説明

太陽電池コンタクトの製造のための混合物及び太陽電池コンタクトの製造方法

【課題】 太陽電池の構成及び製造方法を開示する。
【解決手段】 本発明は、概して、太陽電池コンタクトを製造するための、固体部分と有機部分を含む混合物を提供するものであって、該混合物は、該固体部分が、約85〜約99重量%の銀、及び約1〜約15重量%のガラス成分を含み、該ガラス成分が、約15〜約75mol%のPbO、及び約5〜約50mol%のSiOを含み、好適にはBを含まないことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池コンタクトの製造のための混合物、及び太陽電池のコンタクトの製造方法、並びに光二次電池の製造に用いられる他の関連成分に関連する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、通常、太陽光を有用な電気エネルギーに変換するシリコン(Si)のような半導体によって製造される。太陽電池は、一般的に、Siの薄ウェハーから作られ、このウェハーは好適なリン源からリン(P)をP型Siウェハーへと拡散することにより形成されるPN接合を要する。シリコンウェハーの太陽光が入射する側は、入射する太陽光の反射損失を防ぐため、通常反射防止膜(ARC)で覆われており、これによって太陽電池の効率が高められる。前面コンタクト(front−contact)として知られる二次元の電極グリッドパターンはN型シリコンへの連絡を形成し、もう一方の側(裏面コンタクト;back−contact)は、アルミニウム(Al)コーティングによってP型シリコンへと連絡する。これらのコンタクトは、PN接合部から外部へと出力するための電気的な出力路である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前面コンタクト(front−contact)のペースト原料に用いるためのガラス組成物を提供するものであって、これらは高性能(効率(η)及び曲線因子(FF)によって計測される)の太陽電池を得るための低い直列抵抗(R)及び高い並列抵抗(Rsh)を備えている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明には、概略、太陽電池コンタクトを製造するための、固体部分と有機部分の混合物が含まれる。固体部分は、約85〜約99重量%の金属成分(好ましくは銀)、及び約1〜約15重量%のガラス成分を含む。ガラス成分は、約15〜約75mol%のPbO、及び約5〜約50mol%のSiOを含む。金属成分は、銀フレーク、銀粉、コロイダルシルバー、及び/又はリン被覆銀粉を含む。また、上記の成分及び量を使用した太陽電池の製造方法も想定される。
【0005】
本発明の混合物及び方法は、前面コンタクト成分間(典型的にはAgとSiである)において、ガラス媒体を通じて最適な相互作用、結合、及び接触の形成を促進することによって、従来技術の欠点を克服するものである。ガラス及び銀を含有する導電性のペーストは、シリコン基板上に印刷された後に焼成され、ガラスが熔融し、金属が焼結する。焼成後、Ag/Siの導電性単独系統が形成され、バルクペーストとシリコンウェハーの間に導電性のブリッジを作る。有鉛ガラスは、比較的低温での優れたフロー特性により、低い温度での焼成を可能にする。
【0006】
上記ならびに他の本発明の特徴は、以下、さらに詳しく記載され、特に請求項や以下の記載(本発明における特定の具体的な実施例を詳細に説明している)において指摘されている。しかしながら、これらは本発明の原理が採用される多様な方法が少なからずあることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上記ならびに他の本発明の特徴は、以下、さらに詳しく記載される。銀−、及びガラス−含有の厚膜フィルムペーストは、光照射によって発生する電流を集電するために、シリコンベース太陽電池の前面コンタクトの製造に使用される。銀/シリコン界面の微細構造及び電気的特性によって、セル効率(η)及び曲線因子(FF)によって計測される電池の電気的性能は大きく影響を受ける。また、太陽電池の電気的特性は、R及びRShによって特徴付けられる。前面コンタクト界面の構成及び微細構造により、Rがほぼ決定される。ぺーストは一般的にスクリーン印刷で塗布されるが、噴出、パッド印刷、及びホットメルト印刷のような方法も使用される。スクリーン印刷された前面コンタクトを有する太陽電池は、比較的低温(ウェハー温度550℃〜850℃、焼成炉の設定温度650℃〜1000℃)で焼成され、リンをドープしたシリコンウェハーのN側と銀ベースのペーストとの間に低い抵抗のコンタクトを形成する。前面コンタクトペーストは、焼成される前において、1又はそれ以上の形状(粉末、フレーク、コロイド)での銀含有化合物、及びガラス成分、及び/又は他の添加物を含む。ガラス成分は、少なくともPbO及びSiOを含む。
【0008】
温度に作用して起こる反応の順序及び速度は、銀ペーストとシリコンウェハー間に低い抵抗のコンタクトを形成する要因である。界面の構造は、シリコン基板、Ag/Si単独系統、絶縁ガラス層内のAg沈殿物、バルク銀といった複数の相からなる。ガラスは、シリコン界面とバルク銀との間に、ほぼ連続の層を形成する。
【0009】
太陽電池は、原料混合物からなるペースト又はインクにより作られた前面コンタクトを有する。これらの混合物は、焼成前において、固体部分と有機部分とを含む。固体部分は、導電性金属とガラス成分とを含む。他の添加物(すなわち、無機添加物)は、最大約30重量%まで、好適には最大約25重量%まで、さらに好適には最大約10重量%までが、必要に応じて含まれる。本発明にかかるペースト組成物の固体部分は、(a)固体部分の約85〜約99重量%、好適には約88〜約95重量%の銀、銀合金、銀酸化物、もしくは銀化合物(すなわち、銀成分)を含む金属成分、及び(b)固体部分の約1〜約15重量%、好適には約2〜約9重量%、さらに好適には約3〜約8重量%のガラス成分を含む。本発明のペーストの有機部分は、(a)少なくとも約80重量%の有機溶媒、(b)最大約15重量%までの熱可塑性樹脂、(c)最大約4重量%までのチキソトロープ剤、及び(d)最大約2重量%までの湿潤剤を含む。1種以上の溶媒、樹脂、チキソトロープ、湿潤剤の使用も想定される。有機部分に対する固体部分の重量比は各種想定されるが、一実施例においては、約20:1〜約1:20の有機部分に対する固体部分の重量比を含んでいる。好適な実施例において、重量比は、約15:1〜約1:15、最も好適には、約10:1〜約1:10の割合である。それぞれの主要成分の種類(ガラス、金属、有機物)は以下に詳しく説明する。
【0010】
ペーストガラス。ガラス成分は、焼成前において、1種もしくはそれ以上のガラス組成物を含有する。それぞれのガラス組成物は、PbOやSiOを含む酸化物フリットを最小限含有している。酸化亜鉛(ZnO)を、本発明のガラス成分中のPbOの一部と置き換えてもよい。特に、本発明の各種実施例において、ガラス成分は表1の成分を含んでいる。少なくとも2種のガラス組成物が存在する場合、それらの構成及び比率の選択は、太陽電池コンタクトの品質に影響する。ZnOを高い割合(例えば、約35mol%以上)で含む(第一の)ガラス組成物を使用すると、シリコンへの浸透は最小となる。このようなガラス組成物は、表3の実施例V及びVII、表4の組成物Aに例示されている。一方、PbOを高い割合(例えば、約75mol%以上)で含む(第二の)亜鉛を含有しないガラス組成物を使用すると、よりシリコンへ浸透する。このようなガラス組成物は、表3の実施例VI、VIII、IX、X及びXI、表4の組成物B、C、D及びEに例示されている。使用されるガラス組成物の数にかかわらず、ガラス組成物全体でのPbO及びSiOの総量は、PbOが約15〜約75mol%、SiOが約5〜約50mol%の範囲内となる。様々な割合の第一及び第二ガラス組成物が、太陽電池コンタクトの形成において、シリコンへの浸透の程度及びこれにより得られる太陽電池の特性を調整するために使用することができる。例えば、ガラス成分中に、第一及び第二のガラス組成物は、約1:20〜約20:1、好適には約1:3〜約3:1の重量比で存在する。好適には、ガラス成分は、カドミウムもしくはカドミウムの酸化物を含まない。さらに、本発明において、太陽電池の製造に使用されるガラス組成物を得るために、PbOの一部をBiへ置き換えることもできる。例えば、約1〜約30mol%のBiが使用可能である。
【0011】
他の実施例においては、さらにAl、Ta、Sb、ZrO、HfO、In、Ga、Y、Yb、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。Y+Ybといった記載は、Y又はYbもしくはこの2つの組み合わせが一定量含まれることを意味する。表1に示される実施例において、つづく表2に示される酸化物フリット成分をさらに含んでいてもよい。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
実施例において、表2に記載されている全てのフリット成分を含んでいる必要はないものの様々な組み合わせが可能である。表3に示されるように、他の具体的な実施例において、様々な量(モル%)で前記成分を含むことができる。
【0015】
【表3】

【0016】
銀成分。 銀成分中の銀原料は、1又はそれ以上の銀金属又は銀合金の微粉末とすることができる。銀の一部は、酸化銀(AgO)、もしくはAgCl、AgNO又はAgOOCCH(酢酸銀)のような銀塩として添加できる。さらに、銀は、リンのような様々な物質で被覆されていてもよい。あるいは、ガラス溶解/製造工程において、酸化銀をガラス中に溶解させることもできる。ペーストに使用される銀粒子は、球状、フレーク状、又はコロイド懸濁液としての提供、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。本発明の太陽電池コンタクトの銀成分とするために、前記銀原料のいずれを用いてもよい。例えば、ペーストの固体部分は、約80〜約99重量%の球状銀粒子、もしくは約75〜約90重量%の銀粒子、及び約1〜10重量%の銀フレークを含んでいてもよい。他の固体部分の代替組成は、約75〜90重量%の銀フレーク、及び約1〜約10重量%のコロイダルシルバーを含んでいる。一般的に、固体部分は、約60〜約95重量%の銀粉もしくは銀フレーク、及び約0.1〜約20重量%のコロイダルシルバーを含んでいてもよい。適当な市販の銀粒子の例として、球状銀粉Ag3000−1、銀フレークSF−23、及びコロイダルシルバー懸濁液RDAGCOLBが挙げられ、これらはすべてFerro
Corporation(オハイオ州クリーブランド)にて市販されている。
【0017】
無機添加剤/その他の添加剤。リンは、前面コンタクトの抵抗を減少させるため、様々な方法によってペーストに添加することができる。例えば、ある種のガラスは、粉末状又は酸化物フリット状のPとともに処理するか、もしくはリンを、リン酸エステル及びその他の有機リン化合物としてペーストへ添加することができる。より簡単には、ペーストの調製に先立って、リンを銀粒子の被覆物として添加できる。このような場合、ペースト化する前に、銀粒子は液状リン及び溶媒とともに混合される。例えば、約85〜約95重量%の銀粒子、約5〜約15重量%の溶媒、及び約0.5〜約10重量%の液状リンを混合し、溶媒を蒸発させる。リン被覆銀粒子の使用により、本発明のペーストにおけるリンと銀との緊密な混合が確実になされる。
【0018】
微粒子シリコン又は炭素粉、もしくはその両方のような他の添加剤は、銀の還元及び沈殿反応を抑えるためにペーストへと添加することができる。界面又はバルクガラス中での銀の沈殿は、焼成雰囲気(例えば、N又はN/H/HO混合物フローでの焼成)の調整によっても抑えることができる。Pb、Bi、In、Ga、Sn、Zn、及び各金属と少なくとも1種の他の金属との合金のような、優れた低融点の金属添加物(すなわち、金属酸化物とは異なる元素金属添加物)は、低温条件でコンタクトを提供するため、もしくは焼成温度範囲を拡大するために添加することができる。亜鉛は好適な金属添加物であり、銀は金属添加物を合金とするための好適な金属である。亜鉛−銀合金が最も好適である。
【0019】
(a)ガラスの混合物、又は(b)ガラスと結晶性添加物の混合物、又は(c)1種もしくはそれ以上の結晶性添加物の混合物が、所望の組成範囲のガラス成分を構成するために使用できる。その目的は、接触抵抗を減少させ、太陽電池の電気的性能を向上させることにある。例えば、Bi、Sb、Sb、In、Ga、SnO、ZnO、Pb、PbO、SiO、ZrO、Al、B、Taのような第二の相の結晶性物質を、コンタクトの性能を調整するためにガラス成分に添加してもよい。前記酸化物の組み合わせ及び反応生成物は、所望の特性を有するガラス成分の調製のためにも好適である。例えば、4PbO・SiO、3PbO・SiO、2PbO・SiO、3PbO・2SiO及びPbO・SiOのようなPbOとSiOの反応によって生成される低融点のケイ酸鉛(結晶質又はガラス質、あるいは単独又は混合物の状態である)を、ガラス成分の調製に用いることができる。ケイ酸鉛の第二の相は必要に応じて用いてもよい。また、ZnO・SiOやZrO2・SiOのような前記酸化物のほかの反応生成物を使用してもよい。しかし、上記酸化物の総量は、ここに開示されている様々な実施例に特定される範囲内でなければならない。
【0020】
本発明者らは、(Bとしての)ホウ素含有量が、コンタクト形成に影響を与えることを見出した。多量(>10mol%)のBが存在すると、特に高いRを有する劣悪なコンタクトの形成を招く。したがって、好適な実施例において、ガラス成分は、約3mol%を超えるB、好適には約1mol%を超えるBを含まない。最も好適には、ガラス成分はBを含まない。
【0021】
さらに本発明者らは、ハフニウムの酸化物(HfO)、インジウムの酸化物(In)、及び/またはガリウムの酸化物(Ga)を含有する特定のガラスは、導電性のAg/Si単独系統のサイズ、質をともに増加させることも見出した。したがって、最大15mol%までのHfO、及び/又はIn、及び/又はGaをガラス成分中に含んでいてもよい。
【0022】
タンタル及びモリブデンの酸化物は、焼成中のガラス粘性及びガラスの表面張力を減少し、溶融したガラスによるウェハーの湿潤をより促進させる。したがって、最大約10mol%までのTa、及び最大約3mol%までのMoOをガラス成分中に含有することができる。
【0023】
ガラス組成物からの銀の溶解及び沈殿の反応速度は、アルカリ金属酸化物の存在によって大きく変化する。この点から、本発明の組成物は、さらに、例えば、NaO、KO及びLiO及びそれらの組み合わせのようなアルカリ金属酸化物を含んでいてもよい。特に、本発明の一実施例のガラス成分は、約0.1〜約15mol%のNaO+KO+LiO、もしくはさらに好適には、約0.1〜約5mol%のこれらのアルカリ金属酸化物を含んでいてもよい。
【0024】
前面コンタクトペースト又はインク中のガラスは、効率的な前面コンタクト銀−シリコン界面を形成するために、多くの主要な役割を果たす。前面コンタクトペーストガラスは、焼成を通じて下部のSiとのコンタクトを形成するため、一般に窒化ケイ素(SiN)又は二酸化チタン(TiO)から作られる反射防止膜を腐食させる。ガラスはまた、Siとの自己−制御相互作用(Siの一部を酸化してSiOとしてガラス中へ溶解させる)にも関与する。SiOが局所的に集まることでガラスの粘性が増加し、この増加によりSiがSiOとしてさらに溶解することが一時的に制限されるため、ガラスとSiとの自己制御相互作用が生じてもPN接合は保たれる。ガラスはまた、ガラスに溶解しているAg金属を溶解し、Agイオンをシリコン界面へ移動させ、有益なAg/Si単独系統を界面で形成するために、ガラスからAgを沈殿させる。最終的に、ガラスは、バルク銀の抵抗を減少させるための銀ペーストの緻密性を高める働きをし、シリコンウェハーと焼成(銀)ペースト間の結合(密着)を高める。
【0025】
有機ビヒクル。 多くの導電性組成物のためのビヒクル又はキャリアーは、一般に、溶媒に溶解した樹脂溶液であり、その多くは樹脂とチキソトロープ剤の両者を含む溶媒溶液である。溶媒の沸点は、通常、約130℃〜約350℃である。この目的で最も頻繁に使用される樹脂は、エチルセルロースでもある。しかし、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、エチルセルロースとフェノール樹脂の混合物、低級アルコールのポリメタクリル酸エステル、及びエチレングリコールモノアセテートのモノブチルエーテルも使用可能である。厚膜塗布に最も広く使用される溶媒は、α又はβテルピネオールのようなテルペン、もしくは、Dowanol(登録商標;ジエチレングリコールモノエチルエーテル)のような高沸点アルコール、又はそれらとbutyl Carbitol(登録商標;ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、dibutyl Carbitol(登録商標;ジエチレングリコールジブチルエーテル)、butyl Carbitol acetate(登録商標;ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ヘキシレングリコール、Texanol(登録商標;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート)のような他の溶媒との混合物、並びにその他のアルコールエステル、ケロシンやフタル酸ジブチルである。ビヒクルは、コンタクトを修飾するために、例えば、ニッケル、リンもしくは銀をベースとする有機金属化合物を含有することができる。これらと他の溶媒との様々な混合によって、それぞれの用途に求められる所望の粘度や揮発性とすることができる。一般的に厚膜ペースト形成に使用される他の分散剤、界面活性剤及び流動性改質剤を含んでいてもよい。有機キャリアーに有用な製品は、以下の商標にて入手することができる:Texanol(登録商標;Eastman Chemical Company,テネシー州キングスポート);Dowanol及びCarbitol(登録商標;Dow Chemical Co.,ミシシッピ州ミッドランド);Triton(登録商標;Union Carbide Division of Dow Chemical Co.,ミシシッピ州ミッドランド)、Thixatrol(登録商標;Elementis Company,ニュージャージー州ハイツタウン)、及びDiffusol(登録商標;Transene Co. Inc.,マサチューセッツ州ダンバー)。N−DIFFUSOL(登録商標)は、リン元素と同程度の拡散係数を持つn型拡散剤を含有する安定な液体製剤である。
【0026】
一般的に使用される有機チキソトロープ剤は、水素化ヒマシ油及びそれらの誘導体である。懸濁液のずり流動化能を有する溶媒/樹脂特性においてのみ好適であるため、チキソトロープ剤は常に必要とされるものではない。さらに、湿潤剤として脂肪酸エステル、例えば、N−タロー−1,3−ジアミノプロパンジオレート、N−タロートリメチレンジアミンジアセテート、N−ココトリメチレンジアミン、ベータジアミン、N−オレイルトリメチレンジアミン、N−タロートリメチレンジアミン及びN−タロートリメチレンジアミンジオレート、及びそれらの組み合わせが用いられる。
【0027】
前述の組成範囲は好ましい領域のものであって、これらの範囲に限定されるものではないことに注意すべきであり、当業者は、最終的な製品の製造、形成のために、特定の用途、特定の組成物及び条件に応じて、これらの組成範囲を変更し得ることを認識するであろう。本発明にかかるペーストは、3本ロールミルを用いて調製することができる。使用されるキャリアーの量及びタイプは、主に、最終的に所望される処方粘性、ペーストの粉の細かさ、及び所望されるウェットプリントの厚さによって決定される。本発明にかかる組成物の調製においては、微粒子無機固体をキャリアーと混合し、3本ロールミルのような適当な装置によって分散し、懸濁液を生成する。この結果得られた組成物は、ブルックフィールドHTB型スピンドル14粘度計を用いた25℃、せん断速度9.6sec−1での粘性が、約100〜約500kcps、好適には約300〜約400kcpsとなる。
【0028】
ペーストのプリント及び焼成。前記ペースト組成物は、太陽電池コンタクトあるいは他の太陽電池部品の製造工程で用いられる。本発明の太陽電池コンタクトの製造方法においては、(1)銀含有ペーストをシリコン基板に塗布し、(2)ペーストを乾燥させ、(3)ペーストを焼成して金属を焼結させ、シリコンへのコンタクトを形成する工程が含まれる。ペーストのプリントパターンは、炉設定温度約650〜950℃、又はウェハー温度約550〜850℃といった好適な温度で焼成される。好適には、炉設定温度は、約750−930℃で、ペーストは空気中で焼成される。焼成中、反射防止SiN層がガラスによって酸化、腐食され、Si基板との反応によってAg/Si単独系統が形成し、これがシリコンに対してエピタキシャルに結合していると考えられる。焼成条件は、シリコンウェハー上のシリコン/ペースト界面において、Ag/Si単独系統の十分な密度を生成するために選択され、これが低い抵抗性、高い変換効率、高い曲線因子を有する前面コンタクト及び太陽電池の生産につながる。
【0029】
標準的なARCは、Siのような、総称してSiNと呼ばれる窒化ケイ素のようなシリコン化合物から作られる。この層は絶縁体として働き、接触抵抗を増加させる傾向にある。したがって、ガラス成分によるこのARC層の腐食は、前面コンタクトの形成に必要な工程である。本発明者らは、シリコンウェハーとペースト間の抵抗の減少は、界面でのエピタキシャルな銀/シリコンの導電性単独系統の形成によって促進されることを見出した。すなわち、シリコン上の銀単独系統は、シリコン基板において見られるものと同様の結晶構造であると考えられる。このようなエピタキシャルな銀/シリコン界面が生じないとした場合、この界面での抵抗は、容認し難いほど高くなる。これまでは、低抵抗のエピタキシャルな銀/シリコン界面を得るための加工条件は、非常に範囲が狭く、成し遂げ難かった。本発明のペースト及び製法は、幅広い加工条件下、すなわち、最小焼成温度約650℃から最大850℃(ウェハー温度)まで焼成可能な条件下で、(低抵抗を有するコンタクトの形成につながる)エピタキシャルな銀/シリコン界面の形成を可能にする。本発明のペーストは空気中で焼成することができる。
【0030】
シリコン太陽電池の低抵抗前面コンタクトの形成は、技術的な挑戦を伴うものである。ペースト構成成分(銀金属、ガラス、添加剤、有機物)中の相互作用、及びペースト構成成分とシリコン基板間の相互反応は、両者ともに複雑である。しかしながら、ペースト成分とシリコン基板間の相互反応については制御しなければならない。急速な炉工程では、すべての反応が反応速度論に大きく依存するようになる。さらに、この興味深い反応は、PN接合を保持するために、シリコンの非常に狭い領域内(<0.5ミクロン)で行われなければならない。
【0031】
本発明で論じられる特性は、ガラス組成物、ペースト中のガラス量、銀の形態、そして焼成条件を含む様々な変量によって決まるものと考えられる。低直列抵抗(R)をもつ前面コンタクトを形成するためには、ガラス成分内でのいくつかの物理的及び化学的現象が起こらなければならない。小さな温度変化、すなわち、PVセル内、セル間、炉−炉、セルロット−セルロット間での温度変化が、電池の性能に大きな影響を与えるため、前面コンタクト特性の最適化には、焼成温度及び焼成条件の微調整が必要とされる。中間層のガラスの厚さが最小化されると、銀とシリコンとの間のコンタクト(すなわち、エピタキシャルな銀/シリコン単独系統)の数及び質が増加することによって、抵抗が減少し、導電性が増加すると考えられる。ペーストが低すぎる温度で焼成されると、Ag/Si界面において銀とシリコンとが十分に反応できないため、高い直列抵抗が生じる。反対に、ペーストが高すぎる温度で焼成されると、シリコン中へ過剰量の銀が拡散すること(及び界面から離れること)により、シリコンウェハーのPN接合が影響を受け、その結果、Rshの減少によって電池性能が悪化する。高いRshは、優れた電池性能のために必要とされる。
【0032】
前面コンタクトの製造方法。本発明に係る太陽電池コンタクトは、ここに開示された導電性ペーストを、例えば、スクリーンプリントによって、例えば、約40〜約80ミクロンの所望のウエット厚さで、基板に塗布することによって製造される。自動スクリーンプリント技術には、200−325メッシュスクリーンを使用することができる。その後、印刷されたパターンは焼成の前に、約1−15分間、200℃以下、好適には約120℃で乾燥される。乾燥された印刷されたパターンは、ベルトコンベヤー式の炉で、ピーク温度にて、わずか1秒から最大約5分の間、空気中で焼成することができる。焼成中、ガラスが溶解され、金属が焼結される。
【0033】
窒素(N)又はその他の不活性雰囲気が、必要に応じて用いられる。焼成は、通常、有機物質の完全燃焼が可能な約300℃〜約550℃の温度プロフィールで行なわれ、約650℃〜約1000℃の炉設定温度ピークは、わずか1秒間しか持続しない。しかしながら、低温で焼成した場合には、1、3、及び5分程度のより長い焼成時間が可能である。例えば、3ゾーン焼成プロフィールを、ベルト速度約1〜約4m/min、好適には、3m/min(約120インチ/min)で使用することができる。好適な例では、ゾーン1は約7インチ(18センチ)、ゾーン2は約16インチ(40センチ)、そしてゾーン3は約7インチ(18センチ)である。それぞれの連続するゾーンの温度は、一般に、例えば、ゾーン1が700−790℃、ゾーン2は800−850℃、ゾーン3は800−970℃といったように、前のゾーンよりも高くする。当然、4、5、6、又は7ゾーンもしくはそれ以上を含む3ゾーン以上の焼成配列も本発明により想定され、それぞれのゾーンの長さは約5〜約20インチ、焼成温度は650〜1000℃である。
【実施例1】
【0034】
実施例:12.5cm×12.5cm、厚さ250−300μmの多結晶シリコンウェハーを窒化ケイ素反射防止膜によって被覆した。これらのウェハーのシート抵抗は約1Ω−cmであった。
【0035】
市販の裏面用アルミニウムペースト(Ferro CN53−038)及び裏面銀ペースト(Ferro CN33−451)を裏面コンタクトのために用いた。前面コンタクトパターンは、280メッシュスクリーンを使用し、フィンガーラインのオープニング100μm、ライン間のスペース約2.8mmでプリントした。実施例のペーストに用いられたガラス組成物は、周知のガラス製造技術によって調製した。ガラス組成物を表4に、このガラス組成物の特性を表5に、ペースト組成物を表6に示す。前面コンタクトをプリントした後、サンプルを約100〜約150℃で約3〜約15分間乾燥した。プリントしたウェハーは、3ゾーン赤外線(IR)ベルト炉を使用し、約3m(120”)/minのベルト速度で、3つのゾーンの設定温度がそれぞれ780℃、810℃、930℃の条件で、共焼成した。ゾーンは、それぞれ7”、16”、7”であった。ほとんどのサンプルの焼成後のフィンガー幅は、約120〜約170μmで、焼成後の厚さは、約10〜15μmであった。
【0036】
太陽電池の電気的性能は、Oriel Instrument Co.社(コネチカット州ストラトフォード)のModel 91193−1000を用いて、ASTM G−173−03に準じ、AM
1.5の太陽光条件で測定した。電気的試験の結果を表7に示す。
【0037】
【表4】

【0038】
ガラス組成物A〜Eの特性は、つづく表5に説明する。Tgは、ガラス転移温度を表す。TCEは、25〜300℃の範囲での熱膨張係数である。
【0039】
【表5】

【0040】
表6のペースト剤は、Ferro Corporation(オハイオ州クリーブランド)より市販されている有機ビヒクルV131及びV132を使用して製造された。表6中の量は、すべて固体部分及び有機部分を含むペーストの重量パーセントである。
【0041】
【表6】

表6の前面コンタクトペーストは、本発明に開示された焼成プロフィールに従って焼成した。得られた太陽電池の電気的特性を表7に説明する。
【0042】
【表7】

【0043】
Iscとは、出力電圧0で測定された短絡電流を意味し、Vocとは、出力電流0で測定された開回路電圧を意味する。R及びRshは前記定義の通りである。
【0044】
付加的な利点及び変更を、当業者は容易に思いつくであろう。このため、本発明は、その広範な態様において、本明細書に示され、記載された特定の詳細又は具体的実施例に限定されるものではない。したがって、添付の請求項及びその均等物により定義される全般的な発明概念の精神あるいはその範囲から逸脱しない限りにおいて、多様な変更を行ってよい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.固体部分、及び
b.有機部分を含み、
c.該固体部分が、
i.約85〜約99重量%の銀成分、及び
ii.約1〜約15重量%のガラス成分を含み、
iii.該ガラス成分が
a.約15〜約75mol%のPbO、
b.約5〜50mol%のSiO
c.約0.1〜約10mol%のTa、及び
d.約3mol%未満のBを含む
ことを特徴とする太陽電池コンタクトを製造するための混合物。
【請求項2】
請求項1の混合物において、ガラス成分がBを含まないことを特徴とする混合物。
【請求項3】
請求項1の混合物において、前記有機部分に対する前記固体部分の重量比が約20:1〜約1:20であることを特徴とする混合物。
【請求項4】
請求項1の混合物において、前記ガラス成分が、さらに約0.1〜約15mol%のAlを含むことを特徴とする混合物。
【請求項5】
請求項4の混合物において、前記ガラス成分が、さらに約0.1〜約10mol%のZrOを含むことを特徴とする混合物。
【請求項6】
請求項5の混合物において、前記ガラス成分が、さらに約0.1〜約8mol%のPを含むことを特徴とする混合物。
【請求項7】
請求項1の混合物において、前記ガラス成分が、さらに約0.1〜約15mol%のHfO+In+Gaを含むことを特徴とする混合物。
【請求項8】
請求項1の混合物において、前記ガラス成分が、さらに約0.1〜約10mol%のY+Ybを含むことを特徴とする混合物。
【請求項9】
請求項1の混合物において、前記ガラス成分が、さらに約0.1〜約15mol%のHfOを含むことを特徴とする混合物。
【請求項10】
請求項4の混合物において、前記ガラス成分が、さらに約0.1〜約10mol%のSbを含むことを特徴とする混合物。
【請求項11】
請求項4の混合物において、前記ガラス成分が、
a.約26〜約34mol%のPbO、
b.約27〜約33mol%のSiO
c.約5〜約11mol%のAl
d.約0.1〜約2mol%のTaを含み、
e.さらに約27〜約33mol%のZnOを含む
ことを特徴とする混合物。
【請求項12】
請求項11の混合物において、ガラス成分がBを含まないことを特徴とする混合物。
【請求項13】
請求項4の混合物において、前記ガラス成分が、さらに約0.1〜約3mol%のMoOを含むことを特徴とする混合物。
【請求項14】
請求項1の混合物において、前記固体部分が、さらにBi、Sb、In、Ga、SnO、ZnO、Pb、PbO、SiO、ZrO、Al、B、Ta、4PbO・SiO、3PbO・SiO、2PbO・SiO、3PbO・2SiO、PbO・SiO、ZnO・SiO、及びZrO・SiO、及びこれらの反応生成物、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される結晶性添加剤を含むことを特徴とする混合物。
【請求項15】
請求項1の混合物において、前記固体部分が、約60〜約95重量%のフレーク状銀もしくは粉末状銀、及び約0.1〜約20重量%のコロイダルシルバーを含むことを特徴とする混合物。
【請求項16】
請求項1の混合物において、前記銀成分が、フレーク状、粉末状、もしくはコロイド粒子状として存在する群から選択される銀を含み、
固体部分がさらにリンを含み、そのリンの少なくとも一部が、銀のフレーク、粉末もしくはコロイド粒子の少なくとも一部の被膜として存在することを特徴とする混合物。
【請求項17】
請求項1の混合物において、前記銀成分が、銀酸化物又は銀塩、もしくはそれらの組み合わせから成る群から選択される化合物を含むことを特徴とする混合物。
【請求項18】
請求項1の混合物において、前記固体部分が、さらに約0.5〜約25重量%の第一金属を含み、該第一金属は、Pb、Bi、Zn、In、Ga、及びSb、及びこれらと少なくとも1種の第二金属との合金から成る群から選択されることを特徴とする混合物。
【請求項19】
請求項18の混合物において、少なくとも1種の第二金属が銀であることを特徴とする混合物。
【請求項20】
太陽電池コンタクトの製造方法であって、
a.銀含有ペーストを反射防止シリコンウェハー上に塗布し、
b.ペーストを焼成して被膜を形成し、
c.該ペーストは固体部分と有機部分とを含み、該固体部分が、
i.約85〜約99重量%の銀、及び
ii.約1〜約15重量%のガラス成分を含み、
d.該ガラス成分が、
i.約15〜75mol%のPbO、
ii.約5〜約50mol%のSiO
iii.約0.1〜約10mol%のTa、及び
iv.約3mol%未満のBを含む
ことを特徴とする製造方法。
【請求項21】
請求項20の製造方法において、ガラス成分がBを含まないことを特徴とする製造方法。
【請求項22】
請求項20の製造方法において、前記ペーストが、約650℃〜約1000℃の炉設定温度で約1秒〜約5分間焼成されることを特徴とする製造方法。

【公開番号】特開2013−30804(P2013−30804A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233543(P2012−233543)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2007−541189(P2007−541189)の分割
【原出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(503468695)フエロ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】