説明

太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置

【課題】太陽電池パネルの設置時に利用するための歪センサを装着するにあたり、太陽電池パネルの歪みの検出を利用して、気象や地震などの環境情報をリアルタイムで取得する用途として利用し、設置した歪みセンサを設置後も有効に活用する。
【解決手段】雨による太陽電池パネルへの力学的負荷を検出する。また積雪量を、太陽電池パネルにかかった荷重として検出する。さらに地震による家屋にかかるストレスを、太陽電池パネルに内蔵されている歪センサを用いて検出する。そして以上に示した環境情報を家庭内のモニタでの表示や、総合管理サーバを通じて広域環境情報としての公開を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の屋根に設置する太陽電池パネルに歪みセンサを設置し、天候、地震等の環境情報を収集・表示するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光を電力に変換する太陽電池パネルを、家屋の屋根に設置し、電気エネルギーを得て、家屋内のバッテリーに蓄電。その電力を用いて、外部から供給される電気エネルギーの消費量を減らして省電力を図るシステムが、一般化してきている。
この太陽電池パネルは小さいもので約35cm四方のもので約5kg、大きなものは約1m四方で約15kgの重量があり、設置の際にわずかな歪みが必然的に発生する。
発生した歪み量は、太陽電池パネルの耐久性に影響を与えないように、また、歪み自体が最小になるような部材を用いて太陽電池パネルの構造を設計するが、設置の際に、少しでも歪み量をなくした安定した姿勢で太陽電池パネルを設置することが望ましいことは論を待たない。
【0003】
この課題に関しては、下記特許文献1に、太陽電池パネル表面に歪ゲージを設置し、太陽電池パネルの機械的破壊を検出し、表示機に警告を表示する案が記載されている。
【0004】
ここで、太陽電池パネルへの歪みセンサの設置は、微小な歪みを検出するために、その基礎部材にスポット溶接や全面接着等の強固な取り付け手段により取り付ける必要があり、取り付け工数は太陽電池パネルの製造コストに影響を与える。
【0005】
ここで、従来の方法では、太陽電池パネルの設置時にのみ使用する歪みセンサと、その信号を出力するインタフェース等を設ける必要があり、前記した設置に要する工数も含めて、太陽電池パネルのコストに影響を与えるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-289891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
太陽電池パネルに歪センサを設置するにあたり、太陽電池パネルの歪みの検出を利用して、気象や地震などの環境情報をリアルタイムで取得する用途として利用し、設置した歪みセンサを設置後も有効に活用することが望ましい。具体的には、下記の課題を解決することが目的となる。
(1) 太陽電池パネルの設置作業における作業員の経験値は個人差があり、またパネルの耐加重性もモデルにより異なるので、効率的な作業を困難としていた。
(2) 降雨や降雪量に関する情報は、地域ごとの天気予報(レーダーによる情報)にて行っており、極めて小さな単位の場所(具体的には、特定の家屋)への降雨や降雪に関する情報を高精度に把握することは困難であり、そしてこの点の解決には、専用のデバイスを、各地域毎に多数設ける必要が生じていた。
【0008】
一方、最近では半導体歪センサと呼ばれる新しい検出デバイスが実用化の段階にある。半導体歪センサは、半導体チップのピエゾ抵抗の変化に応じて歪を検出するデバイスである。半導体チップは、例えば2〜3ミリメータ角の大きさであって、歪検出部のみならず、前記した増幅器、及び歪検出値をデータ化するAD変換器を内蔵している。前記半導体チップは、10ミリメータ角程度の小型基板に搭載して使用される。このため、小型で狭い場所に取付けることができ、また量産効果により低価格化することもでき、民生用の製品への広範囲な応用が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
太陽電池パネルに、歪みセンサと温度センサを設置する。これにより、
(1) 太陽電池パネルの製造時および設置時に、リアルタイムで作業用モニタに、太陽電池パネルにかかるストレスを表示させる。これを見ながら作業することで、製造時及び設置時の、太陽電池パネルおよび屋根の破損を防ぎつつ作業を進めることが出来る。さらに、設置完了時の歪み量を定常値として初期記録することで、設置以降の歪み量データの計測に利用することが出来る。
(2) 雨による太陽電池パネルへの力学的負荷を検出し、その降雨量を家庭内のモニタに表示する。
(3) 積雪量を、太陽電池パネルにかかった荷重として検出する。積雪であることの判断に、温度センサの情報も利用する。積雪量は家庭内のモニタに表示する。例えば発熱体の内蔵により自動的に雪を溶かす仕掛けを設ければ、雪下ろしを自動的に行うことが出来、家屋や太陽電池パネルの破損を抑え、発電量の復活などを自動的に行うことが出来る。
(4) 地震による家屋にかかるストレスを、太陽電池パネルに内蔵されている歪みセンサを用いて検出する。通常は家庭内で地震が発生したときに、目視確認可能な具体的な物の揺れで判断をしているが、家庭内モニタに、およその地震によるゆれの大きさを表示することが出来、地震発生中の対応の目安をつけることが出来る。
以上のように、太陽電池パネルに設置した歪みセンサを用いて、太陽電池パネルの設置時の作業支援のみならず、太陽電池パネルの実稼動後も、歪みセンサの出力信号を有効に用いて、各種環境情報の取得や提供を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置は、歪センサおよび温度センサを太陽電池パネルに設置することにより、太陽電池パネルの設置時の太陽電池パネルの歪みを最小にするように設置作業を行えるのみならず、太陽電池パネルにかかる外力による歪み量および温度を利用して、気候や地震などの環境情報を取得し、ユーザーにリアルタイムで提供することを可能とする。
さらに、取得した環境情報を、一戸の家屋のみならず、複数の家屋の情報を集計することで、地域ごとの気候や地震の情報を集計し、特に局地的に発生した自然現象の環境情報を、インターネット等のインフラを通じて、公開することが出来、当該地域の住人の生活支援や安全確保に役立てることが出来るという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置の、全システム構成図である。
【図2】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置の、太陽電池パネルと歪みセンサおよび温度センサの構成を示した説明図である。
【図3】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置に設けた歪みセンサおよび温度センサからの出力信号と、環境情報との関係を示す説明図である。
【図4】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置を設置するにあたり、設置冶具として用いるモニタ表示の例を示す説明図である。
【図5】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置により取得した環境情報を表示する画面を示した説明図である。
【図6】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置により、太陽電池パネルを最初に設置するときの作業を示すフローチャートである。
【図7】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置による、環境情報の取得と判定を示すフローチャートである。
【図8】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置による、複数の家屋からの環境情報を利用する場合の構成図である。
【図9】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置における、局所的な降雨を検出して天気予報サーバに環境情報を送信する動作を示したフローチャートである。
【図10】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置による、複数の太陽電池パネルからの環境情報をより正確に取得する方法を示したフローチャートである。
【図11】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置を用いて、地域単位の環境情報の特徴点を検出する方法を示したフローチャートである。
【図12】太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置を用いて、広域レベルでの環境情報の収集と公開を行う方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置の全システム構成図である。
【0013】
太陽電池パネル1010には、各々に歪みセンサ1000および温度センサ1100を設置している。歪センサは、太陽電池パネル1010の歪み量を測定し、温度センサ1100は、太陽電池パネル1010の温度を測定する。
【0014】
家屋内には、HEMS(Home Energy Management System)コントローラ1020が、家庭内電力の制御と太陽電池パネル1000からの電力1003や、AC100Vなどの外部からの供給電源1021により供給された電力をバッテリー1050に蓄電する機能を有し、さらに蓄電した電力や外部電源1021からの電力を、各電気機器A 1024やB 1025に、電源線1022を用いて供給し、省電力制御のための信号を制御線1023により送信する。電気機器A 1024が例えばエアコンだった場合の温度設定や電源ON/OFFの制御信号とを制御線1023を介して送信し、また、制御信号を受け付けないタイプの電気機器B 1025の場合は、電源SW 1026に、電源ON/OFFの制御信号を送信することで、家庭内の電力消費量の削減を目的とした制御を行う機能を有する。
【0015】
HEMSコントローラ1020には、太陽電池パネル1010より、電力1003と、各太陽電池パネルに設置された歪みセンサ1000からの出力である歪みデータ1001と、温度センサ1100からの温度データ1002が入力される。これらのうち歪みデータ1001と温度データ1002を用いて算出した環境情報を、モニタTV1040に表示する。モニタTV1040は、HEMSコントローラ1020専用のモニタの場合や、家庭内のTV装置を用いてもよく、また家庭内に設置したパーソナルコンピュータのモニタや、さらに携帯電話やスマートフォンのディスプレイでもよい。モニタTV1040への信号は、有線信号でもよく、また無線LANやBluetooth、さらには携帯電話の通信回線等による無線信号でもよい。そして、モニタTV1040は単一ではなく、当該家庭に属する複数の端末であってもよい。
【0016】
HEMSコントローラ1020は、ネットワーク1030経由で、総合管理サーバ1060に接続可能であり、総合管理サーバ1060は他の家屋1070、1080の環境情報データと併せた総合的な地域別環境情報を管理し、ネットワーク1030や図示しない放送電波を通じて、各家庭や携帯端末等に、地域別の詳細な環境情報を再配布する機能を有することが可能である。
【0017】
図2は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置の、太陽電池パネルと歪みセンサおよび温度センサの構成を示した説明図である。
通常、各家庭の屋根に設置される太陽電池パネル1010は複数個用意される。この太陽電池パネルのすべて、もしくは少なくともひとつに、図2(a)に示すように歪みセンサ2010および温度センサ2011を設置する。
【0018】
太陽電池パネル2000を真横から見た状態は、図2(b)に示すように、例えば四隅に設けた脚部2030により支持された場合、自重によりわずかな歪みが生じる形に変形する。この歪みは、太陽電池パネル2000から所定の距離離れた位置で、本来まっすぐであるはずの太陽電池パネルの歪みにより発生した歪み量という単位で定量測定することが出来る。
【0019】
ここで歪みセンサは、各太陽電池パネルに少なくともひとつ設置するが、前記先行技術文献・特許文献1に記載のように、太陽電池パネルの歪みをより細かく測定するために、複数設けてもよい。また、温度センサの出力は太陽電池パネルに設置されている歪みセンサの温度とも略同一であり、この出力を用いて例えばHEMSコントローラ上にて、歪みセンサが出力した歪み量の温度特性変化を補正し、より正確な歪み量の測定が行えるようにしてもよい。
【0020】
図3は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置に設けた歪みセンサおよび温度センサからの出力信号と、環境情報との関係を示す説明図である。
【0021】
図3(a)は、歪センサから出力される歪み量と、各環境情報との関連を示したグラフである。まず、太陽電池パネルの設置工程において、3000に示すように歪み量の変動が発生する。この値は図4にて後述するように、設置工程での作業の参考として利用する。設置工程が完了すると、太陽電池パネルは図2(b)のようにわずかな歪みが生じた状態で安定するので、これを定常値とするために、この時点で出力される歪み量の初期値リセット3001を行う。
【0022】
次に、雨天時の環境情報について説明する。雨天時には雨粒が断続的に太陽電池パネルに衝突するため、雨粒の衝突に応じた交流成分の歪み量が発生する。また、同時に単位面積当たりの雨粒分布に対して十分大きなサイズの太陽電池パネルであるため、雨粒の衝突により生じた雨粒押圧3011が直流成分の歪み量として発生する。この歪み量の交流成分と直流成分の存在により、発生している環境が降雨であるという環境情報として認識出来る。さらに、図3(b)に示すように、太陽電池パネル及び歪みセンサから出力される温度値も、降雨発生以前に比べてわずかに低下することも、環境状況が降雨であることと判定する情報として利用することが出来る。また、図示しないが、雹が発生したときも、雹の粒が雨粒より質量が大きいことを利用して、歪み量の交流成分の振幅により、降雨ではなく雹の発生であることを認識することが可能である。
【0023】
次に、地震発生時の環境情報について説明する。地震が発生したときは、地震の振動に従って、歪みセンサから交流成分の歪み量が発生する。この場合、降雨と異なり、直流成分の歪み量が発生しないので、発生した環境現象が地震であると判定することが出来る。この場合、降雨の場合と地震の場合の振幅や周波数も、降雨と地震を区別する情報として利用することが出来る。また、地震の場合は、温度の変化が発生しないので、この情報も降雨と地震を区別する情報として利用することが出来る。
【0024】
次に、降雪時の環境情報について説明する。降雪も初期の場合や、霙の場合は降雨と同様に、雨粒押圧と交流成分が発生するが、雪は雨粒に比べて落下速度が遅く、積雪すると雪粒の落下による交流成分も発生しないため、3030に示すように直流成分が基本となる。積雪量が増えるにつれて、この直流成分が大きくなるため、直流成分の歪み量で積雪量を判断することが出来る。また積雪時には温度も略氷点下0度近傍になるため、温度情報も用いてより確実に積雪の発生及び積雪量を認識することが出来る。
【0025】
図4は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置を設置するにあたり、設置冶具として用いるモニタ表示の例を示す説明図である。
【0026】
太陽電池パネル1010に設置された歪センサより発生する歪み量は、図4(a)に示すように設置時に利用する専用の設置時歪み測定モニタ4000に入力され、表示される。図4(b)は設置時歪み測定モニタ4000の表示画面例であり、画面上には太陽電池パネルが三次元斜視図として表示され、特に太陽電池パネルを支持する四隅の4点における、上下にかかる力を歪み表示としている。ここでは矢印の向きとその太さで歪み量を表示しているが、カラーモニタにより、例えば歪み量が増えるにつれて、危険度を示す色として赤色の彩度があがるような表示をしてもよく、また、矢印表示の代わりに、三次元斜視図で表示された太陽電池パネルの画像自体を、誇張した大きさで歪ませて表示することも、入力された歪み量から画像処理演算をすることで可能となる。また、図2(b)のように太陽電池パネルを横から見た形で歪み量を表示してもよい。
【0027】
設置が完了したところで、リセットボタン4020を押し下げすることで、設置完了時の太陽電池パネルの静歪みを初期定常状態の位置として登録する。この初期定常状態の登録の値は、図示しない歪みセンサ内に設けたメモリに設定してもよく、また図1に示した太陽電池パネル1010とHEMSコントローラ1020のインタフェースを通して、HEMSコントローラ1020内に登録してもよい。
【0028】
図5は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置により取得した環境情報を表示する画面を示した説明図である。
【0029】
本実施例は、家庭内テレビの通常の放送画面の上に、所定の情報を重ねて表示することで、ユーザーに環境情報を知らせる例として記載している。これは、前記家庭内テレビだけではなく、家庭内に設置したパーソナルコンピュータのモニタや、さらに携帯電話やスマートフォンのディスプレイでもよい。テレビへの表示信号は、有線信号でもよく、また無線LANやBluetoothや携帯電話回線等による無線信号でもよい。そして、表示するテレビは単一ではなく、家庭内に属する複数のテレビやパーソナルコンピュータのモニタ、携帯電話やスマートフォンに同時に表示してもよい。
【0030】
図5(a)は降雨が発生したときの画面であり、通常の放送画面の一部に「降雨発生」を示す文字や図示しないアイコンが点灯もしくは点滅して、ユーザーに降雨の発生を知らせる。このとき、降雨の発生を示す音を同時に発声してもよく、またテレビの電源が切れているときに、自動的に起動して表示してもよい。さらに降雨の量も図3(a)の歪み量交流成分の振幅に従って、表示することも可能であり、特に小雨が降りだした時や、局地的な豪雨が発生した時を検出し、表示することが出来る。
【0031】
図5(b)は、積雪が発生したときの画面であり、図5(a)の降雨発生の画面と表示は同じである。積雪は図3(a)に示したように定量的に測定することが可能であり、これを積雪の深さの目安として数値で表示することが出来る。図5(c)は積雪がある程度(この場合20mm)を超えたときに、太陽電池パネルによる発電効率の確保や雪の重さによる破損を防ぐために、電熱線や機械式ワイパーなどの方法で除雪を行う機能を有した太陽電池パネルが、自動的に除雪作業を行っている場合を示した画面例である。
図5(d)、(e)は地震が発生したときの表示画面例である。現在携帯電話等で実用化されている地震発生のアラームと異なり、この時点で実際に揺れている大きさを表示する。一般に地震が発生したとき、特にその揺れが小さいときは、身の回りの振動に応じて揺れるもの、例えば天井灯のスイッチ紐や、鎖でぶら下がった天井灯の揺れなどを見て、地震かどうかの判断を行っている。これをテレビで定量的に表示することで、気のせいではなく本当に地震が起こっていることを判断することが出来る。地震の情報は、図5(d)のようにバーグラフの大きさで示し、所定以上の振幅で揺れているときはバーグラフの色が途中で変わるような形式で表示してもよく、また図5(e)に示すように、図3(a)で示した歪センサの出力波形そのものを時間軸に従ってスクロールさせて表示してもよい。
【0032】
図6は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置により、太陽電池パネルを最初に設置するときの作業を示すフローチャートである。
【0033】
太陽電池パネルの設置作業を開始すると、まず太陽電池パネルの歪み量をセンサから読み出して図4の設置時歪み測定モニタ4000に供給する。供給された歪み量より、図4に示すように画像を作成する画像変換(ステップ6020)を行い、モニタ画面に画像表示(ステップ6030)する。これを設置完了まで繰り返し、例えば図4のリセットボタン4020を押すことにより設置完了判定(ステップ6040)を終了すると、この繰り返しを完了して、設置後の静歪み量をゼロ点として、静歪み量リセット(ステップ6050)を行い、設置作業が完了する。
【0034】
図7は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置による、環境情報の取得と判定を示すフローチャートである。
【0035】
稼動を開始すると、まず歪み量εを図1に示したHEMSコントローラに入力し(ステップ7010)、続いて同様に温度TもHEMSコントローラに入力する。次に歪み量εを、ローパスフィルタを通して、直流成分であるLεを算出し、同様にハイパスフィルタを通して、交流成分であるHεを算出する(ステップ7030)。
【0036】
次にまず、交流成分Hεと所定値αを比較し(ステップ7040)、大きい場合は図3(a)に示す降雨もしくは地震の発生の可能性有りと判定する。
【0037】
次に、降雨もしくは地震の発生の可能性がある場合、直流成分Lεと所定値θを比較し(ステップ7050)、大きい場合は図3(a)に示した判断で降雨と判定し、降雨対応(ステップ7060)を実行する。具体的には例えば、図5(a)の表示等である。
【0038】
直流成分Lεと所定値θを比較し(ステップ7050)、小さい場合は図3(a)に示した判断で地震と判定し、地震対応(ステップ7070)を実行する。具体的には例えば、図5(d)もしくは(e)の表示等である。
【0039】
交流成分Hεと所定値αを比較し(ステップ7040)、小さい場合は図3(a)に示すように降雪の可能性と判定する。このとき温度Tと所定値γ(例えば摂氏0℃)と比較し、温度Tが低ければ降雪と判定し、降雪対応(ステップ7100)を実行する。具体的には例えば図5(b)もしくは(c)の表示と動作である。ここで温度Tが所定値より高ければ、これ以外の要因として、例えば図10で後述する鳥などの動物が太陽電池パネルに乗ったことによる歪みと判断して、特に処理は行わない。もしくは、要因不明の異常が発生したと判定して、その旨をユーザーに知らせたり、ネットワークを通じて太陽電池パネルの保守点検業者に連絡をしたりといった動作を行うことも出来る。
【0040】
図8は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置による、複数の家屋からの環境情報を利用する場合の構成図である。
【0041】
各家屋A〜F8000〜8050には、それぞれ歪みセンサを設けた太陽電池パネルが設置されており、各々図1に示したHEMSコントローラが設けてある。HEMSコントローラはネットワーク8070により、外部のコンピュータと接続されており、ここでは各家屋の環境情報を総合管理する総合管理サーバ8060や天気情報サーバ8080と接続される。
【0042】
図9は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置における、局所的な降雨を検出して天気予報サーバに環境情報を送信する動作を示したフローチャートである。
【0043】
降雨・降雪対応(ステップ9000)手順を開始すると、まず歪み量の直流成分Lεを取得する(ステップ9010)。次に、近隣の天候情報を図8に示した天気情報サーバ8080より取得する(ステップ9020)。直流成分Lεを所定値αと比較して、大きければ降雪と判定し、図5(b)のように降雪であることをユーザーに表示する。さらに、直流成分Lεが所定値θより大きい場合、降雪量が過大であると判定し(ステップ9050)、自動除雪機能をONにする(ステップ9060)。併せて図5(c)に示す自動除雪中である旨のメッセージをユーザーに表示する。
【0044】
直流成分Lεが所定値αより小さい場合、まず図5(a)に示すように降雨表示を行う(ステップ9070)。次に、ステップ9020で取得した近隣天候情報の確認を行い(ステップ9080)、近隣も降雨である天候情報が既にあるかどうかを判定し(ステップ9090)、既に降雨である場合は、何も行わない。
【0045】
近隣の天候情報が降雨でないにも関わらず、本発明による環境情報収集装置が降雨と判定した場合は、極めて局所的な降雨が発生したという情報を、天気予報サーバにアップロードし(ステップ9100)、他の場所から自由に参照できるさらに詳細な天候情報を構築することに役立てることが出来る。
【0046】
図10は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置による、複数の太陽電池パネルからの環境情報をより正確に取得する方法を示したフローチャートである。
【0047】
各家庭の屋根に太陽電池パネルを設置した場合、通常複数の太陽電池パネルを設置し、それらの電力を統合して利用する。このとき図10(b)に示すように、特定のパネルに例えば鳥などの動物が乗った場合、また特定のパネルが破損した場合は、正常な環境情報が得られないことになる。本実施例では、各太陽電池パネルに設置した歪みセンサからの出力を個別に確認する。
【0048】
まず、各パネル毎の歪み量ε(1)〜ε(n)を個別に取得する(ステップ10000)。次にこの値の標準偏差と分散計算により、全体の概略平均である歪み量に比べて特に異なった値を出力する歪みセンサの出力値ε(i)を検出する(ステップ10010)。次に、この特異点となるε(i)を除く全歪み量の平均計算を行い(ステップ10020)、この値を用いて図7(ステップ7010)の歪み量入力値εとして利用する。これにより、異常な値を出力するセンサを除いて、より正確な環境情報を導き出すための歪み量を得ることが出来る。
【0049】
そして、図7で示したように、この特異点が常時発生した場合は、太陽電池パネルの破損等の異常が発生したと判定して、その旨をユーザーに知らせたり、ネットワークを通じて太陽電池パネルの保守点検業者に連絡をしたりといった動作を行うことも出来る。
【0050】
図11は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置を用いて、地域単位の環境情報の特徴点を検出する方法を示したフローチャートである。
【0051】
図11(b)のハッチング部分で示されたように、狭領域の局所的な降雨が発生する気象条件がしばしば存在する。図8で示した複数の家屋の環境情報を用いて、この局所的な降雨等の気象状況を検出する。
【0052】
まず、各家屋毎の歪み量ε(1)〜ε(N)を図8における総合管理サーバ8060が取得する。このε(1)〜ε(N)は、図10で説明したように、予め家屋内での特異点情報を排除した歪み量である。
【0053】
次に取得した歪み量ε(1)〜ε(N)の標準偏差と分散計算で、特に異なった値を出力する家屋の歪みセンサの出力値ε(I)〜ε(N)を検出する(ステップ11020)。
そして歪みセンサの出力値ε(I)〜ε(J)の平均計算を行い(ステップ11020)、歪みセンサの出力値ε(I)〜ε(J)を検出した家屋の位置の連続性の判定を行う(ステップ11030)。同一区域や連続した区域でこの特徴点が検出された場合、図11(b)のハッチング部分で示されたように、局所的な豪雨等の気象状況が発生したと判定して、その場所と気象情報を、図8における総合管理サーバ8060から天気情報サーバ8080に送信する(ステップ11040)。これにより、各家屋の太陽電池パネルに設置した歪みセンサの情報を、各家屋毎で利用する環境情報のみならず、広域レベルでの詳細な環境情報として利用することが可能になる。
【0054】
図12は、本発明による太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置を用いて、広域レベルでの環境情報の収集と公開を行う方法を示したフローチャートである。
【0055】
図8における総合管理サーバ8060は、図11で示したように地域毎の環境情報を取得する(ステップ12000)。次に、図12(b)の各ブロックに相当する領域内毎の家屋の出力した環境情報を平均し(ステップ12010)、その結果を元に気象マップを作成する(ステップ12020)。そしてその気象マップを図12(b)のような形式で公開する(ステップ12030)。これにより、総合管理サーバは、同サーバが管理する各家屋から出力される環境情報を用いて、独自の気象マップを作成し、一般の気象レーダーを用いた天気情報サーバからの情報とは異なり、実際に降雨が発生したという情報を用いたより正確な気象マップを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1000 歪みセンサ
1100 温度センサ
1010 太陽電池パネル
1020 HEMSコントローラ
1040 モニタTV
1060 総合管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光によるエネルギーを電気に変換する太陽電池パネルを利用した環境情報収集装置であって、
前記太陽電池パネルに歪みセンサを設け、
当該歪みセンサは、外力による前記太陽電池パネルの歪み量に対応する信号を出力するものであって、
前記歪みセンサの出力信号を用いて、環境情報を検出することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項2】
請求項1記載の環境情報収集装置であって、
前記歪みセンサの出力信号から、直流成分と交流成分を分離し、前記直流成分と前記交流成分に基づいて、前記環境情報を検出することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項3】
請求項1もしくは2記載の環境情報収集装置であって、
前記太陽電池パネルに温度センサを設け、前記歪みセンサの出力情報と該温度センサの出力情報とを用いて、前記環境情報を検出することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項4】
請求項2記載の環境情報収集装置であって、
前記直流成分と交流成分の両方が予め定められた所定値を超えている条件を以って、前記環境情報が降雨という気象状況であると判定することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項5】
請求項2記載の環境情報収集装置であって、
前記直流成分が予め定められた所定値以下であって、且つ前記交流成分が予め定められた所定値を超えている条件を以って、前記環境情報が地震発生という状況であると判定することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項6】
請求項2もしくは3記載の環境情報収集装置であって、
前記直流成分が予め定められた所定値を超え、且つ前記交流成分が予め定められた所定値以下である条件を以って、前記環境情報が降雪という気象状況であると判定することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項7】
請求項2もしくは3記載の環境情報収集装置であって、
前記温度センサの出力が略摂氏0℃であり、前記直流成分が予め定められた所定値を超え、且つ前記交流成分が予め定められた所定値以下である条件を以って、前記環境情報が降雪という気象状況であると判定することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項8】
請求項1から7記載の環境情報収集装置であって、
表示装置を有し、
検出した前記環境情報を、表示装置に表示することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項9】
請求項8記載の環境情報収集装置であって、
前記表示装置は家庭用テレビジョンのディスプレイであって、前記環境情報をテレビジョン映像の表示上に重畳して表示することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項10】
請求項8記載の環境情報収集装置であって、
前記表示装置は、家庭内のパーソナルコンピュータのディスプレイであることを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項11】
請求項8記載の環境情報収集装置であって、
前記表示装置は携帯情報端末であり、無線通信により前記環境情報を携帯情報端末に送信することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項12】
請求項8から11記載の環境情報収集装置であって、
表示する環境情報は、検出した前記環境情報の発生、及びその大きさの両方を表示装置に表示することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項13】
請求項6もしくは7記載の環境情報収集装置であって、
検出した前記環境情報が降雪量であって、前記降雪量が所定値を超えた場合、前記太陽電池パネルの積雪を除去する装置を作動させることを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項14】
太陽電池パネルであって、
前記太陽電池パネルの歪みを検出する少なくともひとつ以上の歪みセンサと、前記太陽電池パネルの温度を検出する温度センサと、前記歪みセンサの出力信号と前記温度センサの出力信号を前記太陽電池パネルの外部に出力するインタフェースとを有することを特徴とする太陽電池パネル。
【請求項15】
携帯端末装置であって、
少なくともひとつ以上の歪みセンサと、温度センサを有し、前記歪みセンサの出力信号と前記温度センサの出力信号を外部に出力するインタフェースを有する太陽電池パネルに、前記インタフェースを通して接続されており、
当該携帯端末の画面に、前記太陽電池パネルに発生した歪みの方向及び歪み量の情報を表示することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項16】
請求項15記載の携帯端末装置であって、
前記太陽電池パネルに発生した歪み量情報の直流成分を、スイッチ操作により、太陽電池パネルもしくは太陽電池パネルを用いた環境情報収集装置に送信する機能を有する携帯端末装置。
【請求項17】
請求項1記載の環境情報収集装置であって、
前記太陽電池パネルは複数個のパネルから成り、
前記複数個のパネルの各々に前記歪みセンサが配され、
前記複数の太陽電池パネルの各々から出力された歪み量情報を比較し、該歪み情報の平均値から所定の値だけ差分がある太陽電池パネルの歪みセンサからの値を除く、残りの太陽電池から出力された歪み量を平均した結果を用いて、環境情報を検出することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項18】
請求項1もしくは17記載の環境情報収集装置であって、
出力される環境情報を、ネットワーク経由で総合管理サーバに送信する機能を有することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項19】
請求項18記載の環境情報収集装置であって、
前記総合管理サーバは、前記環境情報収集装置の出力結果を管理する機能を有し、
複数の家屋から出力される環境情報を、ネットワーク経由で総合管理サーバに集結し、各々の環境情報の平均値から、所定の値だけ差分がある家屋の環境情報を用い、局地的な環境情報の特徴地域が発生していることを検出することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項20】
請求項19記載の環境情報収集装置であって、
前記総合管理サーバは、集結した各家屋の環境情報を比較し、位置的に連続した家屋の環境情報が略同一であることを判定して、局地的な環境情報の特徴地域が発生していることを検出することを特徴とする環境情報収集装置。
【請求項21】
請求項19もしくは20記載の環境情報収集装置であって、
前記総合管理サーバは、計測した地域別の環境情報を地図上に重畳した情報を、前記ネットワーク経由で公開することを特徴とする環境情報収集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−72749(P2013−72749A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211869(P2011−211869)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)