説明

太陽電池モジュールの耐久性試験装置

【課題】
太陽電池モジュールの機械的強度や耐久性、モジュールを枠体や支持金具を用いて屋根に取付けた実際の使用状態に近い環境での耐久性について自動的に試験できる太陽電池モジュールの耐久性試験装置を提供する。
【解決手段】
シール部5を除き周囲を剛性壁で囲まれた第1圧力室6と第2圧力室7とを備え、第1圧力室と第2圧力室は、一方の圧力室を構成する剛性壁に支持手段2にて取付けた太陽電池モジュール1と、圧力室を構成する剛性壁と太陽電池モジュールの周縁部間を気密状態に塞ぐシール部とで区画され、第1圧力室と第2圧力室とにそれぞれ接続された第1給排気手段8と第2給排気手段9とにより、第1圧力室と第2圧力室とを所定圧力に加減圧することで太陽電池モジュールの表裏両面に圧力差を発生させ、実環境で太陽電池モジュールに作用する風圧を再現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの耐久性試験装置に係わり、更に詳しくは屋根置き型の設置工法で取付けた状態のソーラーパネルの風、雪、静荷重又は氷荷重に対する耐久性を試験するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、屋根に太陽電池モジュールを設置する場合、太陽電池モジュールの温度上昇を抑えるためと施工性を高めるために、屋根と太陽電池の間に5〜10cm程度の間隔を設けて施工する。最近の屋根は、野地板の上面に防水ゴムシートを施設し、その上にカラーベスト等の屋根材を敷設した構造が一般的である。日本瓦の屋根は、古くは野地板の上面に下葺き材を引き、その上に土と瓦を密着させて固定する土葺き工法のみであったが、最近では耐震性を高めるために屋根の軽量化を図る目的で、土を使用せず、その代わり瓦桟木を野地板に打ち付け、瓦の裏に設けた引っ掛け爪を瓦桟木に引っ掛けるいわゆる引掛け桟瓦葺き工法が多く採用されている。
【0003】
このような屋根に太陽電池モジュールを設置するには、屋根材を残したまま、所定間隔に長尺の縦桟若しくは固定金具を、屋根材を貫通させて野地板にネジ止めし、縦桟部材若しくは固定金具に横桟部材を一定間隔毎に横設し、太陽電池モジュールの周囲に設けた枠体を横桟部材に取付ける構造が一般的である。
【0004】
例えば、特許文献1には、太陽電池モジュール本体と、この太陽電池モジュール本体の対向する2辺に設けられた第1枠体及び第2枠体とを備える太陽電池モジュールの取付け構造において、複数の太陽電池モジュールをそれぞれの第1枠体及び第2枠体が相互に隣接する様に屋根上に配列しており、前記第1枠体の上側部位には、太陽電池モジュールを屋根上に固定するための固定部を設け、前記第2枠体の下側部位には、太陽電池モジュールを屋根上に係止するための係止部を設け、相互に隣接する各太陽電池モジュールの前記第1枠体及び前記第2枠体間には、屋根上に固定された凸型部材を配置し、前記第1枠体を前記凸型部材の一側面に配置し、前記第2枠体を前記凸型部材の上面に配置して、前記第1枠体及び前記第2枠体間に段差を形成し、前記第1枠体の固定部及び前記第2枠体の係止部を共通の押え部材により前記凸型部材に固定もしくは係止した太陽電池モジュールの取付け構造が開示されている。ここで、太陽電池モジュール本体の左右両側に第3枠体及び第4枠体とを備え、複数の太陽電池モジュールをそれぞれの第3枠体及び第4枠体が相互に隣接する様に屋根上に配列し、前記第3枠体及び前記第4枠体の相互に対向する部位にそれぞれの溝を形成し、前記第3枠体の溝及び前記第4枠体の溝にシール部材を挿入している。
【0005】
ところで、太陽電池モジュールの耐久性試験として国際規格のIEC 61646 機械的荷重試験がある。このIEC規格の試験方法は、次のように定められている。正面を上向き、下向きに取付けられるような構造で、モジュールを取付ける場合、固定点間の距離が最大となるような最悪の場合を用いる。荷重は、正面に2400Pa相当の荷重を均一に徐々に加え、この荷重を1時間維持する。剛性構造体からモジュールを取り外さずに、同じ荷重をモジュールの背面に加える。加圧ステップは、1時間荷重を3サイクル繰り返す。雪・氷の重い堆積に対するモジュールの耐久力を確認する場合は、この試験中にモジュールの正面に加える荷重を2400Paから5400Paに引き上げる。というものである。
【0006】
即ち、IEC規格の試験方法は、太陽電池モジュールを垂直にして剛性構造体に取付け、太陽電池モジュールの正面と背面から機械的に荷重を加えて行うので、実際の屋根に設置した太陽電池モジュールとは使用形態が異なり、使用環境を再現したとは言い難い。その上、屋根に太陽電池モジュールを取付けるための枠体や支持金具の耐久性を試験することもできない。
【0007】
しかし、太陽電池モジュールの電気特性を試験するための試験方法や試験装置は各種提供されているものの、太陽電池モジュールの機械的強度や耐久性、太陽電池モジュールを枠体や支持金具を用いて屋根に取付けた実際の使用状態に近い環境での耐久性について試験するための試験方法や試験装置は未だ提供されていない。従来は、共通の耐久性試験方法や装置がなく、太陽電池モジュール製造会社や住宅施工会社等がそれぞれ独自に試験を行っていたので、客観性がなく、また他社製品を比較できないといった課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−231514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、太陽電池モジュールの機械的強度や耐久性、太陽電池モジュールを枠体や支持金具を用いて屋根に取付けた実際の使用状態に近い環境での耐久性について自動的に試験することが可能な太陽電池モジュールの耐久性試験装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の課題解決のために、シール部を除き周囲を実質的に容量変化を生じさせない剛性壁で囲まれた第1圧力室と第2圧力室とを備え、該第1圧力室と第2圧力室は、一方の圧力室を構成する剛性壁に支持手段にて取付けた太陽電池モジュールと、圧力室を構成する剛性壁と前記太陽電池モジュールの周縁部間を気密状態に塞ぐ前記シール部とで区画され、前記第1圧力室と第2圧力室とにそれぞれ接続された第1給排気手段と第2給排気手段とにより、第1圧力室と第2圧力室とを所定圧力に加減圧することで前記太陽電池モジュールの表裏両面に圧力差を発生させ、実環境で太陽電池モジュールに作用する風圧を再現することが可能な太陽電池モジュールの耐久性試験装置を構成した(請求項1)。
【0011】
ここで、前記支持手段として、前記太陽電池モジュールを屋根等の被取付部に実際に取付ける枠体若しくは支持金具を用いてなるのである(請求項2)。
【0012】
そして、前記シール部は、前記太陽電池モジュールの変形を拘束しない可撓性を備えていることが好ましい(請求項3)。
【0013】
また、前記第1圧力室と第2圧力室の一方の圧力室内に、前記太陽電池モジュールの変形を計測する接触式又は非接触式の変位計を設けてなることがより好ましい(請求項4)。
【0014】
更に、複数の前記太陽電池モジュールを、前記支持手段を用いて縦横に実施工するとともに、各太陽電池モジュールの周縁部を前記シール部でそれぞれ気密状態に塞いで複数の前記第1圧力室と、それ以外を一つの前記第2圧力室とし、複数の前記第1圧力室にそれぞれ第1給排気手段を接続してなることがより好ましい(請求項5)。
【0015】
具体的には、底面が剛性の高い設置面とし、その周囲に側壁を立ち上げた上方解放したチャンバーと、該チャンバーの開口部を気密状態で塞ぐカバー体とを開閉可能に設け、前記チャンバーの設置面に前記支持手段にて前記太陽電池モジュールを取付けるとともに、その内方の該太陽電池モジュールの周縁部と前記設置面との間を前記シール部で気密状態に塞ぎ、前記設置面と周囲のシール部と太陽電池モジュールの裏面とで前記第1圧力室を構成し、前記チャンバーとカバー体とで形成される残余の空間を前記第2圧力室としてなるのである(請求項6)。
【0016】
更に、前記チャンバーの設置面の一部に、少なくとも野地板と屋根材とからなる模造屋根を構築し、該模造屋根の上に前記支持手段にて単又は複数の前記太陽電池モジュールを実施工するとともに、その内方の該太陽電池モジュールの周縁部と前記模造屋根との間を前記シール部で気密状態に塞ぎ、更に前記模造屋根の周縁部に位置する前記シール部から該模造屋根の端部を通り前記設置面に至るまで気密シートで塞ぎ、前記模造屋根と周囲のシール部と太陽電池モジュールの裏面とで前記第1圧力室を構成し、前記気密シートを剛性壁の一部として前記チャンバーとカバー体とで形成される残余の空間を前記第2圧力室としてなることが実環境により近い条件で耐久性試験が行えるのである(請求項7)。
【0017】
そして、前記第2圧力室の内部であって前記チャンバーの両側壁間に渡設したトラバースに、前記太陽電池モジュールの変形を計測する接触式又は非接触式の変位計を設けてなることがより好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0018】
以上にしてなる本発明の太陽電池モジュールの耐久性試験装置によれば、第1圧力室と第2圧力室との境界に太陽電池モジュールを支持手段で設け、該太陽電池モジュールの周縁部をシール部で気密状態に塞いでいるので、前記第1圧力室と第2圧力室とにそれぞれ接続された第1給排気手段と第2給排気手段とにより、第1圧力室と第2圧力室とを所定圧力に加減圧することで前記太陽電池モジュールの表裏両面に圧力差を発生させ、実環境に発生する静圧を正圧(モジュールを屋根側へ押す方向の圧力)から負圧(モジュールを屋根から引き離す方向の圧力)まで再現することができ、更に第1圧力室と第2圧力室の圧力を急激に変化させることにより時々刻々変化する動圧や脈動を再現することができ、太陽電池モジュールに実環境で作用する風圧を与えて耐久性を試験することができる。また、第1圧力室と第2圧力室の圧力差を大きくして、太陽電池モジュールを取付けたまま、破壊するまで試験することができる。ここで、太陽電池モジュールは圧力室内に収容しているので、太陽電池モジュールが破壊しても破片が外部に飛び散らないので安全である。
【0019】
また、支持手段として、太陽電池モジュールを屋根等の被取付部に実際に取付ける枠体若しくは支持金具を用いることにより、太陽電池モジュール自体の耐久性試験に加えて太陽電池モジュールを屋根に支持する支持手段とモジュールとの連結部の耐久性試験を行うことができる。
【0020】
そして、圧力室を構成する剛性壁と前記太陽電池モジュールの周縁部間を気密状態に塞ぐシール部は、太陽電池モジュールの変形を拘束しない可撓性を備えているので、太陽電池モジュールに加わる風圧を支持手段のみで受けることができ、支持手段の耐久性試験を行うことができる。
【0021】
更に、複数の太陽電池モジュールを、支持手段を用いて縦横に実施工するとともに、各太陽電池モジュールの周縁部を前記シール部でそれぞれ気密状態に塞いで複数の前記第1圧力室と、それ以外を一つの前記第2圧力室とし、複数の前記第1圧力室にそれぞれ第1給排気手段を接続してなることにより、屋根に複数の太陽電池モジュールを施工した場合を再現し、太陽電池モジュール同士の接合部も含めて耐久性試験を行うことができる。
【0022】
具体的な太陽電池モジュールの耐久性試験装置は、底面が剛性の高い設置面とし、その周囲に側壁を立ち上げた上方解放したチャンバーと、該チャンバーの開口部を気密状態で塞ぐカバー体とを開閉可能に設け、前記チャンバーの設置面に前記支持手段にて前記太陽電池モジュールを取付けるとともに、その内方の該太陽電池モジュールの周縁部と前記設置面との間を前記シール部で気密状態に塞ぎ、前記設置面と周囲のシール部と太陽電池モジュールの裏面とで前記第1圧力室を構成し、前記チャンバーとカバー体とで形成される残余の空間を前記第2圧力室としてなるので、カバー体を開いてチャンバーの上方を開放した状態で、太陽電池モジュールを支持手段を用いてチャンバーの設置面に取付け、若しくは取外すことができ、準備、撤去作業が容易に行える。また、太陽電池モジュールの大きさや形が異なっていても、設置面に対する支持手段とシール部の取付位置が変わるだけであり、汎用性の高い装置となる。
【0023】
更に、前記チャンバーの設置面の一部に、少なくとも野地板と屋根材とからなる模造屋根を構築し、該模造屋根の上に前記支持手段にて単又は複数の前記太陽電池モジュールを実施工するとともに、その内方の該太陽電池モジュールの周縁部と前記模造屋根との間を前記シール部で気密状態に塞ぎ、更に前記模造屋根の周縁部に位置する前記シール部から該模造屋根の端部を通り前記設置面に至るまで気密シートで塞ぎ、前記模造屋根と周囲のシール部と太陽電池モジュールの裏面とで前記第1圧力室を構成し、前記気密シートを剛性壁の一部として前記チャンバーとカバー体とで形成される残余の空間を前記第2圧力室としてなることにより、実環境により近い条件で耐久性試験を行うことができ、太陽電池モジュールを屋根に実際に取付ける支持手段を用いて取付けることで、従来は困難であった支持手段と屋根の連結部に対する耐久性試験も行うことができる。
【0024】
そして、前記第2圧力室の内部であって前記チャンバーの両側壁間に渡設したトラバースに、前記太陽電池モジュールの変形を計測する接触式又は非接触式の変位計を設けてなることにより、チャンバー内部の圧力変化に殆ど影響されずに太陽電池モジュールの変形を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの耐久性試験装置の全体平面図である。
【図2】同じく耐久性試験装置の正面図である。
【図3】太陽電池モジュールをチャンバー内に装着し、耐久性試験を行う状態を示す装置の全体断面図である。
【図4】チャンバーとカバー体のシール部分の構造を示す拡大部分断面図である。
【図5】太陽電池モジュールを支持手段にてチャンバーの設置面に取付けた端部分の拡大部分断面図である。
【図6】太陽電池モジュールを支持手段にてチャンバーの設置面に取付けた中央部分の拡大部分断面図である。
【図7】複数の太陽電池モジュールをアレイ状に装着する場合で、専用のシール構造を用いて支持手段にてチャンバーの設置面に取付けた状態の全体断面図である。
【図8】同じく太陽電池モジュール同士の接合部分の拡大部分断面図である。
【図9】チャンバー内に設置した模造屋根に複数の太陽電池モジュールを支持手段にてアレイ状に装着した実環境に近い状態で耐久性試験を行う装置の全体断面図である。
【図10】同じく模造屋根に太陽電池モジュールを支持手段にて取付けた端部分の拡大部分断面図である。
【図11】同じく模造屋根に太陽電池モジュールを支持手段にて取付けた中央部分の拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1〜図6は本発明の太陽電池モジュールの耐久性試験装置の実施形態を示し、図中符号1は太陽電池モジュール、2は支持手段、3はチャンバー、4はカバー体、5はシール部、6は第1圧力室、7は第2圧力室、8は第1給排気手段、9は第2給排気手段をそれぞれ示している。
【0027】
本発明の太陽電池モジュールの耐久性試験装置は、シール部5を除き周囲を実質的に容量変化を生じさせない剛性壁で囲まれた第1圧力室6と第2圧力室7とを備え、該第1圧力室6と第2圧力室7は、一方の圧力室を構成する剛性壁に支持手段2にて取付けた太陽電池モジュール1と、圧力室を構成する剛性壁と前記太陽電池モジュール1の周縁部間を気密状態に塞ぐ前記シール部5とで区画され、前記第1圧力室6と第2圧力室7とにそれぞれ接続された第1給排気手段8と第2給排気手段9とにより、第1圧力室6と第2圧力室7とを所定圧力に加減圧することで前記太陽電池モジュール1の表裏両面に圧力差を発生させ、実環境で太陽電池モジュール1に作用する風圧を再現するものである。
【0028】
ここで、前記支持手段2として、前記太陽電池モジュール1を屋根等の被取付部に実際に取付ける枠体若しくは支持金具を用い、支持手段2の耐久性試験も行うのである。そのため、前記シール部5は、前記太陽電池モジュール1の変形を拘束しない可撓性を備えているのである。耐久性試験中の太陽電池モジュール1の変形を計測するために、前記第1圧力室6と第2圧力室7の一方の圧力室内に、接触式又は非接触式の変位計10を設けている。それ以外にも圧力計を始めとして、温度計等を適所に配置している。
【0029】
更に詳しくは、底面が剛性の高い設置面11とし、その周囲に側壁12を立ち上げた上方解放したチャンバー3と、該チャンバー3の開口部を気密状態で塞ぐカバー体4とを開閉可能に設け、前記チャンバー3の設置面11に前記支持手段2,…にて前記太陽電池モジュール1,…を取付けるとともに、その内方の該太陽電池モジュール1の周縁部と前記設置面11との間を前記シール部5,…で気密状態に塞ぎ、前記設置面11と周囲のシール部5,…と太陽電池モジュール1の裏面とで前記第1圧力室6を構成し、前記チャンバー3とカバー体4とで形成される残余の空間を前記第2圧力室7としている。
【0030】
前記チャンバー3は、架台13の上部に固定的に設けられ、上方開口部の周囲に前記カバー体4に対する水平シール面を備えた支持枠14が該チャンバー3の補強を兼ねて固定され、更に前記架台13から側壁12の外側に固着して上方に延びた縦補強杆15,…の上端に連結されている。前記チャンバー3の下方の架台13の内部には、配管が施されている。本実施形態では、前記チャンバー3は、最大1200mm×800mmの大きさの太陽電池モジュール1を4枚縦横に並べて設置できる大きさに設定し、各太陽電池モジュール1に対して一つの第1圧力室6が対応するので、前記設置面11の中央部で各第1圧力室6に対応する位置にそれぞれ前記第1給排気手段8,…の第1給排気口16,…を設けている。また、第2圧力室7はチャンバー3の残余の空間になるので、前記シール部5よりも外側の設置面11のコーナー部に第2給排気手段9の第2給排気口17を設けている。
【0031】
図中符号18は、ブロワーや圧力調整弁を内蔵した給排気装置であり、太陽電池モジュール1に最大1t/m2の静圧を発生させる能力のものである。この給排気装置18は、前記チャンバー3に設けた各種センサーの信号をフィードバックしてコンピュータ制御され、所望の風圧パターンで耐久性試験を自動的に行えるようになっている。本発明の耐久性試験装置の能力は、第1圧力室6と第2圧力室7とも静圧力として−10,000Pa〜+10,000Paの範囲に設定可能でありまた脈動圧力として平均圧力が±960Paで、振幅圧力が±500Pa、周期2秒に設定可能である。
【0032】
前記架台13の両側には側方へ平行にレール19,19が施設されており、該レール19,19上に門型架台20が移動可能に載置され、該門型架台20の上部に固定された前記カバー体4を前記チャンバー3の上位に移動させて開口部を閉止することができ、また側方へ移動させてチャンバー3の開口部を全開できるようになっている。尚、前記チャンバー3内での作業を容易に行えるように、前記カバー体4を側方へ移動させた際には、前記架台13と門型架台20との間には、作業者が入るのに十分な通路21を確保できるようになっている。
【0033】
前記カバー体4は、図3及び図4に示すように、閉止時に前記チャンバー3の支持枠14に面する周囲にエアーシールパッキン22を設けるとともに、前記支持枠14の下面に係止し得る多数の係止アーム23,…を前記レール19側の両対向辺側と後進側の一辺に設け、更に前進側の一辺には該カバー体4の周囲に設けた補強枠25を上方から貫通させた固定ボルト26を、スペーサー27を介在させて前記支持枠14に螺合するようにしている。そして、前記カバー体4をレール19,19に沿って移動させてチャンバー3の上位に位置させると同時に、前記係止アーム23,…を前記支持枠14の下面に係止し、それから前記固定ボルト26,…を支持枠14に螺合し、その状態で前記エアーシールパッキン22に門型架台20に設置したコンプレッサー24から圧縮空気を送り、該エアーシールパッキン22を膨張させて前記支持枠14のシール面に圧接して気密状態に塞ぐのである。また、前記カバー体4には、前記チャンバー3内を観察できるように、合せガラスからなる観察窓28を8箇所設けている。
【0034】
そして、図2及び図3に示すように、前記第2圧力室7の内部であって前記チャンバー3の両側壁12,12間に渡設したトラバース29に、前記太陽電池モジュール1の変形を計測する接触式又は非接触式の変位計10を設けている。ここで、前記トラバース29は、側壁12に沿って移動可能となっている。図示した変位計10は機械的な接触式のものであるが、レーザー変移計等の非接触式のものでもよい。
【0035】
更に詳しくは、前記チャンバー3の設置面11は、各種寸法の太陽電池モジュール1をそれに応じた支持手段2で取付けることができるようにすることと、設置面11に各種部材を取付けた際の気密性を確保するための工夫が施されている。つまり、図3、図5及び図6に示すように、前記設置面11は、大きな圧力に耐えるように厚さ19mmの鋼製の底面板30とその上面に厚さ12mmのゴムシート31を積層し、前記底面板30には例えば100mm間隔の格子位置に螺孔32,…を形成し、全ての螺孔32にはボルト33を螺合して気密状態を保っている。前記ゴムシート31には、前記螺孔32と対応する位置にボルト33の頭部が埋没する円孔34が形成されている。
【0036】
そして、前記シール部5を取付ける場合には、該当する箇所のボルト33を外し、長尺の取付ボルト35と交換し、前記シール部5に設けた水平な固定板36を前記ゴムシート31の上に置いて、前記円孔34に円筒状のスペーサー37を嵌めて前記取付ボルト35を螺孔32に螺合して取付ける。この場合、前記ゴムシート31が気密性を維持するシールとなり、前記スペーサー37によって該ゴムシート31が過度に押し潰されないようにして取付強度を確保するのである。前記シール部5は、上方に開放した断面略コ字形のチャンネル部材38の溝内にシリコンパッキン39を嵌着し、前記チャンネル部材38の側面にアングル材を溶接した構造であり、該アングル材の水平板が前記固定板36となっている。
【0037】
前記支持手段2は、パネル製造会社に応じて異なるので、適宜な図示しない補助手段を介して前記設置面11に取付ける。その場合、補助手段は前記固定板36と同様な固定板を設け、取付ボルト35で螺孔32に螺合して取付けるものとする。補助手段に対する支持手段2の取付構造は、実際に屋根に施工する際の取付構造と共通である。図示した支持手段2は、アルミニウムの押出し型材で作製したベース枠体40と押え部材41,42とからなっている。太陽電池モジュール1の端部を支持する前記押え部材41は断面略L字形となっており、太陽電池モジュール1,1同士を連結する中間部を支持する前記押え部材42は平板形となっている。前記ベース枠体40は前述のように設置面11に取付け、その内側に沿って前記シール部5を環状に取付け、そして上方から太陽電池モジュール1の周囲を保持する枠体43を前記ベース枠体40の上に載置し、前記押え部材41又は押え部材42を前記ベース枠体40にボルト44で締め付けることにより、前記枠体43の上面を押さえ込んで支持する。この際に、前記シール部5のシリコンパッキン39の上端は太陽電池モジュール1の裏面周縁部に接触し、気密状態に維持するのである。この際、前記太陽電池モジュール1が上下に変形した場合、前記シリコンパッキン39も気密状態性を維持しながらそれに応じて容易に変形するようになっている。しかし、第1圧力室6と第2圧力室7の圧力差によっても気密状態を維持できるようにシリコンパッキン39の変形を抑えなければならない。そのため、前記シリコンパッキン39をチャンネル部材38に嵌合し、上下方向に変形しやすく、横方向に変形し難い構造としている。
【0038】
前述の実施形態は、太陽電池モジュール1を単体で支持手段2を用いて設置面11に取付け、その内方の周縁部に前記シール部5を直接設置面11に取付けて耐久性試験を行うことも可能であり、また太陽電池モジュール1の枚数を増やして取付け、あるいは異なる大きさの太陽電池モジュール1を取付けて同時に耐久性試験を行うことができる。尚、前記第1給排気口16,…の内、使用しないものは蓋をする。
【0039】
それに対して、図7及び図8に示した実施形態は、定尺の4枚の太陽電池モジュール1,…を縦横にアレイ状に取付けて耐久性試験を行うのに適した構造となっている。本実施形態でも前記支持手段2とシール部5は前述の実施形態と共通である。本実施形態は、平板状の二種類の取付専用冶具45,46を用い、太陽電池モジュール1の端部側には幅の狭い取付専用冶具45を、中央部に幅の広い取付専用冶具46を用い、その上に支持手段2を取付けるとともに、シール部5を載置して固定板36と同時に設置面11に取付ボルト35で螺着する。その他の構造は、前記同様であるので、同一構成には同一符号を付してその説明は省略する。
【0040】
また、図9〜図11に示した実施形態は、前記設置面11の上に模造屋根47を構築し、その上に複数の太陽電池モジュール1,…を実際の屋根における施工と同じ工法で取付けて支持手段2と模造屋根47に対する取付構造の耐久性試験も行えるようにしたものである。つまり、前記チャンバー3の設置面11の一部に模造屋根47を構築し、該模造屋根47の上に前記支持手段2にて単又は複数の前記太陽電池モジュール1,…を実施工するとともに、その内方の該太陽電池モジュール1の周縁部と前記模造屋根47との間を前記シール部5で気密状態に塞ぎ、更に前記模造屋根47の周縁部に位置する前記シール部5から該模造屋根47の端部を通り前記設置面11に至るまで気密シート48で塞ぎ、前記模造屋根47と周囲のシール部5と太陽電池モジュール1の裏面とで前記第1圧力室6を構成し、前記気密シート48を剛性壁の一部として前記チャンバー3とカバー体4とで形成される残余の空間を前記第2圧力室7としたものである。尚、前記模造屋根47と設置面11との間で、前記気密シート48で囲まれた空間が大気圧のままであると、前記第1圧力室6との間で大きな圧力差が生じた場合、模造屋根47が変形することがあるので、該模造屋根47に圧力調整用の貫通孔を設けることも可能である。
【0041】
更に詳しくは、前記模造屋根47は、垂木49,…を実際の間隔で前記設置面11に螺孔32と取付ボルト35等を用いて固定し、該垂木49の上に野地板50を固定し、そして野地板50の上面に図示しない防水ゴムシートを施設し、その上にカラーベスト等の屋根材51を敷設した構造を構築する。この模造屋根47は、実際の屋根の構造と同じにすることが好ましいが、前記野地板50を直接設置面11に固定し、防水ゴムシートを省略して野地板50の上面に屋根材51を葺いても気密性を維持できれば、耐久性試験には影響は殆どないと考えられる。従って、少なくとも野地板50と屋根材51とで模造屋根47を構築すれば足りる。
【0042】
そして、前記第2圧力室7を区画形成するために、前記模造屋根47の周囲部と前記設置面11との間に布キャンパス等の強度があり、気密性に優れた気密シート48を張るのである。具体的には、前記気密シート48の一端は前記シール部5の固定板36と屋根材51との間に挟んで固定し、気密シート48の他端は前記設置面11の周縁部のゴムシート31の上面と押え板52との間に挟んだ状態で、該押え板52を取付ボルト35で設置面11の螺孔32に螺合して気密状態に固定するのである。ここで、しっかりと張った気密シート48は、前記第1圧力室6と第2圧力室7の圧力差が変化した場合でも大きく変形することはなく、従って実質的に容量変化を生じさせない剛性壁とみなすことも可能である。また、前記気密シート48の代わりに金属板を用いることも可能である。
【0043】
本実施形態の場合、前記設置面11を貫通させた第1給排気手段8の上端部を前記模造屋根47も気密状態で貫通させて、第1給排気口16を第1圧力室6に臨ませている。一方、前記第2給排気手段9は、前記同様に設置面11を貫通させてチャンバー3内に第2給排気口17を臨ませている。
【0044】
前記模造屋根47は、各種構造のものに交換することが可能であり、屋根も含めてその上に施工する太陽電池モジュール1,…を実環境に近い状態で再現し、各部の耐久性試験を行うことができるので、本発明装置は非常に汎用性が高いのである。
【符号の説明】
【0045】
1 太陽電池モジュール、 2 支持手段、
3 チャンバー、 4 カバー体、
5 シール部、 6 第1圧力室、
7 第2圧力室、 8 第1給排気手段、
9 第2給排気手段、 10 変位計、
11 設置面、 12 側壁、
13 架台、 14 支持枠、
15 縦補強杆、 16 第1給排気口、
17 第2給排気口、 18 給排気装置、
19 レール、 20 門型架台、
21 通路、 22 エアーシールパッキン、
23 係止アーム、 24 コンプレッサー、
25 補強枠、 26 固定ボルト、
27 スペーサー、 28 観察窓、
29 トラバース、 30 底面板、
31 ゴムシート、 32 螺孔、
33 ボルト、 34 円孔、
35 取付ボルト、 36 固定板、
37 スペーサー、 38 チャンネル部材、
39 シリコンパッキン、 40 ベース枠体、
41 押え部材、 42 押え部材、
43 枠体、 44 ボルト、
45 取付専用冶具、 46 取付専用冶具、
47 模造屋根、 48 気密シート、
49 垂木、 50 野地板、
51 屋根材、 52 押え板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール部を除き周囲を実質的に容量変化を生じさせない剛性壁で囲まれた第1圧力室と第2圧力室とを備え、該第1圧力室と第2圧力室は、一方の圧力室を構成する剛性壁に支持手段にて取付けた太陽電池モジュールと、圧力室を構成する剛性壁と前記太陽電池モジュールの周縁部間を気密状態に塞ぐ前記シール部とで区画され、前記第1圧力室と第2圧力室とにそれぞれ接続された第1給排気手段と第2給排気手段とにより、第1圧力室と第2圧力室とを所定圧力に加減圧することで前記太陽電池モジュールの表裏両面に圧力差を発生させ、実環境で太陽電池モジュールに作用する風圧を再現することが可能な太陽電池モジュールの耐久性試験装置。
【請求項2】
前記支持手段として、前記太陽電池モジュールを屋根等の被取付部に実際に取付ける枠体若しくは支持金具を用いてなる請求項1記載の太陽電池モジュールの耐久性試験装置。
【請求項3】
前記シール部は、前記太陽電池モジュールの変形を拘束しない可撓性を備えている請求項1又は2記載の太陽電池モジュールの耐久性試験装置。
【請求項4】
前記第1圧力室と第2圧力室の一方の圧力室内に、前記太陽電池モジュールの変形を計測する接触式又は非接触式の変位計を設けてなる請求項1〜3何れか1項に記載の太陽電池モジュールの耐久性試験装置。
【請求項5】
複数の前記太陽電池モジュールを、前記支持手段を用いて縦横に実施工するとともに、各太陽電池モジュールの周縁部を前記シール部でそれぞれ気密状態に塞いで複数の前記第1圧力室と、それ以外を一つの前記第2圧力室とし、複数の前記第1圧力室にそれぞれ第1給排気手段を接続してなる請求項1〜4何れか1項に記載の太陽電池モジュールの耐久性試験装置。
【請求項6】
底面が剛性の高い設置面とし、その周囲に側壁を立ち上げた上方解放したチャンバーと、該チャンバーの開口部を気密状態で塞ぐカバー体とを開閉可能に設け、前記チャンバーの設置面に前記支持手段にて前記太陽電池モジュールを取付けるとともに、その内方の該太陽電池モジュールの周縁部と前記設置面との間を前記シール部で気密状態に塞ぎ、前記設置面と周囲のシール部と太陽電池モジュールの裏面とで前記第1圧力室を構成し、前記チャンバーとカバー体とで形成される残余の空間を前記第2圧力室としてなる請求項1〜5何れか1項に記載の太陽電池モジュールの耐久性試験装置。
【請求項7】
前記チャンバーの設置面の一部に、少なくとも野地板と屋根材とからなる模造屋根を構築し、該模造屋根の上に前記支持手段にて単又は複数の前記太陽電池モジュールを実施工するとともに、その内方の該太陽電池モジュールの周縁部と前記模造屋根との間を前記シール部で気密状態に塞ぎ、更に前記模造屋根の周縁部に位置する前記シール部から該模造屋根の端部を通り前記設置面に至るまで気密シートで塞ぎ、前記模造屋根と周囲のシール部と太陽電池モジュールの裏面とで前記第1圧力室を構成し、前記気密シートを剛性壁の一部として前記チャンバーとカバー体とで形成される残余の空間を前記第2圧力室としてなる請求項6記載の太陽電池モジュールの耐久性試験装置。
【請求項8】
前記第2圧力室の内部であって前記チャンバーの両側壁間に渡設したトラバースに、前記太陽電池モジュールの変形を計測する接触式又は非接触式の変位計を設けてなる請求項6又は7記載の太陽電池モジュールの耐久性試験装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−226842(P2011−226842A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94895(P2010−94895)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(390007308)本田工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】