説明

太陽電池モジュール

【課題】部品点数を増やすことなく、低コストで、重量の増加が抑えられると共に、耐荷重性能及び耐衝撃性能が向上された太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】受光して発電する太陽電池素子と、当該太陽電池素子を保護するカバーガラス3とを積層してなる太陽電池モジュールであって、カバーガラス3の内部に空隙を備えたものを提供する。空隙は、均一に分散した複数の気泡31として、あるいは筒状に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールにおいて、重量増加を抑制しつつ、耐荷重性能及び耐衝撃性能を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する関心や政策等から、公共施設や一般家庭など、あらゆる場所で太陽電池の設置が進められている。
太陽電池は太陽光を利用するため、屋根や屋上といった屋外に設置されることが多く、風雨や雪、あるいは施工時の人為的な外力などに対して、十分な耐荷重性能ないしは耐衝撃性能を備えている必要がある。
【0003】
他方、敷設面を有効に活用するため、複数の太陽電池を並設することもよく行われているが、この場合、敷設面の保護のため、太陽電池の重量によって敷設面にかかる負担は出来る限り抑えられた方がよい。
また、太陽電池モジュールの耐荷重性能を向上させるには、太陽電池モジュールを保護するカバーガラスの厚みを大きくすることが知られている。しかしながら、この方法では、太陽電池モジュールの重量が増加するため、施工が大変となり、結果、施工コストの増加に繋がる。
【0004】
この点、特許文献1では、基板上に太陽電池素子を形成した太陽電池パネルと、該太陽電池パネルの外縁部を固定する枠状フレームと、前記枠状フレームに固定された単又は複数本のリブであって、太陽電池パネルをその裏面側から支持する単又は複数本のリブとを備えた太陽電池モジュールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−294485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の技術は、リブを用いて太陽電池モジュールの力学的強度の向上を図っている。しかしながら、これでは、リブを用いることで部品点数が増え、製造コスト及び製品コストの増加に繋がる。
【0007】
また、リブにより太陽電池モジュールを裏面から支持する場合、受光面側からの衝撃に対して、リブが当接する部分に応力が集中するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、部品点数を増やすことなく、低コストで、重量の増加が抑えられると共に、耐荷重性能及び耐衝撃性能が向上された太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る太陽電池モジュールは、受光して発電する太陽電池素子と、当該太陽電池素子を保護する保護板とを積層してなる太陽電池モジュールであって、上記保護板の内部には、空隙が均一に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、上記空隙は、気泡であるものとしてもよい。
【0011】
また、上記空隙は、筒状に形成されているものとしてもよい。
【0012】
また、上記保護板は平面矩形状に構成されており、上記筒状の空隙は、上記保護板の短辺と平行に形成されているものとしてもよい。
【0013】
また、上記空隙は、断面形状が楕円形からなると共に、断面形状の楕円の長軸を、上記保護板の受光面と直角にして形成されてもよい。
【0014】
また、上記保護板が、ガラスによって形成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽電池モジュールにおいて、部品点数を増やすことなく、低コストで、重量の増加を抑えながら、耐荷重性能及び耐衝撃性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、積層構造の一例を示した図であり、(a)は平面図を、(b)は背面図を、(c)はA−A’断面図を示す。
【図2】本実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、積層構造の別の一例を示した図であり、(a)は平面図を、(b)は背面図を、(c)はB−B’断面図を示す。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る太陽電池モジュールを構成するカバーガラスの(a)外観斜視図、(b)A−A’断面を示す部分拡大図である。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る太陽電池モジュールを構成するカバーガラスの(a)外観斜視図、(b)B−B’断面を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る太陽電池モジュールは、後に詳述する通り、受光して発電する太陽電池素子を保護する保護板に空隙を設けたことを特徴としており、このような保護板を積層した本実施形態に係る太陽電池モジュールの積層構造の一例を図1に示す。本例は、いわゆる化合物系太陽電池モジュールである。
図1(a)に示されるとおり、太陽電池モジュール1は、サブモジュール10と、このサブモジュール10の端部を覆うフレーム11とからなる。
また、図1(b)に示されるとおり、太陽電池モジュール1の背面には、受光により発生した電力の取出口となる端子ボックス12、及び外部負荷へ電力を供給するための出力ケーブル13が取り付けられている。
【0018】
図1(c)は太陽電池モジュール1のA−A’断面を示している。
サブモジュール10は、保護板101、太陽電池素子102が製膜されたガラス基板103、及び裏面保護材104を順次、充填材106によって一体的に接着して構成されている。
このサブモジュール10とフレーム11との間は、ブチルゴム等のシール材14によってシーリングされている。
また、太陽電池素子102上の電極に取り付けられた電極リボン105は、充填材106によって保護板101と太陽電池素子102上の電極との間に挟持され、端子ボックス12内へ引き込まれ、さらに端子ボックス12内で出力ケーブル13と接続している。
【0019】
保護板101は、透光性を備えつつ、太陽電池素子102を物理的な衝撃等から保護する。この保護板101には、後述のとおり、内部に空隙が形成されている。
太陽電池素子102は、受光によって発電する光電変換素子である。この太陽電池素子102は、CIS系化合物半導体薄膜であり、ガラス基板103上に製膜されて、サブストレート構造を構成している。
裏面保護材104は、外部から湿分が浸入するのを防ぐシートである。この裏面保護材104は例えば、フッ素系樹脂、PETやアルミニウム箔などを貼り合わせてなるフィルムにより構成することができ、透湿性が低く、高い強度を有する。
電極リボン105は、帯状の導線であり、銅等の導電性の金属よりなる。
充填材106は、保護板101、太陽電池素子102が製膜されたガラス基板103、裏面保護材104を一体的に接着して積層させている。この充填材106には例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)が用いられる。
【0020】
また、本実施形態に係る太陽電池モジュールにおいて、積層構造の別の一例を図2に示す。本例は、いわゆる結晶系太陽電池モジュールである。
図2(a)、(b)に示されるとおり、太陽電池モジュール2は、太陽電池モジュール1と同様に、サブモジュール20、フレーム21、端子ボックス22、及び出力ケーブル23を備える。
【0021】
図2(c)は太陽電池モジュール2のB−B’断面を示している。
サブモジュール20は、保護板201、太陽電池素子202、及び裏面保護材203を順次、充填材205によって一体的に接着して構成されている。
このサブモジュール20とフレーム21との間は、ブチルゴム等のシール材24によってシーリングされている。
また、太陽電池素子202上の電極に取り付けられたリード線204は、端子ボックス22内へ引き込まれて出力ケーブル23と接続している。
なお、保護板201、裏面保護材203、充填材205は夫々、図1において既述した保護板101、裏面保護材104、充填材106と同様の構成からなる。
【0022】
太陽電池素子202は、受光によって発電する複数の単位セルを、インターコネクタにより直列に接続してなり、いわゆるセルストリングを構成している。単位セルは例えば、単結晶シリコンや多結晶シリコンにより構成される。
リード線204は、銅等の導電性の金属よりなる導線である。
【0023】
以上の通り、図1及び図2により、本発明に係る太陽電池モジュール1、2の積層構造を例示したが、本発明は少なくとも、保護板(101、201)と太陽電池素子(102、202)とを積層してなるものであれば適用可能である。
従って、太陽電池素子は上記のものに限らず、他の太陽電池素子を用いたものでもよいし、積層構造についても、サブストレートあるいはスーパーストレートのいずれかに限られるといったこともない。また、保護板(101、201)を構成する材料としては、ガラスや、プラスチック等の樹脂を用いることが出来る。
【実施例1】
【0024】
本発明の第一の実施形態に係る太陽電池モジュール1、2を構成するカバーガラス3を図3に示す。
本実施形態におけるカバーガラス3は、上述の保護板(101、201)に対応するものである。
このカバーガラス3は、長辺xと短辺yとからなる平面矩形状のガラス板であり、例えば透光性を有する白板半強化ガラスによって構成されている。なお、カバーガラス3は、図示上面を受光面として太陽電池モジュール1、2に積層される。
【0025】
このカバーガラス3は、その内部において、小さな独立気泡31が複数、均一に分散している。一方、このカバーガラス3の表面は平らに形成されている。
【0026】
このようなカバーガラス3は例えば、粉末状のガラスに、CaCO(石灰石)、MgCO(マグネサイト)、CaCO・MgCO(ドロマイト)のような焼成によって分解してCOを放出したり、SiC(炭化珪素)のような焼成によって酸素と反応してCOを放出したりする無機質の発泡材を混合し、その混合物を加熱することによって製造される。
【0027】
また、カバーガラス3の他の製造方法として、水分子を含有するガラス粉体を原料として製造する方法がある。具体的には、ガラス粉体に高温高圧の水蒸気又は高温高圧水を接触させることで、ガラス粉体の内部に水分子を浸透および拡散させる。この水分子を含有したガラス粉体を加熱するとガラスが軟化し、同時にガラス粉体内の水分子が蒸気となって膨張することで、カバーガラス3内に気泡が形成される。このような方法で製造されたカバーガラス3内の気泡は、直径が数十μm〜1mmとなる。また、気泡の密度については、ガラス粉体内に拡散する水分子量を調整することで、制御可能となる。
【0028】
このように独立気泡31が均一に分散していることから、カバーガラス3は均質性に優れて十分な強度を発揮することができ、カバーガラス3の下面に積層されている太陽電池素子102、202、ないしはガラス基板103が撓んで破損するのを防ぐことができる。
また、多数の独立気泡31が分散しているために嵩密度が小さく、軽量性に優れる。
さらに、カバーガラス3内部に独立気泡31が形成されていることで、カバーガラス3上にかかる荷重や衝撃が、カバーガラス3と共に積層されている太陽電池素子102、202、ないしはガラス基板103に直接作用せず、耐荷重性能及び耐衝撃性能に優れる。
【実施例2】
【0029】
本発明の第二の実施形態に係る太陽電池モジュール1、2を構成するカバーガラス4を図4に示す。
本実施形態におけるカバーガラス4は、上述の保護板(101、201)に対応するものである。
このカバーガラス4は、第一の実施形態に係るカバーガラス3と同様、長辺xと短辺yとからなる平面矩形状のガラス板であり、例えば透光性を有する白板半強化ガラスによって構成されている。なお、カバーガラス4は、図示上面を受光面として太陽電池モジュール1、2に積層される。
【0030】
このカバーガラス4は、その内部において、短辺yに平行な筒状空隙41が複数、一定の間隔毎に設けられている。このように設けられた筒状空隙41は、カバーガラス4の側端面を貫通するように形成されており、カバーガラス4の側端面は、筒状空隙41の断面形状に合わせて開口している。
【0031】
筒状空隙41の断面は、図4(b)に示されるように、楕円形状からなる。
そして、この筒状空隙41は、断面形状の楕円の長軸を、カバーガラス4の受光面と直角(カバーガラス4の厚み方向と平行)にして形成されている。なお、断面形状の楕円の短軸は、カバーガラス4の受光面と平行(カバーガラス4の幅方向と平行)になっている。
【0032】
なお、本例における筒状空隙41は、カバーガラス4の側端面において開口した構成としているが、これに限らず、側端面を閉じ、カバーガラス4内部に筒状空隙41を閉じ込めた構成としてもよい。
また、本例におけるカバーガラス4の表面は少なくとも、筒状空隙41によって開口した側面を除き、第一の実施形態と同様に平らに形成されている。
【0033】
このようなカバーガラス4は例えば、溶融したガラスに、筒状空隙41と同形状の型を所定の位置に配置して成形してから型を取り除いたり、筒状空隙41の形成されていない直方体状のガラスの所定の位置をくり貫いて、筒状空隙41を形成したりすることによって製造される。
【0034】
このように複数の筒状空隙41が、カバーガラス4の短辺yと平行にして、一定間隔毎に形成されていることから、短辺y方向の撓みに強い。
また、断面形状が楕円形の筒状空隙41を、楕円の長軸方向と、カバーガラス4の受光面とが直角となるように設けたことから、ガラス表面に対する荷重や衝撃に強い。
【0035】
なお、本発明の第二の実施形態においては、カバーガラス4に形成する筒状空隙41の形状を、カバーガラス4の耐荷重性能や耐衝撃性能において好適な楕円形としたが、断面が真円状の筒状空隙41を形成することもできる。
また、本発明の実施形態においては、太陽電池モジュール1、2の平面形状を矩形状としたが、これに限らず、正方形状等にすることもできる。
【実施例3】
【0036】
また、第一、及び第二の実施形態においては、太陽電池素子を保護する保護材(101、201)として、ガラス製のカバーガラス3、4を用いたが、第三の実施形態として、樹脂からなる保護板を用いることも可能である。第一、及び第二の実施形態におけるカバーガラス3、4と同様の独立気泡31や筒状空隙41を形成した樹脂製の保護板により、第一、及び第二の実施形態と同様の効果を奏する太陽電池モジュールを提供することができる。
【0037】
この樹脂製の保護板に空隙を設ける方法の一例としては、軟化した樹脂を硬化させる際、減圧させて硬化させることにより、樹脂内部に気泡を含ませることが可能となる。さらに、樹脂製の保護材に筒状の空隙を含ませる方法として、カバーガラス3、4と同様に、筒状の型を用いて成型したり、成型後に所定位置を刳り貫く等の方法を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1、2 太陽電池モジュール
10、20 サブモジュール
11、21 フレーム
12、22 端子ボックス
13、23 出力ケーブル
14、24 シール材
101、201 保護板
102、202 太陽電池素子
103 ガラス基板
104、203 裏面保護材
105 電極リボン
106、205 充填材
204 リード線
3、4 カバーガラス
31 独立気泡
41 筒状空隙
x 長辺
y 短辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光して発電する太陽電池素子と、当該太陽電池素子を保護する保護板とを積層してなる太陽電池モジュールであって、
上記保護板の内部には、空隙が均一に形成されている、
ことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
上記空隙は、気泡である、
請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
上記空隙は、筒状に形成されている、
請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
上記保護板は平面矩形状に構成されており、
上記筒状の空隙は、上記保護板の短辺と平行に形成されている、
請求項3記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
上記空隙は、断面形状が楕円形からなると共に、断面形状の楕円の長軸を、上記保護板の受光面と直角にして形成されている、
請求項3又は4記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
上記保護板が、ガラスによって形成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−238640(P2011−238640A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106224(P2010−106224)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】