説明

太陽電池モジュール用裏面保護シート

【課題】本発明は、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れ、水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性を著しく向上させ、電力出力特性を長期にわたり維持することが可能な耐久性を有し、かつ、安価な太陽電池モジュール用裏面保護シートを提供することを目的とする。
【解決手段】フィルム基材の片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルム(Ia)と、フィルム基材の片面に無機化合物からなる蒸着層を有し、その蒸着層が、前記ガスバリア性フィルム(Ia)の2倍以上の蒸着厚みを有するガスバリアフィルム(II)とを順次積層し、前述の(Ia)のガスバリア性フィルムが、太陽電池素子側(8)に配置されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用裏面保護シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギー源である太陽光発電に対する期待が高まっている。太陽光発電を行う太陽電池モジュールは、一般的に太陽光が当たる面をガラスで覆い、太陽電池内の太陽電池モジュールの固定および保護、電気絶縁の目的でエチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)やアイオノマー等の熱可塑性プラスチックらなる充填材で間隙を埋め、さらに太陽電池モジュール裏面を封止用シートで保護された構成からなっている。これらの太陽電池モジュールは、屋外で使用されるため、その構成、材質構造などにおいて、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性等の耐久性が要求されると共に、裏面保護シートには外部からの水蒸気(水分)や酸素の進入を遮断するためのガスバリア性が要求される。これは水蒸気(水分)の透過により充填材が剥離や、変色、配線の腐蝕を起こした場合、モジュールの出力そのものに影響を及ぼす恐れがあるためである。
【0003】
太陽電池モジュールは、20〜30年間の製品保証を行う必要があることからその製品性能を過酷条件下で保存した耐久試験を実施する。過酷条件は85℃−85%相対湿度下に2000〜3000時間保存や、PCT評価(加圧蒸気による促進試験)で105℃−100%相対湿度下に100時間保存後に性能評価を行うものである。これらの試験後、太陽電池裏面封止シートがデラミネーションに伴う外観不良やガスバリア性能の低下を起こすと、太陽電池モジュールの出力低下が起こる。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1に記載されるような、太陽電池裏面保護シートにガスバリアフィルムを用いたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−200385号公報
【0006】
太陽電池モジュールに使用されるセルが単結晶や多結晶シリコンからなる結晶系太陽電池では、耐湿性が高いため、上述で提案されたガスバリアフィルムを用いた太陽電池裏面保護シートで長期間の性能保証が可能である。しかしアモルファスシリコンや微結晶シリコン薄膜からなる薄膜系太陽電池や、化合物系や有機物系などの太陽電池は、モジュールの構造上、水分や酸素の影響を受けやすく、また有機物系太陽電池では、太陽電池を構成する成分の気散を防止するため、裏面保護シートには、高いガスバリア性が要求される。上述で提案されたガスバリアフィルムのバリア性能では十分ではなく、長期間の性能保証するめの虐待試験で太陽電池の性能の劣化を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れ、水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性を著しく向上させ、高温・高湿環境下でのガスバリア性能および太陽電池としての電力出力特性を長期にわたり維持することが可能な耐久性を有する太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明者が発明したシートは、
フィルム基材の片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルム(I)と、前記ガスバリア性フィルムの蒸着層の厚みが2倍以上のガスバリアフィルム(II)とを順次積層し、前述の(I)のガスバリア性フィルムが、太陽電池素子側に配置されていることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記ガスバリア性フィルム(II)の最外層側に耐候性フィルムが積層されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面保護シートである。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記ガスバリア性フィルムのフィルム基材がポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0011】
請求項4に係る発明は、 前記無機化合物が酸化珪素からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【0012】
請求項5に係る発明は、 前記蒸着層の上に、水酸基含有高分子化合物と金属アルコキシドとシランカップリング剤及び/またはそれらの加水分解物の少なくとも1種類以上を含む複合被膜層を積層することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シートである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートは高温高湿環境下の促進評価試験条件においてもガスバリア性や密着を保持し、太陽電池としての電気出力特性を維持した。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の太陽電池素子側に使用に用いるガスバリア性フィルム構成(Ia)の1実施例を示した説明図である。
【図2】本発明の大気側に使用に用いるガスバリア性フィルム構成(II)の1実施例を示した説明図である。ここで、蒸着層3bは、3b≧3a×2の厚い蒸着層である。
【図3】本発明の太陽電池素子側に使用に用いるガスバリア性フィルム構成(Ib)の第2の実施例を示した説明図である。
【図4】本発明の太陽電池素子側に使用に用いるバックシート全体のフィルム構成の1実施例を示した説明図である。
【図5】本発明の太陽電池素子側に使用に用いるバックシート全体のフィルム構成の1実施例を示した詳細説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。図1、2、3はガスバリア性フィルム、図4、5は発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの一実施形態を示す断面図である。
【0016】
ガスバリア性フィルムの一実施形態として図1は基材フィルム(1)の片面にアンカーコート層(2)、無機化合物からなる蒸着層(3a)、複合被膜層(4)を順次積層したガスバリア性フィルム(Ia)である。
【0017】
図2は、蒸着層(3b)の厚みが(3a)の2倍以上(3b ≧ (3a)×2)である他は(I)と同様のガスバリア性フィルム(II)である。
【0018】
図3は、基材フィルム(1)の片面にアンカーコート層(2)、無機化合物からなる蒸着層(3a)、複合被膜層(4)、蒸着層(3a)、複合被膜層(4)を順次積層したガスバリア性フィルム(Ib)である。
【0019】
ガスバリア性フィルムを詳細に説明する。本発明で用いられるガスバリア性フィルムの基材フィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、6,6−ナイロンナドノポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等のエンプラフィルム等が用いられ、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械強度や寸法安定性を有するものが良い。これらをフィルム状に加工して用いられる。特に、これらの中で二軸方向に任意に延伸されたフィルムを用いたフィルムで、価格面、防湿性、充填適性、風合い、廃棄性を考慮すると、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0020】
また、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得るためには、ポリエステル基材は耐加水分解性に優れたものが好ましい。ポリエステルの加水分解は末端カルボキシル基により進むため、耐加水分解性を向上させるには末端カルボキシルキの濃度が減少しているポリエステル組成物からなる必要がある。ポリエステル中の末端カルボキシル基の濃度は、ANALYTICL CHEMISTRY第26巻、1614ページに記載された方法にて測定され、末端カルボキシ基濃度が10当量/106g以下ならば加水分解が起こりにくい。ポリエステルの末端カルボキシル基を減少させるためには、エポキシ化合物やカルボジイミドを混合し、反応させる方法などがある。
【0021】
ガスバリア性フィルムの基材フィルムには、酸化チタンの他、酸化珪素、炭酸カルシウム、窒化珪素、クレー、タルク、カオリン(kaolin)、ジルコニウム酸などの各種無機粒子や架橋高分子粒子、各種金属粒子などの粒子類のほか、従来公知の抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐光剤、包接化合物、帯電防止剤、各種着色剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種フッ素化合物が添加されていてもよい。
【0022】
上記のフィルム基材には密着性を向上させるために、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、オゾン処理、グロー放電処理その他の前処理を任意に施すことができる。
【0023】
フィルム基材の厚さはとくに制限を受けるものではないが、密着層、無機化合物層、複合被膜層を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましい。
【0024】
ガスバリア性フィルムは、フィルム基材の片面に無機化合物からなる蒸着層を設ける必要がある。
【0025】
またフィルム基材と蒸着層との間に密着性を高め、基材表面の平滑性を向上させる目的でアンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層にウレタン結合を含むものは密着性が良好で、特にそのような二液反応化合物からなるアンカーコートを設けることが望ましい。
【0026】
アンカーコート層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を用いることができる。乾燥条件については、一般的に使用される条件で構わない。また反応を促進させるために、高温のエージング室等に数日放置することも可能である。
【0027】
次に、無機化合物層からなる蒸着層(3a、3b)について詳しく説明する。無機化合物層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、あるいはそれらの混合物などの無機化合物の蒸着膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する層であればよい。特に耐水性に優れる酸化珪素を用いることがより好ましい。ただし無機化合物層の材料は、酸化珪素に限定されない。しかし、酸化珪素を主成分の蒸着層にし、他の無機化合物が1種類以上混合した場合でも、蒸着層の主成分を酸化珪素にすれば、耐水性・酸素、水蒸気バリア性が高く、耐久性のある構成にできる。
【0028】
無機化合物からなる蒸着層の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。生産性を加味するとより好ましいのは10nmから200nmである。
【0029】
無機化合物層をフィルム基材上に形成する方法としては種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。但し、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いても良いが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると電子線加熱方式を用いることがより好ましい。
【0030】
次いで、蒸着層の上に設ける複合被膜層(4)を説明する。複合性被膜層は、水酸基含有高分子化合物と金属アルコキシドとシランカップリング剤及び/またはそれらの加水分解物の少なくとも1種類以上を含む必要がある。
【0031】
複合被膜層は、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドとシランカップリング剤及び/またはそれらの加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドとシランカップリング剤を直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液とする。
【0032】
複合被膜層のコーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)は単体でのガスバリア性が最も優れるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものである。PVAとしては例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分鹸化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等用いることができ、これ以外のものを用いても構わない。
【0033】
また、金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3,C25等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシランが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。 テトラエトキシシランと水溶性高分子と混合する際に、一部または全部を加水分解して混合する。加水分解は一般的には酸またはアルカリの触媒を用いて、水/アルコール混合溶媒中で行うが、その他どんな加水分解方法でもかまわない。
【0034】
また、シランカップリング剤は一般式、R1Si(OR2)n(R1:有機官能基、R2:CH3,C25等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的には、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメトキシシラン、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のシランカップリング剤などである。選定するシランカップリング剤の種類によって、金属アルコキシドと同時に加水分解しても良いし、シランカップリング剤のみで加水分解を行っても良いし、また加水分解を行わなくても良い。
【0035】
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の方法を用いることが可能である。
【0036】
複合被膜層の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって最適条件が異なり特に限定しない。但し、乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一な塗膜が得られなく十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲にあり、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にあることである。
【0037】
さらに複合被膜層の上に蒸着層と複合被膜層を積層させ、基材側から密着層/蒸着層/複合性被膜層/蒸着層/複合性被膜層の順で積層させることでバリア性をさらに向上させ、ハイバリアが必要な用途に使用しても良い。
【0038】
ガスバリア性フィルム(I)の蒸着層(3a)とガスバリア性フィルム(II)の蒸着層(3b)の蒸着層の厚みは
3b ≧ (3a)×2
である必要があり、(I)、(II)を順次積層し、(I)が太陽電池素子側に配置させて太陽電池モジュール用裏面保護シートを形成させる必要がある。
【0039】
無機化合物からなる蒸着膜のガスバリア性は、膜厚との相関は低く、10nm〜200nmの範囲でバリア性に差はないが、膜厚は耐湿性、耐水性に依存する。膜厚が厚い方が、耐湿性、耐水性が高く、長期間の過酷試験によるバリア劣化を遅らせることができる。蒸着層の厚みが2倍である3bのガスバリア性フィルム(II)を大気側に配することで、(II)は、太陽電池のセルではなく、(I)のガスバリア性フィルムを保護するため、高いバリア性能を過酷な環境下でも長期間保持できる。(I)、(II)共に厚膜にすると、厚膜化のために蒸着スヒ゜ート゛を遅くする必要があり生産性が低下する。また蒸着膜の厚膜化により蒸着膜に亀裂が入りやすくなるため、フィルムに出来る限りテンションをかけず、応力ひずみを極力生じさせないような機械の仕様や工程間の管理手順を増やす必要があり、さらに生産性が低下する。生産性を考慮するとガスバリア性フィルム(II)のみ蒸着層の厚みを、(I)の2倍にした方が好ましい。
【0040】
またガスバリア性フィルム(I)は、複合性被膜層の上に蒸着層と複合性被膜層を積層させ、基材側から密着層/蒸着層/複合性被膜層/蒸着層/複合性被膜層の順で積層させることでバリア性をさらに向上させた、非常に高いハイバリアフィルムにしても良い。(I)を保護するガスバリア性フィルム(II)と組み合わせることにより、過酷な環境下において
も長期間高い非常に高いバリア性能を保持することができる。
【0041】
ガスバリア性フィルム(I)とガスバリア性フィルム(II)を積層させる場合、接着剤を介し蒸着層同士を相対するように貼り合せても良いし、蒸着層が逆面を向くようにフィルム基材同士を貼り合せても良い。蒸着層が同方向を向くように並列になるように貼り合せても良い。貼り合せの工程や太陽電池モジュール用裏面保護シートの構成によって適宜選択できる。
【0042】
図4は本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートの構成の一実施例である。耐候性フィルム(5)、ガスバリア性フィルム(II)、(I)、着色フィルム(6)をこの順番で順次積層し、太陽電池モジュール用裏面保護シートが形成される。
【0043】
耐候性フィルム(5)とは、耐加水分解性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルム、もしくはフッ素樹脂フィルムである。フッ素樹脂フィルムは、フッ化ビニル樹脂(PVF)フィルム、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)フィルム、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)フィルム、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィルムから選ばれるフッ素系基材が上げられる。また反射率を上げるために、酸化チタンなどの白色顔料をフィルム中に分散させ白色化してもよい。
【0044】
着色フィルムは、太陽電池モジュールの光利用効率を向上させ発電効率を向上させる機能があり、特に白色は反射率が高く好ましい。白色フィルムとしては、ポリエステルフィルムやエチレン−酢酸ビニル(EVA)フィルムに白色顔料をフィルム表面に塗布する方法や、フィルム成形時に練り込む方法、フィルム樹脂中に発泡気泡を有することにより白色性を発現させるものなどがあり、どれを用いても良い。また意匠性の点から黒色フィルムを用いてもかまわない。
【0045】
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成する各種基材を積層する方法としては、例えば、ドライラミネ−ション積層方式を採用して積層することができる。ドライラミネ−ション用接着剤としては、接着強度が長期間の屋外使用で劣化によるデラミネーションなどを生じないこと、さらに接着剤が黄変しないことなどが必要であり、高耐熱性、耐湿熱性等に対応するために、接着剤を構成するビヒクルの主成分としての樹脂等が、架橋ないし硬化して三次元網目状の架橋構造等を形成し得るものを使用することが望ましい。例えば、2液硬化型ポリウレタン系接着剤等脂肪族系・脂環系イソシアネ−ト、あるいは、芳香族系イソシアネ−ト等のイソシアネ−ト系の硬化剤または架橋剤の存在下、熱、または光からなる反応エネルギーによりラミネ−ト用接着剤が架橋構造を形成するものが良い。
【0046】
上記で得られる本発明の太陽電池モジュ−ル用裏面保護シートを用いてなる、太陽電池モジュールは、長期間にわたる過酷な自然環境に耐え得る、耐熱性、耐候性、耐加水分解性、防湿性、軽量性等の諸特性に優れており、特に水蒸気(水分)や酸素等の侵入を防止するガスバリア性が著しく向上し且つ長期間維持されるため、太陽電池としての電気出力特性を長期にわたり保持することが可能である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に本発明を説明する。まず、本発明の下記の実施例において使用した材料について下記に記す。
【0048】
[アンカーコート層を形成する液]
アクリルポリオールとトリイジルイソシアネートをアクリルポリオールのOH基に対し、NCO基が等量となるように加え、全固形分が5重量%になるよう酢酸エチルで希釈して混合した溶液(液1)。
[複合被膜層を形成する液]
テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N(規定濃度))89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3重量%(SiO2換算)の加水分解溶液(A液)。
ポリビニルアルコールの3重量%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)(B液)。
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを0.1N(規定濃度)塩酸/イソプロピルアルコール溶液の混合溶液(0.1N(規定濃度)塩酸:イソプロピルアルコール重量比で1:1)で3重量%に希釈した液(C液)。
A液、B液、C液を配合比(重量%)で70/20/10に混合した溶液(液2)。
【0049】
<ガスバリア性フィルムIa>
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 ルミラーP60(片面コロナ放電処理グレード)12μm)を基材として、その片面上に、アンカーコート層として液1をグラビアコート法により厚さ0.2μm(乾燥状態)形成した。次いで、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、厚さ30nmの酸化ケイ素からなる無機化合物蒸着層を形成した。さらに、その上に液2をグラビアコーターで塗布し乾燥機で100℃、1分間乾燥させ、厚さ0.3μm(乾燥状態)の複合被膜層を形成しガスバリア性フィルム(Ia)を得た。
【0050】
<ガスバリア性フィルムIb>
ガスバリア性フィルムIaの複合被膜層の上に、厚さ30nmの酸化ケイ素からなる無機化合物蒸着層を形成した。さらに、その上に液2のコーティング剤をグラビアコーターで塗布し乾燥機で100℃、1分間乾燥させ、厚さ0.3μm(乾燥状態)の被膜層を形成しガスバリア性フィルム(Ib)を得た。
【0051】
<ガスバリア性フィルム II>
上述のガスバリア性フィルム(Ia)において、蒸着層の厚みを70nmにした以外はIaと同様にしてガスバリア性フィルムIIを得た。
【0052】
<実施例1>
大気側(太陽電池素子反対側)から、耐加水分解性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 X10S 100μm )と、ガスバリア性フィルム(II)、ガスバリア性フィルム(Ia)、白色ポリエステルフィルム(東レ株式会社製 E20 50μm)を順次、ウレタン系接着剤(塗布量10g/m2)を介してラミネートし、実施例1の太陽電池裏面保護シートを作製した。尚、ガスバリア性フィルム(II)、ガスバリア性フィルム(Ia) の蒸着面は白色ポリエチレンテレフタレートフィルム側に配するように積層した。
【0053】
<実施例2>
実施例1において、ガスバリア性フィルム(Ia)の代わりに、ガスバリア性フィルム
(Ib)を用いた以外は同様にして、太陽電池裏面保護シートを作製した。尚、ガスバリア性フィルム(II)、ガスバリア性フィルム(Ib)の蒸着面は白色ポリエステルフィルム側に配するように積層した。
【0054】
<比較例1>
実施例1において、ガスバリア性フィルム(II)、ガスバリア性フィルム(Ia)の代わりに、ガスバリア性フィルム(II) を積層せず、ガスバリア性フィルム(Ia)のみを
用いた以外は同様にして、太陽電池裏面保護シートを作製した。尚、ガスバリア性フィルム
(Ia)の蒸着面は白色ポリエチレンテレフタレートフィルム側に配するように積層した。
【0055】
<水蒸気バリア性評価>
得られた太陽電池裏面保護シートの水蒸気バリア性を、水蒸気透過度測定装置(商品名:アクアトラン モコン社製)により40℃90%相対湿度雰囲気下で測定した。次にガラス板からなる太陽電池モジュ−ル用表面保護板、200μmのEVAシートからなる充填材シート、その上に10cm×10cmのポリエチレンテレフタレートフィルム(50μm)を配し、さらにその上に本発明で得られた太陽電池裏面保護シートの白色ポリエチレンテレフタレートフィルム側を充填材層に向けて配置した。真空吸引等により一体化して150℃、20分間熱プレスにより加熱圧着成形により一体成形体した。これを85℃85%RH環境下に2000h保存して耐久試験を実施した。試験後、10cm×10cmのポリエチレンテレフタレートフィルムを挟んだ部分を切り出して、太陽電池裏面保護シートのみを取り出し、水蒸気透過度を測定した。
【0056】
<アモルファスシリコン太陽電池モジュールの出力評価>
10cm×10cmサイズのガラス板からなる太陽電池モジュ−ル用表面保護板に、化学気相蒸着によりアモルファスシリコン層を形成し、200μmのEVAシートからなる充填材シート、絶縁フィルム、リード線、200μmのEVAシートからなる充填材シートを配し、さらにその上に本発明で得られた太陽電池裏面保護シートの白色ポリエステルフィルム側を充填材層に向けて配置した。真空吸引等により一体化して150℃、20分間熱プレスにより加熱圧着成形により一体成形体した。これを85℃85%RH環境下に2000h保存して耐久試験を実施した。試験後、アモルファスシリコン太陽電池の出力を測定し保存前の出力と比較して出力の低下の有無を確認した。
【0057】
【表1】

【0058】
実験結果より、比較例1は水蒸気バリア性も低く、保存試験後にバリアの低下が見られるのに対し、実施例1、2は水蒸気バリア性も高く85℃85%相対湿度環境下に2000h保存しても高いバリア性を保持する。特に実施例2は、実施例1と比較し保存試験前後でも高いバリア性を保持する。さらにアモルファスシリコン太陽電池モジュールの出力評価では比較例が、85℃85%相対湿度環境下2000h保存後に使用に耐えないほど出力が低下してしまうのに対し、実施例1および2は、出力の低下が見られず、発電効率の性能を保持できる。
【0059】
このことは、本発明の太陽電池裏面保護シートは、一般に湿度に対して敏感で、水やガスの影響により発電効率が低下しやすいとされる、薄膜系太陽電池や、化合物系太陽電池、有機太陽電池においても、期間にわたる過酷な自然環境に耐えて、太陽電池のジュールの電力出力特性を維持することが可能な太陽電池用裏面保護シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・基材フィルム
2・・・アンカーコート層
3a・・・蒸着層
3b・・・蒸着層 (厚い蒸着層)
4・・・複合被膜層
5・・・耐候性フィルム
6・・・着色フィルム
7・・・大気側面
8・・・太陽電池素子側面
Ia・・ガスバリア性フィルム
Ib・・ガスバリア性フィルム
II・・ガスバリア性フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材の片面に無機化合物からなる蒸着層を有するガスバリア性フィルム(I)と、フィルム基材の片面に無機化合物からなる蒸着層を有し、その蒸着層が前記ガスバリア性フィルム(I)の2倍以上の蒸着厚みを有するガスバリアフィルム(II)とを順次積層し、前記ガスバリア性フィルム(I)が、太陽電池素子側に配置されることを特徴とする太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項2】
前記ガスバリア性フィルム(II)の最外層側に耐候性フィルムが積層されていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項3】
前記ガスバリア性フィルム(I)、又は/及びガスバリア性フィルム(II)のフィルム基材がポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項4】
前記無機化合物が酸化珪素からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。
【請求項5】
前記蒸着層の上に、水酸基含有高分子化合物と金属アルコキシドとシランカップリング剤及び/またはそれらの加水分解物の少なくとも1種類以上を含む複合被膜層を積層すること特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用裏面保護シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−199379(P2012−199379A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62329(P2011−62329)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】