説明

太陽電池モジュールの試験方法および試験装置

【課題】インタコネクタの劣化・不具合を直接的に再現することで太陽電池モジュールの信頼性指標を得ることができるようにする。
【解決手段】太陽電池モジュール10の表面または裏面の全面を基台4に面接触させた状態で、太陽電池モジュール10の基台4に面接触する面とは逆の面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの信頼性指標を得るために行われる太陽電池モジュールの試験方法および試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールの多くは、家屋の屋根に取り付けられる。そして、屋根の建材と一体となった太陽電池モジュールが開発されている。しかし、このような太陽電池モジュールは、屋根の施工時にどうしても職人により踏まれて、折れ目がついてしまう。そこで、特許文献1では、太陽電池モジュールの光起電力素子の非受光面側に設けられた補強板の非受光面側の少なくとも一部に形状保持部材を設けることで、太陽電池モジュールが踏まれても太陽電池モジュールに折れ目がつかないようにしている。
【0003】
また、屋根に取り付けられた太陽電池モジュールは、風や雪の荷重を受ける。この荷重により太陽電池モジュールが撓むと、光起電力素子から電力を取り出すための芯線に破断が生じ、太陽電池モジュールのエネルギー変換効率が低下する。そこで、特許文献2では、芯線とこの芯線に電気接合させた電極とを2種類の接合部で接合し、一方の接合部の弾性を他方よりも大きくしてこの接合部に応力を吸収させることにより、芯線を使用した電極構造の信頼性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−204820号公報
【特許文献2】特開2007−266648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、太陽電池モジュール内における部材間の熱膨張係数の違いから、昼夜の温度差によりセル同士をつなぐインタコネクタに伸縮が生じ、インタコネクタに破断などの劣化・不具合が生じる。そこで、太陽電池モジュールの信頼性指標を得るために、制御された環境条件下においてインタコネクタの劣化・不具合を直接的に再現することが求められる。
【0006】
インタコネクタの劣化・不具合の再現は、国際規格などで定められた温度サイクル試験によって試みられている。しかし、温度サイクル試験には2か月程度の長期間を要するばかりか、高温・低温状態に太陽電池モジュールを曝すことで、熱膨張係数の差異に依存する負荷だけでなく、封止材の変質など他の負荷を与えてしまうことになり、インタコネクタのみの劣化を的確に捉えることは難しい。
【0007】
また、現行の国際規格などで規定されている静的荷重負荷試験方法は、風・雪などの静的荷重に対する耐久性を確認する目的で実施されるものであり、繰り返し負荷を行わないために、インタコネクタに劣化・不具合を生じさせることができない。
【0008】
また、特許文献1では、太陽電池モジュールの外観上の変化を評価するために、UL1703準拠の繰り返し荷重試験を行っている。しかし、この試験方法は、主に積雪などの荷重に対する耐久性・抵抗性を試験するものであって、モジュール下方が開放された状態において屋根などとの連結固定部を支持部分として点荷重を負荷するものであるので、支持部分を支点として太陽電池モジュール全体に撓みが生じ、インタコネクタの劣化・不具合を特定することができない。
【0009】
本発明の目的は、インタコネクタの劣化・不具合を直接的に再現することで太陽電池モジュールの信頼性指標を得ることが可能な太陽電池モジュールの試験方法および試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における太陽電池モジュールの試験方法は、隣り合う結晶シリコンセル同士がインタコネクタで連結されている太陽電池モジュールの試験方法であって、前記太陽電池モジュールの表面または裏面の全面を基台に面接触させた状態で、前記太陽電池モジュールの前記基台に面接触する面とは逆の面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷することを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、太陽電池モジュールの表面または裏面の全面を基台に面接触させた状態で、太陽電池モジュールの基台に面接触する面とは逆の面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷することにより、太陽電池モジュールの表面・裏面全体の撓みなどの影響を排除しながら、結晶シリコンセル同士を連結するインタコネクタにせん断応力を発生させることができる。これにより、インタコネクタの劣化を促進することができるから、インタコネクタの劣化を主因とする出力特性の変化を測定することで、インタコネクタの劣化・不具合を評価することができる。このように、インタコネクタの劣化・不具合を直接的に再現することができるから、インタコネクタの劣化・不具合を評価することで、太陽電池モジュールの信頼性指標を得ることができる。
【0012】
また、本発明における太陽電池モジュールの試験方法においては、前記太陽電池モジュールのまわりの温度および湿度の少なくとも一方を制御してよい。上記の構成によれば、太陽電池モジュールのまわりの温度および湿度の少なくとも一方を制御することで、幅広い温度帯または湿度帯において、太陽電池モジュールの表面または裏面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷することができる。これにより、太陽電池モジュールを構成する材料の劣化による影響を観測することができる。
【0013】
また、本発明における太陽電池モジュールの試験方法においては、前記太陽電池モジュールにオンライン結合された測定機器により、前記インタコネクタの出力特性の変化を逐次モニタリングしてよい。上記の構成によれば、インタコネクタの出力特性の変化を測定機器で逐次モニタリングすることで、出力特性の連続的変化を追尾することができる。
【0014】
また、本発明における太陽電池モジュールの試験装置は、隣り合う結晶シリコンセル同士がインタコネクタで連結されている太陽電池モジュールの試験装置であって、前記太陽電池モジュールの表面または裏面の全面が面接触される基台と、前記太陽電池モジュールの前記基台に面接触する面とは逆の面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷する荷重負荷装置と、を有することを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、太陽電池モジュールの表面または裏面の全面を基台に面接触させた状態で、太陽電池モジュールの基台に面接触する面とは逆の面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷することにより、太陽電池モジュールの表面・裏面全体の撓みなどの影響を排除しながら、結晶シリコンセル同士を連結するインタコネクタにせん断応力を発生させることができる。これにより、インタコネクタの劣化を促進することができるから、インタコネクタの劣化を主因とする出力特性の変化を測定することで、インタコネクタの劣化・不具合を評価することができる。このように、インタコネクタの劣化・不具合を直接的に再現することができるから、インタコネクタの劣化・不具合を評価することで、太陽電池モジュールの信頼性指標を得ることができる。
【0016】
また、本発明における太陽電池モジュールの試験装置においては、前記基台を収容する試験槽を更に有し、前記試験槽内の温度および湿度の少なくとも一方が制御されていてよい。上記の構成によれば、試験槽内の温度および湿度の少なくとも一方を制御することで、幅広い温度帯または湿度帯において、太陽電池モジュールの表面または裏面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷することができる。これにより、太陽電池モジュールを構成する材料の劣化による影響を観測することができる。
【0017】
また、本発明における太陽電池モジュールの試験装置においては、前記太陽電池モジュールにオンライン結合され、前記インタコネクタの出力特性の変化を逐次モニタリングする測定機器を更に有していてよい。上記の構成によれば、インタコネクタの出力特性の変化を測定機器で逐次モニタリングすることで、出力特性の連続的変化を追尾することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の太陽電池モジュールの試験方法および試験装置によると、結晶シリコンセル同士を連結するインタコネクタにせん断応力を発生させることができて、インタコネクタの劣化を促進することができるから、インタコネクタの劣化を主因とする出力特性の変化を測定することで、インタコネクタの劣化・不具合を評価することができる。このように、インタコネクタの劣化・不具合を直接的に再現することができるから、インタコネクタの劣化・不具合を評価することで、太陽電池モジュールの信頼性指標を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】試験装置を示す図である。
【図2】太陽電池モジュールの製造工程を示す図である。
【図3】繰り返し全面荷重を負荷する様子を示す図である。
【図4】太陽電池モジュールと基台とを示す図である。
【図5】試験結果を示すグラフ図である。
【図6】太陽電池モジュールの出力特性を示すグラフ図である。
【図7】繰り返し全面荷重の負荷回数と荷重強度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(試験装置の構成)
本実施形態による試験装置1は、図1に示すように、太陽電池モジュール10を保持する基台4と、太陽電池モジュール10に対して荷重を繰り返し負荷する荷重負荷装置5と、基台4および荷重負荷装置5を収容する試験槽2と、を有している。
【0022】
試験槽2は、壁3によって試験空間2aと外部空間2bとに隔てられており、試験空間2a内は、図示しない空調装置により温度および湿度の少なくとも一方が制御されている。基台4は、試験空間2a内に配置されており、太陽電池モジュール10の裏面の全面が面接触されている。
【0023】
荷重負荷装置5は、外部空間2b内に設けられて、壁3を貫通するロッド6aを水平方向に伸縮させるエアシリンダなどの駆動装置6と、試験空間2a内においてロッド6aの端に接続され、駆動装置6により水平方向に駆動される遊動端7と、を有している。遊動端7には、基台4に保持された太陽電池モジュール10の表面の全面が対向されている。遊動端7の鉛直方向(図中上下方向)の長さは、太陽電池モジュール10の表面の鉛直方向の長さよりも短くなければよい。
【0024】
荷重負荷装置5は、太陽電池モジュール10の表面の全面に遊動端7を繰り返し押し当てることで、太陽電池モジュール10の表面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷することが可能である。このような荷重を繰り返し全面荷重という。太陽電池モジュール10に負荷した圧力は、遊動端7と駆動装置6から測定可能である。
【0025】
なお、本実施形態では、太陽電池モジュール10の裏面の全面が基台4に面接触され、荷重負荷装置5は、太陽電池モジュール10の表面に繰り返し全面荷重を負荷するものとして説明するが、表面と裏面とが逆であってもよい。
【0026】
また、本実施形態では、太陽電池モジュール10が、その表面を水平方向に向けて遊動端7と対向するように保持される構成であるが、太陽電池モジュール10は、その表面または裏面を鉛直方向(上方向または下方向)に向けて遊動端7と対向するように保持される構成であってもよい。
【0027】
(太陽電池モジュール)
ここで、太陽電池モジュール10の製造工程を図2を用いて説明する。まず、結晶シリコンセル11が有する集電バー(バスバー)11aに、インタコネクタ12をはんだ付けにより接合する。このようにして、一定数の結晶シリコンセル11をインタコネクタ12で繋ぎ合せてセル群13とする。次に、セル群13に、ガラス14、封止材15、および、バックシート16を積層し、温度と圧力とを付加することにより封止する。これにより、ガラス14を表面とし、バックシート16を裏面とする太陽電池パネル17となる。この太陽電池パネル17の表面および裏面が、それぞれ太陽電池モジュール10の表面および裏面となる。
【0028】
次に、太陽電池パネル17に、外枠としてのフレーム18を付加し、さらに外部との電気的な連結を可能とする端子ボックス19を付加することにより、太陽電池モジュール10が完成する(図4参照)。
【0029】
インタコネクタ12の破断などの劣化・不具合を誘因する繰り返し全面荷重の負荷は、図3に示すように、太陽電池モジュール10の表面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷することで、結晶シリコンセル11間をつなぐインタコネクタ12にせん断応力を発生させてインタコネクタ12の伸縮を惹起し、太陽電池モジュール10を構成する部材間の熱膨張率の違いに起因するインタコネクタ12の伸縮を模擬しようとするものである。
【0030】
なお、図1に示す太陽電池モジュール10には、フレーム18および端子ボックス19が付加されていないが、図4に示すように、フレーム18および端子ボックス19を付加した太陽電池モジュール10についても、フレーム18や端子ボックス19を付加した太陽電池モジュール10の裏面形状に合わせた基台4を用いることで、太陽電池モジュール10の表面に繰り返し全面荷重を負荷することが可能である。なお、図4では基台4と太陽電池モジュール10の裏面との間に空間があるように図示されているが、実際には基台4と太陽電池モジュール10の裏面の全面とは面接触している。また、基台4および遊動端7の形状を適合させることで、太陽電池モジュール10の裏面に繰り返し全面荷重を負荷することも可能である。
【0031】
(評価結果)
次に、1×1×1m程度の内槽空間を持つ恒温恒湿試験器に図1に示す基台4および荷重負荷装置5を設置し、太陽電池モジュール10の表面に繰り返し全面荷重を負荷することで、太陽電池モジュール10のインタコネクタ12の劣化・不具合を測定した。
【0032】
ここで、156×156mmサイズの多結晶シリコン太陽電池セルを3つ繋ぎ合せた、フレーム18および端子ボックス19を取り付けていない太陽電池モジュール10(太陽電池パネル17)を試料として用いた。この試料の外形寸法は550mm×250mm×5mmである。また、インタコネクタ12は、中心材が銅で周縁にはんだが塗布されたものを使用した。インタコネクタ12とバスバー11aとの接合には、はんだを使用した。
【0033】
試験方法としては、荷重ストロークを5mmとし、試料面積当たりの繰り返し荷重を1tとし、荷重サイクルを3秒加重して3秒抜重するサイクルとし、サイクル時間設定をタイマ駆動式とし、駆動装置6をエアシリンダおよびエアコンプレッサとし、荷重カウント機構を6桁のサイクルカウンタ式とし、温度を80℃として、試料の表面に繰り返し全面荷重を負荷した。なお、試験条件はこれに限定されるものではなく、試料の大きさ・構造などにより適宜変更してよい。
【0034】
繰り返し全面荷重を負荷する前と後とで、太陽電池モジュール10の出力特性を測定したところ、図5に示す試験結果を得た。ここで、○は試験前のI−V特性を、□は繰り返し全面荷重を50万回負荷した後のI−V特性を示す。
【0035】
ここで、太陽電池モジュール10の出力特性を図6に示す。シャント抵抗(Rsh)および直列抵抗(Rs)は、I−V特性カーブの漸近線の傾きとして表わされる。原点と最大出力点とを2つの頂点とする四角形の面積aが最大出力(Pmax)であり、原点、短絡電流、および、開放電圧を3つの頂点とする四角形の面積bを面積aで割ったものが曲線因子(FF)である。
【0036】
荷重負荷装置5が太陽電池モジュール10の表面に繰り返し全面荷重を負荷したことによる太陽電池モジュール10の出力変動は、一定回数の繰り返し全面荷重を負荷した後の出力特性(Pmax、Isc、Voc、Rs、Rsh、FFなど)を測定することで捕捉可能である。また、繰り返し全面荷重の負荷にともなうインタコネクタ12の損傷による電気低抗変化は、太陽電池モジュール10で試験する場合には、端子ボックス19に連結された出力ケーブル間の電気抵抗を測定することにより捕捉可能であり、太陽電池パネル17で試験する場合には、連結した結晶シリコンセル11の各端子間の電気抵抗を連続的に測定することにより捕捉可能である。
【0037】
図5からわかるように、50万回の繰り返し全面荷重の負荷により、開放電圧(Voc)および短絡電流(Isc)に変化は見られない。しかし、1.3V以上の電圧時において、I−V特性カーブの傾きが緩和されている。これは、直列抵抗(Rs)の増加を意味しており、本試験で企図したインタコネクタ12などの劣化による抵抗増加を観測できているものと考えられる。
【0038】
なお、0〜1.3Vまでの電圧時におけるI−V特性カーブの傾きに変化はなく、50万回の繰り返し全面荷重の負荷においては、シャント抵抗(Rsh)が変化していないことを示している。これは、結晶シリコンセル11内の抵抗減少に関係する発電機能に劣化が生じていないことを意味しており、繰り返し全面荷重の負荷による劣化のほとんどが、直列抵抗(Rs)の増加に起因したインタコネクタ12の劣化による可能性が大きいことを示している。
【0039】
なお、本実施形態における試験では、太陽電池モジュール10を構成する材料(封止材15など)の温度特性を考慮して、封止材15が微軟化すると考えられる80℃にて実施しているが、試験条件はこの温度に限定されるものではなく、幅広い温度帯において試験を実施することで、太陽電池モジュール10を構成する材料の劣化による影響を観測することも可能である。これは、湿度を制御することによっても可能である。
【0040】
また、本実施形態における試験では、図7(a)に示すように、繰り返し全面荷重の負荷を一定の荷重強度(1t)にて限定して実施したが、一定期間後に荷重強度を増加・減少させたり、一定期間後に荷重強度を漸増・漸減させたりするなど、荷重強度を変動させる方法を適時適用することで、インタコネクタ12の劣化と繰り返し荷重回数との相関関係をより詳細化することも可能である。例えば、図7(b)に示すように、一定期間にわたって一定の荷重強度で繰り返し全面荷重を負荷した後に、その荷重強度を減少させて繰り返し全面荷重を負荷し、より微細な出力変化を捉えるなどしてよい。このような負荷変動は荷重に限らず、温度変化(場合により湿度変化も含む)や荷重サイクルなどにも適用することができる。
【0041】
ここで、図1において、直列抵抗の変化などの出力特性の変化を測定するために、繰り返し全面荷重の負荷を中断して、太陽電池モジュール10を試験装置1から取り出していたのでは手間がかかる。そこで、試験槽2内の太陽電池モジュール10にオンライン結合した測定機器(図示せず)で直列抵抗などを逐次モニタリングすることで、出力特性の連続的変化を追尾する方法も可能である。
【0042】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る太陽電池モジュール10の試験方法および試験装置1によると、太陽電池モジュール10の表面または裏面の全面を基台4に面接触させた状態で、太陽電池モジュール10の基台4に面接触する面とは逆の面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷することにより、太陽電池モジュール10の表面・裏面全体の撓みなどの影響を排除しながら、結晶シリコンセル11同士を連結するインタコネクタ12にせん断応力を発生させることができる。これにより、インタコネクタ12の劣化を促進することができるから、インタコネクタ12の劣化を主因とする出力特性の変化を測定することで、インタコネクタ12の劣化・不具合を評価することができる。このように、インタコネクタ12の劣化・不具合を直接的に再現することができるから、インタコネクタ12の劣化・不具合を評価することで、太陽電池モジュール10の信頼性指標を得ることができる。
【0043】
また、太陽電池モジュール10のまわりの温度および湿度の少なくとも一方を制御することで、幅広い温度帯または湿度帯において、太陽電池モジュール10の表面または裏面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷することができる。これにより、太陽電池モジュール10を構成する材料の劣化による影響を観測することができる。
【0044】
また、インタコネクタ12の出力特性の変化を測定機器で逐次モニタリングすることで、出力特性の連続的変化を追尾することができる。
【0045】
また、インタコネクタ12の劣化促進により、太陽電池モジュール10のインタコネクタ12の劣化を主因とする出力低下を短期間に測定することができるから、太陽電池モジュール10の加速劣化試験の短期化を実現することができる。また、他のモジュールの試験結果と比較することで、試料とした太陽電池モジュール10の信頼性指標(荷重負荷に対する耐久性)を相対評価することができる。また、これらの信頼性指標をもとに、インタコネクタ12の材質や寸法(厚さ、幅)や結晶シリコンセル11間の距離、結晶シリコンセル11の厚さ等の最適化を図る指標を得たり、インタコネクタ12の部材開発や太陽電池モジュール10の設計に役立てたりすることも可能である。
【0046】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0047】
例えば、本実施形態における試験では、主として市販型の太陽電池モジュール(1.4×1.1×0.05mなど)を対象とした構成を例示しているが、単独の結晶シリコンセル11、または、少数枚の結晶シリコンセル11をモジュール化したミニモジュールなどで試験を行う構成であってもよい。
【0048】
また、本実施形態における試験では、繰り返し全面荷重の負荷を一定回数繰り返した後の出力特性の低下を測定することで、太陽電池モジュール10のインタコネクタ12の劣化・不具合を判定しているが、一定出力特性の低下を引き起こす繰り返し回数(あるいは一定荷重サイクルでの繰り返し総時間)によりインタコネクタ12の劣化・不具合を判定する方法であってもよい。
【0049】
さらには、本実施形態における試験では、試験対象となる太陽電池モジュール10には電気的負荷を行っていないが、短絡電流(図6参照)に相当する定電流を負荷する等により、太陽電池モジュール10の稼働状態を模擬することも可能と考えられる際には、そのような電気的負荷を行う方法であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 試験装置
2 試験槽
2a 試験空間
2b 外部空間
3 壁
4 基台
5 荷重負荷装置
6 駆動装置
6a ロッド
7 遊動端
10 太陽電池モジュール
11 結晶シリコンセル
11a 集電バー(バスバー)
12 インタコネクタ
13 セル群
14 ガラス
15 封止材
16 バックシート
17 太陽電池パネル
18 フレーム
19 端子ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う結晶シリコンセル同士がインタコネクタで連結されている太陽電池モジュールの試験方法であって、
前記太陽電池モジュールの表面または裏面の全面を基台に面接触させた状態で、前記太陽電池モジュールの前記基台に面接触する面とは逆の面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷することを特徴とする太陽電池モジュールの試験方法。
【請求項2】
前記太陽電池モジュールのまわりの温度および湿度の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの試験方法。
【請求項3】
前記太陽電池モジュールにオンライン結合された測定機器により、前記インタコネクタの出力特性の変化を逐次モニタリングすることを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池モジュールの試験方法。
【請求項4】
隣り合う結晶シリコンセル同士がインタコネクタで連結されている太陽電池モジュールの試験装置であって、
前記太陽電池モジュールの表面または裏面の全面が面接触される基台と、
前記太陽電池モジュールの前記基台に面接触する面とは逆の面の全面に均等な荷重を繰り返し負荷する荷重負荷装置と、
を有することを特徴とする太陽電池モジュールの試験装置。
【請求項5】
前記基台を収容する試験槽を更に有し、
前記試験槽内の温度および湿度の少なくとも一方が制御されていることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池モジュールの試験装置。
【請求項6】
前記太陽電池モジュールにオンライン結合され、前記インタコネクタの出力特性の変化を逐次モニタリングする測定機器を更に有することを特徴とする請求項4又は5に記載の太陽電池モジュールの試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−73995(P2013−73995A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210215(P2011−210215)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電システム次世代高性能技術の開発/発電量評価技術等の開発・信頼性及び寿命評価技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】