説明

太陽電池モジュール

【課題】補強構造を簡素化でき且つ十分な強度を発揮できる金属板基板型の太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュールは、金属板からなる長方形のシート状の基板1の表面に太陽電池セル2を配置し且つ基板1の裏面に幅方向に亙って補強用の桟3を複数配置して構成された金属板基板型のモジュールであり、各桟3がその長さ方向において湾曲した構造を備えていることにより、受光面Sがその幅方向において凸状に湾曲した形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関するものであり、詳しくは、補強構造を簡素化でき且つ十分な強度を発揮できる金属板基板型の太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュール(以下、「モジュール」と略記する。)は、光起電力効果により光を電力に変換する複数の太陽電池セル(以下、適宜「セル」と略記する。)をシート状の基材の上に配列して例えば長方形の平板状に構成される。上記のモジュールにおいては、屋根や屋上に設置するため、裏面を補強してパネルとしての剛性を確保している。すなわち、形状剛性を確保するため、外周には、基板の縁部を把持する窓枠状のフレームを配置し、更に、幅方向、長さ方向の撓みを防止するため、基板の裏面には、縦横に桟(リブ)を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−269609号公報
【特許文献2】特開2010−192748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなモジュールにおいては、発電量と施工効率を高める観点から、一層の大面積化が求められているが、軽量化と低コスト化を図るため、基材として厚さ1mm以下の極めて薄い金属板基板も使用される。特に、薄膜系モジュールでは、比較的安価なセルの製造コストに加え、上記の金属板基板を使用することにより、更に低コストで大面積化を図ることができる。
【0005】
しかしながら、金属板基板型のモジュールは、受光面の面積が大きくなるほど基板の柔軟性が増長されるため、所定の面積を超える場合には、セルを保護し且つパネルとして取り扱うのに必要な強度を確保するために、更に多くのフレームや桟で基板の裏面側を補強しなければならず、結果として、重量が増加し、一層のコストダウンも図り難くなっている。金属板基板型のモジュールにおいて、大面積化を達成するには、セルに損傷を与えることがなく且つ施工に必要とされる剛性、強度を確保しつつ、できる限りフレームの数を減らして製造コストを低減することが必要である。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、補強構造を簡素化でき且つ十分な強度を発揮できる金属板基板型のモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、金属板からなる長方形のシート状の基板を使用した金属板基板型のモジュールにおいて、湾曲した構造の補強用の桟を基板の裏面に短辺方向に亙って配置し、幅方向において受光面全体を凸状に湾曲させることにより、長さ方向における撓みを抑制するようにした。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、金属板からなる長方形のシート状の基板の表面に太陽電池セルを配置し且つ基板の裏面に幅方向に亙って補強用の桟を複数配置して構成された金属板基板型のモジュールであって、前記各桟がその長さ方向において湾曲した構造を備えていることにより、受光面がその幅方向において凸状に湾曲した形状に形成されていることを特徴とするモジュールに存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のモジュールによれば、湾曲した構造の桟が基板の裏面に配置されており、受光面が幅方向において凸状に湾曲した形状に形成されているため、幅方向および長手方向において十分な強度を発揮でき、そして、外周部のフレームや長手方向のリブを必要としないため、補強構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るモジュールの受光面側の形状を示す上面図である。
【図2】本発明に係るモジュールの裏面の構造を示す底面図である。
【図3】本発明に係るモジュールの湾曲構造を示す図であり、図1におけるC−C線に沿って破断した断面図である。
【図4】基板の裏面に使用される桟の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るモジュールの実施形態を図面に基づいて説明する。本発明のモジュールは、金属板基板型のモジュールであり、図1に示すように、金属板からなる長方形のシート状の基板1の表面に太陽電池セル2を配列し、かつ、図2に示すように、基板1の裏面に幅方向に亙って補強用の桟3を複数配置して構成される。なお、以下の説明においては、桟3が配置されていない状態のモジュールを「シート状モジュール」と言う。
【0012】
本発明において、金属板基板とは、公知の金属あるいは非鉄金属からなる概ね厚さ0.35〜1.6mmの薄板を指し、斯かる薄板としては、例えば、鉄、ステンレス等の鋼板および表面処理鋼板、アルミニウム等の合金板が挙げられる。そして、上記の基板は、ロール成形、ベンダー加工あるいは押出成型などの公知の加工・成型方法によって所用の形状に加工される。
【0013】
上記のセル2としては、公知の各種のセル、例えば、各種の結晶シリコン型やアモルファスシリコン型のシリコン系セル、InGaAs、GaAs系、CIS系、CuZnSnS(CZTS)、CdTe−CdS系などの各種の化合物系セル、光電変換層に有機化合物を用いた有機系セル等が挙げられる。通常、1つのセル2は、シート状の基板1の表面に第1電極、光電変換層、第2電極、透明保護層を積層して構成され、1枚のモジュールにおいては、例えば平面形状を略正方形に形成された上記のようなセル2が基板1表面に10〜100個程度配列され、1つのセル2の第1電極とこれに隣接するセル2の第2電極とが順次に直列に接続される。
【0014】
モジュールは、基板1に樹脂を積層することによりセル2を絶縁、封止して構成される。モジュールにおける積層構造は、例えば、基板1の表面に絶縁材/封止材/セル2/封止材/保護フィルムを順次に積層して構成される。基板1としては、熱可塑性オレフィン類で被覆された鋼板(TPO鋼板)が好ましく、その場合は、鋼板を被覆している熱可塑性オレフィン類が絶縁材として機能するため、別途絶縁材を積層する必要がない。通常、斯かる被覆鋼板の被覆層を含む厚さは1.0〜1.4mm、鋼板のみの厚さは0.5〜0.7mmである。
【0015】
基板1の表面には、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、各種プラスティックフィルム等の熱可塑性オレフィン類からなる絶縁材が配置される。封止材としては、例えば、エチレン酢酸ビニール共重合(EVA)、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体、アイオノマー等が使用される。保護フィルムとしては、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体などの熱可塑性フッ素樹脂(ETFE)が使用される。
【0016】
本発明のモジュールとしては、特に、大面積で且つ撓みによって損傷を受け易いセル2、例えば薄膜系太陽電池セルを備えたモジュールが好ましい。本発明のモジュールは、屋根や屋上に設置するため、平面形状を長方形の平板状に形成される。斯かるモジュールの外形寸法は、例えば、幅が400〜1200mm程度、長さが2000〜4500mm程度、後述する桟3を含む厚さが25〜35mm程度であり、本発明は、殊に、幅が900mm以上、長さが3000mm以上のものに好適である。
【0017】
本発明のモジュールは、図3に示すように、基板1の裏面に配置される補強用の各桟3がその長さ方向において湾曲した構造を備えていることにより、受光面Sがその幅方向において凸状に湾曲した形状に形成されている。補強用の桟3としては、樹脂成型体、加工された木材などを使用することもできるが、軽量性、耐候性、耐久性、強度および製造コストの観点から、好ましくは、鉄、ステンレス等の鋼板および表面処理鋼板、アルミニウム等の合金板を加工してなる金属製の棒状の成型体が使用される。
【0018】
各桟3は、その長手方向に直交する断面の形状をZ状、コ字状、四角形などに形成でるが、図4に示すように、桟3の断面形状は、逆ハット状が好ましい。斯かる好ましい態様の桟3は、長手方向に直交する断面が横転するコ字状に形成された桟本体31と、当該桟本体の開口側の上端縁に各張出された鍔32とからなる樋状の成型体であり、鍔32の上面を基板1の裏面に宛てがうようになされている。桟3の上記の断面において、桟本体31の一辺の長さは25〜30mm程度であり、鍔32の張出長さは6〜12mm程度である。桟3の長さは、モジュールの幅に応じて設定される。
【0019】
また、各桟3は、基板1(セル2を含むシート状の素子)を幅方向に亙って僅かに湾曲させるため、その長さ方向において湾曲した構造を備えている。すなわち、桟3は、上記の鍔32の上面(開口側の面)が外周面となるように、例えば1000〜15000mmの曲率半径で湾曲している。上記の様な金属製の桟3は、例えば、厚さが0.6〜1.2mmの金属板をロール成形することにより作製できる。
【0020】
図3に示すように、基板1の長手方向に沿った各端部は、裏面側に折り曲げられた曲げ構造を備えており、上記の各桟3は、その両端を曲げ構造部分に差し込まれた状態で基板1の裏面に架け渡される。基板1の端部の曲げ構造は、コ字状に曲げ加工することによりに構成される。そして、基板1と桟3との固定方法としては、ビス止め、接着剤や両面テープによる貼着、リベット固定、嵌合固定などが挙げられるが、ビス止めが好ましい。図2に示すように、内側に折り曲げられた基板1の端縁は、架け渡された桟3の端部に対し、外側から螺着した1本のビス4で固定される。換言すれば、基板1と桟3とは、モジュールの裏面側の長手方向に沿った縁部においてビス4で結合されている。なお、桟3の配列ピッチは、基板1の長手方法の両端側の部分で50〜300mm程度、両端側を除く部分で250〜600mm程度に設定される。
【0021】
本発明のモジュールは、上記のように複数の桟3が基板1の背面に架け渡されることにより、受光面S(モジュールの表側の面)が幅方向に亙って凸状に湾曲している。換言すれば、受光面Sがアーチ状に僅かに曲面化されている。そして、その湾曲量は、図3に示すように、受光面Sの幅に沿って接する仮想接線Lからの各端部の下り代hが受光面側の幅wの1〜5%に設定される。
【0022】
受光面Sの湾曲量を上記のように規定する理由は次の通りである。すなわち、仮想接線Lからの下り代hが受光面側の幅wの1%以上の場合は、モジュールの長さ方向における剛性が増し、施工の際に座屈し難く、しかも、屋根や屋上に設置後に強風や降雪によって撓みづらく、セル2の損傷を防止できる。一方、上記の下り代hが受光面側の幅wの5%以下の場合は、屋根や屋上に設置した際の受光量が維持され、また、受光面Sの曲面が顕になって意匠性が損なわれることもない。なお、受光面Sの湾曲量は、桟3の曲率半径に略相当するものである。
【0023】
また、図2に示すように、モジュールの背面には、各隣接するモジュールを電気的に接続するためのジャンクションボックス(端子箱)5が取り付けられる。ジャンクションボックス5は、通常、長手方向の一方の端部に配置される。本発明のモジュールは、上記のように受光面Sが湾曲しており、屋根や屋上などの設置面との間に隙間を形成できるため、湾曲ジャンクションボックス5に接続される配線を簡単に引き回すことができる。
【0024】
本発明のモジュールの製造においては、長方形のシート状モジュールの長手方向に沿った各端部にベンダーでコ字状の曲げ加工を施し、前述の曲げ構造を形成する。一方、例えば幅100mmの帯状の金属板をロール成形により逆ハット状断面の樋状に成形し、これを所定長さに切断して桟3を作製する。そして、基板1(シート状モジュール)を裏返した状態において、基板1の裏面に当該基板の幅方向に亙り、前述のピッチで複数本の桟3を架け渡し、かつ、これら桟3の先端部を基板1端部の曲げ構造部分に挿入し、各桟3の端部に基板1の端部をビス4で固定してゆく。これにより、受光面Sが湾曲するモジュールを得ることができる。
【0025】
本発明のモジュールにおいては、湾曲した構造の補強用の桟3を基板1の裏面に短辺方向に亙って配置し、幅方向において受光面S全体を凸状に湾曲させることにより、長手方向における撓みを抑制し且つ座屈を防止する。すなわち、本発明のモジュールによれば、湾曲した構造の桟3が基板1の裏面に配置されており、受光面Sが幅方向において湾曲した形状に形成されているため、幅方向および長手方向において十分な強度を発揮でき、取り扱い性にも極めて優れている。そして、従来のモジュールで使用されていた外周部のフレームや長手方向のリブを必要とせず、幅方向に架け渡した桟3だけでパネルとしての剛性、強度を確保できるため、補強構造を簡素化でき、製造コストを低減できる。
【0026】
また、受光面が平坦な従来のモジュールでは、自重や積雪荷重あるいは基板の熱膨張により、中央部に凹み現象が発生し易く、発生した凹部に雨水や塵埃が溜まり、発電効率の低下を惹起することがあったのに対し、本発明のモジュールは、受光面Sが湾曲しており、撓むことがないため、雨水や塵埃が溜まることがない。
【0027】
更に、平板状の従来のモジュールでは、風圧を受けた際、補強用のフレームや桟(リブ)と基板(シート状の素子)との撓み量の違いによる基板のバタツキ防止するために、基板の裏面と桟(リブ)とを粘着テープ等によって固定していたのに対し、本発明のモジュールは、基板1(シート状の素子)をその曲げ応力を利用して桟3に押し付けているため、粘着テープ等を使用する必要がなく、一層少ない材料で且つ簡単に製造できる。
【符号の説明】
【0028】
1 :基板
2 :太陽電池セル
3 :桟
31:桟本体
32:鍔
4 :ビス
5 :ジャンクションボックス
L :仮想接線
S :受光面
h :下り代
w :受光面側の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板からなる長方形のシート状の基板の表面に太陽電池セルを配置し且つ基板の裏面に幅方向に亙って補強用の桟を複数配置して構成された金属板基板型の太陽電池モジュールであって、前記各桟がその長さ方向において湾曲した構造を備えていることにより、受光面がその幅方向において凸状に湾曲した形状に形成されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
基板の長手方向に沿った各端部は、裏面側にコ字状に折り曲げられた曲げ構造を備え、各桟は、その両端を曲げ構造部分に差し込まれた状態で基板の裏面に架け渡されている請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
各桟は、その長手方向に直交する断面が逆ハット状に形成された金属製棒状体で構成されている請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
受光面の湾曲量は、受光面側の幅に沿って接する仮想接線からの各端部の下り代が受光面側の幅の1〜5%に設定されている請求項1〜3の何れかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
太陽電池セルが、薄膜系太陽電池セルである請求項1〜4の何れかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
モジュールの背面にジャンクションボックスが取り付けられている請求項1〜5の何れかに記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−62463(P2013−62463A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201517(P2011−201517)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000165505)元旦ビューティ工業株式会社 (159)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】