説明

太陽電池モジュール用裏面保護シートおよびそれを用いた太陽電池モジュール

【課題】高温高湿環境下における耐久性に優れ、強度やバリア性能、光線反射率の経時低下が抑制された太陽電池モジュール用裏面保護シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】透明ポリエステル系樹脂フィルム1と、少なくとも一方の面に、無機酸化物の蒸着膜2およびガスバリア性塗布膜3をそれぞれ少なくとも1層有する基材ポリエステル系樹脂フィルム4と、少なくとも1層の合成樹脂フィルム5とが、接着剤層6,7を介して順次積層されてなる太陽電池モジュール用裏面保護シート10である。透明ポリエステル系樹脂フィルム1および合成樹脂フィルム5のうちのいずれか一方または双方が、ルチル型酸化チタンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用裏面保護シート(以下、単に「裏面保護シート」とも称する)およびそれを用いた太陽電池モジュールに関し、詳しくは、樹脂フィルムの積層構造からなる太陽電池モジュール用裏面保護シート、および、それを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源として太陽電池が注目されており、現在、種々の形態からなる太陽電池モジュールが開発され、提案されている。
【0003】
一般に、太陽電池モジュールは、表面保護シート、充填剤層、太陽電池素子、充填剤層および裏面保護シートが順次積層された構成を基本構造とし、太陽光が太陽電池素子に入射することにより発電する機能を有する。太陽電池は主として屋外で使用されるため、太陽電池素子を保護する保護シートは高い耐久性を有することが必要であり、中でも裏面保護シートには、耐加水分解性や耐候性、水蒸気バリア性、充填材との密着性、絶縁性等、種々の機能を有することが要求される。
【0004】
このため、裏面保護シートは通常、複数層の積層からなる複合シートとして構成されている。従来使用されている太陽電池モジュール用裏面保護シートとしては、強度に優れたプラスチック基材、例えば、ポリプロピレン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等を用いたものが最も一般的であり、層間の接着に用いられる接着剤としては、例えば、ブタジエン系ゴム等のゴム系接着剤や、ウレタン系接着剤等が汎用されている。
【0005】
かかる裏面保護シートに係る改良技術として、例えば、特許文献1には、一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムの両面に、着色用添加剤、紫外線吸収剤および光安定化剤を含む着色ポリプロピレン系樹脂フィルムを、ラミネート用接着剤層を介して積層してなる太陽電池モジュール用裏面保護シートが開示されている。この場合、無機酸化物の蒸着膜を有する内側の基材フィルムにより水蒸気バリア性が担保され、かつ、外側のポリプロピレン系樹脂フィルムにより耐加水分解性および耐候性が担保されることとなる。
【0006】
また、特許文献2には、フッ素系樹脂フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリ(メタ)アクリル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、または、ポリエステル系樹脂フィルムからなる基材フィルムの片面に、無機酸化物の蒸着膜を設け、更に、上記の無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムの両面に、白色化剤と紫外線吸収剤とを含む耐熱性のポリプロピレン系樹脂フィルムを積層した太陽電池モジュール用裏面保護シートが開示されており、白色化剤として、アナタス形酸化チタンやルチル形酸化チタンを用いることができることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−168814号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特許第4217935号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献に開示されているような従来の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、強度に優れ、耐加水分解性や耐候性等の各種要求を満足しうるものである。しかしながら、近年の太陽電池モジュールの変換効率の向上や長寿命化に伴い、高温高湿の過酷な使用条件下での耐久性をより向上して、強度やバリア性能、光線反射率の経時低下を防止しうる技術の確立が求められていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、高温高湿環境下における耐久性に優れ、強度やバリア性能、光線反射率の経時低下が抑制された太陽電池モジュール用裏面保護シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、太陽電池モジュール用裏面保護シートのいずれか一方または双方の表面を構成するフィルムに、ルチル型酸化チタンを添加することで、高温高湿環境下における強度やバリア性能、光線反射率の低下を抑制できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは、透明ポリエステル系樹脂フィルムと、少なくとも一方の面に、無機酸化物の蒸着膜およびガスバリア性塗布膜をそれぞれ少なくとも1層有する基材ポリエステル系樹脂フィルムと、少なくとも1層の合成樹脂フィルムとが、接着剤層を介して順次積層されてなる太陽電池モジュール用裏面保護シートであって、
前記透明ポリエステル系樹脂フィルムおよび合成樹脂フィルムのうちのいずれか一方または双方が、ルチル型酸化チタンを含有することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の太陽電池モジュールは、表面保護シート、充填剤層、太陽電池素子、充填剤層、および、裏面保護シートが順次積層されてなる太陽電池モジュールであって、
前記裏面保護シートが上記本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートであり、かつ、前記充填剤層と前記合成樹脂フィルムとが対向するよう積層されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことにより、高温高湿環境下における耐久性に優れ、強度やバリア性能、光線反射率の経時低下が抑制された太陽電池モジュール用裏面保護シートおよびそれを用いた太陽電池モジュールを実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートを示す模式的断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る太陽電池モジュールを示す模式的断面図である。
【図3】巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図4】低温プラズマ化学気相成長装置を示す概略的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明において、シートまたはフィルムとは、いずれもシート状物ないしフィルム状物のいずれをも意味するものである。
【0016】
図1に、本発明の一例の太陽電池モジュール用裏面保護シートの模式的断面図を示す。図示する裏面保護シート10は、透明ポリエステル系樹脂フィルム1と、無機酸化物の蒸着膜2およびガスバリア性塗布膜3を有する基材ポリエステル系樹脂フィルム4と、合成樹脂フィルム5とが、接着剤層6および7を介して順次積層されてなる。
【0017】
本発明においては、裏面保護シートの表面を構成する透明ポリエステル系樹脂フィルム1および合成樹脂フィルム5のうちのいずれか一方または双方が、ルチル型酸化チタンを含有する点が重要である。酸化チタンは、白色化剤として従来より知られている添加剤であるが、本発明では、酸化チタンの中でも特にルチル型の酸化チタンを、裏面保護シートの表面を構成するフィルムに配合することで、高温高湿環境下および紫外線照射環境下における光線反射率および機械強度の低下を効果的に抑制できることを見出したものである。
【0018】
ルチル型酸化チタンを、光が照射される側のシート表面を構成する合成樹脂フィルム5に配合することで、光線反射率を向上させることができる。また、ルチル型酸化チタンを、太陽電池モジュールに組み込まれた際に外気に触れる側のシート表面を構成する透明ポリエステル系樹脂フィルム1に配合することで、耐UV(紫外線)性を向上することができる。したがって、本発明においては、いずれにしてもフィルムの環境劣化を抑制して、裏面保護シートの強度、バリア性能および反射率を、より長期にわたり良好に維持することが可能となる。
【0019】
本発明において、各フィルムにおけるルチル型酸化チタンの含有量は、フィルムを構成する樹脂組成物の1〜30質量%、特には5〜25質量%の範囲内とすることが好ましい。ルチル型酸化チタンの含有量が少なすぎると、本発明の所期の効果が十分に得られない。一方、ルチル型酸化チタンの含有量が多すぎると、配合物の流動性が低下して、フィルムを成型する際の押し出し性が悪化する。また、かかるルチル型酸化チタンとしては、平均粒子径が0.1〜3.0μmのものを好適に用いることができる。
【0020】
(透明ポリエステル系樹脂フィルム)
本発明において用いる透明ポリエステル系樹脂フィルム1は、積層される無機酸化物の蒸着膜等との密接着性に優れ、それらの膜の特性を損なうことなく良好に保持することができ、かつ、強度に優れるとともに、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性等の諸堅牢性に優れ、特に、水分、酸素等の侵入を防止する防湿性に優れ、また、表面硬度が高く、さらには、表面の汚れ、ゴミ等の蓄積を防止する防汚性に優れ、極めて耐久性に富み、その保護能力性が高い等の特性を有するものである。
【0021】
かかる透明ポリエステル系樹脂フィルム1としては、カルボキシ末端基量が15当量/トン以下、特には12当量/トン〜5当量/トンの範囲内であるポリエステルフィルムを好適に用いることができる。このようなポリエステルフィルムを用いることにより、本発明の裏面保護シートを耐加水分解性に優れたものとすることができ、耐久性を向上できる。
【0022】
なお、上記カルボキシ末端基量は、フィルムの一定量をオルトクレゾール/クロロホルム(質量比=50/50または60/40)、フェノール/1,2−ジクロロベンゼン(質量比=50/50)、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比=50/50または60/40)、O−クロロフェノールおよびジクロロ酢酸のいずれかに溶解し、アルカリで電位差滴定することにより求めることができる。
【0023】
本発明に係る透明ポリエステル系樹脂フィルム1は、固有粘度が0.8dl/g以上であることが好ましい。上記ポリエステル系樹脂として、固有粘度が0.8dl/g以上であるものを用いることにより、本発明の裏面保護シートを、強靭性、剛性および耐熱性に優れたものにすることができる。本発明においては、固有粘度が1.0dl/g以上であるポリエステル系樹脂を用いることがより好ましく、さらに好ましくは、固有粘度が1.2dl/g〜1.5dl/gの範囲内であるポリエステル系樹脂を用いる。
【0024】
なお、上記固有粘度とは、フィルムを、0.1g/mlの濃度でフェノール/1,2−ジクロロベンゼン(質量比=50/50)、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比=50/50または60/40)、O−クロロフェノール、および、ジクロロ酢酸のいずれかの溶媒に溶解した溶液の25℃における粘度をいうものである。
【0025】
ここで、一般的に微粒子や高分子物質の希薄溶液における粘度を測定することは、簡便な方法ながら、それらの物理特性を知る上で大いに役立つ場合がある。目的物質を溶かした溶液の粘度ηと、溶媒の粘度ηとの比η=η/ηは相対粘度と呼ばれる。この相対粘度ηから1を引いた粘度ηSP、つまりηSP=Ηr1=(η−η)/ηは比粘度と呼ばれ、溶媒に目的物質を溶かしたことによる粘度の増加分に相当する。比粘度ηSPは目的物質の濃度の関数であり、比粘度の濃度0への外挿値が固有粘度(極限粘度)である。このような固有粘度は、溶液中に分散する溶質の粒径や分子量と関係付けることが可能な物理量であり、多くの有用な情報を含んでいる。上記溶液の粘度としては、JIS K7367−5(プラスチック−毛細管粘度計を用いたポリマー希釈溶液の粘度の求め方−第5部:熱可塑性ポリエステル(TP)ホモポリマー及びコポリマー)に準じて測定した値を用いるものとする。
【0026】
また、かかるポリエステル系樹脂中のオリゴマーの含有量と、カルボキシ末端基量との間には相関関係があり、オリゴマーの含有量が多いほど、カルボキシ末端基量が多くなるため耐加水分解性は低下し、一方、オリゴマーの含有量が少ないほど、カルボキシ末端基量が少なくなるため耐加水分解性は向上する。したがって、本発明においては、オリゴマーの含有量が0.4質量%以下、特には0.3〜0.1質量%、さらには0.2〜0.1質量%の範囲内であるポリエステル系樹脂を用いることが、耐加水分解性をより向上させる点からは好適である。
【0027】
なお、ここで上記オリゴマーとは、上記ポリエステル系樹脂を構成する構造単位の繰り返し数(重合度)が2〜20程度の低重合体を意味するものである。上記ポリエステル系樹脂中のオリゴマー含有量は、例えば、フェノール/1,2−ジクロロベンゼン(質量比=50/50)、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比=50/50または60/40)、O−クロロフェノールおよびジクロロ酢酸等のいずれかの溶媒2ml中に溶解したポリエステル系樹脂100mgを、液体クロマトグラフィー(例えば、HLC803D東曹社製)で測定して、ポリエステル系樹脂に対するオリゴマーの割合(質量%)で示すことができる。
【0028】
また、かかるポリエステル系樹脂の数平均分子量と、透明ポリエステル系樹脂フィルム中のカルボキシ末端基量との間には相関関係があり、数平均分子量が増加すると、上記カルボキシ末端基量は少なくなるため耐加水分解性は向上し、一方、数平均分子量が低下すると、上記カルボキシ末端基量は多くなるため上記耐加水分解性が向上するものである。したがって、本発明においては、数平均分子量が18500〜40000、中でも19000〜35000の範囲内であるポリエステル系樹脂を用いることが、耐加水分解性をより向上させる点からは好適である。
【0029】
なお、上記数平均分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、以下の条件で測定した値を用いるものとする。
(a)装置 : ゲル浸透クロマトグラフ GCP−244(WATERS社製)
(b)カラム : Shodex HFIP 80M 2本(昭和電工(株)製)
(c)溶媒 : ヘキサフルオロプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ソーダ)
(d)流速 : 0.5ml/min
(e)温度 : 23℃
(f)試料 濃度:0.06%、溶解度:完全溶解、ろ過:マイショリディスク W−13−5
(g)注入量 : 0.300ml
(h)検出器 : R−401型示差屈折率器(WATERS)
(i)分子量公正 : PET−DMT(標準品)
【0030】
本発明に用いるポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸化合物とジオール化合物とが縮合してなる構成を有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0031】
ジカルボン酸化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸等を用いることができる。上記芳香族ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸成分としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を挙げることができる。中でも本発明においては、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を好適に用いることができる。また、脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。さらに、脂肪族ジカルボン酸成分としては例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を挙げることができる。なお、上記ジカルボン酸化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよく、さらには、ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。
【0032】
また、上記ジオール化合物としては、上記ジカルボン酸と縮合し、ポリエステル系樹脂を構成できるものであれば特に限定されない。かかるジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。中でも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールを用いることが好ましく、エチレングリコールを用いることが最も好ましい。なお、上記ジオール成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明においては、ポリエステル系樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用いることが好ましく、中でも、ポリエチレンテレフタレートを用いることがより好ましい。
【0034】
なお、上記ポリエステル系樹脂には、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物等の他の化合物が、ポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。
【0035】
上記ポリエステル系樹脂の製造方法としては、例えば、酸成分とジオール成分とを直接エステル化させるか、または、酸成分としてジアルキルエステルを用いて、ジオール成分とエステル交換反応させる第一段階の反応の後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ溶融重合させる第二段階の反応により製造する方法や、さらに第二段階の反応の生成物を固相重合させる第三段階の反応を用いて製造する方法等が挙げられる。本発明においては、カルボキシ末端基量の少ないポリエステル系樹脂を得るために、固相重合を用いることが好ましい。
【0036】
上記固相重合の方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、窒素流通下もしくは1torr以下の真空化において、180℃〜融点(約250℃)の範囲内の温度で5〜50時間加熱する方法を用いることができる。
【0037】
本発明に用いられるポリエステル系樹脂は、例えば、上記固有粘度を所望の範囲に調整すること等を目的として、ポリエーテル化合物を含んでもよい。かかるポリエーテル化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキサイド、あるいはジオールを主たる構成成分とするポリエーテル化合物を用いることができる。
【0038】
上記ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。
【0039】
本発明において好ましく用いられるポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、これらのポリエーテル化合物の共重合体のうち少なくとも一種を含有してなるポリエーテル化合物を挙げることができる。
【0040】
なお、上記ポリエーテル化合物としては、末端封鎖したポリエーテル化合物を用いてもよい。末端封鎖したポリエーテル化合物は、ポリエステル系樹脂の加水分解を抑制することができる利点を有するからである。末端封鎖されたポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエーテル末端の水酸基をアルキルエーテル化、つまりメトキシ基、エトキシ基等で末端封鎖したポリエーテル化合物を挙げることができる。
【0041】
上記ポリエーテル化合物の平均分子量としては、特に限定されないが、500〜10000であることが好ましく、より好ましくは700〜5000である。平均分子量が500未満では、上記ポリエステル系樹脂に含有させる点で不利になる。一方、平均分子量が10000を超えると、ポリエステル系樹脂との相溶性が悪化する恐れがある。
【0042】
かかるポリエーテル化合物の含有量としては、特に限定されないが、通常、ポリエステル系樹脂中、0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、中でも0.2〜7質量%の範囲内が好ましく、特には0.2〜5質量%の範囲内が好ましい。
【0043】
また、上記ポリエステル系樹脂には、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤、あるいはポリシロキサン等の消泡剤を配合することができる。また、易滑性や耐摩耗性、耐スクラッチ性を付与するために、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子や、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子等を配合したり、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子を含有せしめたり、界面活性剤を配合したりしてもよい。
【0044】
本発明に用いる透明ポリエステル系樹脂フィルム1の見かけ密度は、所望の機械的強度を付与できる範囲内であれば特に限定されない。特には、本発明においては、見かけ密度が0.85g/cm〜1.37g/cmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.9g/cm〜1.35g/cmの範囲内、さらに好ましくは0.9g/cm〜1.3g/cmの範囲内である。なお、この見かけ密度は、体積既知のフィルムの質量を測定することにより求めることができる。
【0045】
また、透明ポリエステル系樹脂フィルム1の厚みとしては、特に限定されるものではなく、本発明の裏面保護シートに所望の自己支持性を付与できる範囲内で任意に決定することができる。特には、本発明においては、厚み3〜500μmの範囲内が好ましく、より好ましくは25〜250μmの範囲内、さらに好ましくは25〜188μmの範囲内である。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には、厚み50〜188μmが好適であり、ポリエチレンナフタレートフィルムを用いる場合には、厚み25〜188μmが好適である。なお、この厚みは、JIS C2151 電気用プラスチックフィルム試験方法に準拠して測定した値を用いるものとする。
【0046】
また、裏面保護シートの耐短絡性の観点からは、透明ポリエステル系樹脂フィルムの体積固有抵抗は1×1018Ω/cm程度であることが好ましく、絶縁破壊電圧は5〜50kVの範囲内が好ましく、また、誘電率が3.3(1kHz)程度であることが好ましい。なお、これらの特性は、JIS C2151電気用プラスチックフィルム試験方法に準拠して測定した値を用いるものとする。
【0047】
透明ポリエステル系樹脂フィルム1の製造方法としては、所望の厚みで均一に製膜できる方法であれば特に限定されない。例えば、上記の各種の樹脂の1種ないし2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、あるいは、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、さらには、2種以上の樹脂を使用し、あらかじめ混合して製膜化する方法等により、各種の樹脂のフィルムないしシートを製造して、さらに、所望に応じ、例えば、テンター方式またはチューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。
【0048】
なお、上記各種樹脂の1種ないし2種以上を使用した製膜化に際しては、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐光性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができる。その添加量としては、ごく微量から数十質量%まで、目的に応じて任意とすればよい。一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、充填剤、滑剤、強化繊維、補強剤、帯電防止剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤、顔料等を挙げることができ、さらには、改質用樹脂等を使用してもよい。本発明においては、上記添加剤の中でも、特に、紫外線吸収剤、光安定化剤、あるいは、酸化防止剤等を練り込み加工してなる各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することが好ましい。
【0049】
上記のうち紫外線吸収剤とは、太陽光中の有害な紫外線を吸収して、分子内で無害な熱エネルギーへと変換し、高分子中の光劣化開始の活性種が励起されることを防止するものであり、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サルチレート系、アクリルニトリル系、金属錯塩系、および、粒子径0.01〜0.06μmの超微粒子酸化チタン若しくは粒子径0.01〜0.04μmの超微粒子酸化亜鉛よりなる無機系等の紫外線吸収剤の1種ないし2種以上を使用することができる。また、光安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダートピペリジン系化合物等の1種ないし2種以上を使用することができる。さらに、酸化防止剤とは、高分子の光あるいは熱等による酸化劣化等を防止するものであり、例えば、フェノール系、アミン系、硫黄系、燐酸系等の酸化防止剤を使用することができる。さらにまた、上記の紫外線吸収剤、光安定化剤あるいは酸化防止剤としては、例えば、ポリマーを構成する主鎖または側鎖に、上記のベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物からなる光安定化剤あるいはフェノール系等の酸化防止剤を化学結合させてなるポリマー型の紫外線吸収剤、光安定化剤あるいは酸化防止剤等も使用することができる。上記の紫外線吸収剤、光安定化剤あるいは酸化防止剤の含有量としては、その粒子形状、密度等によって異なるが、0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0050】
また、本発明において、透明ポリエステル系樹脂フィルム1の表面には、無機酸化物の蒸着膜等との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、あらかじめ所望の表面処理層を設けることができる。かかる表面処理層としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いたプラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の前処理を任意に施すことで形成される、コロナ処理面、オゾン処理面、プラズマ処理面、酸化処理面等の表面処理面等である。上記の表面前処理は、別工程で実施してもよく、また、例えば、プラズマ処理やグロー放電処理等による表面前処理の場合は、上記の無機酸化物の蒸着膜等を形成する前処理としてインライン処理により前処理で行ってもよく、このような場合は、その製造コストを低減することができるという利点がある。
【0051】
また、透明ポリエステル系樹脂フィルム1と無機酸化物の蒸着膜等との密接着性を改善するための方法として、その他、例えば、透明ポリエステル系樹脂フィルム1の表面に、あらかじめプライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、または、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。上記の前処理のコート剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0052】
なお、上記の樹脂組成物には、密接着性を向上させるためのエポキシ系のシランカップリング剤、あるいは、基材フィルムのブロッキング等を防止するためのブロッキング防止剤等の添加剤を任意に添加することができる。その添加量は、0.1〜10質量%の範囲が好ましい。また、本発明において、上記の樹脂組成物中には、耐光性等を向上させるために、例えば、紫外線吸収剤、光安定化剤あるいは酸化防止剤等を添加することができる。上記の紫外線吸収剤、光安定化剤あるいは酸化防止剤等としては、前述の紫外線吸収剤、光安定化剤あるいは酸化防止剤等の1種ないしそれ以上を同様に使用することができる。かかる紫外線吸収剤等の含有量としては、その粒子形状、密度等によって異なるが、0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0053】
また、上記コート剤層の形成法としては、例えば、溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等のコート剤を使用し、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法等のコート法を用いてコートすることができ、そのコートの時期としては、シートの製膜後、または、2軸延伸処理後の後工程として、または、製膜もしくは2軸延伸処理のインライン処理等で実施することができる。
【0054】
(基材ポリエステル系樹脂フィルム)
本発明に係る基材ポリエステル系樹脂フィルム4は、基本的には、上記で説明した透明ポリエステル系樹脂フィルム1と同様のものを用いることができ、少なくとも一方の面に無機酸化物の蒸着膜2を設けることが必要であるので、さらに、無機酸化物の蒸着膜等を形成する際の蒸着条件等に耐えうるものを用いることが好ましい。基材ポリエステル系樹脂フィルム4の厚みとしては、特に限定されるものではなく、好適には厚み9〜150μmの範囲内、より好適には12〜125μmの範囲内である。
【0055】
本発明においては、無機酸化物の蒸着膜を製膜化する際の熱やイオンボンバードなどの基材ポリエステル系樹脂フィルム4に対しダメージを与える蒸着条件等から基材ポリエステル系樹脂フィルム4を保護し、その黄変、劣化ないし収縮や、フィルム表層ないし内層等における凝集破壊等を抑制し、また、無機酸化物の蒸着膜を良好に製膜化し、かつ、樹脂フィルムと無機酸化物の蒸着膜との密接着性等を向上させる等の目的で、あらかじめ基材ポリエステル系樹脂フィルム4に、表面前処理層を設けることができる。かかる表面前処理層は、例えば、後述するプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition(CVD)法)や、真空蒸着法(抵抗加熱、誘電加熱、EB加熱方式)、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition(PVD)法)といったドライコーティング方法や、無機フィラーもしくは金属アルコキシドの加水分解縮合物を分散させた樹脂混合液等を用いたロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法といったウェットコート法により、少なくとも1種類以上の無機酸化物を含んだ薄膜を形成することで、基材保護層として設けることができる。
【0056】
なお、本発明において、上記の酸化珪素等の無機酸化物からなる基材保護層としては、ドライコート方法の場合、そもそも蒸着時の基材劣化を抑制することが目的であるため、薄膜であって、バリア性を有しない非バリア製膜で十分であり、熱付加やイオンボンバードにより、基材表面が分解やエッチングされないように、低出力かつ高速で製膜することが望ましい。具体的には、その膜厚としては、10〜100Åの範囲内、好ましくは20〜80Åの範囲内、より好ましくは30〜60Åの範囲内である。この膜厚が100Åより厚くなると、基材保護層の蒸着による基材ダメージが増加し、本来の目的とする良好な耐蒸着保護膜を形成することが困難になるので好ましくない。一方、10Å未満であると、部分的に基材ポリエステル系樹脂フィルム4の表層が露出するため、基材保護層としての機能を喪失し、その効果を奏することが困難になることから好ましくない。また、ウェットコーティング方法の場合、得られた乾燥塗布膜の成分中の無機化合物の重量比率が10%〜90%の範囲内、特には、20%〜80%の範囲内が好ましい。重量比率が80%を超え、特には90%を超える場合、基材との密着性が著しく低く、凝集破壊やクラックが発生し易く、耐蒸着保護膜を形成することが困難になるので好ましくない。一方、重量比率が20%未満、特には10%未満の場合は、無機酸化物量が十分ではなく、基材保護層としての機能を喪失し、その効果を奏することが困難になることから好ましくない。
【0057】
次に、本発明において基材ポリエステル系樹脂フィルム4の少なくとも一方の面に設ける無機酸化物の蒸着膜2について説明する。かかる無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、物理気相成長法、または、化学気相成長法、あるいは、その両者を併用して、無機酸化物の蒸着膜2の1層からなる単層膜、または、2層以上からなる多層膜若しくは複合膜を形成したものとすることができる。
【0058】
このうち物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成には、例えば、真空蒸着法(抵抗加熱、誘電加熱、EB加熱方式)、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(PVD法)を用いることができる。具体的には、金属の酸化物を原料とし、これを加熱して基材フィルムの上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材ポリエステル系樹脂フィルム4の上に蒸着する酸化反応蒸着法、さらに、酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて、蒸着膜を形成することができる。上記において、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。
【0059】
本発明において、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜2を形成する方法について、その具体例を挙げる。図3は、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。図3に示すように、巻き取り式真空蒸着装置21の真空チャンバー22の中で、巻き出しロール23から繰り出された基材フィルム101は、ガイドロール24,25を介して、冷却したコーティングドラム26に案内される。次いで、冷却したコーティングドラム26上に案内された基材フィルム101の上に、るつぼ27で熱せられた蒸着源28、例えば、金属アルミニウムや酸化アルミニウム等を蒸発させ、さらに、必要に応じて、酸素ガス吹出口29より酸素ガス等を噴出させて、これを供給しながら、マスク30,30を介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を成膜化する。次いで、無機酸化物の蒸着膜が形成された基材フィルム101を、ガイドロール31,32を介して送り出し、巻き取りロール33に巻き取ることによって、本発明に係る物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0060】
なお、本発明においては、上記のような巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず、1層目の無機酸化物の蒸着膜を形成した後、同様にして、この1層目の無機酸化物の蒸着膜の上に、さらに2層目の無機酸化物の蒸着膜を形成するか、または、上記のような巻き取り式真空蒸着装置を用いて、これを2連に連接し、連続的に無機酸化物の蒸着膜を形成することにより、2層以上の多層膜からなる無機酸化物の蒸着膜を形成することも可能である。
【0061】
上記において、無機酸化物の蒸着膜2としては、基本的に金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば使用可能であり、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。中でも好適には、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物として呼ぶことができ、その表記は、例えば、SiO、AlO、MgO等のようにMO(但し、式中、Mは金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲が異なる)で表される。また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0〜2、アルミニウム(Al)は0〜1.5、マグネシウム(Mg)は0〜1、カルシウム(Ca)は0〜1、カリウム(K)は0〜0.5、スズ(Sn)は0〜2、ナトリウム(Na)は0〜0.5、ホウ素(B)は0〜1、5、チタン(Ti)は0〜2、鉛(Pb)は0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は0〜1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な金属であり、透明ではなく全く使用することができない。また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。本発明において、一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しく、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。本発明において、上記のような無機酸化物の蒸着膜の膜厚としては、使用する金属、または金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜4000Åの範囲内、好適には100〜1000Åの範囲内、より好適には300〜800Åの範囲内で任意に選択して形成することができる。また、本発明において無機酸化物の蒸着膜としては、使用する金属または金属の酸化物として、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0062】
次に、化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜について説明する。かかる化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成には、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等を用いることができる。具体的には、樹脂フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、さらに、酸素供給ガスとして酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができ、中でも、高活性の安定したプラズマを得るためには、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
【0063】
上記の低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法について、その一例を示して具体的に説明する。図4は、上記のプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法についての概要を示す低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。図4に示すように、本発明においては、プラズマ化学気相成長装置41の真空チャンバー42内に配置された巻き出しロール43から基材フィルム101を繰り出し、かつ、この基材フィルム101を、補助ロール44を介して所定の速度で冷却・電極ドラム45周面上に搬送する。次いで、ガス供給装置46,47および原料揮発供給装置48等から、酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガス等を供給し、これらからなる蒸着用混合ガス組成物を調整しながら原料供給ノズル49を通して真空チャンバー42内に該蒸着用混合ガス組成物を導入する。そして、上記の冷却・電極ドラム45周面上に搬送された基材フィルム101の上に、グロー放電プラズマ50によってプラズマを発生させ、これを照射して、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成し、製膜化する。なお、この際、冷却・電極ドラム45には、チャンバー外に配置されている電源51から所定の電力が印加されており、また、冷却・電極ドラム45の近傍には、マグネット52が配置されてプラズマの発生が促進されている。次いで、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム101を、補助ロール53を介して巻き取りロール54に巻き取ることで、本発明に係るプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を製造することができる。なお、図中、符号55は真空ポンプを表す。
【0064】
上記の例示は、プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法についてその一例を示すものであり、これにより本発明が限定されるものでないことはいうまでもない。図示はしないが、本発明においては、無機酸化物の蒸着膜として、蒸着膜の1層だけではなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態で用いてもよく、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。また、本発明においては、上記のような低温プラズマ化学気相成長装置を用いて、まず、第1層の無機酸化物の蒸着膜を形成し、次いで、同様にして、この無機酸化物の蒸着膜の上に、さらに無機酸化物の蒸着膜を形成するか、あるいは、上記のような低温プラズマ化学気相成長装置を用いて、これを2連に連接し、連続的に無機酸化物の蒸着膜を形成することにより、2層以上の多層膜からなる無機酸化物の蒸着膜を形成することも可能である。
【0065】
上記においては、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10−1〜1×10−8Torr、好ましくは真空度1×10−3〜1×10−7Torrの範囲内に調整することが望ましい。また、原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガスや不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入するものである。この場合、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は1〜40%程度、酸素ガスの含有量は10〜70%程度、不活性ガスの含有量は10〜60%程度の範囲とすることができ、例えば、有機珪素化合物と酸素ガスと不活性ガスとの混合比を1:1:1〜1:20:10程度とすることができる。一方、冷却・電極ドラムには、電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成され、このグロー放電プラズマは、混合ガス中の1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態において、樹脂フィルムを一定速度で搬送させることで、グロー放電プラズマによって、冷却・電極ドラム周面上の樹脂フィルムの上に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、このときの真空チャンバー内の真空度は、1×10−1〜1×10−4Torr、好ましくは真空度1×10−1〜1×10−2Torrの範囲内に調整することが望ましく、また、樹脂フィルムの搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分に調整することが望ましい。
【0066】
また、上記プラズマ化学気相成長装置において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、樹脂フィルムの上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOの形で薄膜状に形成されるので、これにより形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層となるものであり、従って、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高いものとなり、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができるものとなる。また、本発明においては、プラズマにより樹脂フィルムの表面が清浄化され、樹脂フィルムの表面に極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と樹脂フィルムとの密接着性が高いものとなるという利点を有する。さらに、上記のように、酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1×10−1〜1×10−4Torr、好ましくは1×10−1〜1×10−2Torrの範囲内に調整され、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度である1×10−4〜1×10−5Torrに比較して低真空度であることから、樹脂フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度を安定させやすく、製膜プロセスが安定するものである。
【0067】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が樹脂フィルムの一方の面に密接着して、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiO(但し、Xは0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。また、上記の酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiO(但し、Xは1.3〜1.9の数を表す)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。上記において、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスとのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0068】
また、上記の酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、これに、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または、その2種類以上の元素からなる化合物を少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなる。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、さらに、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。具体例を挙げると、CH部位を持つハイドロカーボン、SiHシリル、SiHシリレン等のハイドロシリカ、SiHOHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類や量等を変化させることができる。本発明において、上記の化合物が、酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%、特には5〜20%程度が望ましい。この含有率が0.1%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性や延展性、柔軟性等が不十分となって、曲げなどにより擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になり、一方、50%を超えると、バリア性が低下するため好ましくないものとなる。さらに、本発明においては、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が、酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましく、これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面においては、上記の化合物等により耐衝撃性等を高めることができ、他方、樹脂フィルムとの界面においては、上記の化合物の含有量が少ないために、樹脂フィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなるという利点を有するものとなる。
【0069】
本発明においては、例えば、X線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy(XPS))、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy(SIMS))等の表面分析装置を用いて、深さ方向にイオンエッチングする等して分析する方法を利用して酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことより、上記のような物性を確認することができる。また、本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜の膜厚としては、前述したように、膜厚50Å〜4000Åの範囲内であることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åの範囲内である。この膜厚が1000Å、さらには4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくなく、また、100Å、さらには50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になることから好ましくない。この膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、この膜厚は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により薄膜の切片を観察することで、直接測定することもできる。より簡便、高速な測定方法として、TEMにより得られた厚みが明確なサンプルを用い、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いてそれらサンプルのSi元素のX線強度を測定し、TEMの実測膜厚から検量線を得ることで、より容易に厚みを測定することができる。また、上記において、上記の酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくすること、すなわち、モノマーガスおよび酸素ガス量を多くする方法や、蒸着する速度を遅くする方法等を挙げることができる。
【0070】
次に、上記において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を使用することができる。本発明において、上記のような有機珪素化合物の中でも、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。また、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0071】
また、本発明において、上記無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法との両者を併用して、異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。この場合、異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、例えば、まず、基材フィルムの上に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、クラックの発生を比較的防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設け、次いで、この無機酸化物の蒸着膜の上に、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上の複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することが望ましい。もちろん、本発明においては、上記とは逆に、基材フィルムの上に、先に、物理気相成長法により無機酸化物の蒸着膜を設け、次いで、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上の複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成してもよい。
【0072】
さらに、本発明の裏面保護シートにおいては、基材ポリエステル系樹脂フィルム4の無機酸化物の蒸着膜2を形成した面上に、さらに、ガスバリア性塗布膜3を順次形成して、水蒸気バリア性を付与する。本発明においては、良好な水蒸気バリア性を付与する上で、無機酸化物の蒸着膜2およびガスバリア性塗布膜3をそれぞれ少なくとも1層形成することが必要である。本発明におけるガスバリア性塗布膜3は、下記一般式、
M(OR
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、ゾル−ゲル法触媒、酸、水および有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法により重縮合して得られるガスバリア性組成物からなるものとすることができる。具体的には、基材ポリエステル系樹脂フィルムの無機酸化物の蒸着膜を形成した面上に、かかるガスバリア性組成物を塗工して塗工膜を設け、その後、20℃〜180℃でかつ上記樹脂フィルムの融点以下の温度にて、10秒〜10分間加熱処理することで、基材ポリエステル系樹脂フィルム4上に無機酸化物の蒸着膜2およびガスバリア性塗布膜3を順次有するガスバリア性積層フィルムを得ることができる。
【0073】
なお、本発明において、上記ガスバリア性塗布膜3としては、上記ガスバリア性組成物を繰り返し塗工して塗工膜を2層以上重層した後、上記と同様に加熱処理することで、上記無機酸化物の蒸着膜の上に2層以上重層した複合ポリマー層として形成してもよい。
【0074】
本発明において、上記一般式で表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができる。また、アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよい。さらに、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用できる。
【0075】
また、上記一般式で表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等を使用することができ、本発明において好ましい金属としては、例えば、ケイ素を挙げることができる。また、本発明において、上記アルコキシドは、単独または2種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使用することも可能である。
【0076】
また、上記一般式で表されるアルコキシドにおいて、Rで表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等のアルキル基を挙げることができる。また、上記一般式で表されるアルコキシドにおいて、Rで表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等を挙げることができる。なお、本発明において、同一分子中のこれらのアルキル基は同一であっても異なってもよい。
【0077】
本発明において、上記一般式で表されるアルコキシドとしては、例えば、MがSiであるアルコキシシランを使用することが好ましい。かかるアルコキシシランとは、一般式Si(ORa)(但し、式中、Raは、低級アルキル基を表す)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。また、上記アルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシランSi(OCH、テトラエトキシシラン Si(OC、テトラプロポキシシランSi(OC、テトラブトキシシラン Si(OC等を挙げることができる。
【0078】
また、本発明において、上記一般式で表されるアルコキシドとしては、例えば、一般式Rb Si(ORc)4−m(但し、式中、nは0以上の整数を表し、mは1、2、3の整数を表し、Rb,Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表す)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。上記アルキルアルコキシシランの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシランCHSi(OCH、メチルトリエトキシシランCHSi(OC、ジメチルジメトキシシラン(CHSi(OCH、ジメチルジエトキシシラン(CHSi(OC等を使用することができる。上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独または2種以上を混合しても用いることができる。また、本発明において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン等を使用することができる。
【0079】
さらに、本発明において、上記一般式で表されるアルコキシドとしては、例えば、MがZrであるジルコニウムアルコキシドを使用することができる。かかるジルコニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH、テトラエトキシジルコニウムZr(OC、テトラiプロポキシジルコニウムZr(isO−OC、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC等を使用することができる。
【0080】
さらにまた、本発明において、上記一般式で表されるアルコキシドとしては、例えば、MがTiであるチタニウムアルコキシドを使用することができる。上記のチタニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH、テトラエトキシチタニウムTi(OC、テトライソプロポキシチタニウムTi(isO−OC、テトラnブトキシチタニウムTi(OC等を使用することができる。
【0081】
さらにまた、本発明において、上記一般式で表されるアルコキシドとしては、例えば、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができる。上記のアルミニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH、テトラエトキシアルミニウムAl(OC、テトライソプロポキシアルミニウムAl(isO−OC、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC等を使用することができる。
【0082】
なお、本発明においては、上記のようなアルコキシドは、その2種以上を混合して用いることもできる。本発明においては特に、アルコキシシランとジルコニウムアルコキシドとを混合して用いることによって、得られるガスバリア性積層フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができる。この場合、ジルコニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲であり、好ましくは、5質量部程度である。この使用量が10質量部を超えると、形成されるガスバリア性塗布膜がゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、樹脂フィルムを被覆した際にガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向となる。
【0083】
また、本発明においては特に、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドとを混合して用いることにより、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、ガスバリア性積層フィルムの耐熱性が著しく向上するという利点がある。この場合、チタニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲であり、好ましくは、3質量部程度である。この使用量が5質量部を超えると、形成されるガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際に、ガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向となる。
【0084】
次に、上記ガスバリア性塗布膜を形成するポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性塗布膜のガスバリア性、耐水性、耐候性等の物性を著しく向上させることができる。特に、本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することにより、上記のガスバリア性、耐水性および耐候性等の物性に加えて、耐熱水性および熱水処理後のガスバリア性等に著しく優れたガスバリア性塗布膜を形成することができるものである。
【0085】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、重量比で、ポリビニルアルコール系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6程度であることが好ましく、特には、約10:1の配合割合で使用することがより好ましい。
【0086】
また、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記アルコキシドの合計量100質量部に対して5〜500質量部の範囲であり、好ましくは、約20〜200質量部の配合割合でガスバリア性組成物を調製することが好ましい。この含有量が500質量部を超えると、ガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、得られるガスバリア性積層フィルムの耐水性および耐候性等が低下する傾向にあることから好ましくなく、一方、5質量部を下回るとガスバリア性が低下することから好ましくない。
【0087】
本発明において、上記ポリビニルアルコール系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。このポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、または、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。かかるポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)等を挙げることができる。
【0088】
また、本発明において、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。具体的には、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物までを含み、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。また、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下、「エチレン含量」ともいう)は、通常0〜50モル%、好ましくは20〜45モル%であるものを使用する。かかるエチレン・ビニルアルコール共重合体の具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を挙げることができる。
【0089】
次に、上記ガスバリア性組成物を調製するに際しては、上記各成分に加えて、例えば、シランカップリング剤等も添加することができるものである。かかるシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。中でも、本発明においては特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、または、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。これらシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。本発明において、シランカップリング剤の使用量は、好適には、アルコキシシラン100質量部に対して1〜20質量部の範囲内である。シランカップリング剤の使用量が20質量部を超えると、形成されるガスバリア性塗布膜の剛性および脆性が大きくなり、また、ガスバリア性塗布膜の絶縁性および加工性が低下する傾向にあることから好ましくない。
【0090】
次に、上記のガスバリア性組成物において用いられるゾル−ゲル法触媒、主として、重縮合触媒としては、水に実質的に不溶であり、かつ、有機溶媒に可溶な第三アミンが用いられる。具体的には、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等を使用することができる。本発明においては、特に、N,N−ジメチルべンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01〜1.0質量部、好ましくは0.03質量部程度を使用することが好ましい。
【0091】
また、上記のガスバリア性組成物において用いられる酸は、上記ゾル−ゲル法の触媒、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。かかる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、および、酢酸、酒石酸などの有機酸等を使用することができる。かかる酸の使用量としては、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えば、シリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モル、特には約0.01モル程度を使用することが好ましい。
【0092】
さらに、上記のガスバリア性組成物においては、上記アルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは0.8〜2モルの割合の水を用いることができる。水の量が2モルを超えると、上記のアルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、さらに、この球状粒子同士が3次元的に架橋して、密度の低い多孔性のポリマーとなるが、そのような多孔性のポリマーは、ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性を改善することができなくなることから好ましくない。また、水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる傾向にあることから好ましくない。
【0093】
さらにまた、上記ガスバリア性組成物において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等を用いることができる。上記のガスバリア性組成物において、ポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態であることが好ましく、そのため上記の有機溶媒の種類が適宜選択されるものである。ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合には、有機溶媒として、n−ブタノールを使用することが好ましい。本発明において、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体は、例えば、ソアノール(商品名)として市販されているものを使用することができる。上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾル−ゲル法触媒の合計量100質量部当り30〜500質量部の範囲内である。
【0094】
本発明に係るガスバリア性塗布膜は、具体的には例えば、以下のようにして製造される。まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合してガスバリア性組成物(塗工液)を調製する。この際、上記のガスバリア性組成物(塗工液)中では、次第に重縮合反応が進行する。
【0095】
次いで、樹脂フィルムの一方の面に形成した無機酸化物の蒸着膜の上に、常法により、上記のガスバリア性組成物(塗工液)を通常の方法で塗布し、乾燥させる。この乾燥により、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤、および、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体等の重縮合が進行し、塗工膜が形成される。さらに、所望に応じ、上記の塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗工膜を積層する。
【0096】
最後に、上記の塗工液を塗布した樹脂フィルムを、20℃〜180℃でかつ樹脂フィルムの融点以下の温度、好ましくは、約50℃〜160℃位の範囲内の温度で、10秒〜10分間加熱処理して、基材フィルムの一方の面に形成した無機酸化物の蒸着膜の上に、上記のガスバリア性組成物(塗工液)によるガスバリア性塗布膜を1層ないし2層以上形成する。このようにして得られた本発明に係るガスバリア性塗布膜は、ガスバリア性に優れているものである。
【0097】
なお、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂の代わりに、エチレン・ビニルアルコール共重合体、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者を用いて、上記と同様に、塗工、乾燥および加熱処理を行うことにより製造される本発明に係るガスバリア性塗布膜は、ボイル処理、レトルト処理等の熱水処理後のガスバリア性がさらに向上するという利点を有するものである。
【0098】
さらに、本発明においては、上記のようにエチレン・ビニルアルコール共重合体、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との組み合わせを使用しない場合、すなわち、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用して、本発明に係るガスバリア性塗布膜を製造する場合には、熱水処理後のガスバリア性を向上させるために、例えば、あらかじめ、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗工層を形成し、次いで、その塗工層の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗工層を形成し、それらの複合層を形成することにより、本発明に係るガスバリア性塗布膜のガスバリア性を向上させることも可能である。
【0099】
さらにまた、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により形成される塗工層、または、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて含有するガスバリア性組成物により形成される塗工層を、複数層重層して形成することによっても、本発明に係るガスバリア性塗布膜のガスバリア性の向上に有効な手段となる。
【0100】
次に、本発明に係るガスバリア性塗布膜の製造法について、アルコキシドとして、アルコキシシランをする場合を事例としてその作用を説明する。まず、アルコキシシランおよび金属アルコキシドは、添加された水によって、加水分解される。その際、酸が加水分解の触媒となる。次いで、ゾル−ゲル法触媒の働きによって、生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。このとき、酸触媒により同時にシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となる。また、塩基触媒の働きにより、エポキシ基の開環も起こり、水酸基が生じる。加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシドとの重縮合反応も進行する。さらに、反応系にはポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が有する水酸基との反応も生じる。生成する重縮合物は、例えば、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti等の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤に起因する有機部分とを含有する複合ポリマーを構成する。
【0101】
上記の反応においては、例えば、下記式(III)で示される部分構造式を有し、さらに、シランカップリング剤に起因する部分を有する直鎖状のポリマーがまず生成する。このポリマーは、OR基(エトキシ基などのアルコキシ基)を、直鎖状のポリマーから分岐した形で有する。このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾル−ゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより、まず、OH基が脱プロトン化し、次いで、重縮合が進行する。すなわち、このOH基が、下記の式(I)で示されるポリビニルアルコール系樹脂、または、下記の式(II)で示されるエチレン・ビニルアルコール共重合体と重縮合反応し、Si−O−Si結合を有する、例えば、下記の式(IV)で示される複合ポリマー、または、下記の式(V)および(VI)で示される共重合した複合ポリマーが生ずると考えられる。
【0102】

【0103】

【0104】

【0105】

【0106】

【0107】

【0108】
上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物(塗工液)は、調製中に粘度が増加する。このガスバリア性組成物(塗工液)を、樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、重縮合反応が完結し、基材フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の上に透明な塗工層が形成される。この塗工層を複数層積層する場合には、層間の塗工層中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。さらに、シランカップリング剤の有機反応性基や、加水分解によって生じた水酸基が樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の表面の水酸基等と結合するため、樹脂フィルムの一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の表面と、塗工層との密着性、接着性等も良好なものとなる。
【0109】
上記方法においては、添加される水の量が、アルコキシド類1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは1.5モルに調節されているため、上記の直鎖状のポリマーが形成される。このような直鎖状ポリマーは、結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため、良好なガスバリア性を示す。
【0110】
本発明においては、無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成し、無機酸化物の蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得るものである。上記の本発明のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が0.01〜30μm、好ましくは0.1〜10μmの塗工膜を形成することができ、さらに、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。また、必要に応じて、本発明のガスバリア性組成物を塗布する際に、あらかじめ、無機酸化物の蒸着膜の上に、プライマー剤等を塗布することもでき、また、コロナ放電処理あるいはプラズマ処理等の前処理を任意に施すこともできる。
【0111】
本発明において、無機酸化物の蒸着膜2を設けた基材ポリエステル系樹脂フィルム4は、重層して設けることもできる。この場合、一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設けた樹脂フィルムにおいて、無機酸化物の蒸着膜を設けた面同士、無機酸化物の蒸着膜を設けない面同士、または、無機酸化物の蒸着膜を設けた面と無機酸化物の蒸着膜を設けない面とのいずれの組み合わせで対向させて重層させてもよい。また、その重層方式としては、後述するラミネート用接着剤層を介して積層するドライラミネート積層方式、あるいは、アンカーコート剤等による接着助剤層、溶融押出樹脂層等を介して積層する溶融押出積層方式等のいずれの積層方式を用いてもよい。さらに、本発明においては、例えば、上記のドライラミネート積層方式と、溶融押出積層方式とを組み合わせて、裏面保護シートを製造することもできる。この場合、無機酸化物の蒸着膜の表面には、その積層の密接着性を向上させるために、例えば、プラズマ処理、コロナ処理等の前処理、あるいは、プライマー剤層や所望の樹脂層等を任意に設けることも可能である。
【0112】
また、本発明において、無機酸化物の蒸着膜2を設けた基材ポリエステル系樹脂フィルム4を重層するに際しては、間に強靱性樹脂フィルムを介在させてもよい。無機酸化物の蒸着膜を設けた樹脂フィルムの2層以上を強靱性樹脂フィルムを介して重層するには、上記と同様に、上記のラミネート用接着剤層を介して積層するドライラミネート積層方式、あるいは、アンカーコート剤等による接着助剤層、溶融押出樹脂層等を介して積層する溶融押出積層方式等のいずれの積層方式を用いてもよく、また、その重層に際しては、無機酸化物の蒸着膜を設けた面、設けない面、および、強靱性樹脂フィルムの面のいずれを組み合わせて対向させて重層させてもよいものである。
【0113】
上記強靱性樹脂フィルムとしては、太陽電池モジュール自身の強度、剛性、腰等を保持し、かつ、太陽電池モジュール等に水分等が浸入して生じる加水分解による強度劣化、あるいは、太陽電池モジュールを構成する充填剤層等が分解して発生する酢酸ビニル系ガス等の脱ガスによる強度劣化等を防止するものであることから、機械的、物理的、化学的等において優れた性質を有し、特に、強度に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防湿性等の諸特性に優れ、特に、水分や酸素等の侵入を防止する防湿性を著しく向上させ、その長期的な性能劣化を最小限に抑え、加水分解劣化等を防止し、極めて耐久性に富み、その保護能力性に優れている強靱性な樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。具体的には例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂等の強靱な樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。また、上記の樹脂のフィルムないしシートとしては、未延伸フィルム、あるいは一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。中でも、本発明において好適には、強靱性樹脂フィルムとして、2延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリプロピレン系樹脂フィルムを用いる。また、本発明において、強靱性樹脂フィルムの厚さとしては、強度、剛性、腰等を保持するに必要な最低限の厚さであればよく、厚すぎると、コストを上昇するとい欠点もあり、逆に、薄すぎると、強度、剛性、腰等が低下して好ましくないものである。本発明においては、上記のような理由から、厚さ10μm〜200μmの範囲内、特には30μm〜100μmの範囲内が最も好ましい。
【0114】
(合成樹脂フィルム)
次に、本発明に用いる合成樹脂フィルム5としては、好適には、耐候性に優れ安価であるオレフィン系樹脂、例えば、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を主成分とする樹脂フィルムを用いることができ、より好適には、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂フィルムを用いる。
【0115】
かかるポリプロピレン系樹脂としては、石油系炭化水素の熱分解によりエチレンを製造する際に生成する副生成物であるプロピレンの単独重合体、あるいは、プロピレンとα−オレフィン、その他等の他のモノマーとの共重合体を使用することができる。また、本発明において、ポリプロピレン系樹脂としては、具体的には、プロピレンを重合する際に、カチオン重合触媒等を用いる場合には、低分子量のポリマーが得られるが、重合する際に、チーグラー・ナッタ触媒を用いる場合には、高分子量、高結晶度のアイソタクチック重合体を得ることができ、このアイソタクチック重合体を使用することが好ましい。かかるアイソタクチック重合体は、融点164〜170℃程度、比重0.90〜0.91程度、分子量10万〜20万程度であり、その結晶性により性質は大きく支配されるが、アイソタクチックの高いポリマーは、引っ張り強さおよび衝撃強度に優れ、耐熱性および耐屈曲疲労強度が良好であり、かつ、加工性は極めて良好なものである。
【0116】
また、本発明において、合成樹脂フィルム5に上記ポリプロピレン系樹脂を用いる場合には、必要に応じて、ポリプロピレン系樹脂に、例えば、ポリエチレン系樹脂等のポリプロピレン系樹脂と相溶性を有する樹脂を任意に添加して、改質して用いてもよい。本発明においては、このような改質ポリプロピレン系樹脂を使用することにより、太陽電池モジュールを製造する際に、充填剤層等との密接着性に優れ、さらに、水分や酸素等の侵入を防止する防湿性を著しく向上させ、その長期的な性能劣化を最小限に抑え、特に、加水分解劣化等を防止し、極めて耐久性に富み、その保護能力性に優れ、かつ、より低コストで安全な太陽電池モジュールを構成することができるものである。また、特に、合成樹脂フィルムとして、着色剤を添加しない透明ポリプロピレン系樹脂フィルムを用いる場合には、折れ曲がりにより白化しにくいポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0117】
本発明において、合成樹脂フィルム5は、少なくとも1層にて設ける必要があり、2層以上としてもよい。なお、合成樹脂フィルム5を2層以上で設ける場合には、光線反射率の低下抑制および機械強度の維持という2つの効果を得るために、ルチル型酸化チタンは、裏面保護シートの一方の表面をなす外側の合成樹脂フィルム中に含有させることが必要である。合成樹脂フィルム5が2層以上である場合に、内側の合成樹脂フィルムにルチル型酸化チタンを含有させても、本発明による光線反射率の低下抑制効果は極めて小さいものとなってしまう。一方、同様に合成樹脂フィルム5が2層以上である場合に、紫外線による機械強度の低下抑制に重点を置く場合には、内側の合成樹脂フィルムにルチル型酸化チタンを含有させてもよい。
【0118】
また、合成樹脂フィルム5の総厚みとしては、80〜300μmの範囲内とすることが好ましい。本発明においては、この合成樹脂フィルム5の総厚みを厚くして絶縁性を向上させることで、一般に高価である透明ポリエステル系樹脂フィルム1の厚みを薄くすることができ、これにより、コストの低減を図ることができる。特に、合成樹脂フィルム5を2層にて設ける場合には、各フィルムの厚みを40〜150μmの範囲内とすることが好ましい。
【0119】
なお、ルチル型酸化チタンは白色顔料でもあるため、本発明において、合成樹脂フィルム5にルチル型酸化チタンを含有させれば、当該合成樹脂フィルムは白色に着色される。合成樹脂フィルム5にルチル型酸化チタンを配合しない場合には、かかる合成樹脂フィルム5は、上記樹脂を主成分とし、これに、光反射剤、光拡散剤または光吸収剤、装飾性剤等の作用を有する他の着色用添加剤の1種ないし2種以上等を適宜添加して構成することもできる。
【0120】
かかる他の着色用添加剤としては、例えば、白色化剤、黒色化剤等の無彩色系の着色剤、あるいは、赤、橙、黄、緑、青、紫、その他等の有彩色系等の種々の染料・顔料等の着色剤の1種ないし2種以上を使用することができる。
【0121】
このうち白色化剤としては、太陽電池モジュールにおいて透過した太陽光を光反射あるいは光拡散させて効率よく光を再利用するために光反射性、光拡散性等を付与することを目的として添加するものであり、さらに、太陽電池モジュールに意匠性、装飾性等を付与し、太陽電池モジュールを屋根等に設置した場合には、照り返す太陽光等を光反射あるいは光拡散させるという作用効果をも奏する。かかる白色化剤としては、例えば、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性けい酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、三酸化アンチモン、アナターゼ型酸化チタン等の白色顔料の1種ないし2種以上を使用することができる。その使用量としては、合成樹脂フィルム5を構成する樹脂組成物において、0.1〜30質量%の範囲内、好ましくは0.5〜10質量%の範囲内である。なお、本発明においては、白色化剤と後述する黒色化剤とを混合した灰色系の無彩色系染料・顔料等も使用することができる。
【0122】
黒色化剤は、太陽電池モジュールを、例えば、屋根等に設置する場合に、その周囲の環境に合う意匠性や装飾性等を付与するとの作用効果を奏するものであり、例えば、カーボンブラック(チャンネルまたはファーネス)、黒色酸化鉄等の黒色顔料の1種ないし2種以上を使用することができる。本発明において、黒色化剤により形成される黒色層としては、茶色系あるいは褐色系の黒色層、灰色系の黒色層等の黒色味を帯びたいずれの黒色層でもよい。上記において、黒色化剤の使用量としては、合成樹脂フィルム5を構成する樹脂組成物において、0.1〜30質量%の範囲内、好ましくは0.5〜10質量%の範囲内である。
【0123】
また、赤、橙、黄、緑、青、紫等の有彩色系の染料・顔料等の着色剤は、太陽電池モジュールを、例えば、屋根等に設置する場合に、その周囲の環境に合う意匠性や装飾性等を付与するという作用効果を奏するものであり、例えば、アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系等の有機系の染料・顔料等の着色剤、または、紺青、クロムバーミリオン、ベンガラ等の無機系の顔料等の着色剤等を使用することができる。なお、本発明においては、上記のような有彩色系の着色用添加剤の中でも、特に、青色系の青色化剤を使用することが好ましい。上記において、その使用量としては、合成樹脂フィルム5を構成する樹脂組成物において、0.1〜30質量%の範囲内、好ましくは0.5〜10質量%の範囲内である。
【0124】
また、合成樹脂フィルム5には、紫外線吸収剤の1種ないし2種以上、および、光安定化剤の1種ないし2種以上を配合することが好ましい。このうち紫外線吸収剤としては、透明ポリエステル系樹脂フィルム1におけると同様のものを用いることができ、その添加量としては、合成樹脂フィルムを構成する樹脂組成物において、0.1〜10質量%の範囲内、好ましくは0.3〜10質量%の範囲内とすることができる。光安定化剤としては、高分子中の光劣化開始源である励起された活性種を捕捉し、光劣化を防止するものであり、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダートピペリジン系化合物等の1種ないし2種以上を使用することができる。その使用量としては、合成樹脂フィルムを構成する樹脂組成物において、0.1〜10質量%の範囲内、好ましくは0.3〜10質量%の範囲内とすることができる。
【0125】
さらに、合成樹脂フィルム5には、所望に応じて、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、架橋剤、硬化剤、充填剤、滑剤、強化剤、補強剤、難燃剤、耐炎剤、発泡剤、防カビ剤等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加することができる。本発明においては、上記の中でも特に、難燃剤を使用することが好ましい。難燃剤は、有機系と無機系とに大きく分けられ、有機系としては、例えば、リン系、リン+ハロゲン系、塩素系、ブロム系の難燃剤、また、無機系としては、例えば、水酸化アルミニウム、アンチモン系、水酸化マグネシウム、グアニジン系、ジルコニウム系、ホウ酸亜鉛等の難燃剤を使用することができ、その1種ないし2種以上を任意に添加することにより、難燃性を付与することができる。なお、かかる合成樹脂フィルム5には、太陽電池モジュールを構成するにあたり、充填剤層との密着性を十分確保できることが必要である。
【0126】
本発明に係る合成樹脂フィルム5は、上記樹脂成分に、所望に応じ各種添加剤を配合して、さらに、溶剤、希釈剤等を添加し、十分に混練して調製される樹脂組成物により形成される。
【0127】
具体的には、本発明においては、上記樹脂組成物を用いて、例えば、押出機、Tダイ押出機、キャスト成形機、インフレーション成形機等を使用し、押出法、Tダイ押出法、キャスト成形法、インフレーション法等のフィルム成形法により、樹脂フィルムないしシートを製造することができ、さらに、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸して、所望の合成樹脂フィルム5を得ることができる。なお、本発明においては、例えば、上記で調製した樹脂組成物として、着色用添加剤等を添加したものとしないものとを用いて、Tダイ共押出法あるいはインフレーション共押出法等により共押出することで、適宜構成の多層積層樹脂フィルムを製造することも可能である。
【0128】
なお、本発明において、着色用添加剤等を含む合成樹脂フィルム5は、例えば、以下のように製造することもできる。まず、通常の塗料用ないしインキ用ビヒクルを主成分として、これに、着色用添加剤の1種ないし2種以上と、所望に応じ、他の添加剤の1種ないし2種以上とを添加し、さらに、溶剤、希釈剤等を添加して、十分に混練することで、塗料ないしインキ組成物を調製する。次いで、この塗料ないしインキ組成物を、耐熱性を有する合成樹脂フィルムの表面に、通常のコーティング法あるいは印刷法等を用いて塗布ないし印刷することで、表面に着色用添加剤等を含む塗布膜あるいは印刷膜を有する合成樹脂フィルムを製造することができる。なお、この場合、着色用添加剤等は、あらかじめ耐熱性を有する合成樹脂フィルムの中に練り込み加工してある場合には、必ずしも、塗料ないしインキ組成物中に添加しなくてもよいものである。
【0129】
また、本発明において、着色用添加剤等を含む合成樹脂フィルム5は、以下のように製造することもできる。まず、塗料用ないしインキ用ビヒクルを主成分として、耐熱性の合成樹脂の1種ないし2種以上を混合し、これに、着色用添加剤の1種ないし2種以上と、所望に応じ、他の添加剤の1種ないし2種以上とを添加し、さらに、溶剤、希釈剤等を添加して、十分に混練することで、塗料ないしインキ組成物を調製する。次いで、この塗料ないしインキ組成物を、前述の無機酸化物の蒸着膜を設けた樹脂フィルムの表面に、例えば、通常のコーティング法あるいは印刷法等を用いて、直接塗布ないし印刷することで、表面に着色用添加剤等を含む耐熱性の合成樹脂からなる塗布膜あるいは印刷膜を形成することができる。
【0130】
なお、本発明において、合成樹脂フィルム5に、後述するドライラミネートによる積層を行う場合には、その表面に、あらかじめ、コロナ放電処理、オゾン処理、あるいは、プラズマ放電処理等の表面改質前処理を任意に施すことができる。
【0131】
(積層)
本発明において、透明ポリエステル系樹脂フィルム1、基材ポリエステル系樹脂フィルム4および1層以上の合成樹脂フィルム5を積層するにあたっては、例えば、ラミネート用接着剤層を介して、ドライラミネート積層するか、または、アンカーコート剤層、溶融押出樹脂層等を介して溶融押出積層する手法を用いることができる。また、前述したように、合成樹脂フィルム5としてのポリプロピレン系樹脂フィルムについては、ポリプロピレン系樹脂組成物を押出機等を使用して溶融押出しし、無機酸化物の蒸着膜を設けた樹脂フィルムの面上に、例えば、アンカーコート剤等による接着助剤層等を介して、あるいは介さず直接に、溶融押出積層することもできる。
【0132】
このうち、ドライラミネート積層方式において、ラミネート用接着剤層に用いる接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等からなるポリオレフィン系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリカーボネート系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等の各種接着剤を使用することができる。これら接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、さらに、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。これら接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施すことができ、そのコーティング量としては、0.1〜10g/m(乾燥状態)の範囲内が望ましい。
【0133】
本発明においては、上記の接着剤のうちでも、特に、ポリウレタン系接着剤、ポリカーボネート系接着剤、若しくはこれらの混合された接着剤を使用することが、これら材料が耐加水分解性に優れているとともに、本用途で求められる高耐寒性に適した材料であることから好ましい。また、本発明において、上記のラミネート用接着剤としては、高耐熱性、耐湿熱性等に対応するために、接着剤を構成するビヒクルの主成分としての樹脂等が、架橋ないし硬化して三次元網目状の架橋構造等を形成し得るものを使用することが望ましい。具体的には、上記のラミネート用接着剤層を構成する接着剤が、硬化剤または架橋剤の存在下、熱または光等からなる反応エネルギーにより架橋構造を形成することが好ましいものである。例えば、本発明においては、ラミネート用接着剤層を構成する接着剤が、例えば、脂肪族系・脂環系イソシアネート、または、芳香族系イソシアネート等のイソシアネート系の硬化剤または架橋剤の存在下、熱、または光からなる反応エネルギーにより架橋構造を形成することで、耐熱性、耐湿熱性等に優れた太陽電池モジュール用裏面保護シートを製造し得るものである。上記において、脂肪族系イソシアネートとしては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、脂環系イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、芳香族系イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等を使用することができる。
【0134】
本発明において、ラミネート用接着剤としては、より好適には、ポリエステルポリウレタンを主成分とし、イソシアネートおよびシランカップリング剤が添加されてなる接着剤であって、シランカップリング剤の添加量が、通常のラミネート用接着剤に比し多く、具体的には、主成分に対し3〜8質量%である接着剤を用いる。
【0135】
上記の接着剤中には、紫外線劣化等を防止するために、前述の紫外線吸収剤あるいは光安定化剤を添加することができる。かかる紫外線吸収剤あるいは光安定化剤としては、前述の紫外線吸収剤の1種ないしそれ以上、あるいは、光安定化剤の1種ないしそれ以上を同様に使用することができる。その使用量としては、その粒子形状、密度等によって異なるが、0.1〜10質量%の範囲内が好ましい。
【0136】
また、上記の溶融押出積層方式においては、より強固な接着強度を得るために、例えば、アンカーコート剤等の接着助剤等を使用し、そのアンカーコート剤層を介して、積層を行うことができる。かかるアンカーコート剤としては、例えば、アルキルチタネート等の有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリプタジエン系等の水性ないし油性の各種のアンカーコート剤を使用することができる。上記のアンカーコート剤は、例えば、ロールコート、グラビアロールコート、キスコート等のコーティング法を用いてコーティングすることができ、そのコーティング量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)の範囲内が好ましい。
【0137】
さらに、上記の溶融押出積層方式において、溶融押出樹脂層を構成する溶融押出樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等の樹脂を使用することができる。その溶融押出樹脂層の膜厚としては、5〜100μmの範囲内、好ましくは10〜50μmの範囲内である。
【0138】
なお、本発明においては、無機酸化物の蒸着膜2を設けた基材ポリエステル系樹脂フィルム4と、合成樹脂フィルム5との密接着性を改善するために、あらかじめプライマーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。かかるプライマーコート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。このプライマーコート剤層は、例えば、ロールコート、グラビアロールコート、キスコート等のコーティング法を用いてコーティングすることにより形成することができ、そのコーティング量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)の範囲内とすることが好ましい。
【0139】
また、本発明において、無機酸化物の蒸着膜2を設けた基材ポリエステル系樹脂フィルム4の2層以上を、所望に応じ強靱性樹脂フィルムを介して重層する場合、および、2層以上の合成樹脂フィルム5を積層する場合には、前述と同様に、ラミネート用接着剤層等を介してドライラミネート積層するドライラミネート積層方式、あるいは、アンカーコート剤層、溶融押出樹脂層等を介して溶融押出積層する溶融押出積層方式等の方式を用いて、同様に積層を行うことができる。ここで、上記ドライラミネート積層方式または溶融押出積層方式等を用いる場合には、前述のラミネート用接着剤、アンカーコート剤、溶融押出樹脂、プライマーコート剤等を同様に使用することができる。
【0140】
(太陽電池モジュール)
図2に、本発明の一例の太陽電池モジュールの模式的断面図を示す。図示するように、本発明の太陽電池モジュール100は、表面保護シート11、充填剤層12、太陽電池素子13、充填剤層14、および、裏面保護シート15が順次積層されてなるものであり、裏面保護シート15として上記本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを用い、充填剤層14と、透明ポリエステル系樹脂フィルム1とは反対側の面、すなわち、合成樹脂フィルム5とが対向するよう積層されてなる。これにより、太陽電池モジュールの製造時におけるデラミネーションの発生を防止して、生産性を向上することができるとともに、コスト性にも優れるものとすることができる。
【0141】
本発明の太陽電池モジュールにおいては、裏面保護シート以外の構成については特に制限されるものではなく、常法に従い適宜構成することができる。また、太陽電池モジュールの層構成についても、特に制限されるものではなく、公知の構成に、太陽光の吸収性や補強等の目的のもとに、さらに、他の層を任意に加えて積層することができるものである。
【0142】
本発明の太陽電池モジュール100を構成する太陽電池モジュール用表面保護シート11としては、太陽光の透過性、絶縁性等を有し、耐候性、耐熱性、耐光性、耐水性、耐風圧性、耐降雹性、耐薬品性、防湿性、防汚性等の諸特性を有し、物理的あるいは化学的強度性、強靱性等に優れ、極めて耐久性に富み、さらに、光起電力素子としての太陽電池素子の保護という点から、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていることが必要である。かかる表面保護シートとしては、具体的には、例えば、公知のガラス板等は勿論のこと、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種の樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。上記の樹脂のフィルムないしシートとしては、例えば、2軸延伸した樹脂のフィルムないしシートも使用することができる。また、上記の樹脂のフィルムないしシートの膜厚としては、好適には12〜200μmの範囲内、より好適には25〜150μmの範囲内とする。
【0143】
また、本発明の太陽電池モジュール100において、表面保護シート11と太陽電池素子13との間に配置される充填剤層12としては、太陽光が入射し、これを透過して吸収することから透明性を有することが必要であり、また、表面保護シート11との接着性を有することも必要であり、さらに、光起電力素子としての太陽電池素子の表面の平滑性を保持する機能を果たすために熱可塑性を有すること、および、光起電力素子としての太陽電池素子の保護という点から、耐スクラッチ性や衝撃吸収性等に優れていることが必要である。具体的には例えば、フッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸、または、メタクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。なお、本発明において充填剤層12を構成する樹脂には、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性等を向上させるために、その透明性を損なわない範囲で、例えば、架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤等の添加剤を任意に添加、混合することができる。中でも、本発明において、太陽光の入射側の充填剤層については、耐光性、耐熱性、耐水性等の耐候性を考慮すると、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂を用いることが好ましい。充填剤層12の厚さとしては、200〜1000μmの範囲内が好ましく、より好ましくは350〜600μmの範囲内である。
【0144】
さらに、本発明において、太陽電池モジュール100を構成する光起電力素子としての太陽電池素子13としては、従来公知のもの、例えば、単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電子素子、シングル接合型あるいはタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電子素子、カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe)等のII−VI族化合物半導体太陽電子素子、有機太陽電池素子等を使用することができる。さらに、薄膜多結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜微結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜結晶シリコン太陽電池素子とアモルファスシリコン太陽電池素子とのハイブリット素子等も使用することができる。特には、本発明において、太陽電池素子としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板等の基板の上に、pn接合構造等の結晶シリコン、p−i−n接合構造等のアモルファスシリコン、化合物半導体等の起電力部分が形成されて太陽電池素子を構成するものが好適である。
【0145】
さらにまた、本発明の太陽電池モジュール100において、太陽電池素子13と裏面保護シート15との間に配置される充填剤層14としては、上記表充填剤層12と同様に、裏面保護シート15との接着性を有することも必要であり、また、光起電力素子としての太陽電池素子の裏面の平滑性を保持する機能を果たすために熱可塑性を有すること、および、光起電力素子としての太陽電池素子の保護という点から、耐スクラッチ性や衝撃吸収性等に優れていることが必要である。但し、この充填剤層14については、上記充填剤層12とは異なり、必ずしも透明性を有することは必要としない。具体的には、かかる充填剤層14としては、前述の充填剤層12と同様に、例えば、フッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸、または、メタクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレンフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。なお、本発明において、充填剤層14を構成する樹脂には、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性等を向上させるために、例えば、架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤等の添加剤を任意に添加し、混合することができる。充填剤層14の厚さとしては、200〜1000μmの範囲内が好ましく、より好ましくは350〜600μmの範囲内である。
【0146】
なお、本発明の太陽電池モジュールを製造する際には、その強度、耐候性、耐スクラッチ性等の諸堅牢性を向上させるために、その他の素材、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース等の公知の樹脂のフィルムないしシートから任意に選択して使用することができる。本発明において、上記のフィルムないしシートは、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれのものでも使用することができる。また、その厚さは、任意であるが、数μm〜300μmの範囲から選択して使用することが好ましい。さらに、本発明においてフィルムないしシートとしては、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
【0147】
次に、本発明において、上記のような材料を使用して太陽電池モジュールを製造する方法としては、公知の方法を用いることができ、特に制限されない。例えば、まず、上記の太陽電池モジュール用表面保護シートと、充填剤層と、光起電力素子としての太陽電池素子と、充填剤層とを順次積層し、さらに、上記本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを、上記充填剤層にその合成樹脂フィルムの面を対向させて積層して、所望に応じ、各層間に、その他の素材を任意に積層する。次いで、これらを真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネーション法等の通常の成形法を利用し、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形することで、太陽電池モジュールを製造することができる。上記においては、必要に応じて、各層間の接着性等を高めるために、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂等の樹脂をビヒクルの主成分とする加熱溶融型接着剤、溶剤型接着剤、光硬化型接着剤等を使用することができる。
【0148】
また、上記の積層において、各積層対向面には、密接着性を向上させるために、必要に応じて、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の前処理を任意に施すことができる。さらに、上記の積層においては、各積層対向面に、あらかじめ、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、接着剤層、あるいは、アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面前処理を行うこともできる。上記前処理のコート剤層としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。また、上記において、コート剤層の形成法としては、例えば、溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型等のコート剤を使用し、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法等のコート法を用いてコートすることができる。
【0149】
さらに、本発明においては、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの合成樹脂フィルム面に、上記の充填剤層を積層して、あらかじめ、裏面保護シートと充填剤層とが積層した積層体を製造し、その後、この積層体を構成する充填剤層側の面に、光起電力素子としての太陽電池素子、充填剤層および表面保護シートを順次積層し、さらに、必要に応じ、その他の素材を任意に積層して、これらを真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネーション法等の通常の成形法を利用し、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池モジュールを製造することもできる。
【実施例】
【0150】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
<実施例1>
基材フィルムとして、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ(株)製,PET#12)を使用し、これを、プラズマ化学気相成長装置の巻き出しロールに装着し、次いで、ライン速度150mm/minで搬送し、グロー放電プラズマ発生装置を使用して、アルゴンガス0.1Pa・m/secを導入し、出力5kWでプラズマ処理を行って、上記基材フィルムに、不活性ガスによるプラズマ処理面を形成した。次いで、そのプラズマ処理面に、下記に示す条件により、厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
【0151】
(蒸着条件)
反応ガス混合比;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=0.2:0.85:0.42(単位:Pa・m/sec)
到達圧力;5.0×10−5mbar
製膜圧力;3.0×10−2mbar
ライン速度;50m/min
パワー;15kW
【0152】
次に、上記で厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kW、酸素ガス(O):アルゴンガス(Ar)=1.18:0.42(単位:Pa・m/sec)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10−2mbar、処理速度150m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。
【0153】
他方、下記の表1に示す組成に従って、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH,日本合成化学(株)製、商品名:ソアノールD2908、エチレン共重合比率29%)をイソプロピルアルコールおよびイオン交換水の混合溶媒にて溶解したEVOH溶液(組成a.)に、あらかじめ調製したエチルシリケート40(コルコート(株)製)、イソプロピルアルコール、アセチルアセトンアルミニウムおよびイオン交換水からなる加水分解液(組成b.)を加えて攪拌し、さらに、あらかじめ調製したポリビニルアルコール水溶液、シランカップリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:エポキシシリカSH6040)、酢酸、イソプロピルアルコールおよびイオン交換水からなる混合液(組成c.)を加えて攪拌し、無色透明のバリアー塗工液(ガスバリア性組成物)を得た。
【0154】
【表1】

【0155】
次いで、上記で形成した酸化珪素の蒸着膜のプラズマ処理面に、上記で製造したガスバリア性組成物を使用し、これをグラビアロールコート法によりコーティングした。その後、100℃で30秒間、加熱処理して、厚さ0.4g/m(乾燥状態)のガスバリア性塗布膜を形成した。
【0156】
上記でガスバリア性塗布膜を形成した基材フィルムを、プラズマ化学気相成長装置の巻き出しロールに装着し、次いで、ライン速度150mm/minで搬送し、アルゴンガス0.1Pa・m/secを導入し、出力5kWでプラズマ処理を行って、上記のガスバリア性塗布膜の面に、不活性ガスによるプラズマ処理面を形成した。次いで、そのプラズマ処理面に、下記に示す条件により、厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した。
【0157】
(蒸着条件)
反応ガス混合比;ヘキサルメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=0.2:0.85:0.42(単位:Pa・m/sec)
到達圧力;5.0×10−5mbar
製膜圧力;3.0×10−2mbar
ライン速度;150m/min
パワー;15kW
【0158】
次に、上記で厚さ200Åの酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kW、酸素ガス(O):アルゴンガス(Ar)=1.18:0.42(単位:Pa・m/sec)からなる混合ガスを使用して、混合ガス圧6×10−2mbar、処理速度150m/minにて酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させたプラズマ処理面を形成した。
【0159】
さらに、上記で形成したプラズマ処理面に、ポリエステル系樹脂の初期縮合物に対し、エポキシ系のシランカップリング剤8.0質量%(東レ・ダウ・コーニング(株)製、商品名:SH6040)およびブロッキング防止剤1.0質量%(富士シリシア化学(株)製、商品名:サイロホービック)を添加して十分に混練してなるプライマー樹脂組成物を使用して、これをグラビアロールコート法により、膜厚0.2g/m(乾燥状態)になるようにコーティングしてプライマー剤層を形成して、ガスバリア性塗布膜を有する積層フィルムを製造した。
【0160】
次に、ポリウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン(株)製,A1143/A50)を、上記で製造した基材フィルムの酸化珪素の蒸着面のプラズマ処理面に、グラビアロールコート法により、膜厚4.0〜6.0g/m(乾燥状態)になるようにコーティングして、ラミネート用接着剤層を形成した。
【0161】
次に、上記で形成したラミネート用接着剤層の面に、厚さ50μmの耐加水分解性を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製,X10S♯50)の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネート積層した。
【0162】
他方、ポリプロピレン樹脂に、ルチル型酸化チタン25質量%(平均粒子径0.5μm)、紫外線吸収剤としてのベンゾフェノン系紫外線吸収剤1質量%、および、光安定化剤としてのヒンダードアミン系光安定化剤1質量%を添加し、その他、所要の添加剤を添加して、十分に混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。次いで、このポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイ押出機を使用して溶解押出成形して、厚さ80μmの白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを製造した。さらに、得られた白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの両面に、常法に従いコロナ放電処理を施して、コロナ処理面を形成した。
【0163】
次に、上記で製造した白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの一方のコロナ処理面に、上記と同様の接着剤を使用し、これを、グラビアロールコート法により膜厚4.0〜6.0g/m(乾燥状態)になるようにコーティングして、ラミネート用接着剤層を形成した。次いで、このラミネート用接着剤層の面に、上記基材フィルムの酸化珪素の非蒸着面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネート積層して、実施例1の太陽電池モジュール用裏面保護シートを製造した。
【0164】
次に、厚さ3mmのガラス板、厚さ400〜600μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体シート、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ400μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体シート、および、上記で製造した太陽電池モジュール用裏面保護シートを、その白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの面を対向させ、さらに、上記太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、150℃30分で真空プレスラミネートにより一体化して、実施例1の太陽電池モジュールを製造した。
【0165】
<実施例2>
基材フィルムとして、表面にシリカ(酸化珪素)が蒸着された厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂(株)製,テックバリアL♯12)を使用し、次に、ポリウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン(株)製,A1143/A50)を、上記シリカ蒸着フィルムの酸化珪素の蒸着面に、グラビアロールコート法により、膜厚4.0〜6.0g/m(乾燥状態)になるようにコーティングして、ラミネート用接着剤層を形成した。
【0166】
次に、上記で形成したラミネート用接着剤層の面に、厚さ50μmの耐加水分解性を有する2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製,X10S♯50)の面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネート積層した。
【0167】
他方、ポリプロピレン樹脂に、ルチル型酸化チタン25質量%(平均粒子径0.5μm)、紫外線吸収剤としてのベンゾフェノン系紫外線吸収剤1質量%、および、光安定化剤としてのヒンダードアミン系光安定化剤1質量%を添加し、その他、所要の添加剤を添加して、十分に混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。次いで、このポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイ押出機を使用して溶解押出成形して、厚さ80μmの白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを製造した。さらに、得られた白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの両面に、常法に従いコロナ放電処理を施して、コロナ処理面を形成した。
【0168】
次に、上記で製造した白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの一方のコロナ処理面に、上記と同様の接着剤を使用し、これを、グラビアロールコート法により膜厚4.0〜6.0g/m(乾燥状態)になるようにコーティングして、ラミネート用接着剤層を形成した。次いで、このラミネート用接着剤層の面に、上記基材フィルムの酸化珪素の非蒸着面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネート積層して、実施例2の太陽電池モジュール用裏面保護シートを製造した。
【0169】
次に、厚さ3mmのガラス板、厚さ400〜600μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体シート、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ400μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体シート、および、上記で製造した太陽電池モジュール用裏面保護シートを、その白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの面を対向させ、さらに、上記太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、150℃30分で真空プレスラミネートにより一体化して、実施例2の太陽電池モジュールを製造した。
【0170】
<実施例3>
基材フィルムとして、表面にシリカ(酸化珪素)が蒸着された厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂(株)製,テックバリアL♯12)を使用し、次に、ポリウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン(株)製,A1143/A50)を、上記シリカ蒸着フィルムの酸化珪素の蒸着面に、グラビアロールコート法により、膜厚4.0〜6.0g/m(乾燥状態)になるようにコーティングして、ラミネート用接着剤層を形成した。
【0171】
次に、上記で形成したラミネート用接着剤層の面に、厚さ50μmの、耐加水分解性を有し、平均粒子径0.5μmのルチル型酸化チタンを白色顔料として20質量%添加した白着色2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネート積層した。
【0172】
他方、ポリプロピレン樹脂に、ルチル型酸化チタン25質量%(平均粒子径0.5μm)、紫外線吸収剤としてのベンゾフェノン系紫外線吸収剤1質量%、および、光安定化剤としてのヒンダードアミン系光安定化剤1質量%を添加し、その他、所要の添加剤を添加して、十分に混練してポリプロピレン系樹脂組成物を調製した。次いで、このポリプロピレン樹脂組成物を、Tダイ押出機を使用して溶解押出成形して、厚さ80μmの白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを製造した。さらに、得られた白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの両面に、常法に従いコロナ放電処理を施して、コロナ処理面を形成した。
【0173】
次に、上記で製造した白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの一方のコロナ処理面に、上記と同様の接着剤を使用し、これを、グラビアロールコート法により膜厚4.0〜6.0g/m(乾燥状態)になるようにコーティングして、ラミネート用接着剤層を形成した。次いで、このラミネート用接着剤層の面に、上記基材フィルムの酸化珪素の非蒸着面を対向させて重ね合わせ、しかる後、その両者をドライラミネート積層して、実施例3の太陽電池モジュール用裏面保護シートを製造した。
【0174】
次に、厚さ3mmのガラス板、厚さ400〜600μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体シート、アモルファスシリコンからなる太陽電池素子を並列に配置した厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ400μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体シート、および、上記で製造した太陽電池モジュール用裏面保護シートを、その白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの面を対向させ、さらに、上記太陽電池素子面を上に向けて、アクリル系樹脂の接着剤層を介して積層して、150℃30分で真空プレスラミネートにより一体化して、実施例3の太陽電池モジュールを製造した。
【0175】
<比較例1>
実施例1における白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルム中に、ルチル型酸化チタン5質量%に代えてアナターゼ型酸化チタン5質量%(平均粒子径0.5μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、比較例1の太陽電池モジュール用裏面保護シートおよび太陽電池モジュールを製造した。
【0176】
<比較例2>
実施例1における耐加水分解性PET(東レ(株)製,X10S)に代えて、一般工業用PET(東レ(株)製,S−10#50)を用い、白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルム中に、ルチル型酸化チタン5質量%に代えてアナターゼ型酸化チタン5質量%(平均粒子径0.5μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、比較例2の太陽電池モジュール用裏面保護シートおよび太陽電池モジュールを製造した。
【0177】
<比較例3>
実施例1における耐加水分解性PET(東レ(株)製,X10S)に代えて、一般工業用白色PET(帝人デュポン(株)製,U2#50)を用い、白着色無延伸ポリプロピレン樹脂フィルム中に、ルチル型酸化チタン5質量%に代えてアナターゼ型酸化チタン5質量%(平均粒子径0.5μm)を添加した以外は実施例1と同様にして、比較例3の太陽電池モジュール用裏面保護シートおよび太陽電池モジュールを製造した。
【0178】
上記で製造した太陽電池モジュール用裏面保護シートにつき、下記に従い耐久性(機械強度、バリア性能)および発電性能(反射率)の評価を行った。
【0179】
(1)耐加水分解性試験
得られた各裏面保護シートを、プレッシャークッカー試験装置(平山製作所製)にて120℃85%RHの環境下で72時間、および、恒温恒湿オーブンにて85℃85%RHの環境下で1500時間、それぞれ保存した。
【0180】
(2)耐紫外線試験
キセノン照射装置(東洋精機製,アトラス・ウェザオメーターCi4000)を用い、各裏面保護シートのPET面およびPP面にASTM G155に従う照射条件にて1000時間の紫外線照射を行った。
【0181】
<機械強度の測定>
各裏面保護シートを15mm×50mmにて切り出し、引張り試験機(エー・アンド・デー(A&D)(株)製,機種名テンシロン)を使用して、破断強度を測定した。測定は、プレッシャークッカー試験後、恒温恒湿保存後、およびPET面への紫外線照射後のサンプルについて行い、それぞれ初期値からの破断強度の維持率を求めた。この結果を、下記の表1,2中にそれぞれ示す。
【0182】
<反射率の測定>
各裏面保護シートのPP樹脂側について、分光光度計により、波長400nmの光線に対する反射率(%)を測定した。測定は、PP面への紫外線照射前後のサンプルについて行った。この結果を、下記の表3中に示す。
【0183】
<バリア性能評価(水蒸気透過度の測定)>
水蒸気透過度は、各裏面保護シートについて、温度40℃湿度100%RHの条件で、米国モコン(MOCON)社製の測定機(機種名、パーマトラン(PERMATRAN W−3/31)を用いて測定した。測定は、初期値、プレッシャークッカー試験後、および恒温恒湿保存後のサンプルについて行った。この結果を、下記の表4中に示す。
【0184】
【表1】

【0185】
【表2】

【0186】
【表3】

【0187】
【表4】

【0188】
上記表中に示したように、本発明に係る各実施例の裏面保護シートにおいては、比較例の裏面保護シートに比べて、高温高湿環境下ないし紫外線照射環境下での保存後においても、機械的強度、バリア性能および反射率が良好に保持されていることが確かめられた。
【符号の説明】
【0189】
1 透明ポリエステル系樹脂フィルム
2 無機酸化物の蒸着膜
3 ガスバリア性塗布膜
4 基材ポリエステル系樹脂フィルム
5 合成樹脂フィルム
6,7 接着剤層
10 裏面保護シート
11 表面保護シート
12,14 充填剤層
13 太陽電池素子
15 裏面保護シート
21 巻き取り式真空蒸着装置
22,42 真空チャンバー
23,43 巻き出しロール
24,25 ガイドロール
26 コーティングドラム
27 るつぼ
28 蒸着源
29 酸素ガス吹出口
30 マスク
31,32 ガイドロール
33,54 巻き取りロール
41 プラズマ化学気相成長装置
44,53 補助ロール
45 冷却・電極ドラム
46,47 ガス供給装置
48 原料揮発供給装置
49 原料供給ノズル
50 グロー放電プラズマ
51 電源
52 マグネット
55 真空ポンプ
100 太陽電池モジュール
101 基材フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ポリエステル系樹脂フィルムと、少なくとも一方の面に、無機酸化物の蒸着膜およびガスバリア性塗布膜をそれぞれ少なくとも1層有する基材ポリエステル系樹脂フィルムと、少なくとも1層の合成樹脂フィルムとが、接着剤層を介して順次積層されてなる太陽電池モジュール用裏面保護シートであって、
前記透明ポリエステル系樹脂フィルムおよび合成樹脂フィルムのうちのいずれか一方または双方が、ルチル型酸化チタンを含有することを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記ルチル型酸化チタンの含有量が、フィルムを構成する樹脂組成物の1〜30質量%の範囲内である請求項1記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
前記ルチル型酸化チタンの平均粒子径が、0.1〜3.0μmである請求項1または2記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
前記合成樹脂フィルムがオレフィン系樹脂を主成分とする請求項1〜3のうちいずれか一項記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項5】
前記合成樹脂フィルムがポリプロピレン系樹脂を主成分とする請求項4記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項6】
前記合成樹脂フィルムに光安定化剤が配合されている請求項1〜5のうちいずれか一項記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項7】
前記光安定化剤が、ヒンダードアミン系化合物のうちの1種ないし2種以上からなる請求項6記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項8】
表面保護シート、充填剤層、太陽電池素子、充填剤層、および、裏面保護シートが順次積層されてなる太陽電池モジュールであって、
前記裏面保護シートが請求項1〜7のうちいずれか一項記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートであり、かつ、前記充填剤層と前記合成樹脂フィルムとが対向するよう積層されてなることを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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