台8は、台材又は縦梁材3と杭又はアンカーとの接合位置を、継手部材の付け替えにより、高さ位置を上方又は下方へ変更して調整することが可能に構成されていることを特徴とする。
請求項10に記載した発明は、請求項1〜8に記載した太陽電池アレイの基礎構造において、
台材又は縦梁材3はH形鋼で構成され、横梁材4はPC鋼線又はI形鋼で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜10に記載した発明に係る太陽電池アレイ10の基礎構造は、風荷重に対して必要十分に大きい支持力及び引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させた杭2、2’又は地盤アンカーにより台材又は支持台8を支持させた構成であり、同杭2、2’又は地盤アンカーの地中深さと向き及び本数の適正な設計・施工により、太陽電池アレイ10に作用する風荷重に対して必要にして十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を容易に確保することができる。
また、仮に地盤が軟弱であったり、地中一定の深さに液状化層9’が存在しても、その軟弱地盤や液状化層9’を貫通させて下方の非液状化層9(支持層を含む)へ杭2、2’又はアンカーを到達させることにより、地盤の不同沈下や液状化現象に一切悪影響を受けない、安定な基礎構造を提供できる。
【0015】
勿論、杭2、2’又は地盤アンカーの打設工事は、地上に杭打ち機又はアンカー施工機を設備することで機械的に能率良く行え、地盤の掘削や埋め戻し等の準備工や養生の手間を一切必要としない。施工が容易で、工期の短縮、工費の節減にも効果が得られる。前記の効果は、杭2、2’又は地盤アンカーで支持させる台材又は支持台8(縦梁材3と横梁材4による構造)の構成が簡単なことによっても奏される。
しかも台材、又は縦梁材3及び横梁材4で構成する支持台8は、その自重量を、地表部における地面G.Lよりも一定深さの地中に設置して地盤で支持させ、又は地面G.Lより上方一定の高さの空中位置に構成した場合は、台材又は支持台8の地面G.Lとの間へ介入させた介物6で構成する支持台は少なくとも前記自重量相当の負担が減った分だけ小断面で軽量にでき、台材又は縦梁材3及び横梁材4の資材費用を削減でき、組み立て作業を容易にできる。
【0016】
また、地盤が工場跡地又は廃棄物処分場のように、地盤に有害物質が含まれていて、同地盤を上から押すと地盤中から有害成分を含むガスや溶液が吹き出る様な場合には、台材又は支持台8を地表部における地面G.L上一定の空中位置に設置することにより、前記有害なガスや溶液が吹き出す不都合を可及的に抑制できる。そして、前記有害なガスや溶液が台材又は支持台8やその上に設置した太陽電池アレイ10の働きや耐用寿命等に悪影響が及ぶ度合いを可及的に防ぐ。
次に、太陽電池アレイ10の設置は、地表面部に配置した台材、又は縦梁材3と横梁材4とで構成する支持台8へ支持材5を立てて行われるから、その設置作業はさして高所作業にならないし、作業が容易である。各横梁材4の上に設置された太陽電池アレイ10の重量や風荷重に起因する押し下げ力、小さく設計、施工でき、材料費の節減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】A、Bは本発明による太陽電池アレイの架台を支持する基礎構造の異なる構成概要を示した斜視図である。
【図2】A、Bは本発明による太陽電池アレイの架台を支持する基礎構造の異なる実施例を示した断面図である。
【図3】太陽電池アレイ及び架台の設置状態を示した斜視図である。
【図4】広大な遊休地に太陽光発電所を建設した場合の一例を示した平面図である。
【図5】従来の太陽電池アレイ及び架台を支持する基礎構造を示した斜視図である。
【図6】従来の太陽電池パネル架台を支持する基礎構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による太陽電池アレイの基礎構造は、太陽電池アレイ10に作用する風荷重に対して必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させた杭2又は地盤アンカーにより、地表部に配置した台材を支持させ、前記台材の上に、一定高さの支持材を垂直姿勢に設けて、同支持体により太陽電池アレイを支持させ設置する。
或いは同じく太陽電池アレイ10に作用する風荷重に対して必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させた杭2又は地盤アンカーにより、地表部に一定の間隔を開けて平行に配置した複数の縦梁材3、3を水平姿勢に支持させ、前記複数の縦梁材3、3の間に、複数本の横梁材4、4を、相互間に一定の間隔を開けてそれぞれ前記縦梁材3と一体的に接合して支持台8を構成する。そして、前記各横梁材4、4の上に、一定高さの支持材5を垂直姿勢に設けて、同支持体5により太陽電池アレイ10を支持させ設置する。
上記台材、又は縦梁材3とこれに一体的に接合した横梁材4とで構成する支持台8は、地表部における地面G.Lよりも下方へ一定深さの地中位置に、又は地表部における地面G.Lよりも上方へ一定高さの空中位置に構成する。
後者の空中位置に構成した台材、又は支持台8の縦梁材3及び/又は横梁材4と地面G.Lとの間には、介物6を設置して台材、又は縦梁材3及び/又は横梁材4の少なくとも自重量程度は地盤で支持させる。
【0019】
杭又は地盤アンカーは、台材又は縦梁材3との接合部を交点としてそれぞれ地中の異なる方向に向けて傾斜状態に設置した斜杭2又は傾斜アンカーとして、又は上端部を縦梁材3と接合して地中へ垂直下向きに設置された直杭2’又は垂直アンカーとしてそれぞれ構成し、必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させた杭2により、台材又は縦梁材3、3(支持台)を支持させる。
【実施例1】
【0020】
以下に、本発明を主に図1〜図3に示す実施例により説明する。
先ず図1A、Bは、本発明による太陽電池アレイを支持台8で支持する基礎構造の異なる2種の構成態様を概念的に示している。
図1Aは、いわゆる斜杭2を採用して支持台8を支持する基礎構造の実施例を示している。太陽電池アレイ10に作用する風荷重に対して、必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで一定角度の傾斜状態に到達させた2本組み(但し、3本組み又は4本組みなどあっても良い。以下同じ。)の斜杭2、2によって地表部に支持台8を支持させた構成である。
また、図1Bは、地中へ鉛直方向下向きに打ち込んだ、1本ずつ(但し、2本組み又は3本組みなどであっても良い。以下同じ。)のいわゆる直杭2’を採用して支持台8を支持させた基礎構造の実施例を示している。この場合も直杭2’は、やはり太陽電池アレイ10に作用する風荷重に対して、必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させるべく施工し、同直杭2’により地表部に支持台8を支持させている。
【0021】
なお、図示して説明することまでは省略したが、支持台8の異なる支持手段として、いわゆる地盤アンカーを採用して全く同様な構成で実施することもできる。
この方式の場合でも、地盤アンカーは、図1Aに示した斜杭2と同様に、必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで一定角度の傾斜状態に到達させた2本組み等の構成で支持台8を支持させることができる。
或いはまた、図1Bに示した直杭2’と同様に、やはり必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで鉛直方向下向きに到達させた1本ずつ等の地盤アンカーで支持台8を支持させる実施も行える。地盤アンカー施工機を現地へ搬入することにより、地盤アンカーの打設ないし造成は機械的に能率良く施工できる。
更には、やはり図示説明することは省略したが、図1Bに示した直杭2’の異なる実施例として、直杭2’を打設するべき位置を中心として、3m〜5m程度の四方又は円形の領域までを、後述する地中の液状化層を貫通して更に下方の非液状化層に到達する深さまで地盤改良を行い、しかる後に同地盤改良体の中心部へ杭相当の芯材(鋼材等)を貫入して地盤改良体と一体化し、同芯材を直杭2’と同様な態様で支持台8の支持を行わせる実施も行える。
そこで以下に説明する各実施例では、以上の各種実施例を前提とした上で、上記図1A、Bに示した斜杭2又は直杭2’(但し、以下には単に杭2と総称して記載する。)により支持させた支持台8による支持構造を代表例として説明を進める。
【0022】
本発明による基礎構造の実施例1を、図2A、B及び図3に示した実施例と共に更に詳細な構成を説明する。
杭2は、地中に液状化層9’が存在する場合には、同液状化層9’を貫通してその下方の非液状化層(支持層を含む)9へ届く長さに施工して設置されている。したがって、各杭2は、たとえば地下10mないし30m超の深さまで施工される。
また、杭2の杭体(既成杭)としては、その外周部に近い円形の配置で、且つ軸芯方向へほぼ全長にわたり配置した複数本のPC鋼線を含む構成で中空構造に遠心鋳造された、外径がφ300mm程度のいわゆるPHC杭が好適に使用される。PC鋼線を利用してプレストレスが導入される。こうした杭2の打設は、現地へ搬入して据え付けた杭打ち機により機械化作業として能率良く打設することができる。
上記のように打設した杭2の上端(杭頭部)は、地表部に、一例として16m程度の間隔を開けて2本又は複数本平行に配置した、長さ13m弱程度の縦梁材3、3と、それぞれ公知のボルト継手その他の手段により接合して、各縦梁材3の両端部(場合によっては中間部も)が上記の杭2により支持される。もっとも縦梁材3の配置は、両側に2本配置する構成には限らない。その中間位置にも更に1本ないし複数本の縦梁材3を配置して、それぞれを同様に、上記の如く打設した杭2の上端部と接合して支持させた構成で実施することもできる。
因みに縦梁材3としては、長さが例えば13m前後で、フランジ幅およびせいの高さがそれぞれ350mm程度のH形鋼が好適に使用される。
【0023】
なお、杭2で縦梁材3(及び支持台8)を支持させる高さ位置は、地表部というよりもむしろ、厳密には図2Aに示したように地面G.Lよりも少し下方の地中に支持させる場合と、図2Bに示したように地面G.Lよりも少し上方の空中に支持させる場合とに大別される。
図2Aに示した実施例の場合は、縦梁材3及び後述する横梁材4とで構成する支持台8等の少なくとも自重量相当を地盤で支持させる目的で、地面G.Lよりも下方へ約30cm程度の深さ潜った地中位置で杭2と接合して設置させた構成を示している。かく構成することにより、支持台8を構成する縦梁材3及び横梁材4は、各々の自重量相当分の支持力および剛性の負担を軽減出来る。その結果、軽減分だけは縦梁材3及び横梁材4に適用するH形鋼やI形鋼等のせいの高さとフランジ幅および肉厚等々を、それ相当に小さい小断面材の使用が可能となり、軽量化と資材費用の軽減化が図れるのである。横梁材4にPC鋼線を使用する場合でも、その外径寸法が小さいものを使用できる。
【0024】
なお、地盤沈下や地震等による液状化現象等により地面が下がり、支持台8が地表面に近い浅い位置、又は地表面上に露出して、上記縦梁材3及び横梁材4の自重量相当分の地盤による支持力が減少したり喪失したような場合には、埋め戻し土を搬入して支持台8の全体を一定の深さまで埋め込む方法で対処可能である。
必要によっては、縦梁材3と杭2とを接合したボルト継手を操作して、一旦は縦梁材3と杭2との接合を解いて、縦梁材3を地中一定の深さ位置へ落とし、その位置で再び縦梁材3と杭2との接合を行う高さ位置の調整を行うこともできる。勿論、前記位置の調整は、逆に縦梁材3或いは支持台8の全体をジャッキアップして地面より上方へ移動させる付け替えも必要に応じて行うことが可能である。
【0025】
一方、図2Bに示した実施例では、上記縦梁材3(及び支持台8)を設置する高さ位置は、地面G.Lよりもたとえば10cm程度上方の空中位置で杭2に支持させた構成とされている。その目的ないし意義は、遊休地11が塩田の跡地又は産業廃棄物処理場などであって、地盤中に有害成分を含むガスや溶液が存在し、図2Aに示した実施例のように支持台8等の自重量を地盤へ加えると、地盤中の前記有害成分を含むガスや溶液が噴出する虞がある場合に対処することである。即ち、支持台8等の重量を地盤へ加えない構成として、可能なかぎり前記有害なガスや溶液の噴出を未然に防ぐためである。 もっとも、上記有害成分を含むガスや溶液が噴出する懸念が無い場合でも、図2Bに示したように支持台8等を空中位置に支持させた構成を実施して、図2Aと同様な作用効果を期待する実施も可能である。即ち、図2Bに示したように、地面の上方位置に浮いた状態の支持台8(の縦梁材3及び/又は横梁材4)と地面G.Lとの間に、H形鋼やI形鋼などの鋼片、或いは木材片等を利用した介物6を地面との隙間へ差し入れて設置し、もって支持台8(縦梁材3及び/又は横梁材4)の自重量等をやはり地盤で支持させ、図2Aと同様に縦梁材3及び横梁材4に小断面材の使用を可能にすることもできる。
【0026】
本発明の場合は、上記の通り施工した杭2で支持され相対峙する左右2本の縦梁材3、3の間に、図1A又は図3が分かり易いように、相互間に一定の間隔Wを開けて、複数本の横梁材4、4を配置し、その両端をそれぞれ縦梁材3、3と一体的に接合して支持台8が構成される。
因みに、図1Aに示した支持台8の大きさの一例を平面寸法で示すと、縦梁材3の長さが15m、横梁材4の長さは33m程度で、太陽電池アレイ10は横梁材4の長手方向に横並びの配置で6列支持する構成とされている。
一方、図1Bに示した支持台8の大きさの一例を平面寸法で示すと、縦梁材3が12m超の長さで、横梁材4は16m超の長さとされている。太陽電池アレイ10は、横梁材4とは直交する向きに3列支持させた構成とされている。もっとも、太陽電池アレイ10を支持する数量及び支持態様は設計事項であり、支持台8の実施態様に応じて横梁材4、4の本数、及び相互間に設ける間隔Wの大きさを適宜に設定して実施される。
因みに、太陽電池アレイ10は、最小の基本単位である太陽電池セルを平面的に複数敷き詰めて構成した太陽電池モジュールを、更に数単位平板状に敷き詰めて一体化した構成であり、その大きさ(縦、横の寸法)及び重量は種々に構成して使用される。
【0027】
上記した支持台8の構成を前提に、図1Aと図3の実施例では、太陽電池アレイ10を横梁材4と同じ向きとし、且つ太陽光と直面する適切な角度に傾けた傾斜姿勢で設置した場合を示している。即ち、隣り合う2本の横梁材4、4へ垂直に立てた都合4本(但し、本数は4本の限りではない。)の支持材5により、太陽電池アレイ10を支持させた構成とされている。なお、支持材5は円柱形状の限りではなく、H形鋼やI形鋼、或いはアングルの組み立て材、或いは板状材などを適宜に選択し或いは組み合わせて実施することができる。
【0028】
一方、図1Bに示した実施例は、太陽電池アレイ10を横梁材4とは直角な向きとし、且つ太陽光と直面するのに適切な角度に傾けた傾斜姿勢で設置した場合を示している。この場合の太陽電池アレイ10の横幅寸法は、およそ縦梁材4と同等な長さとし、各太陽電池アレイ10は、縦梁材3、3の間に配置した3本(但し、3本の限りではない。)の横梁材4・・のそれぞれから1本ずつ垂直に立てた合計3本(但し、本数は3本の限りではない。)の支持材5で太陽電池アレイ10を支持させた構成を示している。
したがって、支持台8を構成する各横梁材4の間隔および本数は、図1Aに示す実施態様、或いは図1Bに示した実施態様に見るとおり、実施する環境等に応じて適切に設計、施工される。
なお、本発明による太陽電池アレイを支持する基礎構造は、上記支持台8を構成する横梁材4に関しては、上記したI形鋼又はH形鋼、若しくは組み立て梁以外にも、たとえば外径がφ15mm前後のPC鋼線を使用して実施することができる。
【実施例2】
【0029】
上記実施例1では、基本的に杭2で縦梁材3を支持させ、この縦梁材3に横梁材4を接合して支持台8を構成し、支持台8の横梁材4の上に立てた支持材5により太陽電池アレイ10を支持させた構成とされているが、前記の構成に限らない。
図示して説明することまでは省略したが、請求項1に記載したように、やはり太陽電池アレイ10に作用する風荷重に対して必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させた杭又は地盤アンカーにより、地表部に配置した上記縦梁材3又は横梁材4に相当する単一材としての「台材」を直接支持させ、この台材の上に、一定高さの支持材5を垂直姿勢に設け、同支持材5により太陽電池アレイ10を支持させた構成でも全く同様に実施でき、同様な作用効果を得ることができる。
本実施例2で言う台材とは、上記した縦梁材又は横梁材に相当する単一材であるが、構造的には上記縦梁材3又は横梁材4と同程度の寸法で成るH形鋼等を用い、これを言わば上記横梁材4と同様な配置で地表部に配置し、上記構造の杭又は地盤アンカーにより支持させる。つまり、本実施例2で言う「台材」は、上記実施例1で説明した縦梁材3と横梁材4とを組み合わせて組み立てた「支持台8」とは異なって、単一材で成るが、太陽電池アレイ10を支持させる基礎構造としての役割、構成には変わりがない。
したがって、その他の構成は全て上記実施例1に準ずるものと理解されたい。
【0030】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。本発明の要旨、及び技術思想を逸脱しない範囲で、当業者が必要に応じて行う設計変更や応用、変形として種々な態様で実施できることを、ここに念のため申し添える。
【符号の説明】
【0031】
10 太陽電池アレイ
2 杭(斜杭)
2’ 直杭
3 縦梁材
4 横梁材
8 支持台
5 支持材
6 介物
9 支持層(地盤)
9’ 液状化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池アレイに作用する風荷重に対して必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させた杭又は地盤アンカーにより、地表部に配置した台材が支持されており、
前記台材の上に、一定高さの支持材を垂直姿勢に設けて、同支持材により太陽電池アレイが支持されている構成を特徴とする、太陽電池アレイの基礎構造。
【請求項2】
太陽電池アレイに作用する風荷重に対して必要十分に大きい支持力と引き抜き抵抗力を確保できる地中深さまで到達させた杭又は地盤アンカーにより、地表部に一定の間隔を開けて配置した複数の縦梁材が支持されており、
前記複数の縦梁材の間に、横梁材が、相互間に一定の間隔を開けて複数本それぞれ前記縦梁材と一体的に接合して支持台が構成されており、
前記横梁材の上に、一定高さの支持材を垂直姿勢に設けて、同支持材により太陽電池アレイが支持されている構成を特徴とする太陽電池アレイの基礎構造。
【請求項3】
請求項1記載の台材、又は請求項2記載の縦梁材とこれに一体的に接合した横梁材とで構成する支持台は、地表部における地面よりも下方へ一定深さの地中位置に、又は地表部における地面よりも上方へ一定高さの空中位置に設置されている構成を特徴とする、請求項1又は2に記載した太陽電池アレイの基礎構造。
【請求項4】
台材又は支持台が空中位置に支持されている場合は、台材又は支持台と地面との間に介物を設置して少なくとも台材又は支持台の自重量程度は地盤で支持させる構成を特徴とする、請求項3に記載した太陽電池アレイの基礎構造。
【請求項5】
杭又は地盤アンカーは、台材又は縦梁材との接合部を交点として、地中へそれぞれ異なる方向に向けて傾斜状態に設置した斜杭又は傾斜アンカーとして、又は上端部を台材又は縦梁材と接合して地中へ垂直下向きに設置された直杭又は垂直アンカーとしてそれぞれ構成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した太陽電池アレイの基礎構造。
【請求項6】
杭は、杭体の長手方向にPC鋼線を配置しプレストレスを導入したPHC杭で施工されている構成を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した太陽電池アレイの基礎構造。
【請求項7】
杭及び地盤アンカーは、地中の液状化層を貫通してその下方の非液状化層へ届く長さで設置されている構成を特徴とする、請求項1〜4に記載した太陽電池アレイの基礎構造。
【請求項8】
杭は、その設置位置の地盤を水平方向に一定の範囲まで、及び深さ方向には液状化層を貫通してその下方の非液状化層へ到達する位置までを地盤改良した地盤改良体と、その地盤改良体の中心部位に貫入して設置した芯材とで構成され、前記芯材の上端部が台材又は縦梁材と接合されている構成を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した太陽電池アレイの基礎構造。
【請求項9】
請求項1に記載した台材、又は請求項2〜4に記載した縦梁材と、これと一体的に接合した横梁材とで構成した地表部の支持台は、台材又は縦梁材と杭又はアンカーとの接合位置を、継手部材の付け替えにより、高さ位置を上方又は下方へ変更して調整することが可能に構成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載した太陽電池アレイの基礎構造。
【請求項10】
台材又は縦梁材はH形鋼で構成され、横梁材はPC鋼線又はI形鋼で構成されていることを特徴とする、請求項1〜8に記載した太陽電池アレイの基礎構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−122320(P2012−122320A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−209190(P2011−209190)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【Fターム(参考)】