説明

太陽電池モジュール

【課題】太陽電池セルと金属基板の間の浮遊容量の影響が小さく、また、両者間の電位差が小さく、1モジュール当たりの出力電圧の高い高電圧太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】金属基板と、その上の絶縁層と、その上の、直列接続される複数の太陽電池セルと、2つの出力端子と、接地端子とを有し、各太陽電池セルは、絶縁層上の裏面電極層と、その上の、受光した光を電気に変換する光電変換層と、その上の透明電極層とを備え、2つの出力端子は、一方の端部の太陽電池セルの裏面電極層に接続される第1の出力端子と他方の端部の太陽電池セルの透明電極層に接続される第2の出力端子とからなり、さらに、複数の太陽電池セルの真中の太陽電池セルからプラス10%〜マイナス10%の範囲にある1つの接地用太陽電池セルの裏面電極層と金属基板とを電気的に導通する導電層を有し、接地端子は、金属基板に接続され、金属基板及び導電層を介して接地用太陽電池セルに接続されることにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール、特に薄膜型太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、太陽電池は普及の段階に入っており、太陽電池を構成する太陽電池モジュールとして、種々の太陽電池モジュールが提案されている。その中で注目されている従来型の集積型薄膜太陽電池モジュールを図7に示す。
図7に示す太陽電池モジュール50は、光吸収により電流を発生する半導体の光電変換層26を裏面電極(下部電極)24と透明電極(上部電極)28とで挟んだ積層構造の太陽電池セル(光電変換素子)22を金属基板12上に絶縁層14が形成された絶縁層付き金属板からなる支持基板16上に多数直列に接続して発電層52を構成した集積型薄膜太陽電池モジュールである。図7に示すように、太陽電池モジュール50では、多数直列に接続された太陽電池セル22の中の一方の端部の太陽電池セル22の裏面電極24及び他方の端部の透明電極28にそれぞれ引出線(リード線)が接続され、外部に電力が取り出せるようになっている。なお、太陽電池モジュール50では、裏面電極24は、太陽電池モジュール50の正極端子として、透明電極28は、その負極端子として例示されているが、光電変換層26の種類によっては、逆に、裏面電極24がその負極端子となり、透明電極28がその正極端子となる場合もある。これらの太陽電池モジュール50の正極端子及び負極端子は、リード線によって、例えばそれぞれ後述するインバータの正極端子及び負極端子に接続される。そして、太陽電池モジュール50からの直流出力は、需要家内、例えば工場や事業所等の構内や家庭内で利用できるように、交流出力に変換される。
【0003】
一方、これらの太陽電池モジュールを住宅用太陽電池システムに用いて実用化するための開発や提案も行われており、特に、直流電力を出力する太陽電池を商用交流電力系統等の交流電力系統と連系運転させるための種々の提案がなされている(特許文献1及び2参照)。なお、太陽電池を交流電力系統と連系運転させるためには、系統連系規定に基づいて行う必要がある。
特許文献1には、複数の太陽電池モジュールを直列及び並列に接続してなる太陽電池アレイと、この太陽電池アレイの直流出力を商用交流電力系統と連系させるための交流電力に変換する非絶縁型インバータと、このインバータの交流出力と商用交流電力系統との間に接続された系統連系開閉器(スイッチ)及び漏電遮断器とを有し、少なくとも系統連系スイッチの開路時にこの連系開閉器より太陽電池アレイ側の電位を所定の電位に固定する電位固定手段をインバータ内に備えた太陽光発電装置が開示されている。
この太陽光発電装置では、商用交流電力系統との連系インバータとして用いられる非絶縁型インバータの交流出力は、直接、需要家内負荷、例えば工場や事業所等の構内負荷や家庭内負荷に接続されるが、商用交流電力系統は、連系開閉器及び漏電遮断器からなる漏電遮断機能付き回路遮断器(漏電ブレーカ)を介して構内負荷に接続され、構内において漏電故障等が生じた場合に需要家内負荷から商用交流電力系統を完全に切り離すようにされている。
【0004】
ここで、特許文献1では、工場や事業所等の構内の建物では、もちろん、家庭等の一般住宅でも用いることができる屋根材一体型太陽電池パネルとして、複数の太陽電池モジュールを直列及び並列に接続した太陽電池アレイが開示されている。このような太陽電池モジュールとしては、補強板として屋根材や壁材などの建材とすることができる金属板を用い、この金属板上に太陽電池素子を充填材樹脂で封止した屋根材一体型太陽電池モジュールが用いられている。
このような太陽電池アレイを非絶縁型インバータと一緒に用いる場合、太陽電池アレイは、屋根等として屋外の比較的広い面積に設置されるため、地面との間に地面の間に無視し得ない対地浮遊容量を持ってしまい、系統連系スイッチをオンさせた時に、この浮遊容量による微少な漏電電流が生じて、漏電パルスとなって漏電ブレーカを不要動作させてしまう恐れがあるが、特許文献1では、インバータ内に電位固定手段を設け、系統連系スイッチをオンさせる前に、系統連系スイッチにより太陽電池アレイ側の電位を所定の電位に固定する、具体的には、商用交流電力系統の中点電位と非絶縁型インバータによる太陽電池アレイのDC電力の昇圧後の電圧の中点電位とを同電位、例えば接地電位にすることにより、系統連系スイッチオン時の漏電ブレーカのトリップを防止することを可能にしている。すなわち、特許文献1では、太陽電池アレイの電位を固定し、太陽電池アレイの対地浮遊容量、ひいては金属板と太陽電池素子間の浮遊容量や電位差を固定することを考慮している。
【0005】
また、特許文献2では、太陽電池アレイと、非絶縁型インバータと、非絶縁型インバータと負荷との間及び電力系統と負荷との間にそれぞれ漏電遮断器とを有する太陽光発電装置において、特許文献1のような電位固定手段を設けるのではなく、太陽電池の対地浮遊容量Ca(μF)と漏電遮断器の定格感度電流EL(mA)の間にCa<EL/3 なる関係を持たせることにより、太陽電池の浮遊容量による漏れ電流を漏電遮断器の不感領域にでき、漏電遮断器の不要動作を無くし、需要家内、例えば、工場や事業所等の構内の建物や家庭の住宅内の停電やそれによる太陽光発電装置の不要な停止を防止し、発電電力量の損失を防止することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−252803号公報
【特許文献2】特開平10−322885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図7に示す従来の太陽電池モジュール50の場合、直列接続される太陽電池セル22の数を増やして1モジュール当たりの出力電圧を増加させていくと、金属基板12と発電層20の裏面電極24との間の電圧は、最大1モジュール当たりの出力電圧に等しくなるので、金属基板12と発電層20の裏面電極24との間の絶縁層14の耐圧を高くしなければならないが、絶縁層14の耐圧には限界があるため、1モジュール当たりの出力電圧をあまり高くすることはできないという問題があった。
また、特許文献1に開示された太陽光発電装置では、系統連系スイッチオン時の漏電遮断器の不要動作をなくすことはできるが、電位固定手段を新たに設ける必要があり、例えばインバータ内に新たに設ける必要があるし、また、電位固定手段を作動させるために電力が必要であり、太陽電池が発電した電力を消費することになるし、また、系統連係開始後も、電位固定手段が作動するために太陽電池の発電電力を消費し続けることになるという問題があった。特許文献1には、系統連係開始後の電位固定手段による消費電力をなくすために、電位固定手段にスイッチング素子を設け、系統連係スイッチのオフ/オンに連動させてスイッチング素子をオン/オフすることを開示しているが、系統連係スイッチのオフの間には電位固定手段による消費電力をなくすことはできないし、電位固定手段に加えて、さらにスイッチング素子を追加しなければならないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に開示された太陽光発電装置では、特許文献1の場合と同様に、系統連系スイッチオン時の漏電遮断器の不要動作をなくすことはできるが、太陽電池の浮遊容量を漏電遮断器の感度に応じて抑える必要があるため、使用できる太陽電池パネルの枚数が制限されてしまうという問題があるし、使用できる太陽電池パネルの枚数を増やして高電圧を出力するためには、漏電遮断器の感度を低感度に(検出する漏れ電流の大きさを大きく)する必要があるが、あまり低感度にすると、需要家内の負荷の漏電を検出できずに危険となるという問題があった。
【0009】
本発明の第1の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、太陽電池セルの発電層と金属基板との間の浮遊容量の影響を小さくし、また両者間の電位差を小さくして、発電層と金属基板との間の絶縁層の耐圧を高くする必要が無く、1モジュールあたりの出力電圧を高くすることができる高電圧の太陽電池モジュールを提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、商用交流電力系統等の交流電力系統と連系運転させる際に、電位固定手段やスイッチング素子等の要素を付け加えることなく、安価なトランスレスインバータ等の非絶縁型インバータをそのまま用いることができ、また、特に低感度の漏電遮断器等の回路遮断器を用いる必要がなく、1セットの太陽電池として使用できる数に制限がなく、高電圧を出力できる太陽光発電システムを構成することができる太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の第1及び第2の目的を達成するために、本発明の太陽電池モジュールは、金属基板と、該金属基板上に形成された絶縁層と、該絶縁層上に形成され、直列接続される複数の太陽電池セルと、該複数の太陽電池セルの両端部に設けられる2つの出力端子と、前記複数の太陽電池セルの中央部側に接続される接地端子と、を有し、各太陽電池セルは、該絶縁層上に形成された裏面電極層と、該裏面電極層上に形成され、受光した光を電気に変換する光電変換層と、該光電変換層上に形成された透明電極層と、を備え、前記複数の太陽電池セルは、各太陽電池セルの前記透明電極層が、隣接する太陽電池セルの前記裏面電極層に接続されることにより、直列に接続され、前記2つの出力端子は、前記複数の太陽電池セルの一方の端部の太陽電池セルの前記裏面電極層に接続される第1の出力端子と、他方の端部の太陽電池セルの前記透明電極層に接続される第2の出力端子とからなり、さらに、前記複数の太陽電池セルの真中の太陽電池セルからプラス10%〜マイナス10%の範囲にある1つの接地用太陽電池セルの前記裏面電極層と前記金属基板とを電気的に導通する導電層を有し、前記接地端子は、前記金属基板に接続され、該金属基板及び前記導電層を介して前記接地用太陽電池セルに接続されることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記接地用太陽電池セルは、前記真中の太陽電池セルからプラス5%〜マイナス5%の範囲にある1つの太陽電池セルであるのが好ましく、より好ましくは、前記真中の太陽電池セルである。
【0012】
また、前記導電層は、前記接地用太陽電池セルの前記金属基板上の前記絶縁層を加熱超音波処理することにより導電化した層であるのが好ましく、より好ましくは、少なくとも前記金属基板上の前記絶縁層上に前記裏面電極層を形成した後、少なくとも前記裏面電極層が形成された前記接地用太陽電池セルに超音波はんだを付けて加熱超音波処理を施して、当該接地用太陽電池セルの前記絶縁層を導電化した層であり、さらに好ましくは、前記導電層は、前記複数の太陽電池セルを形成した後、前記接地用太陽電池セルに超音波はんだを付けて加熱超音波処理を施して、当該接地用太陽電池セルの前記絶縁層を導電化した層である。
あるいは、前記導電層は、前記金属基板上に前記絶縁層を形成した後、当該接地用太陽電池セルの前記絶縁層を除去し、その後、前記絶縁層及び前記金属基板上に前記裏面電極層を形成することにより前記金属基板上に形成される当該接地用太陽電池セルの前記裏面電極層であるのが好ましい。
【0013】
さらに、前記複数の太陽電池セルは、複数のライン状の溝部によって分離され、それぞれ前記金属基板上の前記絶縁層上にライン状に形成され、前記裏面電極層、前記光電変換層、前記透明電極層及び前記導電層の形状は、ライン状であるのが好ましい。
また、前記太陽電池セルは、集積型薄膜太陽電池セルであるのが好ましい。
また、前記太陽電池セルは、CIS系薄膜型太陽電池セル、CIGS系薄膜型太陽電池セル、薄膜シリコン系薄膜型太陽電池セル、CdTe系薄膜型太陽電池セル、III−V属系薄膜型太陽電池セル、色素増感系薄膜型太陽電池セル、および有機系薄膜型太陽電池セルのいずれか1つの薄膜型太陽電池セルを有するのが好ましい。
【0014】
また、前記光電変換層は、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体を主成分とする層であるのが好ましく、より好ましくは、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる、少なくとも1種の化合物半導体を主成分とする層であり、さらに好ましくは、Cu及びAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体を主成分とする層である。
【0015】
また、前記絶縁層が形成された前記金属基板は、陽極酸化処理されたアルミニウム基板からなり、前記絶縁層は、陽極酸化膜であるのが好ましく、また、前記アルミニウム基板は、複合材料からなる複合アルミニウム基板であるのが好ましく、さらに、前記複合アルミニウム基板は、鋼板を2枚のアルミニウム板で挟んだクラッド板、又はステンレス板とアルミニウム板とのクラッド板であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、太陽電池セルの発電層と金属基板との間の浮遊容量の影響を小さくして、また、両者間の電位差を小さくすることができ、発電層と金属基板との間の絶縁層の耐圧を高くする必要を無くし、1モジュールあたりの出力電圧を高くすることができる。その結果、本発明によれば、高電圧の太陽電池モジュールを得ることができる。
また、本発明によれば、商用交流電力系統等の交流電力系統と連系運転させるために、太陽電池を用いる太陽光発電システムとして構成する際に、電位固定手段やスイッチング素子等の要素を付け加えることなく、安価なトランスレスインバータ等の非絶縁型インバータをそのまま用いることができ、また、特に低感度の漏電遮断器等の回路遮断器を用いる必要がなく、1セットの太陽電池として使用できる数に制限がなく、高電圧を出力することができる太陽光発電システムを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの一例を模式的に示す回路構成図である。
【図2】図1に示す太陽電池モジュールの第1実施形態を模式的に示す断面図である。
【図3】図2に示す太陽電池モジュールの製造工程の一例を説明するための製造中の太陽電池モジュールの斜視図である。
【図4】図2に示す太陽電池モジュールの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す太陽電池モジュールの第2実施形態を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の太陽電池モジュールを用いた太陽電池システムの一構成例を模式的に示す構成図である。
【図7】従来の太陽電池モジュールを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る太陽電池モジュールを添付の図面に示す好適実施形態に基づいて以下に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る太陽電池モジュールの一例を模式的に示す回路構成図である。図2は、図1に示す太陽電池モジュールの第1実施形態を模式的に示す断面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の太陽電池モジュール10は、例えば、接地された略長方形状の金属基板12及び金属基板12上に形成された電気的な絶縁層14からなる支持基板16と、絶縁層14上に形成され、直列に接続された複数の太陽電池セル22からなる発電層20とを有する。
本発明の太陽電池モジュール10は、発電層20の複数の太陽電池セル22の中の一方の端部にある太陽電池セル22aの正極(プラス)側を正極端子として図示しないリボン状のリード線に介して図示しない接電箱の正極端子に接続し、他方の端部にある太陽電池セル22bの負極(マイナス)側を負極端子として図示しないリボン状のリード線に介して図示しない接電箱の負極端子に接続すると共に、複数の太陽電池セル22の中の真中(中央)にある太陽電池セル22の、又は略中央にある太陽電池セル22、すなわち中央にある2つの太陽電池セル22の一方の正極側または負極側を接地端子として、支持基板16の金属基板12に直接電気的に接続することにより接地(グランドに)することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の太陽電池モジュール10においては、図1に示すように、支持基板16の金属基板12は接地されおり、その正極または負極が支持基板16の金属基板12に直接電気的に接続される接地用太陽電池セル30(図2及び図4参照)は接地されるが、この接地用太陽電池セル30は、複数の太陽電池セル22の中の真中又は略中央の位置にある太陽電池セル22とするのが最も好ましい。
こうすることにより、複数の太陽電池セル22の中の真中の位置を中心として一端部側にある太陽電池セル22aまで、すなわちプラス(正)側の発電層20a内の太陽電池セル22の数と、他端部側にある太陽電池セル22bまで、すなわちマイナス(負)側の発電層20b内の太陽電池セル22の数とを同一、又は略同一にすることができ、接地用太陽電池セル30を設けない図7に示す従来の太陽電池モジュール50の発電層52の太陽電池セル22の数、すなわちその両端部側にある太陽電池セル22a及び22b間の太陽電池セル22の数に比べて半分にすることができる。
【0021】
その結果、図示例の太陽電池モジュール10では、接地用太陽電池セル30の接地電位(グランド)に対する、発電層20aの太陽電池セル22aの正極端子の正電位との電位差(電圧)の大きさと発電層20bの太陽電池セル22bの負極端子の負電位との電位差(電圧)の大きさとを同一、又は略同一にすることができ、図7に示す従来の太陽電池モジュール50の発電層52の太陽電池セル22aと22bとの間の電位差(電圧)の大きさに比べて半分にすることができる。
このため、太陽電池モジュール10では、金属基板12と発電層20との間の電圧を、図7に示す従来の太陽電池モジュール50の金属基板12と発電層52との間の電圧の半分にすることができるので、金属基板12と発電層20間の絶縁層14に要求される耐電圧が、従来の太陽電池モジュール50の場合の半分で済むことから、同じ耐電圧の絶縁層14を用いた場合、発電層20全体、すなわち太陽電池セル22aと22bとの間の電位差(電圧)の大きさを2倍にすることができ、2倍の電圧を持つ太陽電池モジュールを作ることができる。
【0022】
以上のように、太陽電池モジュール10においては、発電層20の複数の太陽電池セル22の中に中性点となる接地点(グランド)を持たせているので、金属基板12と発電層20との間の浮遊容量の影響を小さくして、1モジュールあたりの出力電圧を高くすることができ、高電圧の太陽電池モジュールを作るのに適している。
また、この構造にすることにより、後述するが、インバータを直接接続でき、交流出力の接地(グランド)あるいは中性点を、太陽電池モジュール10の接地(グランド)と一致させることができるため、安価なトランスレスインバータ等の非絶縁型インバータを接続しやすい利点がある。
【0023】
なお、図1に示す太陽電池モジュール10においては、接地する位置(接地用太陽電池セル30の位置)を、複数の太陽電池セル22の中の真中又は略中央の位置(その位置にある太陽電池セル22)としているが、本発明はこれに限定されず、複数の太陽電池セル22の中の真中の位置を中心として一端部側にある太陽電池セル22a及び他端部側にある太陽電池セル22bの位置をそれぞれ±100%とするとき、真中の位置から±10%以内、すなわち、+(プラス)10%〜−(マイナス)10%の範囲内の位置にある太陽電池セル22としても良い。
その理由は、太陽電池モジュール10において接地する位置を、複数の太陽電池セル22の中の真中から±10%以内の位置にある太陽電池セル22としても、上述の場合と同様に、両側にある発電層20(20a及び20b)の接地電位(グランド)に対する電圧の大きさを、図7に示す従来の太陽電池モジュール50に比べて、55%以下にすることができ、金属基板12と発電層20との間の電圧、したがって、その間の絶縁層14に要求される耐電圧を、従来の太陽電池モジュール50に比べて55%にすることができ、同じ耐電圧の絶縁層14を用いた場合、発電層20全体の電圧の大きさを1.8倍にすることができ、1.8倍の電圧を持つ太陽電池モジュールを作ることができるからである。
【0024】
また、このような場合も、上述の場合と同様に、発電層20の複数の太陽電池セル22の中に中性点となる接地点(グランド)を持たせていることなるので、従来の太陽電池モジュール50に比べて、金属基板12と発電層20との間の浮遊容量の影響を小さくすることができ、1モジュールあたりの出力電圧を高くすることができ、高電圧の太陽電池モジュールを作るのに適している。
また、このような構造にして、安価なトランスレスインバータ等の非絶縁型インバータを直接接続した場合、交流出力の接地(グランド)あるいは中性点と、太陽電池モジュール10の接地(グランド)とを完全に一致させることはできないが、このずれによる漏洩電流は、従来技術において述べたように漏電ブレーカ等の回路遮断器を不要動作させてしまうほど大きくはないからである。
【0025】
換言すれば、安価なトランスレスインバータ等の非絶縁型インバータを直接接続した場合に漏電ブレーカ等の回路遮断器を不要動作させない程度のずれであれば、真中の位置からどのような位置にずれていても良い。すなわち、真中の位置からずれ量は、接続されるインバータや漏電ブレーカ等の回路遮断器に応じて設定するようにしても良い。
なお、以上のような理由から、本発明においては、接地する位置を真中の位置から±5%以内、すなわち、+(プラス)5%〜−(マイナス)5%の範囲内の位置にある太陽電池セル22とするのがより好ましいのはもちろんである。
【0026】
図示例の太陽電池モジュール10に用いられる支持基板16は、金属基板12とその上に形成された絶縁層14とを有する絶縁層付き金属板である。支持基板16としては、絶縁層付き金属板であれば、特に制限はないが、アルミニウム(Al)板の少なくとも一方の面側を陽極酸化して陽極酸化膜を絶縁層14として形成し、陽極酸化されなかったAl板を金属基板12とすることにより得られた支持基板であるのが好ましい。
ここで、金属基板12としては、絶縁層14を形成することができ、絶縁層付き金属板である支持基板16とした時に発電層20を支持することができれば特に制限はないが、少なくとも片側表面がAl層であるAl基板が好ましく、例えば、Al基板、及びAlと他の金属との複合材料からなる複合Al基板などを挙げることができる。
金属基板12の厚さは、太陽電池モジュール10全体の強度の観点により適宜選択できるが、絶縁層付き金属板である支持基板16とした形体において0.1〜10mmであるのが好ましい。なお、Al基板や複合Al基板などから支持基板16を製造する際には、陽極酸化、及び陽極酸化の事前洗浄や研磨により厚さの減少を見越した厚さとしておく必要がある。
【0027】
本発明では、Al基板としては、例えば日本工業規格(JIS)の1000系純Al板であってもよいし、Al合金板、例えばAl−Mn系合金板、Al−Mg系合金板、Al−Mn−Mg系合金板、Al−Zr系合金板、Al−Si系合金板、及びAl−Mg−Si系合金板等のAlと他の金属元素との合金板であってもよい。
また、複合Al基板としては、Al板と他の金属板とのクラッド板、例えば、ステンレス鋼(SUS)板とのクラッド板、種々の鋼板を2枚のAl板で挟み込んだクラッド板であっても良い。なお、本発明では、Al板とのクラッド板を構成する他の金属板は、各種のステンレス鋼板の他、例えば、軟鋼等の鋼、42インバー合金、コバール合金、または36インバー合金からなる板材を用いることができるし、また、本発明の太陽電池モジュールを屋根材一体型太陽電池パネルとして用いることができるように、家屋や建物等の屋根材や壁材として使用可能な金属板を用いてもよい。
ここで用いられるAl板やAl合金板には、Fe、Si、Mn、Cu、Mg、Cr、Zn、Bi、Ni、及びTi等の各種微量金属元素が含まれていてもよい。
【0028】
金属基板12上に形成される絶縁層14としては、特に制限的ではないが、金属基板12がAl基板又は複合Al基板である場合には、Al基板又は複合Al基板を陽極酸化することによりその表面に形成された陽極酸化膜であるのが好ましい。なお、Al基板又は複合Al基板の陽極酸化は、Al基板又は複合Al基板を陽極とし、陰極と共に電解液に浸漬させ、陽極陰極間に電圧を印加して電解処理することにより実施できる。
なお、絶縁層14となる陽極酸化膜は、金属基板12となるAl基板や複合Al基板のAl層の片側表面に形成されていればよいが、Al基板や2枚のAl板で挟んだクラッド板の場合には、発電層20の形成工程等において、Al層と陽極酸化膜との熱膨張係数差に起因した反りや陽極酸化膜に発生するクラック等を抑制するために、両側のAl層表面に陽極酸化膜を設けるのが好ましい。
また、こうして形成される絶縁層14の厚さ、すなわち陽極酸化膜の厚さは、特に制限的ではないが、絶縁性とハンドリング時の機械衝撃による損傷等を防止する表面硬度を有しておれば良いが、厚すぎると可撓性の観点で問題を生じる場合がある。このことから、好ましい厚さは、0.5〜50μmであり、厚さの制御は定電流電解や定電圧電解とともに、電解時間により制御することができる。
また、絶縁層14の種類としては、Alの陽極酸化被膜以外に、Si、Ca、Zn、B、P、Ti等の元素を含んだガラスなどの各種酸化物層を蒸着、ゾルゲル法等の各種方法で形成したものであっても良い。
【0029】
図2に示す本発明の第1実施形態の太陽電池モジュール10は、サブストレート型と呼ばれるものであり、太陽電池サブモジュール10に設けられる発電層(光電変換素子)20は、薄膜集積型のものである。発電層20は、支持基板16の絶縁層14上に、その中心若しくは略中心の位置に形成された接地用太陽電池セル30と、この両側にそれぞれ直列に接続されて形成された複数の太陽電池セル22とを有するものである。
ここで、太陽電池セル22は、図7に示す従来の太陽電池モジュール50の太陽電池セル22と同様に、支持基板16の絶縁層14の表面上に形成された裏面電極24と、裏面電極24上に形成され、受光した光を電気に変換する光電変換層26と、光電変換層26上に形成された透明電極28とを有し、絶縁層14上に裏面電極24、光電変換層26及び透明電極28が順次積層されてなるものである。
【0030】
一方、接地用太陽電池セル30は、本発明の特徴とする部分であって、太陽電池セル22の支持基板16上に形成された絶縁層14の一部が導電層32となったものであり、導電層32上に、太陽電池セル22と同様に、裏面電極24、光電変換層26及び透明電極28が順次積層されてなるものである。この接地用太陽電池セル30は、裏面電極24と金属基板12とを導通して電気的に接続する導電層32が形成されていれば、発電に寄与するセルであっても良いし、発電に寄与しないセルであっても良い。
なお、図2には図示されていないが、太陽電池セル22及び接地用太陽電池セル30においては、光電変換層26上にバッファ層が形成され、裏面電極24、光電変換層26、バッファ層及び透明電極28が順次積層されていても良い。
【0031】
複数の太陽電池セル22においては、裏面電極24は、隣接する(図中左隣り)の太陽電池セル22又は接地用太陽電池セル30の端部側(図中右側の一部)の領域から当該太陽電池セル22(図中左側)の大部分の領域に配置されるように、隣接する太陽電池セル22の裏面電極24と所定の間隔の隙間25をあけて絶縁層14の表面上に形成されている。接地用太陽電池セル30においても、裏面電極24は、太陽電池セル22と同様に、隣接する(図中左隣り)の太陽電池セル22の端部側(図中右側の一部)の領域から接地用太陽電池セル30(図中左側)の大部分の領域に配置されるように、隣接する太陽電池セル22の裏面電極24と所定の間隔の隙間25をあけて導電層32及び絶縁層14の表面上に形成されている。なお、接地用太陽電池セル30の裏面電極24の大部分は、導電層32上に配置される。
【0032】
また、複数の太陽電池セル(以下、単に電池セルという)22及び接地用太陽電池セル(以下、単に電池セルという)30においては、光電変換層26は、隣接する裏面電極24間の隙間25を埋めるように裏面電極24上に形成されている。したがって、光電変換層26は、この隙間25の部分では、絶縁層14及び/又は導電層32に直接接することになる。
また、光電変換層26には、隣接する電池セル22又は30から延在する裏面電極24にまで達する溝27が形成されている。したがって、この溝27は、隣接する裏面電極24間の隙間25とは異なる位置(図中右側)に形成されている。
また、透明電極28は、光電変換層26の溝27を埋めるように光電変換層26の表面上に形成されている。したがって、透明電極28は、この溝27の部分において、隣接する電池セル22又は30の裏面電極24に直接接触しており、電気的に接続されている。こうして、隣接する2つの電池セル22同士、及び隣接する電池セル22と30とは、直列に接続される。
【0033】
さらに、複数の電池セル22及び30においては、電池セル22又は30の透明電極28及び光電変換層26と、隣接する電池セル22又は30の透明電極28及び光電変換層26との間には、裏面電極24にまで達する開口27が形成されている。この開口27によって、隣接する2つの電池セル22同士、及び隣接する電池セル22と30とは、分離されている。
上述したように、複数の電池セル22及び30は、当該電池セル22又は30の透明電極28と隣接する電池セル22又は30の裏面電極24とが接続されることにより、直列に接続される。
【0034】
本実施形態においては、図2に示す太陽電池モジュール10においては、一方(図中左側)の端部の電池セル22の裏面電極24は、図示しない銅リボン等のリード線によってプラス(+)端子として引き出され、他方(図中右側)の端部の電池セル22の透明電極28は、同様なリード線によってプラス(−)端子として引き出され、真中又は略中央の電池セル30の裏面電極24は、導電層30を介して接地された金属基板12に電気的に接続されることにより接地される。なお、金属基板12は、同様なリード線によって接地端子に接続されている。
なお、電池セル22及び30は、図2に示す断面に垂直な方向(図2の紙面に直交する方向)に、矩形状の金属基板12の一辺にそって平行に延在するライン状に形成された短冊状の形状を有する。したがって、裏面電極24及び透明電極28も、同様に、金属基板12の辺に平行な一方向に長い短冊状の電極である。
【0035】
本実施形態の太陽電池セル(光電変換素子)22は、集積型のCIGS系太陽電池セル(CIGS系光電変換素子)と呼ばれるものであり、例えば、裏面電極24がモリブデン電極で、光電変換層26がCIGSで、透明電極28がZnOで構成される。なお、バッファ層が形成される場合には、CdSで構成される。なお、接地用太陽電池セル30も、同様な構成とされる。
なお、このような電池セル22及び30は、例えば、公知のCIGS系の太陽電池の製造方法により製造することができる。また、裏面電極24間の隙間25、光電変換層26に形成された裏面電極24にまで達する溝27、光電変換層26及び透明電極を一体として隣接する光電変換層26及び透明電極から分離するための裏面電極24に達する開口27等のライン状の溝部は、レーザスクライブまたはメカニカルスクライブにより形成することができる。
【0036】
本実施形態の太陽電池モジュール10において、太陽電池セル22及び30に、透明電極28側から光が入射されると、この光が透明電極28およびバッファ層(図示せず)を通過し、光電変換層26に達すると起電力が発生し、例えば、透明電極28から裏面電極24に向かう電流が発生する。なお、図2に示す矢印は、電流の向きを示すものであり、電子の移動方向は、電流の向きとは逆になる。このため、図2中、左側の端の太陽電池セル22の裏面電極24が正極(プラス(+)極)になり、右側の端の太陽電池セル22の透明電極28が負極(マイナス(−)極)になる。
【0037】
次に、発電層20を構成する太陽電池セル22及び30の各要素について説明スル。
太陽電池セル22及び30において、裏面電極24および透明電極28は、いずれも光電変換層26で発生した電流を取り出すためのものである。裏面電極24および透明電極28は、いずれも導電性材料からなる。光入射側の透明電極28は透光性を有する必要がある。
裏面電極24は、例えば、Mo、Cr、又はW、及びこれらを組み合わせたものから構成される。この裏面電極24は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。
裏面電極24は、厚さが100nm以上であることが好ましく、0.45〜1.0μmであることがより好ましい。
また、裏面電極24の形成方法は、特に制限されるものではなく、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等の気相成膜法により形成することができる。
【0038】
透明電極28は、例えば、ZnO、ITO(インジウム錫酸化物)、またはSnOおよびこれらを組み合わせたものにより構成される。この透明電極28は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。また、透明電極28の厚さは、特に制限されるものではなく、0.3〜1μmが好ましい。
また、透明電極28の形成方法は、特に制限されるものではなく、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等の気相成膜法により形成することができる。
なお、透明電極28上に、MgF等の反射防止膜が形成されていても良い。
【0039】
バッファ層は、透明電極28の形成時の光電変換層26を保護すること、透明電極28に入射した光を光電変換層26まで透過させるために形成される。
このバッファ層は、例えば、CdS、ZnS、ZnO、ZnMgO、又はZnS(O、OH)およびこれらの組み合わせたものにより構成される。
バッファ層は、厚さが、0.03〜0.1μmが好ましい。また、このバッファ層は、例えば、CBD(ケミカルバス)法、溶液成長法等により形成される。
なお、CBD−CdS等のバッファ層とZnO:Al等の透明電極28との間に、例えば、ZnO等からなる高抵抗膜を形成しておいても良い。
【0040】
光電変換層26は、透明電極28及びバッファ層を通過して到達した光を吸収して電流が発生する層である。本実施形態において、光電変換層26の構成は、特に制限されるものではなく、例えば、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であるのが好ましい。また、光電変換層26は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であってもよい。
【0041】
さらに光吸収率が高く、高い光電変換効率が得られることから、光電変換層26は、CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、Al、GaおよびInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、S、Se、およびTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。この化合物半導体としては、CuAlS、CuGaS、CuInS、CuAlSe、CuGaSe、CuInSe(CIS)、AgAlS、AgGaS、AgInS、AgAlSe、AgGaSe、AgInSe、AgAlTe、AgGaTe、AgInTe、Cu(In1−xGa)Se(CIGS)、Cu(In1−xAl)Se、Cu(In1−xGa)(S、Se)、Ag(In1−xGa)Se、およびAg(In1−xGa)(S、Se)等が挙げられる。
【0042】
光電変換層26は、CuInSe(CIS)、及び/又はこれにGaを固溶したCu(In、Ga)Se(CIGS)を含むことが特に好ましい。CISおよびCIGSはカルコパイライト結晶構造を有する半導体であり、光吸収率が高く、高い光電変換効率が報告されている。また、光照射等による効率の劣化が少なく、耐久性に優れている。
【0043】
光電変換層26には、所望の半導体導電型を得るための不純物が含まれる。不純物は隣接する層からの拡散、および/又は積極的なドープによって、光電変換層26中に含有させることができる。光電変換層26中において、I−III−VI族半導体の構成元素および/又は不純物には濃度分布があってもよく、n型、p型、およびi型等の半導体性の異なる複数の層領域が含まれていても構わない。
例えば、CIGS系においては、光電変換層26中のGa量に厚み方向の分布を持たせると、バンドギャップの幅/キャリアの移動度等を制御でき、光電変換効率を高く設計することができる。
【0044】
光電変換層26は、I−III−VI族半導体以外の1種又は2種以上の半導体を含んでいてもよい。I−III−VI族半導体以外の半導体としては、Si等のIVb族元素からなる半導体(IV族半導体)、GaAs等のIIIb族元素およびVb族元素からなる半導体(III−V族半導体)、およびCdTe等のIIb族元素およびVIb族元素からなる半導体(II−VI族半導体)等が挙げられる。光電変換層26には、特性に支障のない限りにおいて、半導体、所望の導電型とするための不純物以外の任意成分が含まれていても構わない。
また、光電変換層26中のI−III−VI族半導体の含有量は、特に制限されるものではない。光電変換層26中のI−III−VI族半導体の含有量は、75質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が特に好ましい。
【0045】
本実施形態において、光電変換層26をCIGS層とした場合、CIGS層の成膜方法としては、1)多源同時蒸着法、2)セレン化法(セレン化/硫化法)、3)スパッタ法、4)ハイブリッドスパッタ法、及び5)メカノケミカルプロセス法等が知られている。
1)多源同時蒸着法としては、
3段階法(J.R.Tuttle et.al,Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.426(1996)p.143.等)と、ECグループの同時蒸着法(L.Stolt et al.:Proc.13th ECPVSEC(1995,Nice)1451.等)とが知られている。
前者の3段階法は、高真空中で最初にIn、Ga、及びSeを基板温度300℃で同時蒸着し、次に500〜560℃に昇温してCu及びSeを同時蒸着後、In、Ga、及びSeをさらに同時蒸着する方法である。後者のECグループの同時蒸着法は、蒸着初期にCu過剰CIGS、後半でIn過剰CIGSを蒸着する方法である。
【0046】
CIGS膜の結晶性を向上させるため、上記方法に改良を加えた方法として、
a)イオン化したGaを使用する方法(H.Miyazaki, et.al, phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p.2603.等)、
b)クラッキングしたSeを使用する方法(第68回応用物理学会学術講演会 講演予稿
集(2007秋 北海道工業大学)7P−L−6等)、
c)ラジカル化したSeを用いる方法(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集
(2007春 青山学院大学)29P−ZW−10等)、
d)光励起プロセスを利用した方法(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007春 青山学院大学)29P−ZW−14等)等が知られている。
【0047】
2)セレン化法は2段階法とも呼ばれ、最初に、Cu層/In層または(Cu−Ga)層/In層等の積層膜の金属プレカーサをスパッタ法、蒸着法、または電着法などで成膜し、これをセレン蒸気またはセレン化水素中で450〜550℃程度に加熱することにより、熱拡散反応によってCu(In1−xGax)Se等のセレン化合物を生成する方法である。この方法を気相セレン化法と呼ぶ。このほか、金属プリカーサ膜の上に固相セレンを堆積し、この固相セレンをセレン源とした固相拡散反応によりセレン化させる固相セレン化法がある。
【0048】
セレン化法においては、セレン化の際に生ずる急激な体積膨張を回避するために、金属プリカーサ膜に予めセレンをある割合で混合しておく方法(T.Nakada et.al,, Solar Energy Materials and Solar Cells 35(1994)204-214.等)、及び金属薄層間にセレンを挟み(例えばCu層/In層/Se層…Cu層/In層/Se層と積層する)多層化プリカーサ膜を形成する方法(T.Nakada et.al,, Proc. of 10th European Photovoltaic Solar Energy Conference(1991)887-890. 等)が知られている。
また、グレーデッドバンドギャップCIGS膜の成膜方法として、最初にCu−Ga合金膜を堆積し、その上にIn膜を堆積し、これをセレン化する際に、自然熱拡散を利用してGa濃度を膜厚方向で傾斜させる方法がある(K.Kushiya et.al, Tech.Digest 9th Photovoltaic Science and Engineering Conf. Miyazaki, 1996(Intn.PVSEC-9,Tokyo,1996)p.149.等)。
【0049】
3)スパッタ法としては、
CuInSe多結晶をターゲットとした方法、CuSeとInSeをターゲットとし、スパッタガスにHSe/Ar混合ガスを用いる2源スパッタ法(J.H.Ermer,et.al, Proc.18th IEEE Photovoltaic SpecialistsConf.(1985)1655-1658.等)、および
Cuターゲットと、Inターゲットと、SeまたはCuSeターゲットとをArガス中でスパッタする3源スパッタ法(T.Nakada,et.al, Jpn.J.Appl.Phys.32(1993)L1169-L1172.等)が知られている。
【0050】
4)ハイブリッドスパッタ法としては、前述のスパッタ法において、CuとIn金属は直流スパッタで、Seのみは蒸着とするハイブリッドスパッタ法(T.Nakada,et.al., Jpn.Appl.Phys.34(1995)4715-4721.等)が知られている。
【0051】
5)メカノケミカルプロセス法は、CIGSの組成に応じた原料を遊星ボールミルの容器に入れ、機械的なエネルギーによって原料を混合してCIGS粉末を得、その後、スクリーン印刷によって基板上に塗布し、アニールを施して、CIGSの膜を得る方法である(T.Wada et.al, Phys.stat.sol.(a), Vol.203(2006)p2593等)。
その他のCIGS成膜法としては、スクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、及びスプレー法などが挙げられる。例えば、スクリーン印刷法またはスプレー法等で、Ib族元素、IIIb族元素、及びVIb族元素を含む微粒子膜を基板上に形成し、熱分解処理(この際、VIb族元素雰囲気での熱分解処理でもよい)を実施するなどにより、所望の組成の結晶を得ることができる(特開平9−74065号公報、特開平9−74213号公報等)。
【0052】
上述した実施形態の太陽電池モジュール10の太陽電池セル22及び30は、集積型のCIGS系太陽電池セルであったが、本発明はこれに限定されず、本発明の太陽電池サブモジュールの太陽電池セル(光電変換素子、特に、その光電変換層)の構成は、例えば、アモルファスシリコン(a−Si)系太陽電池セル、タンデム構造系太陽電池セル(a−Si/a−SiGeタンデム構造太陽電池セル)、直列接続構造(SCAF)系太陽電池セル(a−Si直列接続構造太陽電池セル)、CdTe(カドミウム・テルル)系太陽電池セル、薄膜シリコン系太陽電池セル、色素増感系太陽電池セル、または有機系太陽電池セルであってもよいし、サブストレート型と呼ばれるものであっても、スーパーストレート型と呼ばれるものであっても良い。
なお、図2に示す実施形態の太陽電池モジュール10では、裏面電極24側が正極(+極)、透明電極28側が(−極)であったが、本発明はこれに限定されず、太陽電池セルに応じて、裏面電極24側を正極(+極)、透明電極28側を(−極)としても良い。
【0053】
例えば、太陽電池セル22及び30として、タンデム構造系太陽電池セル(a−Si/a−SiGeタンデム構造太陽電池セル)を用いる場合には、例えば、裏面電極24として、Ag(銀)及びZnOが積層された電極を、透明電極28として、ITOを用い、光電変換層26として、例えば、n型半導体層、微結晶シリコンやアモルファスシリコンゲルマニウム(a−SiGe)等の真性半導体層、p型半導体層が積層され、さらにその上に、n型半導体層、アモルファスシリコン(a−Si)等の真性半導体層、p型半導体層が積層された光電変換層を用いることができる。
また、太陽電池セル22及び30として、CdTe系太陽電池セルを用いる場合には、光電変換層26として、例えば、CdTe(カドミウム・テルル)型と呼ばれる光電変換層を用いることができる。
【0054】
次に、接地用太陽電池セル30の導電層32について説明する。
導電層32は、本発明の最も特徴とする部分であって、接地用太陽電池セル30において、金属基板12と裏面電極24との間に絶縁層14の代わりに配置されるもので、導電性を有し、裏面電極24を接地された金属基板12に電気的に接続して導通させ、接地させるためのものである。
導電層32は、金属基板12の成分と絶縁層14の成分と裏面電極24の成分とが混合された状態となったもので、その結果導電性を持つようになったものである。
ここで、図2に示す例では、導電層32は、接地用太陽電池セル30の裏面電極24の下側部分にのみ形成され、間隙25の下側部分には形成されておらず絶縁層14が残されているが、本発明はこれに限定されず、接地用太陽電池セル30内であれば、間隙25の下側部分や隣接する太陽電池セル22の裏面電極24の下側部分も導電層32となっていても良い。しかし、この場合には、接地用太陽電池セル30の裏面電極24と隣接する太陽電池セル22の裏面電極24とが短絡されるので、接地用太陽電池セル30は、発電には寄与しなくなる。
【0055】
このような導電層32は、例えば、図7に示す従来の太陽電池モジュール50を製造した後、図3に示すように、接地用太陽電池セル30となる太陽電池セル22の透明電極28上に超音波はんだ34を塗布し、超音波はんだ34が塗布された太陽電池セル22のみに加熱超音波処理を施すことにより、当該太陽電池セル22の超音波はんだ34が塗布された部分に対応する絶縁層14を破壊すると共に、破壊された絶縁層14に接していた金属基板12及び裏面電極24の表面を溶解して混合させ、金属基板12と裏面電極24と破壊された絶縁層14とを混合状態にすることにより形成することができる。なお、導電層14の混合状態の形成は、特に明らかにされていないが、例えば、超音波はんだ34が塗布された太陽電池セル22のみに加熱超音波処理を施すことにより、当該太陽電池セル22の超音波はんだ34が塗布された部分に対応する絶縁層14を破壊して微細な空隙を生じさせて多孔質とすると共に、破壊された絶縁層14に接していた金属基板12及び裏面電極24の表面を溶解して破壊された絶縁層14の微細な空隙に浸入して行くことにより混合状態が形成されるものと推定される。なお、接地用太陽電池セル30の透明電極28や光電変換層26も破壊される場合には、これらや超音波はんだ34も混じった導電層32が形成されても良い。はんだはセル全面に塗布しても良いが図3のように透明導電膜28を片側あるいは両側に残しても良い。また、はんだを塗布せずにセル上にはんだを供給しながら線状に順にはんだ付けしても構わないが、はんだを配置してから線上を一度にはんだ付けする、あるいは線状の複数個所を同時にはんだ付けするのが生産上好ましい。
【0056】
なお、このようにして形成された導電層32の導電性は、導電層32の混合状態によって決まるものであると考えられるので、接地用太陽電池セル30となる太陽電池セル22の構成や機能や発電機能の要否、特に絶縁層14等の厚さに応じて、超音波はんだ34の塗布量、加熱超音波処理における加熱温度、加熱時間、超音波の強さ及び超音波処理時間等を適切に制御することにより制御することができ、必要な導電性を得るようにすることができる。
導電層32の導電性と、太陽電池セル22の構成や機能、特に絶縁層14等の厚さと、超音波はんだ34の塗布量、加熱超音波処理における加熱温度、加熱時間、超音波の強さ及び超音波処理時間等との関係は、予め、実験やシミュレーション等により求めておけばよい。
【0057】
上述した例では、図7に示すように、一旦、従来の太陽電池モジュール50を製造した後に、導電層32を形成しているが、本発明はこれに限定されず、金属基板12上に絶縁層14が形成されていれば、太陽電池モジュールの製造のどの段階で形成しても良い。
例えば、金属基板12上の絶縁層14の、接地用太陽電池セル30となる該当部分に超音波はんだを塗布して加熱超音波処理を行って、破壊された絶縁層14と金属基板12と超音波はんだとが混合された導電層32を形成しておき、その後に、複数の太陽電池セル22及び接地用太陽電池セル30を形成するようにしても良い。また、金属基板12上の絶縁層14上に裏面電極24を形成した後、接地用太陽電池セル30となる該当部分の裏面電極24に超音波はんだを塗布して加熱超音波処理を行って、破壊された絶縁層14と金属基板12と裏面電極24とが混合された導電層32、又はさらに超音波はんだも混合された導電層32を形成し、その上に順次、光電変換層26及び透明電極28を形成して、複数の太陽電池セル22及び接地用太陽電池セル30を形成するようにしても良い。さらに、光電変換層26を形成した後に、同様にして導電層32を形成し、その上に透明電極28を形成して、複数の太陽電池セル22及び接地用太陽電池セル30を形成するようにしても良い。
これらの方法は、いずれも、導電層32を形成した後に、太陽電池セル22を完成することになるので、裏面電極24、光電変換層26及び透明電極28の1つ以上を形成する必要があることから、正確なアラインメントが必要となるため、太陽電池セル22を形成した後に、導電層32を形成する方が好ましい。
【0058】
本発明の第1実施形態の太陽電池モジュールは、基本的に以上のように構成されるものであり、以下のようにして製造される。
図4は、図2に示す本発明の第1実施形態の太陽電池モジュールの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、金属基板12としてAl基板を用いて、上述した方法で陽極酸化処理を行い、表面に絶縁層14となる陽極酸化被膜を形成して、陽極酸化被膜を持つAl基板を形成し、これを支持基板16として準備する(ステップS100)。
もちろん、予め、陽極酸化被膜を持つAl基板を支持基板16として準備しても良い。
【0059】
次に、支持基板16の絶縁層14上に、上述したDCマグネトロンスパッタ法等の公知の成膜法によりMoを成膜してMo膜を形成する(ステップS102)。
次に、こうして絶縁層14上に形成されたMo膜を上述したレーザスクライビング法により切断して、パターン1にパターニングして間隙25を形成し、裏面電極24を形成する(ステップS104)。
次に、絶縁層14上に形成された裏面電極24上に、間隙25を埋めるように、上述したセレン化/硫化法又は多源同時蒸着法等の公知の方法により光電変換層26となるCIGS系化合物半導体膜(p型CIGS系光吸収膜)を形成する(ステップS106)。
続いて、こうして形成されたCIGS系化合物半導体膜上に、上述したCBD等の公知の方法によりバッファ層となるCdS膜(n型高抵抗バッファ層)を形成する(ステップS108)。
次に、こうして裏面電極24上に形成されたCIGS系化合物半導体膜及びCdS膜を一体として、上述したメカニカルスクライビング法により切断して、パターン2にパターニングして裏面電極24にまで達する溝27を形成し、光電変換層26及びバッファ層を形成する(ステップS110)。
【0060】
続いて、こうして形成されたバッファ層(光電変換層26)上に、溝27を埋めるように、上述したMOCVD法又はRFスパッタ法等の公知の方法により透明電極層28となるZnO膜(n型ZnO透明導電膜窓層)を形成する(ステップS112)。
次に、こうして形成されたZnO膜、バッファ層及び光電変換層26を一体として、上述したメカニカルスクライビング法により切断して、パターン3にパターニングして、隣接する太陽電池セル22間に、裏面電極24にまで達する開口29を形成し、各太陽電池セル22毎に光電変換層26、バッファ層及び透明電極層28を個々に分離して、複数の太陽電池セル22を形成する(ステップS114)。
続いて、予め設定されている接地用太陽電池セル30となる太陽電池セル22の透明電極層28上に超音波はんだ34を塗布する(ステップS116)。 次に、超音波はんだ34が塗布された太陽電池セル22の透明電極層28に選択的に加熱超音波処理を施し、その絶縁層14を破壊してその成分と金属基板12の成分と裏面電極24の成分とを混合して導電層32を形成する(ステップS118)。
こうして、本実施形態の太陽電池モジュール10が形成される(ステップS118)。
【0061】
次に、本発明の第2の実施形態の太陽電池モジュールについて説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態の太陽電池モジュールを示す模式的断面図である。
なお、図5に示す本実施形態の太陽電池モジュール40と、図2に示す第1の実施形態の太陽電池サブモジュール10とは、接地用太陽電池セル30の導電層42の構成が異なる以外は、同一の構成を有するものであり、同一構成要素には同一参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0062】
図5に示すように、本実施形態の太陽電池モジュール40は、第1の実施形態の太陽電池サブモジュール10の接地用太陽電池セル30の導電層32の代わりに、隣接する太陽電池セル22から延在する裏面電極24が直接金属基板12と光電変換層26との間に配置されて導電層42が形成されている。したがって、本実施形態の太陽電池モジュール40では、裏面電極24と接地された金属基板12とが直接接触して電気的に導通しているので、接地用太陽電池セル30の裏面電極24を金属基板12を介して接地することができる。
したがって、本実施形態の太陽電池モジュール40においても、上述した実施形態の太陽電池モジュール10と同様に、太陽電池セル22及び30の構成は、どのような太陽電池セル(光電変換素子、光電変換層)であっても良いのはもちろんである。
【0063】
このような太陽電池モジュール40の導電層42は、接地用太陽電池セル30に該当する部分のみに陽極酸化膜などの絶縁層14が形成されておらず、他の部分には陽極酸化膜などの絶縁層14が形成されているAl基板などの金属基板12からなる支持基板16を用いて、上述した実施形態の太陽電池モジュール10の場合と同様に、発電層20を形成し、すなわち順次、裏面電極24及び導電層42と、光電変換層26及びバッファ層と、透明電極層28とを形成し、複数の太陽電池セル22及び接地用太陽電池セル30を形成することができる。こうして、本実施形態の太陽電池モジュール40を形成することができる。
なお、接地用太陽電池セル30に該当する部分のみに絶縁層14が形成されていない金属基板12からなる支持基板16の代わりに、陽極酸化Al基板のように金属基板12の全面に絶縁層14が形成された支持基板16の接地用太陽電池セル30に該当する部分の陽極酸化膜などの絶縁層14をスクライブやエッチング等で取り除いた状態の支持基板16を用い、同様に、裏面電極24の蒸着から始まる発電層20を形成して、本実施形態の太陽電池モジュール40を形成しても良い。
【0064】
以上のようにして、本発明の第1及び第2の実施形態の太陽電池モジュール10及び40においては、複数の太陽電池セル22の真中又は略中央の位置にある接地用太陽電池セル30の裏面電極24を支持基板16の金属基板12と電気的に接続すると共に、金属基板12を接地しておくことにより、一方(図2及び図5の左側)の端部の太陽電池セル22aと他方(図2及び図5の右側)の端部の太陽電池セル22bとの電位差(電圧)を、太陽電池セル22aと接地用太陽電池セル30との電位差(+電圧)及び太陽電池セル22bと接地用太陽電池セル30との電位差(−電圧)の2つの略半分の電位差に分割できるので、金属基板12の電位を出力電圧の略半分にすることができる。
【0065】
したがって、太陽電池セル22の発電層20と金属基板12との間の浮遊容量の影響を小さくし、また両者間の電位差を小さくすることができ、発電層20と金属基板12との間の絶縁層14の耐圧を高くする必要を無くし、1モジュールあたりの出力電圧を高くすることができ、高電圧の太陽電池モジュール10及び40とすることができる。
なお、本発明の太陽電池モジュール10又は40においては、例えば、太陽電池セル22を461個用い、その真中の太陽電池セル22を接地用太陽電池セル30とすることにより、±150V出力できる太陽電池モジュールとすることができ、この太陽電池モジュールをPWM(パルス幅変調)型の2相交流インバータ又は3相交流インバータに接続して、このインバータで2相交流又は3相交流に変換して、2相交流電力又は3相交流電力を取り出すことができる。
【0066】
本発明の第1及び第2の実施形態の太陽電池モジュール10及び40は、太陽光発電システムに用いることができる。
図6は、本発明の太陽電池モジュールを用いた太陽光発電システムの一構成例を模式的に示す構成図である。図6に示す太陽電池システム60では、太陽電池モジュールの代表例として、図2に示す太陽電池モジュール10を用いているが、図5に示す太陽電池モジュール40を用いても良いことはもちろんである。
太陽光発電システム60は、図6に示すように、太陽電池モジュール10と、インバータ62と、連係スイッチ64と、回路遮断器66と、商用交流電力系統等の交流電力系統68と、需要家負荷70から構成される。
【0067】
太陽光発電システム60においては、太陽電池モジュール10の出力は、インバータ62の入力に接続され、インバータ62の出力は、連係スイッチ64を介して、交流電力系統68から回路遮断器66を介して需要家負荷70に接続される配線に接続され、太陽電池モジュール10からの出力電力が需要家負荷70及び交流電力系統68に送出されるようになっている。こうして、太陽光発電システム60においては、太陽電池モジュール10を交流電力系統68と連系運転させることができる。
なお、回路遮断器66としては、漏電ブレーカなどの漏電遮断器などを用いることができる。また、連係スイッチ64の代わりに、漏電ブレーカなどの漏電遮断器や回路遮断器を用いても良い。
【0068】
インバータ62は、太陽電池モジュール10に接続され、その直流出力を交流出力に変換するためのもので、非絶縁型のトランスレスインバータを用いることができる。このようなインバータ62としては、PWM(パルス幅変調)型の2相交流インバータや、3相交流インバータなどを用いることができる。ここで、太陽電池モジュール10の出力端子は、正極(+)と、負極(−)と、接地(グランド)との3つであるので、これらの3つの出力端子を、インバータ62の中性点と太陽電池モジュール10の接地(グランド)とを一致させるように、インバータ62の入力端子に接続することができる。
その結果、太陽光発電システム60においては、従来技術の太陽光発電装置のように、電位固定手段やスイッチング素子等の要素を付け加えることなく、安価なトランスレスインバータ等の非絶縁型インバータをそのまま用いることができ、また、特に低感度の漏電遮断器等の回路遮断器を用いる必要がなく、また、1セットの太陽電池として使用できる数に制限がないので、高電圧を出力することができる太陽光発電システムを構成することができる。
【0069】
本発明の太陽電池モジュールは、基本的に以上のように構成されるものである。
以上、本発明に係る太陽電池モジュールについて種々の実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0070】
10、40、50 太陽電池モジュール
12 金属基板
14 絶縁層
16 支持基板
20、52 発電層
22 太陽電池セル
24 裏面電極
26 光電変換層
28 透明電極
30 接地用太陽電池セル
32、42 導電層
34 超音波はんだ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、
該金属基板上に形成された絶縁層と、
該絶縁層上に形成され、直列接続される複数の太陽電池セルと、
該複数の太陽電池セルの両端部に設けられる2つの出力端子と、
前記複数の太陽電池セルの中央部側に接続される接地端子と、を有し、
各太陽電池セルは、
該絶縁層上に形成された裏面電極層と、
該裏面電極層上に形成され、受光した光を電気に変換する光電変換層と、
該光電変換層上に形成された透明電極層と、を備え、
前記複数の太陽電池セルは、各太陽電池セルの前記透明電極層が、隣接する太陽電池セルの前記裏面電極層に接続されることにより、直列に接続され、
前記2つの出力端子は、前記複数の太陽電池セルの一方の端部の太陽電池セルの前記裏面電極層に接続される第1の出力端子と、他方の端部の太陽電池セルの前記透明電極層に接続される第2の出力端子とからなり、
さらに、前記複数の太陽電池セルの真中の太陽電池セルからプラス10%〜マイナス10%の範囲にある1つの接地用太陽電池セルの前記裏面電極層と前記金属基板とを電気的に導通する導電層を有し、
前記接地端子は、前記金属基板に接続され、該金属基板及び前記導電層を介して前記接地用太陽電池セルに接続されることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記接地用太陽電池セルは、前記真中の太陽電池セルからプラス5%〜マイナス5%の範囲にある1つの太陽電池セルである請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記接地用太陽電池セルは、前記真中の太陽電池セルである請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記導電層は、前記接地用太陽電池セルの前記金属基板上の前記絶縁層を加熱超音波処理することにより導電化した層である請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記導電層は、少なくとも前記金属基板上の前記絶縁層上に前記裏面電極層を形成した後、少なくとも前記裏面電極層が形成された前記接地用太陽電池セルに超音波はんだを付けて加熱超音波処理を施して、当該接地用太陽電池セルの前記絶縁層を導電化した層である請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記導電層は、前記複数の太陽電池セルを形成した後、前記接地用太陽電池セルに超音波はんだを付けて加熱超音波処理を施して、当該接地用太陽電池セルの前記絶縁層を導電化した層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記導電層は、前記金属基板上に前記絶縁層を形成した後、当該接地用太陽電池セルの前記絶縁層を除去し、その後、前記絶縁層及び前記金属基板上に前記裏面電極層を形成することにより前記金属基板上に形成される当該接地用太陽電池セルの前記裏面電極層である請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記複数の太陽電池セルは、複数のライン状の溝部によって分離され、それぞれ前記金属基板上の前記絶縁層上にライン状に形成され、
前記裏面電極層、前記光電変換層、前記透明電極層及び前記導電層の形状は、ライン状である請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記太陽電池セルは、集積型薄膜太陽電池セルである請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記太陽電池セルは、CIS系薄膜型太陽電池セル、CIGS系薄膜型太陽電池セル、薄膜シリコン系薄膜型太陽電池セル、CdTe系薄膜型太陽電池セル、III−V属系薄膜型太陽電池セル、色素増感系薄膜型太陽電池セル、および有機系薄膜型太陽電池セルのいずれか1つの薄膜型太陽電池セルを有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記光電変換層は、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体を主成分とする層である請求項1〜10のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記光電変換層は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体を主成分とする層である請求項11に記載の太陽電池モジュール。
【請求項13】
前記光電変換層は、
Cu及びAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体を主成分とする層である請求項12に記載の太陽電池モジュール。
【請求項14】
前記絶縁層が形成された前記金属基板は、陽極酸化処理されたアルミニウム基板からなり、前記絶縁層は、陽極酸化膜である請求項1〜13のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項15】
前記アルミニウム基板は、複合材料からなる複合アルミニウム基板である請求項14に記載の太陽電池モジュール。
【請求項16】
前記複合アルミニウム基板は、鋼板を2枚のアルミニウム板で挟んだクラッド板、又はステンレス板とアルミニウム板とのクラッド板である請求項15に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−77149(P2011−77149A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224761(P2009−224761)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【特許番号】特許第4612731号(P4612731)
【特許公報発行日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】