説明

太陽電池モジュールの製造装置及びその製造方法

【課題】太陽電池用のセルを、縁部同士が重なるようにして複数枚並べる際に、セルが浮き上がったままの状態となるのを防ぐ。
【解決手段】ステージ10に載せる対象となる太陽電池用のセル2の一部21を保持可能でありかつ当該保持を解除可能な保持部11と、セル2の長手方向を移動方向として保持部11をステージ10上で進退移動させる移動手段12とを備えている。前進させた保持部11が保持するセル2の前方側の端部22を、ステージ10に吸着させてから、当該保持部11によるセル2の保持を解除した状態で、当該保持部11を後退させる。保持部11を後退させる際に、ステージ10上に吸着していくセル2の上を、押さえ部材13が通過して、当該押さえ部材13が、セル2の浮き上がり部をステージ10側へ押さえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用のセルを複数枚並べて接続した太陽電池モジュールを製造するための製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールとして、細長い太陽電池用のセルを複数枚並べて接続したスラット構造のものが知られており(例えば、特許文献1参照)、この太陽電池モジュールは、例えば、以下のようにして製造される。
帯状である金属材料の上に光電変換のための各種製膜を行った後、所定長さに切断し、細長い太陽電池用のセルを得る。そして、このセルを複数枚、隣り合うセルの長辺側の縁部同士が重なるようにしてステージ上に並べ、重ね合わせた縁部同士を接合し、1枚の太陽電池モジュールとしている。このようにして製造された太陽電池モジュールは、複数枚のセルが電気的に直列接続された状態となり、実用的な電圧を得ることができる。
【0003】
複数枚のセルを、長辺側の縁部が重なるようにしてステージ上に並べて置く装置として、図7に示しているように、セル81の上面を吸着する吸着ヘッド84を備えたものがあり、この吸着ヘッド84は、ステージ83上でセル81を並べる方向(図7では左右方向)に移動することができる。
この装置では、吸着ヘッド84による、セル81の吸着、上昇F1、水平移動F2、降下F3、及び、吸着の解除、の順で搬送動作が行われ、吸着したセル81を、先に置かれているセル81の縁部82上に載せることができる。そして、ヘッド84が戻り、前記搬送動作が繰り返し行われ、次々とステージ83上にセル81が並べられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/023264号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スラット構造の太陽電池モジュール用のセル81は細長い部材であり、このセル81に反りや捩れが生じていると、前記吸着ヘッド84によって当該セル81を搬送して、ステージ83上に先に置かれているセル81の縁部82上に載せたとしても、上となる当該セル81が、下のセル81の縁部82に対して部分的に浮いた状態になることがある。この場合、隣り合うセル81,81の接合はその縁部82,82同士で例えば半田等によって行われることから、セル81が部分的に浮き上がったままの状態であると、セル81,81の接合が上手く行われないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、太陽電池用のセルを、縁部同士が重なるようにして複数枚並べる際に、セルが浮き上がったままの状態となるのを防ぐことができる太陽電池モジュールの製造装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の製造装置は、複数枚の細長い太陽電池用のセルを、その長辺側の縁部同士が上下重なるようにして、並べて載せると共に、これらセルを吸着するステージを備えた太陽電池モジュールの製造装置であって、前記ステージに載せる対象となる太陽電池用のセルの一部を保持可能でありかつ当該保持を解除可能な保持部と、前記セルの長手方向を移動方向として前記保持部を前記ステージ上で進退移動させることができ、前進させた前記保持部が保持する前記セルの前方側の端部を前記ステージに吸着させてから、当該保持部による当該セルの保持を解除した状態で、当該保持部を後退させる移動手段と、前記保持部を後退させる際に、前記ステージに吸着していく前記セルの上を通過して当該セルの浮き上がり部を当該ステージ側へ押さえる押さえ部材とを備えていることを特徴とする。
【0008】
また、前記製造装置によって行われる本発明の製造方法は、複数枚の細長い太陽電池用のセルを、その長辺側の縁部同士が上下重なるようにして、ステージの上面に並べて載せる太陽電池モジュールの製造方法であって、前記ステージに載せる対象となる太陽電池用のセルの一部を保持した保持部を、当該セルの長手方向を移動方向として前記ステージ上の所定位置へ前進させる前進工程と、前記所定位置へと前進させた前記保持部が保持している前記セルの前方側の端部を前記ステージに吸着させてから、当該保持部による当該セルの保持を解除した状態で、当該保持部を前記所定位置から後退させることにより、当該セルを当該前方側の端側から前記ステージ上に載せて吸着させる後退工程と、を含み、前記後退工程において、前記ステージ上に吸着していく前記セルの上を押さえ部材が通過して、当該セルの浮き上がり部を押さえることを特徴とする。
【0009】
本発明の製造装置及び製造方法よれば、ステージ上で前進させた保持部が保持するセルの前方側の端部をステージに吸着させてから、保持部によるセルの保持を解除した状態で、保持部を後退させることにより、セルは前方側の端部からステージ上に載って吸着されていく。そして、この際に、押さえ部材を、ステージ上に吸着されていくセルの上を通過させて、セルの浮き上がり部を押さえるので、セルの浮き上がりを解消することができる。このため、ステージ上において、例えば、セルの反りや捩れ等によってその一部が上に浮きそうな場合であっても、セルをフラットな状態としてステージに吸着させることが可能となる。つまり、ステージ上においてセル(の一部)が浮き上がったままの状態となるのを防止することができる。
【0010】
前記太陽電池用のセルは、その表面に光電変換を行う発電層が形成されていることから、その表面に傷を付けないようにするのが好ましく、そのために、前記保持部は、前記セルの裏面を吸着する吸着部を有している構成とするのが良い。
【0011】
また、前記ステージには、前記セルを吸着するために当該セルの裏面に対して吸引を行う吸引穴が、前記保持部の進退方向に並んで複数設けられており、前記保持部が前進する際に、当該前進方向に並ぶ前記吸引穴を順次覆って塞ぐと共に、前記保持部が後退する際に、塞いでいた前記吸引穴から剥がれるシート部材を備えているのが好ましい。
この場合、保持部が前進する際に、シート部材によってステージの吸引穴が塞がれ、また、保持部が後退する際には、このシート部材が吸引穴から剥がされるが、その代わりに、ステージに載せる対象のセルが当該吸引穴を覆って塞ぐ。このため、セルを長手方向に移動させてステージに載せる作業の際に、吸引穴が開口状態として放置されるのを防ぐことができ、ステージにおける吸引力が低下するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セルをフラットな状態としてステージに吸着させることが可能となり、ステージ上においてセルが浮き上がったままの状態となるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製造装置の概略構成及びその動作を示す側面図である。
【図2】本発明の製造装置の概略構成及びその動作を示す側面図である。
【図3】本発明の製造装置の概略構成を示す平面図である。
【図4】押さえ部材の説明図であり、下方へ揺動させた状態にあるヘッドを進退方向に見た図である。
【図5】太陽電池モジュールの説明図である。
【図6】(a)は、シート部材及び調整機構の説明図であり、(b)はステージの平面図である。
【図7】従来の製造装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1と図2は、本発明の製造装置1の概略構成及びその動作を示す側面図である。図3はこの製造装置1の平面図である。この製造装置1を含む製造システム(製造ライン)によって製造される太陽電池モジュール(以下、モジュールともいう)は、図5に示しているように、複数枚の細長い太陽電池用のセル2(太陽電池セル)を並べて備えており、これら複数のセル2の両側に電極4が設けられている。セル2は短冊形状であり、セル2の長手方向と、セル2が並べられるセル2の配列方向とは直交している。なお、図5では、説明を容易とするためにセル2を3枚のみとしているが、実際のモジュールでは、3枚よりも多いセル2を備えている。
【0015】
これらセル2及び電極4は、その両面からカバー部材5によって挟まれており、モジュールは一体のシート状を成している。カバー部材5は、可撓性を有し太陽光を透過させるフィルム状の樹脂部材から成り、セル2及び電極4の表面及び裏面に密着している。なお、図5では、カバー部材5をセル2から離した状態としている。
配列方向で隣り合うセル2,2の縁部3,3同士は、接合金属を介して上下重ね合わされた状態にあり、当該接合金属によって、セル2,2は重ね合わされた縁部3,3において電気的及び構造的に接続されている。接合金属は、例えば半田6から成り、半田6は、セル2の縁部3に沿ってセル2の長手方向に沿って点在して設けられている。
【0016】
このようなモジュールを製造するために、まず、帯状である金属材料の上に光電変換のための各種製膜を行った後、これを所定長さに切断し、複数枚の細長いセル2を得る。そして、ステージ上で、これらセル2を、隣り合うセル2,2の長辺側の縁部3,3同士が重なるようにして前記配列方向に順に並べ、これら縁部3,3同士を接合し、1枚の太陽電池モジュールとする。
そして、本発明の製造装置1は、ステージ10上において、隣り合うセル2,2の長辺側の縁部3,3同士が上下重なるようにして、前記配列方向にセル2を順に並べて置くことができる。
【0017】
製造装置1の上流側(図1〜図3では左側)には、所定長さとなった細長いセル2を、その長手方向を搬送方向として搬送する搬送装置50が設けられている。搬送装置50は、例えばセル2を載せて運ぶベルトコンベアからなる。搬送装置50は、ステージ10に載せる対象となるセル2を当該ステージ10側へ搬送し、この搬送方向について前方側(先頭側)の部分(セル2の一部21)を、ステージ10の縁部に設定されている待機位置P1に位置させる(図1(b)参照)。そして、このセル2を、1枚ずつ、製造装置1によってステージ10上に載せる作業が行われる。なお、図3では、既に4枚のセル2−1〜2−4がステージ10上に載った状態にあり、5枚目のセル2−5をステージ10に載せる前の状態を示している。
【0018】
図1と図3とにおいて、製造装置1は、前記ステージ10と、このステージ10に載せる対象となるセル2の一部21を保持可能でありかつ当該保持を解除可能な保持部11と、セル2の長手方向を移動方向として保持部11を前記待機位置P1とステージ10上の所定位置P2との間を進退移動させる移動手段12と、この移動手段12によって保持部11を所定位置P2から待機位置P1へと後退させる際に当該保持部11と共に後退する押さえ部材13とを備えている。なお、搬送装置50によるセル2の搬送方向と、移動手段12による保持部11の所定位置P2への前進方向とは一致する。
【0019】
図3において、前記ステージ10は、配列方向に隣り合うセル2,2の長辺側の縁部3,3同士を上下重ねた状態として、複数枚のセル2を並べて載せることができ、また、このステージ10上に載った複数枚のセル2を吸着することができる。
ステージ10には、セル2を吸着するために当該セル2の裏面に対して吸引を行う吸引穴15が、複数設けられている。吸引穴15は、保持部11の進退方向に沿って1列に並んで複数形成されており、さらに、この列はセル2の配列方向に複数設けられている。吸引穴15は、ステージ10のうち、セル2が並ぶ全領域に設けられており、(エアの)吸引を行うポンプ(図示せず)と接続されており、全領域において同時に吸引が行われる。以上より、ステージ10は、その上面10aに既に載っているセル2及びこれから載せるセル2を吸着して拘束することができる。
また、ステージ10は、1枚のセル2が載せられる毎に、配列方向に、セル2の短手方向寸法に相当する1ピッチ、移動することができる。
【0020】
前記保持部11は、吸引によりセル2の一部21を吸着して保持する吸着部として、吸着プレート11aを有しており、この吸着プレート11aには、(エアの)吸引を行うポンプ(図示せず)が接続されている。ポンプによって吸引を行うと、吸着プレート11aはセル2の一部21を吸着して保持することができ、吸着プレート11aにおける吸引が停止されると、セル2の一部21の吸着が解除される。なお、本実施形態では、セル2のうち、吸着プレート11aが吸着する部分(前記一部21)は、ステージ10に載せる対象となるセル2の前方側の端部22に近い部分である。
また、セル2の表面2a(図1(b)では上面)には、光電変換を行う発電層が形成されていることから、その表面2aに傷を付けないようにするのが好ましい。そこで、吸着プレート11aは、セル2の一部21の裏面2b(図1(b)では下面)を吸着する。
この吸着プレート11aは、製造装置1が備えているヘッド7に搭載されている。
【0021】
前記移動手段12は、前記ヘッド7を、搬送装置50の近傍である待機位置P1と、ステージ10上の所定位置P2との間を進退移動させる進退移動機構17と、ヘッド7を水平線回りに揺動させヘッド7の角度を変える揺動機構18とを備えている。
進退移動機構17は、伸縮アクチュエータ(図示せず)を有しており、伸縮アクチュエータが伸張するとヘッド7を所定位置P2に位置させ、短縮するとヘッド7を待機位置P1に位置させる。
揺動機構18は、前記伸縮アクチュエータの先端に設けられた減速器付きモータ(図示せず)を有しており、このモータの出力軸にヘッド7が固定されている。モータの出力軸を所定角度について一方向に回転させると、ヘッド7は、図1(c)から図2(a)に示しているように、所定位置P2において、水平線C1(プーリ31の軸)を中心として下方へ揺動する。ヘッド7が下方へ揺動した状態で、進退移動機構17の伸縮アクチュエータが短縮動作を行うと、ヘッド7は待機位置P1側へステージ10に沿って後退する(図2(b)から図2(c)参照)。そして、前記モータの出力軸を前記所定角度について他方向に回転させると、待機位置P1において、ヘッド7は、水平線C1(プーリ31の軸)を中心として上方へ揺動し、図1(a)の状態に復帰することができる。
【0022】
なお、セル2は薄い金属製シート上に各種製膜がされたものであるため、可撓性を有している。このため、吸着プレート11aがセル2の一部21を吸着保持した状態で、揺動機構18がヘッド7を下方へ揺動させると、図2(a)に示しているように、セル2は、後述の第1のプーリ31で湾曲することができ、セル2の前記一部21は、ステージ10に向かって下傾した状態となる。そして、この下傾したセル2の前方側の端部22が、ステージ10の上面10aに載った状態となり、ステージ10に吸着保持される。
【0023】
前記ヘッド7には第1のプーリ31が搭載されており、このプーリ31と搬送装置50との間に第2のプーリ32が設けられており、これらプーリ31,32間にベルト33が架けられている。第2のプーリ32は移動しない固定プーリであるのに対し、第1のプーリ31は、ヘッド7に搭載されていることから、吸着プレート11aと共に進退移動する可動プーリである。このため、プーリ31,32間の距離が変化することから、プーリ31,32間におけるベルト33の長さを変化させる調整機構34が設けられている。調整機構34については後に説明する。
プーリ31,32間におけるベルト33上には、セル2を載せることができ、吸着プレート11aに吸着保持され進退移動機構17によって前記所定位置P2へと搬送されるセル2を下から支持することができる。
【0024】
前記押さえ部材13は、ヘッド7に搭載されており、吸着プレート11aと共に進退移動する。押さえ部材13はローラからなり、少なくともその外周部分はスポンジ等の柔軟な素材からなるのが好ましい。図4は、押さえ部材13の説明図であり、揺動機構18によって下方へ揺動させた状態にあるヘッド7を進退方向に見た図である。ヘッド7には、ステージ10上を転がるガイドローラ35が設けられており、ガイドローラ35は、押さえ部材(押さえローラ)13よりも半径が大きく、また、ガイドローラ35の回転中心と、押さえ部材(押さえローラ)13の回転中心とは一致している。
そして、ヘッド7が下方に揺動した状態で、ガイドローラ35がステージ10の上面10aに接地すると、押さえ部材13と、ステージ10に理想的な状態で(平面的に)載ったセル2の上面との間には、僅かな隙間gが形成される。すなわち、ガイドローラ35の半径は、押さえ部材13の半径と、セル2の厚さと、前記隙間gとの和に設定されている。
【0025】
したがって、図2(a)〜(c)に示すように、ヘッド7が下方に揺動した状態で、進退移動機構17の伸縮アクチュエータが短縮動作を行い、ヘッド7が所定位置P2から待機位置P1側へステージ10に沿って後退すると、ガイドローラ35はステージ10上を転がって移動し、この際、ガイドローラ35は、押さえ部材(押さえローラ)13を、一定の高さ位置に維持する。つまり、押さえ部材13は、ステージ10上に吸着されていくセル2の上を走行させることができる。
この押さえ部材13によれば、ステージ10上に吸着したセル2の一部が上に浮きそうな場合であっても、ヘッド7を後退させる際に、当該セル2の上を通過して、セル2の浮き上がり部に当接して、当該浮き上がり部をステージ10側へ押さえることができる。
【0026】
以上の構成を備えた製造装置1によって行われる、複数枚の細長いセル2を、その長辺側の縁部同士が上下重なるようにして、ステージ10の上面10aに次々と並べて載せる製造方法について、図1と図2とに沿って説明する。
図1(a)と(b)とに示すように、所定の長さにされステージ10に載せる対象となるセル2が、搬送装置50によってヘッド7側へ搬送され、このセル2は、その搬送方向前方側の端部22に近い一部21が吸着プレート11aの上に載る位置まで、搬送される。吸着プレート11aは待機位置P1に位置しており、この吸着プレート11aがセル2の前記一部21を吸着して保持する(以上、準備工程)。
【0027】
進退移動機構17がヘッド7をステージ10上の所定位置P2へと前進させることで、前記セル2の一部21を吸着して保持した吸着プレート11aを、セル2の長手方向を移動方向として、待機位置P1から、ステージ10の上方の領域を通って、図1(c)に示しているように、ステージ10上の所定位置P2へと前進させる。そして、この所定位置P2において、図2(a)に示しているように、揺動機構18によってヘッド7を下方へ揺動させる(以上、前進工程)。これにより、セル2の前方側の端部22は、ステージ10の上面10aに載った状態となる。
【0028】
ステージ10による吸引は、ステージ10上に全てのセル2が載せられ、これらセル2の縁部同士が接合されるまで継続して行われている。このため、所定位置P2へと前進させた吸着プレート11aが保持しているセル2の前方側の端部22は、ステージ10に吸着される。そして、この端部22が吸着されてから、吸着プレート11aによるセル2の一部21における保持を解除した状態とする。その後、この解除状態で、図2(b)と(c)とに示しているように、進退移動機構17によって、ヘッド7(吸着プレート11a)を所定位置P2から後退させる(以上、後退工程)。この後退工程によれば、ヘッド7を後退させることにより、セル2を、その前方側の端部22を始点として、ステージ10上に長手方向に沿って順に載せながらステージ10に吸着させることができる(図2(c)参照)。
【0029】
そして、この後退工程では、ヘッド7を後退させることで、図4に示しているように、前記押さえ部材13は、セル2を吸着していない吸着プレート11aと共に後退し、この押さえ部材13は、ステージ10上に長手方向に沿って順に吸着されていくセル2の上を通過する。この際、ステージ10上に吸着されていくセル2のうち、当該セル2の反りや捩れによって浮いた部分(浮き上がり部)があれば、押さえ部材13は、その浮き上がり部の上面に当接し、当該浮き上がり部をステージ10側へ押さえることできる。
このため、ステージ10に載せていくセル2の一部が上に浮きそうな場合であっても、セル2をフラットな状態としてステージ10に吸着させていくことが可能となり、その後に、実行されるセルの縁部3,3同士の接合(例えば半田による接合)を確実に行うことが可能となる。
【0030】
そして、一つのセル2がステージ10に載せられ、吸着によって拘束されると、本実施形態では、ステージ10が配列方向(図3の矢印Y方向)に、1枚のセル2の短手方向寸法に相当する1ピッチ移動し、次のセル2が、上記各工程を経てステージ10に載せられ、吸着によって拘束される。以降、前記各工程が繰り返し実行され、複数枚のセル2がステージ10上に精度良く等ピッチで並べられる。
【0031】
また、本実施形態の製造装置によれば、従来(図7)と比べて、セル2をステージ10上に並べるサイクルタイムの短縮が可能となる。つまり、図7の従来例では、吸着ヘッド84による、セル81の吸着、上昇F1、水平移動F2、降下F3、及び、吸着の解除の動作が順に行われるが、各動作の間に停止時間が必要となり、全体として無駄な時間を多く要する。しかし、本実施形態の製造装置によれば、各部を連続的に作動させることができ、無駄な停止時間が省略される。特に、図1(c)から図2(a)において、進退移動機構17と揺動機構18とを同じ時間帯で動作させ、ヘッド7が所定位置P2に到達する前に、当該ヘッド7の下方揺動を開始させるように動作タイミングを設定するのが好ましい。
また、従来の装置では、セル81の上面(発電層成膜面)に吸着ヘッド84が吸着するため、発電層に傷を付けるおそれがあるが、本実施形態によれば、セル2を搬送するために吸着プレート11aが吸着する面は、セル2の下面側であるので、このような損傷を防止することができる。
【0032】
また、本実施形態の製造装置1は、図3に示しているように、ステージ10には複数の吸引穴15が平面的に広がって形成されており、全てのセル2が接合されるまで、各吸引穴15における吸引が継続して行われている。このため、ステージ10のうち、セル2が載っていない領域(図3では領域X1)では、吸引穴15は塞がれているのが好ましく、このために、この領域X1には、シート状の蓋部材40が設けられている。そして、1枚のセル2をステージ10に載せる毎に、1列ずつ蓋部材40をずらし、蓋部材40がずらされた領域に、次のセル2を載せる。
なお、図3では蓋部材40は1枚であり、X1領域の吸引穴15をまとめて覆う形態を示しているが、進退方向に沿って1列の吸引穴15を覆う蓋部材40が、配列方向に複数設けられ、セル2がステージ10に載せられる際に1列ずつ剥がされるものでもよい。
【0033】
また、ステージ10上の領域のうち、新たにセル2を載せようとする領域(図3では領域X2)の吸引穴15は、別のシート部材によって覆われる。
すなわち、図6(a)に示しているように、ヘッド7には、第3のプーリ36が搭載されており、また、前記第2のプーリ32の近傍に第4のプーリ37が設けられ、これらプーリ36,37間にベルト状のシート部材9が架けられている。また、プーリ36,37間の距離は変化することから、プーリ36,37間におけるシート部材9の長さを変化させる調整機構38が設けられている。
【0034】
第3のプーリ36は、ヘッド7に搭載されているので、前記進退移動機構17によってヘッド7が所定位置P2へと前進する前進工程では、待機位置P1側から所定位置P2側へと向かってステージ10の上面10aの近傍を走行する。これにより、前進工程の際に、この前進方向に並ぶ吸引穴15をシート部材9が順次覆って塞ぐことができる。
そして、この前進工程に続いて実行される後退工程の際には、第3のプーリ36は、所定位置P2側から待機位置P1側へと向かってステージ10の上面10aの近傍を走行する。これにより、図6(b)に示しているように、前進工程において塞いでいた吸引穴15からシート部材9は剥がされ、その代わりに、ステージ10に載せる対象のセル2が当該吸引穴15を覆って塞ぐこととなる。このため、図6(b)に示す領域X2では、セル2をステージ10に載せる作業の際に、吸引穴15が開口状態として放置されるのを防ぐことができる。
【0035】
すなわち、仮に前記シート状の蓋部材40及び前記シート部材9が、ステージ10の吸引穴15を覆わない場合、つまり、これら吸引穴15が開放されたままである場合、これら吸引穴15による吸引が無駄に行われ、すでにステージ10上に載っているセル2(セル2−1〜2−4)に対する吸引穴15における吸引力が弱くなってしまう。しかし、前記蓋部材40及び前記シート部材9によれば、ステージ10全体における吸引力が低下するのを防ぐことができ、セル2が載っている吸引穴15における吸引力を確保することができ、すでにステージ10上に載置されたセル2(セル2−1〜2−4)が安定してステージ10上に吸着保持される。
【0036】
前記調整機構34,38について説明する。図6(a)において、本実施形態の調整機構34は、上下方向に移動する調整用プーリ34aを有している。このプーリ34aには、第2のプーリ32を経由した前記ベルト33が架けられており、プーリ34aは、第1のプーリ31の進退移動に合わせて上下移動し、ベルト33の弛みの発生を防止するように移動する。
また、シート9用の調整機構38は、ベルト33用の調整機構34と同様の構成であり、調整用のプーリ38aを有している。そして、第3のプーリ36の進退移動に合わせて上下移動し、シート9の弛みの発生を防止するように移動する。
【0037】
また、本実施形態では、シート部材9用の調整機構38は、転向プーリ38bを有しており、この転向プーリ38bと前記第4のプーリ37とによって、水平方向のシート9を上下方向に転向している。
そして、ベルト33用の調整機構34は、第2のプーリ32と第4のプーリ37とによって、水平方向のベルト33を上下方向に転向している。つまり、シート9用である第4のプーリ37を、ベルト33用にも兼用しており、部材の省略化を図っている。
また、前進工程では、プーリ31,37間の(下側の)ベルト33の進行方向は、矢印R1方向であり、プーリ36,37間の(上側の)シート部材9の進行方向は、矢印R2方向であり、上下で近接するこれらベルト33及びシート部材9は同期して同方向に移動する。また、後退工程でも、上下で近接するベルト33及びシート部材9は同期して同方向(矢印R1,R2とは反対方向)に移動する。このため、第4のプーリ37の兼用が可能となる。
【0038】
本発明の製造装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば前記実施形態において、進退移動機構17を伸縮アクチュエータとして説明したが、これ以外の構成であってもよく、また、揺動機構18も他の構成であってもよい。また、前記押さえ部材13は、ステージ10上に理想的に(平面的に)置かれたセル2の上面との間に隙間gをあけた状態で、吸着プレート11aと共に後退する場合を説明したが、押さえ部材13を、少なくとも外周部が柔軟な素材からなるローラとし、前記隙間gを無くして、このローラをセル2の上面に沿って転がしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1:製造装置、 2:セル(太陽電池用のセル)、 2b:裏面、 3:縁部、 9:シート部材、 10:ステージ、 11:保持部、 11a:吸着プレート(吸着部)、 12:移動手段、 13:押さえ部材、 15:吸引穴、 21:一部、 22:端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の細長い太陽電池用のセルを、その長辺側の縁部同士が上下重なるようにして、並べて載せると共に、これらセルを吸着するステージを備えた太陽電池モジュールの製造装置であって、
前記ステージに載せる対象となる太陽電池用のセルの一部を保持可能でありかつ当該保持を解除可能な保持部と、
前記セルの長手方向を移動方向として前記保持部を前記ステージ上で進退移動させることができ、前進させた前記保持部が保持する前記セルの前方側の端部を前記ステージに吸着させてから、当該保持部による当該セルの保持を解除した状態で、当該保持部を後退させる移動手段と、
前記保持部を後退させる際に、前記ステージに吸着していく前記セルの上を通過して当該セルの浮き上がり部を当該ステージ側へ押さえる押さえ部材と、
を備えていることを特徴とする太陽電池モジュールの製造装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記セルの裏面を吸着する吸着部を有している請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造装置。
【請求項3】
前記ステージには、前記セルを吸着するために当該セルの裏面に対して吸引を行う吸引穴が、前記保持部の進退方向に並んで複数設けられており、
前記保持部が前進する際に、当該前進方向に並ぶ前記吸引穴を順次覆って塞ぐと共に、前記保持部が後退する際に、塞いでいた前記吸引穴から剥がれるシート部材を備えている請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールの製造装置。
【請求項4】
複数枚の細長い太陽電池用のセルを、その長辺側の縁部同士が上下重なるようにして、ステージの上面に並べて載せる太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記ステージに載せる対象となる太陽電池用のセルの一部を保持した保持部を、当該セルの長手方向を移動方向として前記ステージ上の所定位置へ前進させる前進工程と、
前記所定位置へと前進させた前記保持部が保持している前記セルの前方側の端部を前記ステージに吸着させてから、当該保持部による当該セルの保持を解除した状態で、当該保持部を前記所定位置から後退させることにより、当該セルを当該前方側の端側から前記ステージ上に載せて吸着させる後退工程と、
を含み、
前記後退工程において、前記ステージ上に吸着していく前記セルの上を押さえ部材が通過して、当該セルの浮き上がり部を押さえることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−199278(P2012−199278A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60661(P2011−60661)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】