説明

太陽電池及びその製造方法

【課題】太陽光を受け取る面積が大きく、且つ太陽光の吸収率が高い太陽電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池は、背面電極と、シリコン基板と、ドープシリコン層と、前面電極と、を含む。前記シリコン基板は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を含み、前記シリコン基板の前記第二表面には、複数の三次元ナノ構造体が形成され、前記背面電極は、前記シリコン基板の第一表面に設置され、該第一表面とオーミック接触し、前記ドープシリコン層は、前記シリコン基板の第二表面に形成され、前記前面電極は、前記ドープシリコン層の少なくとも一部に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は光合成原理を応用して、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する電池であり、具体的には、光起電力効果を利用して、太陽光エネルギーを直接電力に変換する電力機器である。一般的な一次電池や二次電池のように電力を蓄えるのではなく、光起電力効果により、受けた光エネルギーを即時に電力に変換して出力する。主流のシリコン太陽電池(非特許文献1を参照)の他、様々な化合物半導体などを素材にしたものが実用化されている。
【0003】
現在、太陽電池は主にシリコン太陽電池である。従来のシリコン太陽電池は、背面電極と、シリコン基板と、ドープシリコン層と、前面電極と、を含む。前記シリコン太陽電池の中で、前記シリコン基板と前記ドープシリコン層はpn接合を形成し、該pn接合に太陽光があたると、それが刺激となって、複数の電子と正孔が発生する。該複数の電子と正孔は、電場の作用下で分離し、且つ背面電極と前面電極にそれぞれ移動する。前記シリコン太陽電池の背面電極及び前面電極が負荷を受けると、該背面電極及び電極の間に外部回路の負荷を通じて電流が流れる。
【0004】
しかし、従来のシリコン太陽電池の前記ドープシリコン層の表面は、平坦な平面構造を有し、また、その表面積は小さいので、シリコン太陽電池の太陽光を受け取る面積は小さい。また、太陽光が前記ドープシリコン層の表面に達した際、その一部の太陽光は前記ドープシリコン層の平坦な表面で反射される。従って、従来のシリコン太陽電池は、太陽光の吸収率が低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】張明杰等、“太陽電池及び多晶シリコンの製造”、「材料及び冶金の学報」、2007年、第16巻、第33頁〜第38頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、前記課題を解決するために、本発明は太陽光を受け取る面積が大きく、且つ太陽光の吸収率が高い太陽電池及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の太陽電池は、背面電極と、シリコン基板と、ドープシリコン層と、前面電極と、を含む。前記シリコン基板は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を含み、前記シリコン基板の前記第二表面には、複数の三次元ナノ構造体が形成され、前記背面電極は、前記シリコン基板の第一表面に設置され、該第一表面とオーミック接触し、前記ドープシリコン層は、前記シリコン基板の第二表面に形成され、前記前面電極は、前記ドープシリコン層の少なくとも一部に形成される。前記三次元ナノ構造体は、第一突部と第二突部を含み、前記第一突部と前記第二突部とは接触して並列し、隣接する前記第一突部と前記第二突部との間には、第一溝が形成され、隣接する前記三次元ナノ構造体の間には、第二溝が形成され、前記第二溝の深度は第一溝より深い三次元ナノ構造体である。
【0008】
本発明の太陽電池の製造方法は、対向する第一表面及び第二表面を含むシリコン基板を形成する第一ステップと、前記シリコン基板の第二表面に複数の三次元ナノ構造体を形成する第二ステップと、前記シリコン基板の第二表面にドープシリコン層を形成する第三ステップと、前記ドープシリコン層の少なくとも一部に前面電極を形成する第四ステップと、前記シリコン基板の第一表面に背面電極を形成し、前記背面電極を前記シリコン基板の第一表面とオーミック接触させる第五ステップと、を含む。前記三次元ナノ構造体は、第一突部と第二突部を含み、前記第一突部と前記第二突部とは接触して並列し、隣接する前記第一突部と前記第二突部との間には、第一溝が形成され、隣接する前記三次元ナノ構造体の間には、第二溝が形成され、前記第二溝の深度は第一溝より深い三次元ナノ構造体である。
【発明の効果】
【0009】
従来の技術と比べて、本発明の太陽電池は、シリコン基板に、複数の三次元ナノ構造体が形成されている。前記三次元ナノ構造体は、M型構造を有するので、前記太陽電池の太陽光を受け取る面積を増大させる。また、複数の前記三次元ナノ構造体は、バンドギャップの特性を有するので、光量子の前記複数の三次元ナノ構造体に滞留する時間が長くなり、複数の前記三次元ナノ構造体の光に対して吸収できる周波数が広くなる。従って、前記太陽電池の光吸収率を高め、前記太陽電池の光電変換効率を高めることができる。更に、前記シリコン基板の前記第二表面には、複数の前記三次元ナノ構造体が形成されているので、太陽光が前記シリコン基板の前記第二表面に達すると、繰り返して屈折―反射―屈折することにより、太陽光の大部分が前記シリコン基板の前記第二表面における複数の三次元ナノ構造体に吸収されるので、前記太陽電池の太陽光に対する吸収率を更に高めることができる。また、前記太陽電池の製造工程は簡単で、且つコストも低い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の太陽電池の構造を示す図である。
【図2】図1に示す太陽電池のシリコン基板の構造を示す図である。
【図3】図1に示す太陽電池のシリコン基板の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図2中の線IV−IVに沿った断面図である。
【図5】本発明の実施例1の太陽電池の製造工程を示す図である。
【図6】図1に示す太陽電池のシリコン基板の第二表面の複数の三次元ナノ構造体の製造工程を示す図である。
【図7】本発明の実施例2の太陽電池の構造を示す図である。
【図8】本発明の実施例2の太陽電池の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0012】
(実施例1)
図1を参照すると、本発明の実施例1は、太陽電池10を提供する。該太陽電池10は、順次的に積層された背面電極100と、シリコン基板110と、ドープシリコン層120及び前面電極130と、を含む。太陽光は、前記太陽電池10の前記前面電極130側から入射する。前記シリコン基板110は、第一表面112及び該第一表面112に対向する第二表面114を含む。前記背面電極100は、前記シリコン基板110の前記第一表面112に設置され、該第一表面112とオーミック接触する。前記シリコン基板110の前記第二表面114には、複数の三次元ナノ構造体113が形成されている。前記シリコン基板110の前記第二表面114は、複数の三次元ナノ構造体113の表面及び隣接する前記三次元ナノ構造体113の間の面を含むパターン化された表面を示す。各々の前記三次元ナノ構造体113はM型構造体である。また、前記ドープシリコン層120は、前記シリコン基板110の前記第二表面114に形成される。前記前面電極130は、前記ドープシリコン層120の少なくとも一部の表面と接触するように配置される。
【0013】
前記背面電極100は、アルミニウム、マグネシウム、銀など金属材料のいずれか一種又は数種からなる。前記背面電極100の厚さは10μm〜300μmである。本実施例において、前記背面電極100は、アルミニウムからなる薄膜であり、その厚さは200μmである。
【0014】
図2及び図3を参照すると、前記シリコン基板110は、p型シリコン基板である。前記シリコン基板110は、単結晶シリコン、多結晶シリコン或は他のp型半導体材料からなる。本実施例において、前記シリコン基板110は、p型単結晶シリコン片であり、その厚さは20μm〜30μmである。前記シリコン基板110の前記第二表面114には、複数の三次元ナノ構造体113がアレイの形態によって配列して形成されている。
【0015】
前記三次元ナノ構造体113はM型構造体である。前記M型構造体とは、前記シリコン基板110から前記シリコン基板110を離れる方向に延伸するM型の突起を有する構造のことである。前記三次元ナノ構造体113は前記シリコン基板110と一体構造を有する。ここで、一体構造を有するとは、前記三次元ナノ構造体113が、前記シリコン基板110との間に間隙を有さず、前記シリコン基板110と一体であることを指す。前記三次元ナノ構造体113は、前記シリコン基板110に形成されたストリップ状の突起構造を有する。
【0016】
前記複数の三次元ナノ構造体113は、直線、折れ線或いは曲線によって、前記シリコン基板110上に並列し、且つ該シリコン基板110に平行に延伸している。前記複数の三次元ナノ構造体113の延伸する方向は変化しても、或いは変化しなくても良い。延伸する方向が変化しない場合、前記複数の三次元ナノ構造体113は、直線で、並列に延伸する。該延伸する方向と垂直な方向において、前記複数の三次元ナノ構造体113の横断面はそれぞれM型であり、且つそれらの形状や面積は同じである。延伸する方向が変化する場合、前記複数の三次元ナノ構造体113は、折れ線或いは曲線で、並列に延伸する。該延伸する方向において、任意の点を選び、前記複数の三次元ナノ構造体113の該任意の点における横断面は各々M型であり、且つそれらの形状や面積は同じである。
【0017】
図4を参照すると、本実施例において、前記三次元ナノ構造体113はストリップ状の突起構造体であり、該ストリップ状の突起構造は、直線で同じ方向に沿って延伸している。前記複数の三次元ナノ構造体113は、一次元アレイによって、前記シリコン基板110に分布して、前記三次元ナノ構造体アレイを形成する。ここで、一次元アレイとは、複数のストリップ状の突起構造が同じ方向に沿って延伸し、且つ、前記シリコン基板110に平行することを指す。前記複数の三次元ナノ構造体113が、前記シリコン基板110に均一に分布しているので、前記三次元ナノ構造体アレイは対称的なパターンを形成する。
【0018】
ここで、前記ストリップ状の突起構造の延伸する方向をX方向と定義し、該ストリップ状の突起構造の延伸する方向と垂直な方向をY方向と定義する。前記X方向には、該X方向に沿って、前記ストリップ状の突起構造の一端が、対向する他端までそれぞれ延在し、前記Y方向には、該Y方向に沿って、二つの突起構造からなるストリップ状の前記複数の三次元ナノ構造体113が、互いに並列している。また、この際、各々の前記三次元ナノ構造体113のX方向における断面はM型である。従って、前記三次元ナノ構造体113はM型の三次元ナノ構造体である。
【0019】
図4を参照すると、各々の前記三次元ナノ構造体113は、第一突部1132及び第二突部1134をそれぞれ有する。前記第一突部1132と前記第二突部1134は、その延伸方向は同じであり、互いに並列して、全てX方向に沿って延伸している。前記第一突部1132は、交差する二つの面を有し、該二つの面は、それぞれ第一面1132aと第二面1132bである。前記第一面1132a及び前記第二面1132bは、それぞれ平面、曲面或いは折り面でも良い。本実施例において、前記第一面1132a及び前記第二面1132bは、それぞれ平面である。また、前記第一面1132aと前記第二面1132bは前記シリコン基板110と離れる方向にそれぞれ延伸して交差し、前記第一突部1132の先端(図示せず)を形成する。
【0020】
前記第一突部1132の先端の角度θは0°(0°は含まず)〜180°(180°は含まず)であるが、好ましくは、30°〜60°である。
【0021】
前記第一突部1132の前記第一面1132aと、前記シリコン基板110の表面(図示せず)とがなす角度αは0°(0°は含まず)〜90°であるが、好ましくは、80°〜90°である。
【0022】
前記第二突部1134の構造は、前記第一突部1132の構造と基本的に同じである。前記第二突部1134は、交差する二つの面を有し、該二つの面は、それぞれ前記第一面1134aと前記第二面1134bである。前記第一面1134a及び前記第二面1134bは、前記シリコン基板110と離れる方向にそれぞれ延伸して交差し、前記第二突部1134の先端を形成する。
【0023】
前記第二突部1134の前記第一面1134aは、角度αのまま、前記シリコン基板110と離れる方向に延伸し、且つ前記第二面1134bと交差する。前記第二面1134bは、角度βのまま、前記シリコン基板110と離れる方向に延伸し、且つ前記第一面1134aと交差する。前記第二突部1134の前記第二面1134bは、前記第一突部1132の前記第二面1132bと、前記シリコン基板110の表面に近接する部分で交差して、前記三次元ナノ構造体113の第一溝1136を形成する。また、隣接する二つの前記三次元ナノ構造体113の間には、第二溝1138が形成される。具体的には、一つの前記三次元ナノ構造体113の前記第二突部1134の前記第一面1134aと、隣接するもう一つの前記三次元ナノ構造体113の前記第一突部1132の前記第一面1132aとは、前記シリコン基板110の表面で交差して、前記第二溝1138を形成する。
【0024】
前記第一突部1132の前記第二面1132bが延伸して、前記シリコン基板110の前記第一表面112と平行な面となす角度βは0°(0°は含まず)〜90°であるが、前記角度αと同じでも、或いは同じでなくても良い。
【0025】
前記第一突部1132及び前記第二突部1134に関して、前記シリコン基板110の表面から、該シリコン基板110の表面と離れる方向に突出するその高さに対する制限はない。ここで、該前記第一突部1132と前記第二突部1134との高さとは、図4のh2で示すように、前記シリコン基板110の表面から前記第一突部1132或いは前記第二突部1134の最高点までの距離である。前記第一突部1132の高さと前記第二突部1134の高さは同じでも、或いは同じでなくても良い。前記第一突部1132の高さと前記第二突部1134の高さは、それぞれ150nm〜200nmである。また、前記第一突部1132、或いは前記第二突部1134の最高点の集合体は直線、折れ線或いは曲線でも良い。即ち、前記第一突部1132の前記第一面1132aと前記第二面1132bと交差して形成される線は、直線、折れ線或いは曲線である。これと同様に、前記第二突部1134の前記第一面1134aと前記第二面1134bと交差して形成される線は、直線、折れ線或いは曲線である。各々の前記三次元ナノ構造体113において、前記第一突部1132の最高点と前記第二突部1134の最高点との距離は、20nm〜100nmである。本実施例において、前記第一突部1132の高さと前記第二突部1134の高さは同じであり、その高さは、180nmである。また、前記第一突部1132の最高点と前記第二突部1134の最高点の集合体は直線である。
【0026】
前記X方向において、前記第一突部1132と前記第二突部1134の横断面は、台形或いは三角形である。本実施例において、前記第一突部1132と前記第二突部1134のX方向での横断面はそれぞれ三角形である。前記第一突部1132及び前記第二突部1134は、二つの突部を形成し、前記第一突部1132と前記第二突部1134とは接触して、接触線を形成する。また、前記第一突部1132と前記第二突部1134との横断面は互いに同じか、或いは同じでなくても良い。前記第一突部1132と前記第二突部1134との横断面が同じである場合、前記第一突部1132と前記第二突部1134とは対称構造を呈する。ここで、「対称構造」とは、前記第一突部1132と前記第二突部1134との横断面が接触線に対して、対称であることを指す。また、前記第一突部1132と前記第二突部1134とは非対称構造であっても良い。本実施例において、前記第一突部1132と前記第二突部1134とは対称構造を呈する。
【0027】
前記第一突部1132と前記第二突部1134との間に間隙がある、或いは間隔がなくても良い。製造における制限またはその他の条件の影響により、前記第一突部1132の前記第一面1132aと前記第二面1132bとは平面ではなく、例えば、その一部分の表面が弧面、折れ面であっても良い。この場合、前記第一面1132aと前記第二面1132bとが交差して形成された角度θは、尖った角ではなく、弧角などの他の形状である。しかし、該角の具体的な形状は、前記第一突部1132の全体の構造に影響しなければ良い。また、前記第二突部1134もその一部分の表面が弧面、折れ面である場合、前記第二面1134bと前記第二面1134aと交差して形成される角度θも、尖った角ではない。つまり、弧角などの他の形状であり、該角の具体的な形状は、前記第一突部1134の全体の構造に影響しなければ良い。
【0028】
各々のM型の前記三次元ナノ構造体113において、前記第一突部1132と前記第二突部1134との間には、前記第一溝1136がそれぞれ形成されている。前記第一溝1136の延伸する方向は、前記第一突部1132と前記第二突部1134の延伸する方向と同じである。前記第一溝1136の横断面の形状はV型である。該V型を呈する溝は、前記三次元ナノ構造体113の表面に位置し、前記三次元ナノ構造体113が延伸する方向に沿って延伸する。前記第一溝1136の深度h1は、前記第一突部1132或いは前記第二突部1134の最高点が位置する面と、前記第一溝1136の最低点が位置する面との間の最短距離を指す。即ち、前記第一溝1136の深度h1は、前記第一溝1136が前記シリコン基板110の方向に凹む最小距離である。各々のM型の前記三次元ナノ構造体113の前記第一溝1136の深度h1は同じである。前記第一溝1136の深度h1は、前記第二突部1134の高さh2より小さい。
【0029】
前記第二溝1138は、隣接するM型の前記三次元ナノ構造体113の間に形成される。前記第二溝1138の延伸方向は、M型の前記三次元ナノ構造体113の延伸方向と同じである。前記第二溝1138の横断面はV型或いは倒立の台形である。前記第二溝1138の深度h2は、前記第一突部1132或いは前記第二突部1134の最高点が位置する面から前記シリコン基板110の表面までの距離である。即ち、前記第二溝1138の深度h2は、前記第一溝1138が、前記シリコン基板110の方向に凹む最小距離である。前記X方向において、前記第二溝1138の横断面の形状及び面積は基本的に同じであるが、製造の制限またはその他の条件の影響により、誤差が生じ得る。しかし、該誤差は、横断面の全体の形状に影響しない程度であることが好ましい。
【0030】
前記第一溝1136と前記第二溝1138との横断面の形状、面積及び深度は異なる。前記第二溝1138の深度h2は、前記第一溝1136の深度h1より深い。好ましくは、前記第一溝1136の深度h1と前記第二溝1138の深度h2との比率は、1:1.2≦h1:h2≦1:3である。前記第一溝1136の深度h1は30nm〜120nmであり、前記第二溝1138の深度h2は100nm〜200nmである。本実施例において、前記第一溝1136の深度h1は80nmであり、前記第二溝1138の深度h2は180nmである。前記第一突部1132と前記第二突部1134との間の距離及び前記第一溝1136の深度h1と前記第二溝1138の深度h2の比率は、製品の具体的な条件に応じて選択することができる。
【0031】
前記三次元ナノ構造体113の幅とは、前記三次元ナノ構造体113のX方向での断面の、異なる水平面で、前記Y方向に沿って延伸する長さを指す。本実施例における前記三次元ナノ構造体113の最大幅λとは、前記三次元ナノ構造体113のX方向での断面の、前記シリコン基板110の表面で、Y方向に沿って延伸する長さを指す。M型の前記三次元ナノ構造体113の最大幅λは、100nm〜300nmである。前記シリコン基板110と離れる方向に沿って、前記三次元ナノ構造体113の幅は短くなる。即ち、各々の前記三次元ナノ構造体113において、前記第一突部1132の最高点と前記第二突部1134の最高点との間の距離は、三次元ナノ構造体113の最大幅より短い。
【0032】
近接する二つの前記第二溝1138の間の距離は、一つの前記第二溝1138の、前記シリコン基板110の方向に凹んだ最底点から、該一つの第二溝1138に近接するもう一つの前記第二溝1138の、前記シリコン基板110の方向に凹んだ最底点までの距離である。即ち、近接する二つの前記第二溝1138の間の距離は、前記三次元ナノ構造体113の最大幅である。また、近接する二つの前記三次元ナノ構造体113の間の距離λは同じか、或いは同じでなくても良い。前記距離λは、前記第一突部1132或いは前記第二突部1134の高さの増加によって増加し、その高さが減少する場合、該距離λも減少する。
【0033】
前記Y方向において、隣接する二つの前記三次元ナノ構造体113の距離λは0nm〜200nmである。前記λが0である場合、前記第二溝1138の横断面はV型である。しかし、前記λ>0である場合、前記第二溝1138の横断面は倒立の台形になる。前記Y方向において、複数の前記三次元ナノ構造体113は、前記シリコン基板110に、周期性を持って互いに平行に設置される。前記三次元ナノ構造体113の周期Pは100nm〜500nmである。更に、該周期Pと、前記三次元ナノ構造体113の最大幅λと、隣接する二つの前記三次元ナノ構造体113の距離λと、は、下記の式(1)を満たす。
【0034】
(式1)
P=λ+λ (1)
【0035】
前記P、前記λ及びλの単位はナノメートルである。前記周期Pが固定値である場合、λが増加すると、λは減少する。これとは逆に、λが減少すると、λは増加する。また、複数の前記三次元ナノ構造体113は、複数の周期性によって、前記シリコン基板110に形成されることもできる。即ち、一部の前記三次元ナノ構造体113は、周期Pで配列され、もう一部の前記三次元ナノ構造体113は周期P1(P≠P1)で配列されることができる。前記三次元ナノ構造体113が複数の周期性で配列する場合、その応用できる領域を拡大することができる。本実施例において、前記周期Pは約200nmであり、前記三次元ナノ構造体113の幅λは約190nmである。隣接する二つの前記三次元ナノ構造体113の距離λは約10nmである。本実施例において、前記三次元ナノ構造体113と、前記シリコン基板110とは一体構造である。従って、三次元ナノ構造体アレイは、その性能が更に優れている。
【0036】
前記ドープシリコン層120は、n型ドープシリコン層である。具体的には、前記ドープシリコン層120は、前記シリコン基板110の前記第二表面114上に形成され、且つ過量の例えば燐又はヒ素などを注入させて形成されたn型ドープシリコン層である。前記n型ドープシリコン層120の厚さは、10nm〜1mmである。前記シリコン基板110及び前記ドープシリコン層120は、pn接合を形成するので、前記太陽電池10は、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。前記シリコン基板110の前記第二表面114には、複数の前記三次元ナノ構造体113が形成されているので、前記シリコン基板110と前記ドープシリコン層120との間に形成されたpn接合の界面の面積が増大され、前記太陽電池10の太陽光を受け取る面積を増大させることができる。また、複数の前記三次元ナノ構造体113は、バンドギャップの特性を有するので、光量子が複数の前記三次元ナノ構造体113に滞留する時間が長くなり、前記複数の三次元ナノ構造体113で吸収できる光の周波数が広くなる。従って、前記太陽電池10の光吸収率を高め、前記太陽電池10の光電変換効率を高めることができる。
【0037】
更に、前記シリコン基板110の前記第二表面114には、複数の前記三次元ナノ構造体113が形成されているので、太陽光が前記シリコン基板110の前記第二表面114に照射されると、数回屈折―反射―屈折できるので、前記太陽光は繰り返して利用され、前記シリコン太陽電池の太陽光に対する吸収率を更に高めることができる。
【0038】
前記前面電極130は、前記ドープシリコン層120に部分的に接触する、又は完全に接触する。前記前面電極130が、前記ドープシリコン層120に部分的に接触する場合、前記前面電極130の一部は、複数の前記三次元ナノ構造体113によって、隣接する前記三次元ナノ構造体113の間に懸架される。また、もう一部は複数の前記三次元ナノ構造体113上の前記ドープシリコン層120と接触する。前記前面電極130が、前記ドープシリコン層120の全ての表面に被覆して配置される場合、前記前面電極130は、前記ドープシリコン層120に完全に接触することができる。前記前面電極130は、例えば、ITO又はカーボンナノチューブを含む良好な導電性及び透明性を有する材料からなる。この場合、前記太陽電池10の光電変換効率は高くなり、前記太陽電池10は良好な耐用性及び均一な抵抗などの特性を有することができる。従って、前記太陽電池10の性能を高めることができる。
【0039】
前記前面電極130がITOからなる場合、該前面電極130は、前記ドープシリコン層120の表面を被覆して、前記ドープシリコン層120に完全に接触する。
【0040】
前記前面電極130がカーボンナノチューブからなる場合、該前面電極130は、カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ構造体である。該カーボンナノチューブ構造体は、自立構造を有するカーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブフィルムを独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブフィルムを対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブフィルムの構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブフィルムを懸架させることができることを意味する。例えば、前記カーボンナノチューブ構造体は、複数の前記三次元ナノ構造体113によって部分的に懸架されて、該複数の三次元ナノ構造体113上の前記ドープシリコン層120と部分的に接触する。前記前面電極130は、前記太陽電池10のpn接合において、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換する際に生じる電流を収集することに用いられる。
【0041】
更に、前記太陽電池10は、パッシベーション層(passivating layer,図示せず)を含むことができる。該パッシベーション層は、前記シリコン基板110及び前記ドープシリコン層120の間に配置される。前記パッシベーション層は、酸化シリコン又は窒化シリコンからなり、その厚さは1オングストローム〜30オングストロームである。前記シリコン基板110及び前記ドープシリコン層120の間に該パッシベーション層を配置することにより、電子及び正孔が、前記シリコン基板110及び前記ドープシリコン層120の接触面に接合する速度を緩めるので、前記太陽電池10の光電変換効率を更に高める。
【0042】
前記太陽電池10において、前記シリコン基板110及び前記ドープシリコン層120の接触面にpn接合が形成され、前記ドープシリコン層120に生じた過量の電子は、前記シリコン基板110及び前記ドープシリコン層120の接触面に隣接して分布し、前記ドープシリコン層120から前記シリコン基板110への電場を形成する。太陽光は、前記太陽電池10の前記前面電極130側から入射して、前記シリコン基板110及び前記ドープシリコン層120の接触面に到達すると、前記シリコン基板110及び前記ドープシリコン層120の間に形成されたpn接合を衝撃して、複数の電子と正孔を生成する。前記複数の電子と正孔は、前記電場の作用下で分離し、電子は前記前面電極130へ移動し、正孔は前記背面電極100へ移動して、それぞれ前記前面電極130及び前記背面電極100に収集され、電流を形成する。
【0043】
図5を参照すると、前記太陽電池10の製造方法は、互いに対向する第一表面及び第二表面を含むシリコン基板1101を形成するステップ(S10)と、前記シリコン基板1101の第二表面に複数のM型の前記三次元ナノ構造体113を形成して、前記パターン化シリコン基板110を形成するステップ(S11)と、前記シリコン基板110のパターン化表面上に、ドープシリコン層120を形成するステップ(S12)と、前記ドープシリコン層120の少なくとも一部に、前面電極130を接触するように形成するステップ(S13)と、前記シリコン基板110の第一表面に背面電極100を形成して、前記背面電極100を前記シリコン基板110の第一表面とオーミック接触させるステップ(S14)と、を含む。
【0044】
前記ステップ(S10)において、互いに対向する前記第一表面及び前記第二表面を含む平板状の前記シリコン基板1101を提供する。該シリコン基板1101は、p型シリコン基板であり、該p型シリコン基板は、単結晶シリコン、多結晶シリコン或は他の半導体材料からなる。本実施例において、前記シリコン基板1101は、p型単結晶シリコン片であり、その厚さは200μm〜300μmである。前記シリコン基板1101のサイズ、厚さ、形状は限定されず、必要に応じて選択できる。
【0045】
図6を参照すると、前記ステップ(S11)は、前記シリコン基板1101の表面に、前記マスク層103を設置するステップ(S111)と、前記マスク層103をナノプリント及びエッチング法によって、パターニングするステップ(S112)と、前記シリコン基板1101をエッチングして、該シリコン基板1101の表面をパターニングした後、三次元ナノ構造体予備成形物1131を形成するステップ(S113)と、前記マスク層103を取り除き、複数の三次元ナノ構造体113を形成するステップ(S114)と、を含む。
【0046】
前記ステップ(S111)において、前記マスク層103は単層構造或いは複合構造である。前記マスク層103が単層構造である場合、該マスク層103の材料は、ZEP520A、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PS(ポリスチレン)、SOG(Silicon on Glass)或いは他の有機ケイ素オリゴマーなどであり、前記マスク層103によって、前記シリコン基板1101の被覆される部分を保護する。本実施例において、前記マスク層103は複合マスク層である。前記マスク層103は第一マスク層1032及び第二マスク層1034を含む。前記第一マスク層1032及び前記第二マスク層1034は、前記シリコン基板1101に積層され、前記第二マスク層1034は前記第一マスク層1032に被覆される。前記シリコン基板1101は、前記第一マスク層1032の一つの表面に隣接し、前記第二マスク層1034は、前記第一マスク層1032が前記シリコン基板1101と隣接する表面の反対側の表面に隣接し、且つ前記第一マスク層1032を覆う。前記第一マスク層1032と前記第二マスク層1034の材料は限定されず、必要とするエッチングする深度及びエッチング用気体などに応じて選択できる。前記第一マスク層1032は、ZEP520A、PMMA、PS、SAL601、ARZ720等から、前記第二マスク層1034は、HSQ、SOG(Silicon on glass)或いは他の有機ケイ素オリゴマーなどからなる。本実施例において、前記第一マスク層1032の材料はZEP520Aであり、前記第二マスク層1034の材料はHSQである。スクリーン印刷法或いはスピンコーティング法によって、前記第一マスク層1032及び前記第二マスク層1034は、前記シリコン基板1101の表面に堆積される。
【0047】
前記ステップ(S111)は、前記第一マスク層1032を形成するステップ(S111a)と、前記第二マスク層1034を形成するステップ(S111b)と、を含む。
【0048】
前記ステップ(S111a)において、第一段階では、前記シリコン基板1101の表面を洗浄し、前記シリコン基板1101の表面に、ZEP520Aをスピンコーティングする。該スピンコーティングの回転速度は500回転/分〜6000回転/分であり、時間は0.5分間〜1.5分間である。第二段階では、140℃〜180℃の温度で乾燥させて、前記シリコン基板1101の表面に前記第一マスク層1032を形成する。乾燥時間は3分間〜5分間である。この際、前記第一マスク層1032の厚さは100nm〜500nmに達する。
【0049】
前記ステップ(S111b)において、第一段階では、高圧の条件下で、前記第一マスク層1032の表面に、前記HSQをスピンコーティングする。該スピンコーティングの回転速度は2500回転/分〜7000回転/分であり、時間は0.5分〜2分間である。第二段階では、前記HSQを固化して、前記第二マスク層1034を形成する。この際、前記第二マスク層1034の厚さは100nm〜500nmであるが、好ましくは、300nm〜500nmである。前記第二マスク層1034は構造の安定性に優れ、室温でプレスでき、且つプレスの解像度が10nm以下に達する。
【0050】
また、前記ステップ(S111a)と前記ステップ(S111b)の間に更に一つのステップ(S111c)を含むことができる。該ステップ(S111c)において、前記第一マスク層1032の表面に一つの過渡層(図示せず)を形成する。本実施例において、該過渡層はシリカからなり、且つ前記第二マスク層1034をエッチングする際、前記第一マスク層1032を保護することに用いられる。
【0051】
前記ステップ(S112)は、ナノパターン化表面を有する金型200を提供するステップ(S112a)と、前記金型200のナノパターン化表面を前記第二マスク層1034に貼合し、常温でプレスした後、分離させるステップ(S112b)と、形成された凹溝の底部の前記第二マスク層1034を除去し、前記第一マスク層1032を露出させるステップ(S112c)と、凹溝の部分に対応する前記第一マスク層1032を除去し、前記シリコン基板1101を露出させ、パターニングした前記マスク層103を形成するステップ(S112d)と、を含む。
【0052】
前記ステップ(S112a)において、前記金型200は、硬質材料、或いは軟質材料からなる。前記金型200が硬質材料からなる場合、前記金型200の材料は、例えば、ニッケル、シリコン或いはシリカである。前記金型200が軟質材料からなる場合、前記金型200の材料は、PET、PMMA、PS(ポリスチレン)、またはPDMS(ポリジメチルシロキサン)である。前記金型200の表面には、ナノパターンが形成されている。ナノパターンとは、複数の突部が間隔をおいて配列された複数のストリップ状の突部、或いは間隔をおいて配列された複数の同心円状の突部構造、或いは同心四角状の突部構造体からなるアレイである。本実施例において、前記金型200の表面に形成されたナノパターンとは、複数の突部が間隔をおいて配列されたアレイである。前記複数の突部はストリップ状の突部構造であり、且つ同じ方向に沿って延伸する。隣接する二つのストリップ状の突部構造の間には、凹溝が形成されている。前記ストリップ状の突部構造と凹溝との、それらの延伸する方向での断面は、それぞれ矩形である。前記複数の突部の延伸する方向と垂直する方向に沿った、前記ストリップ状の突部構造の幅は限定されず、必要に応じて選択できる。本実施例において、前記金型200の材料はシリカであり、前記ストリップ状の突部構造の幅は50nm〜200nmであり、前記凹溝の幅は50nm〜200nmである。また、前記ストリップ状の突部構造の幅と溝の幅は同じでも、或いは同じでなくても良い。
【0053】
前記ステップ(S112b)において、常温下で、前記金型200を通じて、前記シリコン基板1101までに圧力を加えることによって、前記金型200の表面のナノパターンを、前記第二マスク層1034に転写させる。具体的には、先ず、ナノパターンを有する前記金型200を、前記第二マスク層1034と貼合させ、次に、真空度が1×10-1mbar〜1×10-5mbarであり、圧力が2ポンド/平方フット〜100ポンド/平方フットである条件で、前記金型200と前記第二マスク層1034とを貼合し続け、この状態を2分間〜30分間保持し、最後に、前記金型200と前記第二マスク層1034とを分離させる。これにより、前記金型200の表面のパターニングしたナノパターンは、記第二マスク層1034に転写される。
【0054】
前記第二マスク層1034の表面に転写されたパターニングしたナノパターンは、並列に延伸する複数のストリップ状の突部構造を含み、隣接するストリップ状の突部構造間には、凹溝が形成され、且つ、前記第二マスク層1034の凹溝の大きさ及び形状は、前記金型200の突部の大きさ及び形状と対応し、前記第二マスク層1034のストリップ状の突部の大きさ及び形状は、前記金型200の凹溝の大きさ及び形状と対応する。圧力を加える過程において、前記第二マスク層1034は、前記金型200の突部に圧縮されて、薄くなり、前記第二マスク層1034中に凹溝を形成する。これにより、凹溝の底部における前記第二マスク層1034が薄層となり、前記第一マスク層1032の表面に付着する。
【0055】
前記ステップ(S112c)において、プラズマエッチング法によって、前記凹溝の底部における前記第二マスク層1034を除去する。本実施例において、前記凹溝の底部に残留した前記第二マスク層1034は、反応性プラズマエッチング法によって除去し、前記第一マスク層1032を露出させる。具体的には、パターン化された前記第二マスク層1034が形成された前記基板前記シリコン基板1011を、反応性プラズマエッチングのシステムに設置し、該反応性プラズマエッチングのシステムによって、四フッ化炭素(CF)のプラズマを形成する。その後、該形成された前記四フッ化炭素のプラズマは拡散し、前記第二マスク層1034に移動する。この際、前記凹溝底部の前記第二マスク層1034は、前記四フッ化炭素プラズマによってエッチングされる。該四フッ化炭素プラズマエッチングのシステムの仕事率は10W〜150Wであり、該四フッ化炭素プラズマの導入速度は、2sccm〜100sccmであり、気圧は、0.5Pa〜15Paであり、前記四フッ化炭素プラズマでエッチングする時間は、2秒間〜4分間である。本実施例において、前記四フッ化炭素プラズマエッチングシステムの仕事率は40Wであり、該該四フッ化炭素プラズマの導入流量は26sccmであり、気圧は2Paであり、エッチング時間は10秒間である。以上の方法により、前記凹溝の底部における前記第二マスク層1034は、前記四フッ化炭素プラズマにエッチングされて、前記第一マスク層1032を露出させる。同時に、前記第二マスク層1034の突部構造はエッチングされて薄くなる。しかし、この際、前記第二マスク層1034のナノパターンは、完全な形態を保持することができる。
【0056】
前記ステップ(S112d)において、前記凹溝の底部の前記第一マスク層1032を、酸素プラズマエッチングのシステム中で、酸素プラズマによってエッチングして、前記シリコン基板1101を露出させる。該酸素プラズマエッチングのシステムの仕事率は10W〜150Wであり、前記酸素プラズマの導入速度は2sccm〜100sccmであり、形成される気圧は0.5Pa〜15Paであり、酸素プラズマにエッチングされる時間は5秒間〜5分間である。本実施例において、前記酸素プラズマエッチングシステムの仕事率は40Wであり、該酸素プラズマの導入流量は40sccmであり、気圧は2Paであり、エッチング時間は120秒である。以上の方法により、前記凹溝と対応する前記第一マスク層1032は、酸化によってエッチングされ、前記第二マスク層1034は、前記凹溝と対応しない領域を被覆し、エッチング過程において、前記第一マスク層1032の解像度を有効に保持する。従って、前記第二マスク層1034のナノパターンを、前記第一マスク層1032に複製でき、これにより、前記マスク層103は全体的にパターン化される。
【0057】
前記マスク層103は、前記シリコン基板1101の表面に形成される複数の突部構造1031を含む。隣接する該突部構造1031の間には、溝1033がそれぞれ形成される。前記溝1033と対応する領域における前記シリコン基板1101の表面は露出され、前記突部構造1031は、前記溝1033と対応する領域以外の領域を被覆する。また、エッチング気体全体の流動速度及びエッチング方向を抑制させることにより、エッチングが終わった後に形成された前記突部構造1031の側壁は、前記シリコン基板1101とほぼ垂直となる。これにより、後続の前記シリコン基板1101のエッチング中において形成される前記三次元ナノ構造体予備成形物の形状の一致性及び均一性を、保証することができる。前記第一マスク層1032をエッチングする過程において、前記第二マスク層1034の突部構造は多少エッチングされる。しかし、前記第二マスク層1034がエッチングされる速度は、前記第一マスク層1032がエッチングされる速度より遅い。従って、前記第二マスク層1034のナノパターンは、基本的に保持される。
【0058】
前記ステップ(S113)において、前記シリコン基板1101を、誘導結合プラズマエッチングのシステムに設置した後、エッチング用気体を利用して、前記シリコン基板1101をエッチングする。エッチングする過程において、前記溝1033に対応する部分の前記シリコン基板1101は、該気体によって除去され、前記シリコン基板1101の表面に凹溝が形成される。
【0059】
更に、前記エッチングする過程は、前記マスク層103に被覆されない前記シリコン基板1101の表面をエッチングして、前記シリコン基板1101の表面に複数の凹溝を形成し、該複数の凹溝の深度は、全て基本的に同じであるステップ(S113a)と、プラズマの衝突作用によって、前記マスク層103中の隣接する二つの前記突部構造1031は、次第に相対して傾倒し、前記突部構造1031の頂部(前記シリコン基板1101と離れる一端)が二つずつ互いに接近して、最後は接触するステップ(S113b)と、を含む。
【0060】
前記ステップ(S113a)において、エッチングする過程で、エッチングに採用した気体は、前記マスク層103に被覆されない前記シリコン基板1101と反応して、保護層を形成する。該保護層は、前記シリコン基板1101がさらにエッチングされることを阻止できるので、前記シリコン基板1101のエッチングする面積は徐々に小さくなる。即ち、前記シリコン基板1101に形成された凹溝の広さは、前記シリコン基板1101のエッチング方向に沿って小さくなり、該凹溝の壁は、前記シリコン基板1101の表面とほぼ垂直となる。同時に、前記エッチング用気体は、前記マスク層103の前記突部構造1031の頂部をエッチングすることによって、前記突部構造1031の頂部の幅を次第に狭くさせる。前記エッチングする過程において、前記エッチング用気体は、前記マスク層103もエッチングする。しかし、前記マスク層103がエッチングされる速度は、前記シリコン基板1101の表面がエッチングされる速度より遅い。従って、前記シリコン基板1101がエッチングされて、前記複数の凹溝が形成される過程において、前記マスク層103の形態及び分布を保持することができる。
【0061】
前記ステップ(S113b)は、以下の三つのサブステップを含む。
【0062】
第一サブステップにおいて、気体によってエッチングする過程中に、プラズマの衝突作用によって、隣接する二つの前記突部構造1031は、次第に相対して傾倒し、前記突部構造1031の頂部(前記シリコン基板1101と離れる一端)は二つずつ互いに接近して、最後は接触する。
【0063】
第二サブステップにおいて、隣接する二つの前記突部構造1031の頂部は、次第に互いに接近して接触するので、前記シリコン基板1101の、前記突部構造1031の頂部の接触する部分に対応する部分のエッチングする速度は遅くなる。即ち、前記突部構造1031の頂部の接触する部分に対応する位置に形成された凹溝の幅は、エッチングされる深度に伴い狭くなり、更に、V型構造の凹溝を形成し、この際、該凹溝の深さは比較的浅い。従って、エッチングする気体は同じエッチングする速度で、未だ接触していない前記突部構造1031間において、前記シリコン基板1101をエッチングする。これにより、未だ接触していない前記突部構造1031の間に形成されている溝の深度は、前記突部構造1031の頂部における接触する部分に形成される凹溝より深い。
【0064】
第三サブステップにおいて、前記突部構造1031の頂部が二つずつ接触した後、気体は、接触する部分に被覆された前記シリコン基板1101をエッチングし続けることができない。従って、前記シリコン基板1101の表面に、前記第一溝1136が形成される。同時に、気体は、接触していない二つの前記突部構造1031間における前記基板101をエッチングし続け、前記第二溝1138を形成する。これにより、前記第二溝1138の深度は前記第一溝1136の深度より深くなり、三次元ナノ構造体予備成形物1131を形成する。
【0065】
本実施例において、前記気体は混合気体であり、該混合気体はCl、BCl、O、Arを含む。プラズマエッチングのシステムの仕事率は10W〜150Wであり、混合気体の導入速度は8sccm〜150sccmであり、形成される気圧は0.5Pa〜15Paであり、エッチングする時間は5秒〜5分間である。その中で、前記Clの導入速度は2sccm〜60sccmであり、前記BClの導入速度は2sccm〜30sccmであり、前記Oの導入速度は3sccm〜40sccmであり、前記Arの導入速度は1sccm〜20sccmである。エッチングする速度と精確性を保証するために、混合気体の導入速度は、好ましくは、40sccm〜100sccmである。本実施例において、前記プラズマエッチングのシステムの仕事率は70Wであり、プラズマの導入流動は40sccmであり、形成される気圧は2Paであり、エッチングする時間は120秒である。その中で、前記Clの導入速度は26sccmであり、前記BClの導入速度は16sccmであり、前記Oの導入速度は20sccmであり、前記Arの導入速度は10sccmである。
【0066】
前記マスク層103及びエッチングする気体は制限されず、必要に応じて選択できる。エッチングする過程において、前記マスク層103における前記突部構造1031が二つずつ接触することができるならば、純粋な気体、或いは混合気体でも良い。また、必要とする三次元ナノ構造体のサイズと寸法によって、気体の導入速度、気圧、エッチング時間、気体の比率などを選択できる。
【0067】
前記ステップ(S114)において、有機溶剤によって、前記マスク層103を溶解して除去した後、前記三次元ナノ構造体予備成形物1131を形成する。該有機溶剤は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、ブタノン、シクロヘキサン、ヘキサン、メタノール或いはエタノールなどである。本実施例において、前記有機溶剤はブタノンである。前記マスク層103はブタノンに溶解されて、前記シリコン基板1101から脱離する。前記マスク層103を除去した後、前記シリコン基板110を形成する。即ち前記シリコン基板110に複数の前記三次元ナノ構造体113が形成される。前記三次元ナノ構造体113と前記シリコン基板110は一体成型である。
【0068】
本実施例において、前記マスク層103をナノプリント及びエッチングの方法によって、前記マスク層103に複数のストリップ状の突部構造及び凹溝を形成する。しかし、前記マスク層103を処理する方法はこれらに限定されず、パターニングされた前記マスク層103が、複数のストリップ状の突部構造を含み、隣接するストリップ状突部構造の間に凹溝を形成し、前記マスク層103が、前記シリコン基板1101に設置された後、前記シリコン基板1101の表面が前記凹溝によって、露出されれば良い。又は、他の媒介或いは基板に、前記パターニングされた前記マスク層103を形成した後、前記マスク層103が前記シリコン基板1101の表面に設置されれば良い。
【0069】
(実施例2)
図7を参照すると、実施例2は、太陽電池20を提供する。該太陽電池20は、順次に積層された背面電極100と、シリコン基板110と、ドープシリコン層120と、前面電極130と、ナノ金属層140と、を含む。前記シリコン基板110には、複数の三次元ナノ構造体113が形成されている。前記太陽電池20は、実施例1の太陽電池10と比べて、次の異なる点がある。前記太陽電池20は、更にナノ金属層140を含み、該ナノ金属層140は、前記ドープシリコン層120と前面電極130との間に設置され、前記ドープシリコン層120の前面電極130と隣接する表面に被覆される。前記ナノ金属層140は、複数の金属ナノ粒子が展開する単層構造体又は多層構造体である。前記ナノ金属層140の厚さは2nm〜200nmであるが、好ましくは50nmである。前記ナノ金属層140は、金、銀、銅、鉄及びアルミニウムなどのいずれか一種からなる。この場合、前記前面電極130は、前記ナノ金属層140に部分的に接触する、又は完全に接触する。前記前面電極130が、前記ナノ金属層140に部分的に接触する場合、前記前面電極130の一部は、前記複数の三次元ナノ構造体113によって、隣接する三次元ナノ構造体113の間に懸架され、別の一部は前記複数の三次元ナノ構造体113上の前記ナノ金属層140と接触する。前記前面電極130の全ての表面が前記ナノ金属層140に被覆される場合、前記前面電極130は、前記ナノ金属層140に完全に接触する。
【0070】
太陽光が前記前面電極130を通じて、前記ナノ金属層140に照射した際、前記ナノ金属層140の表面にプラズマが発生するので、前記ナノ金属層140に隣接した前記ドープシリコン層120の光量子の吸収率を増加させる。また、前記ナノ金属層140の表面のプラズマによって形成された電磁場は、pn接合箇所に形成された複数の電子と正孔の分離を有利にさせる。
【0071】
前記ナノ金属層140は、電子ビーム蒸着方法によって前記ドープシリコン層120の表面に被覆される。
【0072】
図8を参照すると、前記太陽電池20の製造方法は、互いに対向する第一表面及び第二表面を含むシリコン基板1101を形成する(S20)と、前記シリコン基板1101の第二表面に複数のM型の三次元ナノ構造体113を設置し、シリコン基板110を形成するステップ(S21)と、前記複数のM型の三次元ナノ構造体113の表面にドープシリコン層120を形成するステップ(S22)と、前記ドープシリコン層120上に、ナノ金属層140を形成するステップ(S23)と、前面電極130を、前記ナノ金属層140の少なくとも一部に接触するように形成するステップ(S24)と、前記シリコン基板110の前記第一表面に背面電極100を形成し、前記背面電極100を前記シリコン基板の第一表面とオーミック接触させるステップ(S25)と、を含む。
【0073】
前記太陽電池20の製造方法は、実施例1の太陽電池10の製造方法と比べて、次の異なる点がある。該異なる点とは、前記複数のM型の前記三次元ナノ構造体113の表面にドープシリコン層を形成した後、更に、前記ドープシリコン層の上に前記ナノ金属層140を形成することである。
【符号の説明】
【0074】
10、20 太陽電池
100 背面電極
103 マスク層
110 シリコン基板
112 第一表面
113 三次元ナノ構造体
114 第二表面
120 ドープシリコン層
130 前面電極
140 ナノ金属層
1031 突部構造
1032 第一マスク層
1033 溝
1034 第二マスク層
1101 シリコン基板
1131 三次元ナノ構造体予備成形物
1132 第一突部
1134 第二突部
1136 第一溝
1138 第二溝
1132a、1134a、 第一面
1132b、1134b、 第二面
200 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面電極と、シリコン基板と、ドープシリコン層と、前面電極と、を含む太陽電池であって、
前記シリコン基板は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を含み、前記シリコン基板の前記第二表面には、複数の三次元ナノ構造体が形成され、
前記背面電極は、前記シリコン基板の第一表面に設置され、該第一表面とオーミック接触し、
前記ドープシリコン層は、前記シリコン基板の第二表面に形成され、
前記前面電極は、前記ドープシリコン層の少なくとも一部に形成され、
前記三次元ナノ構造体は、第一突部と第二突部を含み、前記第一突部と前記第二突部とは接触して並列し、隣接する前記第一突部と前記第二突部との間には、第一溝が形成され、隣接する前記三次元ナノ構造体の間には、第二溝が形成され、前記第二溝の深度は第一溝より深い三次元ナノ構造体であることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
対向する第一表面及び第二表面を含むシリコン基板を形成する第一ステップと、
前記シリコン基板の第二表面に複数の三次元ナノ構造体を形成する第二ステップと、
前記シリコン基板の第二表面にドープシリコン層を形成する第三ステップと、
前記ドープシリコン層の少なくとも一部に前面電極を形成する第四ステップと、
前記シリコン基板の第一表面に背面電極を形成し、前記背面電極を前記シリコン基板の第一表面とオーミック接触させる第五ステップと、を含み、
前記三次元ナノ構造体は、第一突部と第二突部を含み、前記第一突部と前記第二突部とは接触して並列し、隣接する前記第一突部と前記第二突部との間には、第一溝が形成され、隣接する前記三次元ナノ構造体の間には、第二溝が形成され、前記第二溝の深度は第一溝より深い三次元ナノ構造体であることを特徴とする太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98547(P2013−98547A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229634(P2012−229634)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】