説明

太陽電池モジュール用接着剤、封止用保護シートおよび太陽電池モジュール

【課題】 充填剤との接着性に優れ、かつ高温高湿環境下および酸性環境下での強度保持性に優れた接着剤、封止用保護シートおよびその封止用保護シートを用いてなる太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】 充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層とこれを封止するための封止層とを有する太陽電池モジュールにおいて、前記充填剤層と封止層とを接着するための接着剤であって、接着剤が不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体である太陽電池モジュール用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに用いる接着剤、封止用保護シートおよび太陽電池モジュールに関するものであり、詳しくは充填剤との接着性に優れ、また高温高湿環境下や酸性環境下であってもその接着強度の低下が少ない、太陽電池モジュールに用いる接着剤、封止用保護シートおよびその封止用保護シートを用いてなる太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題の対策として二酸化炭素排出量削減の取組みが行われており、中でも発電時の二酸化炭素排出のない太陽電池は、その普及の期待が高まっている。
【0003】
一般に太陽電池を構成する太陽電池モジュールは、シリコーン系半導体などからなる太陽電池素子(セル)を備え、太陽電池素子をオレフィン系共重合体などからなる充填剤で覆い、その充填剤層の太陽光を受光する上層側にガラスなどからなる上層透明基材層を積層し、また充填剤層の下層側に封止層やバリア層などからなる封止用保護シートを積層した構成を有している。
【0004】
封止用保護シートは主に充填剤層を封止する目的に用いられるが、太陽電池モジュール内の着色や腐食などを防ぐための水蒸気バリア性や、充填剤層との接着性に優れる必要がある。また太陽電池モジュールの多くは屋外で使用され、しかも30年以上の長期間使用されることもあるため、十分な耐候性や耐酸性雨性が要求され、このような使用条件においても充填剤層との接着性の保持が必要とされる。
【0005】
従来、充填剤層と封止用保護シートとの接着性を良好にするための検討はなされており、例えば、特許文献1では、封止用保護シートにポリエステル系樹脂やポリエステル型ポリウレタン系樹脂からなる接着層を設けることで、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる充填剤層との接着性の改善を提案している。
また、特許文献2では、封止用保護シートとエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる充填剤層との接着層として、特定の架橋剤で架橋したエチレン−アクリル酸エステル共重合体を用いる方法が示されている。
さらに、特許文献3では、封止用保護シートの接着層として、ジアミン化合物で架橋した変性ポリエチレン樹脂をトルエンなどに溶解した接着剤を用いる方法が示されている。
【0006】
しかしながら特許文献1の方法では、太陽電池モジュール製造直後の初期接着性は改善されるものの、耐候性についての特性は述べられておらず、実際には屋外での長時間の使用には問題があった。
一方、特許文献2では、太陽電池モジュール製造直後の初期接着性と、耐候性の指標となる高温高湿環境下での強度保持性とに優れた接着層が示されている。しかし記載される方法であっても未だ、初期接着性、高温高湿環境下での強度保持性とも不十分であった。さらに、用いる接着層は、特定の架橋剤で架橋したエチレン−アクリル酸エステル共重合体を5〜100μmの厚みに押出しラミネートなどの方法でフィルム化する必要があり、また2液のウレタン系接着剤の併用も必要としていた。このことにより複雑な製造工程を必要とし、また比較的高価な構成の接着層を厚膜で積層する必要があるなど、工程の簡略化やコスト低減の課題があった。
特許文献3に示される接着剤は、接着剤層と封止用保護シートとの界面の接着性には優れるものの、充填剤との接着性については調べられておらず、実際に充填剤と封止用保護シートとの接着層に用いた場合は、高温高湿環境下での強度保持性は十分ではなかった。さらに、用いる接着剤は、室温付近では粘度が高すぎて、記載される好ましい固形分濃度でコーティングすることができず、およそ60℃以上でないとコーティング可能な粘度とすることができない。そのため接着剤中のトルエンなどの有機溶媒の揮発が激しく、均一にコーティングすることが困難であり、しかも製造に際しても特殊な防爆や排気回収設備を必要とした。
また、特許文献1〜3では酸性雨に対する耐性についての記載はされておらず、実際には屋外での長期間の使用に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−136911号公報
【特許文献2】特開2008−108948号公報
【特許文献3】特開2009−10097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題に対して、充填剤との接着性に優れ、かつ高温高湿環境下および酸性環境下での強度保持性に優れた接着剤、封止用保護シートおよびその封止用保護シートを用いてなる太陽電池モジュールを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体からなる接着剤が、主にオレフィン系共重合体からなる充填剤との接着性に優れ、かつ高温高湿環境下および酸性環境下での強度保持性に優れることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層とこれを封止するための封止層とを有する太陽電池モジュールにおいて、前記充填剤層と封止層とを接着するための接着剤であって、接着剤が不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体であることを特徴とする太陽電池モジュール用接着剤。
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル成分を0.1〜25質量%含有することを特徴とする(1)記載の太陽電池モジュール用接着剤。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が、70℃以上であることを特徴とする(1)または(2)記載の太陽電池モジュール用接着剤。
(4)水性分散体が、不揮発性水性化助剤を含まないことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用接着剤。
(5)水性分散体が、オキサゾリン系架橋剤を含み、その含有量が酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.05〜30質量部であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用接着剤。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の太陽電池モジュール用接着剤からなる接着層と、封止層と、を含むことを特徴とする封止用保護シート。
(7)さらにバリア層を含むことを特徴とする(6)記載の封止用保護シート。
(8)充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層と、(6)または(7)に記載の封止用保護シートと、を含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0010】
本発明の太陽電池モジュール用接着剤は、主にオレフィン系共重合体からなる充填剤との接着性に優れ、かつ耐候性の指標となる高温高湿環境下での強度保持性、および耐酸性雨性の指標となる酸性環境下での強度保持性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の太陽電池モジュール用接着剤(以下、接着剤と略することがある)は、不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体であり、充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層と、これを封止するための封止層との接着性を高める効果を有している。
【0012】
接着剤に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂において、その主成分であるオレフィン成分は特に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが好ましく、これらの混合物を用いてもよい。この中でも、接着性を良好とするためにエチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。
【0013】
本発明において酸変性ポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸成分により酸変性された樹脂である。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。
不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂における不飽和カルボン酸成分の含有量は、0.1〜10質量%であり、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましく、2〜4質量%がさらに好ましい。含有量が0.1質量未満の場合は水性分散体とすることが困難であり、10質量%を超える場合は耐候性が低下する傾向がある。
【0014】
本発明において酸変性ポリオレフィン樹脂は、充填剤との十分な接着性を得るために、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有していることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル成分の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、入手の容易さと接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがより好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。
酸変性ポリオレフィン樹脂における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、2〜18質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が0.1質量%未満の場合は接着性が低下する傾向にあり、25質量%を超える場合は耐候性や耐酸性雨性が低下してしまう傾向にある。
(メタ)アクリル酸エステル成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
【0015】
酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられ、中でもエチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体が最も好ましい。共重合体の形態はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいが、入手が容易という点でランダム共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
【0016】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、融点が高い方が耐候性に優れる傾向にある。従って融点は70℃以上であることが好ましく、75〜200℃がより好ましく、80〜170℃がさらに好ましい。融点が70℃未満では耐候性が低下する傾向にあり、200℃を超えた場合では水性分散化が困難となる傾向がある。
【0017】
また、酸変性ポリオレフィン樹脂は、分子量が高い方が耐候性に優れる傾向にある。従って分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート値(JIS K7210:1999に準ずる)は、300g/10分以下が好ましく、100g/10分以下がより好ましく、0.001〜50g/10分がさらに好ましく、0.01〜10g/10分が特に好ましく、0.1〜5g/10分が最も好ましい。メルトフローレートが300g/10分を超える場合は耐候性や耐酸性雨性が低下する傾向にあり、0.001g/10分未満の場合は樹脂を高分子量化する際の製造面に制約を受ける。
【0018】
本発明において、酸変性ポリオレフィン樹脂は、耐候性や耐酸性雨性を良好にするため、さらには接着層を薄くし易くするため、後述する架橋剤との混合を容易にするためなどの理由で水性分散体として利用する。
また各種性能面やコーティングする際の厚みを均一にしやすいなどの理由から、水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂の数平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
【0019】
水性分散体において、酸変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基は、塩基性化合物によって中和されていることが好ましい。中和によって生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与される。水性化の際に用いる塩基性化合物はカルボキシル基を中和できるものであればよい。従って、このような目的で添加される塩基性化合物は、水性化助剤といえるが、本発明の効果を損なわないためには塩基性化合物は揮発性のものが用いられる。
水性分散体に添加する塩基性化合物として、塗膜形成時に揮発するアンモニア又は有機アミン化合物が塗膜の耐水性の面から好ましく、中でも沸点が30〜250℃、さらには50〜200℃の有機アミン化合物が好ましい。沸点が30℃未満の場合は、後述する樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。沸点が250℃を超えると樹脂塗膜から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
塩基性化合物の添加量は酸変性ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量がより好ましく、1.01〜2.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体が着色する場合がある。
【0020】
また水性分散体においては、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくするために、水性化の際に有機溶剤を添加することが好ましい。使用する有機溶剤量は、水性媒体中の40質量%以下が好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、2〜35質量%がさらに好ましく、3〜30質量%が特に好ましい。有機溶剤量が40質量%を超える場合には、実質的に水性媒体とはみなせなくなり、本発明の目的のひとつ(環境保護)を逸脱するだけでなく、使用する有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下してしまう場合がある。なお、水性化の際に添加した有機溶剤は、ストリッピングと呼ばれる脱溶剤操作で系外へ留去させて適度に減量してもよく、有機溶剤量を低くしても、特に性能面での影響はない。
本発明において使用される有機溶剤としては、沸点が30〜250℃のものが好ましく、50〜200℃のものが特に好ましい。これらの有機溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。なお、有機溶剤の沸点が30℃未満の場合は、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化の効率が十分に高まらない場合がある。沸点が250℃を超える有機溶剤は樹脂塗膜から乾燥によって飛散させることが困難であり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
上記の有機溶剤の中でも、樹脂の水性化促進に効果が高く、しかも水性媒体中から有機溶剤を除去し易いという点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールが特に好ましい。
【0021】
本発明において、水性分散体には界面活性剤や乳化剤などの不揮発性水性化助剤を実質的に含有していないことが、接着性や耐候性の点で好ましい。
ここで不揮発性水性化助剤とは、樹脂の分散や安定化に寄与する不揮発性の化合物のことを意味する。不揮発性水性化助剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤、水溶性高分子などが挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、乳化剤類も含まれる。
例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸およびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の反応性2重結合を有する化合物が挙げられる。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびその塩等が挙げられる。
【0022】
本発明において水性分散体を得るための方法は特に限定されない。たとえば、特開2003−119328号公報などに例示されているように、既述の各成分、すなわち、酸変性ポリオレフィン樹脂、塩基性化合物、水、さらに必要に応じて有機溶剤を、好ましくは密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を採用することができ、この方法が最も好ましい。この方法によれば、不揮発性水性化助剤を実質的に添加しなくとも酸変性ポリオレフィン樹脂を良好に水性分散体とすることができる。
【0023】
水性分散体における樹脂固形分濃度は特に限定されないが、コーティングのしやすさや接着層の厚みの調整しやすさなどの点から、水性分散体全質量に対して、1〜60質量%が好ましく、2〜50質量%がより好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。
【0024】
本発明において水性分散体は、接着性や耐候性、耐酸性雨性をより良好とするために、架橋剤を含有していることが好ましい。架橋剤としては、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、ヒドラジド系架橋剤、メラミン系架橋剤、アミン系架橋剤およびポリオールなどの酸変性ポリオレフィン樹脂と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する化合物のことであり、これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。これらの中でも接着性や耐候性、耐酸性雨性を良好にしたり、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体との混合安定性に優れるなどの点でオキサゾリン系架橋剤が好ましい。
【0025】
架橋剤の添加量は、水性分散体中の酸変性ポリオレフィン樹脂固形分量100質量部に対して、0.05〜30質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部がより好ましく、0.2〜10質量部がさらに好ましく、0.2〜5質量部が特に好ましい。添加量が0.1質量部未満の場合は性能の改善効果が少なく、30質量部を超えた場合は性能改善効果が変らないかもしくは低下する傾向がある。なお、架橋剤の形態が溶液や分散体であった場合、その添加量は、溶液や分散体中の固形分で算出される。
【0026】
オキサゾリン系架橋剤としては、分子中に2個以上のオキサゾリン基を有するものであり低分子化合物であっても重合体であってもよいが、重合体の方が接着性が良好であるため好ましい。
【0027】
低分子化合物のオキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2,2′−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2′−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2′−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス−(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレン−ビス−(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス−(2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドおよびビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。
これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0028】
重合体のオキサゾリン系架橋剤は、その構成成分として付加重合性オキサゾリンを必須とし、付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体をも含むモノマー成分を重合させることにより得ることができる。
付加重合性オキサゾリンとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンおよび2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられ、これらは単独でも2種類以上を併用して使用してもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが入手の容易さや接着性を良好にするために好ましい。これら付加重合性オキサゾリンの使用量は、特に限定されないが、モノマー成分中5質量%以上とすることが好ましく、5〜90質量%がより好ましく、10〜60質量%がさらに好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体としては、オキサゾリン基と反応しないものから選ぶことが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン変性物、(メタ)アクリル酸−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよび(メタ)アクリル酸−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウムおよび(メタ)アクリル酸アンモニウム等の(メタ)アクリル酸塩;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド;酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテルおよびエチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレンおよびプロピレン等のα−オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニル等のハロゲン含有・α,β−不飽和脂肪族炭化水素;スチレン、α−メチルスチレンおよびスチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β−不飽和芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは単独でも2種類以上を併用して使用してもよい。
【0029】
重合体のオキサゾリン系架橋剤は、水溶性および/または水分散性などの水性であることが、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体との混合安定性が優れる点から好ましく、水溶性であることがより好ましい。重合体のオキサゾリン系架橋剤の重合方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば水性媒体中で溶液重合、乳化重合、懸濁重合または塊状重合させる方法などが挙げられ、これらの方法などで水溶液または水分散体などを得ることができる。これら重合体のオキサゾリン系架橋剤は、接着性や耐候性を良好にするために、不揮発性水性化助剤を実質的に含有していないことが好ましい。
【0030】
重合体のオキサゾリン系架橋剤の分子量は、数平均分子量で1000〜80000であることが好ましく、3000〜60000がより好ましく、5000〜40000がさらに好ましく、8000〜30000が特に好ましく、10000〜20000が最も好ましい。数平均分子量が1000未満の場合は、接着性や耐候性が低下する傾向にあり、80000を超えた場合は、重合体の製造が困難となる。
【0031】
重合体のオキサゾリン系架橋剤の市販品としては、日本触媒社製エポクロスシリーズなどが挙げられる。より具体的には、水溶液タイプの「WS−500」、「WS−700」、水性分散体タイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」などが挙げられる。
【0032】
本発明において水性分散体は、前記架橋剤以外にその他の樹脂や添加剤を含有してもよい。
その他の樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂等が挙げられる。
その他の添加剤としては、例えば、金属酸化物微粒子、粘着付与剤、ワックス類、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、ヌレ剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料、染料、分散剤などが挙げられる。
これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。
また、これらは水溶性または水分散性のものが混合安定性の点から好ましく、水性分散体または水溶液として利用することがより好ましい。
【0033】
上述の水性分散体からなる本発明の接着剤は、充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層と、これを封止するための封止層と、を接着するものである。太陽電池モジュールを構成するこれら2層を接着する方法としては、封止層と本発明の接着剤からなる接着層とを含む封止用保護シートを利用することが好ましい。なお、封止用保護シートは、バックシート、バックカバー、封止用シート、裏面封止シート、保護シート、裏面保護シートなどと呼ばれることもある。
【0034】
本発明の封止用保護シートにおける接着層は、封止層の上層側の面に積層されている必要がある。接着層の厚みは、0.01〜30μmの範囲とすることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましく、0.5〜6μmであることがさらに好ましく、0.5〜5μmであることが特に好ましく、0.5〜4μmであることが最も好ましい。接着層の量が0.01μm未満では十分な接着性が得られず、30μmを超える場合は性能の向上効果がなく、しかも経済的に不利である。ここで上層とは、太陽電池モジュールとした際の、太陽光の受光面側のことであり、下層とは受光面の反対側のことである。なお、両面発電タイプの太陽電池モジュールであっても太陽光を直接受光する面側が上層であり、間接光を受光する面側が下層となる。
【0035】
封止用保護シートにおける接着層は、水性分散体をコーティングして形成された塗膜である。
コーティング方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることが可能であり、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が挙げられる。
これらの方法により封止層表面に均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理を供することにより、均一な接着層を封止層表面に密着させて形成することができる。
乾燥処理法としては、乾燥時間を短くできることや、上記架橋剤との反応を促進させるために、加熱処理法が好ましい。乾燥温度は、50〜200℃の範囲が好ましく、70〜180℃がより好ましく、80〜150℃がさらに好ましく、90〜120℃が特に好ましい。乾燥温度が50℃未満では、乾燥効果が不十分であったり、接着性が低下する傾向がある。乾燥温度が200℃を超えた場合は封止層が変形や変質する場合がある。また乾燥時間は特に限定されず、通常2〜600秒の範囲で行うことが可能である。
【0036】
次に本発明の封止用保護シートの構成材料である封止層について説明する。
封止層に用いられる基材としては、充填剤を封止できるものであれば特に限定されないが、屋外での長期間の使用に耐えうるのもが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと示すこともある。)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリフッ化ビニル(以下、PVFと示すこともある。)、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと示すこともある。)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、アルミ箔などの金属箔などが挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂の中ではPETが、フッ素樹脂の中ではPVF、PVDFが経済性や接着性などの観点から好ましい。
【0037】
PETなどのポリエステル樹脂を封止層に用いる際は、加水分解を抑制するために、耐加水分解性のものを用いることが好ましい。耐加水分解性のポリエステル樹脂としては、数平均分子量が18000〜40000の範囲で、環状オリゴマーの含有率が1.5質量%以下、固有粘度が0.5dl/g以上のものが挙げられ、さらに分子中の末端のカルボン酸がカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物などで末端封鎖されていてもよい。
【0038】
封止層の厚みは特に限定されないが、例えば10〜500μmの範囲のものを用いることが可能であり、20〜250μmの範囲のものが好ましく用いられる。
また封止層は、他の層との積層した際の接着性を向上させるために、コロナ放電処理、フレームプラズマ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理、オゾン処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、薬品処理、溶剤処理などの表面処理がなされていてもよい。
さらに封止層は、水蒸気バリア性を付与させるために、アルミ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ蒸着膜、アルミナ・シリカ二元蒸着などの蒸着膜を設けてあってもよい。
【0039】
本発明の封止用保護シートは、少なくとも接着層と封止層とを有しているが、水蒸気バリア性や強度を付与させる目的で、その他の層が封止層の下層側に積層されているのが好ましい。
その他の層としては、水蒸気バリア性などを目的としたバリア層や、強度保持などを目的とした支持層、またそれらを接着させる接着剤層などが挙げられる。
このような封止用保護シートの構成としては、例えば上層側から、接着層/封止層/接着剤層/バリア層/接着剤層/支持層、接着層/封止層/接着剤層/バリア層、接着層/封止層/接着剤層/支持層などが例示でき、接着層/封止層/接着剤層/バリア層/接着剤層/支持層のようにバリア層と支持層を備えていることが好ましい。
これらの構成の封止用保護シートは、予め封止層とその他の層を積層し、次いで本発明の接着剤をコーティングして接着層を形成して製造してもよいし、また封止層単体に本発明の接着剤をコーティングして接着層を設けた後にその他の層を積層して製造してもよい。
なお、本発明では、充填剤と封止用保護シートとの接着を担う層のことを接着層と呼び、その他の接着に用いる層のことを接着剤層と呼ぶ。
【0040】
封止用保護シートに含まれるバリア層は、主に水蒸気バリアを目的とした層であり、水蒸気バリア性を有したものであれば特に限定されない。バリア層の水蒸気バリア性としては、JIS−K7126に準じて測定された水蒸気透過度が3.0g/m・24h以下が好ましく、1.0g/m・24h以下のものがより好ましく、0.5g/m・24h以下がさらに好ましい。バリア層は水蒸気バリア性の他に、酸素バリア性などのガスバリア性も備えていることが好ましい。
バリア層としては、例えば、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ二元蒸着フィルムなどの蒸着フィルム、アルミ箔などの金属箔、塩化ビニリデン、液晶ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、金属箔、蒸着フィルムが水蒸気バリア性に優れ好ましい。なお蒸着フィルムは一般にポリエステル樹脂フィルムやポリアミド樹脂フィルムなどに蒸着されていることが多いが、比較的水蒸気バリア性に優れるPETなどのポリエステル樹脂フィルムの蒸着フィルムが好ましい。ポリエステル樹脂フィルムとしては、前記耐加水分解性のポリエステル樹脂を用いてもよい。バリア層の厚みは特に限定されないが、例えば3〜100μmの範囲で用いることが可能であり、5〜50μmの範囲が好ましく用いられる。
【0041】
封止用保護シートに含まれる支持層は、主に封止用保護シートの強度を保持したり、外力から受ける衝撃や引っ掻きなどから、バリア層や太陽電池モジュールを保護することを目的として設けられるものであり、その様な効果があればその基材は特に限定されない。
支持層の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、アルミ箔などの金属箔などが挙げられる。中でも、屋外での長期間の使用に適性のある、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂フィルムとしては、前記耐加水分解性のポリエステル樹脂がより好ましい。支持層の厚みは特に限定されず、例えば10〜500μmの範囲で用いることが可能であり、20〜250μmの範囲が好ましく用いられる。
【0042】
封止層、バリア層、支持層をそれぞれ接着する接着剤層としては、各層間の接着性に優れ、且つ耐候性、耐酸性雨性が必要であり、その様な効果があるものであれば特に限定されず、例えば、ウレタン樹脂からなる主剤と、イソホロンジイソシアネートとキシリレンジイソシアネートの混合物である硬化剤からなる2液のタイプのポリウレタン接着剤など公知の接着剤を用いることができる。また、本発明の接着剤を接着剤層に用いることもできる。封止層、バリア層、支持層をそれぞれ積層する方法は特に限定されず、ドライラミネート法などの公知の方法を採用することができる。
【0043】
本発明の封止用保護シートを構成する接着層は、充填剤との接着性に優れる。充填剤としては、オレフィン系共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられ、中でもオレフィン系共重合体からなる充填剤との接着性に優れている。
充填剤に用いられるオレフィン系共重合体としては、透明性、耐久性など充填剤特性を有していれば特には限定されず、エチレン系共重合体、ポリプロピレン系共重合体などが挙げられ、透明性に優れるエチレン系の共重合体が好ましい。エチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体やそれらの混合物などが挙げられ、透明性、耐久性、太陽電池モジュールとするための成形性に優れるエチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0044】
充填剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いる場合は、酢酸ビニル成分の含有量が20〜40質量%であることが好ましい。また、耐熱性や接着性などを向上させるために有機過酸化物などで架橋したり、シランカップリング剤などを添加して用いることがより好ましい。これら有機過酸化物、シランカップリング剤やその他の添加剤の種類や添加量、添加方法は公知の方法を用いることが可能である。
【0045】
充填剤層の厚みは、太陽電池素子を覆い十分に充填されるだけの厚みがあれば、特に限定されない。充填剤層の形成には、通常厚みが100〜1000μmのシートが用いられ、厚みが300〜800μmのシートが好ましく用いられる。太陽電池素子は、このような厚みの充填剤シートと充填剤シートの間に挟みこまれた状態でラミネートし充填剤に覆われた形態で太陽電池モジュールに用いられる。
【0046】
本発明の封止用保護シートは、充填剤層と熱圧着することで、充填剤層と接着することができる。熱圧着温度としては、90〜170℃が好ましく、100〜160℃がより好ましく、110〜150℃がさらに好ましい。熱圧着温度が90℃未満では接着性が十分ではなく、170℃を超えると充填剤層が変形や変質する場合がある。熱圧着時間としては、1〜60分が好ましく、3〜40分がより好ましく、5〜30分がさらに好ましい。熱圧着時間が1分未満では接着性が不十分な傾向があり、60分を超えた場合は生産性が悪く、しかも接着性は変わらない。
【0047】
本発明の太陽電池モジュールは、充填剤層と、封止用保護シートと、を含むものである。
太陽電池モジュールの構成としては、太陽電池素子を充填剤で覆った充填剤層の上層側に、ガラスなどからなる上層透明基材層が設けられることが一般的である。
近年では太陽電池モジュール自体に柔軟性を付与することを目的に、上層透明基材層として、樹脂フィルム(シート)を用いる場合があり、また本発明の封止用保護シートを構成する封止層と同様の基材層を用いられることも多い。その様な場合にあっては、上層透明基材層と充填剤層との接着層として、本発明の接着剤を用いることが可能である。
【0048】
本発明の太陽電池モジュールの製造装置や製造方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、ゴム弾性を有したシートによって上下に区切られたラミネート室を備え、上下のラミネート室をそれぞれ真空にすることが可能で、かつ下側のラミネート室底面が加熱することができる太陽電池用ラミネーターを用い、第1ステップとして90〜170℃に加熱した下側のラミネート室底面の上に、上層透明基材層、充填剤シート、太陽電池素子、充填剤シート、封止用保護シートをこの順にセットする(上層透明基材層が底面と接地)、第2ステップとして上下ラミネート室を真空にする、第3ステップとして上側のラミネート室を大気開放しゴム弾性を有したシートを太陽電池モジュール積層体に密着させ、太陽電池モジュール積層体を一体化(ラミネート)させる、第4ステップとして下側のラミネート室を大気開放し一体化した太陽電池モジュール積層体を取り出す方法が挙げられ、さらに必要に応じて充填剤の架橋反応を促進するための加熱処理が設けられていてもよい。
【0049】
このようにして得られた、本発明の封止用保護シートを用いた太陽電池モジュール積層体は、封止用保護シートと充填剤層の接着性に優れている。封止用保護シートと充填剤層の接着性の評価法としては、前記のようにして得られた太陽電池モジュール積層体を用いて、封止用保護シートを剥離するのに必要な強度を引張試験機などを用いて測定する方法が挙げられるが、この場合は積層体の構成が複雑であるため封止用保護シートと充填剤層の層間以外の層間剥離や材料破壊が起こる場合があり、実際の封止用保護シートと充填剤層の層間剥離強度が求められないことがある。このような問題を回避するための方法としては、例えば、積層体の構成が全く同じ2枚の封止用保護シートを用い、その封止用保護シートの接着層面同士を向かい合わせ、その間に充填剤シートを挟みこんだ状態(封止用保護シート/充填剤シート/封止用保護シート)で、ヒートプレス機などで加熱しつつ一定時間荷重を加えて接着させ擬似試験片を得て、擬似試験片中の2枚の封止用保護シート間を剥離するのに必要な強度を、引張試験機などを用いて測定することで評価できる。この方法を用いることで、いずれの層間剥離や材料破壊であっても、封止用保護シートと充填剤層の接着性を求めることが可能である。このような方法で求められる、好ましい封止用保護シートと充填剤層の接着性としては、15mm幅に切り取った試験片の剥離強度で、20N/15mm以上であり、30N/15mm以上がより好ましく、40N/15mm以上がさらに好ましく、50N/15mmが特に好ましく、60N/15mmが最も好ましい。
【0050】
また、本発明の封止用保護シートの接着層は耐候性にも優れており、封止用保護シートと充填剤層の接着性が、耐候性の指標となる高温高湿環境下であっても良好に保持性することが可能である。耐候性の評価としては、例えば、前記接着性評価で用いた擬似試験片を、85℃−85%RHの高温高湿環境下で3000時間暴露した後に、封止用保護シートと充填剤層の剥離強度を、引張試験機などを用いて測定することで評価できる。このような方法で求められる、好ましい封止用保護シートと充填剤層の接着性としては、15mm幅に切り取った試験片の剥離強度で、20N/15mm以上であり、30N/15mm以上がより好ましく、40N/15mm以上がさらに好ましく、50N/15mmが特に好ましい。
【0051】
さらに、本発明の封止用保護シートの接着層は耐酸性雨性にも優れており、封止用保護シートと充填剤層の接着性が、耐酸性雨性の指標となる酸性環境下であっても良好に保持性することが可能である。耐酸性雨性の評価としては、例えば、前記接着性評価で用いた擬似試験片を、50℃の10質量%硫酸水溶液に1500時間浸漬した後に、封止用保護シートと充填剤層の剥離強度を、引張試験機などを用いて測定することで評価できる。このような方法で求められる、好ましい封止用保護シートと充填剤層の接着性としては、15mm幅に切り取った試験片の剥離強度で、20N/15mm以上であり、30N/15mm以上がより好ましく、40N/15mm以上がさらに好ましく、50N/15mmが特に好ましい。
【実施例】
【0052】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0053】
各種の特性について、以下の方法で測定または評価した。
1.酸変性ポリオレフィン樹脂の特性
(1)構成
H−NMR分析(日本電子社製ECA500、500MHz)より求めた。テトラクロロエタン(d)を溶媒とし、120℃で測定した。
(2)融点
酸変性ポリオレフィン樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定を行って融点を求めた。
(3)メルトフローレート値(MFR)
JIS K7210:1999記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
【0054】
2.封止用保護シートの評価
(1)接着性評価
封止用保護シートの接着層面同士を向かい合わせ、その間に厚み600μmの太陽電池モジュール用エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井ファブロ社製ソーラーエバSC50B)からなる充填剤シートを挟みこんだ状態で、ヒートプレス機(シール圧0.1MPa/cm2)にて140℃で20分間プレスし、擬似試験片を得て、その擬似試験片を15mm幅で切り出し、1日後、擬似試験片の封止用保護シートと封止用保護シートの層間を、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張速度200mm/分、T型剥離、25℃での剥離強度を測定した。測定はn=5で行い、測定値はその平均値とした。
(2)耐候性評価
上記(1)の接着性評価で得られた擬似試験片を、高温高湿器内で85℃−85%RHの環境下で3000時間暴露した後に、取り出した擬似試験片を15mm幅で切り出し、擬似試験片の封止用保護シートと封止用保護シートの層間を、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張速度200mm/分、T型剥離、25℃での剥離強度を測定した。測定はn=5で行い、測定値はその平均値とした。
(3)耐酸性雨性評価
上記(1)の接着性評価で得られた擬似試験片を、50℃の10質量%硫酸水溶液に1500時間浸漬した後に、擬似試験片を取り出し、流水で水洗した後15mm幅で切り出し、擬似試験片の封止用保護シートと封止用保護シートの層間を、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張速度200mm/分、T型剥離、25℃での剥離強度を測定した。測定はn=5で行い、測定値はその平均値とした。
【0055】
<酸変性ポリオレフィン樹脂>
酸変性ポリオレフィン樹脂としては、市販品であるボンダインTX8030(アルケマ社製、以下、TX8030とする。)、ボンダインLX4110(アルケマ社製、以下、LX4110とする。)、ボンダインAX8390(アルケマ社製、以下、AX8390とする。)を用いた。酸変性ポリオレフィン樹脂の組成等を表1に示す。これら酸変性ポリオレフィン樹脂は以下に示す製造例1、2示す方法で水性分散体として利用した。
【0056】
【表1】

【0057】
製造例1(TX8030、LX4110の水性分散体の製造)
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、TX8030またはLX4110を100g、イソプロパノールを125.0g、トリエチルアミンを3.7g、蒸留水を271.3g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに120分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ約40℃まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体を得た。
この様にして得られたTX8030の水性分散体(以下、TXEmとする。)の固形分濃度は20質量%であり、数平均粒子径は0.085μmであった。
またLX4110の水性分散体(以下、LXEmとする。)の固形分濃度は20質量%であり、数平均粒子径は0.076μmであった。
なお、ポリオレフィン樹脂水性分散体の粒子径は、日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150を用い、樹脂の屈折率は1.5として求めた。
【0058】
製造例2(AX8390の水性分散体の製造)
撹拌機とヒーターを備えた1リットル容ガラス容器に、AX8390を100g、ノルマルプロパノールを250.0g、トリエチルアミンを2.5g、蒸留水を147.5g仕込んだ。撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに120分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ約40℃まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なAX8390の水性分散体を得た。
得られたAX8390の水性分散体(以下、AXEmとする。)の固形分濃度は20質量%であり、数平均粒子径は0.150μmであった。
【0059】
実施例1
酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体としてTXEmを用い、封止層基材として、耐候性PET(数平均分子量20000、環状オリゴマー含有量0.5質量%以下、固有粘度0.7dl/g、カルボジイミド化合物により末端カルボン酸封鎖)からなる厚み188μmのフィルムを用い、TXEmを封止層基材の片面にマイヤーバーでコーティングした後、100℃で2分間、乾燥させ、厚さ3μmの接着層を有する封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0060】
実施例2、3
使用する酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の種類を、表2に示したように変更した以外は実施例1と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0061】
実施例4
オキサゾリン系架橋剤として市販品であるエポクロスWS700(日本触媒社製、数平均分子量20000の重合体、水溶液、固形分濃度25質量%、以下WS700とする)を用い、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体TXEmの固形分100質量部に対して、WS700の固形分5質量部を添加し撹拌混合した。得られたTXEmとWS700の混合液を、封止層基材である実施例1と同様の厚み188μmの耐候性PETフィルムの片面にマイヤーバーでコーティングした後、100℃で2分間、乾燥させ、厚さ3μmの接着層を有する封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0062】
実施例5、6
使用する酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体の種類を、表2に示したように変更した以外は実施例4と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0063】
実施例7、8
オキサゾリン系架橋剤の添加量を、表2に示したように変更した以外は実施例4と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0064】
実施例9
接着層の厚みを0.5μmとなるようにした以外は実施例4と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0065】
実施例10
封止層基材として厚み100μmのPVFフィルムを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0066】
実施例11
封止層基材として厚み100μmのPVDFフィルムを用いた以外は、実施例4と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0067】
【表2】

【0068】
比較例1
酸変性ポリオレフィン樹脂としてAX8390を用い、固形分濃度8質量%となるように70℃のトルエンに溶解し、AX8290のトルエン溶液を得た(AX8290のトルエン溶液は60℃未満の温度ではゲル状となるため液温は60℃以上を保った)。AX8390のトルエン溶液を、実施例1と同様の厚み188μmの耐候性PETフィルムを封止層基材として用い、片面にマイヤーバーでコーティングした後、100℃で2分間、乾燥させ、厚さ3μmの接着層を有する封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0069】
比較例2
酸変性ポリオレフィン樹脂としてAX8390を用い、固形分濃度8質量%となるように70℃のトルエンに溶解した。ついでオキサゾリン系架橋剤として市販品であるエポクロスRPS−1005(日本触媒社製、数平均分子量70000の重合体、固形、以下、RPS−1005とする。)を用いて、トルエン溶液中のAX8290の固形分100質量部に対して、RPS−1005を10質量部を添加し、撹拌混合した(混合液は60℃未満の温度ではゲル状となるため液温は60℃以上を保った)。得られたAX8390とRPS−1005の混合液を、実施例1と同様の厚み188μmの耐候性PETフィルムを封止層基材として用い、片面にマイヤーバーでコーティングした後、100℃で2分間、乾燥させ、厚さ3μmの接着層を有する封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0070】
比較例3
酸変性ポリオレフィン樹脂としてAX8390を用い、固形分濃度8質量%となるようにAX8390を70℃のトルエンに溶解した。ついでアミン系架橋剤として市販品であるTSL9306(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、ジアミノジシロキサン、以下TSL9306とする)を用いて、トルエン溶液中のAX8290の固形分に対して、TSL9306を10質量部を添加し、撹拌混合した(混合液は60℃未満の温度ではゲル状となるため液温は60℃以上を保った)。得られたAX8390とTSL9306の混合液を、実施例1と同様の厚み188μmの耐候性PETフィルムを封止層基材として用い、片面にマイヤーバーでコーティングした後、100℃で2分間、乾燥させ、厚さ3μmの接着層を有する封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0071】
比較例4
酸変性ポリオレフィン樹脂として、TX8030を用いた以外は、比較例1と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0072】
比較例5
酸変性ポリオレフィン樹脂として、TX8030を用いた以外は、比較例2と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0073】
比較例6
封止層基材として厚み100μmのPVFフィルムを用いた以外は、比較例2と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0074】
比較例7
封止層基材として厚み100μmのPVDFフィルムを用いた以外は、比較例2と同様の操作を行って封止用保護シートを得た。得られた封止用保護シートを用いて、接着性評価、耐候性評価、耐酸性雨性評価を行った。
【0075】
【表3】

【0076】
実施例1〜11の結果より明らかなように、接着層が酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体をコーティングして形成された塗膜からなる封止用保護シートは、充填剤との接着に優れた。中でも、実施例1、2は、封止用保護シートと充填剤との接着性、および耐候性、耐酸性雨性に優れていた。実施例3では接着層の酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が低かったことやアクリル酸エステル成分の含有量が多かったため、耐候性と耐酸性雨性にやや劣るものであった。詳しくは、酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が低いために耐候性評価の際に接着層が軟化し、さらにアクリル酸エステルの含有量が多いために親水化したことで接着性の低下が顕著であったとみられる。耐酸性雨性にやや劣ったのも、アクリル酸エステルの含有量が多いために親水化したためとみられる。また、実施例4〜11は、接着剤(水性分散体)にオキサゾリン系の架橋剤を含有したことによって、封止用保護シートと充填剤との接着性、耐候性、耐酸性により優れた。実施例10、11は、封止層基材にPVDやPVDFなどのフッ素樹脂を用いて試験したが、PET基材同様に接着性、耐候性、耐酸性により優れた。
【0077】
一方、比較例1〜7は、接着層が酸変性ポリオレフィン樹脂のトルエン溶液をコーティングして形成された塗膜からなる封止用保護シートであり、水性分散体を利用した場合より充填剤との接着性が劣る傾向にあり、耐候性、耐酸性雨性にも劣るものであった。これらの性能に劣ったのは、60℃以上の高温のトルエン溶液を封止層基材にコーティングする必要があるため、コーティングの際に封止層基材表面が熱トルエンによって変質したことや、酸変性ポリオレフィン樹脂を溶液とするには、樹脂と親和性の高い溶剤に溶解する必要があり、そのため乾燥後も塗膜に微量の溶剤が残留してしまい塗膜を可塑化していることなどが原因とみられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層とこれを封止するための封止層とを有する太陽電池モジュールにおいて、前記充填剤層と封止層とを接着するための接着剤であって、接着剤が不飽和カルボン酸成分を0.1〜10質量%含有する酸変性ポリオレフィン樹脂を含む水性分散体であることを特徴とする太陽電池モジュール用接着剤。
【請求項2】
酸変性ポリオレフィン樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル成分を0.1〜25質量%含有することを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール用接着剤。
【請求項3】
酸変性ポリオレフィン樹脂の融点が、70℃以上であることを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池モジュール用接着剤。
【請求項4】
水性分散体が、不揮発性水性化助剤を含まないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用接着剤。
【請求項5】
水性分散体が、オキサゾリン系架橋剤を含み、その含有量が酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.05〜30質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用接着剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池モジュール用接着剤からなる接着層と、封止層と、を含むことを特徴とする封止用保護シート。
【請求項7】
さらにバリア層を含むことを特徴とする請求項6記載の封止用保護シート。
【請求項8】
充填剤で太陽電池素子を覆ってなる充填剤層と、請求項6または7に記載の封止用保護シートと、を含むことを特徴とする太陽電池モジュール。


【公開番号】特開2010−251679(P2010−251679A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132084(P2009−132084)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】