説明

太陽電池モジュールの製造システム及びその製造方法

【課題】同等の特性を有している複数のセルによって一つの太陽電池モジュールを、従来よりも簡単に作製する。
【解決手段】複数の細長い太陽電池用のセル7を、その長辺側の縁部7a,7a同士が重なるようにして、一方向に並べて構成した太陽電池モジュールMを製造する方法及び製造システムである。光電変換を行う発電層18が表面に形成されている帯状部材3を巻くリール12から、当該帯状部材3を繰り出し、前記帯状部材3を次々と所定長さに切断してセル7を作製し、切断した順にセル7を送り出す。前記一方向に向かって複数のセル7が並ぶように、送り込まれた順にセル7を前記一方向に向かって並べると共に、並べる際にセル7の縁部7a,7a同士を重ね合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用のセルを一方向に複数並べて構成した太陽電池モジュールを製造するための製造システム、及び、太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池用のセルを一方向に複数並べて構成した太陽電池モジュールが知られており(例えば、特許文献1参照)、この太陽電池モジュールでは、隣り合うセルの縁部同士が上下重ねられた状態で接合されている。このような複数のセルを備えた太陽電池モジュールは、例えば、以下のようにして製造される。
【0003】
帯状の金属部材が巻かれたリールを複数並べて配置し、これらリールから、図6(A)に示しているように、金属部材80〜89を複数の列を成して繰り出し、これら複数列の金属部材80〜89の表面に対してまとめて、蒸着装置、CVD装置又はスパッタ装置などの処理装置90により、薄膜からなる発電層を形成する。
そして、発電層の形成を終えた金属部材80〜89は、複数列を成した状態で、切断装置91によってまとめて所定長さLに切断され、複数枚の太陽電池用のセル80a〜89aが作製される。
そして、図6(B)に示しているように、これら複数枚のセル80a〜89aをトレイ92に載せ、これらセル80a〜89aを、図6(C)に示しているように、縁部を重ね合わせるようにして一方向に並べ、相互を接続し、太陽電池モジュールとしている。
【0004】
なお、このような太陽電池モジュールに、電池としての特性が悪いセルがたとえ1枚でも含まれていると、その特性の悪いセルが他の特性の良いセルに悪影響を与えてしまい、全体として電池性能が低い(発電効率の悪い)太陽電池モジュールとなってしまうことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/023264号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、処理装置90によって、複数列の金属部材80〜89に対してまとめて薄膜(発電層)が形成された場合、列毎では、その長手方向に関して膜厚は連続的であり大きく変化しないが、列が異なると膜厚が様々となることがある。例えば、複数列の金属部材80〜89のうち、端の領域で処理された金属部材80と、中央の領域で処理された金属部材85とで処理環境が僅かに異なることにより、形成される膜厚も相違し、太陽電池用のセルとしての特性が異なることがある。
したがって、図6(B)のトレイ92に載っている複数のセル80a〜89aでは、膜厚にバラツキが生じ、このような複数のセル80a〜89aから一つのモジュールを作製すると、特性の低いセルの影響により、モジュール全体としての電池性能が低下する。
【0007】
そこで、作製された複数のセルそれぞれに対して特性の検査を行い、検査結果に応じてセルをランク分けし、同等の特性を有するセルを集め、これらセルによって一つのモジュールを作製する必要がある。しかし、このようなランク分けの作業、及び、その後、セルを整列させる作業は、手間と時間を要し、生産効率の向上の妨げとなることがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、同等の特性を有している複数のセルによって一つのモジュールを作製することが、簡単となる太陽電池モジュールの製造システム及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の細長い太陽電池用のセルを、その長辺側の縁部同士が重なるようにして、一方向に並べて構成した太陽電池モジュールを製造するための製造システムであって、光電変換を行う発電層が表面に形成された帯状部材を供給する供給装置と、前記供給装置から供給される前記帯状部材を次々と所定長さに切断して前記セルを作製すると共に、切断した順に当該セルを下流側装置へと送る切断装置と、前記一方向に向かって複数の前記セルが並ぶように、上流側装置から送り込まれた順に前記セルを前記一方向に向かって並べると共に、並べる際に当該セルの縁部同士を重ね合わせる組み立て装置とを備えていることを特徴とする。
【0010】
例えば、蒸着装置、CVD装置又はスパッタ装置などの処理装置に対して帯状の金属部材が長手方向に順次送られることによって、光電変換を行う発電層がその表面に連続的に形成されて得た帯状部材では、その長手方向に関して発電層の特性(膜厚)は連続的であり、大きく変化しない。そこで、本発明によれば、この帯状部材が次々と所定長さに切断されてセルが作製され、切断した順にセルが送り出され、組み立て装置に送り込まれた順にセルが一方向に向かって並べられ、これらセルにより一つの太陽電池モジュールが製作される。このため、一つ太陽電池モジュールは、特性が同等である複数のセルによって構成される。
したがって、従来のような、特性に応じたセルのランク分けをしなくても、簡単に、同等の特性を有している複数のセルによって一つの太陽電池モジュールを作製することが可能となる。
【0011】
また、前記製造システムにおいて、前記切断装置によって切断され、前記組み立て装置によって並べられる前の前記セルの特性を検査する検査装置が、前記供給装置から前記組み立て装置までの間の製造ラインの途中に設けられているのが好ましい。
この場合、上記のとおり光電変換を行う発電層が表面に連続的に形成されて得た帯状部材では、その長手方向に関して発電層(膜厚)の特性は連続的であり、大きく変化しないが、例外的に特性の低いセルが存在していても、検査装置によって、そのセルの特定が可能となる。このため、特性の低いセルを含んだまま太陽電池モジュールが作製されてしまうのを防ぐことができ、このようなセルを事前に除くことが可能となる。
【0012】
また、前記検査装置は、前記セルを載せて当該セルの長手方向に送る搬送路を有していると共に、当該セルの送り方向先頭部が当該搬送路からはみ出た状態で当該セルの送りを停止する搬送部と、前記先頭部がはみ出た状態の当該セルを表裏から挟んで接触し当該セルの電気的な特性の検査を行う端子部とを有しているのが好ましい。
この場合、セルを搬送路に載せた状態で、端子部がセルの表裏に接触し、セルの電気的な特性の検査を行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明は、複数の細長い太陽電池用のセルを、その長辺側の縁部同士が重なるようにして、一方向に並べて構成した太陽電池モジュールを製造する方法であって、光電変換を行う発電層が表面に形成されている帯状部材を、当該帯状部材の長手方向に供給し、前記帯状部材を次々と所定長さに切断して前記セルを作製し、切断した順に当該セルを送り出し、前記一方向に向かって複数の前記セルが並ぶように、送り込まれた順に前記セルを前記一方向に向かって並べると共に、並べる際に前記セルの縁部同士を重ね合わせることを特徴とする。
【0014】
例えば、蒸着装置、CVD装置又はスパッタ装置などの処理装置に対して帯状の金属部材が長手方向に順次送られることによって、光電変換を行う発電層がその表面に連続的に形成されて得た帯状部材では、その長手方向に関して発電層の特性(膜厚)は連続的であり、大きく変化しない。そこで、本発明によれば、この帯状部材が次々と所定長さに切断されてセルが作製され、切断した順にセルが送り出され、送り込まれた順にセルが一方向に向かって並べられ、これらセルにより一つの太陽電池モジュールが製作される。このため、一つ太陽電池モジュールは、特性が同等である複数のセルによって構成される。
したがって、従来のような、特性に応じたセルのランク分けをしなくても、簡単に、同等の特性を有している複数のセルによって一つの太陽電池モジュールを作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来のような、特性に応じたセルのランク分けをしなくても、簡単に、同等の特性を有している複数のセルによって一つの太陽電池モジュールを作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの製造システムによって製造される太陽電池モジュールの一部を示す説明図である。
【図2】太陽電池モジュールの製造システムの概略構成図である。
【図3】組み立て装置の平面図である。
【図4】太陽電池モジュールの製造システムが備えている各装置によって実行される工程を説明する説明図である。
【図5】組み立て装置の動作を説明する説明図である。
【図6】従来の太陽電池モジュールの製造方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の太陽電池モジュールの製造システムによって製造される太陽電池モジュールの一部を示す説明図である。まず、太陽電池モジュールM(以下、単にモジュールMという)の構成について説明する。
【0018】
モジュールMは、複数の細長い太陽電池用のセル7を、一方向に並べて構成したものであり、これら複数のセル7の両側に細長い電極8が設けられている。なお、セル7が並べられる一方向は、当該セル7の長手方向とは異なる方向(本実施形態では直交方向)である。そして、隣り合うセル7,7は、その長辺側の縁部7a,7a同士が上下重ね合わされた状態にあり、この重ね合わされた縁部7a,7aにおいて電気的及び構造的に接続されている。このように、縁部7a,7a同士が重ねられた状態で、複数のセル7が一方向に並んだ構造を、スラット構造と呼ぶ。また、セル7,7を接続するために、本実施形態では接合材料(例えば、半田ペースト、銀ペースト、導電性接着剤など)5が縁部7a,7a間に介在している。
一方向に並べられたセル7及び電極8は、その両面から図示しないカバー部材によって挟まれ、モジュールMは一体のシート状を成す。カバー部材は、可撓性を有し太陽光を透過させるフィルム状の樹脂部材から成り、セル7及び電極8の表面及び裏面に密着した状態となる。
【0019】
各セル7について説明する。導電性を有した細長い基板17上に、光電変換を行う発電層18が設けられており、また、本実施形態では、発電層18を被覆している透明電極層19が設けられている。さらに、透明電極層19の縁部には金属製の導電膜20が帯状となって形成されている。各層の材質は、例えば、基板17はステンレス製であり、透明電極層19はITO膜からなり、導電膜20は銅製である。なお、透明電極層19としては、ZnOを使用してもよい。導電膜20は、セル7の縁部7aに沿って連続的に長く設けられたものであり、この導電膜20の上に接合材料5が点在している。図示しないが、基板17の裏面にも同様の導電膜が形成されていてもよく、この場合、接合材料5は上下の導電膜に挟まれた状態となる。また、接合部材5は、線状に設けられていてもよい。
【0020】
このようなモジュールMを製造するための製造システムは、モジュールMが一方向(図1では左右方向)に向かって順次長くなるようにセル7を次々と並べ、この際に、隣り合うセル7,7の縁部7a,7a同士を上下重ね合わせ、全てのセル7においてこの重ね合わせを行う。そして、接合材料5によって、縁部7a,7a同士が接合され、前記カバー部材によって挟まれ、モジュールMが製造される。モジュールMが順次長くなる方向(前記一方向)は、セル7の長手方向に直交する方向である。
【0021】
そして、本実施形態の製造システムは、図2に示しているように、表面に各種成膜がされた帯状部材3を下流側装置へ供給する供給装置を備えており、本実施形態の供給装置は、表面に各種成膜がされた帯状部材3を巻いているリール12を有したリール装置11である(以下、供給装置を、リール装置11として説明する)。
そして、この製造システムは、前記リール装置11の他に、帯状部材3を切断してセル7を作製する切断装置21と、セル7の上に接合材料5を供給する付与装置31と、セル7の電池特性を検査する検査装置41と、セル7を一方向に並べて置くためのステージ52を有している組み立て装置51とを備えている。
この製造システムにおいて、リール装置11を最も上流側の装置とすると、これよりも下流側に、切断装置21、付与装置31、検査装置41及び組み立て装置51が、その順番で連続的に配置され、これら装置によって、一つの連続した製造ラインが構成される。切断装置21から見れば付与装置31は下流側装置となり、組み立て装置51から見れば検査装置41が上流側装置となる。また、この製造システムは、各装置の動作タイミングを統括制御する制御装置(コンピュータ)2を有している。
【0022】
リール装置11は、前記リール12の他に、リール12から繰り出された帯状部材3を下流側に搬送する第1搬送部14を有している。搬送部14はベルトコンベアからなり、制御装置2の制御によって、帯状部材3を下流側へ送る。リール装置11は更にダンサ部13を有しており、ダンサ部13は、リール12から繰り出される帯状部材3の送り量と、搬送部14による帯状部材3の送り量とのバランス調整を行う。
【0023】
リール12に巻かれている帯状部材3は、帯状の金属部材の表面に、発電層18及び透明電極層19が形成されたものであり(図1参照)、発電層18及び透明電極層19は、帯状部材3の長手方向に沿って連続的に設けられている。これら発電層18及び透明電極層19は、帯状の金属部材が蒸着装置、CVD装置又はスパッタ装置などの処理装置(図示せず)の処理室へその長手方向に送られることにより、連続的に処理され、当該帯状の金属部材の表面に形成されたものである。さらに、本実施形態では、透明電極層19上に、導電膜20が連続的に設けられている。
【0024】
切断装置21は、リール12から繰り出され第1搬送部14によって搬送された帯状部材3を次々と所定長さに切断する切断部22と、切断した順にセル7を当該セル7の長手方向と同方向に向けて送る第2搬送部23とを有している。第2搬送部23はベルトコンベアからなり、制御装置2の制御によって、セル7を下流側へ送る。第1搬送部14及び第2搬送部23によって、第1搬送部14上の帯状部材3が所定長について第2搬送部23上へ送られ、切断部22が有する切断刃がこの帯状部材3を切断し、この処理が繰り返し実行されることにより、一定長さのセル7が次々と得られる。また、本実施形態の切断部22は、セル7の長手方向両端部にスクライブ溝(図示せず)を形成する機能を有していている。
【0025】
付与装置31は、切断された順にセル7を当該セル7の長手方向と同方向に向けて送る第3搬送部32と、この搬送部32によって搬送されるセル7上に接合材料5を供給するノズル33を有した接合材料供給部34とを有している。ノズル33は、搬送部32によるセル7の搬送方向に沿って複数設けられており、各ノズル33は接合材料5を吐出する。接合材料5は、上記のとおり、セル7の導電膜20(図1参照)上に供給される。搬送部32はベルトコンベアからなり、制御装置2の制御によって、セル7を下流側へ送る。
この付与装置31の動作が繰り返し行われることにより、次々とセル7に接合材料5を供給することができる。
【0026】
検査装置41は、切断装置21と組み立て装置51との間の製造ラインの途中に、設けられており、切断装置21によって切断された後であって、組み立て装置51によってステージ52上に並べられる前のセル7の特性を検査する。
検査装置41は、セル7の電池としての特性(I−V特性)の検査を、セル毎に行う。つまり、一枚のセル7に光を照射し、これにより出力される電圧(電流)を測定する。セル7の出力電圧が閾値以上であれば、このセル7(合格セル)をモジュールM内に含めるべく組み立て装置51に与え、閾値未満であれば、そのセル7(不合格セル)を、図外の製造ライン外にある排出部へ排出する。
【0027】
検査装置41は、一枚のセル7を載せ、当該セル7をその長手方向に送る搬送路42を有している第4搬送部43と、搬送路42上のセル7に接触させて電気的な特性の検査を行う端子部44,45とを有している。第4搬送部43はベルトコンベアからなり、制御装置2の制御によって、セル7を下流側へ送る。端子部44,45は、セル7を挟んで上下(表側及び裏側)に配置されており、セル7に対して上下それぞれから接近離反することができる。この検査装置41による検査については、後にも説明する。
この検査装置41の動作が繰り返し行われることにより、次々とセル7を検査することができる。
【0028】
組み立て装置51は、図3の平面図に示しているように、セル7を並べて載せると共に載せたセル7を吸着するステージ52と、このステージ52に載せる対象となるセル7の送り方向先頭部を保持可能な保持部53と、セル7の長手方向延長線に沿って保持部53(保持部53を搭載しているヘッド56)を往復直線移動させる駆動部54とを有している。ステージ52に載せる対象となるセル7は、検査装置41によって検査を終えた前記合格セルである。保持部53及びステージ52は、エアの吸引によってセル7を吸着保持する構造である。
【0029】
駆動部54は、サーボモータを有しており、保持部53の移動量、つまり、保持部53が保持したセル7の送り量を、このサーボモータの回転数に基づいて制御装置2が制御(管理)する。また、上記搬送部14,23,32,43それぞれも、サーボモータを有しており、搬送部14,23,32,43それぞれによるセル7の送り量についても、サーボモータの回転数に基づいて制御装置2が制御(管理)する。
さらに、駆動部54は、ヘッド56を上下揺動させるアクチュエータも有している。また、組み立て装置51は、ステージ52に吸着されていくセル7の上を通過して当該セル7の浮き上がり部分を当該ステージ52側へ抑える押さえ部材55を有している。押さえ部材55は、保持部53と同じヘッド56に搭載されており保持部53と一体となって移動する。駆動部54がヘッド56を上下揺動させる機能、及び、押さえ部材55の機能については後に説明する。
【0030】
駆動部54は、セル7の先頭部を保持した保持部53を前進させ、その後、後退することにより、当該セル7を先頭部からステージ52上に吸着させる。一枚のセル7がステージ52上に吸着されると、ステージ52は、セル7の長手方向に直交する方向に1ステップ移動し、次のセル7を、同様の動作を行うことによって、吸着させる。ステージ52の1ステップの移動距離は、セル7の幅方向寸法(短手方向の寸法)である。
【0031】
この組み立て装置51の動作が繰り返し行われることにより、一方向に向かって複数のセル7が並び、しかも、上流側装置である検査装置41から送り込まれた順にセル7を当該一方向に向かって並べることができる。そして、ステージ52上にセル7を並べる際、セル7の縁部7a,7a同士は上下重ね合わされた状態となる。
【0032】
以上の構成を備えた製造システムによって実行される太陽電池モジュールの製造方法について説明する。図2において、リール12には、発電層18、透明電極層19及び導電膜20が表面に設けられている帯状部材3が巻かれている。リール12が回転し当該リール12から繰り出された帯状部材3は、ダンサ部13を介して、第1搬送部14上に載った状態となっている。
【0033】
第1搬送部14は、第2搬送部23と同期して作動し、帯状部材3を所定の送り量だけ下流に送る(ステップS1:図4(A)参照)。この送り量は、制御装置2において設定されている値であり、制御装置2は、この送り量に相当するだけ搬送部14,23の各サーボモータを作動させ、帯状部材3の搬送を一旦停止する。このステップS1により、帯状部材3の先端Sが、切断部22の切断刃24から下流側に所定長さLについて進んだ位置となる。
【0034】
この状態で、切断部22は帯状部材3を切断し、所定長さLを有するセルが作製される(ステップS2)。切断が完了すると、第2搬送部23の作動が再開され、セル7を所定の送り量だけ下流に送る(ステップS3:図4(B)参照)。この送り量は、制御装置2において設定されている値であり、制御装置2は、この送り量に相当するだけ搬送部23のサーボモータを作動させ、セル7の搬送を一旦停止する。このステップS3により、セル7の先端Sが搬送部23の搬送路25の先頭点(下流側の点)P1に位置し、切断装置21は、このセル7を次の付与装置31へ送るための待機状態となる。
また、制御装置2によって、前記ステップS1〜ステップS3が繰り返し実行されることにより、帯状部材3を次々と所定長さLに切断してセル7を作製し、切断した順にセル7を当該セル7の長手方向と同方向に向けて、付与装置31へと送ることができる。
【0035】
セル7の先端Sが搬送路25の先頭点P1に位置して待機している状態(図4(B)の状態)から、第2搬送部23と第3搬送部32とが同期して作動し、セル7を所定の送り量だけ下流に送る(ステップS11:図4(C)参照)。この送り量は、制御装置2において設定されている値であり、制御装置2は、この送り量に相当するだけ搬送部23,32の各サーボモータを作動させ、セル7の搬送を一旦停止する。このステップS11により、セル7の先端Sが、搬送部32の搬送路35の先頭点(下流側の点)P2に位置し、付与装置31は、このセル7を次の検査装置41へ送るための待機状態となる。このステップS11では、セル7に接合材料5(図1参照)が供給される。このステップS11が繰り返し実行されることで、次々と送られるセル7毎に、接合材料5が供給される。
【0036】
なお、このステップS11では、セル7の先端Sが先頭点P2に到達する手前位置P3で、搬送部32は当該セル7の送り速度を遅くし、この間に、付与装置31のノズル33から接合材料5が当該セル7上に供給される。先頭点P2と手前位置P3との間隔と同じ間隔で、ノズル33は複数設けられており、これらノズル33から同時に接合材料5を供給することにより、セル7の送り速度を遅くしている時間内で全ての領域に対して接合材料5を載せることが可能となる。
【0037】
セル7の先端Sが搬送路35の先頭点P2に位置して待機している状態(図4(C)参照)から、第3搬送部32と第4搬送部43とが同期して作動し、セル7を所定の送り量だけ下流に送る(ステップS21:図4(D)参照)。この送り量は、制御装置2において設定されている値であり、制御装置2は、この送り量に相当するだけ搬送部32,43の各サーボモータを作動させ、セル7の搬送を一旦停止する。このステップS21により、セル7の先端Sが、搬送部43の搬送路42を下流側に超えた位置P4に到達し、検査装置41による検査が実行され、検査終了後、検査装置41は、このセル7を次の組み立て装置51へ送るための待機状態となる。
【0038】
このステップS21では、上記のとおり、搬送部43は、セル7の送り方向先頭部が、搬送路42から組み立て装置51側へはみ出た状態で、当該セル7の送りを停止させる。この送り方向先頭部を、はみ出し部10という。
そして、この状態で、検査装置41の端子部44,45は、セル7のはみ出し部10に接近移動し、当該はみ出し部10をその表裏から挟んで接触し、セル7の電気的な特性の検査を行う。
【0039】
ここで、図1により説明したように、各セル7では、導電性を有する金属製の基板17上に、光電変換が行われる発電層18、透明電極層19及び導電膜20が設けられた構成であることから、セル7毎で電池が構成されている。そして、発電層18が受光することによって発生する電流の流れる方向は、セル7の表裏方向(厚さ方向)となる。つまり、セル7は、表面側から受光することで、その表側と裏側との間で電位差を発生させる電池である。したがって、検査装置41において、セル7に光を当て、このセル7のはみ出し部10(図4(D)参照)に対して端子部44,45が表裏から挟んで接触することにより、このセル7の電池としての特性(出力電圧)を測定することが可能となる。
【0040】
セル7の表面側に接触する一方の端子部45は、前記導電膜20に接触し、他方の端子部44は基板17に接触する。ITOからなる透明電極層19よりも、銅からなる導電膜20の方が電気抵抗は小さいことから、この導電膜20に端子部45を接触させることで、より精度の高い検査結果が得られる。そして、セル7の基板17は、例えばステンレス製などの金属部材であるため通電性は高く、一方の端子部45に対向する位置に、他方の端子部44を設け、この端子部44を基板17に接触させればよい。
【0041】
以上のように、検査装置41では、はみ出し部10を除く部分を、搬送路42に載せた状態として、セル7の電気的な特性の検査を行うことが可能となる。そして、上記のステップS21が繰り返し実行されることで、次々と送られるセル7毎に、特性の検査が実行される。
【0042】
そして、この検査が完了すると、搬送部43は作動することなく、そのままの状態で、セル7の前記はみ出し部10の裏面を、組み立て装置51の保持部53が吸着保持する(ステップS31:図5(A)参照)。
保持部53がセル7を保持すると、組み立て装置51の駆動部54と搬送部43とが同期して作動し、セル7を所定の送り量だけ下流に送る(ステップS32:図5(B)参照)。この送り量は、制御装置2において設定されている値であり、制御装置2は、この送り量に相当するだけ搬送部43及び駆動部54の各サーボモータを作動させ、セル7の搬送(保持部53の前進)を一旦停止する。
【0043】
駆動部54は、上記のとおり、保持部53(ヘッド56)を上下揺動させるアクチュエータ(図示せず)も有しており、図5(C)に示しているように、保持部53を下方に揺動させ、セル7の先頭部7bをステージ52にエアにより吸着させる。そして、保持部53によるセル7の保持(吸着)を解除し、駆動部54は保持部53を後退させる(図5(D))。これにより、セル7は、ステージ52上に吸着保持される(ステップS33)。そして、保持部53が後退する際に、押さえ部材55は、ステージ52に吸着されていくセル7の上を通過して当該セル7の浮き上がり部分を当該ステージ52側へ抑える。セル7が全長にわたってステージ52に吸着されると、保持部53は、上方に揺動し、検査装置41によって次のセル7の検査が完了するのを待つ状態となる(ステップS34)。
【0044】
そして、上記のとおり(図3参照)、ステージ52は、セル7の長手方向に直交する方向に1ステップ移動し、次のセル7の吸着を待つ状態となる(ステップS35)。
上記のステップS31〜ステップS35が繰り返し実行されることで、次々と送られるセル7を、スラット構造に並べることが可能となる。つまり、組み立て装置51は、一方向に向かって複数のセル7が並ぶように、送り込まれた順にセル7を当該一方向に向かって並べると共に、並べる際にセル7の縁部7a,7a同士を重ね合わせることができる。
【0045】
上記のステップS31(図5(A))のように、セル7の先頭側部分(はみ出し部10)が、搬送路42から搬送方向にはみ出た状態であることから、当該セル7を新たに組み立て装置51側へ送ることなく、保持部53は、当該セル7の裏面を吸着することが可能となる。また、セル7の先頭側部分(はみ出し部10)が、搬送路42からはみ出た状態であることから、端子部44,45がセル7を表裏から挟んで検査を実行することが可能となる。
【0046】
このように、セル7の先頭側部分が、搬送路42からはみ出た状態であるによって、検査工程から組み立て工程へセル7を移行させるために、そのセル7を新たに送る必要がなくなり、時間短縮が可能となる。しかも、保持部53はセル7の裏面、つまり、発電層18が形成されている面とは反対側の面を吸着することで、当該発電層18側を傷つけることがない。さらに、セル7を、製造ラインの一部(搬送部43)に載せたままの状態で、特性の検査が可能となり、切断装置21によるセル7の作製から、組み立て装置51によるスラット構造への組み立てまで、連続して行うことが可能となる。
【0047】
以上の本実施形態に係る製造システム及びこの製造システムによる製造方法によれば、従来のような、特性に応じてセルのランク分けをしなくても、簡単に、同等の特性を有している複数のセル7によって一つのモジュールMを作製することが可能となる。
すなわち、例えば、蒸着装置、CVD装置又はスパッタ装置などの処理装置に対して帯状の金属部材が長手方向に順次送られることによって、発電層18などがその表面に連続的に形成されて得た帯状部材3では、一般的に、その長手方向に関して発電層18の特性(膜厚)は連続的であり、大きく変化しない。そこで、この帯状部材3が切断装置21によって次々と所定長さに切断されてセル7が作製され、切断した順にセル7が送り出され、付与装置31及び検査装置41を経て、組み立て装置51に送り込まれた順にセル7が一方向に向かって並べられ、これらセル7により一つのスラット構造を有する太陽電池モジュールが製作されることにより、この一つ太陽電池モジュールは、特性が同等である複数のセル7によって構成される。
【0048】
また、上記のとおり、発電層18が表面に連続的に形成されている帯状部材3では、その長手方向に関して発電層18(膜厚)の特性は連続的であり、大きく変化しないが、例外的に特性の低いセル7が存在していても、本実施形態では、検査装置41によって、そのセル7の特定が可能となる。このため、特性の低いセル7は、スラット構造から除外される。したがって、このような特性の低いセルを含むモジュールが作製されてから、モジュール全体の検査が行われ、その結果、当該モジュールが不良と判定され、当該モジュールが無駄となるのを防ぐことができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、リール装置11から組み立て装置51までの間の製造ラインの途中に、切断装置21、付与装置31及び検査装置41が直線的に設けられていることから、帯状部材3からセル7を次々と作製し、接合材料5をセル7に供給し、当該セル7を検査し、そして、これらセル7を連続的に一方向に並べることができる。そして、接合材料5によりセル同士を接合し、上記カバー部材を設けることにより、太陽電池モジュールを効率良く製造することが可能となる。
【0050】
また、図2において、製造ラインの隣り合う搬送部23と搬送部32、隣り合う搬送部32と搬送部43、隣り合う搬送部43と駆動部54が、それぞれ同期して作動する場合を説明したが、これら搬送部14,23,32,43及び駆動部54が、制御装置2の制御によって、同期して動作する。例えば、駆動部54と搬送部43とが同期してセル7を送る際に、この搬送部43に同期して搬送部32が作動し、セル7を送ることができる。
【0051】
しかも、搬送部23,32,42及び駆動部54によるセル7の送り量は、すべて同じとすることができ、制御装置2は、搬送部23,32,42及び駆動部54による送り量を個別に制御する必要がない。このため、例えば、搬送部23,32,42それぞれの搬送路に、セル7を検知するセンサを設け、このセンサからの検知信号に基づいて、制御装置2はセル7の送り量及び送りの開始停止を制御する必要がなく、簡単なプログラムによる制御で済む。なお、本実施形態では、セル7が所定の位置(例えば前記先頭点P1)に到達したことを確認するために、セル7を検知するセンサが設けられている。
【0052】
また、第1搬送部14及び第2搬送部23による帯状部材3の搬送開始から、当該帯状部材3が所定長さ送り出され、一旦、送りが停止した状態で切断され、切断されたセル7の先端Sを、先端点P1(図4(B)参照)に到達させるまでの時間(切断工程の時間)、先端点P1に先端Sが位置するセル7の搬送開始から、第3搬送部32上における接合材料5の供給を完了し、当該セル7の先端Sが先端点P2(図4(c)参照)に到達するまでの時間(供給工程の時間)、先端点P2に先端Sが位置するセル7の搬送開始から、第4搬送部43上におけるセル7の検査の完了までの時間(検査工程の時間)、及び、保持部53によるセル7の搬送開始から、当該セル7のステージ52上への吸着完了までの時間(組み立て工程の時間)とを比較すると、供給工程の時間が最も長い。したがって、これら各工程は同時に行われるが、供給工程の時間内に、切断工程、検査工程、及び組み立て工程を終えることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、組み立て装置51において、保持部53がセル7の先頭部を保持することから、図4で説明したように、各搬送部において、セル7の先端Sを基準として位置管理し、各搬送部はセル7の送り開始及び停止が制御される。
すなわち、セル7の先端Sを基準として位置管理し、各搬送部による送り量を一定とすることにより、当該送り量で各搬送部を同期させて作動させれば、セル7の先端Sが各搬送路の先頭点に位置合わせされ、当該先端Sを、組み立て装置51の所定位置(前記位置P4)に到達させることができ、保持部53がこのセル7の先頭部を引き続いて保持することが可能となる。
【0054】
しかも、セル7の先端Sを基準として位置管理していることにより、セル7の長さが変更されても、各搬送部による送り量は変更する必要がない。つまり、セル7の長さが変更されても、セル7をその長手方向に関して送る動作に関して、制御装置2のプログラムを変更する必要がない。
また、画搬送部の搬送路の幅は、セル7の幅(短手方向の寸法)よりも充分に大きいので、セル7の幅が変更されても、対応可能である。なお、この場合、ステージ52の1ステップの移動量の変更は必要である。
このように、セル7の長手方向寸法及び幅寸法が変更されても、本実施形態の製造システムによれば、その対応が容易である。なお、モジュールの大きさの変更に基づいて、このようなセルの寸法の変更は、度々必要とされる。
【0055】
また、製造システムには、図示しないが、さらに、接合材料5によりセル7,7を接合する装置、カバー部材を被せる装置が含まれていてもよく、これら装置は、組み立て装置51の下流側に設置される。
また、本発明の製造システムは、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、上記実施形態では、光電変換を行う発電層が表面に形成された帯状部材3を供給する供給装置を、リール装置11とした場合について説明したが、この供給装置は、蒸着装置、CVD装置又はスパッタ装置等の帯状部材3を直接形成する製造装置であってもよい。すなわち、この製造装置によって連続的に形成された帯状部材3をリール12に巻き取ることなく直接、下流側装置に供給する態様であればよい。この場合、リール12に巻き取ることによる工程を省略しつつ、特性に応じてセルのランク分けをしなくても、簡単に、同等の特性を有している複数のセル7によって一つのモジュールMを作製することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
3:帯状部材 7:セル 7a:縁部 10:はみ出し部(先頭部) 11:リール装置(供給装置) 12:リール 18:発電層 31:付与装置 41:検査装置 42:搬送路 43:第4の搬送部(搬送部) 44,45:端子部 51:組み立て装置 M:太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細長い太陽電池用のセルを、その長辺側の縁部同士が重なるようにして、一方向に並べて構成した太陽電池モジュールを製造するための製造システムであって、
光電変換を行う発電層が表面に形成された帯状部材を供給する供給装置と、
前記供給装置から供給される前記帯状部材を次々と所定長さに切断して前記セルを作製すると共に、切断した順に当該セルを下流側装置へと送る切断装置と、
前記一方向に向かって複数の前記セルが並ぶように、上流側装置から送り込まれた順に前記セルを前記一方向に向かって並べると共に、並べる際に当該セルの縁部同士を重ね合わせる組み立て装置と、
を備えていることを特徴とする太陽電池モジュールの製造システム。
【請求項2】
前記切断装置によって切断され、前記組み立て装置によって並べられる前の前記セルの特性を検査する検査装置が、前記供給装置から前記組み立て装置までの間の製造ラインの途中に設けられている請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造システム。
【請求項3】
前記検査装置は、前記セルを載せて当該セルの長手方向に送る搬送路を有していると共に、当該セルの送り方向先頭部が当該搬送路からはみ出た状態で当該セルの送りを停止する搬送部と、
前記先頭部がはみ出た状態の当該セルを表裏から挟んで接触し当該セルの電気的な特性の検査を行う端子部と、を有している請求項2に記載の太陽電池モジュールの製造システム。
【請求項4】
複数の細長い太陽電池用のセルを、その長辺側の縁部同士が重なるようにして、一方向に並べて構成した太陽電池モジュールを製造する方法であって、
光電変換を行う発電層が表面に形成されている帯状部材を、当該帯状部材の長手方向に供給し、
前記帯状部材を次々と所定長さに切断して前記セルを作製し、
切断した順に当該セルを送り出し、
前記一方向に向かって複数の前記セルが並ぶように、送り込まれた順に前記セルを前記一方向に向かって並べると共に、並べる際に前記セルの縁部同士を重ね合わせる
ことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−12575(P2013−12575A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144067(P2011−144067)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】