説明

太陽電池及びその製造方法

【課題】製造が容易で、効率が向上されたCIGS系の薄膜太陽電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る太陽電池は、基板上の金属電極層と、金属電極層上の光吸収層と、光吸収層上のインジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN、0<X<1)を含み、膜厚が10〜1000Åのバッファ層と、バッファ層上の透明電極層と、を含む。これにより、バッファ層と光吸収層の界面で、伝導帯域のバンドオフセットを減少させることができ、太陽光によって発生した電荷の移動が容易で、太陽電池の効率が増加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及びその製造方法に関し、より詳細には、CIGS系の薄膜太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の市場の成長によるシリコン元素材の不足問題によって、薄膜太陽電池に対する関心が高まっている。薄膜太陽電池は、素材によって非晶質又は結晶質シリコン薄膜太陽電池、CIGS系の薄膜太陽電池、CdTe薄膜太陽電池、染料感応太陽電池などに区分されることができる。CIGS系の薄膜太陽電池の光吸収層は、CuInSeに代表されるI−III−VI族の化合物半導体で構成され、直接遷移型のエネルギバンドギャップを有し、光吸収係数が高くて、1〜2μmの薄膜に高効率の太陽電池の製造が可能である。
【0003】
CIGS系の太陽電池の効率は、非晶質シリコン、CdTeなど一部の実用化されている薄膜太陽電池に比べて高いだけではなく、既存の多結晶シリコン太陽電池に近接することと知られている。又、CIGS系の太陽電池は、構成する素材価格が他の種類の太陽電池の素材に比べて低廉で、柔軟に製作することができるだけではなく、長い時間の間に性能が落ちない特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国特許公開第2008−0009346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、製造が容易で、効率が向上された太陽電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態による太陽電池は、基板上の金属電極層と、前記金属電極層上の光吸収層と、前記光吸収層上のインジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)とを含み、膜厚が10〜1000Åのバッファ層と、前記バッファ層上の透明電極層と、を含む。
【0007】
本発明の実施形態によると、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)で、Xは前記光吸収層から離れるほど小さくなることができる。
【0008】
本発明の実施形態によると、前記インジウムガリウム窒化膜のエネルギバンドギャップは、前記光吸収層のエネルギバンドギャップと前記透明電極層のエネルギバンドギャップとの間の値を有し、前記インジウムガリウム窒化膜のエネルギバンドギャップは、前記光吸収層から離れるほど大きくなることができる。
【0009】
本発明の他の実施形態による太陽電池は、前記インジウムガリウム窒化膜と前記光吸収層との間に配置されるシード層をさらに含むことができる。
【0010】
本発明の他の実施形態によると、前記シード層は、インジウム窒化膜InNで構成されることができる。
【0011】
本発明の実施形態によると、前記光吸収層は、CuInSe、CuInSe、CuInGaSe、CuInGaSeに形成されたグループから選択された何れか一つのカルコパイライト(chalcopyrite)系の化合物半導体を含むことができる。
【0012】
本発明の実施形態による太陽電池の製造方法は、基板上に金属電極層を形成することと、前記金属電極層上に光吸収層を形成することと、前記光吸収層上にインジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)を含み、膜厚が10〜1000Åのバッファ層を形成することと、前記バッファ層上に透明電極層を形成することと、を含む。
【0013】
本発明の一実施形態によると、前記バッファ層は、前記光吸収層と同一の方法に形成されることができる。
【0014】
本発明の一実施形態によると、前記バッファ層は、同時蒸発法(co−evaporation)に形成されることができる。
【0015】
本発明の一実施形態によると、前記光吸収層は、インジウムIn、銅Cu、セレンSe、ガリウムGa及び窒素Nを同時に蒸発させて形成し、前記バッファ層は、インジウム、ガリウム及び窒素を同時に蒸発させて形成されることができる。
【0016】
本発明の一実施形態によると、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)は、前記光吸収層から離れるほどXが小さくなるように組成比を調節して形成されることができる。
【0017】
本発明の一実施形態によると、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)は、前記光吸収層から離れるほどエネルギバンドギャップが増加するように形成されることができる。
【0018】
本発明の一実施形態による太陽電池の製造方法は、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)と前記光吸収層との間にシード層を形成することをさらに含み、前記シード層を形成することは、セレンと窒素を交互に蒸発させて前記光吸収層の表面を窒素処理し、前記光吸収層の表面のインジウムと窒素を反応させてインジウム窒化膜InNを形成することを含むことができる。
【0019】
本発明の一実施形態によると、前記バッファ層と前記透明電極層は、同一な結晶構造に形成されることができる。
【0020】
本発明の実施形態によると、前記基板は、スパッタリングチャンバと同時蒸発チャンバを具備するクラスタ装備にローディングされ、前記金属電極層及び透明電極層は、スパッタリングチャンバで形成され、前記光吸収層と前記バッファ層は、同時蒸発チャンバで形成されることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によると、太陽電池のバッファ層は、インジウムガリウム窒化膜で構成される。前記インジウムガリウム窒化膜は、組成比によってエネルギバンドギャップを容易に調節することができる。前記バッファ層と光吸収層の界面で、伝導帯域のバンドオフセットが減少することができる。これによって、太陽光によって発生した電荷の移動が容易で、太陽電池の効率が増加することができる。
【0022】
本発明の実施形態によると、太陽電池のバッファ層は、同時蒸発法によって形成されることができる。前記バッファ層は、カドミウムスルフィド(Cadmium Sulfide)ではないインジウムガリウム窒化膜に形成されることができる。従って、本発明の実施形態による太陽電池の製造方法は、環境汚染を減少させることができ、真空工程に一貫に薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態によるCIGS系の薄膜太陽電池を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態による太陽電池のエネルギバンドダイヤグラムを説明するためのグラフである。
【図3】本発明の比較例による太陽電池のエネルギバンドダイヤグラムを説明するためのグラフである。
【図4】本発明の他の実施形態によるCIGS系の薄膜太陽電池を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態による太陽電池の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態による太陽電池の製造方法に使われる同時蒸発装置に対する概略図である。
【図7】本発明の実施形態による太陽電池の製造方法に使われるクラスタ装備に対する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者が本発明の技術的な思想を容易に実施することができるように本発明の実施形態を添付された図面を参照して説明するようにする。しかし、本発明は、ここで説明される実施形態に限定されずに他の形態に具体化されることができる。さって、ここで紹介される実施形態は、開示された内容が徹底で、完全になるように、そして当業者に本発明の技術的な思想が十分に伝えられるように提供される。
【0025】
図面において、各々の構成要素は、明確性のために誇張されて表現されうる。明細書の全体にかけて同一の参照番号に示された部分は同一の構成要素を示す。
【0026】
一方、説明の簡略さのために以下では、本発明の技術的な思想が適用されることができるいくつかの実施形態を例示的に説明し、多様な変形された実施形態に対する説明は省略する。しかし、この分野に従事する通常の知識を有した者は、上述した説明及び例示される実施形態に基づいて、本発明の技術的な思想を多様な場合に対して変形して適用できる。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態によるCIGS系の薄膜太陽電池を説明するための図である。
【0028】
図1を参照すると、基板100上に金属電極層110が配置される。前記基板100は、ソーダ石灰ガラス(soda lime glass)基板であることができる。前記ソーダ石灰ガラス基板は、相対的に値段が安い基板材料に知られている。又、前記ソーダ石灰ガラス基板のナトリウムが光吸収層に広がって、CIGS系の薄膜太陽電池の光電圧特性を向上させることができる。これと異なるように、前記基板100は、アルミニウムのようなセラミック基板、ステンレス鋼板、銅テープなどの金属基板又は高分子(poly)フィルムであることができる。
【0029】
前記金属電極層110は、比抵抗が低く、熱膨張係数の差によって剥離現状が発生しないようにガラス基板に対する粘着性が優秀であることが望ましい。具体的に、前記金属電極層110は、モリブデン(Molybdenum)で構成されることができる。モリブデンは、高い電気伝導度、他の薄膜とのオーム接合(ohmic contact)形成特性、セレンSe雰囲気下で高温安全性を有することができる。
【0030】
前記金属電極層110上に光吸収層120が配置される。前記光吸収層120は、CuInSe、CuInSe、CuInGaSe、CuInGaSeに形成されたグループから選択された何れか一つのカルコパイライト系の化合物半導体を含むことができる。
【0031】
前記光吸収層120上に、インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)を含むバッファ層130が配置される。ここで、Xは0より大きく、1より小さいことができる。前記バッファ層130上に透明電極層140が配置される。前記バッファ層130のエネルギバンドギャップ(energy band gap)は、前記光吸収層120のバンドギャップよりは大きく、前記透明電極層140のバンドギャップより小さくなければならない。前記バッファ層130のエネルギバンドギャップは、インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)の組成比によって変わることができる。即ち、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)で、Xが小さくなるほどガリウムの増加エネルギバンドギャップは増加することができる。
【0032】
本発明の実施形態によると、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)は、前記光吸収層120から離れるほど(又は前記透明電極層140に近づくほど)ガリウムの造成比が順次的に増加することができる。これによって、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)のエネルギバンドギャップは、前記光吸収層120から離れるほど漸進的に大きくなることができる。
【0033】
前記光吸収層120に隣接するインジウムガリウム窒化膜のエネルギバンドギャップが相対的に小さいので、前記光吸収層120と前記バッファ層130の界面に存在するバンドオフセット(band−offset)が減少することができる。従って、太陽光によって発生した電荷の移動が容易で、太陽電池の効率が増加することができる。
【0034】
又、前記バッファ層130は、前記光吸収層120と透明電極層140の格子常数が異なるので、望ましい接合のために提供される。前記バッファ層130は、前記透明電極層140と同一の結晶構造を有することができる。例えば、前記バッファ層130と前記透明電極層140は、ウルツアイト(wurtzite)結晶構造を有することができる。
【0035】
前記透明電極層140は、光透過率が高く、電気伝導性が望ましい物質であることができる。例えば、前記透明電極層140は、亜鉛酸化膜ZnOであることができる。前記亜鉛酸化膜ZnOは、約3.2eVのバンドギャップを有し、約80%以上の高い光透過率を有することができる。前記亜鉛酸化膜ZnOは、アルミニウム又は硼素などがドーピングされて低い抵抗値を有することができる。これと異なり、前記透明電極層140は、電気光学的な特性が優秀であるITO(Indium Tin Oxide)薄膜をさらに含むことができる。
【0036】
前記透明電極層140上に反射防止膜150が配置される。前記反射防止膜150は、太陽電池に入射される太陽光の反射損失を減少させることができる。前記反射防止膜150によって太陽電池の効率が向上することができる。前記透明電極層150に接触するグリッド(grid)電極(図示せず)が配置されることができる。前記グリッド電極は、太陽電池表面での電流を収集するためのことである。前記グリッド電極は、アルミニウムなどの金属であることができる。前記グリッド電極が占める部分は、太陽光が入射されないので、その部分を最小化する必要がある。
【0037】
図2は、本発明の実施形態による太陽電池のエネルギバンドダイヤグラムを説明するためのグラフである。
【0038】
図2は、本発明の実施形態によって光吸収層120がCu(In、Ga)Seであり、バッファ層130がInGa1−XNであり、透明電極層140がZnO膜である場合である。前記光吸収層120と前記透明電極層140は、p−n接合を形成する。前記光吸収層120は、エネルギバンドギャップが約1.2eVであり、前記透明電極層140のエネルギバンドギャップが約3.2eVである。前記バッファ層130のエネルギバンドギャップは、1.2〜3.2eVであることができる。
【0039】
前記バッファ層130は、前記光吸収層120から離れるほどエネルギバンドギャップが漸次的に大きくなることができる。前記光吸収層120に隣接したバッファ層130部分が前記透明電極層140に隣接したバッファ層130部分より小さいエネルギバンドギャップを有することができる。従って、前記光吸収層120と前記バッファ層130の界面で、伝導帯域のバンドオフセットΔEcが減少することができる。従って、太陽光によって発生した電荷の移動が容易で、太陽電池の効率が増加することができる。
【0040】
図2で、前記バッファ層130のエネルギバンドギャップ又は伝導帯域が漸次的に変更されるように示したが、InGa1−XN薄膜の組成比によって、エネルギバンドギャップが変わることができる(又は、伝導帯域のバンドオフセットΔEcが減少)ことは当業者が理解することができるはずである。
【0041】
図3は、本発明の比較例による太陽電池のエネルギバンドダイヤグラムを説明するためのグラフである。本発明の比較例で光吸収層120は、Cu(In、Ga)Seであり、バッファ層130aがCdSであり、透明電極層140がZnO膜である場合である。
【0042】
前記バッファ層130aであるCdSは、エネルギバンドギャップが約2.4eVとして一定な値を有することができる。前記バッファ層130aと光吸収層120の界面で伝導帯域のバンドオフセットΔEcが約1.2eV程度である。太陽光によって、前記光吸収層120で発生した電荷が1.2eV程度のバンドオフセットを容易に移動することが難しいことでありうる。特に、長波長領域の太陽光によって生成された電荷は、その自体のエネルギが小さいので、前記のようなバンドオフセットを移動することが難しいことでありうる。従って、前記CdSで構成されたバッファ層130aを含む太陽電池は、その効率が本発明の実施形態に比べて減少することができる。
【0043】
図4は、本発明の他の実施形態によるCIGS系の薄膜太陽電池を説明するための図である。
【0044】
図4を参照すると、基板100上に金属電極層110が配置される。前記基板100は、ソーダ石灰ガラス基板であることができる。前記ソーダ石灰ガラス基板は、相対的に値段が安い基板材料に知られている。又、前記ソーダ石灰ガラス基板のナトリウムが後述される光吸収層に広がって、CIGS系の薄膜太陽電池の光電圧特性を向上させることができる。これと異なり、前記基板100は、アルミニウムのようなセラミック基板、ステンレス鋼板、銅テープなどの金属基板又は高分子フィルムであることができる。
【0045】
前記金属電極層110は、比抵抗が低く、熱膨張係数の差によって剥離現状が発生しないようにガラス基板に対する粘着性が優秀なことが望ましい。具体的に、前記金属電極層110は、モリブデンで構成されることができる。モリブデンは、高い電気伝導度、他の薄膜とのオーム接合の形成特性、セレンSe雰囲気下で高温安全性を有することができる。
【0046】
前記金属電極層110上に光吸収層120が配置される。前記光吸収層120は、CuInSe、CuInSe、CuInGaSe、CuInGaSeに形成されたグループから選択された何れか一つのカルコパイライト系の化合物半導体を含むことができる。
【0047】
前記光吸収層120上にインジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)を含むバッファ層130が配置される。ここで、Xは0より大きく、1より小さいことができる。前記バッファ層130上に透明電極層140が配置される。
【0048】
前記バッファ層130と前記光吸収層120との間にシード層125が配置されることができる。前記シード層125は、インジウム窒化膜InNであることができる。前記シード層125は、前記光吸収層120上に前記バッファ層130が連続的に蒸着されることを補助することができる。前記シード層125は、前記光吸収層120と前記バッファ層130が互いに異なる結晶構造を有する場合に望ましい接合に寄与することができる。
【0049】
前記バッファ層130のエネルギバンドギャップ は、前記光吸収層120のバンドギャップよりは大きく、前記透明電極層140のバンドギャップより小さくなければならない。前記バッファ層130のエネルギバンドギャップは、インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)の組成比によって変わることができる。即ち、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)で、Xが小さくなるほどガリウムの増加エネルギバンドギャップは増加することができる。
【0050】
本発明の他の実施形態によると、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)は、前記光吸収層120から離れるほど(又は前記透明電極層140に近づくほど)ガリウムの造成比が漸次的に増加することができる。これによって、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)のエネルギバンドギャップは、前記光吸収層120から離れるほど漸進的に大きくなることができる。
【0051】
前記光吸収層120に隣接するインジウムガリウム窒化膜のエネルギバンドギャップが相対的に小さいので、前記光吸収層120と前記バッファ層130の界面に存在するバンドオフセットが減少することができる。従って、太陽光によって発生した電荷の移動が容易で、太陽電池の効率が増加することができる。
【0052】
又、前記バッファ層130は、前記光吸収層120と透明電極層140の格子常数が異なるので、望ましい接合のために提供される。前記バッファ層130は、前記透明電極層140と同一な結晶構造を有することができる。例えば、前記バッファ層130と前記透明電極層140は、ウルツアイト結晶構造を有することができる。
【0053】
前記透明電極層140は、光透過率が高く、電気伝導性が望ましい物質であることができる。例えば、前記透明電極層140は、亜鉛酸化膜ZnOであることができる。前記亜鉛酸化膜ZnOは、約3.2eVのバンドギャップを有し、約80%以上の高い光透過率を有することができる。前記亜鉛酸化膜ZnOは、アルミニウム又は硼素などがドーピングされて低い抵抗値を有することができる。これと異なり、前記透明電極層140は、電気光学的な特性が優秀であるITO薄膜をさらに含むことができる。
【0054】
前記透明電極層140上に反射防止膜150が配置される。前記反射防止膜150は、太陽電池に入射される太陽光の反射損失を減少させることができる。前記反射防止膜150によって、太陽電池の効率が向上されることができる。前記透明電極層150に接触するグリッド電極(図示せず)が配置されることができる。前記グリッド電極は、太陽電池の表面での電流を収集するためのことである。前記グリッド電極は、アルミニウムなどの金属であることができる。前記グリッド電極が占める部分は、太陽光が入射されないので、その部分を最小化する必要がある。
【0055】
本発明の他の実施形態によると、前記シード層125は、前記バッファ層130と前記光吸収層120の望ましい接合に寄与することができる。又、前記バッファ層125は、エネルギバンドギャップが漸次的に増加して太陽電池の効率を向上させることができる。
【0056】
図5は、本発明の実施形態による太陽電池の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0057】
図1及び5を参照すると、基板100上に金属電極層110が形成される(S10)。前記基板100は、ソーダ石灰ガラス基板、アルミニウムのようなセラミック基板、ステンレス鋼板、銅テープなどの金属基板又は高分子フィルムの中、何れか一つに形成されることができる。本発明の実施形態によると、前記基板100は、ソーダ石灰ガラスに形成されることができる。
【0058】
前記金属電極層110は、スパッタリング方法又は電子ビーム蒸着方法に形成されることができる。前記金属電極層110は、比抵抗が低く、熱膨張係数の差によって剥離現状が発生しないようにガラス基板に対する粘着性が優秀な物質に形成することが望ましい。具体的に、前記金属電極層110は、モリブデンで構成されることができる。モリブデンは、高い電気伝導度、他の薄膜とのオーム接合の形成特性、セレンSe雰囲気下で高温安全性を有することができる。前記金属電極層110は、0.5〜1μmの厚さに形成されることができる。
【0059】
前記金属電極層110上に光吸収層120が形成される(S20)。前記光吸収層120は、CuInSe、CuInSe、CuInse、CuInGaSe、CuInGaSeに形成されたグループから選択された何れか一つのカルコパイライト系の化合物半導体に形成されることができる。このような化合物半導体は、CIGS系の薄膜に通称されることができる。
【0060】
前記光吸収層120は、同時蒸発法に形成されることができる。前記光吸収層120は、インジウムIn、銅Cu、セレンSe、ガリウムGa及び窒素Nを同時に蒸発させて形成できる。具体的に、前記CIGS系の薄膜は、インジウム蒸発源(effusion cell)、銅蒸発源、ガリウム蒸発源、セレン蒸発源及び窒素蒸着源(cracker)を利用して蒸着されることができる。例えば、インジウム蒸発源はInSeであり、銅蒸発源はCuSeであり、ガリウム蒸発源はGaSeであり、セレン蒸発源はSeであることができる。前記蒸発源は、高純度の材料、例えば99.99%以上であることができる。前記光吸収層120を形成する際、前記基板100の温度は300〜600℃であることができる。前記光吸収層120は、1〜3μmの厚さに形成されることができる。前記光吸収層120は、単一層又は多層構造に形成されることができる。
【0061】
前記光吸収層120上にインジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)を含むバッファ層130が形成される(S30)。ここで、Xは0より大きく、1より小さいことであることができる。前記バッファ層130は、前記光吸収層120と同一な方法に形成されることができる。前記バッファ層130と前記光吸収層120は、同時蒸発法に形成されることができる。前記バッファ層130は、インジウム、ガリウム及び窒素を同時に蒸発させてインジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)に形成されることができる。前記インジウムガリウム窒化膜は、蒸着温度を300〜600℃に維持しながらガリウム、インジウム及び窒素の比率を調節して形成されることができる。前記バッファ層130は、10〜1000Åの厚さに形成されることができる。
【0062】
これと異なり、前記バッファ層130は、原子層蒸着(Atomic Layer Deposition)方法、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition)方法又はスパッタリング(sputtering)方法に形成されることができる。
【0063】
前記バッファ層130がカドミウムスルフィドCdS薄膜に形成される場合、前記CdS薄膜は、化学槽蒸着法CBD(Chemical Bath Deposition)に形成されることができる。この場合、次のような問題点が発生されうる。
【0064】
前記化学槽蒸着法は、溶液を混合する湿式工程によって薄膜形成の再現性が難しく、溶液濃度変化による薄膜の特性変化が発生されうる。又、毒性物質であるカドミウムCdの使用による環境汚染及び工程進行に難しさが発生されうる。前記化学槽蒸着法は、真空工程を利用して蒸着する前記光吸収層120及び透明電極層の形成工程と一貫工程に具現されることができない。前記化学槽蒸着法は、100℃附近の低温反応を利用するので、後続高温工程で既形成された薄膜が損傷されうる。本発明の実施形態によるバッファ層130の形成方法は、このような化学槽蒸着法の問題点を解決することができる。
【0065】
図4で説明されたように、前記バッファ層130と前記光吸収層120との間にシード層125が形成されることができる。前記シード層125は、インジウム窒化膜InNに形成されることができる。前記シード層125を形成することは、セレンと窒素を交互に蒸発させて前記光吸収層120の表面を窒素処理し、前記光吸収層120の表面のインジウムと窒素を反応させてインジウム窒化膜InNを形成することを含むことができる。前記セレンSeと窒素は、蒸着温度を300〜600℃に維持しながら交互に蒸発させることができる。セレン雰囲気から窒素雰囲気に転換して維持する時間は、0〜60min範囲に調節されることができる。
【0066】
前記シード層125は、前記光吸収層120上に前記バッファ層130が連続的に蒸着されることを補助することができる。前記シード層125は、前記光吸収層120と前記バッファ層130が互いに異なる結晶構造を有する場合に望ましい接合に寄与することができる。
【0067】
前記バッファ層130のエネルギバンドギャップは、前記光吸収層120のバンドギャップよりは大きく、前記透明電極層140のバンドギャップより小さくなければならない。前記バッファ層130のエネルギバンドギャップは、インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)の組成比によって変わることができる。即ち、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)で、Xが小さくなるほど(ガリウムの増加)エネルギバンドギャップは増加することができる。
【0068】
本発明の実施形態によると、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)は、前記光吸収層120から離れるほど(又は前記透明電極層140に近づくほど)ガリウムの造成比が漸次的に増加することができる。これによって、前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)は、エネルギバンドギャップが前記光吸収層120から離れるほど漸進的に大きくなるように形成されることができる。
【0069】
前記光吸収層120に隣接するインジウムガリウム窒化膜のエネルギバンドギャップが相対的に小さいので、前記光吸収層120と前記バッファ層130の界面に存在するバンドオフセットが減少することができる。従って、太陽光によって発生した電荷の移動が容易で、太陽電池の効率が増加することができる。
【0070】
前記バッファ層130上に透明電極層140が形成される(S40)。前記透明電極層140は、光透過率が高く、電気伝導性が望ましい物質に形成されることができる。例えば、前記透明電極層140は、亜鉛酸化膜ZnOに形成されることができる。前記亜鉛酸化膜ZnOは、約3.2eVのバンドギャップを有し、約80%以上の高い光透過率を有することができる。前記亜鉛酸化膜ZnOは、アルミニウム又は硼素などがドーピングされて低い抵抗値を有するように形成されることができる。これと異なり、前記透明電極層140は、電気光学的な特性が優秀であるITO薄膜をさらに含むことができる。
【0071】
又、前記バッファ層130は、前記光吸収層120と透明電極層140の格子常数が異なるので、望ましい接合のために形成されることができる。前記バッファ層130は、前記透明電極層140と同一な結晶構造に形成されることができる。例えば、前記バッファ層130と前記透明電極層140は、ウルツアイ結晶構造に形成されることができる。
【0072】
前記透明電極層140上に反射防止膜150が形成される。前記反射防止膜150は、太陽電池に入射される太陽光の反射損失を減少させることができる。前記反射防止膜150によって太陽電池の効率が向上することができる。前記透明電極層150に接触するグリッド電極(図示せず)が配置されることができる。前記グリッド電極は、太陽電池表面での電流を収集するためのことである。前記グリッド電極は、アルミニウムなどの金属であることができる。前記グリッド電極が占める部分は、太陽光が入射されないので、その部分を最小化する必要がある。
【0073】
図6は、本発明の実施形態による太陽電池の製造方法に使われる同時蒸発装置に対する概略図である。
【0074】
図6を参照すると、同時蒸発装置200は、チャンバ内に基板を固定する基板ホルダ230と、基板を加熱するヒータ220と、基板を回転させる回転モータ210と、を含むことができる。又、同時蒸発装置200は、銅Cu蒸着源260と、インジウムIn蒸着源270と、ガリウムGa蒸着源280と、セレンSe蒸着源290と、窒素N蒸着源250と、を含む。
【0075】
本発明の実施形態による光吸収層120(図1に示す)は、銅、インジウム、ガリウム、セレン、窒素を同時に蒸発させて形成され、バッファ層130(図1に示す)は、インジウム、ガリウム、窒素を同時に蒸発させて形成されることができる。
【0076】
図7は、本発明の実施形態による太陽電池の製造方法に使われるクラスタ装備に対する概略図である。
【0077】
図7を参照すると、クラスタ装備300は、ロードロックチャンバ(loadlock chamber)310と、トランスファーチャンバ(transfer chamber)320と、クールダウンチャンバ(cool down chamber)330と、工程チャンバと、を含む。前記トランスファーチャンバ320は、内部に基板を移送するための移送装置を含む。前記移送装置は、工程チャンバとロードロックチャンバ310の相互間に基板を搬入及び搬出させることができる。前記クールダウンチャンバ330は、蒸着工程で上がった温度を下げることができる。前記工程チャンバは、スパッタリングチャンバ340と、同時蒸発チャンバ350と、原子層蒸着チャンバ360と、化学気相蒸着チャンバ370などを含むことができる。
【0078】
再び図1を参照すると、本発明の実施形態による金属電極層110、光吸収層120、バッファ層130及び透明電極層140は、真空状態を維持しながら形成されることができる。基板100がスパッタリングチャンバ340と同時蒸発チャンバ350を具備するクラスタ装備にローディングされることができる。前記金属電極層110及び透明電極層140は、スパッタリングチャンバ340で形成されることができる。前記光吸収層120及びバッファ層130は、同時蒸発チャンバ350で形成されることができる。これによって、金属電極層110、光吸収層120、バッファ層130及び透明電極層140は、真空状態で一貫された工程に形成されることができる。本発明の実施形態による太陽電池は、製造工程の単純化によって収率が増加され、製造費用が減少されることができる。又、太陽電池に使われる薄膜特性が向上されることができる。
【0079】
これと異なり、本発明の他の実施形態によると、前記バッファ層130は、スパッタリングチャンバ340、原子層蒸着チャンバ360又は化学気相蒸着チャンバ370に形成されることができる。このような工程によっても真空状態で一貫された工程に形成されることができるので、太陽電池は、製造工程の単純化によって、収率が増加され、製造費用が減少されることができる。
【符号の説明】
【0080】
100 基板
110 金属電極層
120 光吸収層
130 バッファ層
140 透明電極層
150 反射防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の金属電極層と、
前記金属電極層上の光吸収層と、
前記光吸収層上のインジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN、0<X<1)を含み、膜厚が10〜1000Åのバッファ層と、
前記バッファ層上の透明電極層と、を含むことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)で、Xは前記光吸収層から離れるほど小さくなることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記インジウムガリウム窒化膜のエネルギバンドギャップは、前記光吸収層のエネルギバンドギャップと前記透明電極層のエネルギバンドギャップとの間の値を有し、
前記インジウムガリウム窒化膜のエネルギバンドギャップは、前記光吸収層から離れるほど大きくなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記バッファ層と前記光吸収層との間に配置されるシード層をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項5】
前記シード層は、インジウム窒化膜InNで構成されることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記光吸収層は、CuInSe、CuInSe、CuInGaSe、CuInGaSeに形成されたグループから選択された何れか一つのカルコパイライト(chalcopyrite)系の化合物半導体を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の太陽電池。
【請求項7】
基板上に金属電極層を形成することと、
前記金属電極層上に光吸収層を形成することと、
前記光吸収層上にインジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN、0<X<1)を含み、膜厚が10〜1000Åのバッファ層を形成することと、
前記バッファ層上に透明電極層を形成することと、を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記バッファ層は、前記光吸収層と同一の方法に形成されることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記バッファ層は、同時蒸発法に形成されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記光吸収層は、インジウムIn、銅Cu、セレンSe、ガリウムGa及び窒素Nを同時に蒸発させて形成し、前記バッファ層は、インジウム、ガリウム及び窒素を同時に蒸発させて形成されることを特徴とする請求項9に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)は、前記光吸収層から離れるほどXが小さくなるように組成比を調節して形成されることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項12】
前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)は、前記光吸収層から離れるほどエネルギバンドギャップが増加するように形成されることを特徴とする請求項7乃至請求項11のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項13】
前記インジウムガリウム窒化膜(InGa1−XN)と前記光吸収層との間にシード層を形成することをさらに含み、
前記シード層を形成することは、セレンと窒素を交互に蒸発させて前記光吸収層の表面を窒素処理し、前記光吸収層の表面のインジウムと窒素を反応させてインジウム窒化膜InNを形成することを含むことを特徴とする請求項7乃至請求項12のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項14】
前記バッファ層と前記透明電極層は、同一な結晶構造に形成されることを特徴とする請求項7乃至請求項13のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項15】
前記基板は、スパッタリングチャンバと同時蒸発チャンバを具備するクラスタ装備にローディングされ、
前記金属電極層及び透明電極層は、スパッタリングチャンバで形成され、前記光吸収層と前記バッファ層は、同時蒸発チャンバで形成されることを特徴とする請求項7に記載の太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−62547(P2013−62547A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−576(P2013−576)
【出願日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【分割の表示】特願2009−295787(P2009−295787)の分割
【原出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】