説明

太陽電池モジュール及び太陽電池モジュール用光制御シート

【解決手段】太陽光を入射させる透明部材のパネル1と太陽光入射の反対側に配置された熱伝導性部材のパネル5との間の空隙に、光透過性エラストマー部材2と太陽電池素子3とを、光透過性エラストマー部材2を太陽光入射側に配置すると共に、この光透過性エラストマー部材2によって太陽電池素子3を上記熱伝導性部材のパネル1側に押圧して圧着した状態で介装してなる太陽電池モジュールであって、上記光透過性エラストマーの屈折作用により直達光の光路を変換することで、光入射光量を屈折作用によらず直達光の入射がある領域より光の入射が少ない領域に、太陽電池セルのフィンガー電極及び/又はバスバー電極を対置した太陽電池モジュール。
【効果】本発明は、変換効率が高く、かつ、屋外暴露下において長期の耐久性を備えることで、地球環境問題を解決する重要なエネルギー源として、広大な太陽光発電所に敷設される太陽電池モジュールとして最適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール及び太陽電池モジュール用光制御シートに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、地球環境問題を解決する重要なエネルギー源として大きな期待が寄せられている。その主力はシリコンの結晶を用いた太陽電池を用いたシステムであり、シリコンの結晶を用いた太陽電池は光電変換デバイスとして、その光電変換効率の改善が絶え間ない研究開発により成し遂げられてきた。単結晶シリコン太陽電池では、バンドギャップの大きい非晶質シリコン層をヘテロ接合層として利用した太陽電池や、光入射面の集電電極層を不要とすることで光入射面での電極による入射光の損失を極限まで無くしたバックコンタクト型の開発により、20%超の光電変換効率を達成するまでに開発が進められてきた。
【0003】
太陽光発電は、太陽の光を電気に変換する太陽電池モジュールとその変換された電気を系統電力網のケーブルに接続するためのケーブルと周辺システムからなる。太陽電池モジュールは、屋外にて太陽光下で暴露されることから高い耐久性能が求められる。2009年に発表された独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構による『太陽光発電ロードマップ(PV2030+)』には2017年には太陽電池の寿命25年、2025年には寿命30年を達成することが謳われている。太陽光発電を商用電力の主翼を担う火力、原子力、水力と並ぶ基幹の電力源とするには、開発計画を前倒しして耐久性能の高い太陽電池を実現することが求められている。
【0004】
一方、太陽電池モジュールでは、結晶シリコン太陽電池を表面及び裏面から封止することでその信頼性を高める材料として広くEVA(エチレンビニルアセテートコポリマー)が用いられてきたが、このEVAはその低いガラス転移点により、高温では低粘度となり、低温では硬化する特性を持つために、屋外暴露における環境温度の変化による収縮現象が結晶シリコン太陽電池の配線不良を引き起こすことが指摘されており、EVAの使用がモジュール寿命25年超の足枷となっている。
【0005】
更には、EVAの封止工程は減圧及び加熱等を伴うラミネート工程が用いられているが、この工程は多くの煩雑な作業からなるため、この工程での不具合が太陽電池の特性の低下につながることが指摘されており、その解決方法として、例えば太陽電池モジュールの両端に位置する正負の電極から導出リード線を耐熱性を有するフィルムで被覆したものを用いて他のリード線との短絡を防ぐ(例えば、特許文献1参照)、光起電力素子の表面被覆材又は裏面被覆材の少なくとも一方として2種類以上の樹脂より構成された一体積層フィルムを用いて封止(例えば、特許文献2参照)することによる歩留まりの向上を図ることが提案されてきた。
【0006】
また、太陽電池モジュールを屋外に設置した場合、特に夏場においては太陽光により太陽電池モジュールの温度は大きく上昇する。そして太陽電池モジュールの温度上昇に伴い、太陽電池素子の温度も上昇し、それによって太陽電池モジュールの発電効率が低下することが知られている。例えば、単結晶シリコンセルの場合、25℃での発電効率を100%とすると、素子温度が25℃より1℃上昇するごとに約0.4%発電効率が低下する。よって、上昇した太陽電池素子の温度を如何に放熱させるかが、モジュールを効率良く使用してゆく重要な要素となる。
【0007】
この太陽電池の温度上昇を抑えるために、効率良くその熱を逃がす工夫が求められてきた。例えば、太陽電池素子の温度上昇を防ぐために、太陽電池モジュールの裏面に熱伝導性の良い金属からなる放熱構造体を設けたり(例えば、特許文献3参照)、伝熱性のブロック部材をヒートパイプと組み合わせることにより背面に放熱させたり(例えば、特許文献4参照)、線膨張係数が異なる金属製放熱部を積層構造させることによる放熱させたり(例えば、特許文献5参照)、また裏面に長板状の金属部材を接着して放熱させること(例えば、特許文献6参照)が提案されている。しかし、金属製の材料を用いることはその材料費及び加工費によりモジュール製造時のコスト高の原因となる可能性があり、またモジュール全体の質量が増加するため取扱いに不便となる。
【0008】
しかしながら、20%超の変換効率を達成するHIT型太陽電池や、バックコンタクト型太陽電池は、通常の単結晶シリコン太陽電池に比べ、非晶質シリコン層の堆積装置や微細な電極形成のための製造設備を必要とし、太陽電池の生産コスト増となり、広く普及する上での妨げとなっており、低コスト光入射面の集電電極による光入射の損失を抑えて変換効率を上げる技術が求められている。
【0009】
また、従来の方法では太陽電池セルと放熱材料との線膨張係数の違いによる温度上昇時の歪が原因で、上昇した太陽電池素子の温度を効率良く放熱させることが困難となっていた。特に、シリコンウェハーの厚みが200μm及びそれ以下のシリコンウェハーを材料として作製した太陽電池素子では、温度上昇時に太陽電池素子と密接している材料の線膨張率の影響を受けクラックが発生するなどの懸念がある。また、一般的に用いられている封止剤としてのEVAが温度変化によってモジュラスが大きく変化することが知られており(例えば、非特許文献1参照)、太陽電池素子への影響が懸念される。
【0010】
また、太陽電池モジュールとしての製造コストを低く抑えるために、太陽電池モジュールコストの50%以上を占めるシリコンウェハーのコストを下げることが求められている。そのために、セルの面積を少なくすると同時に、セルの厚みを120μm以下にすることによって、コストメリットがある太陽電池素子が求められている。しかし、そのような薄化ウェハーによって作製された太陽電池素子は衝撃により破損しやすいために、厚みが200μm超のウェハーによって作製された太陽電池モジュールに比べて、その封止及び放熱材料を同様に用いることは困難であった。特に、太陽電池素子の表面の配線接続部は、表側と太陽電池素子の裏側の封止材料の線膨張係数及びモジュラスの違いから、温度昇降が発生する屋外環境下において、脆化を招くことが指摘されている(例えば、非特許文献2,3参照)。
【0011】
一方、コスト面についていえば、従来の方法では、太陽電池素子と放熱性部材を接合させるために接着剤を使用したり、放熱性を上げるために2種類の樹脂層を設けたりし、それがコスト増加の原因となる可能性があった。また、特に接着剤については、10年以上の使用において、上記同様、温度昇降が発生する屋外環境下において、脆化を招くことが懸念され、更にそれが異物発生の原因となる可能性がある。
【0012】
更に、歩留まりについても、従来の方法では導出リード線をフィルムで被覆したり、被覆材を2種類以上の樹脂で一体積層フィルム状にしたり、コスト増加につながる可能性があり、また容易にリワークできない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開1997−326497号公報
【特許文献2】特開1999−87744号公報
【特許文献3】特許第2770906号公報
【特許文献4】特開1997−186353号公報
【特許文献5】特許第4206265号公報
【特許文献6】特開2006−156581号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Barry Ketola, Keith R.McIntosh, Ann Norris, Mary Kay Tomalia, ”Silicone For Photovoltaic Encapsulation” : 23rd European Photovoltaic Solar Energy Conference 2008, pp.2969−2973
【非特許文献2】D.L.King, M.A.Quintana, J.A.Kratochvil, D.E.Ellibee and B.R.Hansen, “Photovoltaic Module Performance and Durability Following Long Term Field Exposure, Progress in Photovoltaics : Research and Application 8 (2000) pp.241−256
【非特許文献3】M.A.Quintana, D.L.King, T.J.MacMahon and C.R.Osterwald, ”Commonly Observed Degradation in Field−Aged Photovoltaic Modules”, Proceedings of the 29th IEEE Photovoltaic Specialists Conference, New Orleans, (2002) pp.1392−1395
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、変換効率の高い太陽電池モジュール及び太陽電池モジュール用光制御シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、太陽光を入射させる透明部材のパネルと、太陽光入射の反対面に設けた熱伝導性部材のパネルとで形成された空間に半導体基板からなる太陽電池素子を、ゴム状の弾力性を有する光透過性エラストマー部材で押圧によって圧着することにより封止される太陽電池モジュールにおいて、光入射面に設けた光透過性エラストマー部材の屈折作用により直達光の光路を変換することで、光入射光量を屈折作用によらず直達光の入射がある領域より光の入射が少ない領域に、太陽電池セルのフィンガー電極及び/又はバスバー電極を対置させることで、フォトリソグラフィ等の微細な電極形成工程を用いることなく、又はヘテロ接合層の形成工程を用いることなく、光入射面の集電電極による光入射の損失を抑えて高い変換効率を実現すると共に、かつ、屋外暴露時における太陽電池モジュールの温度変化によるEVAによる収縮による耐久性劣化を抑えた太陽電池モジュール、更には、太陽電池モジュールの封止と光入射面の集電電極による光の損失を同時に実現する光制御シートが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0017】
従って、本発明は、下記に示す太陽電池モジュール及び太陽電池モジュール用光制御シートを提供する。
〔1〕 太陽光を入射させる透明部材のパネルと太陽光入射の反対側に配置された熱伝導性部材のパネルとの間の空隙に、光透過性エラストマー部材と太陽電池素子とを、光透過性エラストマー部材を太陽光入射側に配置すると共に、この光透過性エラストマー部材によって太陽電池素子を上記熱伝導性部材のパネル側に押圧して圧着した状態で介装してなる太陽電池モジュールであって、光透過性エラストマー部材が、少なくとも光入射側の表面が断面半円形状、断面半楕円状又は両側がそれぞれ丸味を帯びた断面半レーストラット状に形成されたエラストマー小片が複数個連設した形状を有し、上記太陽電池セルのフィンガー電極及び/又はバスバー電極を上記エラストマー小片の連設部に位置させて、上記光透過性エラストマーの屈折作用により直達光の光路を変換することで、光入射光量を屈折作用によらず直達光の入射がある領域より光の入射が少ない領域に、太陽電池セルのフィンガー電極及び/又はバスバー電極を対置したことを特徴とする太陽電池モジュール。
〔2〕 熱伝導性部材のパネルと太陽電池素子との間に熱伝導性エラストマー層を介装した〔1〕記載の太陽電池モジュール。
〔3〕 熱伝導性エラストマー層が熱伝導率0.2W/m・K以上5W/m・K以下の熱伝導性シリコーンゴムによって形成された〔2〕記載の太陽電池モジュール。
〔4〕 透明部材のパネルと熱伝導性部材のパネルとの間の空隙端部にスペーサー部材を配設した〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
〔5〕 透明部材のパネルと熱伝導性部材のパネルとの外縁部間にフレーム部材を架け渡して両パネルを固定した〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
〔6〕 熱伝導性部材のパネルが、硝子材、合成樹脂材、金属材又はそれらの複合材によって形成された〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
〔7〕 太陽電池素子がシリコン材料によって形成された〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
〔8〕 光透過性エラストマー部材が、シリコーンゴム組成物の硬化物から形成された〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
〔9〕 フィンガー電極及びバスバー電極を有する太陽電池素子の光入射側に配設されて、フィンガー電極及び/又はバスバー電極に入射する直達光をそれらの周囲に分散させる太陽電池モジュール用光制御シートであって、少なくとも光入射側の表面が断面半円形状、断面半楕円状又は両側がそれぞれ丸味を帯びた断面半レーストラット状に形成されたエラストマー小片の複数個を、上記太陽電池セルのフィンガー電極及び/又はバスバー電極が上記エラストマー小片の連設部に位置するように連設してなることを特徴とする太陽電池モジュール用光制御シート。
【発明の効果】
【0018】
本発明の太陽電池モジュールは、変換効率が高く、かつ、屋外暴露下において長期の耐久性を備えることで、地球環境問題を解決する重要なエネルギー源として、広大な太陽光発電所に敷設される太陽電池モジュールとして最適である。
また、煩雑なラミネート工程による太陽電池素子の封止が不要となるため、歩留まりの向上が期待でき、太陽電池素子はエラストマーの押圧によってのみ圧着されているので容易にリワークできることから、太陽電池モジュールの不具合発生時において太陽電池の交換により、太陽電池モジュールの部材を再度使用することが可能な再使用可能な太陽電池モジュールとして最適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】太陽電池モジュールの一例を示す断面図である。
【図2】光透過性エラストマー部材(光制御シート)に太陽光入射面に対し法線方向に太陽光が入射する例を示す説明図である。
【図3】光透過性エラストマー(光制御シート)に太陽光入射面に対し50度で太陽光が入射する例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の太陽電池モジュールの好適な態様について図面を参照して説明する。
図1は、光透過性エラストマー部材として板状シートを用いた太陽電池モジュールの断面の一例を示し、図2は光透過性エラストマー(光制御シート)部材に、太陽光入射面に対し法線方向に太陽光が入射する例を示し、また図3は同じく光透過性エラストマー(光制御シート)部材に、太陽光入射面に対し50度の角度で太陽光が入射する例を示す。
【0021】
図1において、1は太陽光を入射させる透明部材のパネル、5は太陽光入射と反対側に配設された熱伝導性部材のパネルであり、これら両パネル1,5間の空隙に、光透過性エラストマー部材2と半導体基板からなる太陽電池素子3とが光透過性エラストマー部材を光入射側に配置すると共に、光透過性エラストマー部材2によって、フィンガー電極又はバスバー電極6が形成された太陽電池素子3が上記熱伝導性部材のパネル5側に押圧されて圧着された状態で介装されている。
【0022】
この場合、太陽電池素子3と熱伝導性部材のパネル5との間に熱伝導性エラストマー層4が介在し、フィンガー電極又はバスバー電極6が形成された太陽電池素子3はこの熱伝導性エラストマー層4を介して熱伝導性部材のパネル5に圧着されている。
【0023】
また、図1の例においては、太陽電池素子3は連続して隙間なく配置され、光透過性エラストマー部材2は全体として板状シート状に形成されている。
【0024】
ここで、光透過性エラストマー部材2は、光制御シートとして形成され、少なくとも光入射側の表面が円弧状を有する断面半円形状、断面半楕円形状、又はそれぞれ両側が丸味を帯びた断面半レーストラック状に形成され、好ましくは断面半円形状、断面半楕円形状又は断面半レーストラック状の形状を有するエラストマー小片2aが複数個連設した構成を有する。そして、上記太陽電池素子3のフィンガー電極及び/又はバスバー電極6が上記エラストマー小片2a相互の連設部に位置するように光透過性エラストマー部材2又は太陽電池素子3が配設される。これにより、光透過性エラストマー部材(光制御シート)の少なくとも両側において、入射する太陽光(直達光)が屈折し、直達光の光路が変換することで、上記連設部に位置するフィンガー電極及び/又はバスバー電極に到達する直達光が太陽電池素子表面の他の部位より少なくなるものである。
【0025】
即ち、図2は、光透過性エラストマー(光制御シート)部材に、太陽光入射面に対し法線方向に太陽光が入射する例を示しており、本来フィンガー電極又はバスバー電極によって影になるために発生する出力の低下(シャドーロス)が、この光透過性エラストマーの光屈折作用により低減されることを示している。このように、光透過性エラストマーにより、本来電極に入射する特に直達光の光路を電極の周辺方向に曲げて変換し分散させることでシャドーロスを低減することになる。
【0026】
また、図3は、光透過性エラストマー(光制御シート)部材に、太陽光入射面に対し50度の方向に太陽光が入射する例を示しており、図2と同様、本来電極に入射する特に直達光の光路を電極の周辺方向に曲げて変換し分散させることでシャドーロスを低減することを示している。
【0027】
上記両パネル1,5間の空隙端部近傍には、スペーサー部材9が配設され、このスペーサー9の上下部と両パネル1,5との間にはそれぞれ封止部材8,8が介装されていると共に、スペーサー部材9の上記空隙端部側にも封止部材10が配置され、上記空隙内の光透過性エラストマー部材2、フィンガー電極又はバスバー電極6が形成された太陽電池素子3、熱伝導性エラストマー層4が密封されている。そして、上記両パネル1,5の外縁部間に断面コ字状のフレーム部材7が架け渡されて、これら両パネル1,5間が固定されている。
【0028】
ここで、上記透明部材のパネル1においては、透明性、耐候性、耐衝撃性をはじめとして屋外使用において長期の信頼性能を有する部材が必要であり、例えば白板強化ガラス、アクリル樹脂、フッ素樹脂又はポリカーボネート樹脂等があるが、一般的には厚さ3〜5mm程度の白板強化ガラスが広く用いられている。
【0029】
次に、上記熱伝導性部材のパネル5においては、太陽電池素子の温度を効率良く放熱することが求められ、材料として硝子材、合成樹脂材、金属材又はそれらの複合部材が挙げられる。硝子材の例としては、青板硝子、白板硝子又は強化硝子等が挙げられ、合成樹脂材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂又はエポキシ樹脂等が挙げられる。また金属材としては、銅、アルミニウム又は鉄等が挙げられ、複合材としては、シリカをはじめ、酸化チタン、アルミナ、窒化アルミニウムなど高い熱伝導性を有する材料を分散した合成樹脂等が挙げられる。
【0030】
なお、この熱伝導性部材のパネル5においては、熱伝導性エラストマー層4と共に透明性を有する部材を用いることにより、太陽光の直達光及び散乱光の一部を太陽光入射の反対面側に透過させることができ、例えば草原などに設置した場合、太陽電池モジュールの入射面と反対側の、つまり本来日陰となってしまう部分にも太陽光に一部が照射されることにより植物の生育を促し、家畜の放牧等にも利用できる。
【0031】
また、太陽電池素子3においては、単結晶シリコンもしくは多結晶シリコンのうちから選ばれる1種もしくは2種のシリコン材料を用いて太陽電池素子とするものである。
【0032】
次に、上記光透過性エラストマー部材2につき説明すると、これは透明性、耐候性をはじめとして屋外使用において20年以上の長期信頼性が必要であり、そのために紫外線耐性の高く、かつ熱圧縮成形や集光型太陽電池の光学シートを効率良く量産するための加工方法に適した押し出し成形又はカレンダー成形に対応しやすくするため、煙霧質シリカを高充填したミラブルタイプのシリコーンゴム組成物を硬化させてなるシートを用いることが好ましい。
【0033】
上記シリコーンゴム組成物を硬化させてなるシートは、例えば
(A)成分として、下記平均組成式(I)
1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
で表され、一分子中に少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有する重合度が100以上のオルガノポリシロキサンを100質量部、
(B)比表面積が200m2/gを超える煙霧質シリカを70〜150質量部、
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを0.1〜30質量部、及び
(D)ヒドロシリル化反応触媒を触媒量
を含んでなるシリコーンゴム組成物を硬化させて得られる。
【0034】
このシリコーンゴム組成物は、押し出し成形、カレンダー成形等が可能なミラブルタイプの材料であり、その硬化物はシリカを含有していても、高い透明性を持ち、集光型太陽電池の光学シートとして最適である。
【0035】
(A)成分は、上記平均組成式(I)で表される重合度が100以上のオルガノポリシロキサンである。平均組成式(I)中、R1は同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基を示し、通常、炭素数1〜12、特に炭素数1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、シクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換した基が挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基、ビニル基が好ましい。
【0036】
(A)成分として具体的には、該オルガノポリシロキサンの主鎖がジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるもの、又はこの主鎖を構成するジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるジメチルポリシロキサン構造の一部にフェニル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を有するジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位等を導入したもの等が好適である。
【0037】
特に、オルガノポリシロキサンは、一分子中に2個以上のアルケニル基、シクロアルケニル基等の脂肪族不飽和基を有するものが好ましく、特にビニル基であることが好ましい。この場合、全R1中0.01〜20モル%、特に0.02〜10モル%が脂肪族不飽和基であることが好ましい。なお、この脂肪族不飽和基は、分子鎖末端でケイ素原子に結合していても、分子鎖の途中のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよいが、少なくとも分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0038】
また、aは1.95〜2.05、好ましくは1.98〜2.02、より好ましくは1.99〜2.01の正数である。
【0039】
(A)成分のオルガノポリシロキサンとして、更に好ましくは平均組成式(I)におけるR1が炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、かつ一分子中の少なくとも2個はアルケニル基である。
【0040】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ジメチルヒドロキシシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基、メチルジビニルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基で封鎖されたものを好ましく挙げることができる。
【0041】
特に好ましいものとしては、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルビニルポリシロキサン、メチルトリフルオロプロピルビニルポリシロキサン等を挙げることができる。
【0042】
このようなオルガノポリシロキサンは、例えばオルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体、4量体等)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。これらは基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、(A)成分としては、分子量(重合度)や分子構造の異なる2種又は3種以上の混合物であってもよい。
【0043】
オルガノポリシロキサンの重合度は100以上、好ましくは100〜100,000、特に好ましくは3,000〜20,000である。なお、この重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度として測定することができる。
【0044】
(B)成分は、BET比表面積200m2/gを超える補強性シリカである。この補強性シリカは、透明性に優れ、また機械的強度の優れたシリコーンゴム組成物を得るために添加されるものである。またシリコーンゴム組成物の透明性向上のため、BET比表面積が200m2/gを超える必要があり、好ましくは250m2/g以上である。BET比表面積が200m2/g以下だと、硬化物の透明性が低下してしまう。なお、BET比表面積の上限は特に制限されないが、作業性等の点から通常500m2/g以下、好ましくは400m2/g以下程度のものであればよい。
【0045】
通常、シリコーンゴム組成物に使用されるシリカとしては煙霧質シリカ、沈降シリカ等が挙げられるが、沈降シリカを用いると透明性が低下するため、煙霧質シリカが用いられる。また、これらの表面をクロロシラン、アルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等で疎水化処理したものも好適に用いられる。特にヘキサメチルジシラザンによる処理が、透明性が高くなり、好ましい。
【0046】
(B)成分の補強性シリカの添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して70〜150質量部、好ましくは70〜120質量部であり、70質量部未満だと、シリコーンゴムコンパウンドを硬化させたシートの透明性が低下する。150質量部を超えると、シリコーンポリマー中へのシリカの分散が困難となる。
【0047】
(C)成分は、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子(SiH基)を含有するもので、好ましくは下記平均組成式(II)
2bcSiO(4-b-c)/2 (II)
(式中、R2は炭素数1〜6の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、bは0.7〜2.1の数であり、cは0.18〜1.0の数であり、かつb+cは0.8〜3.0を満足する。)
で示される従来から公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが適用可能である。
【0048】
2は炭素数1〜6の置換又は非置換の一価炭化水素基で、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものであり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基等の非置換の一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の一価炭化水素基である。
【0049】
bとcに関して、好ましくは、bは0.8〜2.0、cは0.2〜1.0、かつb+cは1.0〜2.5を満足する。
【0050】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜200個程度の室温で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)は分子鎖末端にあっても側鎖にあっても、その両方にあってもよく、一分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個)、より好ましくは4〜150個程度含有するものが使用される。
【0051】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体等や上記各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基等のアリール基で置換されたものなどが挙げられる。
【0052】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜10質量部である。
【0053】
また、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基に対する(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)のモル比が、好ましくは0.5〜5モル/モル、より好ましくは0.8〜4モル/モル、更に好ましくは1〜3モル/モルとなる量で配合される。
【0054】
(D)成分のヒドロシリル化反応触媒は、公知のものが適用可能で、例えば、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。
【0055】
(D)成分のヒドロシリル化反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、白金族金属として(A)成分に対し、0.5〜1,000ppm、好ましくは1〜200ppm程度である。
【0056】
(A)〜(D)成分を少なくとも含んでなるシリコーンゴム組成物は、上記成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、難燃性付与剤、着色剤等を添加することができる。
【0057】
シリコーンゴム組成物は、上述した成分の所定量を2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練りすることによって得ることができる。
【0058】
シリコーンゴム組成物を成形する場合、成形方法としては、特に限定されないが、プレス成形、押し出し成形、カレンダー成形等が可能である。
【0059】
シリコーンゴム組成物の硬化条件は特に限定されない。一般的には、80〜300℃、特に100〜250℃で5秒〜1時間、特に30秒〜30分間程度加熱硬化させることにより硬化物を得ることができる。また、100〜200℃で10分〜10時間程度ポストキュアーしてもよい。
【0060】
このシリコーンゴム組成物の硬化物は、厚さ2mmの硬化物シートの全光線透過率が、結晶シリコンの分光感度領域である0.35〜1.15μmの波長で90%以上であることが好ましい。具体的には、スガ試験機(株)製直読ヘイズコンピューターHGM−2による測定値で好ましくは90%以上である。この全光線透過率が90%未満であると、光拡散が大きすぎ、入射光が光学シートの最遠部まで届かない場合がある。このシリコーンゴム組成物の硬化物は、厚さ2mmの硬化物シートのヘイズ値が、スガ試験機(株)製直読ヘイズコンピューターHGM−2による測定値で10以下、特に8以下であることが好ましい。該ヘイズ値が10を超える場合は光拡散が大きすぎて、入射光が光透過性エラストマー部材の最遠部まで届かない場合がある。
【0061】
本発明の太陽電池モジュール光制御シートを、屈折率0.35〜1.15μmの波長に対して透過率90%以上(厚さ2mmの場合)のシリコーンゴム組成物を硬化させてなるシートで作製した場合について説明する。本発明の太陽電池モジュールにおいては、太陽光の直達光を効率良く取り込むために、南中高度が季節ごとに変動することを考慮しなければならず、本発明の太陽電池モジュール光制御シートでは、一軸方向にその形状を形成する。
【0062】
南中高度は春分・秋分を起点として夏至で+23度、冬至で−23度変化することを考慮する必要があるが、上記図1で示した太陽電池モジュールで用いる光学シートの形状によれば、直達光の50度の斜め入射に対してもフィンガー電極又はバスバー電極によるシャドーロスの低減機能を維持した状態で太陽電池の受光面に入射できることを、幾何学光学ソフト(Light Tools)を用いて確認した。
【0063】
本発明の実施においては、受光面の太陽に向けての追尾システムは必須とはしない。本発明の光透過性エラストマー部材を用いた成形体によって変換効率が高く、かつ、屋外暴露下において長期の耐久性を備えることで、地球環境問題を解決する重要なエネルギー源として、広大な太陽光発電所に敷設される太陽電池モジュールを提供することができる。
【0064】
次に、上記フレーム部材7においては、衝撃、風圧又は積雪に対する強度が優れ、耐候性を有し、かつ軽量であるアルミニウム合金、ステンレス鋼等が好ましく用いられている。これらの材料で成形されたフレーム部材7によって、パネル1,5により挟持された構造体の外周を囲うように装着し、ねじにより固定する。
【0065】
本発明の太陽電池モジュールは、ゴム状の弾力性を有する光透過性エラストマー部材2を介して、太陽電池素子を押圧によって圧着するが、その際の押圧の圧力は0.01MPa以上5.0MPa以下、特に0.05MPa以上2.0MPa以下の範囲が好ましい。押圧の圧力が0.01MPa未満であると太陽電池素子が固定化されなかったり、入射した太陽光の一部が素子に取り込めない可能性があったり、また太陽電池素子の温度上昇を太陽電池素子の裏面から放熱されにくくなる可能性がある。一方、押圧の圧力が5.0MPaより大きいと、温度昇降時の線膨張率の違いによる歪を緩和できなくなったり、光透過性エラストマーである光学シートが変形し光の屈折作用が劣る可能性がある。更にまた、特に太陽電池素子の厚みが120μm以下の場合においては、太陽電池素子が破損する可能性がある。
【0066】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽光を入射させる透明部材のパネル1と、太陽光入射の反対側の熱伝導性部材のパネル5の外縁部を、上記スペーサー部材8を介して保持させることができる。このスペーサー部材8に求められる性能としては、太陽光を入射させる透明部材のパネル1と、熱伝導性部材のパネル5の距離を一定に保ち、上記ゴム状の弾力性を有する光透過性エラストマー部材2の、上記太陽電池素子3に対する押圧の圧力をコントロールすることであり、材料としてはアルミニウム等の金属又は硬質樹脂などが挙げられる。
【0067】
本発明の太陽電池モジュールにおいて、上記熱伝導性部材のパネル5と上記太陽電池素子3との間に、上記熱伝導性エラストマー層4を設けることができるが、これはシートとして配設しても塗布層として形成してもよい。この熱伝導性エラストマー層4を設けることにより、熱伝導性部材のパネル5と太陽電池素子3の線膨張率の差による歪を緩和・吸収したり、又は熱伝導性部材のパネル5との密着性が上がり、発生した熱を効率的に放熱させることができる。
【0068】
この熱伝導性エラストマー層4は、熱伝導率0.2W/m・K以上5W/m・K以下(ASTM E 1530)、特に0.5〜5W/m・Kであるシリコーンゴム硬化物であることが好ましい。熱伝導率が0.2W/m・Kより小さいと、上記熱伝導性部材のパネル5と上記太陽電池素子3との熱圧着温度を高くしたり、圧着時間を長くしたりする必要があり、効率の面で不利な場合が生じる。5W/m・Kを超えると熱伝導性エラストマー層の硬度が高くなるため、シート状に加工するのが困難となると同時に太陽電池素子との均一な圧着が困難となる。
【0069】
またこの熱伝導性エラストマー層5の厚みは200μm以上700μm以下、特に300μm以上500μm以下の厚みが好ましい。厚みが200μmより小さいと太陽電池素子から熱伝導性エラストマー層への熱の移動が速やかに行なわれず、太陽電池素子の温度上昇を抑えられない可能性がある。また厚みが700μmより厚いと熱伝導性エラストマー層から熱伝導部材への熱の移動が速やかに行なわれない可能性がある。
【0070】
この上記熱伝導性エラストマー層4を形成するための組成物は、硬化性オルガノポリシロキサン100質量部に、カーボン、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物から選択される少なくとも1種を10〜1,600質量部添加することで得られる。これらの具体例としては、金属では銀粉、銅粉、鉄粉、ニッケル粉、アルミニウム粉など、金属酸化物では亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、鉄等の酸化物、金属窒化物ではホウ素、アルミニウム、ケイ素等の窒化物、金属炭化物ではケイ素、ホウ素等の炭化物等が例示される。
【0071】
必要に応じて、上記熱伝導性エラストマー組成物に、着色顔料、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤等の各種添加剤、あるいは分散剤として各種アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有シロキサン等を添加してもよい。
【0072】
この熱伝導性エラストマー組成物は、上記成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー等の混練機を用いて均一に混合し、必要に応じて100℃以上の温度で熱処理することにより得ることができる。
【0073】
また、この熱伝導性エラストマー組成物の硬化性オルガノポリシロキサンを硬化させてゴム弾性体とする硬化剤としては、通常シリコーンゴム組成物の硬化に使用されている従来公知のものでよく、これはラジカル反応に使用されるジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、付加反応硬化剤として硬化性オルガノポリシロキサンがアルケニル基を有する場合、ケイ素原子に結合した水素原子を一分子中に2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒とからなるもの、縮合反応硬化剤として硬化性オルガノポリシロキサンがシラノール基を含有する場合、アルコキシ基、アセトキシ基、ケトオキシム基、プロペノキシ基等の加水分解性の基を2個以上有する有機ケイ素化合物などが例示されるが、この添加量は通常のシリコーンゴム組成物と同様にすればよい。
【0074】
この熱伝導性エラストマー組成物としては、ミラブルタイプシリコーンゴム組成物及び液状タイプシリコーンゴム組成物のいずれを用いてもよい。作業性、成形加工性の点から有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型の熱伝導性シリコーンゴム組成物が好ましい。
【0075】
上記熱伝導性エラストマー組成物を硬化させることにより、熱伝導性エラストマー層を形成することが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示す。
【0077】
[参考例1]光透過性エラストマー部材の作製
ジメチルシロキサン単位99.425モル%、メチルビニルシロキサン単位0.50モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約6,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET比表面積300m2/gのシリカ(商品名アエロジル300、日本アエロジル(株)製)70部、分散剤としてヘキサメチルジシラザン16部、水4部を添加し、ニーダーにて混練りし、170℃にて2時間加熱処理してコンパウンドを調製した。
上記コンパウンド100部に対し、付加架橋硬化剤としてC−25A(白金触媒)/C−25B(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)(共に、信越化学工業(株)製)をそれぞれ0.5部/2.0部を2本ロールで混練後添加し均一に混合した後、120℃、70kgf/cm2の条件でプレスキュアー成形体が断面半楕円状の小片が多数連設した形状になるようなプレス具を用いて10分間プレスキュアーを行い、次いで200℃で4時間ポストキュアーを行い、連設部以外の部分の厚さ1.0mmの試験用シートを成形した。
【0078】
[実施例1]太陽電池モジュールの作製
参考例1で成形した光透過性エラストマー部材を用いて太陽電池モジュールを作製した。
即ち、光入射面側の厚さ3.5mmの白板強化ガラスに上記光透過性エラストマー部材及び太陽電池素子をその光入射面が上記光透過性エラストマー部材に接するように、かつ上記光透過性エラストマー部材における連設部に太陽電池素子のフィンガー電極が位置するように設置した。次いで、熱伝導性エラストマーとして信越化学工業(株)製放熱シリコーンシートTC−20A(厚さ0.2mm、熱伝導率1.1W/m・K)を上記太陽電池素子の光入射面の反対側に接するように配置した。次に、上記白板強化ガラスの太陽電池素子を設置した面にアルミニウム合金製のスペーサーを設置した。該スペーサーの前記白板強化ガラスへの接着はシリコーン製ゴムあるいはブチルゴムを用いるのが好ましい。同様にして該白板強化ガラスと別の白板強化ガラスとで該スペーサーを挟むようにして接着する。更にスペーサー外縁部をシリコーン製ゴムあるいはブチルゴムで封止した後、上記放熱シリコーンシート面積に対して約0.5MPaの圧力がかかるように光入射面側及びその反対面側の白板強化ガラスをコの字形のアルミニウム合金製のフレームによって固定し太陽電池モジュールを作製した。なお、この場合は太陽光入射面及びその反対側の面の両面がガラスの構造となるので、通常両面ガラスの構造が用いられる両面受光型モジュールと同じように、両ガラスの間から電極を取り出し配線を行った。
上記の構成により、フィンガー電極によるシャドーロスの低減が可能となった。
【符号の説明】
【0079】
1 透明部材のパネル(太陽光入射側)
2 光透過性エラストマー部材(光制御シート)
3 太陽電池素子
4 熱伝導性エラストマー層
5 熱伝導性部材のパネル
6 電極
7 フレーム部材
8 封止部材
9 スペーサー部材
10 封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を入射させる透明部材のパネルと太陽光入射の反対側に配置された熱伝導性部材のパネルとの間の空隙に、光透過性エラストマー部材と太陽電池素子とを、光透過性エラストマー部材を太陽光入射側に配置すると共に、この光透過性エラストマー部材によって太陽電池素子を上記熱伝導性部材のパネル側に押圧して圧着した状態で介装してなる太陽電池モジュールであって、光透過性エラストマー部材が、少なくとも光入射側の表面が断面半円形状、断面半楕円状又は両側がそれぞれ丸味を帯びた断面半レーストラット状に形成されたエラストマー小片が複数個連設した形状を有し、上記太陽電池セルのフィンガー電極及び/又はバスバー電極を上記エラストマー小片の連設部に位置させて、上記光透過性エラストマーの屈折作用により直達光の光路を変換することで、光入射光量を屈折作用によらず直達光の入射がある領域より光の入射が少ない領域に、太陽電池セルのフィンガー電極及び/又はバスバー電極を対置したことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
熱伝導性部材のパネルと太陽電池素子との間に熱伝導性エラストマー層を介装した請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
熱伝導性エラストマー層が熱伝導率0.2W/m・K以上5W/m・K以下の熱伝導性シリコーンゴムによって形成された請求項2記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
透明部材のパネルと熱伝導性部材のパネルとの間の空隙端部にスペーサー部材を配設した請求項1乃至3のいずれか1項記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
透明部材のパネルと熱伝導性部材のパネルとの外縁部間にフレーム部材を架け渡して両パネルを固定した請求項1乃至4のいずれか1項記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
熱伝導性部材のパネルが、硝子材、合成樹脂材、金属材又はそれらの複合材によって形成された請求項1乃至5のいずれか1項記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
太陽電池素子がシリコン材料によって形成された請求項1乃至6のいずれか1項記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
光透過性エラストマー部材が、シリコーンゴム組成物の硬化物から形成された請求項1乃至7のいずれか1項記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
フィンガー電極及びバスバー電極を有する太陽電池素子の光入射側に配設されて、フィンガー電極及び/又はバスバー電極に入射する直達光をそれらの周囲に分散させる太陽電池モジュール用光制御シートであって、少なくとも光入射側の表面が断面半円形状、断面半楕円状又は両側がそれぞれ丸味を帯びた断面半レーストラット状に形成されたエラストマー小片の複数個を、上記太陽電池セルのフィンガー電極及び/又はバスバー電極が上記エラストマー小片の連設部に位置するように連設してなることを特徴とする太陽電池モジュール用光制御シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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