説明

太陽電池保護シート及びその製造方法、太陽電池用バックシート並びに太陽電池モジュール

【課題】湿熱環境下における接着耐久性に優れる太陽電池保護シートの提供。
【解決手段】表面処理を施されたポリマー基材と、前記ポリマー基材上に設けられた厚みが0.8μm〜12μmであり、かつ、複合ポリマーを含む少なくとも一層のポリマー層を有し、前記複合ポリマーが分子中に下記式で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とを含む太陽電池保護シート(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、nは1以上の整数を表す。RおよびRは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池保護シート及びその製造方法、太陽電池素子の太陽光入射側の反対側に設けられる太陽電池用バックシート、並びに太陽電池モジュールに関する。
【0002】
太陽電池モジュールは、通常、太陽光が入射する側のフロント側基材(いわゆるオモテ面ガラスや透明性ポリマーなど)と、太陽光が入射する側とは反対側(裏面側)に配置される、いわゆるバックシートとの間に、太陽電池セルが挟まれた構造を有しており、フロント側基材と太陽電池セルとの間、及び太陽電池セルとバックシートとの間は、それぞれEVA(エチレン−ビニルアセテート)樹脂などの封止材で封止されている。
【0003】
フロント側基材やバックシートは、それぞれ太陽電池モジュールの表面または裏面からの水分の浸入を防止する太陽電池保護シートとしての働きを有するものである。これらの太陽電池保護シートとして、従来はガラスやフッ素樹脂等が用いられていたが、近年では、コストの観点からポリマーシート、例えばポリエステル樹脂シートなどが用いられるようになってきている。太陽電池保護シートは、直接水分や熱、光に曝されるため、太陽電池保護シートと封止材との間の接着性は、高温高湿下での長期耐久性が求められる。しかしながら、従来の太陽電池保護シートは、太陽電池保護シートと封止材との間の接着性について、高温高湿下での長期耐久性の観点からは不満が残るものであった。そのため、太陽電池の湿熱環境下での耐久性の改善が強く求められているのが現状である。
【0004】
一方、近年では、太陽電池保護シートの中でも特にバックシートは、単なるポリエステル樹脂シートなど単層のポリマーシートとして太陽電池モジュール裏面からの水分の侵入を防止するだけではなく、以下に示すような種々の機能を付与することが求められてきている。
前記機能として、例えば、バックシートに酸化チタン等の白色無機微粒子を添加し、光反射性能を持たせたものが要求される場合がある。これは、モジュールのオモテ面から入射した太陽光のうち、セルを素通りした光を乱反射して、セルに戻すことで発電効率を上げるためである。この点について、白色無機微粒子が添加された白色ポリエチレンテレフタレートフィルムの例が開示されており(例えば、特許文献1、3参照)、また白色顔料を含有する白色インキ層を有する裏面保護シートの例も開示されている(例えば、特許文献3参照)。更に、バックシートとEVA封止材との間の強固な接着を得るために、バックシートの最表層に易接着層などのポリマー層を設ける場合がある。この点について、白色のポリエチレンテレフタレートフィルムの上に熱接着層を設ける技術が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
以上のような機能を付与するためには、バックシートは、基材ポリマー上に他の機能を有する各種機能層が積層された構造になる。そのため、近年では太陽電池保護シート内部においても、基材(支持体)と各種機能層の間の層間の接着力について、湿熱環境下での耐久性の改善が求められている。
ここで、積層の手段としては、色々な機能を持つシートを基材ポリマーに貼合する方法があり、例えば、複数の樹脂フィルムの貼合により太陽電池用バックシートを形成する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、複数の樹脂フィルムの貼合では、湿熱環境下で長期使用した場合の層間の接着性に劣り、耐久性の点で不充分であった。また、太陽電池用バックシートを形成する方法として、基材ポリマーに各種機能層を塗布する方法も開示されている(例えば、特許文献3および4参照)。また、塗布層を形成する前に基材ポリマーに表面処理を行う方法なども知られている(特許文献4および5参照)。特許文献4および5では、塗布液中にフッ素シリコーン樹脂や変性シリコーン化合物)などのポリシロキサン樹脂を添加することで、易洗浄性、易排水性、防曇性、結露防止性、帯電防止性、生態適合性などを改善できることも開示されているが、湿熱耐久性については何ら検討がなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−060218号公報
【特許文献2】特開2002−100788号公報
【特許文献3】特開2006−210557号公報
【特許文献4】特開2008−189828号公報
【特許文献5】特開2000−301054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが特許文献4および5に記載のシートの湿熱耐久性を検討したところ、依然として湿熱環境下で長期にわたり、太陽電池保護シート内部の各層間の接着性や、太陽電池保護シートと封止材との間の接着性を保つことができず、さらなる改善が求められることがわかった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、湿熱環境下における接着耐久性に優れる太陽電池保護シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、ポリマー基材に表面処理を施し、かつ複合ポリマーとして、ポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン構造単位を含み、特許文献5とは非ポリシロキサン構造単位を有する点で異なる複合ポリマーを含む塗布液を用いることが、湿熱環境下での接着性改善に寄与することを見出した。さらに、ポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有する塗布液を、その乾燥後の塗布厚みを特許文献4に記載されている厚みと比べて大幅に増やしたところ、顕著に湿熱環境下での太陽電池保護シート内部の各層間の接着性や、太陽電池保護シートと封止材との間の接着性が改善されることを見出すに至った。すなわち、以下の構成により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
[1] 表面処理を施されたポリマー基材と、前記ポリマー基材上に設けられた厚みが0.8μm〜12μmであり、かつ、複合ポリマーを含む少なくとも一層のポリマー層を有し、前記複合ポリマーが分子中に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とを含むことを特徴とする太陽電池保護シート。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、nは1以上の整数を表す。RおよびRは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
[2] 前記ポリマー基材に施される前記表面処理が、火炎処理、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理および紫外線処理のうちの少なくとも1種であることを特徴とする[1]に記載の太陽電池保護シート。
[3] ポリマー基材に施される表面処理方法が、大気圧プラズマ処理であることを特徴とする[1]に記載の太陽電池保護シート。
[4] 前記複合ポリマー分子全体に対して、前記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位が15〜85質量%であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
[5] 前記RまたはRを表す前記1価の有機基が、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基およびアミド基から選択される少なくとも一種であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
[6] 前記非ポリシロキサン系構造単位が、ビニル系構造単位、ポリエステル系構造単位およびポリウレタン系構造単位の少なくとも一種であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
[7] 前記複合ポリマーを含むポリマー層が架橋構造を有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
[8] 前記複合ポリマーを含むポリマー層の少なくとも一層が、前記ポリマー基材の表面処理を施された表面に接触させて設けられていることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
[9] 前記複合ポリマーを含むポリマー層の少なくとも一層が、前記ポリマー基材の表面に接触しない位置に配置された最外層であることを特徴とする[8]に記載の太陽電池保護シート。
[10] 前記ポリマー基材がポリエステル系樹脂を含み、前記ポリエステル樹脂のカルボキシル基の含量が2〜35当量/tであることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項に記載の太陽電池保護シート。
[11] 前記複合ポリマーを含むポリマー層の少なくとも一層が、白色顔料を含む光反射性の反射層であることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
[12] [11]に記載の太陽電池保護シートを含むことを特徴とする太陽電池用バックシート。
[13] ポリマー基材の少なくとも一方の表面を表面処理する工程と、表面処理された側のポリマー基材の表面上に、複合ポリマーを含有する塗布液を乾燥後の厚みが0.8μm〜12μmとなるように塗布する工程を含み、前記複合ポリマーが分子中に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とを含むことを特徴とする太陽電池保護シートの製造方法。
一般式(1)
【化2】

(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、nは1以上の整数を表す。RおよびRは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
[14] 前記複合ポリマーを含有する塗布液が、更に溶媒を含有し、該溶媒の50質量%以上が水であることを特徴とする[13]に記載の太陽電池保護シートの製造方法。
[15] 前記複合ポリマーを含有する塗布液が、架橋剤を含むことを特徴とする[13]または[14]に記載の太陽電池保護シートの製造方法。
[16] [13]〜[15]のいずれか一項に記載の太陽電池保護シートの製造方法で製造されたことを特徴とする太陽電池保護シート。
[17] [1]〜[11]および[16]のいずれか一項に記載の太陽電池保護シートを少なくとも1枚含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
[18] 太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板と、前記電池側基板の前記フロント基板とは反対側に、前記封止材と接するように配置された太陽電池バックシートを含み、前記太陽電池バックシートとして[1]〜[11]および[16]のいずれか一項に記載の太陽電池保護シートまたは[12]に記載の太陽電池バックシートを備えることを特徴とする[17]に記載の太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湿熱環境下における接着耐久性に優れる太陽電池保護シートを提供することができる。
また、本発明の太陽電池保護シートは、太陽電池用バックシートに好ましく用いることができる。本発明によれば、本発明の太陽電池保護シートを安価に製造することができる。本発明によれば、湿熱環境下において長期にわたって安定した発電効率を有する安価な太陽電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の太陽電池保護シート及びその製造方法、太陽電池用バックシート、並びに太陽電池モジュールについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[太陽電池保護シート]
本発明の太陽電池保護シートは、表面処理を施されたポリマー基材と、前記ポリマー基材上に設けられた厚みが0.8μm〜12μmであり、かつ、複合ポリマーを含む少なくとも一層のポリマー層を有し、前記複合ポリマーが分子中に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とを含むことを特徴とする。
一般式(1)
【化3】

(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、nは1以上の整数を表す。RおよびRは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0013】
本発明においては、(i)ポリマー基材について、表面処理をすること、(ii)複合ポリマーを含む少なくとも一層のポリマー層について、厚みを0.8〜12μm以下に制御すること、及び(iii)複合ポリマーとして、分子内に前記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位を含む特定の複合ポリマーを用いて構成することで、ポリマー基材に対する接着力が改善され、熱や水分による劣化が抑えられる。したがって、熱や水分に長時間曝される環境条件下において、長期に亘ってポリマー基材と複合ポリマーを含むポリマー層の接着強度を高く保つことができ、長期耐久性を確保することができる。また、太陽電池モジュールのEVAなどの封止材と、本発明の太陽電池保護シートを貼り合わせた場合には、熱や水分に長時間曝される環境条件下において、長期に亘って太陽電池保護シートと封止材との間の接着強度を高く保つこともできる。これにより、太陽電池モジュールを構成したときには、良好な発電性能が得られると共に、長期に亘って発電効率を安定に保つことができる。
以下において、本発明の太陽電池保護シートの詳細と好ましい態様について説明する。
【0014】
<ポリマー基材>
(ポリマー種)
ポリマー基材に用いられるポリマー種としては、ポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン、又はポリフッ化ビニルなどのフッ素系ポリマー等が挙げられる。これらの中では、コストや機械強度などの点から、ポリエステルが好ましい。
【0015】
前記ポリマー基材(支持体)として用いられるポリエステルとしては、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを挙げることができる。このうち、力学的物性やコストのバランスの点で、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
【0016】
前記ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、前記ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。
【0017】
本発明におけるポリエステルを重合する際には、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、Ti系の化合物を触媒として用いることが好ましく、中でも特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物を1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の割合が前記範囲内であると、末端カルボキシル基を下記範囲に調整することが可能であり、ポリマー基材の耐加水分解性を低く保つことができる。
【0018】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624号、特許第3335683号、特許第3717380号、特許第3897756号、特許第3962226号、特許第3979866号、特許第3996871号、特許第4000867号、特許第4053837号、特許第4127119号、特許第4134710号、特許第4159154号、特許第4269704号、特許第4313538号各公報等に記載の方法を適用できる。
【0019】
本発明では、前記ポリマー基材がポリエステル系樹脂を含み、前記ポリエステル中のカルボキシル基含量は55当量/t以下が好ましく、より好ましくは35当量/t以下である。カルボキシル基含量が55当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。カルボキシル基含量の下限は、ポリエステルに形成される層(例えば着色層)との間の接着性を保持する点で、2当量/tが望ましい。すなわち、本発明では、前記ポリエステル樹脂のカルボキシル基の含量が2〜35当量/tであることが特に好ましい。
ポリエステル中のカルボキシル基含量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)により調整することが可能である。
【0020】
本発明におけるポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含量を達成することができる。固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固相重合には、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号各公報等に記載の方法を適用することができる。
【0021】
固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0022】
前記ポリエステル基材は、例えば、上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出を行なった後、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸した2軸延伸フィルムであることが好ましい。
さらに、必要に応じて180〜230℃で1〜60秒間の熱処理を行ったものでもよい。
【0023】
前記ポリマー基材(特にポリエステル基材)の厚みは、25〜300μm程度が好ましい。厚みは、25μm以上であると力学強度が良好であり、300μm以下であるとコスト的に有利である。
特にポリエステル基材は、厚みが増すに伴って耐加水分解性が悪化し、長期使用に耐えない傾向にあり、本発明においては、厚みが120μm〜300μmであって、かつポリエステル中のカルボキシル基含量が2〜35当量/tである場合に、より湿熱耐久性の向上効果が奏される。
【0024】
(表面処理)
前記ポリマー基材に施す表面処理の方法は、特に制限はない。本発明では、火炎処理、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、紫外線処理等が、ポリマー基材に施す表面処理方法の好ましい例として挙げられる。本発明では、これらの中では、コストや機械強度などの点から、大気圧プラズマ処理がより好ましい。
このように表面処理を施すことにより、支持体であるポリマー基材と後述する複合ポリマーを含むポリマー層の間の接着性、すなわち熱や水分が与えられて劣化しやすい剥離耐性、形状安定性を従来に比べて飛躍的に向上させることができる。
【0025】
(1)火炎処理
火炎処理は、火炎の外炎部を支持体と接触させる処理方法である。通常はバーナーで炎を形成してこの火炎を支持体表面に当てることで処理を行う。
本発明に使用される火炎処理用のバーナーは、ポリマー基材表面に火炎を均一に当てることができるものであれば制限はない。丸型のバーナーを複数配置し、幅手方向に均一性を保つものでもよいし、ポリマー基材の幅と同等あるいはそれ以上の幅の横長スリット箱型バーナーでもよい。またウエブ状のポリマー基材を処理する場合には、この丸型または横長スリット箱型バーナーをウエブの搬送方向に複数個配置してもよい。
前記火炎処理はバックロールの上で行ってもよいし、二本のロール間でロールなしの状態で行ってもよいが、本発明ではバックロール上で行うことが好ましい。
バックロール上で処理を行う場合、バックロールが冷却バックロールであることが好ましい。冷却バックロールの温度は10℃〜100℃、より好ましくは25℃〜60℃の間にコントロールするのが好ましい。冷却ロールの温度が10℃未満であると結露する場合があり、100℃を超えると支持体が変形を起こす場合がある。
前記火炎処理に用いられるバックロールの材質は耐熱性材料であれば、いずれも使用出来るが、本発明では金属やセラミックスが都合がよい。金属としては、鉄、鉄のクロームメッキ物、SUS304、316、420等が使用でき、これらの他にアルミナ、ジルコニア、シリカ等のセラミックスを挙げることができる。
前記火炎処理に用いる燃焼ガスとしてはパラフィン系ガス(例えば、都市ガス、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス)、オレフィン系ガス(エチレンガス、プロピレンガス)、またはアセチレンガスが有用であり、1種類だけ、あるいは2種類以上混合して用いてもよい。
本発明において、火炎処理に用いる燃焼ガスと混合する酸化性ガスとしては、酸素、空気が好ましく用いられるが、助燃剤や酸化剤を用いてもよい。
用いる火炎については特に制限はないが、通常の火炎の他、特許第3893394号、特開2007−39508号に記載されているようなシラン化合物を燃料に添加してケイ酸炎を用いる方法も好ましい。
火炎処理の燃焼ガスと酸化性ガスとの混合比率は、ガスの種類によって異なるが例えばプロパンガスと空気の場合には、プロパンガス/空気の好ましい混合比は、容量比で1/15〜1/22、好ましくは1/16〜1/19の範囲とすることがよく、天然ガスと空気の場合には、1/6〜1/10、より好ましくは1/7〜1/9とするのが好ましい。
本発明におけるポリマー基材は片面だけ火炎処理を行ってもよいし、両面行ってもよい。
本発明において、ポリマー基材に火炎を当てる時間、つまり有効な火炎部をウエブが通過する時間は0.001秒以上2秒以内が好ましく、0.01秒以上1秒以内がより好ましい。2秒以下ではウエブの表面が犯され難く、接着能力を逸しにくい。また0.001秒以上であれば酸化反応が起こり易く、接着性改善に寄与できる。
【0026】
(2)低圧プラズマ処理
低圧プラズマは、低圧雰囲気の気体(プラズマガス)中での放電によりプラズマを発生させ、基材表面を処理する方法である。
前記プラズマガスとして、酸素ガス、窒素ガス、水蒸気ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができ、特に、酸素ガス、または、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスが好ましい。具体的には、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用することが望ましい。酸素ガスとアルゴンガスを用いる場合、両者の比率としては、分圧比で酸素ガス:アルゴンガス=100:0〜30:70位、より好ましくは、90:10〜70:30位が好ましい。
プラズマガスの圧力としては0.005〜10Torr、より好ましくは0.008〜3Torr程度の範囲が好ましい。プラズマガスの圧力が0.005Torr以上であれば接着性改良効果が充分であり、逆に10Torr以下であれば電流が増大したり放電が不安定になったりし難い。
さらに、そのプラズマ出力としては、100〜2500W程度、より好ましくは、500〜1500W程度が好ましい。
処理時間は0.05〜100秒、より好ましくは0.5〜30秒程度が好ましい。処理時間が0.05以上であれば接着性改良効果が充分となり、逆に100秒以下であれば支持体の変形や着色等の問題が生じ難くなる。
低圧プラズマ処理において、プラズマを発生させる方法としては特に制限はないが、本発明では例えば、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電等の装置を利用して行うことができる。特に、3.56MHzの高周波を用いた放電装置を利用して行う方法は好ましい。
【0027】
(3)大気圧プラズマ処理
大気圧プラズマは、高周波を用いて大気圧下で安定なプラズマ放電を起こさせて方法である。
大気圧プラズマでは、キャリアガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等を用いてこれに酸素ガス等を一部混合したものを用いることが好ましく、空気にアルゴンガスを混合したものがより好ましい。
大気圧プラズマ処理は、大気圧またはその近傍下の500〜800Torr程度の圧力下で行うことが好ましく、600〜750Torrで行うことがより好ましい。
また、放電の電源周波数は1〜100kHz、より好ましくは1〜10kHz程度が好ましい。電源周波数が1kHz以上であれば安定した放電が得られ、好ましい。逆に100kHz以下であれば、高価な装置を必要とせず、製造方法上、コストの観点から好ましい。
前記大気圧プラズマ処理の放電強度は特に制限はないが、本発明では50W・min/m〜500W・min/m程度が好ましい。大気圧プラズマ処理の放電強度が500W・min/m以下であればアーク放電が起こり難くなり、安定した大気圧プラズマ処理を行うことができる。また、50W・min/m以上であれば充分な表面処理効果を得ることができる。
処理時間は0.05〜100秒、より好ましくは0.5〜30秒程度が好ましい。処理時間が0.05以上であれば接着性改良効果が充分となり、逆に100秒以下であれば支持体の変形や着色等の問題が生じ難くなる。
プラズマを発生させる方法としては低圧プラズマの場合と同様である。
【0028】
(4)紫外線処理
紫外線処理は紫外線を試料表面に照射して接着性、濡れ性、印刷適性等を改良する処理である。
紫外線発生源としては通常「低圧水銀灯 (低圧水銀UVランプ)」を用いる。低圧水銀灯の254nmと185nmの紫外線、特に後者により表面処理の効果が得られる。
紫外線処理は、通常大気圧下で1〜500秒間行う。処理時間が1秒以上であれば接着性改良効果が充分となり、逆に500秒以下であれば基材ポリマーの着色等の問題が生じにくくなる。
【0029】
<複合ポリマーを含むポリマー層>
前記複合ポリマーを含むポリマー層は、前記ポリマー基材の表面に接触させてあるいは他の層を介して配置される層であり、少なくとも、特定の複合ポリマーを用いて構成されている。本発明における複合ポリマーポリマー層は、表面処理されたポリマー基材との接着が改善されるので、ポリマー基材に直に形成されることが好ましい。すなわち、前記複合ポリマーを含むポリマー層の少なくとも一層が、前記ポリマー基材の表面処理を施された表面に接触させて設けられていることが好ましい。
【0030】
前記複合ポリマーを含むポリマー層は、太陽電池保護シートを構成する任意の層に適用することができる。ポリマー層は、例えば、太陽電池バックシートの後述する反射層やバック層として適用することができる。熱や水分等の湿熱環境下での耐久性に優れる点から、バックシートの構成層のうち、太陽電池モジュールとした場合に、太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の前記封止剤と接触させて配置される面と逆側で直接外部環境に暴露される、いわゆるバック層として用いることが特に好ましい。
【0031】
この前記複合ポリマーを含むポリマー層は、場合に応じて更に他の成分を用いて構成することができ、適用する用途によりその構成成分が異なる。前記複合ポリマーを含むポリマー層は、太陽光の反射機能や外観意匠性の付与などを担う着色層や、太陽光が入射する側と反対側に配されるバック層などを構成することができる。
前記複合ポリマーを含むポリマー層を、例えば、太陽光をその入射側に反射させる反射層として構成する場合、白色顔料等の着色剤を更に用いて構成することができる。
【0032】
本発明の太陽電池保護シートにおいては、複合ポリマーを含むポリマー層は、該複合ポリマーを含むポリマー層が上記のように複合ポリマーを含み、複合ポリマー自身が湿熱環境下での劣化耐性(接着耐久性)に優れる。
そのため、本発明では前記複合ポリマーを含むポリマー層の少なくとも一層が、ポリマー基材から最も離れた位置に配された最外層として設けられていることも好ましく、前記ポリマー基材の表面に接触しない位置に配置された最外層であることがより好ましい。具体的には、例えば、太陽電池素子を備えた電池側基板と対向する側(オモテ側)とは反対側(裏側)に配置されるバック層、電池側基板の太陽電池素子を封止する封止剤と接触させて配される光反射性の反射層などである。
【0033】
(複合ポリマー)
前記複合ポリマーを含むポリマー層は、分子中に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とを含む前記複合ポリマーを少なくとも一種を含有する。
一般式(1)
【化4】

一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、nは1以上の整数を表す。RおよびRは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
この複合ポリマーを含有することにより、支持体である表面処理されたポリマー基材との間の湿熱環境下における長期の接着耐久性、すなわち熱や水分が与えられて劣化しやすい剥離耐性、形状安定性を従来に比べて飛躍的に向上させることができる。
【0035】
前記複合ポリマーは、下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とが共重合した共重合体であり、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。前記複合ポリマーはブロック共重合体であることが好ましい。前記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位、及び共重合される非ポリシロキサン系構造単位は、それぞれ一種単独でもよく、二種以上であってもよい。
【0036】
前記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位は、線状、分岐状あるいは環状の構造を有する、各種のポリシロキサンに由来するポリシロキサンセグメントである好ましい。
【0037】
前記複合ポリマー中の前記一般式(1)で表されるポリシロキサンセグメント構造単位について、好ましい態様を説明する。
前記RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表す。
【0038】
前記R及びRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0039】
前記1価の有機基は、Si原子と共有結合可能な1価の有機基を表すことが好ましい。
およびRで表される前記「Si原子と共有結合可能な1価の有機基」は、無置換でも置換基を有してもよく、例えば、アルキル基(例:メチル基、エチル基など)、アリール基(例:フェニル基など)、アラルキル基(例:ベンジル基、フェニルエチルなど)、アルコキシ基(例:メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)、アリールオキシ基(例;フェノキシ基など)、メルカプト基、アミノ基(例:アミノ基、ジエチルアミノ基など)、アミド基等が挙げられる。
その中でも、ポリマー基材との接着性及び湿熱環境下での耐久性の点で、前記RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、無置換の又は置換された炭素数1〜4のアルキル基(特にメチル基、エチル基)、無置換の又は置換されたフェニル基、メルカプト基、無置換のアミノ基およびアミド基が好ましい。前記RおよびRはそれぞれ独立により好ましくは、湿熱環境下での耐久性の点で、無置換の又は置換されたアルコキシ基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4の無置換アルコキシ基である。
【0040】
前記nは1〜5000であることが好ましく、1〜1000であることが特に好ましい
【0041】
本発明では、前記複合ポリマー分子全体に対して、前記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位は15〜85質量%であり、その中でもポリマー基材との接着性及び湿熱環境下での耐久性の点で、20〜80質量%の範囲が好ましい。
ポリシロキサン構造単位の比率は、15質量%以上であればポリマー基材との接着性及び湿熱環境下に曝された際の接着耐久性が改善し、85質量%以下であれば塗布液が安定になる。
【0042】
また、前記複合ポリマー中、前記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位部分と共重合する、非ポリシロキサン系構造単位部分としては、非ポリシロキサン系構造単位が繰り返し単位として共重合している以外は特に制限されるものではなく、任意のポリマーに由来のポリマーセグメントのいずれであってもよい。ポリマーセグメントの前駆体である重合体(前駆ポリマー)としては、例えば、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体等の各種の重合体等が好ましく挙げられ、すなわち、本発明では前記非ポリシロキサン系構造単位が、ビニル系構造単位、ポリエステル系構造単位およびポリウレタン系構造単位の少なくとも一種であることが好ましい。すなわち、本発明では複合ポリマーの非ポリシロキサン系構造単位が、ビニル系構造単位、ポリエステル系構造単位およびポリウレタン系構造単位の少なくとも一種であることが好ましい。調製が容易なこと及び耐加水分解性に優れる点から、ビニル系重合体及びポリウレタン系重合体がより好ましい。
【0043】
前記ビニル系重合体の代表的な例としては、アクリル系重合体、カルボン酸ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体、フルオロオレフィン系重合体等の各種の重合体が挙げられる。中でも、設計の自由度の観点から、アクリル系重合体が特に好ましい。
なお、非ポリシロキサン系構造単位を構成する重合体は、1種単独でもよいし、2種以上の併用であってもよい。
【0044】
また、非ポリシロキサン系構造単位をなす前駆ポリマーは、酸基及び中和された酸基の少なくとも1つ並びに/又は加水分解性シリル基を含有するものが好ましい。このような前駆ポリマーのうち、ビニル系重合体は、例えば、(a)酸基を含むビニル系単量体と加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系単量体とを、これらと共重合可能な単量体と共重合させる方法、(2)予め調製した水酸基並びに加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系重合体にポリカルボン酸無水物を反応させる方法、(3)予め調製した酸無水基並びに加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系重合体を、活性水素を有する化合物(水、アルコール、アミン等)と反応させる方法などの各種方法を利用して調製することができる。
このような前駆ポリマーは、例えば、特開2009−52011号公報の段落番号0021〜0078に記載の方法を利用して製造、入手することができる。
【0045】
前記複合ポリマーを含むポリマー層は、バインダーとして、前記複合ポリマーを単独で用いてもよいし、他のポリマーと併用してもよい。他のポリマーを併用する場合、本発明における複合ポリマーの比率は、全バインダーの30質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。複合ポリマーの比率が30質量%以上であることにより、ポリマー基材との接着性及び湿熱環境下での耐久性により優れる。
【0046】
前記複合ポリマーの分子量は5000〜100,000であることが好ましく、10000〜50,000であることがより好ましい。
【0047】
(複合ポリマーの調製)
前記複合ポリマーの調製には、(i)前記非ポリシロキサン系構造単位の前駆ポリマーと、前記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位を有する特定のポリシロキサンとを反応させる方法、(ii)前記非ポリシロキサン系構造単位の前駆ポリマーの存在下に、R及び/又はRが加水分解性基である前記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位の構造を有するシラン化合物を加水分解縮合させる方法、等の方法を利用することができる。
前記(ii)の方法で用いられるシラン化合物としては、各種シラン化合物が挙げられるが、アルコキシシラン化合物が特に好ましい。
【0048】
前記(i)の方法により複合ポリマーを調製する場合、例えば、前駆ポリマーとポリシロキサンの混合物に、必要に応じて水と触媒を加え、20〜150℃程度の温度で30分〜30時間程度(好ましくは50〜130℃で1〜20時間)反応させることにより調製することができる。触媒としては、酸性化合物、塩基性化合物、金属含有化合物等の各種のシラノール縮合触媒を添加することができる。
また、前記(ii)の方法により複合ポリマーを調製する場合、例えば、前駆ポリマーとアルコキシシラン化合物の混合物に、水とシラノール縮合触媒を添加して、20〜150℃程度の温度で30分〜30時間程度(好ましくは50〜130℃で1〜20時間)加水分解縮合を行うことにより調製することができる。
【0049】
(バック層への利用)
前記複合ポリマーを含むポリマー層を太陽電池保護シートのバック層として構成する場合、前記複合ポリマーに加え、必要に応じて、さらに各種添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。電池側基板(=太陽光が入射する側の透明基板(ガラス基板等)/太陽電池素子)/太陽電池用バックシートの積層構造を有する太陽電池において、バック層は支持体であるポリマー基材の前記電池側基板と対向する側と反対側に配される裏面保護層であり、1層構造でもよいし、2層以上を積層した構造であってもよい。
【0050】
バック層を2層以上設ける場合は、両方のバック層が前記複合ポリマーを含むポリマー層であってもよく、一方のみのバック層が前記複合ポリマーを含むポリマー層であってもよい。その中でも、少なくとも、ポリマー基材と接する第一のバック層が前記複合ポリマーを含むポリマー層であることが、湿熱環境下における接着耐久性を改善する観点から好ましい。
なお、この場合、第二のバック層は、一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン構造単位を含有する複合ポリマーを含んでいなくてもよいが、その場合は、ポリシロキサンの単独重合体を含んでいないことが、樹脂単独の空隙のない均一膜を形成してポリマー樹脂と白色顔料の間の空隙から水分を侵入させにくくし、湿熱環境下における接着耐久性を改善する観点から好ましい。
【0051】
バック層中に含むことができる他の成分については、着色層において後述する架橋剤、界面活性剤、フィラー等が挙げられる。また、必要に応じて、着色層に用いられる顔料を含んでもよい。これらの他の成分及び顔料の詳細、好ましい態様については、後述する。
【0052】
(着色層・反射層への利用)
前記複合ポリマーを含むポリマー層を着色層(好ましくは白色顔料を有する反射層)として構成する場合、前記複合ポリマーに加え、さらに顔料を含有する。着色層は、必要に応じて、さらに各種添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。
本発明の太陽電池保護シートは、前記複合ポリマーを含むポリマー層の少なくとも一層が、白色顔料を含む光反射性の反射層であることが好ましい。
【0053】
着色層の機能としては、第1に、入射光のうち太陽電池セルを通過して発電に使用されずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げること、第2に、太陽電池モジュールを太陽光が入射する側(オモテ面側)から見た場合の外観の装飾性を向上すること、等が挙げられる。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに着色層を設けることにより装飾性を向上させて見栄えを改善することができる。
【0054】
前記着色層は、顔料の少なくとも一種を含有することができる。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料を、適宜選択して含有することができる。
【0055】
顔料のうち、ポリマー層を、太陽電池に入射して太陽電池セルを通過した光を反射して太陽電池セルに戻す反射層として構成する場合、白色顔料が好ましい。前記白色顔料としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等が好ましい。
【0056】
顔料の着色層中における含有量は、2.5〜8.5g/mの範囲が好ましい。顔料の含有量が2.5g/m以上であると、必要な着色が得られ、反射率や装飾性を効果的に与えることができる。また、顔料の着色層中における含量が8.5g/m以下であると、着色層の面状を良好に維持しやすく、膜強度により優れる。中でも、顔料の含有量は、4.5〜8.0g/mの範囲がより好ましい。
【0057】
顔料の平均粒径としては、体積平均粒径で0.03〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15〜0.5μm程度である。平均粒径が前記範囲内であると、光の反射効率が高い。平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0058】
前記複合ポリマーを含むポリマー層を着色層として構成する場合、バインダー成分(前記複合ポリマーを含む)の含有量は、顔料に対して、15〜200質量%の範囲が好ましく、17〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、15質量%以上であると、着色層の強度が充分に得られ、また200質量%以下であると、反射率や装飾性を良好に保つことができる。
【0059】
(前記複合ポリマーを含むポリマー層への添加剤)
前記複合ポリマーを含むポリマー層には、バック層への利用、着色層への利用を問わず、必要に応じて、架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
【0060】
本発明では、前記複合ポリマーを含むポリマー層が架橋構造を有することが好ましい。
前記架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。その中でも、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、本発明ではオキサゾリン系の架橋剤を用いることが好ましい。
【0061】
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく用いられる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS−500、同WS−700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
【0062】
架橋剤の添加量は、前記複合ポリマーを含むポリマー層中のバインダー当たり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。架橋剤の添加量が5質量%以上であると、着色層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保つことができる。
【0063】
前記界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜5mg/mである。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、15mg/m以下であると、接着を良好に行うことができる。
【0064】
前記複合ポリマーを含むポリマー層には、更に、フィラーを添加してもよい。フィラーの添加量は、ポリマー層のバインダー当たり20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーの添加量が20質量%以下であると、ポリマー層の面状がより良好に保つことができる。
【0065】
(複合ポリマーを含むポリマー層の厚み)
本発明における前記複合ポリマーを含むポリマー層の厚みは0.8μm〜12μmであり、好ましくは1.0μm〜8μmであり、より好ましくは2〜4μmである。
膜厚が0.8μm以上であれば、湿熱環境下に暴露したとき前記複合ポリマーを含むポリマー層表面から内部に水分が浸透し難くなり、該ポリマー層とポリマー基材との界面に水分が到達し難くなることで、接着性が顕著に改善される。従来、例えば特開2008−189828号公報[0047]にはこのようなシリコーン化合物を含む塗布層は、乾燥後の塗布厚みが0.005〜0.5μmであることが好ましいとの記載があり、このようにポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有する塗布層を顕著に厚くすることは検討されていなかった。
また、12μm以下であれば、前記複合ポリマーを含むポリマー層自身が脆弱になり難く、湿熱環境下に暴露したときに前記複合ポリマーを含むポリマー層の破壊が生じにくくなることで接着性が改善される。
【0066】
<他の機能層>
本発明の太陽電池保護シートは、前記ポリマー基材と、前記複合ポリマーを含むポリマー層以外に他の機能層を有していてもよい。前記他の機能層としては、下塗り層、易接着層を挙げることができる。
【0067】
(1)下塗り層
本発明の太陽電池用バックシートには、前記ポリマー基材(支持体)と前記複合ポリマーを含むポリマー層との間に下塗り層を設けてもよい。下塗り層の厚みは、厚み2μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.05μm〜2μmであり、更に好ましくは0.1μm〜1.5μmである。厚みが2μm以下であると、面状を良好に保つことができる。また、厚みが0.05μm以上であることにより、必要な接着性を確保しやすい。
【0068】
下塗り層は、バインダーを含有することができる。バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。また、下塗り層には、バインダー以外に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。
【0069】
下塗り層を塗布するための方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
塗布液に用いる溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、塗布は、2軸延伸した後のポリマー基材に塗布してもよいし、1軸延伸後のポリマー基材に塗布した後に初めの延伸と異なる方向に延伸する方法でもよい。さらに、延伸前の基材に塗布した後に2方向に延伸してもよい。
【0070】
(2)易接着性層
本発明の太陽電池保護シートには、特に太陽電池用のバックシートとして用いる場合、前記複合ポリマーを含有するポリマー層(特に反射層)の上に、さらに易接着性層が設けられていてもよい。易接着性層は、バックシートを電池側基板(電池本体)の太陽電池素子(以下、発電素子ともいう)を封止する封止材と強固に接着するための層である。
【0071】
易接着性層は、バインダー、無機微粒子を用いて構成することができ、必要に応じて、さらに添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。易接着性層は、電池側基板の発電素子を封止するエチレン−ビニルアセテート(EVA;エチレン−酢酸ビニル共重合体)系封止材に対して、10N/cm以上(好ましくは20N/cm以上)の接着力を有するように構成されていることが好ましい。接着力が10N/cm以上であると、接着性を維持し得る湿熱耐性が得られやすい。
【0072】
なお、接着力は、易接着性層中のバインダー及び無機微粒子の量を調節する方法、バックシートの封止材と接着する面にコロナ処理を施す方法などにより調整が可能である。
【0073】
易接着性層は、バインダーの少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられ、中でも耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。
【0074】
好ましいバインダーの例としては、ポリオレフィンの具体例としてケミパールS−120、S−75N(ともに三井化学(株)製)、アクリル樹脂の具体例としてジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬(株)製)、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の具体例としてセラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)とH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0075】
バインダーの易接着性層中における含有量は、0.05〜5g/mの範囲とする。中でも、0.08〜3g/mの範囲が好ましい。バインダーの含有量は、0.05g/m未満であると所望とする接着力が得られず、5g/mを超えると良好な面状が得られない。
【0076】
易接着性層は、無機微粒子の少なくとも一種を含有することができる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
【0077】
無機微粒子の粒径は、体積平均粒径で10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径がこの範囲内であると、より良好な易接着性を得ることができる。粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0078】
無機微粒子の形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0079】
無機微粒子の含有量は、易接着性層中のバインダーに対して、5〜400質量%の範囲とする。無機微粒子の含有量は、5質量%未満であると、湿熱雰囲気に曝されたときに良好な接着性が保持できず、400質量%を超えると、易接着性層の面状が悪化する。
中でも、無機微粒子の含有量は、50〜300質量%の範囲が好ましい。
【0080】
易接着性層には、架橋剤の少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適な架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。中でも、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、オキサゾリン系架橋剤が特に好ましい。
【0081】
架橋剤の易接着性層中における含有量としては、易接着性層中のバインダーに対して、5〜50質量%が好ましく、中でもより好ましくは20〜40質量%である。架橋剤の含有量は、5質量%以上であると、良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や接着性を保持することができ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保つことができる。
【0082】
本発明における易接着性層には、必要に応じて、更に、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0083】
易接着性層の形成は、易接着性を有するポリマーシートを基材に貼合する方法や、塗布による方法が挙げられる。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の塗布法を利用することができる。塗布液の調製に用いる塗布溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0084】
易接着性層の厚みには、特に制限はないが、通常は0.05〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であると必要な易接着性を好適に得ることができ、8μm以下であると面状がより良好になる。
また、本発明の易接着性層は、着色層の効果を低減させないために、透明であることが好ましい。
【0085】
<太陽電池保護シートの物性>
本発明の太陽電池保護シートは、着色層に顔料として白色顔料を添加して反射層とする場合、着色層及び易接着性層が設けられている側の表面における550nmの光反射率は、75%以上であることが好ましい。なお、光反射率とは、易接着性層の表面から入射した光が反射層で反射して再び易接着性層から出射した光量の入射光量に対する比率である。ここでは、代表波長光として、波長550nmの光が用いられる。
光反射率が75%以上であると、セルを素通りして内部に入射した光を効果的にセルに戻すことができ、発電効率の向上効果が大きい。着色剤の含有量を2.5〜8.5g/mの範囲で制御することにより、光反射率を75%以上に調整することができる。
【0086】
本発明の太陽電池保護シートは、120℃、相対湿度100%の雰囲気下に48時間保存した後、かつ130℃、相対湿度100%の雰囲気下に240時間保存した後の封止材との接着力が、保存前の封止材との接着力に対し、75%以上であることが好ましい。本発明の太陽電池保護シートを太陽電池用バックシートとして用いる場合は、既述の通り、バインダーと該バインダーに対して好ましい量の無機微粒子とを含み、EVA系封止材に対して10N/cm以上の接着力を持つ易接着層を有することが、前記保存後にも保存前の75%以上の接着力が得られる観点から好ましい。これにより、作製された太陽電池モジュールは、バックシートの剥がれやそれに伴う発電性能の低下が抑制され、長期耐久性がより向上する。
【0087】
[太陽電池保護シートの製造方法]
本発明の太陽電池保護シートの製造方法は、ポリマー基材の少なくとも一方の表面を表面処理する工程と、表面処理された側のポリマー基材の表面上に、複合ポリマーを含有する塗布液を乾燥後の厚みが0.8μm〜12μmとなるように塗布する工程を含み、前記複合ポリマーが分子中に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とを含むことを特徴とする。
一般式(1)
【化5】

(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、nは1以上の整数を表す。RおよびRは互いに同一であっても異なっていてもよい。nが2以上の場合は複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
表面処理の方法については、上述した方法を用いることができる。
【0088】
前記複合ポリマーを含むポリマー層の形成は、ポリマーシートをポリマー基材に貼合する方法、ポリマー基材形成時にポリマー層を共押出しする方法、塗布による方法等により行なえる。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布による場合、塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーターなどの公知の塗布方法を利用することができる。
【0089】
前記複合ポリマーを含むポリマー層用塗布液は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよい。中でも、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0090】
前記複合ポリマーを含むポリマー層用塗布液としては、これに含まれる溶媒中の50質量%以上、好ましくは60質量%以上が水である水系塗布液であることが好ましい。水系塗布液は、環境負荷の点で好ましく、また水の割合が50質量%以上であることにより、環境負荷が特に小さくなる点で有利である。ポリマー層用塗布液中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の90質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0091】
本発明の太陽電池保護シートの製造方法は、前記複合ポリマーを含有する塗布液が、架橋剤を含むことが、得られる太陽電池保護シートの複合ポリマーを含有するポリマー層を架橋構造にして、より湿熱耐久性を改善する観点から好ましい。好ましい架橋剤としては、上述の着色層への利用にて挙げた各種架橋剤を用いることが好ましい。
【0092】
[太陽電池用バックシート]
本発明の太陽電池保護シートは、特に、太陽電池用バックシートとして用いることが好ましい。また、そのとき、前記複合ポリマーを含むポリマー層の少なくとも一層が、白色顔料を含む光反射性の反射層である本発明の太陽電池保護シートを用いることが、より好ましい。
【0093】
(バックシートの製造)
本発明の太陽電池用バックシートは、上記のように、ポリマー基材の上に前記複合ポリマーを含有するポリマー層と、必要に応じて易接着性層とを形成することができる方法であればいずれの方法により作製されてもよい。本発明においては、ポリマー基材上に前記複合ポリマーを含有するポリマー層用塗布液(及び必要に応じて易接着性層用塗布液等)を塗布する工程を設けて作製する方法により好適に作製することができる。
なお、前記複合ポリマーを含有するポリマー層用塗布液は、既述のように少なくとも複合ポリマーを含有する塗布液である。ポリマー基材、及び各塗布液を構成する複合ポリマー及び他の成分などの詳細については、既述の通りである。
【0094】
好適な塗布法も既述の通りであり、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。また、本発明における塗布工程では、ポリマー基材の表面に直にあるいは厚み2μm以下の下塗り層を介して、ポリマー層用塗布液を塗布し、ポリマー基材上にポリマー層(例えば着色層(好ましくは反射層)やバック層)を形成することができる。
【0095】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池保護シートを少なくとも1枚含むことを特徴とする。
本発明の太陽電池モジュールは、太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板と、前記電池側基板の前記フロント基板とは反対側に、前記封止材と接するように配置された太陽電池バックシートを含み、前記太陽電池バックシートとして本発明の太陽電池保護シートまたは本発明の太陽電池バックシートを備えることが好ましい。
具体的な構成としては、例えば、本発明の太陽電池モジュールは、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と既述の本発明の太陽電池用バックシートとの間に配置し、該基板とバックシートとの間で太陽電池素子をエチレン−ビニルアセテート系等の封止材で封止、接着して構成されていることが好ましい。
【0096】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0097】
前記透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。また、必要に応じて、本発明の太陽電池保護シートを前記透明性の基板として用いてもよい。
【0098】
前記太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
また、以下において、体積平均粒子径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕を用いて測定した。
【0100】
(複合ポリマーの合成)
[合成例−1]:複合ポリマー水分散物P−1の合成
[工程1]
撹拌装置、滴下ロートを備え、窒素ガス置換した反応容器に、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル(PNP)81部、イソプロピルアルコール(IPA)360部、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)110部、及びジメチルジメトキシシラン(DMDMS)71部を仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら80℃に昇温した。
[工程2]
次いで、この反応容器内に同温度で、メチルメタクリレート(MMA)260部、n−ブチルメタクリレート(BMA)200部、n−ブチルアクリレート(BA)110部、アクリル酸(AA)30部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)19部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート31.5部(TBPO)、及びPNP31.5部からなる混合物を4時間かけて滴下した。その後、同温度で2.5時間加熱撹拌を行い、重量平均分子量が29,300の、カルボキシル基と加水分解性シリル基を含むアクリル系ポリマーの溶液を得た。
[工程3]
次いで、これに脱イオン水54.8部を加え、16時間加熱撹拌を継続してアルコキシシランを加水分解し、さらにアクリル系ポリマーと縮合させることにより、不揮発分(NV)=56.3質量%、溶液酸価=22.3mgKOH/gの、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーに由来する構造単位とポリシロキサン構造単位とを有する複合ポリマーの溶液を得た。
[工程4]
次に、この溶液に同温度で、撹拌しながらトリエチルアミン42部を添加して10分間撹拌を行った。これにより、含有されるカルボキシル基の100%が中和された。
[工程5]
その後、同温度で脱イオン水1250部を1.5時間かけて滴下して転相乳化させた後、50℃に昇温して30分間撹拌を行った。次いで、内温40℃で3.5時間をかけて、有機溶剤とともに水の一部分を減圧下除去した。
【0101】
こうして固形分濃度が42質量%、平均粒子径が110nmの、ポリシロキサン構造単位とカルボキシル基含有アクリル系ポリマーに由来する構造単位とを含む複合ポリマーの水分散物P−1を得た。水分散物P−1は、ポリシロキサン構造単位が約25%であり、アクリル系ポリマー構造単位が約75%である。
【0102】
[合成例−2〜合成例−5]:複合ポリマー水分散物P−2〜P−5の合成
複合ポリマー水分散物P−1の合成において、用いるモノマー量を表1に示す量に変更したこと以外は、前記合成例−1と同様にして、複合ポリマー1分子中のポリシロキサン構造単位の割合が異なる複合ポリマー水分散物P−2〜P−5を合成した。
【0103】
[合成例−6]:複合ポリマー水分散物P−6の合成
複合ポリマー水分散物P−1の合成において、初めに添加するフェニルトリメトキシシラン(PTMS)110部とジメチルジメトキシシラン(DMDMS)71部とを、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)100部と3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)10部とジメチルジメトキシシラン(DMDMS)71部に変更したこと以外は、複合ポリマー水分散物P−5の合成と同様にして、複合ポリマー水分散物P−6を合成した。
なお、水分散物P−6は、ポリシロキサン構造単位が約25%であり、アクリル系ポリマー構造単位が約75%である。
【0104】
[合成例−7]:複合ポリマー水分散物P−7の合成
複合ポリマー水分散物P−6の合成において、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)10部を3−メルカプトプロピルトリメトキシラン(MPTMS)10部に変更したこと以外は、複合ポリマー水分散物P−6の合成と同様にして、複合ポリマー水分散物P−7を合成した。
なお、水分散物P−7は、ポリシロキサン構造単位が約25%であり、アクリル系ポリマー構造単位が約75%である。
【0105】
[合成例−8]:複合ポリマー水分散物P−8の合成
複合ポリマー水分散物P−6の合成において、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)10部を3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)10部に変更したこと以外は、複合ポリマー水分散物P−6の合成と同様にして、複合ポリマー水分散物P−8を合成した。
なお、水分散物P−8は、ポリシロキサン構造単位が約25%であり、アクリル系ポリマー構造単位が約75%である。
【0106】
[合成例−9]:複合ポリマー水分散物P−9の合成
複合ポリマー水分散物P−6の合成において、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)10部をp−スチリルトリメトキシシラン(STMS)10部に変更したこと以外は、複合ポリマー水分散物P−6の合成と同様にして、複合ポリマー水分散物P−9を合成した。
なお、水分散物P−9は、ポリシロキサン構造単位が約25%であり、アクリル系ポリマー構造単位が約75%である。
【0107】
複合ポリマー水分散物P−1〜P−9の合成時の原料仕込み量を下記表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
(ポリマー基材の作製)
[作製例−1]:PET−1の作製
[工程1] −エステル化−
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒化学工業(株)製)45kgのスラリーを、あらかじめビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行った。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
【0110】
[工程2] −ポリマーペレットの作製−
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してそれぞれ30ppm、15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
但し、前記チタンアルコキシド化合物には、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)を用いた。
【0111】
[工程3] −フィルム状ポリマー基材の作製−
工程2で作成したペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmの未延伸フィルムを作成した。その後、90℃で縦方向に3倍に延伸し、更に120℃で横方向に3.3倍に延伸した。こうして、厚み300μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートのフィルム状ポリマー基材(以下、「PET−1」と称する)を得た。
PET−1のカルボキシル基含量は、30等量/tであった。
【0112】
[作製例−2]:PET−2の作成
前記PET−1の作製において、工程2で得られたペレットに下記の固相重合工程を実施してから、工程3を実施したこと以外は、PET−1の作製と同様にして、ポリマー基材PET−2を作製した。
PET−2のカルボキシル基含量は、15等量/tであった。
<固相重合工程>
ポリマーペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行った。
【0113】
[作製例−3]:PET−3の作成
前記PET−1の作製において、工程3で2軸延伸フィルムを作製する際の溶融温度を280℃から295℃に上昇させたこと以外は、PET−1と同様にして、ポリマー基材PET−3を作製した。
PET−3のカルボキシル基含量は、41等量/tであった。
【0114】
[作製例−4]:PET−4の作成
前記PET−1の作製において、工程3で2軸延伸フィルムを作製する際の溶融温度を280℃から310℃に上昇させたこと以外は、PET−1と同様にして、ポリマー基材PET−4を作製した。
PET−4のカルボキシル基含量は、53等量/tであった。
【0115】
(白色顔料分散液の作製)
下記の(i)〜(iv)の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施した。
<白色顔料分散液の成分>
(i)二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm)・・・39.9質量%
(タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100質量%)
(ii)ポリビニルアルコール・・・8.0質量%
(PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10質量%)
(iii)界面活性剤(デモールEP、花王(株)製、固形分:25質量%)・・・0.5質量%
(iv)蒸留水 ・・・51.6質量%
【0116】
(実施例1)
<反射層>
−反射層用塗布液1の調製−
下記の(i)〜(v)の成分を混合し、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有する反射層用塗布液1を調製した。
<反射層用塗布液1の組成>
(i)上記白色顔料分散液・・・80.0部
(ii)複合ポリマー水分散物P−1(固形分濃度42質量%)・・・13.7部
(iii)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・・・3.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
(iv)オキサゾリン化合物(架橋剤)・・・2.0部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
(v)蒸留水・・・13.3部
【0117】
−反射層の形成−
前記PET−1について、事前に下記の条件で両面を大気圧プラズマ処理しておき、前記の反射層用塗布液1をこの表面処理したPET−1に塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み10μmの、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有する白色顔料層として、二酸化チタン量が6.5g/mの反射層(白色層)を形成した。
【0118】
[大気圧プラズマ処理条件]
PET−1を搬送させながら、空気にアルゴンガスを混合したプラズマガス(ガス圧力:750Torr)の雰囲気中において、5kHzの電源周波数を有した高周波放電装置を用いた放電によって発生した出力250W・min/mの放電強度のプラズマをPET−1の表面に15秒間照射した。
【0119】
<易接着性層>
−易接着性層塗布液の調製−
下記の(i)〜(v)の成分を混合し、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有しない易接着性層用塗布液を調製した。
<易接着性層用塗布液の組成>
(i)ポリオレフィン樹脂水分散液・・・5.2部
(バインダー:ケミパールS−75N、三井化学(株)製、固形分:24質量%)
(ii)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・・・7.8部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
(iii)オキサゾリン化合物(架橋剤)・・・0.8部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
(iv)シリカ微粒子水分散物・・・2.9部
(アエロジルOX−50、日本アエロジル(株)製、体積平均粒子径=0.15μm、固形分:10質量%)
(v)蒸留水・・・83.3部
【0120】
−易接着性層の形成−
得られた易接着性層用塗布液を、バインダー量が0.09g/mになるように前記の反射層の上に塗布し、180℃で1分間乾燥させて、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有しない易接着性層を形成した。
【0121】
<バック層>
−バック層塗布液1の調製−
下記の(i)〜(iv)の成分を混合し、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するバック層用塗布液を調製した。
<バック層用塗布液1の組成>
(i)複合ポリマー水分散物P−1(バインダー、固形分濃度42質量%)・・・45.9部
(ii)オキサゾリン化合物(架橋剤)・・・7.7部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
(iii)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・・・2.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
(iv)蒸留水・・・44.4部
【0122】
−バック層の形成−
得られたバック層塗布液1を、前記PET−1の反射層及び易接着層が形成されていない側に、バインダー量が3.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み3μmの、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するバック層を形成した。
【0123】
以上のようにして、実施例1のバックシートを作製した。
【0124】
(実施例2)
実施例1において、ポリマー基材PET−1の両面に施す表面処理条件を下記の条件の低圧プラズマ処理に変更した以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
[低圧プラズマ処理条件]
PET−1を搬送させながら、酸素ガスとアルゴンガスを80/20の比率で混合したプラズマガス(ガス圧力:1.5Torr)の雰囲気中において、3.56MHzの高周波放電装置を用いた放電によって発生した出力1000W・min/mのプラズマをPET−1の表面に15秒間照射した。
【0125】
(実施例3)
実施例1において、ポリマー基材PET−1の両面に施す表面処理条件を下記の条件の火炎処理に変更した以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
[火炎処理条件]
PET−1を搬送させながら、横長型バーナーを用い、プロパンガスと空気を1/17(体積比)に混合したガスを燃焼させた火炎をPET−1の表面に0.5秒間照射した。
【0126】
(実施例4)
実施例1において、ポリマー基材PET−1の両面に施す表面処理条件を下記の条件の紫外線処理に変更した以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
[紫外線処理条件]
PET−1を搬送させながら、低圧水銀灯を用いて発生した紫外線を、大気圧下でPET−1の表面に20秒間照射した。
【0127】
(実施例5)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前記の複合ポリマー水分散物P−2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0128】
(実施例6)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前記の複合ポリマー水分散物P−3に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0129】
(実施例7)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前記の複合ポリマー水分散物P−4に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0130】
(実施例8)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前記の複合ポリマー水分散物P−5に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0131】
(実施例9)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、下記の複合ポリマー水分散物P−10に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
P−10:セラネートWSA1070
(ポリシロキサン構造単位:約30%、アクリル系ポリマー構造単位:約70%、DIC(株)製)
【0132】
(実施例10)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、下記の複合ポリマー水分散物P−11に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
P−11:セラネートWSA1060
(ポリシロキサン構造単位=約75%、アクリル系ポリマー構造単位:約25%、DIC(株)製)
【0133】
(実施例11)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前記の複合ポリマー水分散物P−6に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0134】
(実施例12)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前記の複合ポリマー水分散物P−7に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0135】
(実施例13)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前記の複合ポリマー水分散物P−8に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0136】
(実施例14)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前述の複合ポリマー水分散物P−9に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0137】
(実施例15)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた架橋剤を下記のエポキシ化合物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
エポキシ化合物
(ディナコールEx521、ナガセケムテック(株)製、固形分:25質量%)
【0138】
(実施例16)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた架橋剤を下記のカルボジイミド化合物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
カルボジイミド化合物
(カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:25質量%)
【0139】
(実施例17)
実施例1において、バック層塗布液の調製に架橋剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0140】
(実施例18)
実施例1において、バック層塗布液1を下記の白色顔料入り塗布液2に変更した以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。なお、実施例18で得られるバックシートは、白色顔料入り塗布液2に含まれる白色顔料により、バック層は反射層と同等の機能を有する。
(白色顔料入り塗布液2の作製)
下記の(i)〜(v)の成分を混合し、白色顔料入りのバック層用塗布液を調製した。
<白色顔料入り塗布液2の成分>
(i)複合ポリマー水分散物P−1(バインダー、固形分濃度42質量%)・・・45.9部
(ii)オキサゾリン化合物(架橋剤)・・・7.7部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
(iii)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・・・2.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
(iv)白色顔料分散液・・・33.0部
(v)蒸留水・・・11.4部
【0141】
(実施例19)
実施例18において、ポリマー基材PET−1を前記PET−2に変更した以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
【0142】
(実施例20)
実施例18において、ポリマー基材PET−1を前記PET−3に変更した以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
【0143】
(実施例21)
実施例18において、ポリマー基材PET−1を前記PET−4に変更した以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
【0144】
(比較例1)
実施例1において、ポリマー基材PET−1の両面に施す表面処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0145】
(比較例2)
比較例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、下記の複合ポリマー水分散物P−101に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、バックシートを作製した。
P−101:ファインテックス Es650(DIC(株)製)
(ポリシロキサン構造単位を有しないポリエステルバインダー)
【0146】
(比較例3)
比較例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、下記の複合ポリマー水分散物P−102に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、バックシートを作製した。
P−102:オレスターUD350(三井化学(株)製)
(ポリシロキサン構造単位を有しないポリウレタンバインダー)
【0147】
(比較例4)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、下記の複合ポリマー水分散物P−101に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
P−101:ファインテックス Es650(DIC(株)製)
(ポリシロキサン構造単位を有しないポリエステルバインダー)
【0148】
(比較例5)
実施例1において、バック層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、下記の複合ポリマー水分散物P−102に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
P−102:オレスターUD350(三井化学(株)製)
(ポリシロキサン構造単位を有しないポリウレタンバインダー)
【0149】
(比較例6)
実施例1において、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するポリマー層の乾燥厚みを0.5μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0150】
(比較例7)
実施例1において、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するポリマー層の乾燥厚みを13μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0151】
<評価方法>
−接着性の評価−
(1)湿熱経時前の接着性
作成したバックシートのバック層表面に片刃のカミソリで縦横それぞれ6本ずつの傷をつけ、25マスのマス目を形成した。この上にマイラーテープ(ポリエステルテープ)を貼り付け、手動で試料表面に沿って180°方向に引っ張って剥離した。このとき、剥離されたマス目の数によって、バック層の接着力を下記の評価基準にしたがってランク分けした。評価ランク4、5が、実用上許容可能な範囲である。
<評価基準>
5:剥離したマス目はなかった(0マス)。
4:剥離したマス目が0マスから0.5マス未満であった。
3:剥離したマス目が0.5マス以上2マス未満であった。
2:剥離したマス目が2マス以上10マス未満であった。
1:剥離したマス目が10マス以上であった。
【0152】
(2)湿熱経時後(I)の接着性
作成したバックシートを120℃、相対湿度100%の環境条件下で48時間保持した後、25℃、相対湿度60%の環境下において1時間調湿した後、前記「(1)湿熱経時前の接着性」の評価と同様の方法でバック層の接着力を評価した。
【0153】
(3)湿熱経時後(II)の接着性
作成したバックシートを130℃、相対湿度100%の環境条件下で240時間保持した後、25℃、相対湿度60%の環境下において1時間調湿した後、前記「(1)湿熱経時前の接着性」の評価と同様の方法でバック層の接着力を評価した。
【0154】
(4)水浸漬後の接着性
作成したバックシートを25℃の蒸留水に16時間浸漬した後、25℃、相対湿度60%の環境で表面の水分をふき取った後、直ちに、前記「(1)湿熱経時前の接着性」の評価と同様の方法でバック層の接着力を評価した。
【0155】
(5)紫外線(UV)照射後の接着性
作成したバックシートについて、スガ試験機(株)製 超エネルギー照射試験機(UE−1DEc型)を用い、紫外領域の波長にピークを持つ100mW/cmのエネルギーの光をバック層表面に48時間照射した後、直ちに、前記「(1)湿熱経時前の接着性」の評価と同様の方法でバック層の接着力を評価した。
尚、光照射中のバックシートの温度は63℃にコントロールした。
【0156】
実施例1〜21および比較例1〜7で得られたバックシートについて、上記(1)〜(5)の各接着性評価の結果を表2に示した。
【0157】
【表2】

【0158】
前記表2に示すように、実施例1〜21では、湿熱環境下で経時させた後においても、基材とバック層との間の接着性が良好であり、高い接着耐久性を有するバックシートが得られたことがわかった。さらに、実施例1〜21では、水浸漬下や光照射環境下においても、基材とバック層との間において高い接着耐久性を有するバックシートが得られた。
特に、火炎処理、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理および紫外線処理を行い、複合ポリマー中のポリシロキサン量が15〜85質量%であり、複合ポリマー中のRおよびRが前記好ましい範囲の1価の有機基である各実施例では、湿熱環境下や水浸漬下において、格段に高い接着耐久性を有するバックシートが得られた。
また、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するポリマー層が架橋構造である各実施例では、湿熱経時後においても格段に高い接着耐久性を有するバックシートが得られた。
また、ポリマー基材のカルボキシル基の含量が2〜35当量/tである各実施例では、湿熱経時後においても格段に高い接着耐久性を有するバックシートが得られた。
また、バック層に白色顔料を含む各実施例では、UV照射後に格段に高い接着耐久性を有するバックシートが得られた。
これに対し、比較例1〜7のバックシートでは、湿熱環境下で経時させた後において、基材とバック層との間の接着性が悪化し、接着耐久性が得られなかった。また、比較例1〜7のバックシートでは、水浸漬下や光照射環境下においても、基材とバック層との間において接着耐久性が得られなかった。特に、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するポリマー層の膜厚が本発明の範囲の上限値を超える厚膜とした比較例7のバックシートは、湿熱経時前後を通じて基材とバック層との間において接着耐久性が得られず、水浸漬下や光照射環境下においても接着耐久性が得られなかった。また、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するポリマー層の膜厚が本発明の範囲の下限値未満の薄膜とした比較例6のバックシートは、湿熱経時後(I)および(II)において、基材とバック層との間の接着性が悪化し、接着耐久性が得られなかった。
【0159】
<2層構成のバック層を有するバックシートの作製>
(実施例22)
実施例1において、易接着層を形成した後、以下に示すように2層構造のポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するバック層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。
【0160】
実施例1と同様に易接着層を形成した後、PET−1の反射層及び易接着層が形成されていない側に、下記組成のポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有する第1バック層用塗布液Aをバインダー量が3.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて乾燥厚み3μmの第1バック層を形成した。次いで、第1バック層上に、下記組成のポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有する第2バック層用塗布液Bをバインダー量が2.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて乾燥厚み2μmの第2バック層を形成した。
【0161】
−第1バック層用塗布液Aの調製−
下記の成分(i)〜(v)を混合し、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有し、かつ、白色顔料を含有する第1バック層用塗布液Aを調製した。
<第1バック層用塗布液Aの成分>
(i)前記の複合ポリマー水分散物P−1(バインダー、固形分濃度42質量%)・・・45.9部
(ii)オキサゾリン化合物(架橋剤)・・・7.7部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
(iii)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・・・2.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
(iv)前記の白色顔料分散液・・・33.0部
(v)蒸留水 ・・・11.4部
【0162】
−第2バック層用塗布液Bの調製−
下記の成分(i)〜(iv)を混合し、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有し、かつ、白色顔料を含有しない第2バック層用塗布液Bを調製した。
<第2バック層用塗布液の成分>
(i)前記の複合ポリマー水分散物P−3(バインダー、固形分濃度42質量%)・・・45.9部
(ii)オキサゾリン化合物(架橋剤)・・・7.7部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
(iii)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・・・2.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
(iv)蒸留水・・・44.4部
【0163】
(実施例23〜27)
実施例22において、第1バック層と第2バック層とに用いた複合ポリマー水分散物を下記表3に示すように変更したこと以外は、実施例22と同様にして、実施例23〜27のバックシートを作製した。
なお、P−103の詳細は以下の通りである。
P−103:オブリガード
(AGCコーテック(株)製、ポリシロキサン構造単位を有しないフッ素系バインダー)
【0164】
作成したバックシートの第2バック層表面に片刃のカミソリで、第1バック層まで到達しないように縦横それぞれ6本ずつの傷をつけ、25マスのマス目を形成した以外は実施例1〜21と同様にして、実施例22〜27のフィルムの2層構造のバック層の接着性評価を行った。その結果を下記表3に示す。
【0165】
【表3】

なお、表3中、基材のカルボキシル基含量は全て30等量/tである。また、第1バック層および第2バック層ともに、オキサゾリン系架橋剤を含む塗布液を用いて作成した。
【0166】
前記表3に示すように、実施例22〜27に示す本発明のバックシートは、湿熱環境下に加え、水浸漬下や光照射下に曝された場合でも、基材と2層構造のバック層との間の接着性が良好であり、良好な接着耐久性を有していた。
【0167】
<太陽電池モジュールの作製と評価>
(実施例28)
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、結晶系太陽電池セルと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、実施例1で作製したバックシートとをこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ(日清紡(株)製、真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、EVAと接着させた。このとき、実施例1のバックシートはその易接着性層がEVAシートと接触するように配置した。また、接着方法は、下記の通りである。
【0168】
<接着方法>
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンにて150℃で30分間、本接着処理を施した。
【0169】
(実施例29〜33)
実施例28において、バックシートを実施例2〜6で作製したバックシートに代えたこと以外は、実施例28と同様にして、結晶系の太陽電池モジュールを作製した。
【0170】
(実施例34〜41)
実施例28において、バックシートを実施例11〜19で作製したバックシートに代えたこと以外は、実施例28と同様にして、結晶系の太陽電池モジュールを作製した。
【0171】
(実施例42〜47)
実施例28において、バックシートを、実施例22〜27で作製したバックシートに代えたこと以外は、実施例28と同様にして、結晶系の太陽電池モジュールを作製した。
【0172】
実施例28〜47で得られた太陽電池モジュールを用いて発電運転したところ、いずれも太陽電池として良好な発電性能を示した。
【0173】
<反射層と基材の間の接着性の検討>
基材とバック層との間の接着性の検討の代わりに、バック層とは基材の反対の表面上に積層されている反射層について、基材との間の接着性の検討を行った。
【0174】
(実施例48)
実施例18において、ポリマー基材PET−1の両面に施す表面処理条件を実施例3に記載の火炎処理に変更した以外は、実施例18と同様にして、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーと、オキサゾリン系架橋剤と白色顔料を含有する乾燥厚み10μmの反射層が、基材のバック層とは反対側の表面上に積層された実施例48のバックシートを作製した。
【0175】
(実施例49)
実施例18において、反射層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前述の複合ポリマー水分散物P−3に変更したこと以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
【0176】
(実施例50)
実施例18において、反射層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前述の複合ポリマー水分散物P−10に変更したこと以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
【0177】
(実施例51)
実施例18において、反射層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前述の複合ポリマー水分散物P−6に変更したこと以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
【0178】
(実施例52)
実施例18において、反射層塗布液の調製に用いた架橋剤を下記のエポキシ化合物に変更したこと以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
エポキシ化合物
(ディナコールEx521、ナガセケムテック(株)製、固形分:25質量%)
【0179】
(比較例8)
実施例18において、ポリマー基材PET−1の両面に施す表面処理条件を施さなかった以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
【0180】
(比較例9)
比較例8において、反射層塗布液を下記の(i)〜(v)の成分を混合し調製した、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有しない反射層用塗布液2に変更した以外は、比較例6と同様にして、バックシートを作製した。
<反射層用塗布液2の成分>
(i)白色顔料分散液・・・80.0部
(ii)P−201:ポリアクリル樹脂水分散液・・・19.2部
(バインダー:ジュリマーET410、日本純薬(株)製、固形分:30質量%)
(ポリシロキサン構造単位を有しないポリアクリルバインダー)
(iii)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
・・・3.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
(iv)オキサゾリン化合物(架橋剤)・・・2.0部
(エポクロスWS−700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
(v)蒸留水・・・7.8部
【0181】
(比較例10)
実施例18において、反射層塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1を、前述の複合ポリマー水分散物P−201に変更したこと以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
【0182】
(比較例11)
実施例18において、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するポリマー層の乾燥厚みを0.5μmに変更したこと以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
【0183】
(比較例12)
実施例18において、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するポリマー層の乾燥厚みを13μmに変更したこと以外は、実施例18と同様にして、バックシートを作製した。
【0184】
−接着性の評価−
作製したバックシートについて、以下に示す方法により、湿熱経時前と経時後における封止材(EVA)とバックシートとの間の接着性を評価した。評価結果は下記表4に示す。
【0185】
[A]湿熱経時前の接着性
上記のようにして作製したバックシートを20mm巾×150mmにカットして、サンプル片を2枚準備した。この2枚のサンプル片を、互いに易接着性層側が内側になるように配置し、この間に20mm巾×100mm長にカットしたEVAシート(三井化学ファブロ(株)製のEVAシート:SC50B)を挟み、真空ラミネータ(日清紡(株)製の真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、EVAと接着させた。このときの接着条件は、以下の通りとした。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンで150℃、30分間、本接着処理を施した。このようにして、互いに接着した2枚のサンプル片の一端から20mmの部分はEVAと未接着で、残りの100mmの部分にEVAシートが接着された接着評価用試料を得た。
【0186】
得られた接着評価用試料のEVA未接着部分を、テンシロン(ORIENTEC製 RTC−1210A)にて上下クリップに挟み、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で引っ張り試験を行ない、接着力を測定した。この引っ張り試験では、いずれのバックシートを用いた場合も、反射層とEVAとの間で剥離が起こり、バックシートの反射層と基材間での剥離は起こらなかった。
測定された接着力をもとに以下の評価基準にしたがってランク付けした。評価ランク4、5が、実用上許容可能な範囲である。
<評価基準>
5:密着が非常に良好であった(60N/20mm以上)。
4:密着は良好であった(30N/20mm以上60N/20mm未満)。
3:密着がやや不良であった(20N/20mm以上30N/20mm未満)。
2:密着不良が生じた(10N/20mm以上20N/20mm未満)。
1:密着不良が顕著であった(10N/20mm未満)。
【0187】
[B]湿熱経時後(III)の接着性
得られた接着評価用試料を、85℃、相対湿度85%の環境条件下で1000時間保持(湿熱経時)した後、前記[A]と同様の方法にて接着力を測定した。測定された接着力をもとに、前記評価基準にしたがってランク付けした。評価ランク4、5が、実用上許容可能な範囲である。
【0188】
[C]湿熱経時後(IV)の接着性
得られた接着評価用試料を、85℃、相対湿度85%の環境条件下で3000時間保持(湿熱経時)した後、前記[A]と同様の方法にて接着力を測定した。測定された接着力をもとに、前記評価基準にしたがってランク付けした。評価ランク4、5が、実用上許容可能な範囲である。
【0189】
得られた結果を下記表4に記載した。
【0190】
【表4】

【0191】
前記表4に示すように、実施例18、48〜52のバックシートは、湿熱環境下に長期間曝された場合にも、基材と反射層間の接着性も、EVAと反射層との間の接着性も良好であり、良好な接着耐久性を有していた。
一方、比較例8〜10より、基材に表面処理を施さなかった場合や、ポリシロキサン構造単位を含まないポリマーを反射層に用いた場合は、接着耐久性が悪くなることがわかった。また、比較例11および12より、ポリシロキサン構造単位を含む複合ポリマーを含有するポリマー層の乾燥厚みが本発明の範囲を外れる場合も、接着耐久性が悪くなることがわかった。
【0192】
(実施例53)
前記PET−1について、事前に両面を大気圧プラズマ処理しておき、実施例18に記載の反射層及び易接着層をPET−1に設け、この面の反対側に、易接着層の形成後、実施例22に記載の第1バック層及び第2バック層からなる2層構造のバック層を形成して、実施例53のバックシートを作製した。
このバックシートを用い、実施例28と同じ方法で太陽電池モジュールを作製した。
作製した太陽電池モジュールを用いて発電運転をしたところ、太陽電池として良好な発電性能を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理を施されたポリマー基材と、
前記ポリマー基材上に設けられた厚みが0.8μm〜12μmであり、かつ、複合ポリマーを含む少なくとも一層のポリマー層を有し、前記複合ポリマーが分子中に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とを含むことを特徴とする太陽電池保護シート。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、nは1以上の整数を表す。RおよびRは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記ポリマー基材に施される前記表面処理が、火炎処理、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理および紫外線処理のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池保護シート。
【請求項3】
ポリマー基材に施される表面処理方法が、大気圧プラズマ処理であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池保護シート。
【請求項4】
前記複合ポリマー分子全体に対して、前記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位が15〜85質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
【請求項5】
前記RまたはRを表す前記1価の有機基が、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基およびアミド基から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
【請求項6】
前記非ポリシロキサン系構造単位が、ビニル系構造単位、ポリエステル系構造単位およびポリウレタン系構造単位の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
【請求項7】
前記複合ポリマーを含むポリマー層が架橋構造を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
【請求項8】
前記複合ポリマーを含むポリマー層の少なくとも一層が、前記ポリマー基材の表面処理を施された表面に接触させて設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
【請求項9】
前記複合ポリマーを含むポリマー層の少なくとも一層が、前記ポリマー基材の表面に接触しない位置に配置された最外層であることを特徴とする請求項8に記載の太陽電池保護シート。
【請求項10】
前記ポリマー基材がポリエステル系樹脂を含み、
前記ポリエステル樹脂のカルボキシル基の含量が2〜35当量/tであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池保護シート。
【請求項11】
前記複合ポリマーを含むポリマー層の少なくとも一層が、白色顔料を含む光反射性の反射層であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の太陽電池保護シート。
【請求項12】
請求項11に記載の太陽電池保護シートを含むことを特徴とする太陽電池用バックシート。
【請求項13】
ポリマー基材の少なくとも一方の表面を表面処理する工程と、
表面処理された側のポリマー基材の表面上に、複合ポリマーを含有する塗布液を乾燥後の厚みが0.8μm〜12μmとなるように塗布する工程を含み、
前記複合ポリマーが分子中に下記一般式(1)で表されるポリシロキサン構造単位と非ポリシロキサン系構造単位とを含むことを特徴とする太陽電池保護シートの製造方法。
一般式(1)
【化2】

(一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または1価の有機基を表し、nは1以上の整数を表す。RおよびRは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項14】
前記複合ポリマーを含有する塗布液が、更に溶媒を含有し、
該溶媒の50質量%以上が水であることを特徴とする請求項13に記載の太陽電池保護シートの製造方法。
【請求項15】
前記複合ポリマーを含有する塗布液が、架橋剤を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の太陽電池保護シートの製造方法。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の太陽電池保護シートの製造方法で製造されたことを特徴とする太陽電池保護シート。
【請求項17】
請求項1〜11および16のいずれか一項に記載の太陽電池保護シートを少なくとも1枚含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項18】
太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、
太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板と、
前記電池側基板の前記フロント基板とは反対側に、前記封止材と接するように配置された太陽電池バックシートを含み、
前記太陽電池バックシートとして請求項1〜請求項11および16のいずれか一項に記載の太陽電池保護シートまたは請求項12に記載の太陽電池バックシートを備えることを特徴とする請求項17に記載の太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2012−49331(P2012−49331A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189958(P2010−189958)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】