説明

太陽電池フロントシート用積層ポリエステルフィルム

【課題】 耐加水分解性を有する、透明性の良好な太陽電池フロントシート用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 粒子を含有する両最外層と、実質的に粒子を含有しない中心層との少なくとも3層からなるポリエステルフィルムであり、マグネシウム元素を9〜40ppm、チタン元素、およびリン元素を含有し、末端カルボキシル基量が26当量/t以下であり、極限粘度が0.65dl/g以上であることを特徴とする太陽電池フロントシート用積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐加水分解性を有する、透明性の良好な太陽電池フロントシート用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換効果を利用して光エネルギを電気エネルギに変換する太陽光発電は、クリーンエネルギを得る手段として広く行われている。そして、太陽電池セルの光電変換効率の向上に伴って、多くの個人住宅にも太陽光発電システムが設けられるようになってきている。このような太陽光発電システムを実際のエネルギ源として用いるために、複数の太陽電池セルを電気的に直列に接続させた構成をなす太陽電池モジュールが使用されている。
【0003】
太陽電池モジュールは、主に、太陽電池フロントシート(主にガラス)/封止材(主にEVA)/光電変換層(セル部と呼ばれる)/封止材(主にEVA)/太陽電池裏面保護用シート、が代表的な構成例である。太陽電池保護用シートには、フッ素系フィルムが用いられることが多いが、高価なためポリエステル系フィルムが用いられることが多い。
【0004】
ポリエステル系フィルムを、高温高湿度環境で使用すると、分子鎖中のエステル結合部位の加水分解が起こり、機械的特性が劣化することが知られている。よって、ポリエステル系フィルムを屋外で長期(例えば、20年)にわたって使用する場合、あるいは高湿度環境で使用する場合を想定して、加水分解を抑制すべく様々な検討が行われている。
【0005】
ポリエステルの加水分解は、ポリエステル分子鎖の末端カルボキシル基量が高いほど分解が速いことが知られている。よって、特許文献1や特許文献2には、カルボン酸と反応する化合物を添加することで、分子鎖末端のカルボキシル基量を低減させることによる耐加水分解性を向上させる技術が開示されている。しかし、これらの化合物は、製膜プロセスでの溶融押出工程、または、マテリアルリサイクル工程において、ゲル化を誘発し、異物を発生させる可能性が高く、環境的にもコスト的にも好ましくない。
【0006】
特許文献3や特許文献4には、チタン化合物とリン化合物を用いることでポリエステルの耐久性を向上させることが記載されている。ポリエスエル高分子鎖の分解そのものが起因となる破壊は抑制されるため、太陽電池裏面保護用シートとしては活用できる。しかし、太陽電池フロントシート、すなわち、ガラス代替として当該技術によるポリエステルフィルムを用いた場合、透明性については考えられていないため、太陽電池フロントシート用ポリエステルフィルムとしては、満足の得られるフィルムではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−227767号公報
【特許文献2】特開平8−73719号公報
【特許文献3】特開2007−204538公報
【特許文献4】特開2010−163613公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、耐加水分解性を有する、透明性の良好な太陽電池フロントシート用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなるポリエステルフィルムを用いることによれば、上述の課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、粒子を含有する両最外層と、実質的に粒子を含有しない中心層との少なくとも3層からなるポリエステルフィルムであり、マグネシウム元素を9〜40ppm、チタン元素、およびリン元素を含有し、末端カルボキシル基量が26当量/t以下であり、極限粘度が0.65dl/g以上であることを特徴とする太陽電池フロントシート用積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐加水分解性を有する、透明性の良好な太陽電池フロンシート用ポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で言うポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押出される、いわゆる押出法による押し出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、延伸したフィルムである。
【0013】
本発明において、ポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4―シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。その中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0014】
本発明のポリエステルフィルム中の化合物の量は、後述する蛍光X線分析装置を用いた分析にて、チタン元素、リン元素、およびマグネシウム元素が検出される必要がある。
【0015】
本発明のポリエステルフィルム中のチタン元素含有量については、2ppm以上であることが好ましい。チタン元素が2ppm未満の場合、ポリエステル原料製造時の生産性が劣り、目的の重合度に達したポリエステル原料を得られないことがある。一方、ポリエステルフィルム中のチタン元素含有量の上限については特に制限はないが、好ましい範囲は20ppm以下であり、さらには15ppm以下であり、特には9ppm以下である。チタン化合物の含有量が多すぎるとポリエステルを溶融押出する工程でオリゴマーが副生成しやすく、オリゴマーが表面に析出したポリエステルフィルムとなりやすい傾向がある。ポリエステルフィルムの表面オリゴマーは、製膜時に用いるロールへオリゴマーが転写されることによってロールが汚染される、またフィルム異物の発生を引き起こす、などの原因物質となることがある。
【0016】
本発明のポリエステルフィルム中のリン元素は、通常はリン酸化合物に由来するものであり、ポリエステル製造時に添加される。本発明のポリエステルフィルム中のリン元素含有量については、3ppm以上であることが好ましい。リン元素が3ppm未満の場合、ポリエステル原料製造時の生産性が劣り、目的の重合度に達したポリエステル原料を得られないことがある。一方、ポリエステルフィルム中のリン元素含有量の上限については特に制限はないが、好ましい範囲は170ppm以下であり、さらには100ppm以下であり、特には50ppm以下である。リン元素量が多すぎると、フィルム製膜時にゲル化が起こり異物となってフィルムの品質を低下させる原因となることがある。
【0017】
リン酸化合物の例としては、リン酸、亜リン酸あるいはそのエステルホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、亜ホスホン酸化合物、亜ホスフィン酸化合物など公知のものが該当し、具体例としては、正リン酸、ジメチルフォスフェート、トリメチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、ジプロピルフォスフェート、トリプロピルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、ジアミルフォスフェート、トリアミルフォスフェート、ジヘキシルフォスフェート、トリヘキシルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、エチルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0018】
また、熱分解や加水分解を抑制するために触媒として働きうる金属化合物をできる限り含まないことが好ましいが、ポリエステルフィルムの生産性を向上すべく溶融時の体積固有抵抗値を低くするため、マグネシウム、カルシウム、リチウム、マンガン等の金属をフィルム中に含有させる。これらの中で、特に好ましくはマグネシウム元素であり、本発明においては、マグネシウム元素が必須である。マグネシウム元素含有量は、9〜40ppm、好ましくは10〜30ppmである。マグネシウム元素含有量が9ppm未満だと、ポリエステルフィルムの後述する方法で得られる体積固有抵抗値が高いため、フィルム生産時の製膜速度が速い場合において、ピニングバブルと呼ばれるダイスから押し出されたシートとキャスティングドラムとの密着不良現象が生じやすく、完全に密着急冷された均質なフィルムを得ることが困難となる。一方、マグネシウム元素含有量が40ppmを超えると、ポリエステルに不溶性の異物(マグネシウム塩)の生成量が多くなる。
【0019】
なお、上述の体積固有抵抗値(Ω・cm)であるが、好ましくは40Ω・cm未満、さらに好ましくは35Ω・cm未満、特に好ましくは30Ω・cm未満である。体積固有抵抗値が40Ω・cm以上では、フィルム生産時の製膜速度が速い場合において、ピニングバブルと呼ばれるダイスから押し出されたシートとキャスティングドラムとの密着不良現象が生じやすく、完全に密着急冷された均質なフィルムを得ることが困難となることがある。下限値は特にないが、現実的には3Ω・cm程度である。
【0020】
マグネシウム元素のポリエステルフィルムへの添加方法については特に限定されない。すなわち、(イ)重合時にマグネシウム化合物を触媒として添加したポリエステル原料を用いる方法、(ロ)マグネシウム含有量の少ないポリエステル原料と、重合時にマグネシウム化合物を触媒として添加したポリエステル原料とを用いる方法、(ハ)マグネシウム含有量の少ないポリエステル原料と、マグネシウム含有量の少ないポリエステル原料にマグネシウム化合物を混練法にてマスターバッチ化したポリエステル原料とを用いる方法、(二)マグネシウム含有量の少ないポリエステル原料でフィルムを製膜する時にマグネシウム化合物を押出機から直接添加する方法、などが挙げられるが特に限定しない。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステル成分の末端カルボキシル基量が26当量/t以下、好ましくは20(当量/t)以下である。末端カルボキシル基量が26当量/tを超えると、ポリエステル成分の耐加水分解性が劣る。下限については特に設けないが、重縮合反応の効率、溶融押出工程での熱分解等の点から通常は5当量/t程度である。
【0022】
本発明により得られるポリエステルフィルムの極限粘度は、0.65dl/g以上、好ましくは0.68dl/g以上である。ポリエステルフィルムの極限粘度を0.65dl/g以上とすると、長期耐久性や耐加水分解性が良好なフィルムが得られる。一方、ポリエステルフィルムの極限粘度の上限はないが、重縮合反応の効率、溶融押出工程での圧力上昇防止の点から0.90dl/g程度である。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムの両最外層に、粒子を含有させることにより、フィルムの巻上げ工程、塗工工程、蒸着工程等での作業性を向上させることができる。最外層に粒子がない場合、フィルム製膜時において、フィルムとロールとの摩擦が激しく、フィルム表面にキズが発生しやすい。また、透明性/ヘーズの観点から中間層には実質的に粒子を含有しない。
【0024】
この粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、カオリン等の無機粒子やアクリル樹脂、グアナミン樹脂等の有機粒子や触媒残差を粒子化させた析出粒子を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これら粒子の中では、一時粒子の凝集粒子である多孔質シリカ粒子が特に好ましい。多孔質シリカ粒子はフィルムの延伸時に粒子周辺にボイドが発生しにくいため、フィルムの透明性を向上させる特長を有する。
【0025】
多孔質シリカ粒子を構成する一次粒子の平均粒径は、0.001〜0.1μmの範囲にあることが好ましい。一次粒子の平均粒径が0.001μm未満では、スラリー段階で解砕により極微細粒子が生成し、これが凝集体を形成して、ヘーズが高くなる原因となることがある。一方、一次粒子の平均粒径が0.1μmを超えると、粒子の多孔性が失われ、その結果、ボイド発生が少ない特長が失われることがある。
【0026】
さらに、凝集粒子の細孔容積は0.5〜2.0ml/g、さらには0.6〜1.8ml/gの範囲であることが好ましい。細孔容積が0.5ml/g未満では、粒子の多孔性が失われ、ボイドが発生しやすくなり、フィルムの透明性が低下する傾向がある。細孔容積が2.0ml/gより大きいと、解砕、凝集が起こりやすく、粒径の調整を行うことが困難となる場合がある。
【0027】
本発明におけるポリエステルフィルムに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0028】
なお、本発明のポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、染料を添加することができる。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜500μm、好ましくは15〜400μm、さらに好ましくは20(μm)〜300(μm)の範囲である。
【0030】
本発明においては、ポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により3層以上の積層フィルムとする。層の構成としては、粒子を含有するA原料と実質的に粒子を含有しないB原料とを用いて、A/B/A構成とする。
【0031】
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0032】
すなわち、公知の手法により乾燥したまたは未乾燥のポリエステルチップ(ポリエステル成分)を混練押出機に供給し、ポリエステル成分の融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリエステルをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。溶融押出工程においても、条件により末端カルボキシル基量が増加するので、本願発明においては、押出工程における押出機内でのポリエステルの滞留時間を短くすること、一軸押出機を使用する場合は原料をあらかじめ水分量が50ppm以下、好ましくは30ppm以下になるように十分乾燥すること、二軸押出機を使用する場合はベント口を設け、40ヘクトパスカル以下、好ましくは30ヘクトパスカル以下、さらに好ましくは20ヘクトパスカル以下の減圧を維持すること等のそれぞれの方法を採用することが好ましい。
【0033】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、180〜245℃にて熱固定工程に移る。
【0034】
ポリエステルフィルムの耐加水分解性と透明性は、フィルム全体に関連する特性である。本願発明による共押出による積層構造を有するフィルムについては、当該フィルムを構成するポリエステル成分全体として、末端カルボキシル基量、極限粘度、リン元素、チタン元素、マグネシウム元素、微粒子の含有される層の構成について、上記の範囲であることが好ましい。
【0035】
本発明において、ポリエステルフィルム中のポリエステル成分の末端カルボキシル基量を特定範囲とするため、例えば、ポリエステルチップの押出工程における押出機内でのポリエステル成分の滞留時間を短くすることなどによってポリエステルフィルムは得られる。また、低末端カルボキシル基量のポリエステルチップを製膜することで、末端カルボキシル基量が特定範囲のポリエステルフィルムを得てもよい。また、フィルム製造において、溶融工程を経た再生原料を配合するとポリエステル成分の末端カルボキシル基量が特定範囲から外れて増大する傾向があるので、本願発明においてはかかる再生原料を配合しないことが好ましい。また、再生原料を配合するとしても、自ら得られたフィルムを粉砕することで得られたフレークをそのまま用いることが好ましく、量については40重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
【0036】
本発明においては、前記延伸工程においてまたはその後に、フィルムに接着性、帯電防止性、滑り性、離型性等を付与するために、フィルムの片面または両面に塗布層を形成したり、コロナ処理等の放電処理を施したりすることなどもできる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、この実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定および評価方法を以下に示す。
【0038】
(1)体積固有抵抗値(Ω・cm)
ポリエステルフィルム23gを、内径20mm、長さ180mmの枝付き試験管に入れ、管内を十分に窒素置換した後、250℃のオイルバス中に浸漬し、管内を真空ポンプで0.13kPA以下として20分間真空乾燥し、次いで、オイルバス温度を285℃に昇温して試料を溶融させた後、窒素復圧と減圧を繰り返して混在する気泡を取り除いた。この溶融体の中に、面積1cm2のステンレス製電極2枚を5mmの間隔で並行に(相対しない裏面を絶縁体で被覆)挿入し、温度が安定した後に、抵抗計(ヒューレット・パッカード社製「MODEL HP4339B」)で直流電圧100Vを印加し、そのときの抵抗値を計算して体積固有抵抗値(Ω・cm)とした。
【0039】
(2)触媒由来元素の定量
蛍光X線分析装置(島津製作所社製型式「XRF−1800」)を用いて、下記表1に示す条件下で、単枚測定でフィルム中の元素量を求めた。なお、積層フィルムの場合は、フィルムを溶融してディスク状に成型して測定することにより、フィルム全体に対するチタン元素(Ti)とリン元素(P)の有無、ならびにマグネシウム元素(Mg)の含有量を測定する。
【0040】
【表1】

【0041】
(3)末端カルボキシル基量(当量/t)
粉砕したポリエステルチップ、もしくはポリエステルフィルムに対し、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mlを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mlを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に、0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。また、ブランクとして、ポリエステル樹脂試料抜きで同様の操作を実施し、以下の式によって酸価を算出した。
酸価(当量/t)=(A−B)×0.1×f/W
〔ここで、Aは、滴定に要した0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の量(μl)、Bは、ブランクでの滴定に要した0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の量(μl)、Wは、ポリエステル樹脂試料の量(g)、fは、0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の力価である〕
なお、0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、試験管にメタノール5mlを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜2滴加え、0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液0.4mlで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1Nの塩酸水溶液を標準液として0.2ml採取して加え、再度、0.1(N)の苛性ソーダのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った)。以下の式によって力価(f)を算出した。
力価(f)=0.1(N)の塩酸水溶液の力価×0.1(N)の塩酸水溶液の採取量(μl)/0.1(N)の苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の滴定量(μl)
【0042】
(4)極限粘度(dl/g)
粉砕したポリエステルチップ、もしくはポリエステルフィルムをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒中に溶解し、毛細管粘度計を用いて、1.0(g/dl)の濃度の溶液の流下時間、および、溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、極限粘度を算出した。その際、Huggins定数を0.33と仮定した。
【0043】
(5)ピニングバブル性
フィルム製膜時のピニングバブルの有無で判断した。
○:フィルム製膜時にピニングバブルがない
×:フィルム製膜時にピニングバブルがある
【0044】
(6)キズ・異物
フィルムのキズ・異物の有無で判断した
○:フィルムにキズも異物もない
×:フィルムにキズもしくは異物がある
【0045】
(7)耐加水分解性試験
パーソナルプレッシャークッカー装置(平山製作所社製)を用いて、ポリエステルフィルムを120℃−100%RHの雰囲気にてフィルムを処理する。オートグラフAG-I(島津製作所社製)にて、得られたフィルムの製膜方向とは同方向(MD)に対し、200mm/分の速度で、フィルムの機械的特性として引張破断伸度を測定し、引張破断伸度維持率を求める。なお、引張破断伸度維持率は、下記式、すなわちパーソナルプレッシャークッカー処理前後の引張破断伸度の商から得られる。
引張破断伸度維持率[%]=「パーソナルプレッシャークッカー処理後の引張破断伸度」÷「パーソナルプレッシャークッカー処理前の引張破断伸度」×100
引張破断伸度維持率が10%未満に達した時間から、下記の基準で評価した。
○:引張破断伸度維持率が10%未満に達した時間:84hr以上
△:引張破断伸度維持率が10%未満に達した時間:72hr以上84hr未満
×:引張破断伸度維持率が10%未満に達した時間:72hr未満
【0046】
(8)透明性の判断:ヘーズ評価
ポリエステルフィルムに対し、ヘーズメータ(日本電色製 NDH−300A)により、フィルムのヘーズを測定した。下記の基準で評価した。
○:ヘーズが1未満
△:ヘーズが1以上4未満
×:ヘーズが4以上
【0047】
<ポリエステル(1)の製造法>
1個のスラリー調製槽、およびそれに直列に接続された2段のエステル化反応槽、および2段目のエステル化反応槽に直列に接続された3段の溶融重縮合槽からなる連続式重合装置を用い、スラリー調製槽に、テレフタル酸とエチレングリコールを重量比で100:45の割合で連続的に供給すると共に、エチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してリン原子としての含有量が4重量ppmとなる量で連続的に添加して、攪拌、混合することによりスラリーを調製し、このスラリーを、窒素雰囲気下で267℃、相対圧力100kPA、平均滞留時間4時間に設定され、反応生成物が存在する第1段目のエステル化反応槽に連続的に流量120kg/hrで供給し、次いで、第1段目のエステル化反応生成物を、窒素雰囲気下で265℃、相対圧力5kPA、平均滞留時間2時間に設定された第2段目のエステル化反応槽に連続的に移送して、さらにエステル化反応させた。その際、第2段エステル化反応槽に設けた上部配管を通じて、エチレングリコールを生成するポリエステル樹脂に対して322モル/トンになる量を連続的に供給した。この場合、第2段エステル化反応槽におけるエステル化率は97%であった。
【0048】
上述のエステル化反応生成物を、移送配管を経由して第1段重縮合反応槽に連続的に供給した。このとき移送配管に設けた移送ポンプの吐出圧は500kPAであった。移送配
管中のエステル化反応生成物に、酢酸マグネシウム4水和物のエチレングリコール0.6 重量%溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してマグネシウム原子としての含有量が7重量ppmとなる量で連続的に添加した。添加配管を使用して、テトラ−n−ブチルチタネートのエチレングリコール溶液を生成ポリエステル樹脂に対してチタン原子としての含有量が4重量ppmとなる量だけ連続的に添加した。
【0049】
溶融重縮合の反応条件は、第1段重縮合反応槽が269℃、絶対圧力4kPA、平均滞
留時間1時間であり、第2段重縮合反応槽は274℃、絶対圧力0.4kPA、平均滞留時間0.9時間、第3段重縮合反応槽は277℃、絶対圧力0.2kPA、平均滞留時間1時間であった。第3段重縮合反応槽から取り出した溶融重縮合反応生成物は、ダイからストランド状に押出して冷却固化し、カッターで切断して1個の重さが平均粒重24mgのポリエステル樹脂チップ:ポリエステル(1)とした。ポリエステル(1)の極限粘度は0.64dl/g、末端カルボキシル基量は14当量/tであった。
【0050】
<ポリエステル(2)の製造法>
ポリエステル(1)を出発原料とし、窒素雰囲気下で約160℃に保持された攪拌結晶化機内に滞留時間が約60分となるようにチップが重ならないようにした状態で連続的に供給して結晶化させた後、塔型の固相重縮合装置に連続的に供給し、窒素雰囲気下215℃で、得られるポリエステル樹脂の極限粘度が0.83dl/gとなるように滞留時間を調整して固相重縮合させ、ポリエステル(2)を得た。末端カルボキシル基量は6当量/tであった。
【0051】
<ポリエステル(3)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール200重量部とを出発原料とし、エステル交換触媒として、酢酸マグネシウム・4水和物を得られるポリエステル樹脂1tあたりのマグネシウム含有量が46g/樹脂tとなる量で、加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、平均粒子径2 .5μmのシリカ粒子、エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム・4水和物、そしてテトラ−n−ブチルチタネートとの混合物からなるエチレングリコールスラリー溶液を添加し、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。なお、エチレングリコールスラリー溶液中の各化合物の量は、得られるポリエステルに対する含有量について、シリカ粒子は3.0重量%となるように、エチルアシッドホスフェートについてはリン元素量として74g/樹脂tとなるように、酢酸マグネシウム・4水和物については、マグネシウム元素量とし46g/樹脂tとなるように(エステル交換時に添加したマグネシウムも含めて、マグネシウム元素量として合計92g/樹脂tとなる)、テトラ−n−ブチルチタネートについてはチタン元素量として5g/樹脂tとなるように、調整してある。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.60に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステル(3)を得た。極限粘度は0.60dl/g、末端カルボキシル基量は21当量/tであった。
【0052】
<ポリエステル(4)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネートを得られるポリエステル樹脂1t当たりのチタン原子としての含有量が5g/樹脂tとなる量で加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.55dl/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップを得た。上記で、得られたポリエステルチップを真空下220℃で固相重合し、ポリエステル(4)を得た。極限粘度は0.75dl/g、末端カルボキシル基量は25当量/tであった。
【0053】
<ポリエステル(5)の製造法>
ポリエステル(3)の製造法において、平均粒子径2 .5μmのシリカ粒子を加えないことを除いて、同様の方法でポリエステル(5)を製造した。極限粘度は0.62dl/g、末端カルボキシル基量は20当量/tであった。
【0054】
<ポリエステル(6)の製造法>
ベント付二軸押出機にて、ポリエステル(2)を溶融混練しながら、酢酸マグネシウム水溶液を添加した。なお、水分はベントにて除去した。ダイからストランド状に押出して冷却固化し、カッターで切断してマグネシウムマスターバッチとしてポリエステル(7)を得た。極限粘度は0.60dl/g、末端カルボキシル基量は25当量/t、マグネシウム元素含有量は200ppmであった。
【0055】
<ポリエステル(7)の製造法:比較製造例>
ポリエステル(1)の製造法において、エチルアシッドホスフェートを添加しないことを除いて、同様の方法でポリエステルを製造する試みをした。その際、エステル化率が上がらず、重縮合活性が低く、得られたポリエステル樹脂の、極限粘度が上昇せず、フィルム用途には適さないポリエステルとなった。
【0056】
<ポリエステル(8)の製造法:比較製造例>
ポリエステル(1)の製造法において、テトラ−n−ブチルチタネートを添加しないことを除いて、同様の方法でポリエステルを製造する試みをした。その際、極限粘度が上昇せず、フィルム用途には適さないポリエステルとなった。
【0057】
実施例1:
上記ポリエステル(2)およびポリエステル(3)を96:4の比率で混合したポリエステル混合物を、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するとともに、上記ポリエステル(2)およびポリエステル(5)を96:4の比率で混合したポリエステル混合物をベント付き二軸押出機B(メイン)に投入した。双方の原料を二軸押出機中、290℃で溶融、混練し、得られた溶融体を多層Tダイ内でA/B/A=5/90/5の構成比となるように合流さしてスリット状に押出しする。静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸の2種3層からなる積層シートを得た。得られたシートを縦方向に83℃で3.3倍延伸した後、予熱/横延伸/熱固定1/熱固定2/熱固定3/冷却の各ゾーンにおける温度(℃)を95/110/200/221/180/125℃に設定したテンターに導くことでフィルム製膜を行った。なお、この時の製膜速度を40m/分とした。得られたフィルムの平均厚さは50μmであり、最外層/中間層/最外層の厚み(μm)は、2.5/45/2.5であった。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表2に示す。
【0058】
実施例2:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料に関して、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、ポリエステル(3)、およびポリエステル(4)を81:4:15の比率で混合したポリエステルに変更し、ベント付き二軸押出機B(メイン)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、ポリエステル(4)、およびポリエステル(5)を81:15:4の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表2に示す。
【0059】
実施例3:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料に関して、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(1)、ポリエステル(2)、およびポリエステル(3)を50:46:4の比率で混合したポリエステルに変更し、ベント付き二軸押出機B(メイン)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(1)、ポリエステル(2)、およびポリエステル(5)を50:46:4の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表2に示す。
【0060】
実施例4:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料に関して、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、ポリエステル(3)、およびポリエステル(6)を81:4:15の比率で混合したポリエステルに変更し、上記ポリエステル(2)、ポリエステル(5)、およびポリエステル(6)を81:4:15の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
比較例1:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料に関して、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、およびポリエステル(3)を98:2の比率で混合したポリエステルに変更し、ベント付き二軸押出機B(メイン)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)を100%と変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得たが、ピニングバブルが多数確認された。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。
【0063】
比較例2:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料に関して、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、ポリエステル(3)、およびポリエステル(4)を65:5:30の比率で混合したポリエステルに変更し、ベント付き二軸押出機B(メイン)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、ポリエステル(5)、およびポリエステル(4)を65:5:30の比率で混合したポリエステルに変更し、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。
【0064】
比較例3:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料に関して、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(1)、ポリエステル(2)、およびポリエステル(3)を60:36:4の比率で混合したポリエステルに変更し、ベント付き二軸押出機B(メイン)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(1)、ポリエステル(2)、およびポリエステル(5)を60:36:4の比率で混合したポリエステルに変更し、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。
【0065】
比較例4:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料に関して、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、およびポリエステル(5)を96:4の比率で混合したポリエステルに変更し、ベント付き二軸押出機B(メイン)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、およびポリエステル(5)を96:4の比率で混合したポリエステルに変更し、実施例1と同様の方法でフィルムを得たが、粒子が最外層になかったためキズの多いフィルムとなった。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。
比較例5:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料に関して、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、ポリエステル(3)、およびポリエステル(6)を66:4:30の比率で混合したポリエステルに変更し、ベント付き二軸押出機B(メイン)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、ポリエステル(5)、およびポリエステル(6)を66:4:30の比率で混合したポリエステルに変更し、実施例1と同様の方法でフィルムを得たが、マグネシウム元素由来の異物が多かった。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。
比較例6:
実施例1において、混合物中のポリエステル原料に関して、ベント付き二軸押出機A(サブ)、ベント付き二軸押出機B(メイン)に投入するポリエステル混合物比について、両者とも上記ポリエステル(2)、およびポリエステル(3)を96:4の比率で混合したポリエステルに変更し、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。
比較例7:
比較例7において、混合物中のポリエステル原料に関して、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、ポリエステル(3)を98.5:1.5の比率で混合したポリエステルに変更し、ベント付き二軸押出機B(メイン)に投入するポリエステル混合物比について、上記ポリエステル(2)、およびポリエステル(5)を98.5:1.5の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。
参考例7:
上記ポリエステル(2)およびポリエステル(3)を98.5:1.5の比率で混合したポリエステル混合物を、ベント付き二軸押出機A(サブ)に投入するとともに、上記ポリエステル(2)およびポリエステル(6)を96:4の比率で混合したポリエステル混合物をベント付き二軸押出機B(メイン)に投入した。双方の原料を二軸押出機中、290℃で溶融、混練し、得られた溶融体を多層Tダイ内でA/B/A=5/90/5の構成比となるように合流さしてスリット状に押出しする。静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸の2種3層からなる積層シートを得た。得られたシートを縦方向に83℃で3.3倍延伸した後、予熱/横延伸/熱固定1/熱固定2/熱固定3/冷却の各ゾーンにおける温度(℃)を95/110/200/216/180/125℃に設定したテンターに導くことでフィルム製膜を行った。なお、この時の製膜速度を11m/分とした。得られたフィルムの平均厚さは188μmであり、最外層/中間層/最外層の厚み(μm)は、9.4/169.2/9.4であった。厚み以外は比較例7と同様の組成物構成だが、製膜速度が遅いため、体積固有抵抗が高くても、ピニングバブルは発生しなかった。得られたフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。
【0066】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、例えば、太陽電池フロントシート用二軸配向ポリエステルフィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含有する両最外層と、実質的に粒子を含有しない中心層との少なくとも3層からなるポリエステルフィルムであり、マグネシウム元素を9〜40ppm、チタン元素、およびリン元素を含有し、末端カルボキシル基量が26当量/t以下であり、極限粘度が0.65dl/g以上であることを特徴とする太陽電池フロントシート用積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−245747(P2012−245747A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121131(P2011−121131)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】