説明

太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュール用配線基板

【課題】シンプルな構成であり、従来の太陽電池モジュールと同等以上の長期信頼性を発揮し、薄型化に対応した太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュール用配線基板を提供する。
【解決手段】本発明に係る太陽電池モジュール3は、受光面14aと、受光面14aの反対の面と、当該反対の面に設けられる電極配線とを有する太陽電池セル1と、電極配線に電気的に接続すると共に、18μm以上75μm以下の厚さを有し、表面、裏面、及び側面が被覆材26bで被覆される導体配線パターンと、太陽電池セル1と導体配線パターンとを封止する封止部36とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュール用配線基板に関する。特に、本発明は、バックコンタクト型の太陽電池セルを用いることができる太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュール用配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも銅箔と絶縁層を有するフレキシブル銅張積層板の製造方法であって、銅箔を、引張弾性率が熱処理前の55%以下となるまで熱処理する工程を有するフレキシブル銅張積層板の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のフレキシブル銅張積層板の製造方法によれば、屈曲性に優れたフレキシブル銅張積層板を生産性良く製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−243898号公報
【特許文献2】特開2009−43842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のフレキシブル銅張積層板の製造方法は、圧延箔と接着材と基材とからなる3層構造のフレキシブル配線基板を製造する方法である。そして、当該フレキシブル配線基板においては、圧延箔だけをフレキシブル配線基板から分離することは困難であり、そもそも、圧延箔部分だけを分離することは想定されていない。
【0006】
また、従来の太陽電池モジュール(例えば、特許文献2参照)は、配線基板の構成材である基材、接着材が封止されているので、10年以上の製品寿命を要求される太陽電池モジュールの長期信頼性に対応する試験の実施、あるいは市場での実績の積み上げを改めて実施することを要する。また、配線基板の基材、接着材が封止されている場合、基材の線膨張係数、及び/又は接着材の線膨張係数と太陽電池セルの線膨張係数との相違により、太陽電池セルにひずみが発生する場合があり、ひずみが大きいと太陽電池セルの破損、フレキシブル配線基板の配線の断線等が発生する場合がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、シンプルな構成であり、従来の太陽電池モジュールと同等以上の長期信頼性を発揮し、薄型化に対応した太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュール用配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、少なくとも受光面と、前記受光面の反対の面と、前記反対の面に設けられる電極配線とを有する太陽電池セルと、前記電極配線に電気的に接続すると共に、18μm以上75μm以下の厚さを有する銅箔からなり、表面、裏面、及び両側面の少なくとも1つの面が被覆材で被覆される導体配線パターンとを備え、前記太陽電池セルの垂直投影面内の前記導体配線パターンは、前記太陽電池セルに直接接続している部分を除き、全面が封止材と直接接して封止する封止部とを備える太陽電池モジュールが提供される。
【0009】
また、上記太陽電池モジュールは、前記被覆材が、金属めっき、導電性接着材、及びはんだ材料からなる群から選択される材料を含んで形成されることが好ましい。
【0010】
また、上記太陽電池モジュールは、前記導体配線パターンが、0.2%耐力が100MPa以下であることが好ましい。
【0011】
また、上記太陽電池モジュールは、前記導体配線パターンが、十点平均粗さが1.0μm以下の表面粗さの前記表面と前記裏面を有することが好ましい。
【0012】
また、上記太陽電池モジュールは、前記銅箔が、圧延銅箔であることが好ましい。
【0013】
また、上記太陽電池モジュールは、複数の前記太陽電池セルを有し、複数の前記太陽電池セルは、一列以上に配置され、前記導体配線パターンは、少なくとも一列に配置された複数の前記太陽電池セルを電気的に直列接続するのが好ましい。
【0014】
また、本発明は上記目的を達成するため、基材と、前記基材の表面に設けられる接着層と、前記接着層の表面に設けられ、18μm以上75μm以下の厚さを有し、0.2%耐力が100MPa以下であり、十点平均粗さが1.0μm以下の表面粗さの前記表面又は裏面を有する導体配線パターンとを有し、前記導体配線パターンの表面、裏面、及び両側面のうち少なくとも1つの面が被覆材で被覆されているバックコンタクト型太陽電池モジュール用配線基板が提供される。
【0015】
また、上記バックコンタクト型太陽電池モジュール用配線基板は、前記基材が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、及びポリアミドイミドからなる群から選択される樹脂材料を含んで形成されることが好ましい。
【0016】
また、上記バックコンタクト型太陽電池モジュール用配線基板は、前記被覆材が、金属めっき、導電性接着材およびはんだからなる群から選択される材料を含んで形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュール用配線基板によれば、シンプルな構成であり、従来の太陽電池モジュールと同等以上の長期信頼性を発揮し、薄型化に対応した太陽電池モジュール、及び太陽電池モジュール用配線基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールが備える太陽電池セルを裏面から見た平面図である。
【図2】(a)は本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造に用いるフレキシブル配線基板の平面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造の流れを示す図である。
【図5】(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造の流れを示す図である。
【図6A】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造の流れを示す図である。
【図6B】本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態の要約]
バックコンタクト型の太陽電池セルを備える太陽電池モジュールにおいて、受光面と、前記受光面の反対の面と、前記反対の面に設けられる電極配線とを有する太陽電池セルと、前記電極配線に電気的に接続すると共に、18μm以上75μm以下の厚さを有し、表面、裏面、及び側面の少なくとも1つの面が被覆材で被覆される導体配線パターンと、前記太陽電池セルと前記導体配線パターンとを封止する封止部とを備える太陽電池モジュールが提供される。
【0020】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールが備える太陽電池セルを裏面から見た平面図を示す。
【0021】
(太陽電池セル1)
本実施の形態に係る太陽電池モジュール3が備える太陽電池セル1は、例えば、単結晶シリコンから主として形成される半導体基板14と電極配線とを有する。すなわち、太陽電池セル1は、所定の半導体材料から平板状に形成された半導体基板14を有し、半導体基板14は、一方の面に受光面(すなわち、表面)を有すると共に他方の面(すなわち、裏面)に電極配線を有する。具体的に、本実施の形態に係る太陽電池セル1は、バックコンタクト型の太陽電池セル1であり、受光面に電極配線は設けられない。また、電極配線は、p電極10とn電極12とを有しており、p電極10及びn電極12はそれぞれ櫛歯状に形成される。更に、櫛歯状のp電極10と櫛歯状のn電極12とはそれぞれ、太陽電池セル1の他方の面に互いにかみ合う配置を有して設けられる。
【0022】
また、p電極10の櫛歯である複数のp側細線電極10bとn電極12の櫛歯である複数のn側細線電極12bとはそれぞれ、本実施の形態においては直線状に連続的に形成される。そして、p側細線電極10bは、平面視にて、太陽電池セル1の一辺に平行であって、当該一辺の近傍に設けられるp側外側電極10aから当該一辺の対辺側に延びて形成される。同様に、n側細線電極12bは、当該一辺の対辺近傍に設けられ、当該対辺に平行に設けられるn側外側電極12aから当該一辺に延びて形成される。
【0023】
電極配線(すなわち、p電極10及びn電極12)は、導電性が良好であり、はんだに対する接続性が良好な材料を主成分にして形成することができる。例えば、電極配線は、銀を主成分にして形成することができる。また、電極配線の表面に、銀ペースト等の導電性接着剤層をプリントすることもできる。なお、p側細線電極10b及びn側細線電極12bはそれぞれ、点線状に不連続的に形成することもできる。
【0024】
なお、太陽電池セル1は、多結晶シリコンから主として形成することもできる。また、太陽電池セル1は、他の半導体、例えば、III−V族化合物半導体等から主として形成することもできる。更に、p電極10とn電極12との配置は、本実施の形態の配置の反対にすることもできる。
【0025】
(フレキシブル配線基板2)
図2(a)は、本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造に用いるフレキシブル配線基板の平面図を示し、図2(b)は、図2(a)のA−A線における断面を示す。
【0026】
本実施の形態に係る太陽電池モジュール3の製造に用いる太陽電池モジュール用配線基板(すなわち、配線基板)としてのフレキシブル配線基板2は、可撓性を有する基材20と、基材20の上方に設けられる配線パターンとしての導体配線パターン(すなわち、p側用電極24及びn側用電極26)とを有すると共に、基材20と導体配線パターンとの間には接着層22が設けられる。接着層22は、基材20の表面の略全面若しくは一部に設けられる。また、導体配線パターンは被覆材により被覆される。
【0027】
(基材20)
基材20は、可撓性を有する絶縁材料から主として形成され、フィルム状に形成される。基材20は、例えば、取扱いの容易性の観点から10μm以上125μm以下、好ましくは25μm以上75μm以下の厚さを有して形成される。基材20を構成する絶縁材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミドイミド等を用いることができる。
【0028】
(接着層22)
接着層22は、エネルギーの供給により接着力が低下する接着剤組成物から主として形成される。接着剤組成物としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂材料を用いることができる。また、エネルギーの供給は、例えば、加熱による熱エネルギーの供給、紫外線(UV)の照射による光エネルギーの供給が挙げられる。すなわち、接着層22は、フレキシブル配線基板2に所定のエネルギーを供給した場合、接着層22に対する導体配線パターンの接着力が低下する接着剤組成物から主として構成される。
【0029】
(導体配線パターン)
導体配線パターンは、例えば、銅又は銅合金から主として形成される。また、導体配線パターンは、直流抵抗の低減、温度変化に基づいて発生する応力の低減の観点から、18μm以上75μm以下の厚さを有して形成することが好ましい。また、温度が変化する環境において、本実施の形態に係る太陽電池モジュール3が備える太陽電池セル1内に発生する応力を低減することを目的として、導体配線パターンの0.2%耐力は、アニール処理等を施すことにより100MPa以下程度に低減することが好ましい。したがって、導体配線パターンは、圧延銅箔から形成することが好ましい。
【0030】
更に、導体配線パターンは、導体配線パターンから接着層22を剥離させやすくすることを目的として、少なくとも接着層22に接する面の表面粗さが、十点平均粗さで1.0μm以下の表面粗さであることが好ましい。
【0031】
具体的に、導体配線パターンは、接着層22の表面に櫛歯状に設けられ、第1導電型としてのp型用の第1配線としてのp側用電極24と、p側用電極24が設けられる領域とは異なる接着層22の表面に櫛歯状に設けられ、p型とは異なる第2導電型としてのn型用の第2配線としてのn側用電極26とを有する。具体的に、p側用電極24の櫛歯であるp側用細線電極24aとn側用電極26の櫛歯としてのn側用細線電極26aとは、交互にかみ合うように配置される。
【0032】
また、本実施の形態に係る導体配線パターンは、表面、裏面、及び側面が導電性を有する被覆材で被覆される。具体的には、p側用電極24及びn側用電極26の表面及び側面が、金属めっき、導電性接着材、又は、はんだ材料等の被覆材24b及び被覆材26bによって被覆される。なお、太陽電池モジュール3においては、被覆材24b及び被覆材26bによりp側用電極24及びn側用電極26の表面及び側面が被覆され、p側用電極24及びn側用電極26の裏面(すなわち、p側用電極24及びn側用電極26の接着層22に接着している面)は、封止部36により被覆される。なお、被覆材24b及び被覆材26bにより、導体配線パターンの変色の防止、導体配線パターンの腐食の防止、及び太陽電池セル1の電極配線に対する導体配線パターンの電気的接続の確実性の向上を図ることができる。また、被覆材24b及び被覆材26bとしては、一例として、金、錫等を用いためっき膜を用いることができる。
【0033】
フレキシブル配線基板2は、一例として、以下のように得ることができる。まず、圧延銅箔の原箔を準備する(例えば、圧延箔メーカー(日立電線株式会社など)から入手できる)。この際に、圧延銅箔にアニール処理を施し、0.2%耐力を、例えば、100MPa以下にする。また、表面処理として油分洗浄、圧延粗さの調整を原箔に施すこともできる。このようにして得られる圧延箔に対し、必要に応じて、脱脂処理、酸洗浄処理、粗化処理、Organic Soderability Preservative(OSP)処理を施すこともできる。
【0034】
続いて、準備した圧延銅箔にラミネート加工を施す。例えば、PENからなる基材20に、接着材T(株式会社 有沢製作所製)を用いて圧延銅箔をラミネート加工して、Copper Clad Lamination(CCL)材にする。得られたCCL材は、必要に応じて、所定の幅に切断する。そして、CCL材の表面に設けられている圧延銅箔から、導体配線パターンを形成する。導体配線パターンは、例えば、エッチングレジストを圧延銅箔の表面にスクリーン印刷した後、ウェットエッチング処理を圧延銅箔に施すことにより形成できる。あるいは、フォトリソグラフィー法、及びエッチング法を用いて導体配線パターンを形成することができる。その後、導体配線パターンにめっき処理、又はOSP処理を施す。
【0035】
なお、図2においては、フレキシブル配線基板2に2個の太陽電池セル1を実装するレイアウトを一例として示している。本実施の形態の変形例においては、3個以上の太陽電池セル1を1列または2列以上に実装することのできるレイアウトを有するフレキシブル配線基板2を用いることもできる。また、太陽電池セル1間の間隔、太陽電池セル1間の導体配線パターンの形状は、自由に設計することができる。なお、太陽電池セル1間の間隔は、太陽電池セル1同士が接触して破損することを防止することを目的として、1mm以上に設定することが好ましい。更に、フレキシブル配線基板2には、太陽電池セル1を位置決めして実装する際に用いる認識パターン及び/又は認識穴を形成することが好ましい。
【0036】
なお、フレキシブル配線基板2としては、例えば、基材20の厚さが60μm以下であり曲げが可能な極薄リジット基板(極薄ガラスエポキシ基板)、予めめっき処理等の表面処理を施した銅箔を有する銅箔貼り付け基板、又は、2層銅貼基板を用いることもできる。ここで、2層銅貼基板には、スパッタ法若しくは蒸着法等の気相における膜形成法を用い、樹脂からなる基材20に金属層を形成した後、金属層に銅めっきを施して形成される基板、銅箔に樹脂をキャスティングして形成される基板、又は、熱可塑性樹脂を接着材として用い、樹脂からなる基材20を銅箔に貼り付けて形成される疑似2層銅貼基板が含まれる。これら2層銅貼基板は、基材20に貼り付ける銅箔の基材20に対するピール強度を低減させて製造することにより、本実施の形態に係る太陽電池モジュール3の製造に用いるフレキシブル配線基板2として用いることができる。
【0037】
また、導体配線パターンは、銅とインバー(Fe−36% Ni合金)とを組み合わせた複合金属を用いて形成することもできる。複合金属を用いることにより、導体配線パターンの線膨張係数を太陽電池セル1の線膨張係数に近づけることができる。
【0038】
(太陽電池モジュール3)
図3は、本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの断面を示す。
【0039】
本実施の形態に係る太陽電池モジュール3は、受光面14aを有する太陽電池セル1と、フレキシブル配線基板2から基材20及び接着層22を削除して残り、表面及び側面が被覆材で被覆され、裏面が封止部36により被覆された導体配線パターンとを備える。本実施の形態に係る太陽電池モジュール3は、バックコンタクト型の太陽電池セル1を用いた太陽電池モジュール3である。具体的に、本実施の形態に係る太陽電池モジュール3は、太陽電池セル1と、太陽電池セル1のp電極10及びn電極12とフレキシブル配線基板2が有していたp側用電極24及びn側用電極26とを電気的に接続する導電性接着材40と、太陽電池セル1、p側用電極24、及びn側用電極26を封止する封止部36と、太陽電池セル1の受光面に設けられる透明接着シート32と、透明接着シート32の太陽電池セル1の反対側に設けられるガラス板30と、p側用電極24及びn側用電極26の太陽電池セル1の反対側に設けられるバックシート34とを備える。
【0040】
また、太陽電池モジュール3は、p側用電極24及びn側用電極26に電気的に接続する配線部38と、配線部38に電気的に接続する外部接続ケーブル52と、外部接続ケーブル52の一部を格納する外部接続箱50と、ガラス板30とバックシート34とを挟み込む金属枠60とを備える。
【0041】
以下、太陽電池モジュール3の製造工程の説明と共に、太陽電池モジュール3の構成について説明する。
【0042】
(太陽電池モジュール3の製造工程)
図4、図5、図6A、及び図6Bは、本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールの製造の流れの一例を示す。
【0043】
具体的に、図4は、フレキシブル配線基板に太陽電池セルを搭載する工程の概要を示す。また、図5(a)は、フレキシブル配線基板に太陽電池を搭載した状態における平面図を示し、図5(b)は、図5(a)のB−B線における断面を示す。なお、図5(a)は、太陽電池セルが搭載されていない基材の面側からの図である。
【0044】
(セル準備工程、配線基板準備工程、搭載工程)
まず、太陽電池セル1及びフレキシブル配線基板2を準備した後(セル準備工程、配線基板準備工程)、フレキシブル配線基板2に太陽電池セル1を搭載する(搭載工程)。具体的には、フレキシブル配線基板2の配線パターンであるp側用電極24に太陽電池セル1のp電極10が電気的に接続し、フレキシブル配線基板2の配線パターンであるn側用電極26に太陽電池セル1のn電極12が電気的に接続するように、フレキシブル配線基板2に太陽電池セル1を搭載する。
【0045】
ここで、本実施の形態に係る搭載工程においては、配線パターン(すなわち、p側用電極24及びn側用電極26)の一部にp電極10及びn電極12を電気的に接続させる。具体的に、搭載工程は、配線パターン上に、配線パターンとp電極10及びn電極12とが電気的に接続する接続部15と、配線パターンとp電極10及びn電極12とが物理的に接触しない非接続部16とが形成されるように、フレキシブル配線基板2に太陽電池セル1を搭載する。
【0046】
例えば、図5(b)に示すように、p電極10とp側用電極24の表面に形成されている被覆材24bとを部分的に(若しくは断続的に)導電性接着材40を用いて電気的に接続した部分が接続部15であり、一の接続部15と当該一の接続部15に隣接する他の接続部15との間に形成され、p電極10とp側用電極24とを離間する部分が非接続部16である。したがって、接続部15と非接続部16とは交互に設けられる。n電極12とn側用電極26との間においても同様である。なお、非接続部16は、例えば、後述する封止部36を構成する封止樹脂により充填される。
【0047】
ここで、導電性接着材40は、太陽電池セル1のp電極10及びn電極12の表面、又はフレキシブル配線基板2のp側用電極24及びn側用電極26の表面に予め印刷により形成する。そして、画像認識等の技術を用い、太陽電池セル1とフレキシブル配線基板2とを相互に位置合わせし、太陽電池セル1をフレキシブル配線基板2に搭載する。これにより、図5に示すように、複数の太陽電池セル1が直列に接続された太陽電池ストリング4が形成される。
【0048】
なお、フレキシブル配線基板2に太陽電池セル1を搭載する場合において、フレキシブル配線基板2は、短冊状のシート、又はロール状に形成することができる。ロール状のフレキシブル配線基板2を用いた場合、太陽電池セル1を搭載する前、若しくは後に、搭載する個数の太陽電池セル1分の長さごとに、シート又はストリングとして切り出すことにより、太陽電池ストリング4を形成することができる。
【0049】
また、配線パターン状に接続部15と非接続部16とを設ける理由は、太陽電池セル1に反りが発生した場合、太陽電池セル1の破損、及び太陽電池モジュール3の製造工程における作業性の悪化を防止するためである。したがって、接続部15の間隔は、太陽電池セル1の厚さ、フレキシブル配線基板2の構成の変化に応じて調整することが好ましい。また、フレキシブル配線基板2に導電性接着材40を介して太陽電池セル1を搭載するに際し、導電性接着材40の部分のみを加熱するか、あるいは、太陽電池セル1側のみを加熱することにより、太陽電池セル1の反りを低減させることができる。
【0050】
図6A(a)は、太陽電池ストリングにガラス板を透明接着シートを介して貼り付けた状態の断面の概要を示し、図6A(b)は、フレキシブル配線基板の基材及び接着層を剥がす途中における断面の概要を示す。図6Bは、太陽電池ストリングからフレキシブル配線基板の基材及び接着層を剥がした後の断面の概要を示す。
【0051】
(貼り付け工程)
まず、一方の面に透明接着シート32が貼り付けられたガラス板30を準備する。そして、透明接着シート32のガラス板30の反対側の表面に、太陽電池ストリング4の半導体基板14の表面を貼り付ける(貼り付け工程)。具体的に、透明接着シート32は、ポリエチレン−ビニルアセテート(EVA)系、又はシリコーン系の樹脂から主として形成される。また、透明接着シート32は、太陽光のうち、波長の短い光を太陽電池セル1において発電することができる波長に変換する波長変換機能を有することもできる。そして、ガラス板30が貼り付けられた透明接着シート32のガラス板30とは反対側の表面上に太陽電池ストリング4を配置し、透明接着シート32と太陽電池セル1とを密着若しくは接着させる。なお、透明接着シート32と太陽電池セル1との接着力が不十分である場合、透明接着シート32を加熱して、接着力を向上させることもできる。
【0052】
(露出工程)
そして、図6A(b)に示すように、配線パターンとしてのp側用電極24及びn側用電極26の表面から基材20を除去することにより、p側用電極24及びn側用電極26の裏面、すなわち、電極配線としてのp電極10及びn電極12に接続しているp側用電極24及びn側用電極26の面の反対側の面を露出させる(露出工程)。露出工程は、p側用電極24及びn側用電極26の表面から基材20、又は基材20及び接着層22を引き剥がすことにより、p側用電極24及びn側用電極26の裏面を露出させる。
【0053】
具体的に、露出工程は、フレキシブル配線基板2が有する接着層22を構成する接着剤組成物の特性に応じて、フレキシブル配線基板2及び/又は接着層22を加熱する加熱工程、又はフレキシブル配線基板2及び/又は接着層22に紫外線(UV)を照射する照射工程を有する。そして、露出工程は、加熱工程又は照射工程により接着力が低下した接着層22及び基材20を、図6A(b)に示すように、p側用電極24及びn側用電極26から引き剥がすことにより、p側用電極24及びn側用電極26の裏面を露出させる。
【0054】
より具体的に、露出工程は、フレキシブル配線基板2の接着層22に、所定のエネルギー量のエネルギーを、直接的又は間接的に供給する工程として加熱工程又は照射工程を有する。例えば、加熱工程は、フレキシブル配線基板2を加熱する工程、若しくは接着層22に赤外線を照射することにより接着層22を加熱する工程等を用いることができる。露出工程は、加熱工程又は照射工程により接着層22の接着力を低下させた状態で、基材20及び接着層22をp側用電極24及びn側用電極26から引き剥がす。これにより、図6Bに示すように、基材20及び接着層22が除去された形態を有する太陽電池ストリング4が形成される。
【0055】
ここで、図6Bの状態においては、p側用電極24及びn側用電極26の裏面、すなわち、基材20及び接着層22が除去されて露出する面には被覆材24b及び被覆材26bは設けられておらず、後述する封止工程により封止部36が形成されることにより、当該裏面は封止部36により被覆される。
【0056】
なお、基材20及び接着層22の引き剥がしは、ガラス板30の表面を基準に150度以上180度以下の角度の方向に基材20及び接着層22を引き剥がすことで、透明接着シート32と太陽電池セル1との密着若しくは接着状態に与える影響を低減させることができる。また、特に基材20及び接着層22の引き剥がしの開始時において、p側用電極24及びn側用電極26とp電極10及びn電極12とが接続されていない部分については、クランプ等により固定することもできる。
【0057】
また、配線基板準備工程は、接着層22を加熱中若しくは加熱した後、又は接着層22に紫外線(UV光)を照射した後における接着層22に対する配線パターン(すなわち、p側用電極24及びn側用電極26)のピール強度(ただし、90度ピール、引張速度20mm/分)が、100N/m以下になる接着層22を有するフレキシブル配線基板2を準備することが好ましい。
【0058】
(洗浄工程)
基材20及び接着層22をp側用電極24及びn側用電極26から引き剥がした後、p側用電極24及びn側用電極26の裏面に常圧プラズマ等を用いてクリーニングすることもできる(洗浄工程)。なお、基材20及び接着層22をp側用電極24及びn側用電極26から引き剥がした後、p側用電極24及びn側用電極26の裏面、すなわち、基材20及び接着層22を引き剥がすことにより外部に露出したp側用電極24及びn側用電極26の面(つまり、導電性接着材40が接続している面の反対側の面)に、導電性の接着材、又は、はんだペースト等を塗布、印刷することもできる。そして、導電性の接着材等が塗布、印刷された領域を加熱することにより導電性の接着材を溶融させ、溶融させた導電性の接着材等をp側用電極24及びn側用電極26の裏面側から表面(すなわち、p側用電極24及びn側用電極26の導電性接着材40が接続している面)側に流れ込ませることにより、p側用電極24及びn側用電極26とp電極10及びn電極12との間の接続強度の向上を図ることもできる。これにより、p側用電極24及びn側用電極26とp電極10及びn電極12との接続強度が不足している場合に、接続強度を補うことができる。
【0059】
(モジュール形成工程)
続いて、太陽電池ストリング4に配線部材としての配線部と、外部接続用配線部材(図示しない)とを取り付ける。そして、ポリエチレン−ビニルアセテート(EVA樹脂)等の封止樹脂を用い、太陽電池セル1、並びにp側用電極24及びn側用電極26を封止して封止部36を形成する(封止工程)。更に、封止部36の表面にバックシート34を重ねて脱気、加熱する。その後、例えば、アルミニウムからなる金属枠60と、外部接続箱50と、外部接続ケーブル52とを取り付ける。これにより、図3に示すような本実施の形態に係る太陽電池モジュール3が得られる。
【0060】
(変形例)
フレキシブル配線基板2に、銅箔自身が2層に分離するピーラブル銅箔(三井金属鉱業株式会社の銅箔キャリア付銅箔)を適用することもできる。斯かる場合、銅箔自身がフレキシブル配線基板2から剥がれるので、本実施の形態に係る太陽電池モジュール3の製造に適用することができる。また、フレキシブル配線基板2の形成において、p側用電極24及びn側用電極26用の圧延銅箔を準備する段階において、当該圧延銅箔にめっき処理を施すこともできる。これにより、圧延銅箔から導体配線パターンを形成した時に、形成した配線パターンの表面、裏面には既にめっき膜が設けられている状態になるので、当該導体配線パターンを有するフレキシブル配線基板2にそのままめっき処理を施すことにより、導体配線パターンの前面に被覆材を設けることができる。
【0061】
基材20及び接着層22を剥がした後のp側用電極24及びn側用電極26の表面に、配線部等を設ける部分を除き、接着層22を構成する接着剤組成物が残存していてもよい。また、基材20及び接着層22は部分的に残しておくことでもよい。例えば、p側用電極24及びn側用電極26の端部に対応する部分、又は太陽電池セル1の間に対応する部分の基材20及び接着層22のみを引き剥がすこともできる。
【0062】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る太陽電池モジュール3は、フレキシブル配線基板2に太陽電池セル1を搭載した後、フレキシブル配線基板2を構成する基材20及び接着層22を除去した上で太陽電池セル1を封止することにより製造されるので、主として、フレキシブル配線基板2のp側用電極24及びn側用電極26と太陽電池セル1とが封止樹脂により封止される。すなわち、フレキシブル配線基板2のp側用電極24及びn側用電極26を除く他の部分を分離することができるので、主として、フレキシブル配線基板2のp側用電極24及びn側用電極26と太陽電池セル1とが封止樹脂により封止された太陽電池モジュール3を提供できる。これにより、本実施の形態に係る太陽電池モジュール3においては、長期信頼性試験、実証試験の簡略化も可能になるので、特に、バックコンタクト型のような太陽電池モジュール3の開発期間、及び開発費用を低減することができる。
【0063】
また、本実施の形態に係る太陽電池モジュール3の製造に用いるフレキシブル配線基板2は、その導体配線パターンの表面、裏面、及び両側面にわたってめっき等の被覆材を設けることができるので、銅又は銅合金からなる導体配線パターンの変色及び腐食を遅らせることや、防止することができる。更に、フレキシブル配線基板2から基材20及び接着22を引き剥がす工程を経るだけで導体配線パターンの裏面の被覆も完了させることができるので、改めて当該裏面を被覆する工程を省略又は簡略化できることになり、太陽電池モジュール3の製造に適している。
【0064】
また、本実施の形態に係る太陽電池モジュール3は、フレキシブル配線基板2を構成していた基材20及び接着層22は除去され、封止部36に封止されないので、長期使用での紫外線による基材20及び接着層22の分解に起因する封止部36の絶縁抵抗の劣化、吸湿によって生じる基材20及び接着層22の加水分解による封止部36の絶縁抵抗の劣化、又はEVA樹脂等と基材20及び接着層22との間で起こる化学反応による封止部36の絶縁抵抗の劣化を大幅に抑制することができる。
【0065】
また、本実施の形態に係る太陽電池モジュール3の製造方法によれば、フレキシブル配線基板2から基材20及び接着層22を除去したので、シンプルな構成の太陽電池モジュール3を実現することができると共に、太陽電池モジュール3を薄型化することができる。そして、封止部36の中には、主として、p側用電極24及びn側用電極26と太陽電池セル1とが封止され、基材20及び接着層22は封止されないので、基材20の線膨張係数及び接着層22の線膨張係数と、太陽電池セル1の線膨張係数との差に起因する太陽電池セル1内における応力の発生を防止できる。更に、フレキシブル配線基板2の接着層22は、エネルギーの供給により接着力が低下する材料から主として構成されるので、基材20及び接着層22を引き剥がした場合に、p側用電極24及びn側用電極26の表面の接着層22の残渣を低減することができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0067】
1 太陽電池セル
2 フレキシブル配線基板
3 太陽電池モジュール
4 太陽電池ストリング
10 p電極
10a p側外側電極
10b p側細線電極
12 n電極
12a n側外側電極
12b n側細線電極
14 半導体基板
14a 受光面
15 接続部
16 非接続部
20 基材
22 接着層
24 p側用電極
24a p側用細線電極
24b 被覆材
26 n側用電極
26a n側用細線電極
26b 被覆材
30 ガラス板
32 透明接着シート
34 バックシート
36 封止部
38 配線部
40 導電性接着材
50 外部接続箱
52 外部接続ケーブル
60 金属枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも受光面と、前記受光面の反対の面と、前記反対の面に設けられる電極配線とを有する太陽電池セルと、前記電極配線に電気的に接続すると共に、18μm以上75μm以下の厚さを有する銅箔からなり、表面、裏面、及び両側面の少なくとも1つの面が被覆材で被覆される導体配線パターンとを備え、前記太陽電池セルの垂直投影面内の前記導体配線パターンは、前記太陽電池セルに直接接続している部分を除き、全面が封止材と直接接して封止する封止部とを備える太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記被覆材は、金属めっき、導電性接着材、及びはんだ材料からなる群から選択される材料を含んで形成される請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記導体配線パターンは、0.2%耐力が100MPa以下である請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記導体配線パターンは、十点平均粗さが1.0μm以下の表面粗さの前記表面と前記裏面を有する請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記銅箔は、圧延銅箔である請求項4に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
複数の前記太陽電池セルを有し、複数の前記太陽電池セルは、一列以上に配置され、前記導体配線パターンは、少なくとも一列に配置された複数の前記太陽電池セルを電気的に直列接続する請求項5に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
基材と、前記基材の表面に設けられる接着層と、前記接着層の表面に設けられ、18μm以上75μm以下の厚さを有し、0.2%耐力が100MPa以下であり、十点平均粗さが1.0μm以下の表面粗さの前記表面又は裏面を有する導体配線パターンとを有し、前記導体配線パターンの表面、裏面、及び両側面のうち少なくとも1つの面が被覆材で被覆されているバックコンタクト型太陽電池モジュール用配線基板。
【請求項8】
前記基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、及びポリアミドイミドからなる群から選択される樹脂材料を含んで形成される請求項7に記載のバックコンタクト型太陽電池モジュール用配線基板。
【請求項9】
前記被覆材は、金属めっき、導電性接着材およびはんだからなる群から選択される材料を含んで形成される請求項7に記載のバックコンタクト型太陽電池モジュール用配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2011−129882(P2011−129882A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229199(P2010−229199)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】