説明

太陽電池モジュール

【課題】発電効率とデザイン性の双方を両立させやすい色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール130は、複数のセル100を含む。セル100は、採光面側の作用極から電子を発生させ、非採光面側の対極から電子を取り込む色素増感型太陽電池である。第1のセルの作用極と、隣の第2のセルの対極を接続することにより、複数のセルは直列接続される。ここで、太陽電池モジュール130に含まれる各セルは所定の第1軸に対して回転対称に配置される。第2のセルの作用極の欠切部には第1のセルの作用極の突出部が収容され、第1のセルの対極の欠切部には第2のセルの対極の突出部が収容される。連結導体は、第1のセルの作用極の突出部と第2のセルの対極の突出部を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池に関し、特に、太陽電池セルの構造および接続に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池に対する期待が高まっているが、その中でも色素増感型太陽電池(DSC:Dye Sensitized Solar Cell)が注目されている。色素増感型太陽電池は、印刷技術の延長で製造できる、成形しやすい、多様な色彩を実現できるためデザイン性に優れる、といったさまざまな利点を有する。色素増感型太陽電池のセル(以下、単に「セル」とよぶ)に光を当てると、セル内の色素が励起され、色素は電子を放出する。放出された電子は作用極とよばれる陰極から取り出される。電子は、外部負荷を経由して、対極とよばれる陽極に戻る。色素が電子放出と電子吸収を繰り返すことにより、電池としての機能が発揮される。色素増感型太陽電池は、屋外発電源に限らず、各種電子機器の主電源やバックアップ電源への応用も検討されている。
【0003】
図7は、従来型の太陽電池モジュール230の概略断面図である。図7は特許文献1に開示されている例をさらに模式的に示すものであり、図7に基づいて色素増感型太陽電池の一般的な構成を説明する。太陽電池モジュール230においては、セル220a、220b、220c・・・という複数のセル220(以下、まとめていうときには「セル220」とよぶ。他の部材についても同様に表記する。)が連結される。各セル220には、同図下方向から光200が照射される。
【0004】
太陽電池モジュール230の構造は以下の通りである。代表として、セル220bに注目する。セル220bにおいては、作用極側透明導電層206bと対極側透明導電層208b、隔壁216によって空間が形成されている。この空間は電解質212によって満たされ、内部に半導体層210bを含む。半導体層210bは色素214を吸着している。半導体層210bは作用極側透明導電層206b側に接着される。セル220bの作用極側透明導電層206bと、セル220cの対極側透明導電層208cは導電部材222によって接続される。同様に、セル220bの対極側透明導電層208bと、セル220aの作用極側透明導電層206aも導電部材222により接続される。電解質212が導電部材222を腐食するのを防ぐため、導電部材222の両側には耐薬性の隔壁216が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−12377号公報
【特許文献2】特開2001−357897号公報
【特許文献3】特開2009−181791号公報
【特許文献4】特開2009−238583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような太陽電池モジュール230の主な課題として、以下の3点を挙げることができる。第1に、導電部材222とその両側の隔壁216が存在するため半導体層210のサイズを小さくせざるを得ない。この結果、太陽電池モジュール230の表面積のうち、採光に利用できる面積(以下、「有効発電面積」とよぶ)の割合が小さくなってしまう(以下、「課題1」とよぶ)。第2に、構造が複雑となる。特に、導電部材222周辺の構造が複雑であり製造が難しい(以下、「課題2」とよぶ)。第3に、一ヶ所でも不具合が発生すると太陽電池モジュール230全体が利用できなくなる。たとえば、セル220bとセル220cを接続する導電部材222が断線すると、その影響は太陽電池モジュール230全体に及ぶ(以下、「課題3」とよぶ)。
【0007】
本発明は、本発明者らによる上記課題認識に基づいて完成された発明であり、その主たる目的は、有効発電面積を確保しやすく、製造・修理が容易な色素増感型太陽電池のセル構造、特に、セルの好適な接続方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる太陽電池モジュールは、採光面側に設けられる電極である作用極から電子を発生させ、非採光面側に設けられる電極である対極から電子を取り込む色素増感型太陽電池の複数のセルと、第1のセルの作用極と第1のセルに隣接する第2のセルの対極をセルの外壁面上において接続することにより、複数のセルを直列接続する連結導体を備える。
【0009】
ここでいう「外壁面上」とは、太陽電池モジュール自体の外壁面として露出する必要はなく、セルの外壁面上であればよい。連結導体をセル外壁面上に設けることにより、導電部材を封入する必要性がなくなるため、太陽電池モジュールのセル接続構造が簡素となる。連結導体が接続不良となっても、連結導体を修理・変更しやすいため、太陽電池モジュール全体としての利用を継続しやすい構成となる。また、セルとセルの接続部分の隔壁を薄くしやすい構造となるため、有効発電面積も拡大させやすくなる。
【0010】
各セルは第1の軸に対して回転対称に配置され、複数のセルにより放射形状体の全部または一部が形成されてもよい。各セルの作用極および対極の双方には、第1の軸に対する回転方向に突起部が設けられてもよい。連結導体は、第1のセルの作用極の突出部と第2のセルの対極の突出部を接続してもよい。
【0011】
第1の軸に対して複数のセルを回転対称に配列することにより、第1の軸を中心とした放射形状型太陽電池の全部または一部となる太陽電池モジュールが形成される。このような構成によれば、色素増感型太陽電池のデザインの自由度を拡げることができる。また、各セルの第1の軸に対する中心角をそろえることにより、セルのサイズ、ひいては、電気的特性を均一化させやすくなる。
【0012】
各セルの作用極および対極の双方には、第1の軸に対する回転方向に欠切部が設けられてもよい。第2のセルの作用極に設けられる欠切部には、第1のセルの作用極に設けられる突出部が収容され、第1のセルの対極に設けられる欠切部には、第2のセルの対極に設けられる突出部が収容されてもよい。
【0013】
各セルの形状は、第1の軸に対する中心角が略同一の扇形であってもよい。ここでいう略同一とは、たとえば、5%前後のずれは許容できる程度の同一性をいう。以下における「略」という用語の意味についても同様である。
【0014】
各セルの有効発電面積は略同一であってもよい。有効発電面積をそろえることにより、各セルの起電力を均一化させやすくなる。
【0015】
第1の軸に近い側を内周側、遠い側を外周側としたとき、作用極においては外周側端部に欠切部と突出部の双方を設け、対極においても外周側端部に欠切部と突出部の双方を設けてもよい。
【0016】
あるいは、作用極においては外周側端部および内周側端部の一方に欠切部、他方に突出部を設け、対極においても外周側端部および内周側端部の一方に欠切部、他方に突出部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、有効発電面積を確保しやすく、製造・修理が容易な色素増感型太陽電池を実現させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】色素増感型太陽電池のセルの概略断面図である。
【図2】太陽電池モジュールの概略斜視図である。
【図3】作用極導電膜および対極導電膜の連結方法を示す模式図である。
【図4】本実施形態の第1例における作用極導電膜および対極導電膜の接続関係を示す平面図である。
【図5】本実施形態の第2例における作用極導電膜および対極導電膜の接続関係を示す平面図である。
【図6】比較例における作用極導電膜および対極導電膜の接続関係を示す平面図である。
【図7】従来の太陽電池モジュールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、色素増感型太陽電池のセルの概略断面図である。図1は1つ分のセル100の構造を示す。同図右方向をx軸の正方向、上方向をz軸の正方向、同図紙面から奥に向かう方向をy軸の正方向とする。図1のセル100は、同図下方向からの光200によって発電する。光200は、z軸の正方向に照射される。
【0021】
セル100の構造は以下の通りである。セル100において、非採光面側の対極側基板108上に対極導電膜110が設置される。対極側基板108と対極導電膜110、触媒層126をまとめて「対極」とよぶ。対極側基板108は、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のプラスチック基板、あるいは、ガラス基板として形成される。対極側基板108は、金属基板や合金基板、セラミックス基板、あるいは、これらの積層体として形成されてもよい。対極側基板108は、透光性を有することが好ましく、特に、可視光領域における透光性に優れる材料にて形成されることが好ましい。また、対極側基板108は、屈曲させやすい物質にて形成されてもよい。対極導電膜110は、透明導電膜として形成されてもよい。透明導電膜の具体例としては、インジウム・スズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化スズ(4)、酸化インジウム、フッ素ドープ酸化スズ(FTO:Fluorine doped tin oxide)などが挙げられる。透明導電膜(対極導電膜110)は、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スプレー法、スピンコート法、浸漬法等の既知の手法により形成されればよい。対極導電膜110には、表面改質処理が施されてもよい。表面改質処理の具体例としては、界面活性剤、有機溶剤、アルカリ水溶液等による脱脂処理、機械的研磨処理、水溶液への浸漬処理、電解液による予備電解処理、水洗処理、乾燥処理などが挙げられる。
【0022】
対極導電膜110の表面には触媒層126が設けられる。触媒として白金を用いることが好ましい。白金のほか、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、モリブデン、チタン等の金属や、カーボン、導電性ポリマー等により触媒層126を形成してもよい。
【0023】
採光面側の作用極側基板102の上には作用極導電膜104が設置される。作用極側基板102の材質は、対極側基板108の材質と同様である。
【0024】
作用極導電膜104、対極導電膜110および隔壁112によって仕切られた空間には電解質116が満たされ、作用極導電膜104の表面には金属酸化物層114が形成される。作用極導電膜104は、透明導電膜として形成される。透明導電膜としては、対極導電膜110の具体例として挙げたものを好適に用いることができる。また、対極導電膜110同様、表面改質処理を行っても良い。
【0025】
金属酸化物層114は、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(4)、三酸化タングステン(WO3)、五酸化ニオブ(Nb2O5)等の金属酸化物を主成分とする多孔性の半導体層である。金属酸化物層114は、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、鉛、アンチモン、ビスマス等の金属や、これらの金属酸化物、金属カルコゲニドを含んでもよい。金属酸化物層114の厚みは、0.05〜50μm程度である。
【0026】
金属酸化物層114の形成方法としては、金属酸化物粒子を含有する調合物を作用極導電膜104上に付与したあとに焼結する焼結法や、この調合物の付与後に50〜150度程度、より好ましくは70〜150度程度の低温処理を行う低温処理法が挙げられる。これらの方法によれば、金属酸化物の粒子が凝集した多孔質構造を容易に形成できる。環境負荷軽減の観点からは低温処理法の方が望ましい。低温処理法の場合、基板が樹脂を含む場合にも応用しやすいというメリットがある。
【0027】
上述の調合物は、分散液、ゾル液、スラリー液等、分散媒を含む調合液であることが望ましい。分散媒としては、水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、エトキシエタノール、シクロヘキサノン等の各種有機溶媒が挙げられる。必要に応じて、他の界面活性剤、酸、キレート剤等の助剤を含んでもよい。
【0028】
電解質116としては、レドックス電解質溶液やこれをゲル化した半固体電解質、あるいは、p型半導体固体ホール輸送材料を成膜したもの等、電池において一般的に使用されているものを使用できる。電解液としては、ヨウ素、ヨウ化物、臭素、臭化物等を含むニトリル系溶媒を用いた溶液、エチレンカーボネート溶液、プロピレンカーボネート溶液等が挙げられる。本実施形態における電解質116は、ヨウ素(I2)を溶かした電解液である。電解液の濃度や添加剤等は、要求性能に応じて設定・選択されればよい。添加剤としては、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレンおよびそれらの誘導体等を利用したp型導電性ポリマー、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、トリアゾリウムイオンおよびそれらの誘導体とハロゲンイオンを組み合わせた溶融塩、ゲル化剤、オイルゲル化剤、分散剤、界面活性剤、安定化剤等を用いる。
【0029】
多孔質性の金属酸化物層114の表面には色素118(増感色素)が吸着される。色素118は、水溶性、非水溶性、油溶性のいずれであってもよい。色素118の具体例としては、エオシンY等のキサンテン系色素、クマリン系色素、トリフェニルメタン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ポリピリジン金属錯体色素、ルテニウムビピリジウム系色素、アゾ色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリウム系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、オキソノール系色素、ポリメチン系色素、リボフラビン系色素等が挙げられる。色素118は、色素担持量を増加させるため、金属酸化物と相互作用する吸着性基を有することが好ましい。吸着性基の具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0030】
色素118を金属酸化物層114に担持させる方法としては、色素118を含む溶液に金属酸化物層114を浸漬する方法や、色素118を含む溶液を金属酸化物層114に塗布する方法が挙げられる。色素118を含有する溶液は、水、エタノール系溶媒、ニトリル系溶媒、ケトン系溶媒等であってもよい。隔壁112の材料は樹脂、ガラスなどである。金属酸化物層114、作用極導電膜104および作用極側基板102をまとめて「作用極」とよぶ。なお、金属酸化物層114と作用極導電膜104の間に「中間層」を設けてもよい。中間層は、対極導電膜110に関連して上述した金属酸化物等により形成されることが好ましい。中間層は、蒸着法、CVD法、スプレー法、スピンコート法、浸漬法、電析法等の公知の方法により形成される。中間層は透光性と導電性を有することが好ましい。中間層の厚みは、0.1〜5μm程度である。作用極導電膜104から対極導電膜110までの距離、すなわち、空間の厚みは1〜300μm程度である。
【0031】
セル100の動作原理は以下の通りである。作用極側基板102および作用極導電膜104を透過した光200により、金属酸化物層114表面の色素118が励起され、色素118は電子を金属酸化物層114に注入する。電子は、作用極導電膜104に放出される。電子を放出して酸化された色素は、レドックス対であるヨウ素イオンから電子を奪い、再還元され元に戻る。詳細は後述するが、作用極導電膜104に放出された電子は、隣のセル100の対極導電膜110に供給される。隣のセル100から供給された電子は、色素から電子を奪われたレドックス対を再還元する。このような流れの発電サイクルが継続する。以下、本実施形態において、1個のセル100の起電力は0.5(V)であるとして説明する。
【0032】
図2は、太陽電池モジュール130の概略斜視図である。本実施形態における色素増感型の太陽電池モジュール130の形状は、中空円盤形状である。太陽電池モジュール130は8つのセル100a〜100hを含む。各セル100の形状は中心角45度の扇形となる。すなわち、全てのセル100は、仮想的な第1軸132に対して回転対称に配置される。xy平面における第1軸132の位置を集約点Pとよぶ。
【0033】
セル100aの同図上側、すなわち、採光面側の作用極導電膜104からは負極端子134が引き出される。セル100aの対極導電膜110は、セル100bの作用極導電膜104と連結導体(図示せず)を介して接続される。連結導体は、セル100の外壁面150上に形成される。セル100bの対極導電膜110は、セル100cの作用極導電膜104と接続される。以下同様であり、セル100gの対極導電膜110は、セル100hの作用極導電膜104と接続される。セル100hの対極導電膜110からは正極端子136が引き出される。
【0034】
この結果、負極端子134と正極端子136の間において、8つのセル100が直列接続されることになる。1個あたりのセル100の起電力が0.5(V)の場合、太陽電池モジュール130全体としての起電力は0.5×8=4.0(V)となる。なお、各セル100の有効発電面積は略同一にそろえられている。これは、インピーダンス等の電気的特性のばらつきを抑制し、太陽電池モジュール130全体としての発電効率を高めるためである。詳細については、図4、図5等に関連して後述する。
【0035】
図3は、作用極導電膜104および対極導電膜110の連結方法を示す模式図である。作用極導電膜104と対極導電膜110の形状は共に、扇形である。対極導電膜110aの外周部分(第1軸132から遠い側)の一端には突起部122a、他端には欠切部124aが設けられる。同様に、作用極導電膜104aの外周部分の一端には突起部140a、他端には欠切部142aが設けられる。セル100aの作用極導電膜104aの欠切部142aには、隣のセル100bの作用極導電膜104bの突起部140bが入り込む。また、セル100aの対極導電膜110aの突起部122aは、セル100bの作用極導電膜104bの突起部140bと対向する。対極導電膜110aの突起部122aと作用極導電膜104bの突起部140bを導体(連結導体)で接続することにより、金属酸化物層114から作用極導電膜104bに流入した自由電子を、隣のセル100aの対極導電膜110aに供給できる。導電ペーストを突起部140と突起部122にそれぞれ塗布し、作用極側基板102と対極側基板108の貼り合わせ時にこれらを密着させることにより連結導体を形成してもよい。あるいは、セル100に電解液を封止したあと、セル100の外壁面上から導電ペーストを注入することにより連結導体を形成してもよい。いずれにしても、連結導体はセル100(封止領域)の外壁面上に設けられる。ここでいう「外壁面」とはあくまでもセル100の外壁面であればよく、太陽電池モジュール130自体の外壁面である必要はない。たとえば、セル100を形成し、その外壁面に連結導体を形成し、連結導体を保護するカバー等を更に設けてもよい。このような連結方法により、複数のセル100を直列接続させた「電池」を形成できる。
【0036】
図4は、本実施形態の第1例における作用極導電膜104および対極導電膜110の接続関係を示す平面図である。第1例は、図3の構成に対応する。第1例においては、対極導電膜110の外周側端部に欠切部124と突起部122の両方が設けられる。作用極導電膜104も外周側端部に欠切部142と突起部140が設けられる。セル100hにおいては、対極導電膜110hの突起部122hから正極端子136が引き出される。セル100aにおいては、作用極導電膜104aの突起部140aから負極端子134が引き出される。作用極導電膜104の上には、金属酸化物層114が形成される。金属酸化物層114は、外周側端部に2つの欠切部が形成された形状となる。負極端子136と正極端子134は、太陽電池モジュール130を平面視(z軸方向)で見たときに重ならない位置に設置される。これにより、負極端子136と正極端子134が短絡しにくい構成となる。
【0037】
第1例における太陽電池モジュール130の製造方法は以下の通りである。以降に示す第2例についても基本的に同様である。まず、作用極導電膜104となるFTOを作用極側基板102に設け、ブラスト処理してパターニングする。次に、作用極導電膜104上に、酸化チタンペーストをスクリーン印刷で塗布し、約450度で90分間加熱することにより、金属酸化物層114を形成する。次に、(4,4’−ジカルボン酸−2,2’−ビピリジン)ルテニウム(2)ジイソチアネートを3×10−4Mで添加した無水エタノール溶液20mlに作用極側基板102を約12時間浸漬する。浸漬後、無水アセトニトリルで洗浄し、自然乾燥させる。金属酸化物層114は、ルテニウム色素の吸着により深紅色となる。
【0038】
対極導電膜110となるFTOを対極側基板108に設け、対極導電膜110には10nm厚の白金膜をスパッタリングする。この白金膜が触媒層126となる。触媒層126の表面をブラスト処理し、対極導電膜110と触媒層126を除去することによりパターンを形成する。
【0039】
作用極側基板102の上にUV硬化型封止接着剤をディスペンサーで塗布し、電解液を金属酸化物層114に滴下する。そして、作用極側基板102と対極側基板108を貼り合わせる。大気を解放させたあと、UV照射により封止接着剤を硬化させる。なお、電解液としては、テトラプロピルアンモニウムヨウジド(0.4M)とヨウ素(0.04M)を含むメトキシプロピオニトリル溶液を用いる。貼り合わせ後、あるセル100の作用極導電膜104と、となりのセル100の触媒層126の間のセル外壁面上にUV硬化型銀ペーストを挿入し、UV硬化させることにより、セル100を直列接続する。
【0040】
第1例の場合、金属酸化物層114a〜114hはいずれも同一サイズ・同一形状となっている。セル100の電気的特性が同一となるため、太陽電池モジュール130全体としての発電効率が高くなる。また、対極導電膜110a〜110hと、作用極導電膜104a〜104hも、同一サイズ・同一形状であるため、単一のパターンニング・マスクにより対極導電膜110と作用極導電膜104の両方を形成できるという製造上のメリットがある。
【0041】
導電部材を封入する構造ではないため、導電部材を両側から保護するための隔壁は必要ない。この結果、セルの接続部分の隔壁を薄くしやすくなり、有効発電面積を大きく確保できる。いいかえれば、太陽電池モジュール130の採光面の面積に占める有効発電面積の割合を大きくできるので、課題1を解決する上で有効である。連結導体はセル100の外側で形成されるため、課題2、課題3を解決する上で有効である。
【0042】
図5は、本実施形態の第2例における作用極導電膜104および対極導電膜110の接続関係を示す平面図である。第2例においては、対極導電膜110hの外周側端部に突起部122h、内周側端部に欠切部124hが設けられる。一方、隣の対極導電膜110gの場合には、外周側端部に欠切部124g、内周側端部に突起部122gが設けられる。第2例の対極導電膜110においては、突起部122と欠切部124が内周側と外周側に交互に現れる。作用極導電膜104についても同様である。作用極導電膜104hの外周側端部に欠切部142h、内周側端部に突起部140hが設けられる。隣の作用極導電膜104gの場合には、外周側端部に突起部140g、内周側端部に欠切部142gが設けられる。第2例の作用極導電膜104においては、突起部140と欠切部142が内周側と外周側に交互に現れる。
【0043】
セル100hにおいて、対極導電膜110hの突起部122hから正極端子136が引き出される。セル100aにおいて、作用極導電膜104aの突起部122aから負極端子134が引き出される。作用極導電膜104の上には、金属酸化物層114が形成される。金属酸化物層114は、外周側端部と内周側端部にそれぞれ欠切部が形成された形状となる。
【0044】
第2例の場合においても、金属酸化物層114a〜114hはいずれも同一サイズ・同一形状となっている。セル100の電気的特性が同一となるため、太陽電池モジュール130全体としての発電効率が高くなる。また、対極導電膜110a〜110hと、作用極導電膜104a〜104hは、対極導電膜110hと対極導電膜110gのような2パターンである。第2例においても、第1例と同様、課題1〜3を解決できる構成となっている。
【0045】
図6は、比較例における作用極導電膜104および対極導電膜110の接続関係を示す平面図である。比較例においては、対極導電膜110および作用極導電膜104は、いずれも扇形であり突起部140、122や欠切部142、124を有しない。
【0046】
比較例の場合、図7に関連して説明した従来型と同様、セル100とセル100の間に連結導体を設置している。このため、連結導体を腐食から守るため、連結導体を覆う隔壁が必要となる。この結果、太陽電池モジュール130全体としての有効発電面積が低下してしまう。この問題については、図7に関連して説明した通りである。本発明者らの実験によれば、第1例や第2例に比べて比較例の最大出力は約18%低下することが確認された。連結導体が内蔵される構造となるため、いずれかの連結導体が導通不良となった場合には修復は困難であり、太陽電池モジュール130自体を破棄せざるを得なくなる。
【0047】
一般的には、色素増感型太陽電池のセルは矩形状に形成されることが多い(特許文献1、2参照)。特許文献3では円形のセルを提案するが、単一のセルであるため十分な起電力を確保しにくい。これに対して、本実施形態における色素増感型太陽電池の太陽電池モジュール130は、扇形のセルを多数組み合わせることにより円形の太陽電池モジュール130を形成している。これにより、十分な起電力の確保しつつデザインのバリエーションを拡大できる。本実施形態における太陽電池モジュール130は円形であるが、多角形などその他の放射形状であってもよい。この場合には、セル100の形状を台形や三角形とすればよい。本実施形態における太陽電池モジュール130によれば、従来の矩形型に限らず、さまざまな放射形状にも色素増感型太陽電池を対応させることが可能となる。
【0048】
セル100は、外周部分の連結導体により接続される。このため、有効発電面積を確保しつつ、複数のセル100を直列接続しやすくなる。また、第1例や第2例のような構成によれば、金属酸化物層114を同一形状にて形成できるため、セル100の有効発電面積を均一化しやすい。作用極導電膜104と対極導電膜110も同一形状であるため、製造プロセスを簡略化できるというメリットもある。
【0049】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0050】
100 セル、102 作用極側基板、104 作用極導電膜、108 対極側基板、110 対極導電膜、112 隔壁、114 金属酸化物層、116 電解質、118 色素、122 突起部、124 欠切部、126 触媒層、130 太陽電池モジュール、132 第1軸、134 正極端子、136 負極端子、140 突起部、142 欠切部、200 光、202 基板、204 基板、206 作用極側透明導電層、208 対極側透明導電層、210 半導体層、212 電解質、214 色素、216 隔壁、220 セル、222 導電部材、230 太陽電池モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採光面側に設けられる電極である作用極から電子を発生させ、非採光面側に設けられる電極である対極から電子を取り込む色素増感型太陽電池の複数のセルと、
第1のセルの作用極と前記第1のセルに隣接する第2のセルの対極をセルの外壁面上において接続することにより、前記複数のセルを直列接続する連結導体と、を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
各セルは第1の軸に対して回転対称に配置され、前記複数のセルにより放射形状体の全部または一部が形成され、
各セルの作用極および対極の双方には、前記第1の軸に対する回転方向に突起部が設けられ、
前記連結導体は、前記第1のセルの作用極の突出部と前記第2のセルの対極の突出部を接続することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
各セルの作用極および対極の双方には、前記第1の軸に対する回転方向に欠切部が設けられ、
前記第2のセルの作用極に設けられる欠切部には、前記第1のセルの作用極に設けられる突出部が収容され、
前記第1のセルの対極に設けられる欠切部には、前記第2のセルの対極に設けられる突出部が収容されることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
各セルの形状は、前記第1の軸に対する中心角が略同一の扇形であることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
各セルの有効発電面積は略同一であることを特徴とする請求項3または4に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記第1の軸に近い側を内周側、遠い側を外周側としたとき、
作用極においては、外周側端部に欠切部と突出部の双方が設けられ、
対極においても、外周側端部に欠切部と突出部の双方が設けられることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記第1の軸に近い側を内周側、遠い側を外周側としたとき、
作用極においては、外周側端部および内周側端部の一方に欠切部、他方に突出部が設けられ、
対極においても、外周側端部および内周側端部の一方に欠切部、他方に突出部が設けられることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−79428(P2012−79428A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220782(P2010−220782)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】