説明

太陽電池パネルのレーザ除去加工装置

【課題】太陽電池パネル周縁の太陽電池膜を高速かつ高効率的に除去して絶縁帯を形成し、優れた生産性とメンテナンス性、コスト性を備えた太陽電池パネルのレーザ除去加工装置を提供する。
【解決手段】透光性基板を下向きにした太陽電池パネルPを載置するワークテーブル13と、ワークテーブルを直線状にスライド移動させる移動装置と、ワークテーブルの下部に配設されワークテーブルの直線移動方向に沿って太陽電池膜の端部をレーザ照射するレーザヘッド15、16と、太陽電池膜の未除去部分を除去できるようにワークテーブルを回転させる回転装置17と、を有するように太陽電池パネルのレーザ除去装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルとなる被加工基板にレーザ光を照射して、被加工基板上に積層された太陽電池膜を除去して絶縁帯を形成させる、太陽電池パネルのレーザ除去加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜化合物系の太陽電池パネルは、透明なガラス基板上に透明電極層や半導体層、裏面電極層等の蒸着薄膜からなる太陽電池膜が積層されたものであり、従来、取り付け用のフレームに太陽電池パネルを取り付けたときに、フレームとの絶縁性を確保するため、太陽電池パネル周縁に絶縁帯を形成している。
このような絶縁帯を形成させるには、通常、太陽電池膜に対してレーザ照射を行って所望の部位の薄膜を選択的に除去することにより行われている。
例えば、特許文献1には太陽電池膜の一部をレーザ照射により除去して露出した面をシール材の接着面として封止する太陽電池パネルの製造方法が開示されている。また、特許文献2には太陽電池の膜面を下向きにしてガラス基板側からレーザ光を照射しパターニングするレーザを用いた薄膜太陽電池の製造装置が開示されている。特許文献3には透明基材と蒸着薄膜を有する被加工基板とを保持して、透明基材の裏面側から前記蒸着薄膜へ向けてレーザ光を照射し、このレーザ光と前記被加工基板との相対的な位置関係を変化させるようにしたレーザ加工装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3727877号公報
【特許文献2】特開2001−111078号公報
【特許文献3】特開2007−98404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のレーザ加工装置などでは、太陽電池パネルとなる種類、形態の異なる被加工物に応じてレーザ処理を行なうための被加工物の移動調整機構がないために、位置決めピンなどの固定治具や位置決機構を多数用意しなければならず、煩雑な段取り作業などを要してその生産性に欠けるという問題があった。
特に特許文献1の太陽電池パネルの製造方法では、ガラス基板上に積層された太陽電池膜側からレーザ光が照射されるので表面の金属膜部分におけるエネルギー効率が低下して絶縁不良などをきたす場合があるとともに、加工による粉塵などが発生しやすいという問題があった。
また、特許文献2や特許文献3の発明は、レーザ光の照射に際してレーザヘッドの精密複雑なスキャンニング制御を要するため、種々の形態の太陽電池パネルの絶縁加工処理に対応したメンテナンスが必要となってコスト高となるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するためになされたもので、太陽電池パネル周縁の太陽電池膜を高速かつ高効率的に除去して絶縁帯を形成し、優れた生産性とメンテナンス性、コスト性を備えた太陽電池パネルのレーザ除去加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置は、透光性基板上に太陽電池膜が形成された太陽電池パネルの周縁の太陽電池膜をレーザ照射により除去する太陽電池パネルのレーザ除去加工装置であって、前記透光性基板を下向きにした太陽電池パネルを回転可能に載置するワークテーブルと、前記ワークテーブルを直線状にスライド移動させる移動装置と、前記太陽電池パネルを透光性基板側から照射するように配設され、前記ワークテーブルの直線移動方向に沿って太陽電池膜の端部をレーザ照射によって除去するレーザヘッドと、前記ワークテーブルへの太陽電池パネルの投入側及び/又は排出側、あるいは前記移動装置内に配設され太陽電池膜の未除去の部分を除去できるように前記ワークテーブルを回転させる回転装置と、を有するように構成したことを特徴とする。
【0007】
(2)本発明の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置は、透光性基板上に太陽電池膜が形成された太陽電池パネルの周縁の太陽電池膜をレーザにより除去する装置であって、透光性基板を下向きにして載置した太陽電池パネルを直交する2方向に直線状に移動させる移動装置と、太陽電池パネルの移動方向の両端部を同時に透光性基板側から照射するように配設したレーザヘッドと、を有し、
前記移動装置に載置した太陽電池パネルを前記2方向のうちの1方向に移動させながら移動方向に沿って太陽電池膜の両側端部を前記レーザヘッドからのレーザ照射によって除去し、さらに前記移動装置に載置した太陽電池パネルを前記2方向のうちの他方向に移動させながら移動方向に沿って太陽電池膜の両側端部を前記レーザヘッドからのレーザ照射によって除去し、太陽電池パネルの周縁の太陽電池膜をレーザ照射によって除去するように構成したことを特徴とする。
【0008】
(3)本発明の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置は、前記(1)又は(2)の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置において、前記レーザヘッドが前記太陽電池パネルの移動方向と直角方向に移動させる位置変更装置を有するように構成したことを特徴とする。
【0009】
(4)本発明の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置は、前記(1)又は(3)の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置において、前記レーザヘッドが前記太陽電池パネルの移動方向の両端部を同時に照射できるように複数配設されているように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透光性基板を下向きにして太陽電池パネルを載置したワークテーブルの直線移動方向に沿ってレーザ照射によって太陽電池膜の端部を除去する太陽電池パネルのレーザ除去加工において、ワークテーブルへの太陽電池パネルの投入側及び/又は排出側、あるいは移動装置内に配設され太陽電池膜の未除去の部分を除去するようにワークテーブルを回転させる回転装置を備えているので、太陽電池パネル周縁の被膜部分を高速かつ高効率的に除去して絶縁帯を形成させることができ、優れた生産性とメンテナンス性、コスト性を備えた太陽電池パネルのレーザ除去加工装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置の平面図である。
【図2】本実施形態の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置の正面図である。
【図3】本実施形態の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置の側面図である。
【図4】本実施形態の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置における集塵方法の説明図であり、(a)は太陽電池パネルの移動方向と直角な方向から見た図面であり、(b)はレーザ除去加工装置の正面から見た図面である。
【図5】(a)は排出側(投入側と反対側)に回転装置を設けた本実施形態の説明図であり、(b)は直交する縦横2方向にL字状に移動させる移動装置を備えた本実施形態の説明図である。
【図6】本実施形態の太陽電池パネルの加工パターンの説明図である。
【図7】本実施形態の太陽電池パネルの他の加工パターンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る太陽電池パネルのレーザ除去加工装置は、透光性基板上に太陽電池膜が形成された太陽電池パネルの周縁の太陽電池膜をレーザ照射により除去する加工装置である。
本実施形態の加工装置は、透光性基板を下向きにした太陽電池パネルを回転可能に載置するワークテーブルと、ワークテーブルを直線状にスライド移動させる移動装置と、太陽電池パネルを透光性基板側から照射するようにワークテーブルの下部に配設され、ワークテーブルの直線移動方向に沿って太陽電池膜の端部をレーザ照射によって除去するレーザヘッドと、ワークテーブルへの太陽電池パネルの投入側及び/又は排出側、あるいは前記移動装置内に配設され太陽電池膜の未除去の部分を除去できるようにワークテーブルを回転させる回転装置と、を有して構成されている。
これによって、太陽電池パネル周縁の太陽電池膜を高速かつ高効率的に除去して絶縁帯を形成することができ、生産性やメンテナンス性などに優れた太陽電池パネルのレーザ除去加工装置とすることができる。
【0013】
すなわち、被加工物である薄膜型の太陽電池パネルは、その受光面(透光性基板)を下にした状態でレーザ除去加工装置のレーザ加工部に移動され、太陽電池膜の周縁(太陽電池パネル4辺の端部)の太陽電池膜を、太陽電池パネルよりも下側に配置されたレーザヘッドにより、太陽電池パネルを直線状にスライド移動させながら除去加工を行う。そして、特定辺の端部の太陽電池膜の除去加工が終了したのち、被加工物を回転して、未除去の部分(辺)の端部の太陽電池膜除去加工を行なう。
このように、レーザ除去加工と回転動作を所定回数繰り返して行なうことによって、太陽電池パネルの周縁の太陽電池膜を高速で除去することができる。
【0014】
レーザ除去加工装置は、ガラスなどの透光性基板上に太陽電池膜が形成された太陽電池パネルにレーザ照射して絶縁帯を形成させるための装置であり、太陽電池パネルは、ガラス基板などの透光性基板上に、例えば透明電極膜や半導体膜、金属電極膜などの複数の膜を太陽電池膜として積層した構造からなる。
被加工物である太陽電池パネルとしては、例えば、略矩形薄板状のシングル型・タンデム型・トリプル型などの薄膜系太陽電池(アモルファスシリコン太陽電池、化合物系太陽電池などを含む)のパネルが挙げられ、大きさなどには特に制限はなく、装置の大きさは被加工物の大きさに応じて変わりうる。
なお、太陽電池パネルは、一般に、上記太陽電池膜を薄い透光性基板上に積層したものである。多接合型として知られるタンデム型太陽電池パネルは、利用波長の異なる太陽電池膜を複数積層させて太陽光エネルギーを無駄なく利用することで変換効率を高めたものであり、本実施形態のレーザ除去加工装置を用いてレーザ除去するに際して特に好ましく適用できる。
【0015】
ワークテーブルは、透光性基板を下向きにした太陽電池パネルを回転可能に載置する被加工物の保持装置である。ワークテーブルには、被加工物である薄膜型の太陽電池が、位置決め機構などを介して固定される。このテーブル上に、被加工物を、膜面を上側とし透光性基板である受光側を下側にして配置する。これにより、搬送時に、太陽電池膜面がワークテーブルに触れることがなく、太陽電池パネルの取扱いが容易となる。また、太陽電池膜の除去加工後のラミネート工程などにおいて、太陽電池パネルの反転の必要がない。
被加工物の位置決め機構としては、例えば、突起状やフック状に形成したパネル係止具などをワークテーブル上に移動可能に設け、被加工物の相対する1組の辺の内一方を2点で受け、もう一方の辺を1点で押し付け、残りの1組の辺も同じ要領で同時に行い位置決めすることができる。
【0016】
移動装置は、例えば、ボールネジ・リニアガイド・サーボモータなどにより被加工物が載置されているワークテーブルを速度制御しながら直線状に移動走行させる機構を挙げることができ、レーザ除去加工装置を制御する制御装置により制御することができる。また、この制御装置は、前記移動装置の動作に連係してレーザ照射を行なうレーザヘッドもプログラム制御する。
これによって、被加工物である太陽電池パネルのレーザ除去加工が高速かつ効率的に行なうことができる。
【0017】
レーザヘッドは、レーザ除去加工に関わるレーザ発振器やレーザビームのレンズ系などを収めた装置集合部であり、前記ワークテーブルの下部に配設され、ワークテーブルの直線移動方向に沿って移動する太陽電池膜の端部をレーザ照射によって除去する。
レーザヘッドのレーザ発振器により照射されるレーザ光は、特に制限されるものではないが、パルス幅170ns以上、ピークパワー35kw以上、周波数8kHzから15kHzのYAGレーザ照射光であることが望ましい。これは、タンデム型などの薄膜型太陽電池パネルのレーザ除去加工において、太陽電池膜の絶縁帯形成を効率的に行うことができるからである。
また、金属膜によるリフレクター付き薄膜型太陽電池膜の除去においては、パルス幅120ns以上、ピークパワー70kw以上のパルスを用いることが望ましい。
【0018】
回転装置は、太陽電池膜の未除去の部分を除去できるようにワークテーブルを回転させる装置であり、前記レーザヘッドや移動装置と同様にレーザ除去加工装置本体などに設けられたコンピュータなどの制御装置により制御される。
回転装置の配設位置としては、前記ワークテーブルへの太陽電池パネルの投入側及び排出側に配設してもよいし、投入側のみに配設してもよいし、排出側のみに配設してもよいし、あるいは前記移動装置内に配設してもよい。
ワークテーブルを所定角度(+90°、−90°など)に回転させるための駆動方式としては、電気モータなどでの駆動方式や、エア方式のアクチュエータなどの駆動方式が挙げられる。
この回転装置により、ワークテーブルが所定角度に回転制御され、位置決め機構などを介してワークテーブル上に固定された被加工物の周縁を効率よくレーザ除去加工することができる。
【0019】
本実施形態に係る太陽電池パネルのレーザ除去加工装置は、レーザヘッドが太陽電池パネルの移動方向と直角方向に移動させる位置変更装置を有するように構成することができる。これによって、被加工物となる太陽電池パネルの大きさや形状に柔軟に対応して、レーザ照射条件を機械的かつ確実に設定することができ、レーザ除去加工における生産性をさらに高めることができる。
【0020】
位置変更装置は、例えば、電動モータやエアアクチュエータなどを動力源として、レーザヘッドを直線移動又は回転移動させることで被加工物に照射されるレーザ光の照射スポット位置を機械的に調整するための機構であって、処理する太陽電池パネルの大きさやその縦横方向などに応じてレーザヘッドの設定位置を変更することが可能となる。
なお、位置変更装置は、レーザヘッドが複数台設けられている場合には、それぞれのレーザヘッドに設けることができる。
【0021】
本実施形態に係る太陽電池パネルのレーザ除去加工装置は、レーザヘッドが太陽電池パネルの移動方向の両端部を同時に照射できるように複数配設することができる。これによって、複数のレーザヘッドに付設した位置変更装置の動作を互いに連係制御させ、ワークテーブル上に配置された被加工物となる太陽電池パネルを、移動装置を用いて、一方向にワンストローク分移動させるだけで、太陽電池パネルの周縁の2辺の端部を同時にレーザ除去加工処理を行なうことができ、さらなる効率化を図ることができる。
【0022】
なお、本実施形態に係る太陽電池パネルのレーザ除去加工装置は、移動装置がワークテーブルを、一方向(例えば縦方向)に直線状に移動させる移動機構を備え、ワークテーブルに載置した太陽電池パネルを一方向に移動させながら、その移動方向に沿って太陽電池膜の両側端部をレーザヘッドからのレーザ照射によって除去し、さらにワークテーブルに載置した太陽電池パネルを他方向(例えば、前記縦方向と直交する横方向)に移動させながら、その移動方向に沿って太陽電池膜の両側端部を、別途設置したレーザヘッドからのレーザ照射によって除去するようにすることができる。これによって、多種多様な形態の太陽電池パネルに対してもレーザ除去加工処理の条件を容易かつ柔軟に設定することができるとともに、一方向に移動させる移動工程では装置構成が単純化されるため、製造ラインにおけるメンテナンス作業などを容易にすることができる。
【0023】
ワークテーブルを直交する縦横2方向に直線状に移動させる移動機構は、例えば、サーボモータなどで作動するX方向スライド装置とY方向スライド装置を重ねた構成でもよい。またレーザ除去加工ステーションを隣接して設け一方のステーションにはX方向スライド装置を設け、他方のステーションにはY方向のスライド装置を設ける構成としてもよい。この場合隣接するステーションへのワークテーブルの受け渡し機能も備えてもよい。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置は、以下のような特徴を有する。
(1)ワークテーブルを回転させる回転装置を備えるので、薄膜太陽電池パネルの4辺の太陽電池膜を高速高効率に除去できる。
(2)薄膜太陽電池パネルの受光面を下側に向けて搬送するので、製造ラインにおけるラミネート工程などにおいて被加工物のガラス面と太陽電池膜を成膜した面との反転装置を省略できる。
(3)レーザヘッドを被加工物の下側に配置した構成としているので装置全体を小型化することができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1は実施例に係る太陽電池パネルのレーザ除去加工装置の平面配置図であり、図2はその正面図、図3はその側面図である。
実施例の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置10は、被加工物である太陽電池パネルPを、装置本体10aに搬出搬入するための搬送装置11、12と、搬送装置11、12を介して装置本体10aの投入部(本図では排出部でもある)30に搬送された太陽電池パネルPを保持して回転可能に載置するワークテーブル13と、ワークテーブル13を直線状にスライド移動させる移動装置14と、このワークテーブル下部に配設されスライド方向に沿ってレーザ光を照射する左右一対のレーザヘッド15、16と、移動装置14内に配設されワークテーブル13を回転させるための電動モータなどの駆動機構を備えた回転装置17などを有している。
【0026】
太陽電池パネルPとしては、例えば、縦横寸法が約1100〜1400mm、厚みが約3〜5mmとなる矩形薄板状のタンデム型やトリプル型、シングル型のものが適用される。
太陽電池パネルPは、搬送装置11のコンベア11aを介して装置本体10aのワークテーブル13に透光性基板を下にして載置されている。そして、この矩形薄板状の4辺周縁に沿って、レーザヘッド15、16及び移動装置14を介して所定条件のレーザ光を走査することによって太陽電池膜を除去し、太陽電池パネルPの周縁に沿って幅が約16mmの絶縁帯を形成する。
なお、この絶縁帯の幅は、レーザの走査幅を変更することにより任意の幅に設定できるため、太陽電池パネルPの仕様変更に柔軟に対応可能である。
【0027】
装置本体10aの左右に配置された搬送装置11、12には、被加工物をハンドリングするための図示しないチャックなどを備えた基板搬送機構ユニット18がそれぞれ配置されている。この基板搬送機構ユニット18を介して、コンベア11a上からワークテーブル13上への太陽電池パネルPの受け渡し、太陽電池膜の除去加工が終了した後、ワークテーブル13からコンベア12a上への受け渡しがなされる。
【0028】
移動装置14は、装置本体10a内に配置されたワークテーブル13をその水平方向に所定速度で往復移動させるためのスライド移動機構を備えており、レーザヘッド15、16による太陽電池パネルPへのレーザ照射に同期させる。
このように、太陽電池パネルPを載置したワークテーブル13を搬送装置11、12の投入位置からスライド終端位置にスライド移動させる。
このとき、レーザヘッド15、16を介して前記のレーザ照射条件によりレーザ光を照射して、太陽電池パネルPのレーザ除去加工処理を行う。
【0029】
レーザヘッド15、16は、スキャン機能を備え、太陽電池パネルPを透光性基板側(裏面側)からレーザ照射できるように、レーザ照射部を上方向にしてワークテーブル13の下部側に配置されている。レーザ加工に際して、被加工物は、移動装置14により移動されながら、レーザ光が、被加工物の下側から透光性基板を透過し透光性基板上の太陽電池膜を加熱除去する。
なお、レーザヘッド15、16には、両者を接合するようにボールねじ機構などを備えた位置変更装置19が設けられており、搬送装置11を介して供給される太陽電池パネルの形状に応じて、両ヘッドの設置間隔を伸縮調整できるようになっている。
また、この位置変更装置は、レーザヘッド15,16の各々に設置する構成とすることもできる。さらにこの位置変更装置は、レーザヘッド15,16のいずれか一方に設置する構成とすることもできる。
【0030】
このように、位置変更装置19により2つのレーザヘッド15、16のピッチ間の距離を変更することができる。位置変更装置19の駆動方式は、ピッチ間距離やその位置が定位置の変更であれば、エアシリンダと位置決めストッパのような組み合わせものが挙げられる。また、変更位置が多点に亘り変更する必要があれば、サーボ位置決め機能を有するアクチュータにより移動させる。レーザヘッド15、16は、装置本体10a後方に設けたレーザコントローラ15a、16aを介して駆動され、その駆動状態は図示しない制御装置により制御されている。
なお、レーザヘッドの位置変更装置に替えて、以下の構成のミラー移動装置を設ける構成としても良い。すなわちレーザヘッドは、レーザ除去加工する太陽電池パネルの種類が変更されても位置を変更することはせず固定する。レーザヘッドからのレーザ照射方向を横向きとしレーザ反射ミラーを設けて、そのレーザ反射ミラーを移動させることにより太陽電池パネルへのレーザ照射位置を変更する構成を採用することもできる。
【0031】
太陽電池パネルのレーザ除去加工装置10には、レーザ除去加工中に除去される太陽電池膜の滓を吸引するための集塵ダクト20を有した図示しない集塵装置を設けている。図4は、レーザ除去加工装置の集塵ダクトを示している。図4(a)は、太陽電池パネルの移動方向と直角な方向から見た図面である。図4(b)は、レーザ除去加工装置の正面から見た図面である。図4に示すように、ダクト20の先端は、レーザ除去加工する被加工物の直上でレーザ照射される部位に設ける。ダクト20と被加工物となる太陽電池パネルPとの間に、ある程度の隙間を設けてもよいし、吸引しきれないで横方向に飛散するような場合は、ダクト先端部にフレキシブル性のある部材を接合し、レーザ加工中のみエアシリンダでダクト先端を被加工物に接触させるようにしてもよい。
【0032】
実施例における太陽電池パネルのレーザ除去加工装置10により被加工物の太陽電池膜をレーザ除去加工する動作順序は、概略以下のとおりである。
1)まず前工程から被加工物となる太陽電池パネルPが搬送装置11に載置される。
このとき、太陽電池パネルPは、受光側である透光性基板面を下側とし太陽電池膜が上側になるように載置される。
2)太陽電池パネルP(被加工物)は、搬入を行なう搬送装置11のコンベア11a上から基板搬送機構ユニット18を介して回転装置17上のワークテーブル13に受け渡しされる。
3)回転装置17のワークテーブル13上で位置決め装置により太陽電池パネルPが所定位置に位置決めされる。
4)移動装置14により、回転装置17上のワークテーブル13を直線的に移動させながら、レーザヘッド15、16によりレーザ照射しながら太陽電池パネルPの相対する1対の端部の所定部位の太陽電池膜を除去する。
5)除去加工終了後、その場で回転装置17により太陽電池パネルPを90°回転させる。
6)レーザヘッド15、16間に設けた位置変更装置19により、2つのレーザヘッド間隔を太陽電池パネルPの残りの相対する1対の端部の所定部位の太陽電池膜の除去ができるよう位置変更を行なう。
7)移動装置14により、回転装置17上のワークテーブル13を直線的に移動させながら、レーザヘッド15、16によりレーザ照射しながら太陽電池パネルPの未除去の相対する1対の端部所定部位の太陽電池膜を除去する。
8)除去加工終了後、太陽電池パネルPを、レーザ加工の終端位置から太陽電池パネルPを投入位置(投入部30)に移動させる。
9)移動完了後、回転装置17により太陽電池パネルPの回転位置を投入時の位置に回転させる。
10)太陽電池パネルPは、回転装置17上のワークテーブル13から搬出を行なう搬送装置12に受け渡しされる。
11)太陽電池パネルPは、搬送装置12から後工程に搬出される。
なお、以上の実施例では、レーザヘッドを2台設ける構成としているが、レーザヘッドを1台のみ配置した実施形態では、上記4)〜7)の動作を合計4回繰り返すことにより行なわれる。
【0033】
また、回転装置17は、ワークテーブル13の移動装置14とともに移動する形態で説明したが、回転装置は別置としワークテーブル走行用の移動装置と分けて設けるような装置構成とすることもできる。例えば、図5(a)に示すように、排出側(投入側と反対側)に回転装置を設けることもできる。この場合は、太陽電池パネルをレーザ除去加工後に、レーザ加工時の移動方向と同一方向へ排出し、排出側に配設した回転装置によって太陽電池パネルを90°回転させ、投入側へ戻す際に未除去の端部をレーザ除去加工する。
【0034】
また、図5(b)に示すように、直交する縦横2方向に移動させる移動装置14を備えて構成することもできる。このような移動装置14により、縦方向及び横方向にスライド移動されるワークテーブル上に配置された太陽電池パネルPに、その透光性基板側からレーザ照射して太陽電池膜の除去処理を行なうことができる。
レーザ照射を行なうレーザヘッドは、縦方向(直交する2方向のうちの1方向)において2台、横方向(直交する2方向のうちの他の方向)において2台設けられている。レーザヘッドは、それぞれ移動するワークテーブル下部の所定位置に固定配置されている。その上部を縦方向にスライド移動するワークテーブルの下方側から太陽電池パネルの受光面側、すなわち透光性基板を透して太陽電池膜にレーザ光を照射するようになっている。またその上部を横方向にスライド移動するワークテーブルの下方側から太陽電池パネルの受光面側、すなわち透光性基板を透して太陽電池膜にレーザ光を照射するようになっている。
このような構成によって、被加工物となる太陽電池パネルを縦方向に移動させる際に太陽電池パネルPの左右端部の太陽電池膜を除去し、横方向に移動させる際に太陽電池パネルPの上下端部の太陽電池膜を除去するので、さらに生産効率性に優れた装置構成のものとすることができる。
【0035】
実施例の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置10は、太陽電池膜面を上にして透光性基板側からレーザを照射する。これは、太陽電池パネルの膜除去を効率的に行なうためである。また次工程では膜面を上にして行われているため、従来の装置においては、太陽電池を反転させるための装置が必要であったが、本実施例の装置においては、このような反転装置を省略できるとともに、吸着やローラ搬送といった搬送の選択を容易にできるという効果もある。
さらに、レーザ除去加工装置10は、ワークテーブル13を回転させる回転装置17を備えるので、太陽電池パネルPの周縁部分の太陽電池膜を高速高効率に除去でき、優れた生産性を有している。
また、レーザヘッド15、16を被加工物の下側に配置した構成として、集塵装置などのレイアウト構成をコンパクトにかつ容易に設定できる。
さらに、レーザ除去加工により発生した太陽電池膜の滓は、被加工物の上面側から集塵装置19を介して排除できるので、装置構成部材上に滓が堆積せずそのメンテナンス性にも優れたものとすることができる。
【0036】
図6は、実施例のレーザ除去加工装置に適用される太陽電池パネルの加工パターンを示した模式説明図であり、移動装置14による一方向への移動毎に左右一対の絶縁帯Zが太陽電池パネルPの両側端部に形成される様子を示している。ここでは、回転装置17によりワークテーブル13の90°回転操作を2回繰り返すことで、太陽電池パネルPの周縁に絶縁帯を形成させることができる。
なお、図5において、ワークテーブル13の下方に配置されたレーザヘッド15、16のレーザ光照射位置15b、16bを示した。
【0037】
図7は、実施例のレーザ除去加工装置に適用される太陽電池パネルの他の加工パターンを示した模式説明図であり、1台のレーザヘッド用いて、回転装置17によりワークテーブル13の90°回転操作を繰り返すことで、太陽電池パネルPの周縁に絶縁帯を形成させることができる。
図示するように、移動装置14による1方向への移動毎に、1台のレーザ光照射位置からレーザ光がワークテーブルの下方から照射され、矩形状の太陽電池パネルの一辺の端部に直線状の絶縁帯Zが形成される。
そして、レーザ加工処理の終了後に、回転装置によってワークテーブルを90°回転させる。このような操作を繰り返すことによって、最終的に、太陽電池パネルの周縁4辺全部に絶縁帯Zが形成させることができる。
なお、図7において、ワークテーブル13の下方に配置されたレーザヘッド15のレーザ光照射位置15bを示した。
以上の加工パターン(図6、図7)の選択は、被加工物となる太陽電池パネルの加工時間などにより適宜選択される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明は、太陽電池膜の周縁を除去するようにワークテーブルを回転させるための回転装置を設けたこと要旨とするものであり、これに該当するものは本発明の権利範囲に属する。例えば、本実施例においては、ワークテーブルの回転は装置本体10a内のレーザヘッドが配置されたレーザ除去加工部(本発明の装置にてレーザ除去加工する部分)や、搬送装置11、12間の搬送部で行なうように記載されているが、ワークテーブルの回転操作は必ずしもこれらの位置に限定されるものではない。さらに、レーザヘッドを、1台配設した場合、2台配設した場合、4台配設した場合の実施形態を記載しているが、それ以上のレーザヘッドを配置してさらなる効率化を図ることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 太陽電池パネルのレーザ除去加工装置
10a 装置本体
11、12 搬送装置
11a、12a コンベア
13 ワークテーブル
14 移動装置
15、16 レーザヘッド
15a、16a レーザコントローラ
17 回転装置
18 基板搬送機構ユニット
19 位置変更装置
20 ダクト
30 投入部(搬入部)
P 太陽電池パネル
Z 絶縁帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に太陽電池膜が形成された太陽電池パネルの周縁の太陽電池膜をレーザ照射により除去する太陽電池パネルのレーザ除去加工装置であって、
前記透光性基板を下向きにした太陽電池パネルを回転可能に載置するワークテーブルと、
前記ワークテーブルを直線状にスライド移動させる移動装置と、
前記太陽電池パネルを透光性基板側から照射するように配設され、前記ワークテーブルの直線移動方向に沿って太陽電池膜の端部をレーザ照射によって除去するレーザヘッドと、
前記ワークテーブルへの太陽電池パネルの投入側及び/又は排出側、あるいは前記移動装置内に配設され太陽電池膜の未除去の部分を除去できるようにワークテーブルを回転させる回転装置と、
を有したことを特徴とする太陽電池パネルのレーザ除去加工装置。
【請求項2】
透光性基板上に太陽電池膜が形成された太陽電池パネルの周縁の太陽電池膜をレーザにより除去する装置であって、
透光性基板を下向きにして載置した太陽電池パネルを直交する2方向に直線状に移動させる移動装置と、
太陽電池パネルの移動方向の両端部を同時に透光性基板側から照射するように配設したレーザヘッドと、を有し、
前記移動装置に載置した太陽電池パネルを前記2方向のうちの1方向に移動させながら移動方向に沿って太陽電池膜の両側端部を前記レーザヘッドからのレーザ照射によって除去し、
さらに前記移動装置に載置した太陽電池パネルを前記2方向のうちの他方向に移動させながら移動方向に沿って太陽電池膜の両側端部を前記レーザヘッドからのレーザ照射によって除去し、
太陽電池パネルの周縁の太陽電池膜をレーザ照射によって除去するようにしたことを特徴とするレーザ除去加工装置。
【請求項3】
前記レーザヘッドが前記太陽電池パネルの移動方向と直角方向に移動させる位置変更装置を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置。
【請求項4】
前記レーザヘッドが前記太陽電池パネルの移動方向の両端部を同時に照射できるように複数配設されていることを特徴とする請求項1又は3に記載の太陽電池パネルのレーザ除去加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−188358(P2010−188358A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32850(P2009−32850)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000004374)日清紡ホールディングス株式会社 (370)
【出願人】(509045313)日清紡アルプステック株式会社 (6)
【Fターム(参考)】