説明

太陽電池モジュール用バックシートの製造方法および太陽電池モジュールの製造方法

【課題】太陽電池モジュールにおいて、接着剤を用いることなく、太陽電池セルを封止する封止材層とバックシートの間に良好な接着性を付与することが可能な太陽電池モジュール用バックシートおよび太陽電池モジュールの製造方法を提供する
【解決手段】基材シートの一方の面に設けられた塗膜層(b)と、太陽電池セルを封止する封止材との接着性を有する接着性樹脂フィルムとを、圧着しながらまたは圧着後に加熱することにより積層する工程を有する太陽電池モジュール用バックシートの製造方法であって、塗膜層(b)が架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と、硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有し、加熱温度が60〜120℃である太陽電池モジュール用バックシートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材シート上に、架橋性含フッ素共重合体を含有する塗料の塗膜層が脱媒体、硬化した硬化塗膜層と、太陽電池セルを封止する封止材との接着性を有する樹脂フィルムとが積層され、かつ硬化塗膜層と樹脂フィルムとの間に良好な接着性を有する太陽電池モジュール用バックシートの製造方法に関する。
また本発明は、架橋性含フッ素共重合体を含有する塗料の塗膜層が脱媒体、硬化した硬化塗膜層と、太陽電池セルを封止する封止材層とが積層され、かつ硬化塗膜層と封止材層との間に良好な接着性を有する太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、基本的には太陽光を受光する側から、透明表面層、封止材により太陽電池セルが封止された封止材層、バックシートの順に積層された構成を有する。
【0003】
上記バックシートは、外的要因から太陽電池セルを保護するために設けられたものであり、その役割を果たすために機械的強度、耐候性、防水・防湿性、電気絶縁性等の特性が要求され、多くの場合、このような各種特性を有する層を積層した構成、例えば、機械的強度を有する基材シートとその一方/または両面に保護層が貼り合わされた構成を有している。
【0004】
このような構成のバックシートにおいては、基材シートの材料として、例えば、水不透過性に優れたSi蒸着ポリエステル(Si蒸着PET)や、アルミニウムやステンレススチールなどの金属/またはそれらを蒸着したPETが使用されている。また、保護層には、耐候性、電気絶縁性、難燃性、意匠性などといった特性が求められており、これらの特性を満足するものとしてポリフッ化ビニル重合体(PVF)のシート等が使用されている。しかし、軽量化の観点から、特許文献1に記載されているような硬化性官能基含有フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜を保護層として使用することが提案されている。
【0005】
ここで、バックシートには上記特性に加えて、上記太陽電池セルの封止材層との接着性、実際には、太陽電池セルの封止材層に封止材として通常用いられるエチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)との接着性が求められている。バックシートの保護層として太陽電池セルの封止材層側に上記のような硬化性官能基含有フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜を用いる場合には、この硬化塗膜とEVAとの密着性を高める必要がある。また、場合により十分な接着性を確保するために両者の間に接着剤層を設ける提案もされている。
【0006】
しかしながら、通常硬化性官能基含有フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜の表層(空気側)は表面活性が乏しく、十分な密着性を示さないことが発明者らにより確認された。また接着剤層を設ける方法においては、通常接着剤層を構成する成分は耐候性に乏しく、長期にわたり使用する場合には、接着剤層が紫外線等により劣化して、太陽電池モジュールにおいてバックシート層と太陽電池セル封止樹脂層間で剥離が起こることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−35694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、太陽電池モジュールとした際に、劣化等の懸念のある接着剤層等を介することなく、太陽電池セルの封止材層との良好な接着性を有する太陽電池モジュール用バックシートの製造方法を提供することを目的とする。
また本発明は、劣化等の懸念のある接着剤等を用いることなく、太陽電池セルの封止材層とバックシートとの間に良好な接着性を有する太陽電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の太陽電池モジュール用バックシートの製造方法は、以下の[1]〜[6]である。
[1]基材シートの一方の面に設けられた塗膜層(b)と、太陽電池セルを封止する封止材との接着性を有する接着性樹脂フィルムとを、圧着しながらまたは圧着後に加熱することにより積層する工程を有する太陽電池モジュール用バックシートの製造方法であって、前記塗膜層(b)が架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と、前記硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有し、前記加熱温度が60〜120℃である太陽電池モジュール用バックシートの製造方法。
【0010】
[2]前記架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体とを含有し、前記媒体の含有量が前記硬化性樹脂100質量部に対して120質量部以上である塗料を、基材シートの一方の面に塗布して塗膜層(a)を形成する塗膜形成工程(A)、前記塗膜層(a)に含まれる媒体を除去して、前記硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有する塗膜層(b)とする部分乾燥工程(B)、および、前記太陽電池セルを封止する封止材との接着性を有する接着性樹脂フィルムと前記塗膜層(b)とを、圧着しながらまたは圧着後に60〜120℃に加熱することにより積層する積層工程(C)、を有する[1]に記載の製造方法。
【0011】
[3]前記塗膜層(b)と、前記接着性樹脂フィルムとが化学結合によって結合し積層される[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記太陽電池セルを封止する封止材が、エチレンと酢酸ビニルの共重合体からなる[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
【0012】
[5]前記架橋性含フッ素共重合体が、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、へキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、およびフッ化ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体の重合単位、および架橋性基を有する単量体の重合単位を含有する重合体である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記架橋性含フッ素共重合体が有する架橋性基が、水酸基、カルボキシル基、加水分解性シリル基、アミノ基、エポキシ基、およびカルボニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
【0013】
また、本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、以下の[7]〜[12]である。
[7]太陽電池セルを封止する封止材からなる封止材層と、基材シート上の前記封止材層と接する側の表面層として、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と前記硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有する塗膜層(b’)を有する太陽電池モジュール用バックシートとを、圧着しながらまたは圧着後に60〜120℃に加熱することにより積層する工程を有する太陽電池モジュールの製造方法。
【0014】
[8]太陽電池モジュール用バックシートを構成する基材シートの一方の面に、前記架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体とを含有し前記媒体の含有量が前記硬化性樹脂100質量部に対して120質量部以上である塗料を、塗布して塗膜層(a’)を形成する塗膜形成工程(A’)、前記塗膜層(a’)に含まれる媒体を除去して、前記硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有する塗膜層(b’)とする部分乾燥工程(B’)、および、前記太陽電池セルを封止する封止材からなる封止材層と、前記太陽電池モジュール用バックシートの塗膜層(b’)とを、圧着しながらまたは圧着後に60〜120℃に加熱することにより積層する積層工程(C’)、を有する[7]に記載の製造方法。
【0015】
[9]前記塗膜層(b’)と、前記封止材層とが化学結合によって結合し積層される[7]または[8]に記載の製造方法。
[10]前記太陽電池セルを封止する封止材が、エチレンと酢酸ビニルの共重合体である[7]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
[11]前記架橋性含フッ素共重合体が、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、へキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、およびフッ化ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体の重合単位、および架橋性基を有する単量体の重合単位を含有する重合体である[7]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]前記架橋性含フッ素共重合体が有する架橋性基が、水酸基、カルボキシル基、加水分解性シリル基、アミノ基、エポキシ基、およびカルボニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である[7]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の太陽電池モジュール用バックシートの製造方法によれば、太陽電池モジュールとした際に、劣化等の懸念のある接着剤等を介することなく、太陽電池セルの封止材層と良好な接着性を有するバックシートを製造することができる。
また、本発明の太陽電池モジュールの製造方法によれば、劣化等の懸念のある接着剤を用いることなく、太陽電池セルの封止材層とバックシートとの間の接着性が良好な太陽電池モジュールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の製造方法が対象とする太陽電池モジュール用バックシートの一例を用いた太陽電池モジュールの一例の断面図である。
【図2】実施例1で得られた架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体を含有する塗料の塗膜について、一定条件下での部分乾燥における経過時間と硬化性樹脂100質量部に対する残留媒体質量部との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の製造方法が対象とする太陽電池モジュールの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において、特に説明のない場合、「%」は、「質量%」を表す。上記に示す架橋性含フッ素共重合体の「重合単位」を「単位」と、「単量体によって形成された重合単位」を「単量体の単位」と記載することがある。上記以外の単量体、オレフィン類についても同様に記載することがある。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を表わす。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
[太陽電池モジュール用バックシートの製造方法]
本発明の製造方法によって得られる太陽電池モジュール用バックシートは、基材シートと、基材シートの一方の面に設けられた架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体を含有する塗料の塗膜層が脱媒体、硬化した硬化塗膜層(以下、「硬化塗膜層」ともいう。)と、太陽電池セルを封止する封止材層(以下、「封止材層」ともいう。)と接着性を有する接着性樹脂フィルムにより形成された層とが、基材シート、硬化塗膜層、接着性樹脂フィルムにより形成された層(以下、「接着性樹脂フィルム層」ともいう。)の順に積層されたバックシートである。
なお、本発明の製造方法において、上記架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂とは、主成分としての架橋性含フッ素共重合体と硬化剤とからなるものをいうが、硬化性樹脂は架橋性含フッ素共重合体のみで構成されていてもよい。
【0021】
本発明の製造方法によって得られた太陽電池モジュール用バックシートの一例を、代表的な太陽電池モジュールに用いた例を図1に断面図で示す。
図1において、太陽電池モジュール1は、透明表面層2、太陽電池セル3が封止材により封止された太陽電池セルの封止材層4、バックシート5の順に積層された構成を有する。
バックシート5は、基材シート6と、基材シート6の封止材層4側に基材シート側から順に硬化塗膜層7と接着性樹脂フィルム層9が形成されており、さらに太陽電池モジュール1とした際に最も外側になるように基材シート6上に外側保護層8が設けられた構成となっている。本発明の製造方法によって得られるバックシートは、例えば、上記構成のバックシート5を形成するために用いられる。
【0022】
(基材シート)
本発明の太陽電池モジュール用バックシートの製造方法に用いる基材シートは、機械的特性と水不透過性を有するシートであれば特に制限なく使用することができ、従来から太陽電池モジュール用バックシートに一般的に使用されている基材シートを使用することができる。基材シートとしては、重量や価格、可撓性などの点から、アルミニウムやステンレススチールなどの金属薄シート、プラスチックシート、Siやアルミニウムなどの金属が少なくとも一方の面に蒸着された金属蒸着プラスチックシートなどが好ましく、プラスチックシート、金属蒸着プラスチックシートがより好ましい。
【0023】
基材シートがプラスチック製の場合の材質として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニル類;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類;ナイロン6、ナイロン66、MXDナイロン(メタキシレンジアミン/アジピン酸共重合体)などのポリアミド類;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレートなどの置換基を有するオレフィン類の重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体などの共重合体などが挙げられる。
【0024】
これらの中でも、PET、EVA、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン6、ナイロン66、エチレン/ビニルアルコール共重合体等が好ましい。
【0025】
基材シートの厚さは、本発明により得られるバックシートが使用される太陽電池モジュールにもよるが、概ね10〜200μm程度の厚さが好ましく採用される。
また、基材シートとしては接着性を向上させるために、従来公知の方法で表面処理を行ったものを用いてもよい。表面処理としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、化成処理、金属シートの場合はブラスト処理などが挙げられる。
【0026】
(架橋性含フッ素共重合体)
(1)架橋性含フッ素共重合体を構成する重合単位を形成する単量体
本発明の太陽電池モジュール用バックシートの製造方法に使用される、硬化性樹脂の主成分である架橋性含フッ素共重合体は、フッ素原子と架橋性基を有する共重合体である。該共重合体は、フッ素原子を有する重合単位および架橋性基を有する重合単位を含有していることが好ましい。フッ素原子を有する重合単位は、フルオロオレフィンが重合して形成された重合単位であることが好ましく、架橋性基を有する重合単位は、架橋性基を有する単量体が重合して形成された単位であることが好ましい。
【0027】
フッ素原子を有する単量体:
フッ素原子を有する単量体としては、フッ素樹脂原料として通常用いられている含フッ素単量体が特に制限なく挙げられる。具体的には、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニリデンフルオライド(VdF)、ビニルフルオライド(VF)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フルオロアルキル基と重合性不飽和基とがエーテル結合またはエステル結合で連結された単量体(以下、「フルオロアルキル基を有する単量体」ともいう。)等が挙げられる。これらの中でも、TFE、HFP、CTFE、VdF、VFが好ましく、TFE、CTEFが特に好ましい。これらは1種を単独で用いることも可能であり、2種以上を併用することも可能である。
【0028】
架橋性基を有する単量体:
架橋性基を有する単量体としては、架橋性基を有し、前記フッ素原子を有する単量体と共重合が可能な重合性不飽和基を有する単量体であれば特に制限なく使用することができる。架橋性基を有する単量体における架橋性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、加水分解性シリル基、カルボニル基、シアノ基、イソシアネート基等が好ましい。これらのうちでも、架橋反応性、入手容易性やポリマーへの導入容易性の観点から水酸基、カルボキシル基、加水分解性シリル基、アミノ基、エポキシ基およびカルボニル基が好ましく、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基がより好ましい。これらは1種を単独で用いることも可能であり、2種以上を併用することも可能である。
このような架橋性基を有する単量体として、具体的には、下記のものが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。
【0029】
水酸基を有する単量体は、水酸基と重合性不飽和基を有する単量体である。水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ-2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類等が好ましい。これらの中でも水酸基含有ビニルエーテル類、特に4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが入手容易性、重合反応性、架橋性基の架橋性が優れる点でより好ましい。
【0030】
他の水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどが例示できる。水酸基を有する単量体は、1種を単独で用いることも可能であり、2種以上を併用することも可能である。
【0031】
カルボキシル基を有する単量体は、カルボキシル基と重合性不飽和基を有する単量体であるが、不飽和ジカルボン酸の酸無水物も、容易にカルボキシル基を有する単量体に変換されることから、本明細書においては、不飽和ジカルボン酸の酸無水物をカルボキシル基を有する単量体と等価の単量体として扱う。
【0032】
カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、ウンデシレン酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、フタル酸ビニル等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;イタコン酸モノエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル等の不飽和ジカルボン酸物エステル類;
マレイン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物類等が好ましい。これらの他にもピロメリット酸ビニル等の多価カルボン酸のビニルエーテルまたはアリルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、クロトン酸、ウンデシレン酸、マレイン酸、イタコン酸等が、入手容易性、重合反応性、架橋性が優れる点で好ましい。カルボキシル基を有する単量体は、1種を単独で用いることも可能であり、2種以上を併用することも可能である。
【0033】
架橋性含フッ素共重合体にカルボキシル基を導入する方法は、上記のようにカルボキシル基を有する単量体を共重合させる方法の他に、前記の水酸基を有する単量体を共重合させておき、導入された水酸基と酸無水物を反応させる方法もある。
その際の好ましい水酸基を有する単量体は上に記載した水酸基を有する単量体と同じである。好ましい酸無水物としては、無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸があげられる。
【0034】
アミノ基を有する単量体は、アミノ基と重合性不飽和基を有する単量体である。アミノ基を有する単量体としては、例えば、CH=CH−O−(CH−NH(x=0〜10)で表わされるアミノアルキルビニルエーテル類;CH=CHCH−O−(CH−NH(x=1〜10)で表わされるアミノアルキルアリルエーテル類;CH=CH−O−CO(CH−NH(x=1〜10)で示されるアミノカルボン酸ビニルエステル類;CH=CHCH−O−CO(CH−NH(x=1〜10)で示されるアミノカルボン酸アリルエステル類、およびこれらの単量体において−(CH−で表わされる部分の1個以上の水素がアルキル基で置換されたアミノ基を有する単量体が好ましい。その他、アミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミドなどが挙げられる。これらの中でも、アミノアルキルビニルエーテル類、アミノアルキルアリルエーテル類、アミノカルボン酸ビニルエステル類、アミノカルボン酸アリルエステル類がより好ましい。アミノ基を有する単量体は、1種を単独で用いることも可能であり、2種以上を併用することも可能である。
【0035】
エポキシ基を有する単量体は、エポキシ基と重合性不飽和基を有する単量体である。エポキシ基を有する単量体におけるエポキシ基は、グリシジル基となっていることが好ましい。エポキシ基を有する単量体としては、グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル等が好ましい。エポキシ基を有する単量体は、1種を単独で用いることも可能であり、2種以上を併用することも可能である。
【0036】
加水分解性シリル基を有する単量体は、加水分解性シリル基と重合性不飽和基を有する単量体である。加水分解性シリル基を有する単量体としては、例えば、CH=CHCO(CH)Si(OCH)、CH=CHCO(CH)Si(OC)、CH=C(CH)CO(CH)Si(OCH)、CH=C(CH)CO(CH)Si(OC)、CH=CHCO(CH)SiCH(OC)、CH=C(CH)CO(CH)SiC(OCH)、CH=C(CH)CO(CH)Si(CH)(OC)、CH=C(CH)CO(CH)Si(CH)OH、CH=CH(CH)Si(OCOCH)、CH=C(CH)CO(CH)SiC(OCOCH)、CH=C(CH)CO(CH)SiCH(N(CH)COCH)、CH=CHCO(CH)SiCH〔ON(CH)C、CH=C(CH)CO(CH)SiC〔ON(CH)Cなどの(メタ)アクリル酸エステル類;CH=CHSi[ON=C(CH)(C)]、CH=CHSi(OCH)、CH=CHSi(OC)、CH=CHSiCH(OCH)、CH=CHSi(OCOCH)、CH=CHSi(CH)(OC)、CH=CHSi(CH)SiCH(OCH)、CH=CHSiC(OCOCH)、CH=CHSiCH〔ON(CH)C、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物等のビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類等が好ましい。加水分解性シリル基を有する単量体は、1種を単独で用いることも可能であり、2種以上を併用することも可能である。
【0037】
本発明に用いる架橋性含フッ素共重合体は、フッ素原子を有する単量体の単位および架橋性基を有する単量体の単位とを含有するが、さらに必要に応じて、任意にフッ素原子および架橋性基のいずれをも含有しない単量体(以下、「その他の単量体」という。)の重合単位を含有していてもよい。
その他の単位としては、オレフィン類やアルキル基と重合性不飽和基とがエーテル結合またはエステル結合で連結されたアルキル基を有する単量体が好ましい。
【0038】
オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなど非フッ素系オレフィン類が好ましい。
アルキル基を有する単量体におけるアルキル基は、直鎖構造でも分岐を有する構造でもよく、環状構造を有していてもよい。
【0039】
アルキル基を有する単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類等が好ましい。また、これらのビニル基がアリル基に置き換わったアルキルアリルエーテル類、カルボン酸アリルエステル類も好ましい。これらの中でも、架橋性含フッ素共重合体の媒体への溶解性または分散性や硬化塗膜層の可撓性が良好であることから、アルキルビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類がより好ましい。
その他の単量体は1種を単独で用いることも可能であり、2種以上を併用することも可能である。
【0040】
(2)架橋性含フッ素共重合体を構成する重合単位の組み合わせ
以下に、本発明に用いる架橋性含フッ素共重合体を、含有するフッ素を有する単量体の重合単位をもとに分類し、分類ごとに架橋性含フッ素共重合体を構成する重合単位の組み合わせについて例示した。
なお、架橋性含フッ素共重合体には明確な融点を有する樹脂性の重合体、ゴム弾性を示すエラストマー性の重合体、その中間の熱可塑性エラストマー性の重合体が含まれる。
【0041】
本発明の製造方法に用いられる架橋性含フッ素共重合体は、フッ素原子を有する単量体の単位を含む。フッ素原子を有する単量体としては、TFE、HFP、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フルオロアルキル基を有する単量体、VdF、CTFE、VF、フルオロビニルエーテル等の単量体や、これらの単量体の組み合わせが好ましい。これらの中でもTFE、CTFE、VdFが好ましく、TFE、CTFEがより好ましい。
【0042】
フッ素原子を有する単量体以外の単量体は、前記架橋性基を有する単量体およびその他の単量体を特に制限なく使用することができる。その際の好ましい単量体は、架橋性基を有する単量体およびその他の単量体に関する記載において、好ましいとして記載した単量体と同じである。
【0043】
TFEの単位を主体とする架橋性含フッ素共重合体:
TFEの単位を主体とする架橋性含フッ素共重合体(以下、「架橋性TFE系共重合体」ともいう。)としては、例えば、TFE/ヒドロキシアルキルビニルエーテル類の共重合体、TFE/ヒドロキシアルキルビニルエーテル類/アルキルビニルエーテル類の共重合体、TFE/ヒドロキシアルキルビニルエーテル類/カルボン酸ビニルエステル類の共重合体、およびこれらの単量体の組合せに1種以上のその他の単量体を組み合わせた共重合体が好ましい。
より具体的には、TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/イソブチレンの共重合体、TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/バーサチック酸ビニルの共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテルの共重合体、およびこれらの単量体の組合せにその他の単量体を組み合わせた共重合体が好ましい。これらの中でも、特にTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/イソブチレンの共重合体、TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/バーサチック酸ビニルの共重合体、およびこれらの単量体の組合せに1種以上のその他の単量体を組み合わせた共重合体がより好ましい。
【0044】
架橋性TFE系共重合体のうちTFEの単位を主体とした架橋性含フッ素共重合体を含有する塗料としては、例えば、ダイキン工業社製のゼッフルGK(商品名)シリーズなどの市販品があり、これらを本発明に使用することもできる。
【0045】
CTFEの単位を主体とする架橋性含フッ素共重合体:
CTFEの単位を主体とする架橋性含フッ素共重合体(以下、「架橋性CTFE系共重合体」ともいう。)としては、例えば、CTFE/ヒドロキシアルキルビニルエーテル類の共重合体、CTFE/ヒドロキシアルキルビニルエーテル類/アルキルビニルエーテル類の共重合体、CTFE/ヒドロキシアルキルビニルエーテル類/カルボン酸ビニルエステル類の共重合体、およびこれらの単量体の組合せに1種以上のその他の単量体を組み合わせた共重合体が好ましい。
【0046】
より具体的には、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテルの共重合体、CTFE/ヒドロキシエチルビニルエーテルの共重合体、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/エチルビニルエーテルの共重合体、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/2−エチルヘキシルビニルエーテルの共重合体、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/バーサチック酸ビニルの共重合体、およびこれらの単量体の組合せにその他の単量体を組み合わせた共重合体がより好ましい。これらの中でも、媒体への溶解性または分散性および硬化塗膜層の可撓性が良好であることから、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/エチルビニルエーテルの共重合体、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/2−エチルヘキシルビニルエーテルの共重合体、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/バーサチック酸ビニルの共重合体、およびこれらの単量体の組合せに1種以上のその他の単量体を組み合わせた共重合体がより好ましい。
CTFEの単位を主体とする架橋性CTFE系共重合体は、重合の際の共重合性、塗料とした際の顔料分散性や硬化塗膜層の耐候性、耐薬品性、透湿性に優れている点で好ましい。
【0047】
架橋性CTFE系共重合体を含有する塗料としては、例えば、旭硝子社製のルミフロン(商品名)、大日本インキ製造社製のフルオネート(商品名)、セントラル硝子社製のセフラルコート(商品名)などの市販品があり、これらを本発明に使用することもできる。
【0048】
VdFの単位を主体とする架橋性含フッ素共重合体:
VdFの単位を主体とする架橋性含フッ素共重合体の具体例としては、VdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテルの共重合体、およびこれらの単量体の組合せに1種以上のその他の単量体を組み合わせた共重合体などが挙げられる。
【0049】
フルオロアルキル基を有する単量体の単位を主体とする架橋性含フッ素共重合体:
フルオロアルキル基含有架橋性含フッ素共重合体を構成する単位のうち、フルオロアルキル基を有する量体の単位を形成する単量体としては、例えば、CFCF(CFCFCHCHOCOCH=CH(t=3と4の混合物)、等が挙げられる。
【0050】
フルオロアルキル基を有する単量体の単位を主体とする架橋性含フッ素共重合体を構成する単位を形成する単量体のうち、フルオロアルキル基を有する単量体以外の単量体は、前記架橋性基を有する単量体およびその他の単量体を特に制限なく使用することができる。その際の好ましい単量体は、架橋性基を有する単量体およびその他の単量体に関する記載において、好ましいとして記載した単量体と同じである。
【0051】
フルオロアルキル基含有架橋性含フッ素共重合体の具体例としては、CFCF(CFCFCHCHOCOCH=CH(t=3と4の混合物)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体などがあげられる。
フルオロアルキル基を有する単量体を主体とする架橋性含フッ素共重合体を含有する組成物としては、例えば、旭硝子社製のアサヒガード(商品名)、ダイキン工業社製のユニダインやエフトーン(ともに商品名)、デュポン社製のゾニール(商品名)などの市販品があり、これらを本発明に使用することもできる。
【0052】
(3)架橋性含フッ素共重合体を構成する重合単位の組成
本発明に用いる架橋性含フッ素共重合体は、フッ素原子を有する単量体の単位、架橋性基を有する単量体の単位、その他の単量体を含有することが好ましい。架橋性含フッ素共重合体中のフッ素原子を有する単量体の単位の含有量の合計は、架橋性含フッ素共重合体中の全単位に対して35〜65モル%であることが好ましく、40〜60モル%であることがより好ましい。架橋性含フッ素共重合体中のフッ素原子を有する単量体の単位を上記範囲とすることで、耐候性と溶剤への溶解性の両立が可能である。
【0053】
また、架橋性含フッ素共重合体中の架橋性基を有する単量体の単位の含有量の合計は、架橋性含フッ素共重合体中の全単位に対して、6〜50モル%であることが好ましく、7〜40モル%であることがより好ましい。架橋性含フッ素共重合体における架橋性基を有する単量体の単位の含有量の合計が6モル%以上であると、硬化塗膜層の硬度等を確保するために充分な架橋度が確保でき、50モル%以下であればポリマーを溶液とした際にゲル化が起こりにくい。
【0054】
架橋反応によらずに硬化塗膜層を得る場合には、架橋性基を有する単量体の単位の含有量は、架橋性含フッ素共重合体中の全単位に対して0.4モル%以上あればよい。架橋性基を有する単量体の単位の含有量が0.4モル%以上あれば、積層した際の接着性を充分に確保できる。
【0055】
架橋性含フッ素共重合体中のその他の単量体の単位の含有量の合計は、架橋性含フッ素共重合体中の全単位に対して45モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることがより好ましい。
【0056】
(4)架橋性含フッ素共重合体の重合方法
本発明に使用する架橋性含フッ素共重合体は、上記各単量体を従来公知の重合方法、具体的には、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの重合方法により共重合することで得ることができる。
【0057】
(架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂を含有する塗料)
本発明の太陽電池モジュール用バックシートの製造方法において使用する、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂を含有する塗料(以下、「架橋性含フッ素共重合体塗料」ともいう。)は、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体とを含有し、必要に応じて適宜各種の添加剤を含有していてもよい。
【0058】
架橋性含フッ素共重合体塗料が含有する媒体は、具体的には溶媒または分散媒である。架橋性含フッ素共重合体塗料としては、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂および任意に配合された添加剤が溶媒に溶解した溶液型塗料、または架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂および任意に配合された添加剤が分散媒に分散した(ただし、添加剤の種類によっては添加剤については溶解した)分散型塗料が用いられる。架橋性含フッ素共重合体塗料は、塗膜形成の容易さ、硬化性、乾燥性の良好さなどの点から、溶液型塗料であることが好ましい。
【0059】
ここで、上記の通り架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂は、架橋性含フッ素共重合体と硬化剤で構成されるか、あるいは架橋性含フッ素共重合体のみで構成される。本発明において好ましくは、硬化性樹脂は、架橋性含フッ素共重合体とこれを硬化させる硬化剤とからなる。ただし、本発明に用いる架橋性含フッ素共重合体のなかには、架橋性基の種類によっては、乾燥するだけで硬化するものもある。このように架橋性含フッ素共重合体それ自体が硬化性樹脂となる場合には、硬化剤の添加は必ずしも必要でない。
【0060】
上記硬化性樹脂が含有する硬化剤は、主成分である架橋性含フッ素共重合体が有する架橋性基に応じて適宜選択される。硬化剤としては、架橋性含フッ素共重合体が有する架橋性基が水酸基である場合には、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物等が好ましい。また、架橋性基がカルボキシル基である場合には、アミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、架橋性基がアミノ基である場合には、カルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤が好ましい。硬化剤の添加量としては、用いる硬化剤にもよるが、架橋性含フッ素共重合体の架橋性基のモル数に対する比率で0.7〜1.3であることが好ましく、0.75〜1.25であることがより好ましい。
【0061】
(1)媒体
架橋性含フッ素共重合体塗料が溶液型塗料である場合には、媒体は溶媒であることが好ましく、有機溶媒であることがより好ましい。
有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エタノール、メタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;ミネラルスピリット、ミネラルターペン等の炭化水素類;HCFC−225(ジクロロペンタフルオロプロパン)、クロルベンゼントリフルオリド等のハロゲン化化合物が好ましい。
【0062】
架橋性含フッ素共重合体塗料が分散型塗料である場合には、媒体は分散媒であることが好ましく、水または水を主成分とした水系分散媒であることがより好ましい。
水系分散媒としては、水、または水と水溶性有機溶剤との混合媒体が好ましく、水単独がより好ましい。水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールなどのアルコール類が好ましい。水溶性有機溶剤の添加量は水に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。
架橋性含フッ素共重合体塗料における媒体の含有量は、塗膜形成の容易さから、上記架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂100質量部に対して120質量部以上であることが好ましく、125質量部以上であることがより好ましい。また、効率よく塗膜形成ができること、乾燥性が良好であることから300質量部以下であることが好ましい。
【0063】
(2)添加剤
本発明に用いる架橋性含フッ素共重合体塗料には、本発明の効果が損なわれない範囲で、要求特性に応じて適宜各種の添加剤を配合してもよい。このような添加剤として具体的には、硬化触媒、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤等が挙げられる。
【0064】
上記硬化触媒としては、従来公知のスズ系、他の金属系、有機酸系、アミノ系の硬化促進剤が使用できる。硬化触媒の添加量としては、用いる硬化促進剤にもよるが、架橋性含フッ素共重合体100質量部に対して、7〜20ppmとすることが好ましく、7〜15ppmとすることがより好ましい。
【0065】
また、顔料は太陽電池モジュールの外観を美麗にする点、紫外線から基材シートを保護する観点から添加することが強く望まれている。特に白色顔料である酸化チタンは着色力が高くかつ、紫外線吸収能が高いため好ましい。他には炭酸カルシウムや、黒色顔料であるカーボンブラックのほかCu−Cr−Mn合金などの複合金属類などが好ましい。顔料の添加量としては、用いる顔料にもよるが、架橋性含フッ素共重合体100質量部に対して、100〜300質量部とすることが好ましい。
【0066】
太陽電池モジュールにおいて、硬化塗膜層として透明性の高いクリア膜が要求される場合においても、紫外線吸収効果を与えるため、必要に応じて紫外線吸収剤や光安定剤が添加される。代表的な紫外線吸収剤としてはベンゾフェノール系、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系が好適に使用できる。光安定剤としてはヒンダードアミン系、リン系のものが好適に使用される。紫外線吸収剤の添加量は得られる硬化塗膜層の膜厚によりその要求値が変わる。具体的には形成された硬化塗膜層の膜厚での紫外線透過率が10%未満になるような濃度に添加されることが好ましい。
【0067】
(3)架橋性含フッ素共重合体塗料の調製
架橋性含フッ素共重合体塗料の調製は、架橋性含フッ素共重合体を構成する重合単位を形成する単量体の混合物を共重合し、重合上がりの架橋性含フッ素共重合体および重合媒体を含有する組成物(以下、「重合上がり組成物」ともいう。)を得て、必要に応じて濃度調整および上記硬化剤や各種添加剤を添加して行うことが好ましい。硬化剤や添加剤を添加する場合、添加は濃度調整の前でもよく、後でもよい。
【0068】
架橋性含フッ素共重合体塗料が溶液型塗料である場合には、架橋性含フッ素共重合体を溶液重合法によって重合し、必要に応じて得られた重合上がり組成物の濃度調整および上記硬化剤や添加剤の添加を行うことが好ましい。この際、重合溶媒も媒体として見なし、必要に応じて重合上がり組成物に対して媒体を追加または除去することにより濃度調整を行うことが好ましい。媒体は有機溶媒であることが好ましく、重合上がり組成物に対して媒体を追加する場合には、追加する媒体は重合溶媒と同じ有機溶媒であることがより好ましい。
【0069】
溶液重合を行う際の重合溶媒としては、前記媒体における好ましい有機溶媒と同じ有機溶媒が好ましく、具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エタノール、メタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;ミネラルスピリット、ミネラルターペン等の炭化水素類;HCFC−225(ジクロロペンタフルオロプロパン)、クロルベンゼントリフルオリド等のハロゲン化化合物が好ましい。
【0070】
架橋性含フッ素共重合体塗料が分散型塗料である場合には、架橋性含フッ素共重合体を乳化重合法によって重合し、必要に応じて得られた重合上がり組成物の濃度調整および上記硬化剤や添加剤の添加を行うことが好ましい。
また、溶液重合法によって得られた架橋性含フッ素共重合体を水系分散媒に分散させて得られた分散液を用いて、該分散液の濃度調整および上記硬化剤や添加剤の添加を行うことも好ましい。溶液重合法で得られた架橋性含フッ素共重合体から水分散液を得る方法としては、溶液重合にてカルボキシル基を有する架橋性含フッ素共重合体を得た後に、塩基性化合物を添加してカルボキシル基を中和しながら水系分散媒で希釈する方法が好ましい。
【0071】
また、溶液重合にて水酸基を有する架橋性含フッ素共重合体を得た後に、該水酸基とジカルボン酸化合物の酸無水物等を反応させてカルボキシル基を導入し、塩基性化合物を添加してカルボキシル基を中和しながら水系分散媒で希釈する方法も好ましい。いずれの方法においても、水系分散媒で希釈した後に、必要に応じて有機溶剤を減圧下で除去することが好ましい。
架橋性含フッ素共重合体塗料が分散型塗料である場合には、硬化塗膜層の耐水性が良好であることから、溶液重合で得られた架橋性含フッ素共重合体から架橋性含フッ素共重合体塗料を調製することが好ましい。
【0072】
(接着性樹脂フィルム)
接着性樹脂フィルムは、太陽電池セルを封止する封止材を構成する樹脂と接着性を有する接着性樹脂からなるフィルムである。接着の形態としては特に制限はないが、アンカー効果による接着、化学結合(架橋)による接着、樹脂が相互に融着することによる接着、およびこれらが複合した接着等が挙げられる。本発明においては、このような接着性樹脂として、相溶性がよく融着による接着効果が高いことから、上記封止材として使用される樹脂と同様の樹脂を使用することが好ましい。
【0073】
具体的には、接着性樹脂としては、太陽電池セルを封止する封止材として従来公知のもの、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられるが、封止材としてはEVAが用いられることが多いため、EVAが好ましい。また、EVAは、架橋性含フッ素共重合体と架橋して化学結合を形成することによって、架橋性含フッ素共重合体の硬化塗膜層との接着性が向上することからも特に好ましい。
【0074】
なお、EVA以外であっても、太陽電池セル封止樹脂層の封止樹脂との接着性が良好であり、上記架橋性含フッ素共重合体と共架橋が可能な材料であれば、接着性樹脂として好ましく使用可能である。
接着性樹脂フィルムの厚さは、10〜30μm程度の厚さであることが好ましい。
【0075】
(太陽電池モジュール用バックシートの製造)
本発明の太陽電池モジュール用バックシートの製造方法は、基材シートの一方の面に設けられた、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂とこの硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体とを含有する塗膜層(b)と、太陽電池セルを封止する封止材との接着性を有する接着性樹脂フィルムとを、圧着しながらまたは圧着後に60〜120℃に加熱することにより積層する工程を有する。
このような太陽電池モジュール用バックシートの製造方法においては、上記塗膜形成工程(A)、部分乾燥工程(B)、積層工程(C)を順に行うことが好ましい。以下に、上記(A)〜(C)工程を詳細に説明する。
【0076】
塗膜形成工程(A):
塗膜形成工程(A)は、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体とを含有し、前記媒体の含有量が前記硬化性樹脂100質量部に対して120質量部以上である塗料を、基材シートの一方の面(太陽電池モジュールとした際に太陽電池セル封止材層側となる面)に塗布して塗膜層(a)を形成する工程である。塗膜層(a)は、塗膜層(a)に含まれる媒体の量が、上記塗料における媒体の量と同じ量、すなわち硬化性樹脂100質量部に対して120質量部以上となっている。なお、好適な量については、上記媒体の説明において記載した通りである。
【0077】
塗布の方法としては、塗料の性状(特に、粘度、レオロジー性)に応じて、スピンコート法、スプレー法、スリットコート法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法などから適宜選択されて用いられる。塗布温度は、上記塗布方法における通常の条件の範囲内で行えばよく、概ね5〜35℃の温度が好ましい。
【0078】
基材シートへの架橋性含フッ素共重合体塗料の塗布は、基材シート表面に直接行ってもよいし、またプライマー層などを介して行ってもよい。
【0079】
プライマー層の形成は、従来公知のプライマー用塗料を用いて、常法により行う。プライマー用の塗料としては、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0080】
架橋性含フッ素共重合体塗料の塗布により形成される塗膜の膜厚は、10μm〜40μmとすることが好ましく、より好ましくは12〜20μmである。塗膜の膜厚をこの範囲とすれば、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性、密着性、ラミネート処理を行う際の膜の自立性のバランスが良好な点から好ましい。
【0081】
部分乾燥工程(B):
部分乾燥工程(B)においては、塗膜形成工程(A)で形成された塗膜層(a)中の媒体の一部を除去して、媒体の含有量が硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部である塗膜層(b)を形成する。なお、部分乾燥工程(B)における媒体の除去は、上記媒体の含有量が硬化性樹脂100質量部に対して25〜45質量部の範囲となるまで行うことが好ましい。塗膜層中の媒体の含有量(以下、「残留媒体量」ともいう。)をこの範囲とすることにより、塗膜層(a)が半硬化して塗膜層(b)が形成される。この半硬化は、塗膜層中の架橋性含フッ素共重合体の一部が架橋反応を起こす、塗膜層中の媒体が少なくなって架橋性含フッ素共重合体の比率が高くなるなどして、塗膜層の硬化がやや進んだ状態であると考えられる。
【0082】
なお、塗膜層(a)が架橋性含フッ素共重合体塗料が含む媒体および架橋性含フッ素共重合体の硬化に関わる成分以外の成分、例えば、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤等の任意成分を含有している場合には、こられの成分は塗料中に配合されたものがそのまま存在している。
【0083】
部分乾燥工程(B)終了時に、塗膜層(b)中の残留媒体量が上記範囲であると、以下の積層工程(C)において、塗膜層(b)と接着性樹脂フィルムとの接着性が良好となるとともに、塗膜層(b)の自立性も確保できる。塗膜層(b)の自立性が確保できれば、以下の積層工程(C)における圧着時の圧力による膜厚のばらつきが抑えられ、最終的に得られる硬化塗膜層の均一性が良好となる。
【0084】
本発明の太陽電池モジュール用バックシートの製造方法においては、このように塗膜層の硬化状態を示す指標として、残留媒体量を用いる。
部分乾燥条件としては、温度20〜80℃程度、湿度30〜60%の条件が好ましい。部分乾燥の時間は、部分乾燥の条件、溶媒や分散媒の種類、初期の塗料中の溶媒や分散媒の量等による。
【0085】
なお、前もって実際にバックシートの製造を行う際と同じ架橋性含フッ素共重合体塗料、塗膜層の膜厚、部分乾燥条件で塗膜層の形成、部分乾燥を行い、経過時間と残留媒体量(硬化性樹脂100質量部に対する残留媒体の質量部)の関係を調べておけば、実際のバックシートの製造の際に部分乾燥の経過時間を管理することにより残留媒体量の調整が可能となる。
【0086】
図2に示すグラフは、後述の実施例1で得られた架橋性含フッ素共重合体塗料を用いて作製した塗膜について、温度23℃、湿度51%の環境下での部分乾燥における経過時間と残留媒体量の関係を示すグラフである。例えば、このようなグラフを作成し、グラフから適当な残留媒体量となる時間を把握し、実際のバックシートの製造の際にこの時間で部分乾燥を終了すれば、残留媒体量を逐次測定しなくても、適切な残留媒体量である塗膜層を得ることができる。
【0087】
積層工程(C):
積層工程(C)においては、部分乾燥工程(B)で形成された基材シートの一方の面に設けられた塗膜層(b)と、太陽電池セルを封止する封止材との接着性を有する接着性樹脂のフィルムを、圧着しながらまたは圧着後に60〜120℃に加熱することにより積層する。これにより塗膜層(b)が硬化塗膜層となり、基材シート、硬化塗膜層、および接着性樹脂フィルム層とがこの順に積層された太陽電池モジュール用バックシートが得られる。
【0088】
積層硬化工程(C)においては、接着性樹脂フィルムを基材シートの一方の面に設けられた塗膜層(b)に、接着性樹脂フィルムと塗膜層(b)とが接するように重ね合わせて、圧着する。本発明において、圧着する方法としては、複数のシート状あるいはフィルム状の物品を積層し、圧着する方法として通常用いられる方法を、特に制限なく採用することができる。具体的には、ロールプレス装置、プレス装置等の各種プレス装置による積層圧着の方法が挙げられる。また、加圧条件としては、0.1〜0.5MPaが好ましく、0.1〜0.3MPaがより好ましい。
【0089】
さらに、積層工程(C)においては、塗膜層(b)と接着性樹脂フィルムとを圧着しながら、または圧着後に加熱する。加熱温度は、急激な媒体の揮発による気泡の発生を抑制する観点から、上記温度60〜120℃で行う。なお、80〜120℃の加熱温度とすることが好ましい。加熱時間は、加熱温度、媒体の種類、架橋性含フッ素共重合体の種類、塗膜層(b)の膜厚等にもよるが、1〜10分間が好ましく、1〜5分間がより好ましい。このような加熱処理は、圧着しながら、または圧着後に行われるが、塗膜層(b)に含まれる媒体の除去が容易であることから、圧着しながら加熱処理を行うことが好ましい。
【0090】
このような加熱処理を施すことにより、塗膜層(b)に含まれる架橋性含フッ素共重合体に含まれる架橋性基が架橋反応を起こしたり、塗膜層に含まれる媒体が除かれるなどにより、塗膜層(b)が硬化塗膜層へと変化していく。
なお、加熱処理においては、塗膜層(b)に含まれる架橋性含フッ素共重合体に含まれる架橋性基が、塗膜層(b)の内部のみならず、接着性樹脂フィルムを構成する樹脂と架橋し化学結合によって結合することにより、塗膜層(b)が硬化塗膜層となった際に、硬化塗膜層と接着性樹脂フィルム層との間の接着力がより強固になると考えられる。
【0091】
積層工程(C)においては、圧着しながら塗膜層(b)中の媒体の除去も同時に行うことが好ましい。媒体を除去する方法は、加熱する、減圧する等の方法が挙げられるが、除去された媒体が気化して層間や塗膜層内で気泡を形成しないように、減圧する方法によることが好ましい。また、加熱と減圧を同時に行うことも好ましい。ここで加熱する方法をとる場合、この加熱は上記加熱を兼ねるものであることが好ましい。本発明においては、積層工程(C)終了時には、媒体除去により、硬化塗膜層とした際に、硬化塗膜層中に媒体が含まれないようにすることが好ましい。
【0092】
積層工程(C)では、圧着、加熱が行われるが、上記のとおり媒体除去のために減圧とすることが好ましい。これら一連の処理は、減圧下で圧着、加熱を同時に行うことが好ましく、具体的には、減圧下で加熱しながらロールプレス装置により圧着することが好ましい。
積層工程(C)は、部分乾燥工程(B)の直後に行われることが好ましいが、塗膜層(b)における媒体の含有量が硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の状態であれば、必ずしも部分乾燥工程(B)の直後に行う必要はない。
【0093】
本発明の製造方法で得られる太陽電池モジュール用バックシートの硬化塗膜層と接着性樹脂フィルム層との接着界面は、例えば、基材シート上に形成させた架橋性含フッ素共重合体塗料の塗膜を通常の方法で硬化させて硬化塗膜層とした後、その上に接着性樹脂フィルムを加熱・圧着して積層したものとは異なり、両層を構成する樹脂成分同志の架橋反応により化学結合が形成され、十分な接着性が確保されたものであると考えられる。
【0094】
本発明の製造方法によって得られる太陽電池モジュール用バックシートにおいては、基材シートの接着性樹脂フィルム層と反対側の面に、保護層(以下、「外側保護層」ともいう。)が設けられていてもよい。外側保護層は、上記架橋性含フッ素共重合体塗料の硬化塗膜層でもよく、官能基を有しない含フッ素重合体の硬化塗膜層でもよい。さらに、これらの替わりに含フッ素ポリマーシートの層であってもよい。
【0095】
上記の官能基を有しない含フッ素重合体としては、例えばPVdFにテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を配合した組成物、VdF/TFE/CTFE共重合体とアルコキシシラン単位含有アクリル樹脂との組成物、VdF/TFE/HFP共重合体と水酸基含有アクリル樹脂との組成物、VdF/HFP共重合体にアミノシランカップリング剤を配合した組成物等が挙げられる。膜厚は、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から、通常、5〜300μmとすることが好ましく、10〜100μmとすることがより好ましく、10〜50μmとすることがさらに好ましい。
【0096】
上記含フッ素ポリマーシートとしては、PVdFシートやPVFシート、PCTFEシート、TFE/HFP/エチレン共重合体シート、TFE/HFP共重合体(FEP)シート、TFE/PAVE共重合体(PFA)シート、エチレン/TFE共重合体(ETFE)シート、エチレン/CTFE共重合体(ECTFE)シートなど、通常のバックシートに使用されている含フッ素ポリマーシートがあげられる。膜厚は、耐候性が良好な点から、通常、5〜300μmとすることが好ましく、10〜100μmとすることがより好ましく、10〜50μmとすることがさらに好ましい。
【0097】
基材シートの接着性樹脂フィルム層と反対側の面に設ける、これらの硬化塗膜層やポリマーシートの層は、本発明の製造方法を実施に際して、事前、同時、事後のいずれのタイミングで形成してもよい。なお、本発明の製造方法の実施前に、これらの硬化塗膜やポリマーシートの層を形成する場合には、本発明の製造方法における架橋性含フッ素共重合体塗料の塗膜層を形成する面は、これらの硬化塗膜層やポリマーシートの層が形成された面と反対側の面となる。
【0098】
なお、上記本発明の製造方法で得られた太陽電池モジュール用バックシートを用いて太陽電池モジュールを作製するには、図1に基づいて説明すれば、透明表面層2と太陽電池セル3が封止材によりが封止された封止材層4とを予め積層したものを準備し、その封止材層4面と上記太陽電池モジュール用バックシート5の接着性樹脂フィルム層9面とを接着させればよい。接着は融着によることが好ましい。熱融着の条件は、封止材層4を構成する封止材と太陽電池モジュール用バックシート5の接着性樹脂フィルム層9を構成する接着性樹脂の熱融着に適する条件が特に制限なく選択される。例えば、封止材と接着性樹脂が共にEVAである場合は、75〜120℃で、太陽電池セルを破壊しない荷重で、60〜180秒間の加熱・圧着を行うことにより、封止材層4とバックシート5が十分に接着された太陽電池モジュール1が得られる。
【0099】
[太陽電池モジュールの製造方法]
本発明の製造方法によって得られる太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用バックシート(以下、単に「バックシート」ともいう。)、および太陽電池セルが封止された封止材からなる封止材層(以下、単に「封止材層」ともいう。)が、バックシート、封止材層の順に積層された構成を有する。さらに、バックシートの封止材層と接する面には、硬化塗膜層が設けられた構成となっている。本発明の製造方法によって得られる太陽電池モジュールは、これらの層の他に、図3に示されるように、透明表面層2を有していてもよい。図3に示される太陽電池モジュール1においては、透明表面層2や外側保護層8は、従来公知の方法によって形成することができる。
【0100】
図3において、太陽電池モジュール1は、透明表面層2、封止樹脂により太陽電池セル3が封止された太陽電池セルを封止する封止材からなる封止材層4、バックシート5の順に積層された構成を有する。バックシート5は、太陽電池セルの封止材層4側に設けられた架橋性含フッ素共重合体塗料の硬化塗膜層7と、太陽電池モジュール1の最も外側になるように設けられた外側保護層8とを有する基材シート6から構成されている。
【0101】
(太陽電池モジュール用バックシート)
本発明の太陽電池モジュールの製造方法において使用される太陽電池モジュール用バックシートは、基材シート上の太陽電池セルを封止する封止材からなる封止材層と接する側の表面に、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂とこの硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有する塗膜層(b’)を有する。
【0102】
このような太陽電池モジュール用バックシートは、前記太陽電池モジュール用バックシートの製造方法における塗膜形成工程(A)および部分乾燥工程(B)の工程によって製造することができる。この際に使用される基材シート、架橋性含フッ素共重合体、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体を含有する塗料は、前記太陽電池モジュール用バックシートの製造方法における架橋性含フッ素共重合体、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体を含有する塗料と同様のものを使用することができる。
【0103】
なお、太陽電池モジュール用バックシートは、基材シート上の封止材層と接する面と反対の面に、予め上記外側保護層が設けられていてもよく、加熱、圧着等により外側保護層となる層(以下、「外側保護層前駆層」ともいう。)が設けられていてもよい。外側保護層前駆層は、後述する積層工程(C’)における圧着および加熱によって外側保護層とすることが好ましい。
【0104】
(太陽電池セルを封止する封止材からなる封止材層)
本発明の太陽電池モジュールの製造方法によって得られる太陽電池モジュールにおける封止材層は、封止材からなる層である。封止材層中には、太陽電池セルが封止されていてもよい。
封止材としては、前記太陽電池モジュール用バックシートの製造方法における接着性樹脂と同様のものを使用することができる。すなわち、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられるが、封止材としてはEVAが用いられることが多いため、EVAが好ましい。また、EVAは、架橋性含フッ素共重合体と架橋して化学結合を形成することによって、架橋性含フッ素共重合体の硬化塗膜層との接着性が向上することからも特に好ましい。
【0105】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法においては、封止材層は、予め太陽電池セルが封止材層中に封止された状態の封止材層を使用してもよく、また、2枚の封止材からなるシートの間に太陽電池セルが挟持された封止材層形成用積層体(以下、「封止材層前駆積層体」ともいう。)を使用してもよい。封止材層として、封止材層前駆積層体を使用した場合には、後述する積層工程(C’)において、封止材層前駆積層体における2枚の封止材が融着して太陽電池セルを封止することによって、封止材層前駆積層体が、太陽電池セルが封止された状態の封止材層となることが好ましい。
【0106】
(太陽電池モジュールの製造方法)
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、太陽電池セルを封止する封止材からなる封止材層と、基材シート上の前記封止材層と接する側の表面層として、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂とこの硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有する塗膜層(b’)を有する太陽電池モジュール用バックシートとを、圧着しながらまたは圧着後に60〜120℃に加熱することにより積層する工程を有する。
【0107】
このような太陽電池モジュールの製造方法は、塗膜形成工程(A’)、部分乾燥工程(B’)、および積層工程(C’)を有することが好ましい。
【0108】
塗膜形成工程(A’):
塗膜形成工程(A’)は、太陽電池モジュール用バックシートを構成する基材シートの一方の面に、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体とを含有し、前記媒体の含有量が前記硬化性樹脂100質量部に対して120質量部以上である塗料を、塗布して塗膜層(a’)を形成する工程である。
塗膜形成工程(A’)は、前記太陽電池モジュール用バックシートの製造方法における塗膜形成工程(A)をそのまま適用することができ、好ましい実施態様も同様である。
塗膜形成工程(A’)は、前記太陽電池モジュール用バックシートの製造方法における塗膜形成工程(A)をそのまま適用することができ、好ましい実施態様も同様である。
【0109】
部分乾燥工程(B’):
部分乾燥工程(B’)は、上記塗膜形成工程(A’)で基材シート上に形成された塗膜層(a’)に含まれる媒体を除去して、前記硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有する塗膜層(b’)とする工程である。
部分乾燥工程(B’)は、前記太陽電池モジュール用バックシートの製造方法における部分乾燥工程(B)をそのまま適用することができ、好ましい実施態様も同様である。
部分乾燥工程(B’)においても、塗膜層(a’)が半硬化して塗膜層(b’)が形成される。
【0110】
なお、本発明の太陽電池モジュールの製造方法の部分乾燥工程(B’)においては、前記太陽電池モジュール用バックシートの製造方法における部分乾燥工程(B)と同様に、架橋性含フッ素共重合体塗料の硬化反応の進行状況の確認を、太陽電池モジュール用バックシートに形成された架橋性含フッ素共重合体塗料の塗膜層中に残留している残留媒体量を指標として行う。この残留媒体量が適切な範囲となった時点で、次の積層工程(C’)を行う。
【0111】
積層工程(C’):
積層工程(C’)は、太陽電池セルを封止する封止材からなる封止材層と、上記部分乾燥工程(B’)で得られた太陽電池モジュール用バックシートの塗膜層(b’)とを、圧着しながらまたは圧着後に60〜120℃に加熱することにより積層する工程である。この圧着および加熱によって塗膜層(b’)と封止材とが架橋するとともに塗膜層(b’)が硬化塗膜層となり、バックシートと封止材層とが強固に接着されると考えられる。
【0112】
積層工程(C’)においては、封止材層として、前述の封止材層前駆積層体を使用してもよい。また、外側保護層前駆層を用いたバックシートにおける外側保護層の形成や透明表面層の形成を同時に行ってもよい。積層工程(C’)において、これらの透明表面層や封止材層、外側保護層を同時に成形にすることによって、太陽電池モジュールを少ない工程数で効率的に製造することができる。
【0113】
本発明において、封止材層と、バックシート基材シート上の塗膜層(b’)とを圧着する方法として、通常のプレス装置による方法が挙げられるが、例えば、上記のように透明表面層や封止材層前駆積層体との積層を同時に行う場合には、用いる荷重としては、透明表面層や太陽電池セルを破壊しない荷重、具体的は0.1〜0.3MPa程度の荷重を挙げることができる。
【0114】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法の積層工程(C’)においては、圧着の際に、塗膜層(b’)に残留する媒体の除去を同時に行う。積層工程(C’)における媒体除去により、塗膜層(b’)中の媒体が完全に除去され、硬化塗膜層が形成される。残留媒体を除去する方法としては、加熱する、減圧する等の方法が挙げられる。加熱する方法をとる場合、この加熱は以下の加熱を兼ねるものであることが好ましい。なお、この際除去された媒体が気化して層間や塗膜内に気泡を形成しないように圧着は減圧状態で行うことが好ましい。
【0115】
さらに、積層工程(C’)は、圧着時または圧着後に加熱を施すことにより架橋性含フッ素共重合体を硬化させる操作を有する。該硬化時には、架橋性含フッ素共重合体中の架橋性基と封止材とが架橋し、化学結合を形成することが好ましい。該化学結合により、バックシートと封止材層とが強固に接着されると考えられる。
【0116】
圧着時または圧着後の加熱の条件としては、急激な媒体の揮発による気泡の発生を抑制する、太陽電池モジュール保護の観点から、温度60〜120℃の条件で行われる。なお、好ましい加熱温度は、80〜120℃である。加熱時間は、加熱温度、部分乾燥塗膜の構成成分や膜厚等にもよるが、1〜10分間とすることが好ましく、1〜5分間とすることがより好ましい。
【0117】
積層工程(C’)として、具体的には、通常、太陽電池モジュールを製造する際に用いられる熱ラミネーション法が、特に制限なく採用できる。熱ラミネーション法は、太陽電池モジュールの構成要素を、加熱条件下でプレス成型することによりモジュール成型が行われる方法である。熱ラミネーションは、温度を封止材、例えば、EVAのガラス転移点以上軟化点以下の温度、本発明の太陽電池モジュールの製造方法においては、60〜120℃、好ましくは80〜120℃とし、透明表面層や太陽電池セルを破壊しない荷重で行われる。通常、熱ラミネーション時に発生するオフガスや揮発媒体が気泡を形成しないようバキューム状態でモジュール成型が行われる。また、上記熱ラミネーションにおける加熱・加圧の保持時間は、1〜10分間とすることが好ましい。
【0118】
積層工程(C’)は、部分乾燥工程(B’)の直後に行われることが好ましいが、塗膜層(b’)における媒体の含有量が硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の状態であれば、必ずしも部分乾燥工程(B’)の直後に行う必要はない。
【実施例】
【0119】
以下に、実施例に基づいて本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0120】
(1)架橋性含フッ素共重合体の製造
内容積2500mLのステンレス製撹拌機付き耐圧反応器にキシレンの600g、エチルビニルエーテル(EVE)の200g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)の129g、バッファーとして炭酸カリウムの10gおよび重合開始剤としてパーブチルパーピバレート(PBPV)の3.5gを仕込み、窒素による加圧脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0121】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)の660gを導入して徐々に昇温し、温度を65℃に維持しながら反応を続けた。10時間後、反応器を水冷して反応を停止し反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、未反応の単量体をパージし、得られた反応液を珪藻土で濾過して固形物を除去して固形分濃度60質量%、数平均分子量(M)=12000、質量平均分子量(M)=36000、水酸基価52mgKOH/gの架橋性含フッ素共重合体Aの溶液を得た。
ここで、上記数平均分子量(M)および質量平均分子量(M)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0122】
(2)架橋性含フッ素共重合体塗料の調整
上記(1)で得られた架橋性含フッ素共重合体Aの溶液の64.2gに、キシレンの27.8g、硬化剤として1,6−ヘキサンジイソシアネート3量体(商品名:コロネートHX、日本ポリウレタン工業社製)の5.8g、硬化触媒としてキシレンに1/10000で希釈したジブチルスズジラウレート2.2gを混合し、架橋性含フッ素共重合体Aと1,6−ヘキサンジイソシアネート3量体からなる硬化性樹脂としての固形分濃度が44質量%である、架橋性含フッ素共重合体Aを主成分とする硬化性樹脂を含有する塗料(以下、「架橋性含フッ素共重合体塗料A」という。)を調整した。この塗料における硬化性樹脂100質量部に対する溶媒(キシレン)の割合は127質量部であった。
【0123】
[実施例1] 積層サンプルAの作製
上記で調製した架橋性含フッ素共重合体塗料AをPETフィルムにバー塗装法で乾燥膜厚15μmになるように塗布して塗膜層(a)を形成した((A)工程)。
得られた塗膜層(a)を有するPETフィルムについて、温度23℃、湿度51%の環境下で90分間の部分乾燥を行い、その後、冷凍庫で急冷した。この部分乾燥により、PETフィルム上の塗膜層は、含有する溶媒の割合が硬化性樹脂100質量部に対して27質量部である塗膜層(b)となっていた。((B)工程)
【0124】
上記(B)工程直後の架橋性含フッ素共重合体Aを主成分とする硬化性樹脂と溶媒を含有する塗膜層(b)を有するPETフィルムの塗膜層(b)とEVAフィルムとを重ねて、ラミネーションを実施した。ラミネーション条件は85℃、加重1kg/cm、20秒間で、ラミネーション終了温度が75℃になるよう行い、PET/架橋性含フッ素共重合体塗料Aの硬化塗膜層(以下、「硬化塗膜層」という。)/EVAの構成の積層サンプルAを作製した。((C)工程)
【0125】
得られた積層サンプルAについて、以下の条件で、硬化塗膜層とEVAとの間の密着力(単位:N)を測定した。結果を硬化塗膜層の状態観察の結果とともに表1に示す。
【0126】
<測定条件>
・引っ張り試験機使用
・サンプルサイズ:15mm巾、100mm長
・ロードセル:50N
・引っ張り速度:サンプル端面のEVA、架橋性フッ素樹脂硬化層の非付着箇所から180度方向で300mm/min
・最大荷重値で評価:N/15mm
・n=5の平均値で評価
【0127】
[実施例2] 積層サンプルBの調整
上記実施例1と同様にしてPETフィルム上に架橋性含フッ素共重合体塗料Aの塗膜層(a)を形成し((A)工程)、得られた塗膜層(a)を有するPETフィルムについて、温度23℃、湿度51%の環境下で60分間の部分乾燥を行い、その後、冷凍庫で急冷した。この部分乾燥により、PETフィルム上の塗膜層は、含有する溶媒の割合が硬化性樹脂100質量部に対して41質量部である塗膜層(b)となっていた。((B)工程)
【0128】
上記(B)工程直後の架橋性含フッ素共重合体Aを主成分とする硬化性樹脂と溶媒を含有する塗膜層(b)を有するPETフィルムの塗膜層(b)とEVAフィルムとを重ねて、上記実施例1と同様にして、ラミネーションを実施し、PET/硬化塗膜層/EVAの構成の積層サンプルBを作製した。((C)工程)。得られた積層サンプルBについて上記実施例1と同様にして硬化塗膜層とEVAとの間の密着力を測定した。結果を硬化塗膜層の状態観察の結果とともに表1に示す。
【0129】
[比較例1] 積層サンプルCの調整
上記実施例1と同様にしてPETフィルム上に架橋性含フッ素共重合体塗料Aの塗膜層(a)を形成し、得られた塗膜層(a)を有するPETフィルムについて、温度23℃、湿度51%の環境下で45分間の部分乾燥を行い、その後、冷凍庫で急冷した。この部分乾燥により、PETフィルム上の塗膜層は、含有する溶媒の割合が硬化性樹脂100質量部に対して52質量部の塗膜層となっていた。
【0130】
上記部分乾燥直後の架橋性含フッ素共重合体Aを主成分とする硬化性樹脂と溶媒を含有する塗膜層を有するPETフィルムの塗膜層とEVAフィルムとを重ねて、上記実施例1と同様にしてラミネーションを実施し、PET/硬化塗膜層/EVAの構成の積層サンプルCを作製した。得られた積層サンプルCについて上記実施例1と同様にして硬化塗膜層とEVAとの間の密着力を測定した。結果を硬化塗膜層の状態観察の結果とともに表1に示す。
【0131】
[比較例2] 積層サンプルDの調整
上記実施例1と同様にしてPETフィルム上に架橋性含フッ素共重合体塗料Aの塗膜層(a)を形成し、得られた塗膜層(a)を有するPETフィルムについて、温度80℃の環境下で60分間の乾燥を行い、その後、冷凍庫で急冷した。この乾燥により、PETフィルム上の塗膜層は、含有する溶媒の割合が硬化性樹脂100質量部に対して0質量部の塗膜層となっており、この段階で硬化がすでに完了し上記塗膜層が硬化塗膜層となったことが確認された。
【0132】
上記乾燥直後の硬化塗膜層を有するPETフィルムとEVAフィルムとを重ねて、上記実施例1と同様にしてラミネーションを実施し、PET/硬化塗膜層/EVAの構成の積層サンプルDを作製した。得られた積層サンプルDについて上記実施例1と同様にして硬化塗膜層とEVAとの間の密着力を測定した。結果を硬化塗膜層の状態観察の結果とともに表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
*表1中、「残留媒体質量部」は、積層サンプルA〜Cについては作製時の部分乾燥後における、積層サンプルDについては作製時の乾燥後における、塗膜層中の架橋性含フッ素共重合体Aを主成分とする硬化性樹脂100質量部に対する溶媒の割合(質量部)を示す。
【0135】
表1からわかるように、塗膜層に残留媒体を含有しない比較例2のサンプルに対し、(B)工程後の塗膜層における硬化性樹脂100質量部に対する残留媒体の質量部が本発明の範囲内である実施例1の積層サンプルA、実施例2の積層サンプルBでは密着性の向上が見られる。部分乾燥後の塗膜層における硬化性樹脂100質量部に対する残留媒体の質量部が本発明の範囲を大きく上回る比較例1のサンプルでは、部分乾燥後の塗膜層で液体の状態が保たれており、プレスによる圧力が不均一になった結果、膜厚が不均一になり、密着性は有意には向上していない。
【産業上の利用可能性】
【0136】
太陽電池セルが封止された太陽電池セル封止材層と太陽電池セル封止材層側に架橋性含フッ素共重合体塗料の硬化塗膜層を有するバックシートが積層された構成を含む太陽電池モジュールにおいて、バックシートと太陽電池セル封止材層の間に、劣化等の懸念のある接着剤を用いることなく、十分な接着強度を有する太陽電池モジュールの製造が可能となり、有用である。
【符号の説明】
【0137】
1…太陽電池モジュール、2…透明表面層、3…太陽電池セル、4…太陽電池セルの封止材層、5…バックシート、6…基材シート、7…硬化塗膜層、8…外側保護層、9…接着性樹脂フィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に設けられた塗膜層(b)と、太陽電池セルを封止する封止材との接着性を有する接着性樹脂フィルムとを、圧着しながらまたは圧着後に加熱することにより積層する工程を有する太陽電池モジュール用バックシートの製造方法であって、
前記塗膜層(b)が架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と、前記硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有し、前記加熱温度が60〜120℃である太陽電池モジュール用バックシートの製造方法。
【請求項2】
前記架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体とを含有し、前記媒体の含有量が前記硬化性樹脂100質量部に対して120質量部以上である塗料を、基材シートの一方の面に塗布して塗膜層(a)を形成する塗膜形成工程(A)、
前記塗膜層(a)に含まれる媒体を除去して、前記硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有する塗膜層(b)とする部分乾燥工程(B)、および、
前記太陽電池セルを封止する封止材との接着性を有する接着性樹脂フィルムと前記塗膜層(b)とを、圧着しながらまたは圧着後に60〜120℃に加熱することにより積層する積層工程(C)、
を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記塗膜層(b)と、前記接着性樹脂フィルムとが化学結合によって結合し積層される請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記太陽電池セルを封止する封止材が、エチレンと酢酸ビニルの共重合体からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記架橋性含フッ素共重合体が、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、へキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、およびフッ化ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体の重合単位、および架橋性基を有する単量体の重合単位を含有する重合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記架橋性含フッ素共重合体が有する架橋性基が、水酸基、カルボキシル基、加水分解性シリル基、アミノ基、エポキシ基、およびカルボニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
太陽電池セルを封止する封止材からなる封止材層と、基材シート上の前記封止材層と接する側の表面層として、架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と前記硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有する塗膜層(b’)を有する太陽電池モジュール用バックシートとを、圧着しながらまたは圧着後に60〜120℃に加熱することにより積層する工程を有する太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項8】
太陽電池モジュール用バックシートを構成する基材シートの一方の面に、前記架橋性含フッ素共重合体を主成分とする硬化性樹脂と媒体とを含有し前記媒体の含有量が前記硬化性樹脂100質量部に対して120質量部以上である塗料を、塗布して塗膜層(a’)を形成する塗膜形成工程(A’)、
前記塗膜層(a’)に含まれる媒体を除去して、前記硬化性樹脂100質量部に対して15〜45質量部の媒体を含有する塗膜層(b’)とする部分乾燥工程(B’)、および、
前記太陽電池セルを封止する封止材からなる封止材層と、前記太陽電池モジュール用バックシートの塗膜層(b’)とを、圧着しながらまたは圧着後に60〜120℃に加熱することにより積層する積層工程(C’)、
を有する請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記塗膜層(b’)と、前記封止材層とが化学結合によって結合し積層される請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記太陽電池セルを封止する封止材が、エチレンと酢酸ビニルの共重合体である請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記架橋性含フッ素共重合体が、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、へキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、およびフッ化ビニルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体の重合単位、および架橋性基を有する単量体の重合単位を含有する重合体である請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記架橋性含フッ素共重合体が有する架橋性基が、水酸基、カルボキシル基、加水分解性シリル基、アミノ基、エポキシ基、およびカルボニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7〜11のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−210959(P2011−210959A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77287(P2010−77287)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】