説明

太陽電池モジュールのリサイクル方法

【課題】太陽電池素子を保護するガラス板に裏面保護材が接着された太陽電池モジュールにおいて、ガラス板から裏面保護材を分離させて、ガラス板をリサイクルに活用する。
【解決手段】ガラス材及び太陽電池素子を積層すると共に、所定の充填材により裏面保護材を接着してなる太陽電池モジュールのリサイクル方法であって、上記ガラス材及び太陽電池素子を破砕する破砕工程(S12)と、上記破砕されたガラス材及び太陽電池素子と接着する充填材を加熱して軟化させる軟化工程(S13)と、上記ガラス材及び太陽電池素子が破砕された太陽電池モジュールにおいて、上記軟化した充填材にブレードをあてがって上記裏面保護材を分離する分離工程(S14)と、上記裏面保護材を分離させたガラス材及び太陽電池素子を粉砕する粉砕工程(S16)と、を有する、ことを特徴とする太陽電池モジュールのリサイクル方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面保護材が取り付けられた太陽電池モジュールから裏面保護材を除去して、太陽電池モジュールをリサイクルする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する関心や政策等から、公共施設や一般家庭など、あらゆる場所で太陽電池の設置が進められている。太陽電池は、太陽光というクリーンエネルギーを利用するため、環境に対する負荷の低減に効果的である。
【0003】
しかしながら、耐用年数の経過や破損、あるいは買い替え等によって不要となった太陽電池の後処理について併せて考えなければ、環境保護も十分とはいえない。
即ち、太陽電池には、光電変換を実現する太陽電池素子や、当該太陽電池素子を保護するガラス板、各部材を接着等する充填材など、様々な材料が用いられており、これらの資源をできるだけリサイクルに活用することが重要である。
【0004】
この点、各材料のリサイクルに関連する技術について、特許文献1では、2枚のガラス板を合成樹脂製のフィルムによって接着してなる合わせガラスを、フィルムとガラスに分離し、ハンマークラッシャー等によりガラスを粉砕してリサイクルする技術が提案されている。
また、特許文献2では、廃ガラスのリサイクル方法として、ガラスを粉砕し、この粉砕物をアスファルト等の道路補修材に添加する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−248623号公報
【特許文献2】特開2009−126878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、太陽電池には、ガラス板の裏面にEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)やPVB(ポリビニルブチラール)等によって裏面保護材が接着されているため、このままではガラス板を粉砕しても、破片の回収が容易でなく、上記特許文献記載の技術を応用あるいは活用することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、太陽電池素子を保護するガラス板に裏面保護材が接着された太陽電池モジュールにおいて、ガラス板から裏面保護材を分離させて、ガラス板をリサイクルに活用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法は、ガラス材及び太陽電池素子を積層すると共に、所定の充填材により裏面保護材を接着してなる太陽電池モジュールのリサイクル方法であって、上記ガラス材及び太陽電池素子を破砕する破砕工程と、上記破砕されたガラス材及び太陽電池素子と接着する充填材を加熱して軟化させる軟化工程と、上記ガラス材及び太陽電池素子が破砕された太陽電池モジュールにおいて、上記軟化した充填材に金属製等のブレードをあてがって上記裏面保護材を分離する分離工程と、上記裏面保護材を分離させたガラス材及び太陽電池素子を粉砕する粉砕工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、上記ブレードは加熱されており、上記軟化工程と分離工程は、上記加熱されたブレードを上記充填材にあてがって、上記充填材を加熱して軟化させながら上記裏面保護材を分離する一体的な工程からなるものとしてもよい。
【0010】
また、上記軟化工程と分離工程は、上記太陽電池モジュールを載置する載置台を加熱することで上記充填材を軟化させながら、上記ブレードによって上記裏面保護材を分離させる一体的な工程からなるものとしてもよい。
【0011】
また、上記粉砕されたガラス材及び太陽電池素子を燃焼させる燃焼工程、をさらに有するものとしてもよい。
【0012】
また、上記太陽電池モジュールは、上記太陽電池素子と上記充填材とによって挟持された電極リボンを備え、上記電極リボンを加熱して当該電極リボンに接着する充填材を軟化させた上、上記太陽電池モジュールから当該電極リボンを取り除く電極リボン除去工程、をさらに有するものとしてもよい。
【0013】
また、上記破砕工程は、外周面上に破砕歯を備えたロールクラッシャーを使用するものとしてもよい。
【0014】
また、上記粉砕工程は、ボールミルを使用するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽電池素子を保護するガラス板に裏面保護材が接着された太陽電池モジュールにおいて、ガラス板から裏面保護材を分離させて、ガラス板をリサイクルに活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法において、適用対象となる太陽電池の構成の一例を示した図であり、(a)は平面図を、(b)は背面図を、(c)はA−A’断面図を示す。
【図2】本実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法において、適用対象となる太陽電池の構成の別の一例を示した図であり、(a)は平面図を、(b)は背面図を、(c)はB−B’断面図を示す。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法において、実行される一連の工程の流れを示した工程図である。
【図4】本実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法において、破砕工程の詳細を示した図であり、(a)は斜視図を、(b)は正面図を示す。
【図5】本実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法において、軟化工程の一例の詳細を示した図であり、(a)は斜視図を、(b)は正面図を示す。
【図6】本実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法において、分離工程の一例の詳細を示した図であり、(a)は斜視図を、(b)は正面図を示す。
【図7】本実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法において、分離工程の他の例の詳細を示した図であり、(a)は斜視図を、(b)は正面図を示す。
【図8】本実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法において、粉砕工程の一例の詳細であって、ボールミルの中身を示した透視図である。
【図9】本実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法において、粉砕工程の他の例の詳細であって、部分的にボールミルの中身を示した部分透視図である。
【図10】本発明の第二の実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法において、実行される一連の工程の流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法に適用可能な太陽電池モジュールの一例を図1に示す。本例は、いわゆる化合物系太陽電池モジュールである。
図1(a)に示されるとおり、太陽電池モジュール1は、サブモジュール10と、このサブモジュール10の端部を覆うフレーム11とからなる。
また、図1(b)に示されるとおり、太陽電池モジュール1の背面には、受光により発生した電力の取出口となる端子ボックス12、及び外部負荷へ電力を供給するための出力ケーブル13が取り付けられている。
【0018】
図1(c)は太陽電池モジュール1のA−A’断面を示している。
サブモジュール10は、カバーガラス101、太陽電池素子102が製膜されたガラス基板103、及び裏面保護材104を順次、充填材106によって一体的に接着してなり、いわゆる合せガラス構造となっている。
このサブモジュール10とフレーム11との間は、ブチルゴム等のシール材14によってシーリングされている。
また、太陽電池素子102上の電極に取り付けられた電極リボン105は、充填材106によってカバーガラス101と太陽電池素子102上の電極との間に挟持され、端子ボックス12内へ引き込まれ、さらに端子ボックス12内で出力ケーブル13と接続している。
【0019】
カバーガラス101は、透光性を備えつつ、太陽電池素子102を物理的な衝撃等から保護する。
太陽電池素子102は、受光によって発電する光電変換素子である。この太陽電池素子102は、CIS系化合物半導体薄膜であり、ガラス基板103上に製膜されて、サブストレート構造を構成している。
裏面保護材104は、外部から湿分が浸入するのを防ぐシートである。この裏面保護材104は例えば、フッ素系樹脂、PETやアルミニウム箔などを貼り合わせてなるフィルムにより構成することができ、透湿性が低く、高い強度を有する。
電極リボン105は、帯状の導線であり、銅等の導電性の金属よりなる。
充填材106は、カバーガラス101、太陽電池素子102が製膜されたガラス基板103、裏面保護材104を一体的に接着して積層させている。この充填材106には例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)が用いられる。
【0020】
また、本実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法に適用可能な太陽電池モジュールの別の一例を図2に示す。本例は、いわゆる結晶系太陽電池モジュールである。
図2(a)、(b)に示されるとおり、太陽電池モジュール2は、太陽電池モジュール1と同様に、サブモジュール20、フレーム21、端子ボックス22、及び出力ケーブル23を備える。
【0021】
図2(c)は太陽電池モジュール2のB−B’断面を示している。
サブモジュール20は、カバーガラス201、太陽電池素子202、及び裏面保護材203を順次、充填材205によって一体的に接着して構成されている。
このサブモジュール20とフレーム21との間は、ブチルゴム等のシール材24によってシーリングされている。
また、太陽電池素子202上の電極に取り付けられたリード線204は、端子ボックス22内へ引き込まれて出力ケーブル23と接続している。
なお、カバーガラス201、裏面保護材203、充填材205は夫々、図1において既述したカバーガラス101、裏面保護材104、充填材106と同様の構成からなる。
【0022】
太陽電池素子202は、受光によって発電する複数の単位セルを、インターコネクタにより直列に接続してなり、いわゆるセルストリングを構成している。単位セルは例えば、単結晶シリコンや多結晶シリコンにより構成される。
リード線204は、銅等の導電性の金属よりなる導線である。
【0023】
以上の通り、図1及び図2により、本発明に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法の適用対象となる太陽電池モジュール(1、2)を例示したが、本発明は、サブモジュール(10、20)が、カバーガラス(101、201)、太陽電池素子(102、202)、裏面保護材(104、203)を積層してなるものであれば適用可能である。
従って、太陽電池素子は上記のものに限らず、他のシリコン結晶、非晶質のアモルファスシリコン、あるいは他の化合物半導体薄膜等を用いたものでもよいし、積層構造についても、サブストレートあるいはスーパーストレートのいずれかに限られるといったこともない。
【実施例1】
【0024】
次に、本発明の第一の実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法の処理工程について説明する。なお、以下においては、図1により示した太陽電池モジュール1に適用した場合について説明するが、図2により示した太陽電池モジュール2についても同様に適用が可能である。
図3に示されるように、本実施形態に係る太陽電池モジュールリサイクル方法は、前処理工程(S11)、破砕工程(S12)、軟化工程(S13)、分離工程(S14)、電極リボン除去工程(S15)、粉砕工程(S16)、燃焼工程(S17)からなる。
【0025】
<前処理工程(S11)>
まず、前処理として、太陽電池モジュール1から、フレーム11、端子ボックス12、及び出力ケーブル13を取り外すと共に、シール材14を除去する。
これにより、太陽電池モジュール1からサブモジュール10が取り出される。
【0026】
<破砕工程(S12)>
続いて、カバーガラス101及び太陽電池素子102が製膜されたガラス基板103を破砕する。
この工程は、図4に示されるロールクラッシャー30により行なわれる。
ロールクラッシャー30は、前後に、被破砕物を搬送する搬送ローラー33を備え、搬送ローラー33によって搬送されてきた被破砕物をトップローラー31とボトムローラー32とによって破砕する。
【0027】
トップローラー31は、水平に軸支した駆動軸311に取り付けられ、その外周面には破砕歯群312が設けられている。破砕歯群312を構成する複数の破砕歯312aは、尖状の突起であり、尖端を外側に向けている。なお、この破砕歯312aは、その形状、大きさ、密度を変えることによって、被破砕物を破砕して生じる破砕片の大きさを調整することが出来る。
このトップローラー31は、電動機あるいは油圧モータ等を駆動源として、図示反時計方向に回転する。
【0028】
また、ボトムローラー32も水平に軸支した駆動軸321に取り付けられているが、その外周面は平坦である。なお、ボトムローラー32の外周面は、被破砕物との摩擦を大きくするために、適宜シリコン樹脂等でコーティングしてもよい。
このボトムローラー32は、電動機あるいは油圧モータ等を駆動源として、図示時計方向に回転する。
【0029】
そして、トップローラー31とボトムローラー32は、僅かなギャップを設けつつ、トップローラー31を上側、ボトムローラー32を下側にして、夫々の駆動軸311、321が互いに平行になるように配置されている。
なお、この一対のトップローラー31及びボトムローラー32の本数を増やして、作業性を上げてもよい。
【0030】
サブモジュール10は、裏面保護材104を下面、カバーガラス101、及び太陽電池素子102が製膜されたガラス基板103(以下、「カバーガラス101、及び太陽電池素子102が製膜されたガラス基板103」を「ガラス材100」という)を上面にした状態で、被破砕物として搬送ローラー33によって搬送される。そして、搬送されてきたサブモジュール10が、トップローラー31とボトムローラー32のギャップ間に送り出されると、ガラス材100が破砕される。
これにより、ガラス材100が破砕される一方、裏面保護材104は穴が空くことはあっても、全体としてはシート形状を維持したままとなっている。そして、この裏面保護材104とガラス材100とが充填材106によって接着しているため、破砕されたガラス材100は、細かく砕けつつも、裏面保護材104上に接着した状態となっており、この後に続く工程において、ガラス材100を裏面保護材104から分離しやすくする。
なお、本実施例においては、破砕工程にロールクラッシャーを用いたが、本発明はこれに限らず、ロールクラッシャーの代わりにハンマークラッシャーを用いてもよい。この場合、ハンマーの先端(太陽電池モジュールを破砕する部分)に、複数の尖状の突起を設け、この突起の密度および形状によって、ガラス材100の破砕の程度(破砕後のガラス材100の大きさ)を調整してもよい。
【0031】
<軟化工程(S13)>
続いて、充填材106を加熱して軟化させる。
この工程の一例は、図5に示されるように、破砕処理工程(S12)を経たサブモジュール10を搬送ローラー42に載せてヒーター41の下を通過させる。ヒーター41からは遠赤外線が輻射されており、ヒーター41からの遠赤外線の輻射を受けた充填材106は熱せられて軟化する。
なお、搬送ローラー41によるサブモジュール10の搬送は、裏面保護材104を下面、ガラス材100を上面にした状態で行われている。また、この軟化工程(S13)における加熱は、熱源としてハロゲンランプを用いてもよい。ハロゲンランプは、設定温度への到達時間が短いため、加熱時と非加熱時とでON−OFFを瞬時に切り替えることが可能となり、結果、抵抗加熱を用いた場合に比べ、消費電力を低減する効果を奏する。 こうしてガラス材100と裏面保護材104とを接着する充填材106が軟化することで、続く分離工程(S14)において、ガラス材100と裏面保護材104とが分離しやすくなる。
【0032】
なお、この軟化工程(S13)において、充填材106を軟化させるための加熱温度は、EVA等の充填材106を燃焼ないし炭化させない温度以下、具体的には100〜250℃、好ましくは130〜170℃である。
また、軟化工程(S13)における加熱方法はヒーター41による加熱に限らず、例えば、搬送ローラー42そのものを熱源とすべく発熱させ、この上に載置されているサブモジュール10を直に熱するものとしてもよい。
【0033】
<分離工程(S14)>
続いて、充填材106を軟化させたサブモジュール10を、ガラス材100と裏面保護材104とに分離する。
この工程の一例は、図6に示されるように、搬送ローラー52によって搬送されてきたサブモジュール10に対し、ガラス材100と裏面保護材104との間に刃先があてがわれるように、ブレード51が固定されている。
【0034】
ブレード51は金属製で、適宜、その表面に砥粒をメッキで固定するなどして、充填材106を削ぎやすくなっている。
【0035】
このブレード51が、サブモジュール10の搬送に伴って、軟化した充填材106を削ぐようにして裏面保護材104からガラス材100を剥がすと、破砕工程(S12)によって破砕されていたガラス材100は、細かくばらけた多数の破砕片100aとなる。なお、この際、吸引装置によって所定の容器内に破砕片100aを吸引して集めるようにするとよい。
【0036】
また、この分離工程(S14)の別の一例は、図7に示されるように、バキュームチャック61でサブモジュール10を吸引保持しながら、ガラス材100と裏面保護材104との間にブレード51の刃先をあてがって削ぐように進み入れてもよい。
【0037】
バキュームチャック61は、上面に多数のエアー吸引孔612を開口させたチャックテーブル611と、外部から供給される圧縮空気でエアー吸引孔612から空気を吸引する真空エジェクター613を備えている。そして、真空エジェクター613の吸引作用でチャックテーブル611の上面に載置されたサブモジュール10をチャックテーブル611上に吸引保持する。
【0038】
バキュームチャック61によりチャックテーブル611上に吸引保持されたサブモジュール10は、ブレード51の進行に伴って、ガラス材100と裏面保護材104とに分離される。
【0039】
なお、このバキュームチャック61を用いた分離工程(S14)においては、ブレード51を移動させてガラス材100と裏面保護材104とを分離させたが、これに限らず、バキュームチャック61をブレード51側に移動させて、ガラス材100と裏面保護材104とを分離させるようにしてもよい。
また、サブモジュール10の保持の仕方はバキュームチャック61に限られるものではなく、例えば、サブモジュール10の先端部あるいは四隅を所定の保持具で挟んで保持するようにしてもよい。
また、この例においても、ブレード51によってガラス材100と裏面保護材104とを分離させる際、吸引装置によって所定の容器内に破砕片100aを吸引して集めるようにするとよい。
【0040】
<電極リボン除去工程(S15)>
続いて、破砕片100aの中から電極リボン105を除去する。なお、この工程は任意の工程であり、ガラス材100のリサイクルにおいて、電極リボン105が混じっていても問題とならない場合には、省いてもよい。
電極リボン105の除去は、破砕片100aの中から手作業によって分別して取り除く。
また、充填材106によって電極リボン105に接着した破砕片100aについては、100℃から150℃程度に加熱して、電極リボン105と破砕片100aとを接着する充填材106を改めて軟化させた上、電極リボン105から剥ぎ取るようにしてもよい。
【0041】
<粉砕工程(S16)>
続いて、破砕片100aをさらに細かく粉砕する。
この工程は例えば、図8に示されるように、ボールミル71によって行なわれる。
【0042】
ボールミル71は、金属製の円筒形の回転容器711内に、粉砕媒体となるステンレス鋼球等の球状のボール712を多数保持している。そして、回転容器711内に投入された被粉砕物と共に軸心周りに一定速度で回転し、ボール712の落下や転動による衝撃によって、被粉砕物を粉砕する。
【0043】
回転容器711内に、被粉砕物となる破砕片100aと、粉砕媒体であるボール712を投入する。そして、回転容器711を軸心周りに一定速度で回転させることで、破砕片100aがより細かく粉砕される。
【0044】
なお、この粉砕工程(S16)は、図9に示されるボールミル81によって行うものとしてもよい。
このボールミル81は、金属製の円筒形の回転容器811で、容器全体が数マイクロメートルオーダーのメッシュになっている。このボールミル81もボールミル71と同様、ステンレス鋼球等の球状のボール812を多数保持している。そして、回転容器811内に投入された被粉砕物と共に軸心周りに一定速度で回転すると、ボール812の落下や転動による衝撃によって被粉砕物を粉砕しつつ、粉砕した破砕片100aをメッシュによって分級する。
なお、ボールミル81は、粉砕した破砕片100aをメッシュによって分級するが、これに限らず、容器の壁に所定の径の穴を多数設けて分級可能にしてもよい。
また、このメッシュのボールミル81を用いて、粉砕工程(S16)と電極リボン除去工程(S15)を同時に行うようにしてもよい。即ち、電極リボン105のついたままの破砕片100aをボールミル81に投入し、破砕片100aを粉砕しつつ、メッシュを通過できなかった電極リボン105を取り除けばよい。
【0045】
<燃焼工程(S17)>
続いて、粉砕した破砕片100aを燃焼させる。なお、この工程は任意の工程であり、ガラス材100のリサイクルにおいて、充填材106が混じっていても問題とならない場合には、省いてもよい。
この燃焼工程(S17)は、所定の燃焼炉等に、粉砕した破砕片100aを投入して燃焼させる。450℃以上で十分に燃焼させて、充填材106を熱分解する。
【0046】
なお、粉砕工程(S16)と燃焼工程(S17)は、何度か交互に繰り返し行ってもよい。粉砕と燃焼を交互に繰り返すことで、充填材106がより確実に取り除かれ、破砕片100aもより細かく粉砕される。
【0047】
以上の工程により、カバーガラス101やガラス基板103といったガラス材に裏面保護材104が接着された太陽電池モジュール1から裏面保護材104を分離し、道路の補修材等としてリサイクルに活用可能な、ガラス材の粉砕物が得られる。
【0048】
なお、本例においては、軟化工程(S13)と分離工程(S14)とを別々に設けたが、これに限らず、一体的な工程として処理するものとしてもよい。
この場合には例えば、ブレード51自体を加熱させ、当該加熱したブレード51を、ガラス材100と裏面保護材104との間の充填材106にあてがう。そして、ブレード51によって充填材106を軟化させながら、サブモジュール10をガラス材100と裏面保護材104とに分離させる。
【0049】
また、軟化工程(S13)と分離工程(S14)とを一体的な工程とする別の方法によれば、図6に示される搬送ローラー52や、図7に示されるバキュームチャック61のチャックテーブル611等、サブモジュール10を載置する載置台を加熱させる。そして、当該載置台からの熱によって充填材106を軟化させながら、ブレード51によって、サブモジュール10をガラス材100と裏面保護材104とに分離させる。
このような方法によれば、軟化工程(S13)と分離工程(S14)とを同時に行うことができ、作業が簡便になると共に、一連の工程にかかる時間を短縮することができる。また、充填材106を軟化させるためだけの装置構成を別途設ける必要がなくなり、装置構成が簡略化される。
【0050】
また、本例においては、分離工程(S14)と粉砕工程(S16)の間に電極リボン除去工程(S15)を設けたが、これに限らず、破砕工程(S12)と軟化工程(S13)との間、あるいは軟化工程(S13)と分離工程(S14)との間に設けてもよい。
電極リボン除去工程(S15)を、分離工程(S14)と粉砕工程(S16)の間に設ける場合には、例えば、電極リボン105を加熱することにより、電極リボン105に接着する充填材106を加熱して軟化させ、サブモジュール10から電極リボン105を引き抜く。
また、軟化工程(S13)と分離工程(S14)との間に設ける場合には、軟化工程(S13)によって充填材106が軟化した状態で、サブモジュール10から電極リボン105を引き抜く。
【0051】
また、本例において、搬送ローラー33、42、52による搬送は、適宜邪魔板等を設けてスピードをコントロールし、破砕、軟化、あるいは分離にかける時間を調整してもよい。また、搬送そのものについても、搬送ローラー33、42、52によらず、所定の台の上を滑らせるようにしてもよく、特にその方式は限定されない。
【実施例2】
【0052】
次に、本発明の第二の実施形態に係る太陽電池モジュールのリサイクル方法の処理工程について説明する。なお、第一の実施形態におけるのと同様、以下においては、図1により示した太陽電池モジュール1に適用した場合について説明するが、図2により示した太陽電池モジュール2についても同様に適用が可能である。
図10に示されるように、本実施形態に係る太陽電池モジュールリサイクル方法は、前処理工程(S21)、破砕工程(S22)、軟化工程(S23)、分離工程(S24)、予備粉砕工程(S25)、電極リボン除去工程(S26)、本粉砕工程(S27)、燃焼工程(S28)からなる。
なお、前処理工程(S21)、破砕工程(S22)、軟化工程(S23)、分離工程(S24)、燃焼工程(S28)は夫々、第一の実施形態における前処理工程(S11)、破砕工程(S12)、軟化工程(S13)、分離工程(S14)、燃焼工程(S17)と同様である。
【0053】
本例においては、分離工程(S24)と電極リボン除去工程(S26)との間に、予備粉砕工程(S25)を設ける。予備粉砕工程(S25)では、破砕片100aを一旦ある程度細かく粉砕する。
【0054】
それから、電極リボン除去工程(S26)において、ある程度細かく粉砕された破砕片100aを所定の大きさのメッシュが形成された篩にかけ、破砕片100aのみを篩い落とすことにより、破砕片100aと電極リボン105とを篩い分けて、電極リボン105を取り除く。
【0055】
それから、本粉砕工程(S27)に移り、改めて電極リボン105が取り除かれた破砕片100aをより細かく粉砕する。
なお、予備粉砕工程(S25)及び本粉砕工程(S27)における粉砕は、第一の実施形態と同様に、ボールミルを使うとよい。
また、本実施形態においても、第一の実施形態と同様、本粉砕工程(S27)と燃焼工程(S28)は、何度か交互に繰り返し行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、2 太陽電池モジュール
10、20 サブモジュール
11、21 フレーム
12、22 端子ボックス
13、23 出力ケーブル
14、24 シール材
100 ガラス材
100a 破砕片
101、201 カバーガラス
102、202 太陽電池素子
103 ガラス基板
104、203 裏面保護材
105 電極リボン
106、205 充填材
204 リード線
30 ロールクラッシャー
31 トップローラー
311、321 駆動軸
312 破砕歯群
312a 破砕歯
32 ボトムローラー
33、42、52 搬送ローラー
41 ヒーター
51 ブレード
61 バキュームチャック
611 チャックテーブル
612 エアー吸引孔
613 真空エジェクター
71、81 ボールミル
711、811 回転容器
712、812 ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス材及び太陽電池素子を積層すると共に、所定の充填材により裏面保護材を接着してなる太陽電池モジュールのリサイクル方法であって、
上記ガラス材及び太陽電池素子を破砕する破砕工程と、
上記破砕されたガラス材及び太陽電池素子と接着する充填材を加熱して軟化させる軟化工程と、
上記ガラス材及び太陽電池素子が破砕された太陽電池モジュールにおいて、上記軟化した充填材にブレードをあてがって上記裏面保護材を分離する分離工程と、
上記裏面保護材を分離させたガラス材及び太陽電池素子を粉砕する粉砕工程と、を有する、
ことを特徴とする太陽電池モジュールのリサイクル方法。
【請求項2】
上記ブレードは加熱されており、
上記軟化工程と分離工程は、上記加熱されたブレードを上記充填材にあてがって、上記充填材を加熱して軟化させながら上記裏面保護材を分離する一体的な工程からなる、
請求項1記載の太陽電池モジュールのリサイクル方法。
【請求項3】
上記軟化工程と分離工程は、上記太陽電池モジュールを載置する載置台を加熱することで上記充填材を軟化させながら、上記ブレードによって上記裏面保護材を分離させる一体的な工程からなる、
請求項1記載の太陽電池モジュールのリサイクル方法。
【請求項4】
上記粉砕されたガラス材及び太陽電池素子を燃焼させる燃焼工程、をさらに有する、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の太陽電池モジュールのリサイクル方法。
【請求項5】
上記太陽電池モジュールは、上記太陽電池素子と上記充填材とによって挟持された電極リボンを備え、
上記電極リボンを加熱して当該電極リボンに接着する充填材を軟化させた上、上記太陽電池モジュールから当該電極リボンを取り除く電極リボン除去工程、をさらに有する、
請求項1乃至4いずれかの項に記載の太陽電池モジュールのリサイクル方法。
【請求項6】
上記破砕工程は、外周面上に破砕歯を備えたロールクラッシャーを使用する、
請求項1乃至5いずれかの項に記載の太陽電池モジュールのリサイクル方法。
【請求項7】
上記粉砕工程は、ボールミルを使用する、
請求項1乃至6いずれかの項に記載の太陽電池モジュールのリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−173099(P2011−173099A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40776(P2010−40776)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】