太陽電池モジュール及びその製造方法
【課題】 太陽電池モジュールの太陽光受光側バスバー電極に接続されるタブ線の、バスバー電極を覆う金属表面を着色剤で安定状態に着色する。
【解決手段】 太陽電池セル6の太陽光受光側のバスバー電極12上に、導電性樹脂22を介して、着色剤層20aによって着色されたタブ線20が接着される。タブ線20の着色(着色剤層20aの形成)は、着色剤(インク)を塗布して行う方法、または、着色剤で着色されたテープ(着色テープ)を貼着する方法により行われる。
【解決手段】 太陽電池セル6の太陽光受光側のバスバー電極12上に、導電性樹脂22を介して、着色剤層20aによって着色されたタブ線20が接着される。タブ線20の着色(着色剤層20aの形成)は、着色剤(インク)を塗布して行う方法、または、着色剤で着色されたテープ(着色テープ)を貼着する方法により行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の太陽電池セルを含んで構成される太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルをマトリクス状に配列し、隣合う太陽電池セルをタブ線により電気的に直列に接続してなる。
太陽電池セルは、その表面側に、多数の細線状のフィンガー電極と、これらのフィンガー電極と直交するように設けられた少なくとも1本(通常2本もしくは3本)のバスバー電極とを有している。そして、隣合う太陽電池セルのうち、一方の太陽電池セルのバスバー電極と、他方の太陽電池セルの裏面側の電極とをタブ線により接続している。
【0003】
ここにおいて、バスバー電極とタブ線とは、特許文献1および特許文献2に示されるように、ハンダにより接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−204256号公報
【特許文献2】特開2005−050780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、タブ線は、銅線等の金属材で形成されており、表面で光を反射するため、屋根に設置したときの見た目が好ましくなく、顧客の好みの色に合わせることができず、色の選択自由度が低い。
【0006】
また、タブ線の金属表面が露出した状態であるため、表面腐食,劣化を生じやすい。
さらに、製造時に、太陽電池セルの表面やバスバー電極の表面との色が似ているため、タブ線のバスバー電極上への配置ずれを検出しにくく、タブ線がバスバー電極からはみ出して受光面積の減少、電気接続抵抗の増大を生じ、ひいては発電効率を低下させてしまうこともあった。
【0007】
そこで、上記のような課題を解決するため、本出願人によりタブ線表面を着色することが考えられた。
しかしながら、着色したタブ線をバスバー電極にハンダ付けする際に、タブ線は高温(200〜300℃程度)となって着色剤が熱分解してしまう。また、ハンダ付けした後にタブ線を着色する場合、ハンダ表面に凹凸を生じ、これに伴ってタブ線表面も凹凸を生じるため、着色剤での着色が難しく、着色できた場合でも色ムラが生じ、綺麗に着色することができないことが判明した。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、タブ線表面を安定して着色することにより該課題を解決した太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明に係る太陽電池モジュールは、太陽電池セルの太陽光受光面に形成されたバスバー電極と、複数の太陽電池セル相互を接続するタブ線とが導電性樹脂を介して接続されていると共に、前記タブ線の少なくとも前記バスバー電極を覆う部分の外側表面が、着色剤層で着色されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、太陽電池セルの太陽光受光面に形成されたバスバー電極上に、少なくともバスバー電極を覆う部分の外側表面が着色剤層で着色されたタブ線を、導電性樹脂を介して接続し、または、バスバー電極上に、導電性樹脂を介してタブ線を接続した後、タブ線の少なくとも前記バスバー電極を覆う部分の外側表面を着色剤で着色することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タブ線が導電性樹脂を介してバスバー電極に接続されるため、予め着色されたタブ線を接続する場合、加熱圧着法による接続の際、ハンダ付けに比較してタブ線の温度を低温に抑えられて着色剤の熱分解を抑制でき、タブ線を安定して着色することができる。
【0012】
また、タブ線をバスバー電極に接続した後、タブ線を着色する場合も、導電性樹脂を介して接続されたタブ線表面は平坦に近く、着色が容易で色ムラの発生も抑制できる。
そして、タブ線表面を上記のように安定して着色することによって、以下のような様々な効果が得られる。
【0013】
銅線等で形成されるタブ線の金属表面が着色されて光の反射を防止できるので、屋根に設置されたときの見た目が改善される。また、顧客の好みに応じた色に合わせることができ、色の選択幅が広がる。
【0014】
着色剤によってタブ線の金属表面を保護することができ、耐腐食性等が向上する。
タブ線の色によって、製造地域別、生産年月日別、メーカー別等を区別することが可能となり、メンテナンス等の際に有効利用することができる。
【0015】
太陽電池セルの表面やバスバー電極の表面とは、色差が大きく異なる色に着色することにより、タブ線のバスバー電極上への配置ずれを抑制できる。その結果、受光面積を確保できると共に電気接続抵抗の増大を抑制でき、ひいては発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽電池セルの平面図及び正面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】太陽電池セルの平面図
【図4】太陽電池セルの正面図
【図5】太陽電池セル間の接続状態を示す平面図
【図6】太陽電池セル間の接続状態を示す正面図
【図7】図6のB−B拡大断面図
【図8】タブ線着色の第1の実施形態を示す断面図
【図9】タブ線着色の第2の実施形態を示す断面図
【図10】タブ線着色の第3の実施形態を示す断面図
【図11】タブ線の着色方法、色種、着色箇所が異なる第1実施例〜第8実施例のサンプルと比較例についてのタブ線接続前後の状態を示した表
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態として示す太陽電池モジュールの平面図、図2は図1のA−A断面図である。
【0018】
太陽電池モジュール1は、金属(例えばアルミ)製の矩形のフレーム2と、該フレーム2内の上部に嵌め込まれたPV(Photovoltaic)パネル3と、を含んで構成される。
PVパネル3は、白板強化ガラス等の透明な表面側カバー4と、樹脂フィルムからなる耐候性の裏面側カバー5と、表面側カバー4と裏面側カバー5との間にマトリクス状に配置されて電気的には直列に接続される複数の太陽電池セル6と、表面側カバー4と裏面側カバー5との間に充填されて該カバー4、5と太陽電池セル6とをパネル化する充填接着剤7と、を含んで構成される。
【0019】
表面側カバー4としては、太陽光の透過性、絶縁性、耐候性、耐熱性、防湿性、防汚性、耐光性が求められ、更に、化学的強度性、強靱性等に優れ、長期耐久性を確保するためにも耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。
【0020】
このため、広く透明ガラス基板が使用されており、特に光透過率や耐衝撃強度に優れる厚さ4.0mmの白板強化ガラスが使用されている。材質としてソーダライムガラスが好適に用いられる。尚、厚さは0.1〜10mmであればよい。
【0021】
また、表面側カバー4としては、公知のガラス板等は勿論のこと、例えば、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。
【0022】
裏面側カバー5としては、例えば、アルミシートの両面を絶縁性の優れたポリフッ化ビニルフィルム(フッ素フィルム)で被覆した厚さ約0.1mmの樹脂被覆メタルシートが好適に用いられる。
【0023】
例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリシクロヘキサンジメタノール−テレフタレート樹脂、シリコン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、PETとPENの共重合体であるPET−G等のポリエステルからなるポリエステル樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシ−ト、更にセラミック、ガラス、ステンレス等を使用することができる。
【0024】
これらフィルムないしシートは、透明であってもよいし、白顔料又は黒顔料が練り込まれた基材であってもよい。
これらの樹脂で構成されるフィルムは、その充填接着剤との接着強度を確保するために、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスもしくは窒素ガスを用いたプラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等を施すこともできる。
【0025】
また、予め、フィルム表面に下地層を設けて充填接着剤との接着強度を確保することもできる。例えば、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、下地層とすることもできる。
【0026】
太陽電池セル6としては、単結晶シリコン、薄膜シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体型セルのいずれであっても構わない。
一例として、一般的な結晶系シリコンの太陽電池セル6は、p型結晶系シリコン基板の光入射面(発電する際に光が入射する側の表面)にn型拡散層(n型シリコン層)を形成する。より詳しくは、下記のテクスチャ工程、pn接合工程、反射膜形成工程、表裏面集電極形成工程を経て製造する。
【0027】
テクスチャ形成工程では、基板にpn接合を形成する前に、酸やアルカリの溶液や反応性プラズマを用いて基板の表面をエッチングすることにより、表面に凹凸構造(テクスチャ構造)を形成する。
【0028】
pn接合形成工程では、pn接合の形成方法は特に限定されないが、例えば、p型シリコン基板の受光面側にn型不純物を拡散させることによってpn接合を形成することができる。n型不純物の拡散は、例えばn型不純物を含む材料(例えばPOC13)を含む高温気体中に基板を置くことによって行うことができる。
【0029】
反射防止膜形成工程では、基板の受光面側に反射防止膜を形成する。例えば、プラズマCVD法によってSiN膜を形成することができる。
表裏面集電極形成工程では、後述のように、太陽電池セル6の表面にフィンガー電極及びバスバー電極を形成し、裏面に裏面電極を形成する。
【0030】
充填接着剤7としては、透光性、表面側カバー及び裏面側カバーとの接着性を有することが必要である。さらに、太陽電池の保護という観点から、耐光性、耐熱性、耐水性、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることも必要である。充填接着剤7には、一般に耐湿性に優れたEVA(エチレンビニルアセテート)フィルム等の有機過酸化物を含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるフィルムが用いられる。
【0031】
その他にも、例えば、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコン樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン−アクリル酸、又は、メタクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマ−ル酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、その他等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。
【0032】
尚、耐光性、耐熱性、耐水性等の観点から、エチレン−酢酸ビニル系樹脂が特に望ましい。
上記の充填接着剤7の厚さとしては、100〜1000μm位、好ましくは、300〜500μm位が望ましい。
【0033】
次に太陽電池セル6の集電極構造について説明する。
図3は太陽電池セルの平面図、図4は太陽電池セルの正面図である。
太陽電池セル6は、表面側が受光面10をなし、その上に、複数のフィンガー電極11が設けられる。フィンガー電極11は、光の入射をできるだけ妨げないように細く形成されて、それぞれ所定の一方向に延在し、延在方向と直交する方向に所定の間隔で並設されている。
【0034】
また、太陽電池セル6の表面(受光面10)側には、フィンガー電極11の上に、フィンガー電極11と直交するように、電力を取出すための比較的太いバスバー電極12が設けられる。従って、バスバー電極12は、フィンガー電極11の並設方向に延在して、複数のフィンガー電極11をつないでいる。尚、フィンガー電極11は、例えば0.05mm程度の幅で90本程度形成され、バスバー電極12は、例えば0.5〜3mm程度の幅で少なくとも1本(1〜4本で、一般的には2本もしくは3本)設けられる。
【0035】
太陽電池セル1の裏面側には、全面にわたって裏面電極13が設けられる。また、図示は省略するが、裏面電極13上にもタブ線を接続するためのバスバー電極が設けられる。
集電極の材料としては、電気的導通を得ることができる公知の材質のものが挙げられ、例えば、Ag、Ni、Cu、Sn、Au、V、Al、Ptなどの金属、あるいはこれらの金属のうち2種以上の金属の合金、混合物などが適用できる。また、これらの金属を複数積層したものでもよい。また、カーボン材料や透明導電材料(ITO)単独もしくはこれらの材料と上記金属の複合体等でもよい。但し、太陽電池で発電した電流を流すときに抵抗とならないことが必要である(5〜10Ωcm−1程度)。
【0036】
集電極の形成方法としては、一般に導電性ペースト印刷が用いられる。導電性ペーストとしては、一般的な銀を含有したガラスペーストや接着剤樹脂に各種導電性粒子を分散した銀ペースト、金ペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト及びアルミニウムペースト、並びに、焼成や蒸着によって形成されるITOなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、導電性、安定性及びコストの観点から、銀を含有したガラスペーストが好適に用いられる。その他に、マスクパターンを用いたスパッタリング、抵抗加熱、CVD法、光CVD法、メッキ法などが挙げられる。
【0037】
フィンガー電極11及びバスバー電極12については、その形成方法は特に限定されないものの、一般的には、銀を含有したガラスペーストを用い、これをスクリーン印刷よる塗布、乾燥、焼成することによって形成することができる。
【0038】
裏面電極13については、その形成方法は特に限定されないものの、一般的には、例えば、アルミニウムペーストを塗布、乾燥、焼成することによって形成することができる。尚、表面側の乾燥及び焼成と、裏面側の乾燥及び焼成は、別々に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0039】
表面集電極形成における焼成の際、導電性ペーストが反射防止膜をファイアースルーすることによって、表面集電極がn型拡散層に接触するように形成することができる。尚、ファイアースルーとは、絶縁膜である反射防止膜を導電性ペーストに含まれるガラスフリット等が貫通し、表面集電極とn型拡散層とを導通させる現象である。
【0040】
次に太陽電池セル6、6間の電気的接続構造について説明する。
図5は太陽電池セル間の接続状態を示す平面図、図6は太陽電池セル間の接続状態を示す正面図である。
【0041】
隣合う太陽電池セル6、6は、相互にタブ線20により電気的に直列接続されている。すなわち、隣合う太陽電池セル6、6について、一方の太陽電池セル6の表面側のバスバー電極12と、他方の太陽電池セル6の裏面側の裏面電極13とを、タブ線20により接続する。言い換えれば、タブ線20の一端を一方の太陽電池セル6の表面側のバスバー電極12に導電性接着媒体を介して接続し、タブ線20の他端を他方の太陽電池セル6の裏面側の裏面電極13に導電性接着媒体を介して接続する。従って、タブ線20は、太陽電池セル6、6間で折れ曲がり、表と裏とをつなぐ。
【0042】
タブ線20は、導電性や機械的強度等を保証しつつ、セル表面の集電極とタブ線とを接着させる際に用いられる導電性接着媒体に対して高い接続強度が必要とされる。太陽電池セル間の導通性をより確実に得る観点から、タブ線が、Cu、Ag、Au、Fe、Ni、Pb、Zn、Co、Ti及びMgからなる群より選択される1種以上の金属元素を含むものであることが好ましい。
【0043】
一般的なタブ線は、芯材としての銅箔と、芯材表面上に錫を厚さ数十μm程度のメッキ層から成る。例えば、タフピッチ銅や無酸素銅などの純銅製の平角導体を芯材とし、その表面のメッキ層として、Sn−Pb共晶ハンダを用いたものが一般的である。表面のメッキ層として、Sn−Ag系、Sn−Bi系、あるいはSn−Cu系等も用いられる。
【0044】
本実施形態では、タブ線20接続用の上記の導電性接着媒体、特に表面側の導電性接着媒体として、導電性樹脂を使用する。
かかる導電性樹脂としては、セル表面の集電極との接着性、導電性、更には、信頼性を維持するため耐湿性や耐熱性に優れていることが要求される。
【0045】
導電性樹脂として用いられる材料は、例えば、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエーテルイミド、ポリエステル、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ブチラール樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS樹脂)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂及びフェノール樹脂、シアネート樹脂ポリビニルアセテート、ゴム、ウレタン等の樹脂などが挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種、あるいは、これらの樹脂の混合、共重合などを用いることが好ましい。また、これらの樹脂に熱硬化性あるいはUV硬化性を付与することが好ましい。また、樹脂中に紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、シランカップリング剤を適宜添加してもよい。また、低温かつ短時間で硬化できるという点から、エポキシ樹脂やアクリル樹脂を用いることが、製造上、より好ましい。
【0046】
また、導電性樹脂は、微粒子を含んでもよい。微粒子を樹脂中に含むことにより、熱圧着過程において微粒子同士が接触するため、加熱圧着後により高い導電性を発現することができる。
【0047】
微粒子として、導電性粒子を用いる場合には、銀、銅、白金、ニッケル、金、錫、アルミニウム、ビスマス、インジウム、パラジウム、亜鉛、コバルトなどから選ばれる少なくとも1種の金属粒子、あるいはこれらの合金、混合などが適用できる。また、カーボン材料であってもよく、カーボン粒子と金属の複合材料でもよい。また、アルミナ、シリカ、セラミックス、酸化チタン、ガラスなどから選ばれる少なくとも1種の無機酸化物に金属コーティングを施したものであってもよく、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂などから選ばれる少なくとも1種、あるいは、これらの樹脂の混合体、共重合体などに金属コーティングを施したものであってもよい。微粒子の大きさについては、2〜30μmφ、好ましくは、平均粒径10μm程度の大きさがよい。
【0048】
更に、導電性樹脂は、高い光透過性を有することが好ましい。具体的には、波長400〜1000nmの波長領域において全エネルギーに対する光透過率が80%以上の透明な樹脂が好ましい。
【0049】
図7は、バスバー電極へのタブ線接続部の断面図(図6のB−B拡大断面図)である。
太陽電池セル6の表面側のバスバー電極12上に、導電性樹脂22を介してタブ線20が接着される。
【0050】
導電性樹脂22によってセルの集電極に接着されたタブ線20の少なくとも太陽光受光面側のバスバー電極12を覆う表面が着色剤層20aによって着色されている。
上記タブ線20の着色(着色剤層20aの形成)は、着色剤(インク)を塗布して行う方法、または、着色剤で着色されたテープ(着色テープ)を貼着する方法により行われる。
【0051】
かかる構成とすれば、まず、バスバー電極12とタブ線20とを、導電性樹脂を介して加熱圧着(セルの表裏両側から加熱部材で加圧挟持)して接続する構成であり、ハンダ等を高温で加熱溶融して接続する場合に比較して、低温(140〜200℃)での接着が可能となる。これにより、タブ線20の着色剤層20aの熱分解を防止でき、安定した着色を維持できる。この効果については、後に具体例を詳述する。
【0052】
そして、上記ように、タブ線20のバスバー電極12を覆う部分が着色されることにより、下記のような様々な効果が得られる。
銅線等で形成されるタブ線20の露出表面が金属色以外の色に着色されて光の反射を防止できるので、屋根に設置されたときの見た目が改善される。また、顧客の好みに応じた色に合わせることができ、色の選択幅が広がる。
【0053】
着色剤によってタブ線20の金属表面を保護することができ、耐腐食性等が向上する。
タブ線20の色によって、製造地域別、生産年月日別、メーカー別等を区別することが可能となり、メンテナンス等の際に有効利用することができる。
【0054】
太陽電池セル1の表面やバスバー電極12の金属表面とは、色差が大きく異なる色に着色することにより、タブ線20のバスバー電極12上への配置ずれを抑制できる。その結果、受光面積を確保できると共に電気接続抵抗の増大を抑制でき、ひいては発電効率を高めることができる。
【0055】
タブ線20の着色の各種態様を図8〜図10に示す。
図8及び図9は、タブ線20の一部を着色する態様を示し、これらの態様では、着色剤の消費コストを低減できる。
【0056】
図8は、タブ線20の、バスバー電極12を覆う部分の外側表面(太陽光受光面)のみを着色したものである。
この態様の上記の基本的な効果以外の効果を説明する(以下の態様も同様)。安価な非導電性着色剤(非導電性インク)を塗布し、または非導電性着色剤で着色されたテープ(非導電性着色テープ)を貼着して、タブ線20の必要箇所のみを着色すればよいため、着色剤の消費コストを最も低減できる。
【0057】
また、導電性樹脂22との接着面は着色しないため、着色剤層20aの介在による電気抵抗の増大を防止できる。
図9は、タブ線20の、太陽電池セル1の表面電極及び裏面電極をそれぞれ覆う部分の外側表面、つまり表裏両面を交互に着色したものである。
【0058】
この態様では、太陽電池セル1の表裏両面を太陽光受光面とし、バスバー電極を表裏両面に備える両面受光型の太陽電池モジュールにも適用することができ、表裏両面について上記基本的な効果が得られる。
【0059】
また、タブ線20の金属表面の大部分を着色剤層20aで保護することができ、耐腐食性が高められる。なお、隣接する太陽電池セル1間のタブ線20表裏両面も着色するようにすれば、より耐腐食性が高められる。この耐腐食性向上効果は、片面受光型及び両面受光型の太陽電池モジュールに共通して得られる。
【0060】
図10は、タブ線20の全面(表裏両面全体)を、着色したものである。具体的には、導電性を有した着色剤(導電性インク)を塗布して着色、または、導電性着色剤で着色されたテープ(導電性着色テープ)を貼着して着色したものである。
【0061】
この態様では、タブ線20の銅材等で形成される本体が、着色剤層20aを介して導電性樹脂22に接着されるが、着色剤層20aが導電性を有しているため、電気抵抗の増大を抑制できる。
【0062】
一方、この態様では、導電性インクを塗布して着色する場合、浸漬法、スプレー法など、パターンマスクを用いることなく、容易な工程で製造(量産)できる。また、導電性着色テープで着色する場合も、タブ線20の表裏両面にそれぞれ1本のテープを連続的に貼着すれば済むため、容易な工程で製造(量産)できる。
【0063】
上記構成の本発明に係る太陽電池モジュールのサンプルと、着色されたタブ線をバスバー電極にハンダ付けした太陽電池モジュールのサンプルを以下のように形成し、両者を比較した。
【0064】
<使用材料>
太陽電池セル:125mm×125mm、厚さ300μmの受光面上に、バスバー電極(材質:銀ガラスペースト、1.5mm×125mm)が形成されたもの。
ガラス基板(表面側カバー): 30mm×30mm、厚さ3.2mm
タブ線:幅1.2mm×厚さ0.15mmのCu線の両面にSn−Ag−Cu鉛フリーハンダを20μm厚にディップメッキしたものに、着色剤で着色したタブ線
導電性樹脂テープ: エポキシ樹脂にCu粒子を分散したテープ
封止用樹脂シート(裏面側カバー): 30mm×30mm×0.5mmのエチレン−酢酸ビニル共重合体シート
裏面保護シート:ポリエチレンテレフタレートフィルム(200μm厚)
【0065】
<タブ線の着色>
A.インク(導電性インクを含む)を塗布して着色する場合
A1.タブ線をアルカリ脱脂剤で洗浄後、水洗した。
A2.リン酸化成処理液をタブ線に、40℃で2分スプレーし、化成処理を行った。
A3.粉体プライマを静電塗装後、加熱硬化しプライマ塗膜を形成した。
A4.塗膜上にインクをスプレーし加熱硬化した。
【0066】
タブ線の一部をパターンで着色する場合
A1.の後、塗工面だけに孔が開いているパターンマスクをタブ線20上に置いた。
マスク上から、必要な部分のみに前処理&塗布されるように、A2.〜A4.の工程を行った。
【0067】
B.タブ線20を着色テープ(導電性着色テープを含む)で着色する場合
B1.タブ線20をアルカリ脱脂剤で洗浄後、水洗した。
B2.着色テープをタブ線上に貼着した。
【0068】
<タブ線の接続>
導電性樹脂テープを、バスバー電極の長さに合わせてカットした。
カットした導電性樹脂テープを、バスバー電極表面を覆って配置した。
タブ線を太陽電池セルのバスバー電極上(導電性樹脂上)に重ね置いて、軽く圧着した。導電性樹脂上に配置されたタブ線の上から太陽電池セルの方向へ圧力をかけながら、当該太陽電池セルを加熱した。この際、裏面側についても表面と同じ位置に配置されたバスバー電極上に表面と同様に導電性樹脂およびタブ線をセットし、表面と同じ圧力かつ対向する方向から圧力を付与した。太陽電池セルの表面・裏面同時に加熱圧着することにより、セル面に対して上下方向から同じ圧力が付与されることになるので、一方向に圧力が付与されることはない。そのため、セルが一方向に歪曲し割れることはない。
【0069】
熱硬化処理は、例えば、140〜200℃、0.5〜20MPaで、5〜100秒間加熱加圧することにより行った。
具体的な加熱圧着法として、160℃に加熱された加熱圧着ヘッドを上下に有する構造で、且つセル面に対して垂直方向に上下から一定の圧力を加えることのできる装置に太陽電池セルをセットした。圧力4MPaで太陽電池セルを挟み、導電性樹脂の硬化に必要な時間、例えば、60秒の加熱を行った。
【0070】
一般的に、熱硬化性の導電性樹脂を加熱していくと、一度粘度が下がり、その後に硬化剤により架橋が促進されて硬化が完了する。上述したような手法により加熱圧着することで、導電性樹脂がバスバー電極周辺部において流動状態となり、バスバー電極の形状に沿った状態に配置された後、熱硬化された。そのため、バスバー電極が導電性樹脂に埋め込まれた状態でタブ線とバスバー電極とが接着され導電接続された。
【0071】
同様にして、2枚目の太陽電池セルをタブ線上に重ね置いて軽く圧着し、上述した同様の手順で接着を行った。セルは1枚ずつ加熱圧着しても良いし、同時に複数枚を加熱圧着しても良い。
【0072】
セルを連結した後、減圧ラミネーターの加熱ステージ上に、ガラス基板を置き、その表面に封止用樹脂シートを置き、連結した2セルを2セット両隣に配置し、さらにもう一枚別の封止用樹脂シートを置き、その上に裏面保護シートを重ねた。
【0073】
ステージを150℃に維持しながら、0.1MPaの圧力が積層体に付加されるように真空ラミネート処理を5分間行うことにより、太陽電池モジュールのサンプルを作製した。
【0074】
比較例に係る太陽電池モジュールを以下のように形成した。
1.5mm幅のバスバー電極上に、バスバー電極からはみ出さないようにハンダを塗布しその上から1.2mmの色付きタブ線を置き250℃に加熱してハンダを溶融させ、タブ線とバスバー電極を接合し隣接するセルを接続した。
【0075】
セルを連結した後、減圧ラミネーターの加熱ステージ上に、ガラス基板を置き、その表面に封止用樹脂シートを置き、連結した2セルを2セット両隣に配置し、さらにもう一枚別の封止用樹脂シートを置き、その上に裏面保護シートを重ねた。
【0076】
ステージを150℃に維持しながら、0.1MPaの圧力が積層体に付加されるように真空ラミネート処理を5分間行うことにより、比較例に係る太陽電池モジュールのサンプルを作製した。
【0077】
図11は、タブ線の着色方法、色種、着色箇所が異なる第1実施例〜第8実施例のサンプルと比較例についてのタブ線接続前後の状態を示したものである。
比較例では、タブ線をハンダ付けする際に高温(200〜300℃程度)に加熱された着色剤(インク)が熱分解を生じ、タブ線表面に金属が露出してしまい、着色状態を維持できないことが確認された。
【0078】
一方、第1実施例〜第8実施例の全てのサンプルで、タブ線接続前後で色の変化、つまり着色剤の熱分解はなく、安定した着色状態が維持されることが確認された。
また、以上の実施形態では、予め着色したタブ線をバスバー電極に接続する構成のものを示した。この構成により、太陽電池モジュールの製造効率を高めることができる。また、特に、着色剤(インク)を塗布する場合は、上記したような着色方法A1〜A4を用いて、より長期的に安定した着色状態を維持することができる。
【0079】
但し、タブ線をバスバー電極に接続した後、タブ線表面を着色する構成としてもよい。この場合、タブ線の導電性樹脂との接着面はハンダによる接着面のような凹凸はなく、平坦であるため、色ムラを抑制できる。また、この方式でも例えば、全てのセルを配列した後、大型のパターンマスクを被せてインクをスプレーする等の方法を用いることによって、太陽電池モジュールの製造効率を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…太陽電池モジュール
6…太陽電池セル
10…受光面
12…バスバー電極
13…裏面電極
20…タブ線
20a…着色剤層
22…導電性樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の太陽電池セルを含んで構成される太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルをマトリクス状に配列し、隣合う太陽電池セルをタブ線により電気的に直列に接続してなる。
太陽電池セルは、その表面側に、多数の細線状のフィンガー電極と、これらのフィンガー電極と直交するように設けられた少なくとも1本(通常2本もしくは3本)のバスバー電極とを有している。そして、隣合う太陽電池セルのうち、一方の太陽電池セルのバスバー電極と、他方の太陽電池セルの裏面側の電極とをタブ線により接続している。
【0003】
ここにおいて、バスバー電極とタブ線とは、特許文献1および特許文献2に示されるように、ハンダにより接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−204256号公報
【特許文献2】特開2005−050780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、タブ線は、銅線等の金属材で形成されており、表面で光を反射するため、屋根に設置したときの見た目が好ましくなく、顧客の好みの色に合わせることができず、色の選択自由度が低い。
【0006】
また、タブ線の金属表面が露出した状態であるため、表面腐食,劣化を生じやすい。
さらに、製造時に、太陽電池セルの表面やバスバー電極の表面との色が似ているため、タブ線のバスバー電極上への配置ずれを検出しにくく、タブ線がバスバー電極からはみ出して受光面積の減少、電気接続抵抗の増大を生じ、ひいては発電効率を低下させてしまうこともあった。
【0007】
そこで、上記のような課題を解決するため、本出願人によりタブ線表面を着色することが考えられた。
しかしながら、着色したタブ線をバスバー電極にハンダ付けする際に、タブ線は高温(200〜300℃程度)となって着色剤が熱分解してしまう。また、ハンダ付けした後にタブ線を着色する場合、ハンダ表面に凹凸を生じ、これに伴ってタブ線表面も凹凸を生じるため、着色剤での着色が難しく、着色できた場合でも色ムラが生じ、綺麗に着色することができないことが判明した。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、タブ線表面を安定して着色することにより該課題を解決した太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明に係る太陽電池モジュールは、太陽電池セルの太陽光受光面に形成されたバスバー電極と、複数の太陽電池セル相互を接続するタブ線とが導電性樹脂を介して接続されていると共に、前記タブ線の少なくとも前記バスバー電極を覆う部分の外側表面が、着色剤層で着色されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、太陽電池セルの太陽光受光面に形成されたバスバー電極上に、少なくともバスバー電極を覆う部分の外側表面が着色剤層で着色されたタブ線を、導電性樹脂を介して接続し、または、バスバー電極上に、導電性樹脂を介してタブ線を接続した後、タブ線の少なくとも前記バスバー電極を覆う部分の外側表面を着色剤で着色することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タブ線が導電性樹脂を介してバスバー電極に接続されるため、予め着色されたタブ線を接続する場合、加熱圧着法による接続の際、ハンダ付けに比較してタブ線の温度を低温に抑えられて着色剤の熱分解を抑制でき、タブ線を安定して着色することができる。
【0012】
また、タブ線をバスバー電極に接続した後、タブ線を着色する場合も、導電性樹脂を介して接続されたタブ線表面は平坦に近く、着色が容易で色ムラの発生も抑制できる。
そして、タブ線表面を上記のように安定して着色することによって、以下のような様々な効果が得られる。
【0013】
銅線等で形成されるタブ線の金属表面が着色されて光の反射を防止できるので、屋根に設置されたときの見た目が改善される。また、顧客の好みに応じた色に合わせることができ、色の選択幅が広がる。
【0014】
着色剤によってタブ線の金属表面を保護することができ、耐腐食性等が向上する。
タブ線の色によって、製造地域別、生産年月日別、メーカー別等を区別することが可能となり、メンテナンス等の際に有効利用することができる。
【0015】
太陽電池セルの表面やバスバー電極の表面とは、色差が大きく異なる色に着色することにより、タブ線のバスバー電極上への配置ずれを抑制できる。その結果、受光面積を確保できると共に電気接続抵抗の増大を抑制でき、ひいては発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽電池セルの平面図及び正面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】太陽電池セルの平面図
【図4】太陽電池セルの正面図
【図5】太陽電池セル間の接続状態を示す平面図
【図6】太陽電池セル間の接続状態を示す正面図
【図7】図6のB−B拡大断面図
【図8】タブ線着色の第1の実施形態を示す断面図
【図9】タブ線着色の第2の実施形態を示す断面図
【図10】タブ線着色の第3の実施形態を示す断面図
【図11】タブ線の着色方法、色種、着色箇所が異なる第1実施例〜第8実施例のサンプルと比較例についてのタブ線接続前後の状態を示した表
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態として示す太陽電池モジュールの平面図、図2は図1のA−A断面図である。
【0018】
太陽電池モジュール1は、金属(例えばアルミ)製の矩形のフレーム2と、該フレーム2内の上部に嵌め込まれたPV(Photovoltaic)パネル3と、を含んで構成される。
PVパネル3は、白板強化ガラス等の透明な表面側カバー4と、樹脂フィルムからなる耐候性の裏面側カバー5と、表面側カバー4と裏面側カバー5との間にマトリクス状に配置されて電気的には直列に接続される複数の太陽電池セル6と、表面側カバー4と裏面側カバー5との間に充填されて該カバー4、5と太陽電池セル6とをパネル化する充填接着剤7と、を含んで構成される。
【0019】
表面側カバー4としては、太陽光の透過性、絶縁性、耐候性、耐熱性、防湿性、防汚性、耐光性が求められ、更に、化学的強度性、強靱性等に優れ、長期耐久性を確保するためにも耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。
【0020】
このため、広く透明ガラス基板が使用されており、特に光透過率や耐衝撃強度に優れる厚さ4.0mmの白板強化ガラスが使用されている。材質としてソーダライムガラスが好適に用いられる。尚、厚さは0.1〜10mmであればよい。
【0021】
また、表面側カバー4としては、公知のガラス板等は勿論のこと、例えば、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。
【0022】
裏面側カバー5としては、例えば、アルミシートの両面を絶縁性の優れたポリフッ化ビニルフィルム(フッ素フィルム)で被覆した厚さ約0.1mmの樹脂被覆メタルシートが好適に用いられる。
【0023】
例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリシクロヘキサンジメタノール−テレフタレート樹脂、シリコン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、PETとPENの共重合体であるPET−G等のポリエステルからなるポリエステル樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムないしシ−ト、更にセラミック、ガラス、ステンレス等を使用することができる。
【0024】
これらフィルムないしシートは、透明であってもよいし、白顔料又は黒顔料が練り込まれた基材であってもよい。
これらの樹脂で構成されるフィルムは、その充填接着剤との接着強度を確保するために、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスもしくは窒素ガスを用いたプラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等を施すこともできる。
【0025】
また、予め、フィルム表面に下地層を設けて充填接着剤との接着強度を確保することもできる。例えば、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、下地層とすることもできる。
【0026】
太陽電池セル6としては、単結晶シリコン、薄膜シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体型セルのいずれであっても構わない。
一例として、一般的な結晶系シリコンの太陽電池セル6は、p型結晶系シリコン基板の光入射面(発電する際に光が入射する側の表面)にn型拡散層(n型シリコン層)を形成する。より詳しくは、下記のテクスチャ工程、pn接合工程、反射膜形成工程、表裏面集電極形成工程を経て製造する。
【0027】
テクスチャ形成工程では、基板にpn接合を形成する前に、酸やアルカリの溶液や反応性プラズマを用いて基板の表面をエッチングすることにより、表面に凹凸構造(テクスチャ構造)を形成する。
【0028】
pn接合形成工程では、pn接合の形成方法は特に限定されないが、例えば、p型シリコン基板の受光面側にn型不純物を拡散させることによってpn接合を形成することができる。n型不純物の拡散は、例えばn型不純物を含む材料(例えばPOC13)を含む高温気体中に基板を置くことによって行うことができる。
【0029】
反射防止膜形成工程では、基板の受光面側に反射防止膜を形成する。例えば、プラズマCVD法によってSiN膜を形成することができる。
表裏面集電極形成工程では、後述のように、太陽電池セル6の表面にフィンガー電極及びバスバー電極を形成し、裏面に裏面電極を形成する。
【0030】
充填接着剤7としては、透光性、表面側カバー及び裏面側カバーとの接着性を有することが必要である。さらに、太陽電池の保護という観点から、耐光性、耐熱性、耐水性、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることも必要である。充填接着剤7には、一般に耐湿性に優れたEVA(エチレンビニルアセテート)フィルム等の有機過酸化物を含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるフィルムが用いられる。
【0031】
その他にも、例えば、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコン樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン−アクリル酸、又は、メタクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマ−ル酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、その他等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。
【0032】
尚、耐光性、耐熱性、耐水性等の観点から、エチレン−酢酸ビニル系樹脂が特に望ましい。
上記の充填接着剤7の厚さとしては、100〜1000μm位、好ましくは、300〜500μm位が望ましい。
【0033】
次に太陽電池セル6の集電極構造について説明する。
図3は太陽電池セルの平面図、図4は太陽電池セルの正面図である。
太陽電池セル6は、表面側が受光面10をなし、その上に、複数のフィンガー電極11が設けられる。フィンガー電極11は、光の入射をできるだけ妨げないように細く形成されて、それぞれ所定の一方向に延在し、延在方向と直交する方向に所定の間隔で並設されている。
【0034】
また、太陽電池セル6の表面(受光面10)側には、フィンガー電極11の上に、フィンガー電極11と直交するように、電力を取出すための比較的太いバスバー電極12が設けられる。従って、バスバー電極12は、フィンガー電極11の並設方向に延在して、複数のフィンガー電極11をつないでいる。尚、フィンガー電極11は、例えば0.05mm程度の幅で90本程度形成され、バスバー電極12は、例えば0.5〜3mm程度の幅で少なくとも1本(1〜4本で、一般的には2本もしくは3本)設けられる。
【0035】
太陽電池セル1の裏面側には、全面にわたって裏面電極13が設けられる。また、図示は省略するが、裏面電極13上にもタブ線を接続するためのバスバー電極が設けられる。
集電極の材料としては、電気的導通を得ることができる公知の材質のものが挙げられ、例えば、Ag、Ni、Cu、Sn、Au、V、Al、Ptなどの金属、あるいはこれらの金属のうち2種以上の金属の合金、混合物などが適用できる。また、これらの金属を複数積層したものでもよい。また、カーボン材料や透明導電材料(ITO)単独もしくはこれらの材料と上記金属の複合体等でもよい。但し、太陽電池で発電した電流を流すときに抵抗とならないことが必要である(5〜10Ωcm−1程度)。
【0036】
集電極の形成方法としては、一般に導電性ペースト印刷が用いられる。導電性ペーストとしては、一般的な銀を含有したガラスペーストや接着剤樹脂に各種導電性粒子を分散した銀ペースト、金ペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト及びアルミニウムペースト、並びに、焼成や蒸着によって形成されるITOなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、導電性、安定性及びコストの観点から、銀を含有したガラスペーストが好適に用いられる。その他に、マスクパターンを用いたスパッタリング、抵抗加熱、CVD法、光CVD法、メッキ法などが挙げられる。
【0037】
フィンガー電極11及びバスバー電極12については、その形成方法は特に限定されないものの、一般的には、銀を含有したガラスペーストを用い、これをスクリーン印刷よる塗布、乾燥、焼成することによって形成することができる。
【0038】
裏面電極13については、その形成方法は特に限定されないものの、一般的には、例えば、アルミニウムペーストを塗布、乾燥、焼成することによって形成することができる。尚、表面側の乾燥及び焼成と、裏面側の乾燥及び焼成は、別々に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0039】
表面集電極形成における焼成の際、導電性ペーストが反射防止膜をファイアースルーすることによって、表面集電極がn型拡散層に接触するように形成することができる。尚、ファイアースルーとは、絶縁膜である反射防止膜を導電性ペーストに含まれるガラスフリット等が貫通し、表面集電極とn型拡散層とを導通させる現象である。
【0040】
次に太陽電池セル6、6間の電気的接続構造について説明する。
図5は太陽電池セル間の接続状態を示す平面図、図6は太陽電池セル間の接続状態を示す正面図である。
【0041】
隣合う太陽電池セル6、6は、相互にタブ線20により電気的に直列接続されている。すなわち、隣合う太陽電池セル6、6について、一方の太陽電池セル6の表面側のバスバー電極12と、他方の太陽電池セル6の裏面側の裏面電極13とを、タブ線20により接続する。言い換えれば、タブ線20の一端を一方の太陽電池セル6の表面側のバスバー電極12に導電性接着媒体を介して接続し、タブ線20の他端を他方の太陽電池セル6の裏面側の裏面電極13に導電性接着媒体を介して接続する。従って、タブ線20は、太陽電池セル6、6間で折れ曲がり、表と裏とをつなぐ。
【0042】
タブ線20は、導電性や機械的強度等を保証しつつ、セル表面の集電極とタブ線とを接着させる際に用いられる導電性接着媒体に対して高い接続強度が必要とされる。太陽電池セル間の導通性をより確実に得る観点から、タブ線が、Cu、Ag、Au、Fe、Ni、Pb、Zn、Co、Ti及びMgからなる群より選択される1種以上の金属元素を含むものであることが好ましい。
【0043】
一般的なタブ線は、芯材としての銅箔と、芯材表面上に錫を厚さ数十μm程度のメッキ層から成る。例えば、タフピッチ銅や無酸素銅などの純銅製の平角導体を芯材とし、その表面のメッキ層として、Sn−Pb共晶ハンダを用いたものが一般的である。表面のメッキ層として、Sn−Ag系、Sn−Bi系、あるいはSn−Cu系等も用いられる。
【0044】
本実施形態では、タブ線20接続用の上記の導電性接着媒体、特に表面側の導電性接着媒体として、導電性樹脂を使用する。
かかる導電性樹脂としては、セル表面の集電極との接着性、導電性、更には、信頼性を維持するため耐湿性や耐熱性に優れていることが要求される。
【0045】
導電性樹脂として用いられる材料は、例えば、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエーテルイミド、ポリエステル、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ブチラール樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS樹脂)、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂及びフェノール樹脂、シアネート樹脂ポリビニルアセテート、ゴム、ウレタン等の樹脂などが挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種、あるいは、これらの樹脂の混合、共重合などを用いることが好ましい。また、これらの樹脂に熱硬化性あるいはUV硬化性を付与することが好ましい。また、樹脂中に紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、シランカップリング剤を適宜添加してもよい。また、低温かつ短時間で硬化できるという点から、エポキシ樹脂やアクリル樹脂を用いることが、製造上、より好ましい。
【0046】
また、導電性樹脂は、微粒子を含んでもよい。微粒子を樹脂中に含むことにより、熱圧着過程において微粒子同士が接触するため、加熱圧着後により高い導電性を発現することができる。
【0047】
微粒子として、導電性粒子を用いる場合には、銀、銅、白金、ニッケル、金、錫、アルミニウム、ビスマス、インジウム、パラジウム、亜鉛、コバルトなどから選ばれる少なくとも1種の金属粒子、あるいはこれらの合金、混合などが適用できる。また、カーボン材料であってもよく、カーボン粒子と金属の複合材料でもよい。また、アルミナ、シリカ、セラミックス、酸化チタン、ガラスなどから選ばれる少なくとも1種の無機酸化物に金属コーティングを施したものであってもよく、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂などから選ばれる少なくとも1種、あるいは、これらの樹脂の混合体、共重合体などに金属コーティングを施したものであってもよい。微粒子の大きさについては、2〜30μmφ、好ましくは、平均粒径10μm程度の大きさがよい。
【0048】
更に、導電性樹脂は、高い光透過性を有することが好ましい。具体的には、波長400〜1000nmの波長領域において全エネルギーに対する光透過率が80%以上の透明な樹脂が好ましい。
【0049】
図7は、バスバー電極へのタブ線接続部の断面図(図6のB−B拡大断面図)である。
太陽電池セル6の表面側のバスバー電極12上に、導電性樹脂22を介してタブ線20が接着される。
【0050】
導電性樹脂22によってセルの集電極に接着されたタブ線20の少なくとも太陽光受光面側のバスバー電極12を覆う表面が着色剤層20aによって着色されている。
上記タブ線20の着色(着色剤層20aの形成)は、着色剤(インク)を塗布して行う方法、または、着色剤で着色されたテープ(着色テープ)を貼着する方法により行われる。
【0051】
かかる構成とすれば、まず、バスバー電極12とタブ線20とを、導電性樹脂を介して加熱圧着(セルの表裏両側から加熱部材で加圧挟持)して接続する構成であり、ハンダ等を高温で加熱溶融して接続する場合に比較して、低温(140〜200℃)での接着が可能となる。これにより、タブ線20の着色剤層20aの熱分解を防止でき、安定した着色を維持できる。この効果については、後に具体例を詳述する。
【0052】
そして、上記ように、タブ線20のバスバー電極12を覆う部分が着色されることにより、下記のような様々な効果が得られる。
銅線等で形成されるタブ線20の露出表面が金属色以外の色に着色されて光の反射を防止できるので、屋根に設置されたときの見た目が改善される。また、顧客の好みに応じた色に合わせることができ、色の選択幅が広がる。
【0053】
着色剤によってタブ線20の金属表面を保護することができ、耐腐食性等が向上する。
タブ線20の色によって、製造地域別、生産年月日別、メーカー別等を区別することが可能となり、メンテナンス等の際に有効利用することができる。
【0054】
太陽電池セル1の表面やバスバー電極12の金属表面とは、色差が大きく異なる色に着色することにより、タブ線20のバスバー電極12上への配置ずれを抑制できる。その結果、受光面積を確保できると共に電気接続抵抗の増大を抑制でき、ひいては発電効率を高めることができる。
【0055】
タブ線20の着色の各種態様を図8〜図10に示す。
図8及び図9は、タブ線20の一部を着色する態様を示し、これらの態様では、着色剤の消費コストを低減できる。
【0056】
図8は、タブ線20の、バスバー電極12を覆う部分の外側表面(太陽光受光面)のみを着色したものである。
この態様の上記の基本的な効果以外の効果を説明する(以下の態様も同様)。安価な非導電性着色剤(非導電性インク)を塗布し、または非導電性着色剤で着色されたテープ(非導電性着色テープ)を貼着して、タブ線20の必要箇所のみを着色すればよいため、着色剤の消費コストを最も低減できる。
【0057】
また、導電性樹脂22との接着面は着色しないため、着色剤層20aの介在による電気抵抗の増大を防止できる。
図9は、タブ線20の、太陽電池セル1の表面電極及び裏面電極をそれぞれ覆う部分の外側表面、つまり表裏両面を交互に着色したものである。
【0058】
この態様では、太陽電池セル1の表裏両面を太陽光受光面とし、バスバー電極を表裏両面に備える両面受光型の太陽電池モジュールにも適用することができ、表裏両面について上記基本的な効果が得られる。
【0059】
また、タブ線20の金属表面の大部分を着色剤層20aで保護することができ、耐腐食性が高められる。なお、隣接する太陽電池セル1間のタブ線20表裏両面も着色するようにすれば、より耐腐食性が高められる。この耐腐食性向上効果は、片面受光型及び両面受光型の太陽電池モジュールに共通して得られる。
【0060】
図10は、タブ線20の全面(表裏両面全体)を、着色したものである。具体的には、導電性を有した着色剤(導電性インク)を塗布して着色、または、導電性着色剤で着色されたテープ(導電性着色テープ)を貼着して着色したものである。
【0061】
この態様では、タブ線20の銅材等で形成される本体が、着色剤層20aを介して導電性樹脂22に接着されるが、着色剤層20aが導電性を有しているため、電気抵抗の増大を抑制できる。
【0062】
一方、この態様では、導電性インクを塗布して着色する場合、浸漬法、スプレー法など、パターンマスクを用いることなく、容易な工程で製造(量産)できる。また、導電性着色テープで着色する場合も、タブ線20の表裏両面にそれぞれ1本のテープを連続的に貼着すれば済むため、容易な工程で製造(量産)できる。
【0063】
上記構成の本発明に係る太陽電池モジュールのサンプルと、着色されたタブ線をバスバー電極にハンダ付けした太陽電池モジュールのサンプルを以下のように形成し、両者を比較した。
【0064】
<使用材料>
太陽電池セル:125mm×125mm、厚さ300μmの受光面上に、バスバー電極(材質:銀ガラスペースト、1.5mm×125mm)が形成されたもの。
ガラス基板(表面側カバー): 30mm×30mm、厚さ3.2mm
タブ線:幅1.2mm×厚さ0.15mmのCu線の両面にSn−Ag−Cu鉛フリーハンダを20μm厚にディップメッキしたものに、着色剤で着色したタブ線
導電性樹脂テープ: エポキシ樹脂にCu粒子を分散したテープ
封止用樹脂シート(裏面側カバー): 30mm×30mm×0.5mmのエチレン−酢酸ビニル共重合体シート
裏面保護シート:ポリエチレンテレフタレートフィルム(200μm厚)
【0065】
<タブ線の着色>
A.インク(導電性インクを含む)を塗布して着色する場合
A1.タブ線をアルカリ脱脂剤で洗浄後、水洗した。
A2.リン酸化成処理液をタブ線に、40℃で2分スプレーし、化成処理を行った。
A3.粉体プライマを静電塗装後、加熱硬化しプライマ塗膜を形成した。
A4.塗膜上にインクをスプレーし加熱硬化した。
【0066】
タブ線の一部をパターンで着色する場合
A1.の後、塗工面だけに孔が開いているパターンマスクをタブ線20上に置いた。
マスク上から、必要な部分のみに前処理&塗布されるように、A2.〜A4.の工程を行った。
【0067】
B.タブ線20を着色テープ(導電性着色テープを含む)で着色する場合
B1.タブ線20をアルカリ脱脂剤で洗浄後、水洗した。
B2.着色テープをタブ線上に貼着した。
【0068】
<タブ線の接続>
導電性樹脂テープを、バスバー電極の長さに合わせてカットした。
カットした導電性樹脂テープを、バスバー電極表面を覆って配置した。
タブ線を太陽電池セルのバスバー電極上(導電性樹脂上)に重ね置いて、軽く圧着した。導電性樹脂上に配置されたタブ線の上から太陽電池セルの方向へ圧力をかけながら、当該太陽電池セルを加熱した。この際、裏面側についても表面と同じ位置に配置されたバスバー電極上に表面と同様に導電性樹脂およびタブ線をセットし、表面と同じ圧力かつ対向する方向から圧力を付与した。太陽電池セルの表面・裏面同時に加熱圧着することにより、セル面に対して上下方向から同じ圧力が付与されることになるので、一方向に圧力が付与されることはない。そのため、セルが一方向に歪曲し割れることはない。
【0069】
熱硬化処理は、例えば、140〜200℃、0.5〜20MPaで、5〜100秒間加熱加圧することにより行った。
具体的な加熱圧着法として、160℃に加熱された加熱圧着ヘッドを上下に有する構造で、且つセル面に対して垂直方向に上下から一定の圧力を加えることのできる装置に太陽電池セルをセットした。圧力4MPaで太陽電池セルを挟み、導電性樹脂の硬化に必要な時間、例えば、60秒の加熱を行った。
【0070】
一般的に、熱硬化性の導電性樹脂を加熱していくと、一度粘度が下がり、その後に硬化剤により架橋が促進されて硬化が完了する。上述したような手法により加熱圧着することで、導電性樹脂がバスバー電極周辺部において流動状態となり、バスバー電極の形状に沿った状態に配置された後、熱硬化された。そのため、バスバー電極が導電性樹脂に埋め込まれた状態でタブ線とバスバー電極とが接着され導電接続された。
【0071】
同様にして、2枚目の太陽電池セルをタブ線上に重ね置いて軽く圧着し、上述した同様の手順で接着を行った。セルは1枚ずつ加熱圧着しても良いし、同時に複数枚を加熱圧着しても良い。
【0072】
セルを連結した後、減圧ラミネーターの加熱ステージ上に、ガラス基板を置き、その表面に封止用樹脂シートを置き、連結した2セルを2セット両隣に配置し、さらにもう一枚別の封止用樹脂シートを置き、その上に裏面保護シートを重ねた。
【0073】
ステージを150℃に維持しながら、0.1MPaの圧力が積層体に付加されるように真空ラミネート処理を5分間行うことにより、太陽電池モジュールのサンプルを作製した。
【0074】
比較例に係る太陽電池モジュールを以下のように形成した。
1.5mm幅のバスバー電極上に、バスバー電極からはみ出さないようにハンダを塗布しその上から1.2mmの色付きタブ線を置き250℃に加熱してハンダを溶融させ、タブ線とバスバー電極を接合し隣接するセルを接続した。
【0075】
セルを連結した後、減圧ラミネーターの加熱ステージ上に、ガラス基板を置き、その表面に封止用樹脂シートを置き、連結した2セルを2セット両隣に配置し、さらにもう一枚別の封止用樹脂シートを置き、その上に裏面保護シートを重ねた。
【0076】
ステージを150℃に維持しながら、0.1MPaの圧力が積層体に付加されるように真空ラミネート処理を5分間行うことにより、比較例に係る太陽電池モジュールのサンプルを作製した。
【0077】
図11は、タブ線の着色方法、色種、着色箇所が異なる第1実施例〜第8実施例のサンプルと比較例についてのタブ線接続前後の状態を示したものである。
比較例では、タブ線をハンダ付けする際に高温(200〜300℃程度)に加熱された着色剤(インク)が熱分解を生じ、タブ線表面に金属が露出してしまい、着色状態を維持できないことが確認された。
【0078】
一方、第1実施例〜第8実施例の全てのサンプルで、タブ線接続前後で色の変化、つまり着色剤の熱分解はなく、安定した着色状態が維持されることが確認された。
また、以上の実施形態では、予め着色したタブ線をバスバー電極に接続する構成のものを示した。この構成により、太陽電池モジュールの製造効率を高めることができる。また、特に、着色剤(インク)を塗布する場合は、上記したような着色方法A1〜A4を用いて、より長期的に安定した着色状態を維持することができる。
【0079】
但し、タブ線をバスバー電極に接続した後、タブ線表面を着色する構成としてもよい。この場合、タブ線の導電性樹脂との接着面はハンダによる接着面のような凹凸はなく、平坦であるため、色ムラを抑制できる。また、この方式でも例えば、全てのセルを配列した後、大型のパターンマスクを被せてインクをスプレーする等の方法を用いることによって、太陽電池モジュールの製造効率を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…太陽電池モジュール
6…太陽電池セル
10…受光面
12…バスバー電極
13…裏面電極
20…タブ線
20a…着色剤層
22…導電性樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルの太陽光受光面に形成されたバスバー電極と、複数の太陽電池セル相互を接続するタブ線とが導電性樹脂を介して接続されていると共に、前記タブ線の少なくとも前記バスバー電極を覆う部分の外側表面が、着色剤層で着色されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記着色剤層は、導電性を有していることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記着色剤層は、前記タブ線の表面に着色剤を塗布して形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記着色剤層は、着色剤で着色されたテープをタブ線の表面に貼着して形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
隣合う太陽電池セルのうち、一方の太陽電池セルの前記バスバー電極と他方の太陽電池セルの裏面側の電極とがタブ線を介して接続され、
前記着色剤層は、前記タブ線の前記バスバー電極を覆う部分の外側表面のみに形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
隣合う太陽電池セルのうち、一方の太陽電池セルの前記バスバー電極と他方の太陽電池セルの裏面側の電極とがタブ線を介して接続され、
前記着色剤層は、前記タブ線の前記バスバー電極を覆う部分の外側表面と、前記裏面側の電極を覆う部分の外側表面とに交互に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
隣合う太陽電池セルのうち、一方の太陽電池セルの前記バスバー電極と他方の太陽電池セルの裏面側の電極とがタブ線を介して接続され、
前記着色剤層は、前記タブ線の表裏両面に連続して形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
太陽電池セルの太陽光受光面に形成されたバスバー電極上に、少なくとも前記バスバー電極を覆う部分の外側表面が着色剤層で着色されたタブ線を、導電性樹脂を介して接続することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
太陽電池セルの太陽光受光面に形成されたバスバー電極上に、導電性樹脂を介してタブ線を接続し、次いで、前記タブ線の少なくとも前記バスバー電極を覆う部分の外側表面を着色剤で着色することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項1】
太陽電池セルの太陽光受光面に形成されたバスバー電極と、複数の太陽電池セル相互を接続するタブ線とが導電性樹脂を介して接続されていると共に、前記タブ線の少なくとも前記バスバー電極を覆う部分の外側表面が、着色剤層で着色されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記着色剤層は、導電性を有していることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記着色剤層は、前記タブ線の表面に着色剤を塗布して形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記着色剤層は、着色剤で着色されたテープをタブ線の表面に貼着して形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
隣合う太陽電池セルのうち、一方の太陽電池セルの前記バスバー電極と他方の太陽電池セルの裏面側の電極とがタブ線を介して接続され、
前記着色剤層は、前記タブ線の前記バスバー電極を覆う部分の外側表面のみに形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
隣合う太陽電池セルのうち、一方の太陽電池セルの前記バスバー電極と他方の太陽電池セルの裏面側の電極とがタブ線を介して接続され、
前記着色剤層は、前記タブ線の前記バスバー電極を覆う部分の外側表面と、前記裏面側の電極を覆う部分の外側表面とに交互に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
隣合う太陽電池セルのうち、一方の太陽電池セルの前記バスバー電極と他方の太陽電池セルの裏面側の電極とがタブ線を介して接続され、
前記着色剤層は、前記タブ線の表裏両面に連続して形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
太陽電池セルの太陽光受光面に形成されたバスバー電極上に、少なくとも前記バスバー電極を覆う部分の外側表面が着色剤層で着色されたタブ線を、導電性樹脂を介して接続することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
太陽電池セルの太陽光受光面に形成されたバスバー電極上に、導電性樹脂を介してタブ線を接続し、次いで、前記タブ線の少なくとも前記バスバー電極を覆う部分の外側表面を着色剤で着色することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−33848(P2013−33848A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169071(P2011−169071)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】
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