説明

太陽電池モジュール用裏面保護シート

【課題】機械的強度、耐候性、耐熱性、防湿性などの特性に優れ、特に、高温高湿条件下での電気絶縁性能劣化を抑え、耐久性に富み、太陽電池素子の保護に有用で、かつ、より低コストな太陽電池モジュール用裏面保護シ−トを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール用裏面保護シートを、透明前面基板1、太陽電池素子2、太陽電池素子を密封する充填剤3、および、裏面保護シートを有する太陽電池モジュ−ルに用いられ、ポリエステル樹脂からなる層5Aと環状オレフィン系樹脂からなる層5Bが設けられ、上記環状オレフィン系樹脂が、1価の置換基を有さず、かつ、ノルボルナン構造が1つのノルボルネン系モノマー由来の構造単位を20質量%以上含有し、上記環状オレフィン系樹脂からなる層(B)が、環状オレフィン系樹脂100質量部に対してヒンダードアミン系耐光安定剤1.0〜10.0質量部を含有するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度、耐候性、耐熱性、防湿性などの特性に優れ、特に、高温高湿条件下での電気絶縁性能劣化を抑え、耐久性に富み、太陽電池素子の保護に有用で、かつ、より低コストな太陽電池モジュール用裏面保護シ−トに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、近年、クリーンエネルギーとして注目され、現在、種々の形態の太陽電池モジュ−ルが開発され、提案されている。中でも、単結晶もしくは多結晶タイプの結晶性シリコン系素子を用いたもの、あるいは、薄膜アモルファスシリコン系素子を用いたものなどが主流である。このようなシリコン素子を用いた太陽電池モジュールの代表的な構成は、図1に示すように、太陽光入射面側から、透明前面基板1、太陽電池素子2、太陽電池素子を密封する充填剤3と、裏面保護シート5を有する。
【0003】
上記太陽電池モジュ−ルを構成する透明前面基板1の具体例は、太陽光の透過性に優れ、耐候性、耐傷性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性などの堅牢性に優れ、防湿性等の保護性能に優れたガラス板である。
【0004】
一方、太陽電池モジュ−ルを構成する裏面保護シ−ト5の具体例は、耐候性に優れたポリフッ化ビニル樹脂、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂シート、耐候性を付与したポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの機械強度、電気絶縁性能に優れたポリエステル樹脂シ−ト等である。しかしながら、フッ素系樹脂シートは、太陽電池素子を水分による影響から保護するための十分な防湿性能を有しておらず、使用済み太陽電池モジュールの廃棄物処理時に不都合を有し、その成形加工性が低く、その工業的な供給者が限られている。ポリエステル系樹脂シートの商業的な供給者は多く、ポリエステル系樹脂シートの価格は低いので、ポリエステル系樹脂シートの使用は工業的に有利であるが、ポリエステル系樹脂シートの防湿性能は十分でなく、ポリエステル系樹脂そのものが高温高湿条件で加水分解による劣化を引き起こし、機械的強度、電気絶縁性能の低下が生じる。
【0005】
そのため、金属アルミニウム箔を積層する方法が、ポリエステル系樹脂シートの防湿性能を補うために実施されたが、傷等の外部欠陥が生じた場合に太陽電池素子と金属箔との間における短絡が懸念されている。近年では、短絡の懸念がなく、高防湿性能が発現できる、表面にシリカ等の金属酸化物を蒸着したポリエステル系樹脂シートが裏面保護シートとして使用されるようになってきた。
【0006】
一方、金属酸化物の蒸着に頼らず防湿性能を発現でき、しかも工業的により容易で安価に生産が可能な、ポリエステル系樹脂シートに環状オレフィン系樹脂シートを積層した保護シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、当該保護シートの外層は、紫外線吸収剤を添加した耐候性ポリエステル系樹脂シートであり、高温高湿環境に暴露された後の当該保護シートの電気絶縁特性の低下が懸念される。
【0007】
環状オレフィン系樹脂シートの優れた防湿性を活かして、耐候性に優れたフッ素系樹脂又はポリメチルメタクリレートよりなるシートからなる外層と、その内面に形成された環状オレフィン系樹脂シートからなる内層とを有する保護シートが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。しかしながら、フッ素系樹脂シートは前述の問題を有しており、ポリメチルメタクリレートシートの防湿性は、ポリエステル系樹脂シートの防湿性よりも劣っている。
環状オレフィン系樹脂シートのみからなる保護シートも提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、環状ポリオレフィン系樹脂のみからなる保護シートは、太陽電池モジュール製造の封止工程で必要とされる150℃程度の加熱処理を経ると、その弾性率が高くなってその靭性が低下するので、当該保護シートの引張り伸びが低下し、保護シートとしての機械的強靭性に懸念が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−44481号公報
【特許文献2】特開平8−306947号公報
【特許文献3】特開平8−306948号公報
【特許文献4】特開2000−106450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこうした実状に鑑みてなされた。発明が解決しようとする課題は、機械的強度、耐候性、耐熱性、防湿性などの特性に優れ、特に、高温高湿条件下での電気絶縁性能劣化を抑え、耐久性に富み、太陽電池素子の保護に有用で、かつ、より低コストな太陽電池モジュール用裏面保護シ−トの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートは、透明前面基板、太陽電池素子、太陽電池素子を密封する充填剤、および、裏面保護シートを有する太陽電池モジュ−ルに用いられ、ポリエステル系樹脂からなる層(A)と環状オレフィン系樹脂からなる層(B)が設けられており、上記環状オレフィン樹脂は、1価の置換基を有さず、かつ、ノルボルナン構造が1つのノルボルネン系モノマー由来の構造単位を20質量%以上含有し、上記環状オレフィン系樹脂からなる層(B)は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対してヒンダードアミン系耐光安定剤1〜10質量部を含有する。上記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは、150℃以上である。環状オレフィン系樹脂からなる層(B)の40℃、相対湿度90%の環境下における透湿度は、好ましくは、3.0g/m2・day以下である。好ましい上記ポリエステル系樹脂はポリエチレンテレフタレートである。ポリエステル系樹脂からなる層(A)と環状オレフィン系樹脂からなる層(B)は、好ましくは、接着剤層(C)を介して積層されている。好ましい上記接着剤は(i)無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、(ii)エチレン/酢酸ビニル共重合体、(iii)変性スチレン系エラストマー、(iv)不飽和ポリオレフィン系軟質重合体、(v)エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸3元共重合体、(vi)ポリウレタン系接着樹脂から選ばれる少なくとも1種以上である。
【発明の効果】
【0011】
ポリエステル系樹脂からなる層(A)の外部環境からの吸湿が抑制されるから、本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートが高温高湿環境に保存された後にも、その電気絶縁性、例えば、絶縁破壊強度が良好に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】結晶シリコン系太陽電池モジュールの概要を示す概略断面図
【図2】本発明に係る太陽電池モジュール用保護シートの1例を組み込んだ結晶シリコン系太陽電池モジュールを示す概略断面図
【図3】本発明に係る太陽電池モジュール用保護シートの1例を組み込んだ結晶シリコン系太陽電池モジュールを示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
ポリエステル系樹脂
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートに用いられるポリエステル系樹脂の具体例は、飽和ジカルボン酸の一種またはそれ以上と、二価アルコ−ルおよび/または二価フェノールの一種またはそれ以上との重縮合により生成するポリエステル系樹脂である。本発明に使用されるポリエステル系樹脂は、太陽電池モジュールを製造する工程での加熱処理、例えば、太陽電池素子を充填剤で密封する工程で150℃程度で加熱処理されるため、本発明に使用される好ましいポリエステル系樹脂は、樹脂の耐熱性の指標となるガラス転移温度が150℃を超える非晶性ポリエステル樹脂、あるいは融点が150℃を超える結晶性ポリエステル樹脂である。
【0014】
上記の飽和ジカルボン酸の具体例は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−1、4−ジカルボン酸、ナフタレン−2、6−ジカルボン酸、ジフェニルエ−テル−4、4´−ジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、デカン−1、10−ジカルボン酸、ドデカン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類等である。
【0015】
上記の二価アルコ−ルの具体例は、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、トリメチレングリコ−ル、テトラメチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ヘキサメチレングリコ−ル、ドデカメチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル類、シクロヘキサンジメタノ−ル、2.2−ビス(4’-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の脂環族グリコ−ル類、2.2−ビス(4´−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ナフタレンジオ−ル等である。上記二価フェノールの具体例は、4,4’−(プロパン−2,2’−ジイル)ジフェノール、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(シクロヘキサン−1,1’−ジイル)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン等である。
【0016】
本発明に使用される好ましいポリエステル系樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂、テレフタル酸とイソフタル酸と4,4’−(プロパン−2,2’−ジイル)ジフェノールとの共重縮合により生成するポリアリレート樹脂等である。
【0017】
上記ポリエステル系樹脂のシ−トの引張り強度、引張り伸び、耐熱性、絶縁破壊強度などの機械的特性及び電気的特性は優れ、上記ポリエステル系樹脂のシ−トは、太陽電池の裏面保護シ−トを構成する部材として有用性を有している。
【0018】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成するポリエステル系樹脂からなる層(A)の厚さは、通常、10〜300μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは30〜100μmである。この範囲の厚みを有するポリエステル系樹脂シ−トは、裏面保護シートとしての十分な機械的強靭性及び電気絶縁性を発現する。
【0019】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成するポリエステル系樹脂は、フィルムの加工性、耐酸化性、耐候性などを改良する目的で、種々の添加剤を含有できる。上記添加剤の具体例は、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤等である。添加剤の配合量を目的に応じて任意に調節でき、当該配合量は、通常、0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0020】
環状オレフィン系樹脂
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートに用いられる環状オレフィン系樹脂の具体例は、(a)ノルボルネン系モノマーの開環重合体、(b)ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物などである。これらの中でも、防湿性、耐熱性、機械強度などの観点から、(b)ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物がより好ましい。
なお、環状オレフィン系樹脂の1種であるノルボルネン系モノマーとエチレンおよび/またはα−オレフィンとの共重合体は、靭性及び引張り伸びが低く、好ましくない。
上記環状オレフィン系樹脂の環構造を構成する炭素原子数は、格別制限されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。環構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある環状オレフィン系樹脂の機械的強度、耐熱性及び成形性は高度にバランスされる。防湿性の観点から、1価の置換基を有さず、かつ、ノルボルナン構造が1つのノルボルネン系モノマー由来の構造単位を含む開環重合体水素化物がより好ましい。
【0021】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートに用いられる環状オレフィン系樹脂は、1価の置換基を有さず、かつ、ノルボルナン構造が1つのノルボルネン系モノマー由来の構造単位を20質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上含有し、上限は100質量%である。
なお、本願でいうノルボルナン構造とは、二重結合を有するノルボルネン構造も含む。
【0022】
上記ノルボルネン系モノマーの中で、1価の置換基を有さず、かつ、ノルボルナン構造が一つのノルボルネン系モノマーの具体例は、
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、
トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン、
テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕テトラデカ−2,4,6,11−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、
テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕テトラデカ−4,11−ジエン、
テトラシクロ〔7.4.0.110,13.03,7〕テトラデカ−4,11−ジエン、
テトラシクロ〔8.4.0.111,14.03,8〕ペンタデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)
などである。これらのノルボルネン系モノマーをそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
上記ノルボルネン系モノマーの中で、ノルボルナン構造が二つ以上のノルボルネン系モノマーの具体例は、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、
ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、
オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]ドコサ−5−エン、
ペンタシクロ〔7.4.0.12,8.110,13.03,7〕ペンタデカ−4,11−ジエン、
ペンタシクロ〔7.4.0.13,6.110,13.02,7〕ペンタデカ−4−エン、
ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]ヘキサデカ−4−エン、
などである。これらのノルボルネン系モノマーを、好ましくは、前記の1価の置換基を有さず、かつ、ノルボルナン構造が一つのノルボルネン系モノマーと組み合わせて用いる。
【0024】
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン換算の重量平均分子量で、通常5,000以上、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜200,000、特に好ましくは20,000〜100,000の範囲である。この範囲の分子量を有する環状オレフィン系樹脂のシートの機械的強度および成形加工性はバランスしている。
【0025】
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂は、非晶性環状オレフィン系樹脂又は結晶性環状オレフィン系樹脂であり、非晶性環状オレフィン系樹脂の場合、そのガラス転移温度は通常150℃以上、好ましくは150〜200℃、より好ましくは155℃〜180℃であり、結晶性環状オレフィン系樹脂の場合、その融点は通常150℃以上、好ましくは150〜200℃、より好ましくは155℃〜180℃である。
ガラス転移温度又は融点が低すぎると、太陽電池モジュールを製造する工程、例えば、太陽電池素子を充填剤で密封する工程で150℃程度で加熱処理される際に、シートが変形する恐れがあり、ガラス転移温度又は融点が高すぎると、樹脂の溶融粘度が高くなり成形性が悪化する恐れがある。
【0026】
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂の中でも特に好ましい(b)ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物のポリマー主鎖二重結合の水素化率は、通常、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、更に好ましくは99.9%以上である。水素化率が低すぎる場合、下記に記載する耐候安定剤を配合しても、環状オレフィン系樹脂シートの長期耐候性は劣る。
【0027】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成する環状オレフィン系樹脂からなる層(B)は、ポリエステル系樹脂からなる層(A)の外部環境からの吸湿による電気絶縁性の低下を防止する。上記環状オレフィン系樹脂からなる層(B)の透湿度は低いほうが望ましい。環状オレフィン系樹脂からなる層(B)の40℃、相対湿度90%の環境下における透湿度は、通常3.0g/m2・day以下、好ましくは1.0g/m2・day以下、より好ましくは0.5g/m2・day以下である。
【0028】
環状オレフィン系樹脂からなる層(B)の透湿度は、環状オレフィン系樹脂シートの透湿度係数と厚さによって調整される。しかし、透湿度を小さくするためにシートの厚さを厚くすることは、シートの取扱い作業性が劣ったり、コストアップによる経済性に劣ったりするため、工業的に有利ではない。このため、環状オレフィン系樹脂シートの透湿度係数は小さいほうが好ましい。好ましい当該透湿度係数は0.2g・mm/m2・day以下であり、特に好ましい当該透湿度係数は0.1g・mm/m2・day以下である。そのため、上記特定のノルボルネン系モノマーから得られる環状オレフィン系樹脂が好ましく使用される。上記環状オレフィン系樹脂の使用により、環状オレフィン系樹脂シートの厚さを、作業性の良い30〜300μm程度にできる。
【0029】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成する環状オレフィン系樹脂からなる層(B)は太陽電池素子側の反対側(外側)に使用されるため、太陽光と背景からの太陽光の反射光に暴露される。
【0030】
従って、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートに使用する環状オレフィン系樹脂は、耐候性を高める成分を含有する。耐候性を高める成分の具体例は、耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、遮光剤などである。耐候性を高める成分の1種ないし2種以上を添加できる。好ましい耐光安定剤はヒンダ−ドアミン系耐光安定剤である。ヒンダ−ドアミン系耐光安定剤に加えて、フェノ−ル系、硫黄系、リン酸系などの酸化防止剤、更に、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系などの紫外線吸収剤などを併用できる。
【0031】
耐光安定剤
本発明で用いるヒンダードアミン系耐光安定剤は、通常構造中に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、ならびに2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基または1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基を有している化合物である。本発明で用いるヒンダードアミン系耐光安定剤の具体例は、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物、1,6−ヘキサンジアミン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(1−ベンジル−2−フェニルエチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2−(1−ピロリジル)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2−(4ーモルホリニル)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルーN−メチルピペリジン、4−(N−(2−(4ーモルホリニル)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2−(ジイソプロピルアミノ)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2,4,6−トリメチルベンジル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(3−(2−エチルヘキソキシ)プロピル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(3,4−(メチレンジオキシ)ベンジル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(ビシクロ〔2.2.1〕ヘプチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−1,2,2−トリメチルプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−1、3−ジメチルブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−1−ベンジルエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−2,2−ジメチルプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−2−エチルヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−3−メチルブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−4−ヒドロキシブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−4−ヒドロキシブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−i−プロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−i−プロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−t−ブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−イソプロピルベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−エトキシエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−エトキシプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−オクタデシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−オクチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルーN−メチルピペリジン、4−(N−オクチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−クロロベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ジエチルアミノエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−シクロドデシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−シクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルカルボニルピペリジン、4−(N−シクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピリジン、4−(N−シクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、4−(N−シクロペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルーN−メチルピペリジン、4−(N−シクロペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ジメチルアミノプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−デシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−デシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ドデシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ピリジニルメチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−フェニルエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピリジン、4−(N−フェニルエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、4−(N−ブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−ブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−フルオロベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−ヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−ペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−メチルシクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、4−(N−メチルベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−メトキシベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−〔N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N−ホルミルアミノ〕−2,2,6,6−テトラメチルーN−メチルピリジン、4−〔N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N−ホルミルアミノ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−アミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4ーN−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−1,4−キシリレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4ーN−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−エチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミル−1,4−キシリレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルエチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミル−トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンアクリル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンアラキン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンアンゲリカ酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンウンデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンウンデシレン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンオレイン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンガドレイン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンカプリル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンカプリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンカプロン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンクロトン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンシトロネル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンステアリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンゾマーリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレントリデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンノナデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンパルチミン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンブレンツテレビン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンプロピオン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンヘプタン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンベヘン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンペラルゴン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N



,N’−ビスヘキサメチレンペンタデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンマルガリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンミリスチン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンラウリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンリンデル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン吉草酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン酢酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン抹香酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン酪酸アミド、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重合体とN−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物などである。
【0032】
これらの中でも、耐候性に優れる点で、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−アルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスアルキレン脂肪酸アミド類、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕が好ましく、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重合体とN−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物が特に好ましい。
【0033】
ヒンダードアミン系耐光安定剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部である。ヒンダードアミン系耐光安定剤の添加量が少なすぎる場合、環状オレフィン系樹脂シートの耐候性が必ずしも十分とは言えない。ヒンダードアミン系耐光安定剤の添加量が多すぎる場合、環状オレフィン系樹脂シートの溶融成形加工時に、押出し機のTダイや冷却ロールの汚れが酷く、環状オレフィン系樹脂シートの加工性が著しく劣り、工業的でない。
【0034】
酸化防止剤
上記ヒンダードアミン系耐光安定剤の他に環状オレフィン系樹脂に添加できるフェノ−ル系酸化防止剤の具体例は、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどである。
【0035】
上記ヒンダードアミン系耐光安定剤の他に環状オレフィン系樹脂に添加できる硫黄系酸化防止剤の具体例は、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどである。
【0036】
上記ヒンダードアミン系耐光安定剤の他に環状オレフィン系樹脂に添加できるリン酸系酸化防止剤の具体例は、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物; 4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物; 6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン、6−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピンなどである。
【0037】
酸化防止剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、通常1.0質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.01〜0.3質量部である。酸化防止剤とヒンダードアミン系耐光安定剤の併用により、環状オレフィン系樹脂からなる層(B)の耐光性を更に改善できる。酸化防止剤を環状オレフィン系樹脂に上記範囲を超えて過剰に添加しても、更なる耐光性の改善は認められない。
【0038】
紫外線吸収剤
環状オレフィン系樹脂に上記ヒンダードアミン系耐光安定剤の他に添加できるベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例は、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸3水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデカロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどである。
【0039】
環状オレフィン系樹脂に上記ヒンダードアミン系耐光安定剤の他に添加できるサリチル酸系紫外線吸収剤の具体例は、フェニルサルチレート、4−t−ブチルフェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどである。
【0040】
環状オレフィン系樹脂に上記ヒンダードアミン系耐光安定剤の他に添加できるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]などである。
【0041】
紫外線吸収剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、通常1.0質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.01〜0.3質量部である。紫外線吸収剤とヒンダードアミン系耐光安定剤の併用により、環状オレフィン系樹脂からなる層(B)の耐光性を更に改善できる。紫外線吸収剤を環状オレフィン系樹脂に上記範囲を超えて過剰に添加しても、更なる耐光性の改善は認められない。
【0042】
その他の添加剤
上記環状オレフィン系樹脂は、太陽電池モジュール用裏面保護シートの特性を損なわない範囲内で、更に、(1)軟質重合体、(2)アルコール性化合物、(3)有機または無機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種類の配合剤を含んでも良い。これらの配合剤の配合により、透明性、低吸水性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
【0043】
これらの中でも、(1)軟質重合体、及び(2)アルコール性化合物の添加が、高温高湿度環境下における白濁防止効果、得られる樹脂組成物の透明性向上に寄与する。
【0044】
(1)軟質重合体
本発明に用いることができる軟質重合体は、通常30℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する重合体であり、複数のTgが存在する場合には、少なくとも最も低いTgが30℃以下であればよい。
【0045】
軟質重合体の具体例は、液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体;
【0046】
ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体などのα,β−不飽和酸からなる軟質重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などの不飽和アルコールおよびアミンまたはそのアシル誘導体またはアセタールからなる軟質重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴム、などのエポキシ系軟質軟質重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素系軟質重合体;天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などである。これらの軟質重合体は、架橋構造を有していてもよく、変性反応による官能基を有していてもよい。
【0047】
上記軟質重合体の中でもジエン系軟質重合体が好ましく、特に該軟質重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械強度、柔軟性、分散性の点で優れる。
【0048】
(2)アルコール性化合物
アルコール性化合物は、分子内に少なくとも1つの非フェノール性水酸基を有する化合物で、好適には、少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのエーテル結合又はエステル結合を有する。
このような化合物の具体例は、2価以上の多価アルコール、より好ましくは3価以上の多価アルコール、さらに好ましくは3〜8個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基の1つがエーテル化またはエステル化されたアルコール性エーテル化合物とアルコール性エステル化合物である。
【0049】
2価以上の多価アルコールの具体例は、ポリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ジペンタエリスリトール、1,6,7−トリヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−4−オキソヘプタン、ソルビトール、2−メチル−1,6,7−トリヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−4−オキソヘプタン、1,5,6−トリヒドロキシ−3−オキソヘキサンペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどである。特に3価以上の多価アルコール、さらには3〜8個の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。アルコール性エステル化合物を得る場合、α、β−ジオールを含むアルコール性エステル化合物が合成可能なグリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどが好ましい。
【0050】
このようなアルコール性化合物の具体例は、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノベヘレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジペンタエリスリトールジステアレートなどの多価アルコール性エステル化物;3−(オクチルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(デシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(ラウリルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(4−ノニルフェニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、1,6−ジヒドロオキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−7−(4−ノニルフェニルオキシ)−4−オキソヘプタン、p−ノニルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとジシクロペンタジエンの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物などである。これらの多価アルコール性化合物を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用する。
これらの多価アルコール性化合物の分子量は特に限定されないが、通常500〜2000、好ましくは800〜1500である。この範囲の分子量を有する多価アルコール性化合物が添加された環状オレフィン系樹脂からなる層(B)の透明性の低下は少ない。
【0051】
(3)有機または無機フィラー
通常の有機重合体粒子または架橋有機重合体粒子を有機フィラーとして用いる。有機フィラーの具体例は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル重合体;ポリアリレート、ポリメタクリレートなどのα,β‐不飽和酸から誘導された重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの不飽和アルコールから誘導された重合体;ポリエチレンオキシドまたはビスグリシジルエーテルからから誘導された重合体;ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリスルフォンなどの芳香族縮合系重合体;ポリウレタン;ポリアミド;ポリエステル;アルデヒド・フェノール系樹脂;天然高分子化合物などの粒子または架橋粒子である。
【0052】
無機フィラーの具体例は、フッ化リチウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)などの1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの2族元素化合物;二酸化チタン、一酸化チタンなどの4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデンの6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガンなどの7族元素化合物;塩化コバルト、酢酸コバルトなどの8〜10族元素化合物;ヨウ化第一銅などの11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの12族元素化合物;酸化アルミニウム(アルミナ)、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)などの13族元素化合物;酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラスなどの14族元素化合物;カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱などの天然鉱物の粒子である。遮光性、経済性に優れた二酸化チタンが特に好ましい。
【0053】
上記(1)〜(3)の化合物の配合量は、脂環式炭化水素系共重合体と配合される化合物の組み合わせによって決まるが、一般に、配合量が多すぎれば、組成物のガラス転移温度や機械的強度が大きく低下し、太陽電池モジュール用裏面保護シートとしての使用に不適である。上記(1)〜(3)の化合物の配合量は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、通常2質量部以下、好ましくは1質量部、特に好ましくは0.5質量部以下である。
【0054】
積層方法
本発明の太陽電池モジュ−ル用裏面保護シ−トを構成するポリエステル樹脂からなる層(A)と、それに積層される耐候性を有する環状オレフィン系樹脂からなる層(B)からなる積層体について説明する。
【0055】
上記積層体を製造する方法は、特に限定されない。上記積層体を製造する方法の具体例は、ポリエステル系樹脂シートと耐候性を有する環状オレフィン系樹脂シートを接着剤層を介して積層して積層体を製造するドライラミネ−ト法とヒートラミネート法;ポリエステル系樹脂、耐候性を有する環状オレフィン系樹脂および接着用樹脂とを共押し出し積層して積層体を製造する共押し出し法;耐候性を有する環状オレフィン系樹脂を、ポリエステル系樹脂シ−トまたは接着剤層を積層したポリエステル系樹脂シートの上に押し出し積層して積層体を製造する押し出し積層法などである。
【0056】
接着剤層
ドライラミネ−ト法で使用する接着剤の具体例は、エチレン−酢酸ビニル共重合体系接着剤;無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂系接着剤;ウレタン系接着剤;ポリエステル系接着剤;ポリビニルアルコール系接着剤;ポリオレフィン系接着剤;ポリビニルアルキルエーテル系接着剤;ゴム系接着剤;アクリル系接着剤;塩化ビニル−酢酸ビニル系接着剤;無水マレイン酸変性(水素化)スチレン−ジエン系ブロック共重合体系接着剤;エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系接着剤;エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤;不飽和ポリオレフィンなどの低(非)結晶性軟質重合体接着剤などである。接着剤は120〜150℃程度の耐熱性を有する。好ましい接着剤は変性ポリオレフィン系接着剤、ポリウレタン系接着剤である。
【0057】
接着剤組成物の形態は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいかなる形態でもよい。接着剤組成物の性状は、液状(一液型、二液型など)、シ−ト状、粉末状、フレーク状、ペレット状などいかなる性状でもよい。接着剤の接着型は、反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧着型などのいかなる接着型でもよい。
【0058】
上記接着剤は、例えば、ロ−ルコ−ト法、スクリーン印刷法などのコ−ト法によって積層でき、上記接着剤の積層量は、不揮発分量で通常、0.1〜50g/m2 、好ましくは、0.5〜20g/m2 であり、接着剤層の厚みは通常1〜50μm、好ましくは3〜30μmである。
【0059】
ポリエステル系樹脂シートおよび/または耐候性を有する環状オレフィン系樹脂シートの接着性を改良するために、樹脂シートの表面をコロナ処理、プラズマ処理などの方法で適宜処理できる。
【0060】
上記共押し出し法において、ポリエステル系樹脂と耐候性を有する環状オレフィン系樹脂とを共押し出しして積層する際に、その層間に、溶融押し出し接着性樹脂を使用できる。溶融押し出し接着性樹脂は、溶融押し出し成形が可能であり、かつ、熱によって溶融し相互に融着し得る樹脂である。当該接着性樹脂の具体例は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、不飽和カルボン酸(無水物)で変性した変性ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、不飽和カルボン酸(無水物)で変性した変性(水素化)スチレン−ジエン系ブロック共重合体系樹脂、無水マレイン酸変性環状オレフィン系樹脂などである。これらの樹脂の1種ないし2種以上を使用できる。
【0061】
ポリエステル系樹脂、耐候性を有する環状オレフィン系樹脂、溶融押し出し接着性樹脂を接着剤層を同時に押し出して、例えば、3種3層共押し出し、3種5層共押し出しなどにより積層体を製造できる。溶融押し出し接着性樹脂層の厚さは、通常1〜50μm、好ましくは3〜30μmである。
【0062】
太陽電池モジュール
以下、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを用いた太陽電池モジュールの実施形態を、図を用いて説明する。
【0063】
図1は結晶シリコン系太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。太陽光入射側を図1において上とし、それを前面と称する。透明前面基板1および裏面保護シート5との間に並列もしくは直列に配置され、配線4により結線された太陽電池素子2が充填剤3により封入固定されている。図1に示される透明前面基板1は、一般的にはガラスであり、太陽電池モジュール用裏面保護シート5は、耐候性を有する樹脂シートである。これらの前面透明基板1および裏面保護シート5の厚みは、通常、それぞれ10μm〜2,000μmの範囲である。
【0064】
本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートは、上記裏面保護シート5に代わる保護シートとして用いられる。
【0065】
図2は本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートを組み込んだ結晶シリコン系太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。耐候性を有する環状オレフィン系樹脂からなる層5Bを後面の最外層とし、該層の内側にポリエステル系樹脂からなる層5Aを配置している。裏面保護層をこのような多層構造とすることで、太陽電池モジュールの耐候性および耐湿性の向上が図れる。
【0066】
図3は、本発明に係る太陽電池モジュール用裏面保護シートを組み込んだ結晶シリコン系太陽電池モジュールの別の実施形態を示す概略断面図である。接着剤層5Cが、太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成するポリエステル系樹脂からなる層5Aと耐候性を有する環状オレフィン系樹脂からなる層5Bとの間に配置されている。
【0067】
図2及び3に示される本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを使用した実施形態は、防湿性および電気絶縁特性に優れ、耐候性を有する環状オレフィン系樹脂からなる層5Bを太陽電池モジュール後側の最外層に用い、その内側に機械的強度および電気絶縁特性に優れたポリエステル系樹脂からなる層5Aを用いているため、太陽電池モジュール内部への水分の侵入を防止し、外部からの物理的衝撃に対する高い保護性能を示し、両者のバランスから太陽電池モジュールの耐環境信頼性が備わっている。
また、充填材3からなる層とポリエステル樹脂からなる層5Aが直接又は接着層を介して接している方が密着性の面で好ましい。
【0068】
以上説明した太陽電池モジュールの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されており、本発明を限定しない。したがって、本発明の範囲内で種々の設計で実用化できる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。以下の例において、特に断りのない限り、部及び%は質量基準である。なお、各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
【0070】
(1)環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリイソプレン換算値として測定した。
(2)環状オレフィン系樹脂の水素添加率は、溶媒として重クロロホルムを用い、1H−NMRにより測定した。
(3)ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製DSC6220SII)を用いて、JIS K7121に基づいて測定した。
(4)シートの透湿度は、水蒸気透過テスター(LYSSY社製L80−5000型)を用いて、JIS K7129(A法)に基づいて温度:40℃、湿度:90%RHの条件下で測定した。
(5)引張り強度及び引張り伸びは、テンシロン万能試験機(ORIENTIC社製RTC−1125A)を用いて、JIS K7127に基づいて測定した。試験片を、チャック間距離10cm、引張速度100mm/分の条件で、破断するまで引張り、破断に至るまでの降伏時の強度を引張り強度として測定し、破断時の伸びを引張り伸びとして測定した。
(6)絶縁破壊電圧は、絶縁破壊試験装置(ヤマヨ試験器社製YST−243−100RHO)を用いて、JIS C2110に基づき、23℃のシリコンオイル中で測定した。
(7)耐候性の評価は、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製WEL−SUN−HC・B)を用いて、サンシャインカーボンアーク灯、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件にて、240時間露光した後取り出し、引張り強度、引張り伸び、透湿度の測定により実施した。
(8)シートの熱処理評価は、太陽電池モジュール製造工程での真空加熱封止時に必要とされる150℃程度の温度を想定し、シートを150℃、30分、圧力0.1MPaで熱プレスにより加熱処理した後の引張り強度、引張り伸びの変化の測定により実施した。
(9)シートの高温高湿試験は以下のように実施した。まず、縦250mm×横250mmのシートの外周部20mm幅に接着剤(三井・デュポンポリケミカル社製エバフレックス EV40LX)をシート状にして積層し、ガラス板上に重ねて、150℃、3分、圧力0.1MPaの条件で張り合わせて試験サンプルを作成した。この試験サンプルをプレッシャークッカー試験機で、120℃、100%RH、2気圧の条件で90時間保持した後、外観観察および接着剤を施していないシートの内周部を切り出して絶縁破壊強さを測定した。
【0071】
参考例1
環状オレフィン系樹脂bi (開環重合体水素化物)
窒素で置換した反応器に、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕テトラデカ−2,4,6,11−テトラエン(ノルボルナン構造が1つのモノマー。以下、「MTF」と略す)とトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ノルボルナン構造が1つのモノマー。以下、「DCP」と略す)とテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(ノルボルナン構造が2つのモノマー。以下、「TCD」と略す)の58:4:38質量比の混合物7部(重合に使用するモノマー全量に対して1質量%)とシクロヘキサン1600部を加え、トリ−i−ブチルアルミニウム0.57部とイソブチルアルコール0.21部、反応調整剤としてジイソプロピルエーテル0.85部、及び分子量調節剤として1−ヘキセン4.86部を添加した。ここに、シクロヘキサンに溶解させた0.65%の六塩化タングステン溶液24.3部を添加して、55℃で10分間攪拌した。次いで、反応系を55℃に保持しながら、MTFとNBとTCD(58:4:38質量比)の混合物を693部とシクロヘキサンに溶解させた0.65%の六塩化タングステン溶液48.9部とをそれぞれ系内に150分かけて連続的に注入した。その後、30分間反応を継続し開環重合を終了した。
【0072】
重合終了後、ガスクロマトグラフィーにより未反応モノマー量を測定して重合転化率を計算した結果、重合終了時で99%以上であった。
【0073】
得られた開環重合反応液を耐圧性の水素化反応器に移送し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(ズードケミー触媒社製T8400RL、ニッケル担持率57%)20部及びシクロヘキサン500部を加え、180℃で、水素により4.5MPaに加圧し、6時間反応させた。冷却した後、この反応溶液を、加圧濾過器(石川島播磨重工社製フンダフィルター)を使用して、珪藻土(昭和化学工業社製ラヂオライト#500)を濾過床として、圧力0.25MPaで濾過して水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。次いで前記水素化物100部あたり0.5部の酸化防止剤であるペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・ジャパン社製Irganox 1010)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、セータープラスフィルター30H(キュノー社製、孔径0.5〜1μm)にて順次濾過しさらに別の金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にて濾過して微小な固形分を除去した。次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮乾燥器に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーでカットして開環重合体水素化物(環状オレフィン系樹脂bi)ペレット650部を得た。得られた開環重合体水素化物のMwは42000、
Mw/Mnは2.2、水素転化率は99.9%以上、Tgは159℃であった。
【0074】
開環重合体合成時の重合転化率が99%以上であり、水素転化率も99.9%以上と高いため、開環重合体水素化物中の、MTF由来の構造単位(MTF単位)、DCP由来の構造単位(DCP単位)、及びTCD由来の構造単位(TCD単位)の割合は、開環重合体の製造に用いたモノマーの重量割合にほぼ等しいと推定される。
【0075】
押出しフィルム化
得られた環状オレフィン系樹脂biのペレットを、空気を流通させた熱風乾燥器を用い
て100℃で4時間加熱して、溶存空気および水分を除去した後、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅500mm)を使用し、溶融樹脂温度270℃、Tダイ温度270℃の成形条件にて、厚さ100μm、幅500mmのシート(Sbi)を押出し成形した。得られたシート(Sbi)はロールに巻き取り回収した。
【0076】
耐候性試験
シート(Sbi)を用いて耐候性試験を実施し、試験前後の引張り強度、引張り伸び、
透湿度を測定した。その結果、試験前では、引張り強度 80MPa、引張り伸び7%、透湿度 0.80g/m2・dayであったが、試験後は、引張り強度 11MPa、引張り伸び 2%、透湿度 2.5g/m2・dayとなり、機械的強度の低下、透湿度の増加が観られた。試験後のシートの赤外吸収スペクトルでは、1750cm-1にC=O基に起因する強い吸収が観察され、樹脂の酸化が進んでいることが推察された。
【0077】
シート(Sbi)は、特開2000−106450号公報に開示された環状オレフィン
系樹脂に該当する、ノルボルナン構造が1つのモノマーの含有率が62%の環状オレフィン系樹脂を使用しているが、必ずしも十分な耐候性を有するとは言えないことを示す結果である。
【0078】
参考例2
環状オレフィン系樹脂bii (開環重合体水素化物)
参考例1のモノマー組成MTF:DCP:TCD=58:4:38質量比に代えて、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(ノルボルナン構造が2つのモノマー。以下、「MTD」と略す)とDCP(ノルボルナン構造が1つのモノマー)の75:25質量比の混合物を使用する以外は参考例1と同様にして、開環重合体水素化物ペレット(環状オレフィン系樹脂bii)600部を得た。得られた開環重合体水素化物のMwは48000、Mw/Mnは2.2、水素転化率は99.9%以上、Tgは133℃であった。
【0079】
得られたペレット(環状オレフィン系樹脂bii)を、参考例1と同様にして溶存空気および水分を除去した後、溶融樹脂温度を240℃、Tダイ温度240℃にする以外は参考例1と同様にして、厚さ100μmのシート(Sbii)を成形した。
【0080】
シート(Sbii)を用いて、参考例1と同様にして耐候性試験を実施した。その結果、試験前では、引張り強度 67MPa、引張り伸び 35%、透湿度 1.7g/m2・dayであったが、試験後は、引張り強度 15MPa、引張り伸び 3%、透湿度 4.3g/m2・dayとなり、機械的強度の低下、透湿度の増加が観られた。試験後のシートの赤外吸収スペクトルでは、1750cm-1にC=O基に起因する強い吸収が観察され、樹脂の酸化が進んでいることが推察された。
【0081】
シート(Sbii)は、特開2000−106450号公報に開示された環状オレフィン系樹脂に該当する、ノルボルナン構造が1つのモノマーの含有率が25%の環状オレフィン系樹脂を使用しているが、必ずしも十分な耐候性を有するとは言えないことを示す結果である。
【0082】
参考例3
耐光安定剤を配合した環状オレフィン系樹脂biv (開環重合体水素化物)
参考例1で得たペレット(環状オレフィン系樹脂bi)100部に、ヒンダードアミン
系耐光安定剤であるテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製アデカスタブLA52)1.5部、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕(チバ・ジャパン社製Chimassorb 944 FDL)1.5部、および、紫外線吸収剤である2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(チバ・ジャパン社製Tinuvin 329)0.2部を添加し、参考例3と同様に、二軸押出機を用いて、樹脂温度 260℃で混練して、環状オレフィン系樹脂bivのペレット97部を得た。環状オレフィン系樹脂bivのTgは157℃であった。
【0083】
得られた環状オレフィン系樹脂bivのペレットを、参考例1と同様にして、厚さ30μm、100μmおよび200μmのシート(Sbiv)を成形した。
厚さ30μm、100μmおよび200μmのシート(Sbiv)のそれぞれの透湿度は、2.7g/m2・day、0.82g/m2・dayおよび0.41g/m2・dayであった。
【0084】
厚さ100μmのシート(Sbiv)を用いて、参考例1と同様にして耐候性試験を実施した。その結果、試験前では、引張り強度 78MPa、引張り伸び 8%であり、試験後は、引張り強度 83MPa、引張り伸び 7%、透湿度 0.83g/m2・dayとなった。弾性率が大きくなり、機械的強度が少し高くなったが、透湿度の大きな変化は観られなかった。試験後のシートの赤外吸収スペクトルでは、1750cm-1の樹脂の酸化に基づくC=O基に起因する吸収増加はほとんど見られなかった。
以上の結果から、シート(Sbiv)は十分な耐候性を有するものと判断された。
【0085】
参考例4
耐光安定剤を配合した環状オレフィン系樹脂bv(開環重合体水素化物)
ペレットを参考例2で得たペレット(環状オレフィン系樹脂bii)に変え、樹脂温度を240℃に変える以外は、参考例4と同様にして、耐光安定剤および紫外線吸収剤を添加して、環状オレフィン系樹脂bvのペレット95部を得た。環状オレフィン系樹脂bv
のTgは131℃であった。
【0086】
得られたペレット(環状オレフィン系樹脂bv)を、参考例2と同様にして、厚さ100μm、200μmのシート(Sbv)を成形した。
厚さ100μm、200μmのシート(Sbv)それぞれの透湿度は、1.8g/m2・dayおよび0.90g/m2・dayであった。
【0087】
厚さ100μmのシート(Sbv)を用いて、参考例1と同様にして耐候性試験を実施した。その結果、試験前では、引張り強度 64MPa、引張り伸び 40%であり、試験後は、引張り強度 79MPa、引張り伸び 9%、透湿度 1.8g/m2・dayとなった。弾性率が大きくなり、機械的強度が少し高くなり、伸びは低下したが、透湿度の変化は観られなかった。試験後のシートの赤外吸収スペクトルでは、1750cm-1の樹脂の酸化に基づくC=O基に起因する吸収増加はほとんど見られなかった。
以上の結果から、シート(Sbv)は十分な耐候性を有するものと判断された。
【0088】
参考例5
ポリエチレンテレフタレート(三菱化学社製ノバペックスGG500S)100部に、参考例4と同様の耐光安定剤および紫外線吸収剤を添加し、二軸押出機を用いて、樹脂温度240℃で混練して、ポリエステル系樹脂aviiのペレット97部を得た。
【0089】
得られたポリエステル系樹脂aviiのペレットを参考例1と同様にして、熱風乾燥器を用いて60℃で24時間加熱して水分を除去した後、溶融押出し成形機を使用して、溶融樹脂温度230℃、Tダイ温度230℃の成形条件にて、厚さ100μm、150μm、170μm、200μmのシート(Savii)を押出し成形した。
【0090】
実施例1
参考例3で作成した厚さ100μmの環状オレフィン系樹脂シート(Sbiv)および参考例5で作成した厚さ100μmのポリエステル系樹脂シート(Savii)からそれぞれ250mm四方にサンプルシートを切り出した。ポリエステル系樹脂シート(Savii)の片面をコロナ放電処理した後、処理面を内側にして、環状オレフィン系樹脂サンプルシートと対向させ、2枚のシートの間に、約10g/m2になるように接着性樹脂ペレット(三菱化学社製モディック M545)を配置して、熱プレスにより130℃、圧力0.45MPaで3分間圧着し多層シート(1)を作成した。
【0091】
多層シート(1)の引張り強度は81MPa、引張り伸びは68%であり、絶縁破壊強さは167kV/mmであった。
多層シート(1)の150℃、30分の熱処理後の引張り強度は81MPa、引張り伸びは 66%で、強度及び靭性を維持していた。多層シート(1)を、ポリエステル系樹脂シート(Savii)側をガラス面に向けて接着させ、高温高湿試験にかけた後の絶縁破壊強さは160kV/mm(変化率は−4%)で、ほとんど変化は認められなかった。これらの結果を表1に示す。
【0092】
実施例2
参考例4で作成した厚さ100μmの環状オレフィン系樹脂シート(Sbv)を使用する以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル系樹脂シート(Savii)/接着性樹脂層/環状オレフィン系樹脂シート(Sbv)からなる多層シート(2)を作成した。
【0093】
多層シート(2)の引張り強度は75MPa、引張り伸びは70%であり、絶縁破壊強さは162kV/mmであった。
【0094】
多層シート(2)の熱処理後の引張り強度は77MPa、引張り伸びは67%で、強度、靭性を維持していた。また、多層シート(2)を実施例1と同様にポリエステル系樹脂シート(Savii)側をガラス面に向けて接着させ、高温高湿試験にかけた後の絶縁破壊強さは147kV/mm(変化率は−9%)で、大きな変化は認められなかった。これらの結果を表1に示す。
【0095】
実施例3
参考例3で作成した厚さ200μmの環状オレフィン系樹脂シート(Sbiv)および参考例5で作成した厚さ150μmのポリエステル系樹脂シート(Savii)を使用する以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル系樹脂シート(Savii)/接着性樹脂層/環状オレフィン系樹脂シート(Sbiv)からなる多層シート(4)を作成した。
【0096】
多層シート(4)の引張り強度は82MPa、引張り伸びは68%であり、絶縁破壊強さは132kV/mmであった。
【0097】
多層シート(4)の熱処理後の引張り強度は84MPa、引張り伸びは65%で、強度、靭性を維持していた。多層シート(4)を実施例1と同様にポリエステル系樹脂シート(Savii)側をガラス面に向けて接着させ、高温高湿試験にかけた後の絶縁破壊強さは128kV/mm(変化率は−3%)で、ほとんど変化は認められなかった。これらの結果を表1に示す。
【0098】
実施例4
参考例4で作成した厚さ200μmの環状オレフィン系樹脂シート(Sbv)および参考例5で作成した厚さ150μmのポリエステル系樹脂シート(Savii)を使用する以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル系樹脂シート(Savii)/接着性樹脂層/環状オレフィン系樹脂シート(Sbv)からなる多層シート(5)を作成した。
【0099】
多層シート(5)の引張り強度は76MPa、引張り伸びは70%であり、絶縁破壊強さは125kV/mmであった。
【0100】
多層シート(5)の熱処理後の引張り強度は83MPa、引張り伸びは66%で、強度、靭性を維持していた。多層シート(5)を実施例1と同様にポリエステル系樹脂シート(Savii)側をガラス面に向けて接着させ、高温高湿試験にかけた後の絶縁破壊強さは118kV/mm(変化率は−5%)で、ほとんど変化は認められなかった。これらの結果を表1に示す。
【0101】
実施例5
参考例3で作成した厚さ30μmの環状オレフィン系樹脂シート(Sbiv)(このシートは透湿度が大きい)および参考例5で作成した厚さ170μmのポリエステル系樹脂シート(Savii)を使用する以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル系樹脂シート(Savii)/接着性樹脂層/環状オレフィン系樹脂シート(Sbiv)からなる多層シート(6)を作成した。
【0102】
多層シート(6)の引張り強度は88MPa、引張り伸びは73%であり、絶縁破壊強さは147kV/mmであった。
【0103】
多層シート(6)の熱処理後の引張り強度は90MPa、引張り伸びは70%で、強度及び靭性を維持していた。しかし、多層シート(6)を、ポリエステル系樹脂シート(Savii)面でガラス面に接着させ、高温高湿試験にかけた後の絶縁破壊強さは121kV/mm(変化率は−18%)で、若干の低下が認められた。これらの結果を表1に示す。
【0104】
比較例1
参考例3で作成した厚さ200μmの環状オレフィン系樹脂シート(Sbiv)を単層で使用する以外は、実施例1と同様にして、シートの評価を行った。
【0105】
このシートの引張り強度は78MPa、引張り伸びは7%であり、絶縁破壊強さは139kV/mmであった。
【0106】
このシートの熱処理後の引張り強度は81MPa、引張り伸びは6%で、強度を維持していたが、熱処理前でも引張り伸びが小さく、靭性に劣るものであった。このシートをガラス面に接着させ、高温高湿試験にかけた後の絶縁破壊強さは134kV/mm(変化率は−4%)で、ほとんど変化は認められなかった。これらの結果を表1に示す。
【0107】
比較例2
参考例4で作成した厚さ200μmの環状オレフィン系樹脂シート(Sbv)を単層で使用する以外は、実施例1と同様にして、シートの評価を行った。
【0108】
このシートの引張り強度は65MPa、引張り伸びは40%であり、絶縁破壊強さは133kV/mmであった。
【0109】
このシートの熱処理後の引張り強度は75MPa、引張り伸びは7%で、強度は維持していたが、熱処理後には引張り伸びは大きく低下し、靭性に劣るものであった。このシートをガラス面に接着させ、高温高湿試験にかけた後の絶縁破壊強さは126kV/mm(変化率は−5%)で、ほとんど変化は認められなかった。これらの結果を表1に示す。
【0110】
比較例3
参考例5で作成した厚さ200μmのポリエステル系樹脂シート(Savii)を単層で使用する以外は、実施例1と同様にして、シートの評価を行った。
【0111】
このシートの引張り強度は96MPa、引張り伸びは72%であり、絶縁破壊強さは105kV/mmであった。
【0112】
このシートの熱処理後の引張り強度は99MPa、引張り伸びは70%で、強度及び靭性を維持していた。しかし、このシートをガラス面に接着させ、高温高湿試験にかけた後の絶縁破壊強さは74kV/mm(変化率は−29%)で、大きな低下が認められた。これらの結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の太陽電池モジュール用保護シートは、太陽電池素子の保護に有用である。
【符号の説明】
【0115】
1・・・透明前面基板、2・・・太陽電池素子、3・・・充填剤、4・・・配線、5・・・裏面保護シート、5A・・・ポリエステル系樹脂からなる層、5B・・・環状オレフィン系樹脂からなる層、5C・・・接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明前面基板、太陽電池素子、太陽電池素子を密封する充填剤、および、裏面保護シートを有する太陽電池モジュ−ルに用いられ、
ポリエステル樹脂からなる層(A)と環状オレフィン系樹脂からなる層(B)が設けられており、
上記環状オレフィン系樹脂が、1価の置換基を有さず、かつ、ノルボルナン構造が1つのノルボルネン系モノマー由来の構造単位を20質量%以上含有し、
上記環状オレフィン系樹脂からなる層(B)が、環状オレフィン系樹脂100質量部に対してヒンダードアミン系耐光安定剤1.0〜10.0質量部を含有する、太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
上記環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が150℃以上である、請求項1に記載された太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
環状オレフィン系樹脂からなる層(B)の40℃、相対湿度90%の環境下における透湿度が、3.0g/m2・day以下である、請求項1又は2に記載された太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
上記ポリエステル系樹脂がポリエチレンテレフタレートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載された太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項5】
ポリエステル系樹脂からなる層(A)と環状オレフィン系樹脂からなる層(B)が接着剤層(C)を介して積層されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載された太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項6】
上記接着剤が(i)無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、(ii)エチレン/酢酸ビニル共重合体、(iii)変性スチレン系エラストマー、(iv)不飽和ポリオレフィン系軟質重合体、(v)エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸3元共重合体、(vi)ポリウレタン系接着樹脂から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項5に記載された太陽電池モジュール用裏面保護シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−77250(P2011−77250A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226398(P2009−226398)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】