説明

太陽電池モジュール取付け屋根構造

【課題】折り畳み可能又は分解可能なテント、ドーム等のような軽量屋根に使用する織布、高分子材を用いたシート状の屋根又は壁等の軽量な構造物に対して取付けても、弛み又は歪みによって変形が生じることなく、その強度の面においても安全性の高い太陽電池モジュール取付け屋根構造を提供する。
【解決手段】ドーム型軽量屋根の高分子シート5上に接着する太陽電池モジュールとして、プラスチック等の高分子フィルム材にシリコン結晶又はアモルファスシリコンが製膜された軽量なフレキシブルタイプ太陽電池モジュール6を用いる。各フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6は直列に接合、配線され、ドーム型軽量屋根の駆動モーターの電源として配線される。フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6は、ドーム型軽量屋根自体へ漏電しないようにポリエチレンシート等の高分子材料で被覆する。高分子シート5としても絶縁性のある高分子材料を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールが屋根に取付けられた太陽電池モジュール取付け屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の屋根に設置された採光用天窓の開閉、または開閉式屋根の開閉等の開閉機構の電源として太陽電池が利用されている。例えば、特許文献1には建物の開口部に設置して使用する開閉式の採光用天窓装置について記載されており、太陽電池が開口枠の外方に設置された例が示されている。特許文献2には、構造物において電気エネルギーを得ることができる太陽電池パネル一体型開閉式屋根について記載されている。この太陽電池パネル一体型開閉式屋根は多数の羽根板を備えており、各羽根板は羽根板本体と当該羽根板本体の太陽側に臨む面に取着されたアモルファス太陽電池パネル等とから構成されている。特許文献3には、建築物の屋根面に設けられた採光あるいは換気用の天窓開口を開閉する窓体が太陽電池パネルとしても機能している太陽電池パネルを兼用した開閉式天窓装置について記載されている。この窓体の表面に太陽電池セルが取付けられている。いずれも、建屋の屋根または壁等に取り付けた太陽電池パネルから電気エネルギーを取り出して、建屋内の照明、換気または空調等の一次電源として、インバータを介することにより直流で発生した電気エネルギーを交流に変換して利用されている。
【0003】
図3は、上述した従来技術における採光用天窓等の開閉の概略を説明するための図である。図3において、符号10は建物、11は建物10の屋根、1は屋根11に設置された太陽電池パネル、2は屋根11に設置された採光用等の開閉式天窓である。図3に示される開閉式天窓2のような構造物には、当該構造物を開閉するための駆動装置または開閉機構(不図示)が取り付けられており、その駆動用電源として利用される太陽電池パネル1自体も屋根11等の構造物に直に取り付けられている。このように、従来技術において太陽電池パネル1が取付けられる構造物は、太陽電池パネル1を直に取付けてもその形伏が変化しないような丈夫な屋根11等の構造物に限定されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−258360号公報
【特許文献2】特開平7−139112号公報
【特許文献3】特開平9−53309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した丈夫な屋根11等の構造物に対しては、太陽電池自体がパネル形であるため、屋根11等の構造物のサイズに太陽電池パネル1を合わせることだけで太陽電池パネル1の取付および利用が可能である。しかし、例えば折り畳み可能または分解可能なテント、ドーム等のような軽量屋根に使用する織布、あるいは高分子材を用いたシート状の屋根または壁等の軽量な構造物に対しては、太陽電池パネル1の取付による弛みまたは歪みによって当該軽量な構造物に変形が生じてしまうだけでなく、その強度の面においても安全性に問題があった。すなわち、テント、ドームまたはシート状等の軽量型屋根に対して従来の太陽電池パネル1を直接設置することは重量の制限により無理があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、折り畳み可能または分解可能なテント、ドーム等のような軽量屋根に使用する織布、あるいは高分子材を用いたシート状の屋根または壁等の軽量な構造物に対して取付けても、弛みまたは歪みによって変形が生じることなく、その強度の面においても安全性の高い太陽電池モジュール取付け屋根構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の太陽電池モジュール取付け屋根構造は、太陽電池モジュールが屋根に取付けられた太陽電池モジュール取付け屋根構造であって、前記屋根は所定の間隔で設置された支柱上に張られたシート材により構成された軽量屋根であり、前記太陽電池モジュールは前記シート材上に固着されたフレキシブルタイプ太陽電池モジュールであることを特徴とする。
【0008】
ここで、この発明の太陽電池モジュール取付け屋根構造において、前記フレキシブルタイプ太陽電池モジュールを前記屋根の開閉用電源として及び/又は開閉用電源の充電用として用いることができる。
【0009】
ここで、この発明の太陽電池モジュール取付け屋根構造において、前記屋根の開閉は該屋根の折り畳み又はスライドにより行なわれることができる。
【0010】
ここで、この発明の太陽電池モジュール取付け屋根構造において、前記シート材は高分子材を用いた高分子シートであるものとすることができる。
【0011】
ここで、この発明の太陽電池モジュール取付け屋根構造において、前記フレキシブルタイプ太陽電池モジュールは高分子フィルム材にシリコン結晶又はアモルファスシリコンが製膜され、該フレキシブルタイプ太陽電池モジュールの両側は絶縁シートで被覆された構造を備えたものとすることができる。
【0012】
ここで、この発明の太陽電池モジュール取付け屋根構造において、前記屋根はドーム型又はテント型の形状を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の太陽電池モジュール取付け屋根構造によれば、ドーム型軽量屋根の高分子シート上に接着する太陽電池モジュールとして、プラスチック等の高分子フィルム材にシリコン結晶またはアモルファスシリコンが製膜され、電極が取り出されたフレキシブルタイプ太陽電池モジュールを用いる。ドーム型軽量屋根の支柱間の高分子シートには弛み等の変形が起き得るが、フレキシブルタイプ太陽電池モジュールは、当該変形に対して共に変形することが可能である。このため、フレキシブルタイプ太陽電池モジュールをシート状のドーム型軽量屋根に利用することが可能となる。各フレキシブルタイプ太陽電池モジュールは直列に接合、配線され、ドーム型軽量屋根の駆動モーターの電源として配線されている。フレキシブルタイプ太陽電池モジュールはポリエチレンシート等の高分子材料で被覆されているため、フレキシブルタイプ太陽電池モジュールの両端から発生した電気は、ドーム型軽量屋根自体へ漏電することはない。仮にフレキシブルタイプ太陽電池モジュールの絶縁性が落ちたとしても高分子シート自体には電気が流れないように、高分子シート(屋根材)として絶縁性のある高分子材料を用いればよい。以上により、折り畳み可能または分解可能なテント、ドーム等のような軽量屋根に使用する織布、あるいは高分子材を用いたシート状の屋根または壁等の軽量な構造物に対して取付けても、弛みまたは歪みによって変形が生じることなく、その強度の面においても安全性の高い太陽電池モジュール取付け屋根構造を提供することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、各実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1における太陽電池モジュール取付け屋根構造の一例である、シート状のドーム型軽量屋根構造の断面図を示す。図1において、符号15は建物、16は建物15に設けられたシート状のドーム型軽量屋根、5はドーム型軽量屋根16に使用する高分子材を用いた高分子シート、4はドーム型軽量屋根16を支持する支柱、3は複数の支柱4が設置された移動レール(またはスライドレール)である。図1に示されるように、ドーム型軽量屋根16の下部に設けられた移動レール3上に所定の間隔で複数の支柱4が設置されており、これら複数の支柱4上に高分子シート5を張ることにより、ドーム型軽量屋根16が取り付けられた屋根構造となっている。
【0016】
図2は、ドーム型軽量屋根16を拡大した斜視図を示す。図2で図1と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。図2において、符号6はプラスチック等の高分子フィルム材にシリコン結晶またはアモルファスシリコンが製膜され、電極が取り出されたフレキシブルタイプ太陽電池モジュールであり、その両側は絶縁を保つためにポリエチレンシート等の高分子材料(絶縁シート。不図示)で被覆された構造となっている。図2に示されるように、軽量なフレキシブルタイプ太陽電池モジュール6は高分子シート5上に接着(固着)して取り付けられている。続いて符号7は、ドーム型軽量屋根16全体を移動レール3上で移動させるために支柱4の下部に設置された移動車輪である。図2では、支柱4は高分子シート5の裏側となるため破線により示してある。
【0017】
上述のように、フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6はポリエチレンシート等の高分子材料で被覆されているため、フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6の両端から発生した電気は、ドーム型軽量屋根16自体へ漏電することはない。各フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6は直列に接合、配線され、ドーム型軽量屋根16の駆動装置の電源として配線されている。
【0018】
高分子シート5(屋根材)としては、フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6の接着が可能であり、仮にフレキシブルタイプ太陽電池モジュール6の絶縁性が落ちても高分子シート5自体には電気が流れない絶縁性のある高分子材料を用いる。例えば、高分子シート5として、フッ素樹脂、ポロエチレン等の高分子シートが好適である。
【0019】
ドーム型軽量屋根16の支柱4は、ドーム型軽量屋根16全体の強度を高め且つ高分子シート5の歪みまたは変形を小さくするために鋼材パイプ等の支柱とし、所定の間隔で高分子シート5に取り付ける。ドーム型軽量屋根16は、その下部に設けられた移動レール3上を駆動モーター(不図示)により移動する。その際、高分子シート5は折り畳むことにより、シート状のドーム型軽量屋根16の開閉を可能とする軽量屋根構造を達成することができる。あるいは、移動レール3上を駆動モーターにより移動する際に、ドーム型軽量屋根16全体をスライドさせることにより、シート状のドーム型軽量屋根16の開閉を可能とする軽量屋根構造を達成することもできる。支柱4を設置する所定の間隔としては、フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6を高分子シート5に固着した際に、適切に弛む程度の間隔とすればよい。
【0020】
上記駆動モーターは、フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6で発生した電気を直接利用することができる。但し、夜間にドーム型軽量屋根16の開閉を行う場合は太陽電池エネルギーを得ることができないため、昼間に予めバッテリー(二次電池)に充電しておき、この二次電池を用いて駆動モーターを動作できるようにすればよい。すなわちフレキシブルタイプ太陽電池モジュール6は、ドーム型軽量屋根16の開閉用電源として直接用いることができ、または開閉用電源(二次電池)の充電用として間接的に用いることもできる。勿論、ドーム型軽量屋根16の開閉用電源として直接用いると共に開閉用電源の充電用として間接的に用いてもよい。
【0021】
ドーム型軽量屋根16の支柱4間の高分子シート5には弛み等の変形が起き得る。しかし、本発明のシート状のドーム型軽量屋根構造に用いるフィルム形状のフレキシブルタイプ太陽電池モジュール6は、上記変形に対して共に変形することが可能である。このため、フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6をシート状のドーム型軽量屋根16に利用することが可能となる。折り畳み可能または分解可能なテント等のシート状の軽量屋根についても同様に、その表面部にフレキシブルタイプ太陽電池モジュール6を接着すればよい。
【0022】
以上より、本発明の実施例1によれば、ドーム型軽量屋根16の高分子シート5上に接着する太陽電池モジュールとして、プラスチック等の高分子フィルム材にシリコン結晶またはアモルファスシリコンが製膜され、電極が取り出されたフレキシブルタイプ太陽電池モジュール6を用いる。ドーム型軽量屋根16の支柱4間の高分子シート5には弛み等の変形が起き得るが、フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6は、当該変形に対して共に変形することが可能である。このため、フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6をシート状のドーム型軽量屋根16に利用することが可能となる。各フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6は直列に接合、配線され、ドーム型軽量屋根16の駆動モーターの電源として配線されている。フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6はポリエチレンシート等の高分子材料で被覆されているため、フレキシブルタイプ太陽電池モジュール6の両端から発生した電気は、ドーム型軽量屋根16自体へ漏電することはない。仮にフレキシブルタイプ太陽電池モジュール6の絶縁性が落ちたとしても高分子シート5自体には電気が流れないように、高分子シート5(屋根材)として絶縁性のある高分子材料を用いればよい。以上により、折り畳み可能または分解可能なテント、ドーム等のような軽量屋根に使用する織布、あるいは高分子材を用いたシート状の屋根または壁等の軽量な構造物に対して取付けても、弛みまたは歪みによって変形が生じることなく、その強度の面においても安全性の高い太陽電池モジュール取付け屋根構造を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の活用例として、軽量な屋根構造、例えば、折り畳み可能または分解可能なテント、ドーム等のような軽量屋根に使用する織布、あるいは高分子材を用いたシート状の屋根または壁等の軽量な屋根構造を適用対象として挙げることができる。すなわち、従来より応用範囲の広い屋根構造に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1における太陽電池モジュール取付け屋根構造の一例である、シート状のドーム型軽量屋根構造の断面図である。
【図2】ドーム型軽量屋根16を拡大した斜視図である。
【図3】従来技術における採光用天窓等の開閉の概略を説明するための図である。
【符号の説明】
【0025】
1 太陽電池パネル、 2 開閉式天窓、 3 移動レール、 4 支柱、 5 高分子シート、 6 フレキシブルタイプ太陽電池モジュール、 7 移動車輪、 10、15 建物、 11 屋根、 16 ドーム型軽量屋根。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールが屋根に取付けられた太陽電池モジュール取付け屋根構造であって、
前記屋根は所定の間隔で設置された支柱上に張られたシート材により構成された軽量屋根であり、前記太陽電池モジュールは前記シート材上に固着されたフレキシブルタイプ太陽電池モジュールであることを特徴とする太陽電池モジュール取付け屋根構造。
【請求項2】
請求項1記載の太陽電池モジュール取付け屋根構造において、前記フレキシブルタイプ太陽電池モジュールを前記屋根の開閉用電源として及び/又は開閉用電源の充電用として用いることを特徴とする太陽電池モジュール取付け屋根構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の太陽電池モジュール取付け屋根構造において、前記屋根の開閉は該屋根の折り畳み又はスライドにより行なわれることを特徴とする太陽電池モジュール取付け屋根構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュール取付け屋根構造において、前記シート材は高分子材を用いた高分子シートであることを特徴とする太陽電池モジュール取付け屋根構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュール取付け屋根構造において、前記フレキシブルタイプ太陽電池モジュールは高分子フィルム材にシリコン結晶又はアモルファスシリコンが製膜され、該フレキシブルタイプ太陽電池モジュールの両側は絶縁シートで被覆された構造を備えたことを特徴とする太陽電池モジュール取付け屋根構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の太陽電池モジュール取付け屋根構造において、前記屋根はドーム型又はテント型の形状を有することを特徴とする太陽電池モジュール取付け屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−241761(P2006−241761A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56676(P2005−56676)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】