説明

太陽電池モジュール端部の密閉

本発明は、i)少なくとも1つの太陽電池積層板1を基板8に塗布することにより太陽電池モジュール12を準備するステップと、ii)プラズマ前処理またはガス火炎を使用する火炎処理により、太陽電池積層板の端部領域に沿ってステップi)で生成された太陽電池モジュールを前処理することであって、その結果、太陽電池積層板の端部領域および基板の少なくとも一部の両方が、プラズマ前処理または火炎処理によって作用される、前処理するステップと、iii)密閉化合物9を前処理された位置の少なくとも一部に塗布することであって、密閉化合物は、シリコン組成物またはシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく組成物である、塗布するステップと、を含む太陽電池モジュールの端部を密閉するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール端部の密閉の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
太陽電池モジュールの端部を密閉することは、当技術分野に公知であり、太陽電池積層板内部の接着剤層および太陽電池積層板と基板との間の接着剤層を保護する働きをする。ポリアミドベース上の密閉化合物は、端部を密閉するために使用される。
【0003】
ポリアミドベース上の密閉化合物は、基盤材料、具体的には屋根板と、たとえばETFEなどで作成された太陽電池積層板の上部層との両方に対して、不十分な接着しか示さない。汚れた塗布、太陽電池モジュールの取付けでの力学的応力、または配置段階での天候の影響により、端部の密閉は、太陽電池積層板の端部から少なくとも部分的に分離する可能性がある。これにより、水、具体的には雨水が太陽電池積層板の端部に直接到達するようになり、長期間にわたってこの水が屋根板と太陽電池積層板との間の接着剤層を損傷するか、または多層の太陽電池積層板内に層間剥離を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明が対処する問題は、先行技術の不都合を克服し、太陽電池モジュールに安全で永久的な密閉をもたらす、太陽電池モジュール端部の密閉方法を提供することである。驚くべきことに、請求項1による方法が、この問題を解決することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による方法を適用して、太陽電池モジュールの端部を密閉するために、シリコン組成物またはシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく組成物は、太陽電池モジュールの生産に使用されるタイプの基板で示す接着結果が不十分であることが公知であっても、このタイプの組成物を使用することが可能である。驚くべきことに、本発明による方法はまた、可撓性がある基板上の可撓性がある太陽電池積層板の密閉にも適しており、このタイプの構成では端部の密閉にかかる負荷、具体的には太陽電池モジュールを曲げ、折り畳むことによってかかる負荷がとりわけ高いのではあるが、このような太陽電池積層板の端部の密閉にも適している。
【0006】
さらに、本発明による方法の使用により、特に好ましい二成分の密閉化合物が使用されるときは、太陽電池モジュール端部の密閉が非常に短いサイクルタイムで可能になる。
【0007】
本発明による方法または本発明による太陽電池モジュールの別の著しい利点は、使用される密閉化合物の特別な紫外線安定性である。これにより、太陽電池積層板の保証された全耐用年数に関し、太陽電池モジュールを確実に密閉することが可能になる。
【0008】
本発明の別の態様は、さらなる独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
本発明の実施形態の例示は、図面の参照により一層詳細に述べられる。様々な図において、同じ要素は、同じ参照記号によって識別される。当然のことながら、本発明は、示され、説明された実施形態の例示に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】太陽電池積層板の概略図(断面図)である。
【図2】プラズマ処理中の太陽電池積層板および基板からなる太陽電池モジュールの概略図(断面図)である。
【図3】密閉された端部を有する太陽電池モジュールの概略図(断面図)である。
【図4】密閉された端部を有する太陽電池モジュールの概略図(断面図)である。
【図5】密閉された端部を有する太陽電池モジュールの概略図(断面図)である。
【図6】拡張された上部層および密閉された端部を有する太陽電池モジュールの概略図(断面図)である。
【図7】拡張された上部層および折り畳んだ端部内の密閉された端部を有する太陽電池モジュールの概略図(断面図)である。
【図8】太陽電池モジュールの断面の(上面から見た)概略図である。
【図9】太陽電池モジュールの(上方から見た)概略図である。
【0011】
図には、本発明を直ちに理解するために必須の要素のみが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、太陽電池モジュールの端部を密閉する方法に関し、以下のステップを含む。
i)少なくとも1つの太陽電池積層板1を基板8に塗布することにより、太陽電池モジュール12を準備すること。
ii)プラズマ前処理またはガス火炎を使用する火炎処理により、太陽電池積層板の端部領域に沿ってステップi)で生成された太陽電池モジュールを前処理することであって、その結果、太陽電池積層板の端部領域および基板の少なくとも一部の両方が、プラズマ前処理または火炎処理によって作用される、前処理すること。
iii)密閉化合物9を前処理された位置の少なくとも一部に塗布することであって、密閉化合物は、シリコン組成物またはシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく組成物である、塗布すること。
【0013】
本文書では、用語「太陽電池積層板」は、1つまたは数個の太陽電池セル、すなわち、放射エネルギー、具体的には太陽光を電気エネルギーに変換する電気部品を指し、電気部品は、少なくとも片面の表面全体がプラスチック層で被覆されている。概して、太陽電池積層板は、両面の表面全体を覆う1つまたは複数の層を備える。
【0014】
本文書では、用語「太陽電池モジュール」は、1つまたは複数の太陽電池積層板の構成を指し、太陽電池積層板は、あらゆる基板に、またはあらゆる基板上に配置され、太陽光発電を獲得するために使用される。
【0015】
本文書では、ポリオールなどの「ポリ」で始まる名の物質は、技術的に、含まれたそれぞれの官能基の分子当たり2以上を含む物質を指す。
【0016】
本文書では、用語「ポリマー」は、化学的に均一でありながら、重合、モル質量、および鎖長の程度がそれぞれ異なる高分子の集合体を含み、該集合体は、重反応(重合、重付加、重縮合)を介して生成される。しかし、この用語はまた、重反応からのこのような高分子の集合体の派生物、換言すると官能基の既定の高分子への追加または置換などの変換によって獲得され、化学的に均一または化学的に不均一であり得る化合物をも含む。この用語はさらに、いわゆるプレポリマー、換言すると反応オリゴマープレ付加体を含み、その官能基は、高分子の合成に関与する。
【0017】
太陽電池積層板は、1つまたは数個の太陽電池セルを備える。このタイプのセルの設計および構造は、当業者には周知である。好ましい太陽電池積層板では、1つまたは複数の太陽電池セルを有する層は、少なくとも追加の1層を有する表面全体を覆って両面上に提供される。これらの追加の層は、主に機械的効果または損傷を与える環境の影響からセルを保護する働きをする。
【0018】
太陽電池積層板は、好ましくは太陽電池セルの両面上に複数のプラスチック層を備える。これらのプラスチック層を、同じ材料または異なる材料で作成することが可能である。また、これらの層を、異なる層厚さの層として形成することもできる。
【0019】
より具体的には、太陽電池積層板は、外側(上面層)に向う最上部プラスチック層、すなわち環境の影響に直接曝されるプラスチック層として、少なくとも部分的にハロゲン化されたポリマーの層を備える。ハロゲン化されたポリマーは、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化されたポリマーまたはフッ素化されていないモノマーを有するフッ素化されたモノマーの共重合体である。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)であり、好ましくはETFEである。これらの材料が上面層に特に適しているのは、一方ではこれらの材料は化学物質に高耐性を示し、具体的には環境の影響に耐性を示すからであり、他方ではこれらの材料はハイライトおよび紫外線透過性を示すからである。
【0020】
記載された上面層に隣接して、太陽電池積層板のさらなるプラスチック層は、たとえばポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)、または恣意的に他の置換ポリ炭化水素からなる。好ましい材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−テレフタレート(PET)、およびエチル酢酸ビニル(EVA)である。また、これらのさらなるプラスチック層は、異なって形成することもでき、異なる機能を示すこともできる。さらに、太陽電池積層板は、通常追加の層を備え、追加の層は太陽電池被覆のための基板の役目を果たし、したがって太陽電池セルを有する層のすぐ裏側に直接配置される。また、この層は、プラスチックまたは金属で作成することが可能である。金属層で作成する場合は、その金属層は具体的にはステンレス鋼で作成される。
【0021】
太陽電池積層板全体は、0.5〜5mm、具体的には2〜3mmの範囲の層厚さを示し、この層厚さは、太陽電池積層板の様々な層の間に分布される。
【0022】
特に好ましくは、太陽電池積層板は、可撓性がある太陽電池積層板である。このような板は、平坦でない表面にも塗布することができ、または特定用途のためにある程度形状を整えることができるという利点を提供する。
【0023】
図1は、例示として以下の層、上面から低面すなわち外側から内側に、ETFEの上面層3、EVAの層4、太陽電池セルを備える層2、太陽電池被覆のための基板7、PEの層5、PETの層6、およびPEの層5からなる太陽電池積層板1の概略構造を示す。
【0024】
太陽電池積層板に塗布する基板は、あらゆるタイプの基板であることが可能である。しかし、より具体的には、特に可撓性がある太陽電池積層板との関連ですでに記載された利点のある、可撓性がある基板である。
【0025】
好ましくは、基板は膜であり、具体的にはプラスチック密閉板である。このタイプのプラスチック密閉板は、通常屋根およびファサード構造の外面密閉に使用され、高水圧下でも良好な密閉特性、ならびに引き裂き伝播および貫通試験に対して良好な値で特徴付けられている。貫通試験は、具体的には建設現場において機械的負荷の下で有利である。
【0026】
可撓性がある太陽電池積層板および基板としてのプラスチック密閉板からなる太陽電池モジュールの利点は、たとえば屋根板のような従来のプラスチック密閉板のように取り付け可能なことである。さらなる利点は、このタイプの太陽電池モジュールは、たとえばアーチ型屋根上の平坦でない表面上に幾何学的に真に均等に取り付け可能なことである。
【0027】
可撓性がある太陽電池積層板および可撓性がある基板に対応して構築される、可撓性がある太陽電池モジュールにおいて、本発明による方法は、特に利点があることが証明された。この理由は、具体的には可撓性がある太陽電池モジュールの場合、具体的には太陽電池モジュールを曲げ、折り畳んだ結果として、端部密閉上にかかる負荷が特に高いことである。
【0028】
基板は、好ましくはポリオレフィン基板またはポリ塩化ビニル基板である。これら2つの材料は、プラスチック密閉板の製造に広く使用されている。最もよく好まれる基板材料は、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリエチレン(PE)、ポリエチレン−テレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、EVA、クロロスルホン化ポリエチレン、オレフィンベースを有するサーモプラスチック−エラストーマ(TPE−O、TPO)、エチレン−プロピレンジエンゴム(EPDM)、ポリイソブチレン(PIB)、ならびにその混合物である。
【0029】
太陽電池積層板は、基板にあらゆる方法で取り付けることができる。より具体的には、太陽電池積層板は、基板に接着される。太陽電池積層板は、好ましくは熱溶融接着剤または加温溶融接着剤を用いて基板に接着される。より好ましくは、太陽電池積層板は、ポリウレタンベースを有する熱溶融接着剤を使用して基板に接着される。
【0030】
必要に応じて、太陽電池積層板と基板との間に補償層を配置することができ、層は基板に対する太陽電池積層板のずれに起因する応力に対して基板を補償し、それによって太陽電池積層板の基板からの分離を防止する。このような応力は、機械的負荷に起因する可能性があるか、または太陽電池積層板および基板の拡張の異なる線形温度係数によってもたらされるずれの結果である。後者は、具体的には強い太陽放射または大きい温度変化のある場合である。
【0031】
補償層は、たとえば熱可塑性エラストーマなどの熱可塑性材料から作成される発泡層である。好ましくは、補償層は、発泡エラストーマ材料の層である。
【0032】
さらに太陽電池積層板は、個別の補償層の代わりに、発泡接着剤を用いて基板に接着されることが可能である。
【0033】
本発明による方法のステップi)において生成された太陽電池モジュールは、プラズマ前処理またはガス火炎を使用する火炎処理を用いて前処理される。
【0034】
プラズマ前処理では、事前に生成された太陽電池モジュールは、プラズマを有する太陽電池積層板の端部領域に沿って処理される。ガスは、この場合はプラズマ状態の中に存在するガスとして、様々なガスまたはガス混合物が使用できる。プラズマ状態に遷移するガスによって必要とされるエネルギーはまた、異なる手法で供給することができる。
【0035】
またシランなどの添加剤をガスに添加することも、具体的には接着に相応しい前処理を達成させるために可能であり、利点でさえもあり得る。
【0036】
プラズマ前処理は、好ましくは、大気圧における空気プラズマ前処理である。
【0037】
図2は、例示としてETFE3で作成される上面層を備える太陽電池積層板1からなる太陽電池モジュールの概略構造を示す。ETFE3は、プラスチック密閉板に接着される。太陽電池積層板の端部領域に向かって指し示す矢印は、プラズマ前処理のためのプラズマジェット10を表し、プラズマ前処理は、この端部領域およびプラスチック密閉板の少なくとも一部の両方に作用する。
【0038】
ガス火炎を使用する火炎処理では、先に生成された太陽電池モジュールは、太陽電池積層板の端部領域に沿ってガス火炎の直接効果に短時間曝される。火炎処理の持続時間は、太陽電池モジュールまたは基板がそれによって損傷しないように、選択されなければならない。
【0039】
火炎処理用のガスとして適切なものは、表面を最適に処理するために、たとえばガス火炎が具体的には過剰酸素で作動するプロパンまたはブタンである。
【0040】
太陽電池モジュールは、好ましくはプラズマで前処理される。プラズマ前処理は、より良い接着結果が達成され、ガス火炎による太陽電池モジュールまたは基板への損傷の危険性がより低い火炎処理に優る利点を供給する。
【0041】
太陽電池モジュールへの密閉化合物の最適な接着を達成させるために、密閉化合物を前処理の場所に4週間以内、具体的には2週間以内、好ましくはプラズマ前処理直後または火炎処理後に塗布することが有益である。
【0042】
密閉化合物が塗布される領域全体を、プラズマ前処理または火炎処理によって作用させることが本発明にとってさらに重要である。
【0043】
密閉化合物を太陽電池モジュールに手動で、またはロボットを用いて自動工程で塗布することができる。より具体的には、密閉化合物を機械的に塗布する。
【0044】
密閉化合物を異なった形で塗布することができるので、その結果、異なった断面形状の密閉が生じる。
【0045】
図3〜5は、異なって塗布された2つの密閉化合物を例示し、その断面形状を示したものである。密閉化合物9は、好ましくは、密閉化合物9が太陽電池積層板1の端部領域および/または太陽電池積層板の上面層3ならびに基板8の一部の両方を覆うように塗布される。より具体的には、密閉化合物は、それによって密閉化合物が太陽電池積層板を超えて突出する高さ11が、最適な密閉でできる限り小さいように塗布される。より具体的には、この高さ11は、3mm以下、好ましくは1mm以下である。密閉化合物が太陽電池積層板をはるかに超えて突出する場合は、前記板は様々な不利益を供給する可能性がある。たとえばこの場合は、水平またはわずかに傾斜した太陽電池モジュールであっても、雨水の流出が阻まれ、その結果太陽電池モジュール上に水が溜まる。上を歩行できる太陽電池モジュールの場合は、これによって滑る危険が増加する。通過可能なシステム上に過剰に高く突出する密閉化合物のさらなる不利益は、この場合、密閉化合物がより損傷を受けやすい可能性があることである。
【0046】
場合によっては、図5に示されたように、密閉化合物9が太陽電池積層板1の交差端部および基板8の一部のみを覆うことも可能であり、利点にさえもなることが可能である。この場合は、密閉化合物の接着剤表面が太陽電池積層板1または上面層3の交差表面に限定されるので、太陽電池積層板の端部領域の前処理は、交差端部領域にも作用するように配向されるべきである。
【0047】
太陽電池積層板1の上面層3が拡張して形成され、密閉化合物9が図6に示されたように、上面層3の端部領域および基板8を覆うことも可能である。
【0048】
この場合は、基板8が太陽電池積層板の端部領域上、または上面層3の端部領域上に折り畳まれ、密閉化合物9が次いで得られる端部の折り畳み内に塗布されると考えることもできる。この実施形態は、図7に示されている。
【0049】
密閉化合物は、好ましくはシリコン組成物またはシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく組成物である。
【0050】
この場合は、シリコン組成物は、通常ポリジオルガノシロキサンに基づく組成物として理解される。
【0051】
シリコン組成物として適切なものは、窓またはファサード構造にしばしば使用されるような、一成分または二成分の湿気硬化型シリコン組成物である。このようなシリコン組成物は、たとえばSika Schweiz AGからSikasil(登録商標)という名で市販されている。
【0052】
一成分の湿気硬化型シリコン組成物として適切なものは、適切な架橋剤および架橋触媒とともに、二成分のシリコン組成物において成分Aの「追加成分」として続くものに記載されている追加成分を含む、たとえばアルコキシ基末端ポリジオルガノシロキサン、アセトキシ基末端ポリジオルガノシロキサン、またはケトオキシム基末端ポリジオルガノシロキサンに基づく組成物である。
【0053】
たとえば、適切な一成分の湿気硬化型シリコン組成物は、欧州特許出願の出願番号第08172783.6号に成分Aとして記載されており、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0054】
好ましい一成分の湿気硬化型シリコン組成物は、たとえば、特許出願第WO2008/025812A1号に記載されており、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0055】
さらに、適切な一成分の湿気硬化型シリコン組成物は、たとえばSika Schweiz AGからSikasil(登録商標)AS−70、WS−605S、WS−305またはSG−20という商標名で市販されている。
【0056】
また、適切なものは、上述のように一成分の湿気硬化型シリコン組成物であり、一成分の湿気硬化型シリコン組成物は、塗布中に水を含む成分と混合される。
【0057】
水を含む成分は、通常水の他に少なくとも1つの媒剤を含み、媒剤は、ポリジオルガノシロキサン、軟化剤、増粘剤、および充填剤からなる群から選択される。好ましくは、媒剤の特性は、増粘剤として作用し、水と結合するものである。
【0058】
水を含む成分の含水量は、特に存在する水とともに、組成物内の全反応基の50〜100%が反応に提供できるような範囲内にある。
【0059】
このような組成物の塗布で、一成分の湿気硬化型シリコン組成物は、たとえば、撹拌、混練、回転などだが、具体的には静的ミキサーまたは動的ミキサーを用いて、水を含む成分と混合され、一成分の湿気硬化型シリコン組成物は水と接触し、その結果、組成物の架橋になる。
【0060】
このタイプのシリコン組成物およびその塗布は、たとえば欧州特許出願の出願番号第08172783.6号に詳しく記載されており、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0061】
密閉化合物は、好ましくは二成分の密閉化合物、具体的には二成分のシリコン組成物である。二成分の密閉化合物の利点は、組成物の硬化がより速く、これによってより迅速にでき、したがってより経済的な生成方法が可能になる。
【0062】
最も好ましくは、密閉化合物は、二成分のシリコン組成物である。
【0063】
二成分のシリコン組成物として適切なものは、具体的には成分Aおよび成分Bからなるシリコン組成物である。
【0064】
この場合の成分Aは、ヒドロキシル基末端ポリジオルガノシロキサン、具体的には化学式(I)のポリジオルガノシロキサンPを含む。
【化1】

【0065】
この化学式において、基RおよびRはそれぞれ独立して、線形または分岐した、1〜12炭素原子をもつ一価炭素水素基を表し、一価炭素水素基は恣意的に1つまたは複数のヘテロ原子を含み、また恣意的に1つまたは数個の炭素−炭素多重結合および/または恣意的に脂環式および/または芳香族成分を含む。より具体的には、基RおよびRは、1〜5炭素原子、具体的には1〜3炭素原子をもつアルキル基、好ましくはメチル基を表す。
【0066】
指数nは、温度23℃でポリジオルガノシロキサンPが、10〜500,000mPa sec、具体的には6,000〜100,000mPa secを示すように選択される。
【0067】
二成分のシリコン組成物の成分Aは、通常追加成分を含む。このような追加成分は、具体的にはトリアルキルシリル末端ポリジアルキルシロキ酸、具体的にはトリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサンなどの軟化剤、炭酸カルシウム、焼成カオリン、カーボンブラック、高分散ケイ酸(主として熱分解工程から)などの無機充填剤および/または有機充填剤、ならびに水酸化物または水和物、具体的にはアルミニウムの水酸化物または水和物、好ましくはアルミニウム水和物などの難燃性充填剤、硬化促進剤、色素、好ましくは有機基が官能基と置換される有機アルコキシシランなどの接着促進剤、好ましくは官能基と置換されるその有機基、処理剤、レオロジー調整剤、安定剤、染料、阻害剤、熱安定剤、帯電防止剤、防炎剤、殺生物剤、ワックス、流れ制御剤、チキソトロピック剤、ならびに当業者に公知であり、慣習となっている他の原材料および添加剤である。
【0068】
二成分のシリコン組成物の成分Bは、基本的にポリジオルガノシロキサンに対する少なくとも1つの架橋剤および架橋ポリジオルガノシロキサンに対する少なくとも1つの触媒Kを含む。
【0069】
より具体的には、触媒Kは、スズ有機化合物またはチタン酸塩である。
【0070】
好ましいスズ有機化合物は、たとえば、ジ−2−エチルヘキサン酸、ジラウリン酸ジメチルスズ、ジ−n−ブチルスズジアセタート、ジ−n−ブチルスズジ−2−エチルヘキサン酸、ジ−n−ブチルスズジカプリレート、ジ−n−ブチルスズジ−2,2−ジメチルオクタン酸、ジ−n−ブチルスズジラウリン酸、ジ−n−ブチルスズジステアリン酸、ジ−n−ブチルスズジマレイン酸塩、ジ−n−ブチルスズジオレイン酸塩、ジ−n−ブチルスズジアセタート、ジ−n−オクチルスズジ−2−エチルヘキサン酸、ジ−n−オクチルスズジ−2,2−ジメチルオクタン酸、ジ−n−オクチルスズジマレイン酸塩、およびジ−n−オクチルスズジラウリン酸からなる群などから選択されたジアルキルスズ化合物である。
【0071】
チタン酸塩または有機チタン酸塩として、酸素原子を介してチタン原子に結合される少なくとも1つの配位子を有する化合物が識別される。酸素−チタン結合を介してチタン原子に結合される適切な配位子は、アルコキシ基、スルホン酸基、カルボン酸基、ジアルキルリン酸基、ジアルキルピロリン酸基、およびアセチルアセトン酸基からなる群から選択されるものである。好ましいチタン酸塩は、たとえばテトラブチルまたはテトライソプロピルチタン酸塩を含む。
【0072】
さらに適切なチタン酸塩は、少なくとも1つの多座配位子(キレート配位子とも呼ばれる)を含む。より具体的には、多座配位子は、二座配位子である。
【0073】
適切なチタン酸塩は、たとえば米国のDuPont社からTyzor(登録商標)AA、GBA、GBO、AA−75、AA−65、AA−105、DC、BEAT、およびIBAYという商標名で市販されている。
【0074】
当然のことながら、様々な触媒の混合物を使用することが可能であるか、または場合によっては好ましいことさえある。
【0075】
ポリジオルガノシロキサンに対する架橋剤として、二成分シリコン組成物の成分Bは、具体的には化学式(II)のシランを含む。
【化2】

【0076】
この場合、基Rは独立して、線形または分岐した、1〜12炭素原子をもつ一価炭素水素基を表し、一価炭素水素基は恣意的に1つまたは数個のヘテロ原子を含み、また恣意的に1つまたは数個の炭素−炭素多重結合および/または恣意的に脂環式および/または芳香族成分を含む。
【0077】
基Rは独立して、1〜12炭素原子をもつ水素原子もしくはアルキル基、または1〜12炭素原子をもつカルボニル基、または1〜12炭素原子をもつオキシム基を表す。より具体的には、基Rは、1〜5炭素原子、具体的には1〜3炭素原子をもつアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基を表す。
【0078】
指数pは、以下の条件では0〜4の値を表す。即ち、pが3〜4の値を表す場合は、少なくともp−2R基のそれぞれが、ポリジオルガノシロキサンPの水酸基と(換言すると、たとえば水酸基と)反応する(具体的には凝縮可能である)少なくとも1つの基を含む、という条件である。より具体的には、pは、0、1または2の値、好ましくは0の値を表す。
【0079】
化学式(II)の適切なシランの例は、メチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、またはテトラ−n−ブトキシシランである。具体的に好ましくは、化学式(II)のシランは、ビニルトリメトキシシランもしくはテトラエトキシシランまたはその混合物である。
【0080】
当然のことながら、上に名前を挙げたシランのあらゆる混合物は、二成分シリコン組成物に対する架橋剤として使用することができる。
【0081】
大規模工業システムでは、2つの成分AおよびBは、通常それぞれ別個にタンクまたはドラム缶に保管され、たとえばギア式ポンプを用いて塗布中に押し出され、上述のように混合される。
【0082】
好ましい二成分シリコン組成物は、たとえば欧州特許出願の出願番号第08169676.7号に詳しく記載されており、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0083】
さらに、適切な二成分シリコン組成物は、Sika Schweiz AGからSikasil(登録商標)ASという商標名で、たとえばSikasil(登録商標)AS−785、またはSikasil(登録商標)WTという商標名で、たとえばSikasil(登録商標)WT485が市販されている。
【0084】
追加の適切なシリコン組成物は、概してシリコンゴムとしても公知のものである。たとえば、このタイプの1つのシリコンゴムは、不飽和有機基、具体的にはビニル基を有するポリジオルガノシロキサンを含む成分Aと、Si−Hボンドを有するシランを含む成分Bとからなる二成分シリコン組成物である。白金、パラジウム、またはロジウム化合物は、通常このタイプのシリコンゴムの追加架橋に対する触媒として使用される。
【0085】
また、ラジカル硬化ポリジオルガノシロキサンの使用も考えられ、ポリジオルガノシロキサンもまた、不飽和有機基、より具体的にはビニル基を含む。次いでラジカル形成剤として適切なものは、たとえば過酸化物、ペルオキシエステルなどである。ラジカル硬化シリコン組成物は、一成分または二成分として形成することができる。たとえばこのタイプの一成分シリコン組成物は、ラジカル形成剤を含み、ラジカル形成剤は加熱または電磁放射線、具体的には紫外線放射の影響下でラジカルを形成する。二成分のラジカル硬化シリコン組成物では、ラジカル形成は、通常触媒を用いて生じ、触媒は成分B内に存在する。
【0086】
少なくとも1つのシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)を含む組成物は、シラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく適切な組成物であり、シラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)は、具体的には末端二重結合したポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)のヒドロシリル化反応によって獲得できる。この生成方法は、たとえばUS第3,971,751号およびUS第6,207,766号に記載されており、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0087】
適切なシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)は、たとえば日本のKaneka CorporationからKanaka XMAP(商標)という商標名で市販されている。
【0088】
シラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく適切な組成物は、一成分または二成分組成物として形成することができる。
【0089】
シラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく二成分組成物として適切なものは、通常シラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく一成分の湿気硬化型組成物であり、シラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)は、すでにシリコン組成物に関して記載されたように、塗布中に水を含む成分と混合される。
【0090】
シラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく好ましい組成物は、たとえば欧州特許出願の出願番号第09161265.5号に詳述されているタイプおよび構造を有するものであり、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0091】
本発明は、さらに太陽電池モジュール関する。
【0092】
図8および9に示されたように、この場合の太陽電池モジュール12は、基板8を備え、太陽電池積層板1は基板8に取り付けられ、太陽電池積層板の端部領域の位置は密閉化合物9で密閉され、この密閉化合物はシリコン組成物またはシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく組成物である。基板、太陽電池積層板および密閉化合物は、すでに上述したタイプのものである。
【0093】
より具体的には、太陽電池モジュールは、上述の方法から獲得できるようなモジュールである。
【0094】
本発明は、さらに太陽電池モジュールの端部を密閉するためのシリコン組成物またはシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく組成物の使用に関する。より具体的には、使用される組成物は、すでに上述したような組成物である。太陽電池モジュールの端部を密閉するためのこのような組成物の使用は、これらの組成物が非常に高い紫外線安定性を有するという利点を提供する。
【0095】
好ましいのはシリコン組成物の使用であり、これは二成分シリコン組成物である。
【0096】
例示
以下において、記載された本発明をより詳細に示す実施形態の例示が記載される。当然のことながら、本発明は、これらの記載された実施形態の例示に限定されない。
【0097】
二成分シリコン組成物の太陽電池積層板の表面への接着が試験された。この目的のために、第1のステップにおいて、米国のUnited Solar Ovonic, LLCから市販されているETFEの表面を有する太陽電池積層板(ETFEは米国のDuPont社製のTefzel(登録商標)ETFE)をプラズマで前処理した。独国のPlasmatreat GmbH社製のFG3001システム(空気圧は2バール、260V、2.8A)を使用してプラズマを生成し、ノズルを介して8mmの距離から塗布した。太陽電池積層板を約150mm/秒の割合で前進させた。
【0098】
プラズマ前処理に続いて、Sika Schweiz AGから市販されている、二成分シリコン組成物Sikasil(登録商標)WT485のビードを、スイス国のDosiplast社製の塗布システムを使用して、静的ミキサーを用いてそれぞれの前処理された位置に塗布した。
【0099】
23℃、相対湿度50%で15分後、塗布したビードが接着率100%に確立された(凝集破壊100%)。
【0100】
この試験に次いで、試料本体を85℃、相対湿度85%で6週間保管し、その後試料本体は、光学変化も接着の変化も示さなかった(凝集破壊100%)。
【0101】
記述された試験に次いで、試料本体を70℃で5%のNaCl溶液に15週間保管した。この試験後も、試料本体は、光学変化も接着の変化も示さなかった(凝集破壊100%)。
【符号の説明】
【0102】
1 太陽電池積層板
2 太陽電池セルを備える層
3 上面層
4 EVAの層
5 PEの層
6 PETの層
7 太陽電池被覆のための基板
8 基板
9 密閉化合物
10 プラズマジェット
11 距離
12 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールの端部を密閉する方法であって、
i)少なくとも1つの太陽電池積層板(1)を基板(8)に塗布することにより太陽電池モジュール(12)を準備するステップと、
ii)プラズマ前処理またはガス火炎を使用する火炎処理により、前記太陽電池積層板の端部領域に沿ってステップi)で生成された前記太陽電池モジュールを前処理することであって、その結果、前記太陽電池積層板の前記端部領域および前記基板の少なくとも一部の両方が、前記プラズマ前処理または前記火炎処理によって作用される、前処理するステップと、
iii)密閉化合物(9)を前記前処理された領域の少なくとも一部に塗布することであって、前記密閉化合物は、シリコン組成物またはシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく組成物である、塗布するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記太陽電池積層板は、可撓性がある太陽電池積層板であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記太陽電池積層板は、少なくとも部分的にハロゲン化ポリマーから作成された上面層を備えることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化ポリマーは、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基板は、可撓性がある基板であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基板は、膜であり、具体的にはプラスチック密閉板であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記基板は、ポリオレフィン基板またはポリ塩化ビニル基板であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記密閉化合物は、二成分シリコン組成物であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記前処理は、プラズマ前処理によって実行されることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマ前処理は、大気圧における空気プラズマ処理であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記太陽電池積層板は、前記基板に接着されることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
太陽電池積層板(1)が塗布される基板(8)を備える太陽電池モジュール(12)であって、前記太陽電池積層板の前記端部領域の前記位置は、密閉化合物(9)で密閉され、前記密閉化合物は、シリコン組成物またはシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく組成物である、太陽電池モジュール。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項による方法から獲得可能な、請求項12に記載の太陽電池モジュール。
【請求項14】
太陽電池モジュールの前記端部を密閉するためのシリコン組成物またはシラン末端ポリアクリル酸塩(ポリメタクリル酸塩)に基づく組成物の使用。
【請求項15】
前記シリコン組成物は、二成分シリコン組成物であることを特徴とする、請求項14に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−510418(P2013−510418A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535872(P2012−535872)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066639
【国際公開番号】WO2011/054821
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】