説明

太陽電池モジュールの製造方法及び合わせガラスの製造方法

【課題】簡便な生産設備で高スループットの生産を可能とすることで製造コストを大幅に低減でき、しかも空隙や気泡の残留がなく封止性にすぐれ、信頼性の高い太陽電池モジュールを製作可能な太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】表面材21の裏面側にダイス27を用いて常温液状の第1封止樹脂23を塗布し、その後、塗布した第1封止樹脂23の裏面側に太陽電池素子22を載置し、次に太陽電池素子22とその周囲の第1封止樹脂23の裏面側に第2封止樹脂24を塗布し、その後、加圧ロール(ロールラミネーター)30を用いて、第1封止樹脂23及び第2封止樹脂24を介して保護材26を貼り合せた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの製造方法及びそれにより製作した太陽電池モジュールを用いた合わせガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、一般的には「真空ラミネート法」によって製作されている。具体的には、先ず、図1に示すように、表面材であるガラス基材11、封止材であるエチレン−ビニルアセテート(EVA)からなるシート状成形物12、13と、太陽電池素子14と、保護材である裏面シート15とをそれぞれ積層する。次に、これらを真空脱気したのち、約150℃の高温度下でシート状成形物12、13を溶融し、約30分〜1時間熱架橋して製作されている。
【0003】
しかし、現在行われているこの製造方法では、真空ラミネート装置が高価であり、ラミネート方式がバッチ式のため、生産性に劣るという欠点があった。
【0004】
上記問題点を解決するために、熱ロールを用いてラミネートするという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、この方法では、加熱したロールで封止樹脂を溶解してラミネーションするので、溶解するのに充分な熱を与えるためには、ロールの送り速度を遅くせざるをえず、生産性があがらない。又シート状の封止材が太陽電池素子の封止面の凹凸に追従しづらく、太陽電池素子の凹凸の境界に気泡が溜まってしまうという欠点があった。
【0006】
また、加熱溶融した封止樹脂を用い、この封止樹脂が溶融状態にあるうちに加圧ロールで封止樹脂の表面を平滑化、膜厚制御をしたのちラミネートする方法も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
しかし、この方法では、生産性をあげるには、ラミネート前において封止樹脂を予め溶融させる加熱装置などが必要であり、封止樹脂の加熱供給装置を含めて、装置の製作コストが高くなるという欠点があった。
【0008】
また、封止樹脂として液状樹脂であるポリイソブチレンを、押し出し機を用いて塗布する方法も提案されている(特許文献3、4)。
【0009】
しかし、この方法は、特許文献2で指摘されているように、封止樹脂の厚みムラの問題と、厚みムラによる気泡の発生という欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−273374号公報
【特許文献2】特開2007−48861号公報
【特許文献3】特許第3531875号公報
【特許文献4】特開平6−151938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のような事情に鑑み、本発明は、簡便な生産設備で高スループットの生産を可能として製造コストを大幅に低減できる太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、封止樹脂の太陽電池素子又は表面材或いは保護材への圧着時に、太陽電池素子の封止面の凹凸に対する封止樹脂の追従性が向上して、空隙や気泡の残留がないので封止性にすぐれ、信頼性の高い太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、表面材の裏面側に載置した太陽電池素子の裏面側と、該太陽電池素子の周囲の表面材の裏面側とにわたって、ダイスを用いて常温液状の裏面側封止樹脂を塗布し、その後、ロールラミネーターを用いて、前記裏面側封止樹脂を介して保護材を貼り合せる封止工程を有するものである。
【0014】
この太陽電池モジュールの製造方法では、太陽電池素子を封止する封止樹脂として、常温液状の封止樹脂を用いているので、熱可塑性樹脂からなる封止樹脂を用いる場合と比較して、封止樹脂を加熱するための加熱装置が不要になり、設備コスト及びランニングコストの上昇を抑えることができるとともに、加熱溶融のための処理時間を省略できるので、生産性を向上できる。しかも、ロールラミネーターにより裏面側封止樹脂を介して保護材を貼り合わせるので、裏面側封止樹脂の表面の凹凸を抑制して、保護材の表面を平坦に構成できるとともに、ロールラミネーターの加圧ロールにより、裏面側封止樹脂に混入されている気泡を押し出しながら保護材を貼り合わせることができるので、裏面側封止樹脂に対する気泡の残留を効果的に防止できる。
【0015】
ここで、前記封止工程の前に、前記表面材の裏面にダイスを用いて常温液状の表面側封止樹脂を塗布し、その後、塗布した表面側封止樹脂の上に太陽電池素子を載置する表面側樹脂塗布工程を設け、前記封止工程では、前記太陽電池素子と、その周囲の表面材に塗布されている前記表面側封止樹脂上に裏面側封止樹脂を塗布し、その後、ロールラミネーターを用いて、前記裏面側封止樹脂を介して保護材を貼り合せることも好ましい実施の形態である。この場合には、太陽電池素子の全面を液状の封止樹脂で被覆でき、外気等との接触による太陽電池素子の劣化や、他物との接触による太陽電池素子の破損を防止できる。
【0016】
前記封止樹脂が、熱または紫外線により硬化するものであることが好ましい実施の形態である。この場合には、太陽電池素子を液状の封止樹脂で封入した後、加熱したり紫外線を照射したりすることで、封止樹脂を硬化できる。湿気硬化型の液状の封止樹脂を用いたり、2液硬化型の液状の封止樹脂を用いたりすることも可能である。
【0017】
前記封止樹脂の常温での粘度が、1〜1000Pa・sであることが好ましい。このような粘度であれば、ロールラミネーターにより裏面側封止樹脂を介して保護材を効率的に貼り合せることができ、太陽電池モジュールの生産性を向上できる。
【0018】
前記太陽電池素子が球状の太陽電池素子からなることが好ましい。このような太陽電池素子は、太陽電池モジュールに対する光の照射角度による発電量の変動を少なくでき、太陽電池ジュールに対して斜めに光が照射された場合でも、効率的に発電できるので好ましい。
【0019】
前記保護材が、可撓性を有する素材からなることが好ましい実施の形態である。この場合には、ロールラミネーターの加圧ロールで保護材を液状樹脂に無理なく押し付けながら、保護材を貼り付けることができる。
【0020】
前記保護材をロールラミネーターの加圧ロールに対して張力を作用させながら供給し、前記ロールラミネーターでは、前記加圧ロールにより前記保護材を介して封止樹脂を押し広げながら、前記保護材を貼り合わせることも好ましい実施の形態である。この場合には、ロールラミネーターの加圧ロールにより、液状の封止樹脂に混入されている気泡を押し出しながら保護材を貼り合わせることができるので、封止樹脂に対する気泡の残留を効果的に防止できる。
【0021】
前記ダイスへの封止樹脂の供給は、圧送ポンプおよび定流量装置により、外界との接触を遮断して気泡が混入しないようになすことが好ましい実施の形態である。このように構成することで、封止樹脂に気泡が混入することを一層効果的に防止することができる。
【0022】
前記ダイスに、前記封止樹脂が幅方向に均一に塗布されるように、内部に供給される封止樹脂の溜まり部を設けることもできる。この場合には、封止樹脂の厚さのバラツキを少なくして、太陽電池モジュールの品質を向上できる。
【0023】
前記表面材及び保護材が、離型フィルム又は離型機能を有する基材からなることも好ましい実施の形態である。この場合には、表面材及び保護材を剥離して得られる、封止樹脂が硬化してなる封止材と太陽電池素子とを、板ガラス間に接着して合わせガラスを構成したり、板ガラスに接着して窓ガラスを構成したりできる。
【0024】
前記表面材及び保護材が、熱可塑性樹脂フィルムからなることが好ましい。この場合には、例えば太陽電池モジュールの両側に板ガラスを配置させて、表面材及び保護材を加熱溶融させ、表面材及び保護材を板ガラスに融着させることで、合わせガラスを製作することができる。
【0025】
本発明に係る第1の発電機能を有する合わせガラスの製造方法は、表面材及び保護材として、離型フィルム又は離型機能を有する基材を用いて、前記太陽電池モジュールの製造方法により太陽電池モジュールを製作し、前記太陽電池モジュールの表面材及び保護材を剥離させてなる中間体の表裏面に、熱可塑性樹脂からなる接着シートを積層するとともに、両接着シートの外側に板ガラスを積層し、この積層体を真空ラミネート装置のチャンバーに装填して、該チャンバー内を真空にし、該積層体を加熱するとともに加圧して、前記接着シートにより、前記中間体に両板ガラスを接着するものである。
【0026】
本発明に係る第2の発電機能を有する合わせガラスの製造方法は、表面材及び保護材として、離型フィルム又は離型機能を有する基材を用いて、前記太陽電池モジュールの製造方法により太陽電池モジュールを製作し、前記太陽電池モジュールの表面材及び保護材を剥離させてなる中間体の表裏面に板ガラスを積層し、この積層体を真空ラミネート装置のチャンバーに装填して、該チャンバー内を真空にし、該積層体を加熱するとともに加圧して、前記封止樹脂により、前記中間体に両板ガラスを接着するものである。
【0027】
前記第1及び第2の発電機能を有する合わせガラスの製造方法において、前記表面材及び保護材により中間体の表裏面に一定間隔おきに脱気用の条溝を形成することが好ましい実施の形態である。このように構成すると、太陽電池モジュールと板ガラス間における気泡の残留を防止して、気泡が残留していない、品質の良い合わせガラスを製作することができる。
【0028】
本発明に係る第3の発電機能を有する合わせガラスの製造方法は、前記表面材及び保護材として、熱可塑性樹脂フィルムを用いて、前記太陽電池モジュールの製造方法により太陽電池モジュールを製作し、前記太陽電池モジュールからなる中間体の表裏面に板ガラスを積層し、この積層体を真空ラミネート装置のチャンバーに装填して、該チャンバー内を真空にし、該積層体を加熱するとともに加圧して、前記中間体に両板ガラスを接着するものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法によれば、簡便な生産設備で高スループットの生産が可能となり、太陽電池モジュールの製造コストを大幅に低減できる。すなわち、封止材の供給からラミネートまでの工程で、真空装置や加熱装置の必要がなく簡便な装置で、バッチ生産ではなく連続生産のため、スループットを高めることができる。特に、フレキシブル型太陽電池モジュールの封止工程には、ロールツーロールのラミネート工程を提供できることで、生産性の向上がはかれる。
【0030】
また、常温液状の封止樹脂を用いたロールラミネートのため、太陽電池素子の封止面の凹凸に対する封止樹脂の追従性が向上して、空隙や気泡の残留がなく封止性にすぐれた高信頼性の太陽電池モジュールの提供が可能となる。特に、結晶型太陽電池では、太陽電池素子として、結晶型太陽電池素子を結線してつないだストリングスの形態をとるために、セルの凹凸のみならず、太陽電池セル同士の間隙から生じる凹凸の問題もあり、本発明による液状樹脂による封止が有効である。
【0031】
さらには、結晶型太陽電池では、合わせガラスの内部に太陽電池素子を組み込んだ建材一体型の太陽電池モジュールの製造の際に、上記の凹凸の問題から、いかに太陽電池素子に損傷を与えずに、封止材を充填するかの課題を解決するためにさまざまな提案がされているが、本発明により予め封止した太陽電池素子を用いれば、生産性の向上がはかれ、信頼性の高い太陽電池モジュールの製造が可能となる。この場合、表面材及び保護材のかわりに、離型処理した基材或いは離型機能を有する基材を用い、太陽電池素子を封止樹脂のみで封止したモジュールを使えば表面材及び保護材を使わずに製造する効果もはかれる。
【0032】
また、結晶型太陽電池を瓦などの建材或いは自動車ボデイなどへ組み込む場合に、液状樹脂によるポッティングやSMC(Sheet Molding Compound)製法などが用いられているが、本発明により予め封止した太陽電池素子を用いれば、空隙や間隙への樹脂の充填の問題がなく、生産性の向上がはかれ、信頼性の高い太陽電池モジュールの製造が可能となる。
【0033】
また、有機半導体を用いた有機薄膜太陽電池の封止工程にも適用ができるため、原理的に構成が同様となる有機EL(electroluminescence)素子の封止工程への適用も可能で、有機EL素子についても同様の生産性の向上と信頼性の高いモジュールの提供が可能である。
【0034】
本発明に係る発電機能を有する合わせガラスの製造方法によれば、前記製造方法にて製作した太陽電池モジュールを用いているので、安価で且つ残留気泡の少ない品質の良い発電機能を有する合わせガラスを製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来の太陽電池モジュールの積層構造の説明図
【図2】本発明の太陽電池モジュールの製造方法の説明図
【図3】同製造方法で用いるダイス及び塗布装置の説明図
【図4】他の実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の説明図
【図5】他の実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の説明図
【図6】本発明の合わせガラスの製造方法で用いる(a)は太陽電池モジュールの断面図、(b)は真空ラミネート方法の説明図
【図7】他の実施形態の合わせガラスの製造方法で用いる(a)は太陽電池モジュールの断面図、(b)は真空ラミネート方法の説明図
【図8】他の実施形態の合わせガラスの製造方法で用いる(a)は太陽電池モジュールの断面図、(b)は真空ラミネート方法の説明図
【図9】合わせガラス用として好適な太陽電池モジュールの断面図
【図10】太陽電池モジュールを施工した発電機能を有する窓ガラスの断面図
【図11】他の構造の発電機能を有する窓ガラスの断面図
【図12】他の構造の発電機能を有する窓ガラスの断面図
【図13】(a)〜(c)は窓ガラスに対する太陽電池モジュールの施工方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図2において、20は太陽電池モジュール、21は表面材、22は太陽電池素子、23は第1封止樹脂(表面側封止樹脂)、24は第2封止樹脂(裏面側封止樹脂)、25は封止樹脂、26は保護材、27はダイス、28は送りロール、29は第1加圧ロール、30は第2加圧ロールである。なお、第2加圧ロール30とそれを回転駆動する駆動手段などからロールラミネーターが構成される。
【0037】
太陽電池モジュール20の製造方法について説明すると、図2に示すように、まず、液状樹脂からなる第1封止樹脂23をダイス27より、表面材21上に供給する。このとき、表面材21は、送りロール28により、図2において左方向から右方向へと一定の速度で搬送されているため、表面材21上には一定量の第1封止樹脂23が均一に供給される。
【0038】
次に、第1加圧ロール29により、ストリングにおいて折り曲げながら太陽電池素子22を第1封止樹脂23の上に埋設状に挿入載置する。このように、太陽電池素子22が、第1加圧ロール29によって加圧されながら供給されることにより、液状の第1封止樹脂23と太陽電池素子22との間に気泡が混入することが防止される。なお、表面材21に第1封止樹脂23を塗布し、その上に太陽電池素子22を載置する工程が、表面側樹脂塗布工程に相当する。
【0039】
次いで、第2封止樹脂24を、ダイス27から太陽電池素子22および太陽電池素子22の外側の第1封止樹脂23上に供給する。第2封止樹脂24は液状のため、同じく液状の第1封止樹脂23とすみやかに一体化される。
【0040】
次に、供給された第2封止樹脂24、及び第1封止樹脂23が一体となった封止樹脂25上に、第2加圧ロール(ロールラミネーター)30を用い、保護材26が加圧されながら供給され、保護材26が貼り合せられた太陽電池モジュール20が得られる。この第2加圧ロール30の加圧ローラー間のギャップ調整によって、封止樹脂25の厚みが調整制御される。また、第2加圧ロール30によって、保護材26が加圧されながら供給されることによって、封止樹脂25と保護材26の間に気泡が混入されることが防止される。
【0041】
このようにして得られた太陽電池モジュール20は、この後コンベアオーブン或いはコンベア紫外線照射装置によって、連続的に加熱或いは紫外線照射により、封止樹脂25が硬化される。スループットの向上を妨げない限りにおいては、適宜バッチ式のオーブンや紫外線照射装置を用いてもよい。
【0042】
また、封止樹脂25の硬化工程において、封止樹脂25が硬化するまでの間、第2加圧ロール30で調整された封止樹脂25の厚みを保持するために、太陽電池モジュール20の両サイドに予めスペーサーを設置しておくことが好ましい。このスペーサーは、第2加圧ロール30で加圧されながら封止樹脂25の厚みを調整する際、調整する厚み以上の余分な封止樹脂25が太陽電池モジュール20の両サイドに拡がるときのダム材としての役割も果たすことができる。
【0043】
本発明の太陽電池モジュール20の製造方法は、常温液状の封止樹脂25をダイス27を用いて塗布し、その後第2加圧ロール(ロールラミネーター)30を用いて貼り合せた後、封止樹脂25を熱又は紫外線により硬化させることにより製造するため、簡易な設備でスループットを向上させることができ、太陽電池モジュール20の製造コストを安くでき、しかも太陽電池モジュール20の表裏面を凹凸のない平坦な表面に構成できる。また、太陽電池モジュール20の内部に気泡が残らないため、封止性に優れた信頼性の高い太陽電池モジュール20を製造することができる。
【0044】
以下、本発明で用いる部材について詳細に説明する。
<太陽電池素子>
太陽電池素子22には、結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、アモルファスシリコン、銅インジウムセレナイド、化合物半導体、有機半導体など、従来公知な素子を目的に応じて種々選択して用いて良い。これら太陽電池素子22は、所望する電圧或いは電流に応じて複数個を直列または並列に接続した太陽電池ストリングとした状態で本発明の製造工程に用いることができる。本発明においては、封止樹脂25として液状樹脂を用いるため、太陽電池素子22の封止面の凹凸や太陽電池素子22とストリングの間隙への封止性にすぐれる。このため、太陽電池素子22とストリングの間に大きな間隙が生じる球状シリコン型太陽電池に好適である。
【0045】
さらには、絶縁化した基板上に太陽電池素子を集積化して所望の電圧或いは電流を得るようにしたものを太陽電池素子22として用いることもできる。本発明においては、ロールツーロール方式の製造方式に適しているため、フレキシブル基板上に太陽電池素子22を成膜させたフレキシブル太陽電池素子を用いることが特に好ましい。
【0046】
なお、太陽電池素子22の封止面には、通常必要に応じて、集電電極や、バスバー電極などの電極部材が設けられている。また、太陽電池素子22は、封止樹脂25との濡れ性や密着性を高めるために、予めシランカップリング剤などで表面処理をしておくことが好ましい。
【0047】
<表面材>
表面材21には、ガラス、透明樹脂フィルム、透明樹脂基板など従来公知の材料を目的に応じて種々選択して用いて良い。本発明においては、ロールツーロール方式の製造方式に適しているため、可撓性を有するフィルム基材を用いることが特に好ましい。
【0048】
また、太陽電池素子22が太陽電池ストリングの状態で提供される結晶型太陽電池の場合には、本発明により予め封止した太陽電池素子22を用い、合わせガラスの内部に挿入すれば、太陽電池素子22の封止面或いは素子とストリングの間の凹凸の問題がなく、生産性の向上がはかれ、信頼性の高い太陽電池モジュール20の製造が可能となる。この場合、表面材21及び保護材26のかわりに、離型処理した基材或いは離型機能を有する基材を用いて、太陽電池素子22を封止樹脂のみで封止したモジュールを使えば表面材21及び保護材26を使わずに製造する効果もはかれる。
【0049】
<保護材>
保護材26には、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどの可撓性を有する樹脂フィルム及びこれらの積層体、金属箔或いは可撓性を有する薄い金属板、折り曲げ可能なセラミックス、並びに樹脂フィルムと金属、セラミックスの可撓性を有する複合体など従来公知の材料を目的に応じて種々選択して用いて良い。
【0050】
本発明では、保護材26を介して液状の封止樹脂25を加圧ロール30で加圧しながら、封止樹脂25の厚み調整を行い、気泡の混入なく貼り合わせを行うものであることから、ここでいう保護材26は、可撓性を有する材料からなるものに限定される。
【0051】
また、前述のように、合わせガラス型太陽電池の生産性向上のために、離型処理した基材或いは離型機能を有する基材を用いることもできる。
【0052】
<液状の封止樹脂>
本発明で用いる液状の封止樹脂25は、ダイス27で塗布可能な樹脂で、熱又は紫外線により硬化後、太陽電池モジュール20の封止材として要求される性能を満たすものであれば特に限定はない。
【0053】
ここで太陽電池モジュール20の封止材として要求される性能とは、例えば、透明性、耐候性、耐熱性、モジュール構成材料との接着性などである。フレキシブル型太陽電池モジュール用としては、柔軟性などがさらに要求される。
【0054】
このような要求を満たす材料としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びこれらの変性樹脂などからなる組成物が挙げられる。液状の封止樹脂25の粘度は、ダイス27を用いて塗布するため、1〜1000Pa・s、好ましくは5〜500Pa・sであること。1000Pa・sを超えると樹脂の流動性が大きく、太陽電池素子22の封止面の凹凸への追従性が不十分で、空隙や気泡の残留が発生しやすくなり、またポンプなどによる樹脂の供給圧力の限界が生じ、生産性が低下することになる。一方、1Pa・s未満であると樹脂の流動性が高すぎるため、太陽電池素子22の封止面の凹凸を埋めるのに十分な樹脂の厚みを保持できない。
【0055】
<ダイス及び塗布装置>
図3に、本発明で用いるダイス27及び塗布装置の一例を示した。
液状の第1封止樹脂23及び第2封止樹脂24は、これを充填した樹脂タンク32から圧送ポンプ33により、配管34を経由して、ダイス27から、基材38に塗布される。封止樹脂23、24は、樹脂タンク32から、ダイス27の先端リップ37で吐出されるまで、外界との接触は一切なく外部から気泡の混入なく基材38へ供給、塗布される。圧送ポンプ33は、使用される封止樹脂23、24の粘度、要求される封止樹脂23、24の塗布厚み、及び要求されるライン速度に応じて、必要となる塗布量を供給できる圧力比を備えたポンプが選定される。
【0056】
また、図3では、1液型の封止樹脂に用いる圧送ポンプ33を示したが、主剤と硬化剤からなる2液型の封止樹脂23、24の場合には、2液混合型の圧送ポンプ33を用いてもよい。
定流量ポンプ35は、圧送ポンプ33の脈動の影響を抑え、基材38へ均一に一定量の必要な塗布量を供給する役割をもつ。ここでいう基材38とは、図2で示した、表面材21、または第1封止樹脂23上に供給された太陽電池素子22のことである。
【0057】
本発明で用いるダイス27は、一定のリップ開度(スリット幅)を幅方向に均一にもったスリットノズルからなる塗布ノズルである。ダイス27の材質は、特に限定されないが、加工精度、耐久性などの点からはステンレスやアルミであることが好ましい。ダイス27の内部には、ダイス27の幅方向に設けられた溝状の、封止樹脂23、24の溜まり部36で、圧力をかけて送り込まれた封止樹脂23、24がこの溜まり部36で一旦滞留して、幅方向に拡げられ、幅方向に均一にリップから塗布されるようになる。ダイス27の幅は、製造する太陽電池モジュール20の幅に応じて設定する。ダイス27のリップ開度は、封止樹脂23、24の塗布厚みを目安として設定する。先端リップ37と基材38の距離は、封止樹脂23、24の塗布厚みを目安として設定する。先端リップ37と基材38の距離が大きすぎると、基材38と封止樹脂23、24との間に気泡が巻き込まれやすくなる。先端リップ37と基材38の距離が小さすぎると、基材38の上面への接触による基材38の損傷の恐れがある。
【0058】
図2で、第2加圧ロール(ロールラミネーター)30で貼り合せる直前の、太陽電池素子22、第1封止樹脂23及び第2封止樹脂24の合計の厚みは、第2加圧ロール30で調整制御された後の封止樹脂25の厚み以上とする。第2加圧ロール30で調整制御される厚み以下では、第2加圧ロール30で加圧供給される保護材26への押圧がかからず、封止樹脂25と保護材26の間に気泡が混入することになる。
【0059】
ここで、第2加圧ロール30で貼り合せる直前の、太陽電池素子22、第1封止樹脂23と第2封止樹脂24の合計の厚みは、第1加圧ロール29で太陽電池素子22により押し広げられた後の第1封止樹脂23の厚み、太陽電池素子22の厚み、さらに第2封止樹脂24の塗布厚みの合計となる。
【0060】
<ロールラミネーター>
本発明に用いる第2加圧ロール30は、上下にセットされた2本のロールを用いて、封止樹脂25を一定の厚みに調整制御して、封止樹脂25で封止された太陽電池素子22及び表面材21と保護材26とを気泡の混入なく貼り合せる役割をもつ。封止樹脂25の厚みは、2本のロールのギャップ調整によって、調整制御される。封止樹脂25の厚みは、太陽電池素子22の厚み以上で、封止特性を発現できる最小の厚みに設定することが望ましい。
【0061】
また、第2加圧ロール30では、保護材26を加圧しながら供給することによって、封止樹脂25と保護材26の間に気泡が混入することを防止しているため、保護材26は適当なテンション(張力)をかけて供給することがのぞましい。
【0062】
ロールの構造や材質は、保護材26、表面材21への損傷を与えず、均一な押圧ができるものであれば、特に限定されない。
【0063】
また前述のように、ロールラミネート後、硬化工程において、第2加圧ロール(ロールラミネーター)30で調整制御された封止樹脂25の厚みを保持するために、太陽電池モジュール20の両サイドに予めスペーサーを設置しておくことが好ましい。このスペーサーは、調整制御される封止樹脂25の厚みと同じ厚みを持ち、硬化工程で封止樹脂25が硬化するまでの間、封止樹脂25の厚みが保持されるように表面材21並びに保護材26とともに固定保持される。
【0064】
またこのスペーサーは、前述のように、第2加圧ロール(ロールラミネーター)30で封止樹脂25の厚みを調整制御する際、調整制御する厚み以上の余分な封止樹脂が太陽電池モジュール20の両サイドに拡がるときのダム材としての役割を果たす。このスペーサーは、封止樹脂25の硬化後、不要部分として取り除かれてもよいが、取り除かずに太陽電池モジュール20を構成する部品としてもよい。
【0065】
以下、本発明の太陽電池モジュール20の製造方法を具体的実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものでなく、その要旨の範囲内で種々変更することができる。
【実施例1】
【0066】
図2に、本実施例1の太陽電池モジュール20の製造方法の概略を示した。
太陽電池素子22として、約150mm角の多結晶シリコン太陽電池セルを3枚直列化した太陽電池ストリングを作製した。セルの直列化は銅タブよりなるインターコネクタによって行い、電極取出し部には予め剥離しやすいフッ素樹脂系テープを貼り付けておく。なお、ここで用いた多結晶シリコン太陽電池セルの厚さは約250μmであり、高さ約50μmの櫛形集電電極が形成されたものである。太陽電池セルストリングは、集電電極に直列化に用いる銅タブの厚みが加わるので、封止面には最大200μm程度の凹凸が形成された状態となっている。太陽電池素子22は、予めシランカップリング剤KBE−403(信越化学工業製)の2%イソプロピルアルコール溶液を刷毛を用いて、素子の封止面に塗布、乾燥させておく。
【0067】
第1封止樹脂23及び第2封止樹脂24に用いる液状封止樹脂として、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂YX8034(ジャパンエポキシレジン社製)100質量部、エポキシ樹脂用硬化剤として無水メチルヘキサヒドロフタル酸MH−700(新日本理化社製)60質量部、硬化促進剤として第四級ホスホニウム塩PX−4MP(日本化学工業製)1質量部、酸化防止剤として2,6−ジ−tブチル−p−クレゾール0.2質量部、トリフェニルホスファイト0.2質量部、紫外線吸収剤として2−エチル、2‘−エトキシ−オキザリニン0.2質量部、粘度調整剤としてシリカフィラーAEROSIL 200(日本アエロジル社製)2質量部を秤量し、真空混合攪拌機により約1時間混合した組成物を用いた。得られた液状封止樹脂の粘度は、約10Pa・sであった。液状封止樹脂は、図3に示した樹脂タンク32となるペール缶に気泡の混入のないよう充填したのち、圧送ポンプ33にセットした。ダイス27より封止樹脂23、24を塗布する前に、予め樹脂タンク32からダイス27の先端リップ37までの配管内34に気泡の残留がないように、封止樹脂23、24を十分吐出させ、エアー抜きを行っておく。
【0068】
図2に示した表面材21としては厚さ3.2mmのガラス基板、保護材26としては厚さ300μmのテドラーフィルム(デュポン社製)、アルミ、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる積層フィルムによるバックシートを用いた。ガラス基板上には、ガラス基板の搬送方向に対して左右の両サイドに、予め幅20mm、厚み1mmのフッ素樹脂系スペーサーを240mm幅の間隔で設置した。
【0069】
送りロール28、第1加圧ロール29、並びに第2加圧ロール30のロール速度は、ライン速度3mminになるように設定、表面材21であるガラス基板、保護材26であるテドラーフィルムがこの速度に応じて、搬送または供給される。
【0070】
まず、ダイス27から第1封止樹脂23を表面材21であるガラス基板上に塗布した。ここで用いたダイス27の有効幅は200mm、リップ開度は500μm、スリットノズルの先端リップ37と表面材21であるガラス基板との距離は、500μmとした。第1封止樹脂23の塗布厚みは、作製する太陽電池モジュール20の中央部で約600μm、太陽電池モジュール20の両サイド部で約400μmであった。第1封止樹脂23は、表面材21であるガラス基板上に、ガラス基板との間に気泡を混入することなく均一に塗布することができた。
【0071】
次に、上記の太陽電池素子22を、表面材21上に供給した第1封止樹脂23上に第1加圧ロール29によりストリング間で折り曲げながら供給した。太陽電池素子22は、斜め方向に傾けながら押圧されて第1封止樹脂23に供給されることによって、第1封止樹脂23との間に気泡を混入することなく供給された。このとき、第1封止樹脂23は押圧されることにより、太陽電池モジュール20の進行方向に対して左右に押し広げられるが、予め設置されたスペーサーがダム材となるので、これをこえて拡がることはない。
【0072】
次に、第1封止樹脂23の塗布と同様に、第2封止樹脂24をダイス27を用いて太陽電池素子22および太陽電池素子22の外側の第1封止樹脂23上に塗布した。ダイス27の有効幅、リップ開度は、第1封止樹脂23の塗布時と同様の条件とした。ダイス27の先端リップと太陽電池素子22との間の距離は、500μmとした。第2封止樹脂24は、太陽電池素子22及び第1封止樹脂23との間に気泡の混入なく均一に塗布された。このとき、太陽電池素子22のストリング部などで、第2封止樹脂24と第1封止樹脂23が直接接触する部分では、第2封止樹脂24と第1封止樹脂23は、一体化した液状の封止樹脂25の層を形成する。
【0073】
次に、保護材26を第2加圧ロール(ロールラミネーター)30により、第2封止樹脂24と第1封止樹脂23が一体化した液状の封止樹脂25上に、供給される。第2加圧ロール30の上下の2本のロール間のクリアランスは4.5mmとした。表面材21であるガラス基板の厚みが3.2mm、保護材26の厚みが0.3mmで合計3.5mmとなるので、封止樹脂25の厚みは、1mmに調整制御される。太陽電池素子22の厚みが約0.3mm、第1封止樹脂23及び第2封止樹脂24の塗布厚みがそれぞれ約0.5mmなので、合計約1.3mmの厚みが、ここで厚み1mmの封止樹脂25のなかに太陽電池素子22が封止された層を形成し、余分の封止樹脂25は押圧によって太陽電池モジュール20の進行方向に対して左右に押し広げられるが、予め設置されたスペーサーがダム材となり、これをこえて拡がることはない。封止樹脂25が押圧をうけて押し広げられることにより、保護材26は封止樹脂25との間に気泡を混入することなく均一に塗布貼り合せされた。
【0074】
次に、表面材21と保護材26の間に太陽電池素子22が封止樹脂25によって封止された太陽電池モジュール20は、進行方向に対して左右の両サイドに設置されたスペーサーで固定し、加熱炉にて120℃、2時間の加熱により封止樹脂25を硬化させる。封止樹脂25硬化後の太陽電池モジュール20の外観を確認した結果、気泡を混入することなく封止されていることが確認された。
【実施例2】
【0075】
図4に、本実施例2の太陽電池モジュール20の製造方法の概略を示した。
太陽電池素子22として、直径約1.5mmの球状シリコン素子を20直列×20並列のマトリックス接続(20行20列の直並列接続)したものを用いた。行方向の球状シリコン太陽電池素子は、中心間距離3.2mmで等間隔に配置され、直径0.5mmの銅線により接続されている。ここで用いた太陽電池素子22の大きさは、幅が約40mm、長さが約40mm、最大厚みは約1.5mmとなる。太陽電池素子22は、実施例1と同様に、予めシランカップリング剤により、表面処理を行った。
【0076】
表面材21及び保護材26として、厚さ50μmの透明なポレエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
第1封止樹脂23及び第2封止樹脂24に用いる液状封止樹脂として、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂YX8034(ジャパンエポキシレジン社製)100質量部、光カチオン重合開始剤としてアデカオプトマーSP−170(新日本理化社製)1質量部、光ラジカル重合開始剤としてダロキュアー1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1質量部、粘度調整剤としてシリカフィラーAEROSIL 200(日本アエロジル社製)2質量部を秤量し、真空混合攪拌機により約1時間混合した組成物を用いた。得られた液状封止樹脂の粘度は、約10Pa・sであった。これ以外は、実施例1と同様に作製した封止樹脂を樹脂タンクに充填、ダイス27及び塗布装置に供給した。封止樹脂25は、コンベア式紫外線照射炉を用い、3000mJ/cm2の積算光量の紫外線照射により硬化させた。
【0077】
ダイス27の幅は50mm、リップ開度は1mm、先端リップ37と被塗物との距離は1mmとした。塗布直後の塗布厚みは約1mmになるよう定量装置で供給量を調整した。
第2加圧ロール(ロールラミネーター)30の上下2本のロールの距離は、表面材21及び保護材26の厚みを考慮して封止樹脂25の厚みが2mmとなるように調整した。
太陽電池モジュール20の進行方向に対して左右に設置するスペーサーの厚みは、2mmとした。
上記以外は、実施例1と同様にして太陽電池モジュール20を作製した。
ここで用いた太陽電池素子22は、球状シリコンの直径約1.5mmとストリングである直径0.5mmの銅線との凹凸があるにもかかわらず、表面材21及び保護材26であるポリエチレンテレフタレートフィルムの間に、気泡の混入なく封止されていることが確認された。
【実施例3】
【0078】
図5に、本実施例3の太陽電池モジュール20の製造方法の概略を示した。
太陽電池素子22として、ポリイミドフィルムにアモルファスシリコンなどを成膜したフレキシブル型のアモルファスシリコン太陽電池セル(厚さ約0.35mm、幅200mm、長さ300mm)を用いた。
【0079】
表面材21及び保護材26として、厚さ25μmのフッ素系フィルムETFE(旭硝子社製)を用いた。
ダイス27の幅は250mm、リップ開度は0.5mm、リップと被塗物との距離は0.5mmとした。
【0080】
第2加圧ロール(ロールラミネーター)30の上下2本のロールの距離は、表面材21及び保護材26の厚みを考慮して封止樹脂25の厚みが1mmとなるように調整した。
太陽電池モジュール20の進行方向に対して左右に設置するスペーサーの厚みは、2mmとした。
【0081】
上記以外は、実施例1と同様にして太陽電池モジュール20を作製した。
フレキシブル型太陽電池は、太陽電池素子22を第1加圧ロール29で加圧する際、太陽電池素子22を曲面状に曲げて供給できるため、気泡除去性のすぐれた太陽電池モジュール20が得られた。
【0082】
このようにして作製した太陽電池モジュール20の外観を観察したところ、封止材中の気泡混入、空隙残留は確認されず、特に異常は認められなかった。また、A.M.−1.5、100mW/cm2の擬似太陽光下で電気出力を測定したところ、従来のエチレン-ビニルアセテート(EVA)からなる封止材シートにより真空ラミネーターを用いて封止した太陽電池モジュール20と同等の出力が出ていることが確認できた。さらに、作製した太陽電池モジュール20の信頼性を、JIS C 8917(結晶系太陽電池モジュールの環境試験方法及び耐久性試験方法)に基づき、以下の高温高湿試験、温湿度サイクル試験、温度サイクル試験を行った。
【0083】
(1)高温高湿試験
85℃85%RHの雰囲気中に1000時間投入する。
(2)温度サイクル試験
90℃/10分、−40℃/10分の温度サイクルを200サイクル行う。
(3)温湿度サイクル試験
85℃85%RH/10分、−40℃/1時間の温湿度サイクルを10サイクル行う。
【0084】
各試験を行った結果、いずれの試験においても太陽電池モジュール20の外観及び電気特性に変化は認められず、本製造方法にかかる太陽電池モジュール20が屋外使用条件下における優れた長期信頼性を有していることが確認された。
【0085】
次に、前記製造方法にて製作した太陽電池モジュール20を、2枚の板ガラス40間に配置させる中間体41として用いた、合わせガラスの製造方法について説明する。なお、太陽電池素子22として、球状シリコン型太陽電池素子を用いた場合について例示しながら説明するが、太陽電池素子22としては前述した任意の構成のものを採用できる。
【0086】
先ず、離型可能な素材からなる表面材21及び保護材26を用いて、前記製造方法により太陽電池モジュール20を製作する。
【0087】
次に、図6(a)に示すように、この太陽電池モジュール20から表面材21及び保護材26を剥離させて中間体41を製作し、図6(b)に示すように、この中間体41の両面に、熱可塑性樹脂からなる接着シート43を積層するとともに、両接着シート43の外側に板ガラス40を積層し、この積層体44を真空ラミネート装置60のチャンバー61に装填して、該チャンバー61内を真空脱気した後、積層体44を加熱するとともに加圧板62にて加圧し、接着シート43により中間体41を両板ガラス40に接着して、合わせガラスを得ることになる。
【0088】
ただし、図7(a)に示すように、接着シートからなる表面材21及び保護材26を用いて、前記製造方法にて太陽電池モジュール20を製作し、図7(b)に示すように、この太陽電池モジュール20からなる中間体41の両面に板ガラス40を積層して、この積層体44を真空ラミネート装置60のチャンバー61に装填し、該チャンバー61内を真空脱気した後、該積層体44を加熱するとともに加圧板62により加圧し、中間体41を両板ガラス40に接着して、合わせガラスを製作することもできる。
【0089】
また、太陽電池モジュール20の封止樹脂25として、液状EPT(エチレンプロピレン共重合体)樹脂などのように、硬化後においても加熱することで粘着性が発現する液状樹脂を用いて、前記製造方法にて太陽電池モジュール20を製作し、図8(a)に示すように、該太陽電池モジュール20の表面材21及び保護材26を剥離させてなる中間体41を製作し、図8(b)に示すように、この中間体41の両面に板ガラス40を直接的に積層して、該積層体44を真空ラミネート装置60のチャンバー61に装填し、該チャンバー61内を真空脱気した後、該積層体44を加熱するとともに加圧板62にて加圧し、中間体41の両面に板ガラス40を接着することも可能である。
【0090】
このように太陽電池モジュール20から表面材21及び保護材26を剥離させたものを中間体41として用いる場合には、中間体41と板ガラス40間における気泡の残留を防止するため、図9に示すように、表面材21及び保護材26として、封止樹脂25側の面に幅方向の全長にわたって延びる条溝45を長さ方向に間隔をあけて形成したものを用い、太陽電池モジュール20の製造時に、中間体41の両面に条溝46を形成することも好ましい実施の形態である。この場合には、チャンバー61内を真空脱気したときに、中間体41と板ガラス40間における空気の残留を防止して、両者間に気泡が残留することを防止でき、合わせガラスとしての品質を向上できる。
【0091】
なお、前記製造方法にて製作した太陽電池モジュール20を、単層又は複層の窓ガラスの板ガラス40へ施工する場合には、図10に示すように、太陽電池モジュール20を接着剤や粘着剤47により板ガラス40に直接的に接着したり、図11に示すように、中空ポリカーボ製のプラスチック段ボールからなる断熱材48を接着剤53により板ガラス40に予め接着し、この断熱材48に対して接着剤や粘着剤47で太陽電池モジュール20を接着したりすることができる。また、施工した太陽電池モジュール20の外面に遮熱フィルムを貼着したり、図12に示すように、太陽電池モジュール20の保護材26に代えて遮熱フィルム49を設けたりすることも可能である。太陽電池モジュール20は、窓ガラスの全面に施工することもできるが、装飾性を高めたり、外光を取り入れたりするため、窓ガラスの一部に施工することもできる。窓ガラスへの太陽電池モジュール20の施工は、現場で施工することも可能であるし、工場にて施工することも可能である。例えば、工場において、図13(a)に示すように、太陽電池モジュール20の保護材26に粘着剤47を塗布して、離型フィルム50を貼着し、現場にて、図13(b)に示すように、離型フィルム50を剥がして、粘着剤47により太陽電池モジュール20を窓ガラス40の室内側に施工することができる。更に、必要に応じて、図13(c)に示すように、粘着剤層51を形成したハードコート付保護フィルム52を、施工した太陽電池モジュール20の外面側に貼着することができる。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲においてその構成を変更し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0093】
20 太陽電池モジュール 21 表面材
22 太陽電池素子 23 第1封止樹脂
24 第2封止樹脂 25 封止樹脂
26 保護材 27 ダイス
28 送りロール 29 第1加圧ロール
30 第2加圧ロール(ロールラミネーター)
32 樹脂タンク 33 圧送ポンプ
34 配管 35 定流量ポンプ
36 溜まり部 37 先端リップ
38 基材
40 板ガラス 41 中間体
43 接着シート 44 積層体
45 条溝 46 条溝
47 粘着剤 48 断熱材
49 遮熱フィルム 50 離型フィルム
51 粘着剤層 52 ハードコート付保護フィルム
53 接着剤
60 真空ラミネート装置 61 チャンバー
62 加圧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面材の裏面側に載置した太陽電池素子の裏面側と、該太陽電池素子の周囲の表面材の裏面側とにわたって、ダイスを用いて常温液状の裏面側封止樹脂を塗布し、その後、ロールラミネーターを用いて、前記裏面側封止樹脂を介して保護材を貼り合せる封止工程を有する太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記封止工程の前に、前記表面材の裏面にダイスを用いて常温液状の表面側封止樹脂を塗布し、その後、塗布した表面側封止樹脂の上に太陽電池素子を載置する表面側樹脂塗布工程を設け、前記封止工程では、前記太陽電池素子とその周囲の表面材に塗布されている前記表面側封止樹脂上に裏面側封止樹脂を塗布し、その後、ロールラミネーターを用いて、前記裏面側封止樹脂を介して保護材を貼り合せる請求項1記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記封止樹脂が、熱または紫外線により硬化するものである請求項1又は2記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記封止樹脂の常温での粘度が、1〜1000Pa・sである請求項1〜3のいずれか1項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記太陽電池素子が球状の太陽電池素子からなる請求項1〜4のいずれか1項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記保護材が、可撓性を有する素材からなる請求項1〜5のいずれか1項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記保護材をロールラミネーターの加圧ロールに対して張力を作用させながら供給し、前記ロールラミネーターでは、前記加圧ロールにより前記保護材を介して封止樹脂を押し広げながら、前記保護材を貼り合わせる請求項1〜6のいずれか1項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記ダイスへの封止樹脂の供給は、圧送ポンプおよび定流量装置により、外界との接触を遮断して気泡が混入しないようになした請求項1〜7のいずれか1項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記ダイスに、前記封止樹脂が幅方向に均一に塗布されるように、内部に供給される封止樹脂の溜まり部を設けた請求項1〜8のいずれか1項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記表面材及び保護材が、離型フィルム又は離型機能を有する基材からなる請求項1〜9のいずれか1項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記表面材及び保護材が、熱可塑性樹脂フィルムからなる請求項1〜9のいずれか1項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項12】
前記請求項10記載の太陽電池モジュールの製造方法により太陽電池モジュールを製作し、
前記太陽電池モジュールの表面材及び保護材を剥離させてなる中間体の表裏面に、熱可塑性樹脂からなる接着シートを積層するとともに、両接着シートの外側に板ガラスを積層し、この積層体を真空ラミネート装置のチャンバーに装填して、該チャンバー内を真空にし、該積層体を加熱するとともに加圧して、前記接着シートにより、前記中間体に両板ガラスを接着する、
ことを特徴とする発電機能を有する合わせガラスの製造方法。
【請求項13】
前記請求項10記載の太陽電池モジュールの製造方法により太陽電池モジュールを製作し、
前記太陽電池モジュールの表面材及び保護材を剥離させてなる中間体の表裏面に板ガラスを積層し、この積層体を真空ラミネート装置のチャンバーに装填して、該チャンバー内を真空にし、該積層体を加熱するとともに加圧して、前記封止樹脂により、前記中間体に両板ガラスを接着する、
ことを特徴とする発電機能を有する合わせガラスの製造方法。
【請求項14】
前記表面材及び保護材により中間体の表裏面に一定間隔おきに脱気用の条溝を形成した請求項12又は13記載の発電機能を有する合わせガラスの製造方法。
【請求項15】
前記請求項11記載の太陽電池モジュールの製造方法により太陽電池モジュールを製作し、
前記太陽電池モジュールからなる中間体の表裏面に板ガラスを積層し、この積層体を真空ラミネート装置のチャンバーに装填して、該チャンバー内を真空にし、該積層体を加熱するとともに加圧して、前記中間体に両板ガラスを接着する、
ことを特徴とする発電機能を有する合わせガラスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−4902(P2013−4902A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137401(P2011−137401)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】