説明

太陽電池封止材用樹脂組成物

【課題】本発明は、透明性が良好で、太陽電池の初期変換効率が向上し、時間が経過しても波長変換効果が低下しにくく、さらには樹脂劣化に伴う酸を捕捉することで、経時における保護部材との密着性の低下が少ない太陽電池封止材用樹脂組成物、及び太陽電池封止材を提供することを目的とする。
【解決手段】層状複合金属化合物(A)と、下記一般式(1)で表される化合物(C)と、エチレン共重合体(D)とを含むことを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止材に用いる太陽電池封止材用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムは、地球温暖化対策や、枯渇懸念のある化石燃料代替の観点から、クリーンで持続的なエネルギーシステムとして、世界中で関心が高まっている。そのため、太陽電池市場は、年率3割近い成長率で急拡大している。現在主流の太陽光発電は、結晶シリコンやアモルファスシリコン等のシリコン系やCdTe、CIGS等の化合物半導体系の太陽電池モジュールと周辺装置から構成されているが、太陽光発電システムのさらなる拡大には、発電コストの低減が最大の課題である。ここ数年、発電コストは従来に比べて大幅に低減しているものの、現時点の発電コストは他のエネルギーと比較し依然割高であり、太陽電池の高効率化、長寿命化などの技術開発が求められている。
【0003】
一方、太陽電池モジュールの高効率化には、受光性、透明性、電気特性等の各種性能の向上が必要とされ、発電素子を環境から守る封止材にもこれらの性能が求められている(特許文献1、2、3参照)。
【0004】
しかしながら、多くの封止材が、もとから高い透明性を備える樹脂を用いているため、大幅な透明性の向上は難しい。また、結晶系のシリコン発電素子は、特性上、太陽光の紫外線領域は分光感度が低く、太陽光を有効に活用できていない。そこで、特許文献4、5では、紫外光を吸収して、可視光領域で発光する有機金属錯体を配合して、変換効率が向上するとした、封止材、太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−183381号公報
【特許文献2】特開2009−152543号公報
【特許文献3】特開2008−153520号公報
【特許文献4】国際公開第2008/047427号
【特許文献5】特開2010−258293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献4、5では、有機金属錯体の配位子に耐光性が無いため、連続光照射によって急速な変換効率の低下が起こったため、実用的ではなかった。
【0007】
本発明は、透明性が良好で、太陽電池の初期変換効率が向上し、時間が経過しても波長変換効果が低下しにくく、さらには樹脂劣化に伴う酸を捕捉することで、経時における保護部材との密着性の低下が少ない太陽電池封止材用樹脂組成物、及び太陽電池封止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも層状複合金属化合物(A)と、下記一般式(1)で表される化合物(C)と、エチレン共重合体(D)とを含む太陽電池封止材用樹脂組成物である。
【0009】
一般式(1)
【化1】

【0010】
(式中、R1はハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表す。R2、R3、R6、R7、R8は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表す。R4、R5、R9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいアルコキシ基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
上記構成の本発明は、層状複合金属化合物(A)と、特定構造の化合物(C)とを共存させることによって錯体を形成し、紫外線を吸収することで可視領域の光を発する。この波長変換により、太陽電池セルの受光量が増すことで太陽電池の初期変換効率が向上できる。また、化合物(C)は、ケトエノール互変異性体が存在するため、耐光性に富んでおり波長変換効果が長期間持続できる。さらに層状複合金属化合物(A)によって、太陽電池封止材中に浸入した水や、樹脂劣化等により発生した酸を中和することで太陽電池の発電素子の劣化を低減し、経時変換効率の低下を抑制している。
【0012】
本発明により、透明性が良好で、太陽電池の初期変換効率が向上し、時間が経過しても波長変換効果が低下しにくく、さらには樹脂劣化に伴う酸を捕捉することで、時間が経過した後でも保護部材との密着性の低下が少ない太陽電池封止材用樹脂組成物を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】太陽電池モジュールサンプルの一例を示す模式的説明図である。
【図2】耐久試験用サンプルを示すための説明図である。
【図3】耐久試験用サンプルを示すための説明図である。
【図4】耐久試験用サンプルを示すための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「任意の数A以上、任意の数B以下」及び「任意の数A〜任意の数B」の記載は、数A及び数Aより大きい範囲であって、数B及び数Bより小さい範囲を意味する。
【0015】
本発明は、層状複合金属化合物(A)と、下記一般式(1)で表される化合物(C)と、エチレン共重合体(D)とを含む太陽電池封止材用樹脂組成物である。そして層状複合金属化合物(A)と、一般式(1)で表される化合物(C)を組み合わせることで、波長変換効果を有する蛍光材料として機能する。ここで、蛍光材料とは、紫外線を吸収して、蛍光を発する化合物をいい、吸収波長および発光波長は、金属化合物の金属種、配位子となる有機化合物構造による。また、波長変換効果とは、ある波長を他の波長に変換することをいい、本発明では分光感度の低い紫外部の光を、感度の高い可視部への光に変換することをいう。波長変換効果は、吸収波長、発光波長、発光強度や、太陽電池素子への受光量により決まるが、太陽光のうち、発電寄与率の小さい紫外線を吸収し、可視光長波長領域に発光するようなストークスシフトの大きいものが好ましい。
【0016】
波長変換機能を有する化合物として、無機蛍光体、有機蛍光体、有機金属錯体等が知られている。しかし、無機蛍光体は、屈折率の高いものが多い。そのため、エチレン共重合体に添加した場合、エチレン共重合体との屈折率差が大きくなり、光散乱を起こして、発電素子表面での反射を増大させ、変換効率が低下する。また、有機蛍光体は、紫外線の連続照射により、化合物が劣化する。この劣化は、有機金属錯体の配位子でも同様に起こり、波長変換機能が長期間維持できない。また、有機金属錯体の場合、金属イオン種によっては、樹脂の自動酸化反応を促進させる触媒作用を持ち、樹脂、その他の添加剤を劣化させる。金属による劣化作用は、温度や湿度に比例して大きくなる。さらに熱による劣化も作用するため太陽電池用途へ使用することは極めて困難であった。
【0017】
そこで、本発明は、太陽電池封止材用途のように長期間紫外線に曝露される状態であっても、層状複合金属化合物(A)またはその焼成物と、特定の化合物(C)を組み合わせることにより、紫外光による劣化が少ないため波長変換効果を長期間維持できる。さらには、樹脂劣化に伴う酸を捕捉し、長期間にわたり裏面保護シートのような保護部材との密着性の低下を抑制できる効果も見出した。
【0018】
本発明の層状複合金属化合物(A)は、層状複合金属化合物であることが重要である。
具体的には、ハイドロタルサイト、ゼオライトなどが好ましい。これらの中でもハイドロタルサイトが好ましい。層状複合金属化合物とは、層間イオン交換性と、酸との中和反応性を有する層状の形態をした化合物である。そして、これらを太陽電池モジュールに含むことで、太陽電池封止材中に浸入した水や、劣化等によりエチレン酢酸ビニル共重合体が加水分解して発生した酸を層間へ取り込み、また、中和によって太陽電池封止材や発電素子の劣化を防止する効果を奏する(以下、酸・水捕捉効果ともいう)。なお、酸・水捕捉効果は、層間に入り込むイオンの電荷密度の大小により決まり、価数が高く、イオン半径の小さい陰イオンの方が層間に取り込まれやすい。本発明における層状複合金属化合物の効果は、透明性向上と酸・水捕捉効果の効率化を図り、経時における保護部材との密着性低下抑制と変換効率低下を抑制することができる。
【0019】
層状複合金属化合物(A)は、下記一般式(2)、または一般式(3)で表される層状複合金属化合物がより好ましい。
【0020】
Mg1-a・Ala(OH)2・Ann-a/n・cH2O 一般式(2)
(0.2≦a≦0.35、0≦c≦1、An:n価の陰イオン)
【0021】
(MdMg1-d1-e・Ale(OH)2・Ann-e/n・fH2O 一般式(3)
(MはZnおよびCaより選ばれる金属を示し、dおよびeはそれぞれ式 0≦d≦1、0.2≦e≦0.35、0≦f≦1、An:n価の陰イオン)
【0022】
一般式(2)において、Al含有量割合aは0.2〜0.35が好ましい。0.2以上になることで層状複合金属化合物を製造しやすくなる。一方、0.35以下になることで、エチレン共重合体(A)との屈折率差を減らし透明性をより向上し易くなる。また、アニオンAnn-の種類は、特に限定されるものではないが、例えば水酸イオン、炭酸イオン、ケイ酸イオン、有機カルボン酸イオン、有機スルフォン酸イオン、有機リン酸イオンなどが挙げられる。なお一般式(2)における指数aは、層状複合金属化合物を酸で溶解し、「プラズマ発光分光分析装置 SPS4000(セイコー電子工業(株))」で分析して求めた。
【0023】
一般式(3)において、ZnおよびCa含有量割合dは0〜1が好ましい。またAl含有量割合eは0.2〜0.35が好ましい。0.2以上になることで層状複合金属化合物を製造しやすくなる。0.35以下になることで、エチレン共重合体(A)との屈折率差を減らし透明性をより向上し易くなる。また、アニオンAnn-の種類は、特に限定されるものではないが、例えば水酸イオン、炭酸イオン、ケイ酸イオン、有機カルボン酸イオン、有機スルフォン酸イオン、有機リン酸イオンなどが挙げられる。
【0024】
層状複合金属化合物(A)の金属は、金属による樹脂劣化防止の観点から、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、カルシウムが好ましく、マグネシウム、アルミニウムがより好ましい。金属による樹脂劣化作用があると、太陽電池封止材中に遊離した金属が、樹脂の酸化の促進や、樹脂や蛍光材料の劣化を促進するため、波長変換効果を長期間維持することが困難となる恐れがある。
【0025】
本発明において層状複合金属化合物(A)は、層状複合金属化合物(A)の焼成物(B)であることが好ましい。また焼成温度は、150〜850℃が好ましい。この焼成物(B)は、層状複合金属化合物より高い酸・水捕捉効果を発揮する。また、焼成物は酸や水を捕捉することで、化学組成が変化し、屈折率が下がることでエチレン共重合体との屈折率差が小さくなるため、経時で透明性がより向上する傾向にある。
【0026】
層状複合金属化合物(A)の製造法について、1例を挙げて説明する。
【0027】
マグネシウム塩水溶液、亜鉛塩水溶液、カルシウム塩水溶液の少なくとも1種とアニオンを含有したアルカリ性水溶液とおよびアルミニウム塩水溶液とを混合し、pHが8〜14の範囲の混合溶液とした後、該混合溶液を60〜100℃の温度範囲で熟成して得ることができる。
【0028】
熟成反応中のpHは9〜14が好ましく、10〜14がより好ましい。pHが9未満の場合、板面径や厚みの不均一な層状複合金属化合物になる恐れがある。
【0029】
熟成温度が60℃未満及び100℃以上では板面径の不均一な層状複合金属化合物になる恐れがある。より好ましい熟成温度は70〜100℃である。
【0030】
層状複合金属化合物の熟成反応のエージング時間は特に限定されないが、例えば2〜24時間程度が好ましい。2時間未満の場合には、板面径や厚みの不均一な層状複合金属化合物になる恐れがある。24時間を超える熟成は経済的ではない。
【0031】
前記アニオンを含むアルカリ性水溶液としては、アニオンを含む水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液が好ましい。
【0032】
アニオンを含む水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、有機カルボン酸塩、有機スルフォン酸塩、有機リン酸塩などの水溶液が好ましい。
【0033】
水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、尿素水溶液などが好ましい。
【0034】
本発明における金属塩水溶液としては、硫酸金属水溶液、塩化金属水溶液及び硝酸金属水溶液などを使用することができ、好ましくは塩化マグネシウム水溶液である。また、酸化金属粉末や水酸化金属粉末のスラリーを代用しても良い。
【0035】
本発明におけるアルミニウム塩水溶液としては、硫酸アルミニウム水溶液、塩化アルミニウム水溶液及び硝酸アルミニウム水溶液などを使用することができ、好ましくは硫酸アルミニウム水溶液、塩化アルミニウム水溶液である。また、酸化アルミニウム粉末や水酸化アルミニウム粉末のスラリーを代用しても良い。
【0036】
アニオンを含有するアルカリ水溶液、マグネシウム、亜鉛、カルシウムの少なくとも1種及びアルミニウムの混合順序は、特に限定されるものではなく、また、各水溶液あるいはスラリーを同時に混合してもよい。好ましくは、アニオンを含有するアルカリ水溶液に、あらかじめマグネシウム、亜鉛、カルシウム及びアルミニウムを混合した水溶液若しくはスラリーを添加する。
【0037】
また、各水溶液を添加する場合には、該水溶液を一度に添加する場合、又は連続的に滴下する場合のいずれで行ってもよい。
【0038】
一般式(2)、(3)で示される層状複合金属化合物のpHは8.0〜10.0が好ましい。pHが8.0以上になることで、酸との中和効率がより向上する。一方、pHが10.0以下になることで、金属が溶出しなくなることでエチレン酢酸ビニル共重合体が劣化しにくくなる。なお層状複合金属化合物のpHは、試料5gを300mlの三角フラスコに秤り取り、煮沸した純水100mlを加え、加熱して煮沸状態を約5分間保持した後、栓をして常温まで放冷し、減量に相当する水を加えて再び栓をして1分間振り混ぜ、5分間静置した後、得られた上澄み液のpHをJIS Z8802−7に従って測定し、得られた値を層状複合金属化合物のpHとした。
【0039】
焼成物(B)の製造は、層状複合金属化合物(B)を150〜850℃で焼成することが好ましく、200℃から750℃で焼成することがより好ましい。焼成時間は焼成温度に応じて調整すればよいが、1〜24時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。また、焼成時の雰囲気は酸化雰囲気、非酸化雰囲気いずれでも構わないが、水素のような強い還元作用を持つガスは使用しないほうが良い。
【0040】
本発明において一般式(1)で表される化合物(C)は、ケトエノール互変異性体をとりうる構造であることが重要である。化合物(C)は、ケトエノール互変異性体が存在することにより、紫外線を熱に変えることで極めて良好な耐光性を実現していると推測している。そのため長期間紫外線に暴露された場合でも波長変換作用を維持できる。化合物の中心骨格は、光吸収領域、配位能の観点から、ベンゾフェノン骨格が好ましい。さらに前記ケトエノール互変異性体は、カルボニル基とβ位のヒドロキシ基との間でのプロトン移動のため、分子内にひずみが生じにくく安定性の観点から好ましい。一方、ケトエノール互変異性体をとりうる構造を有しない場合、紫外線を熱に変える機構(光熱緩和機構)を持たず、耐光性が得にくい傾向にある。また、ケトエノール互変異性をとりうる部位に金属が配位した場合、光を熱に変換する機能が作用せず耐光性が得にくい。そこで本発明では、ベンゾフェノン骨格の3位に立体障害基を導入し、ケトエノール互変異性部位に金属が配位しない構造が好ましい。
【0041】
化合物(C)は、下記一般式(1)で表され、式中、R1はハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表し、好ましくは、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基であり、より好ましくはi−プロピル基、t−ブチル基である。R2、R3、R6、R7、R8は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表し、好ましくは、水素原子、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ヘクトキシ基、ドデキシ基である。R4、R5、R9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいアルコキシ基を表し、好ましくは、水素原子である。
一般式(1)
【化1】

【0042】
本発明において、エチレン共重合体(D)100重量部に対して、層状複合金属化合物(A)0.05重量部以上、15重量部以下、化合物(C)を0.01重量部以上、10重量部以下用いることが好ましい。
【0043】
層状複合金属化合物の焼成物を用いる場合も同様に、エチレン共重合体(D)100重量部に対して、層状複合金属化合物の焼成物(B)0.05重量部以上、15重量部以下、化合物(C)を0.01重量部以上、10重量部以下用いることが好ましい。
また、例えば、マスターバッチのような高濃度配合品の太陽電池封止材用樹脂組成物を製造する場合は、エチレン共重合体(D)100重量部に対して、層状複合金属化合物(A)を3〜15重量部、化合物(C)を1〜10重量部用いることが好ましい。マスターバッチを用いて太陽電池封止材を製造することは、蛍光材料の分散やハンドリングの面から好ましい。一方、例えばマスターバッチ以外の太陽電池封止材用樹脂組成物の場合は、透明性の観点から、層状複合金属化合物(A)と化合物(C)を合計0.01〜1.5重量部の範囲で用いることが好ましい。使用量の上限値を超えると透明性が不十分となり、初期変換効率が低下する恐れがある。また0.01重量部未満の場合は波長変換効果が不十分となる恐れがある。
【0044】
本発明で用いられる化合物(C)は、ヒドロキシベンゾフェノン化合物があり、具体的には、例えば2,5−ジヒドロキシ−3−t−ブチルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−t−ブチル−4’−メトキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−t−ブチル−4’−オクトキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−t−ブチル−4’−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−t−ブチルベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−t−ブチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−t−ブチル−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−t−ブチル−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−ベンジルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−ベンジル−4’−メトキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−ベンジル−4’−オクトキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−ベンジル−4’−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−ベンジルベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−ベンジル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−ベンジル−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−ベンジル−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−i−プロピルベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−i−プロピル−4’−メトキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−i−プロピル−4’−オクトキシベンゾフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3−i−プロピル−4’−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−i−プロピルベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−i−プロピル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−i−プロピル−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシ−3−i−プロピル−4−ドデシルオキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0045】
本発明においてエチレン共重合体(D)は、二種類以上の単量体の共重合体であり、単量体の少なくとも一種類がエチレン単量体であれば特に限定されることはない。具体的には、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、エチレンメタクリル酸メチル共重合体、エチレンメタクリル酸エチル共重合体、エチレン酢酸ビニル系多元共重合体、エチレンアクリル酸メチル系多元共重合体、エチレンアクリル酸エチル系多元共重合体、エチレンメタクリル酸メチル系多元共重合体、エチレンメタクリル酸エチル系多元共重合体などが挙げられるが、ラミネート工程におけるセルの損傷低減や、透明性、生産性向上の観点から、酢酸ビニル含有量15〜40%のエチレン酢酸ビニル共重合体が好ましく、さらに好ましくは、酢酸ビニル含有量25〜35%のエチレン酢酸ビニル共重合体である。
【0046】
また、本発明において、エチレン共重合体(D)は、成形性、機械的強度などを考慮すると、メルトフローレート(以下、単にMFRという)が0.1〜60g/10minであることが好ましく、0.5〜45g/10minがより好ましい。なおメルトフローレートは、JIS K7210に準拠して測定した数値である。
【0047】
本発明の太陽電池封止材用樹脂組成物は、必要に応じて架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、分散剤等の添加剤を配合することも可能である。さらに、各種添加剤をエチレン共重合体(D)、層状複合金属化合物(A)、化合物(C)と一緒に配合して製造することも、最終成形物を製造する際に、別に添加することも可能である。
【0048】
架橋剤は、エチレン共重合体の高温使用下における熱変形を防止するために用いられる。エチレン共重合体の場合、有機過酸化物が一般的に使用される。添加量は特に限定されないが、エチレン共重合体と、層状金属化合物または/およびその焼成物と、ケトエノール互変異性体との合計100重量部に対して、0.05〜3重量部用いるのが好ましい。具体例としては、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ジ(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(tert−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ジパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、n−ブチル−4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、エチル−3,3−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ブタン等が挙げられる。
【0049】
架橋助剤は、上記架橋反応を効率良く行うために用いられ、ポリアリル化合物やポリアクリロキシ化合物のような多不飽和化合物が挙げられる。添加量は特に限定されないが、エチレン共重合体と、層状金属化合物または/およびその焼成物と、ケトエノール互変異性体との合計エ100重量部に対して、0.05〜3重量部用いるのが好ましい。具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。
【0050】
シランカップリング剤は、保護材や太陽電池素子等に対する接着性を向上させるために用いられ、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基等の不飽和基や、アルコキシ基のような加水分解可能な基を有する化合物が挙げられる。添加量は特に限定されないが、エチレン共重合体と、層状金属化合物または/およびその焼成物と、ケトエノール互変異性体との合計100重量部に対して、0.05〜3重量部用いるのが好ましい。具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0051】
紫外線吸収剤は、耐候性を付与するために用いられ、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系などが挙げられる。添加量は特に限定されないが、エチレン共重合体と、層状金属化合物または/およびその焼成物と、ケトエノール互変異性体との合計100重量部に対して、0.01〜3重量部用いるのが好ましい。具体例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノール、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどが挙げられる。
【0052】
光安定剤は、紫外線吸収剤と併用し、耐候性を付与するために用いられ、ヒンダードアミン光安定剤が挙げられる。光安定剤の添加量は特に限定されないが、エチレン共重合体と、層状金属化合物または/およびその焼成物と、ケトエノール互変異性体との合計100重量部に対して、0.01〜3重量部用いるのが好ましい。具体例としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパレート、2−(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などが挙げられる。
【0053】
酸化防止剤は、高温下での安定性を付与するために用いられ、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、燐酸系などが挙げられる。添加量は特に限定されないが、エチレン共重合体と、層状金属化合物または/およびその焼成物と、ケトエノール互変異性体との合計100重量部に対して、0.05〜3重量部用いるのが好ましい。具体例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔{1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ〕5,5−ウンデカン、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキスフェニル)プロピオネート}メタン、ビス{(3,3’−ビス−4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グルコールエステル、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオプロピオネート、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリスジフェニルホスファイト、ジイソデシノレペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが挙げられる。
【0054】
本発明の太陽電池封止材用樹脂組成物は、層状複合金属化合物(A)、化合物(C)およびエチレン共重合体(D)を含む原料を混合、溶融混練し、ペレット状に成形することで製造できる。この時、層状複合金属化合物(A)と、化合物(C)を最終成形物である封止材中の濃度より予め高く配合したマスターバッチを製造することもできる。マスターバッチを使用して封止材を成形する場合、エチレン共重合体(D)100重量部に対して、マスターバッチを1〜25重量部配合することが好ましい。1重量部未満の場合、分配ムラを引き起こす恐れがあり、25重量部より多い場合、ハンドリング性が劣る。
【0055】
ここで、混合は、一般的な高速せん断型混合機や回転混合機であるヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーミキサー等を用いるのが好ましい。
また、溶融混練は、二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸混練押出し機、二軸混練押出し機等を用いるのが好ましい。
【0056】
太陽電池封止材用樹脂組成物をマスターバッチとして製造することで、層状複合金属化合物(A)と、化合物(C)とを高確率で接触させ、波長変換効果による蛍光をより得やすくなるため初期変換効率もより向上できる。太陽電池封止材用樹脂組成物の製造は、例えば70〜160℃で、1〜20分間溶融混練することで得ることが好ましく、70〜130℃で、1〜10分間がより好ましい。
【0057】
太陽電池封止材は、太陽電池封止材用樹脂組成物を溶融混練し、成形することで製造できる。成形方法は、T−ダイ押出機やカレンダー成形機などを使用できる。太陽電池封止材の厚みは、0.1〜1mm程度が好ましい。
【0058】
また、太陽電池封止材は、マスターバッチとして得られた太陽電池封止材用樹脂組成物と、希釈用のエチレン共重合体とを溶融混錬し、押し出し成形することで製造することも好ましい。マスターバッチを用いて太陽電池封止材を製造することで、蛍光材料をより高度に分散させることができる。
【0059】
図1にて、本発明の太陽電池モジュールの構成の一例を示す。図1中の符号11は透明基板、12Aが表面太陽電池封止材、12Bが裏面太陽電池封止材、13が発電素子、14が保護部材である。発電素子13は、表面太陽電池封止材12A及び裏面太陽電池封止材12Bに挟持されている。そして、この積層体は、透明基板11及び保護部材14に挟持されている。太陽電池モジュールは、太陽電池素子の上下に太陽電池封止材を固定することにより作製することができる。一般的には、真空ラミネーターを用いて加熱圧着により製造される。ラミネート条件は使用する架橋剤の種類によって異なるが、温度130〜150℃で、10〜30分の真空、圧着が一般的である。このような太陽電池モジュールとしては、例えば、図1の例のように、透明基板/太陽電池封止材/太陽電池素子/太陽電池封止材/保護部材のように太陽電池素子の両側から太陽電池封止材で挟むスーパーストレート構造のものや、透明基板/太陽電池素子/太陽電池封止材/保護部材のように、基板の表面に形成させた太陽電池素子を太陽電池封止材と保護部材で積層されたものが挙げられる。透明基板には、熱強化白板ガラスや透明フィルムなどが利用され、封止材には耐湿性に優れたエチレン酢酸ビニル共重合体などが用いられる。また、防湿・絶縁性が要求される保護部材にはアルミニウムをフッ化ビニルフィルムで挟んだ構造のシートやアルミニウムを耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルムで挟んだものなどが用いられている。また、封止材と保護部材との密着性を上げるために、耐加水分解ポリエチレンテレフタレート等の上面に直鎖状低密度ポリエチレンを積層した保護部材も用いられる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。部は重量部、%は重量%を意味する。
【0061】
(A−1〜A−7):層状複合金属化合物
(B−1):層状複合金属化合物(A−1)を400℃で3時間半熱処理した焼成物
(B−2):層状複合金属化合物(A−2)を650℃で4時間熱処理した焼成物
(B−3):層状複合金属化合物(A−3)を800℃で3時間熱処理した焼成物
(B−4):層状複合金属化合物(A−6)を750℃で4時間熱処理した焼成物
【0062】
(A−1)〜(B−4)の化学組成、BET比表面積は、表1に示した。
【0063】
【表1】

【0064】
(C)化合物
(C−1)2,4’−ジヒドロキシ−3−t−ブチルベンゾフェノン
(C−2)2,5−ジヒドロキシ−3−t−ブチルベンゾフェノン
(C−3)2,5−ジヒドロキシ−3−ベンジルベンゾフェノン
(C−4)2,4’−ジヒドロキシ−3−t−ブチル−4−メトキシベンゾフェノン
【0065】
次に、上記化合物(C−2)の2,4−ジヒドロキシ−3−t−ブチルベンゾフェノンを例に挙げての製造方法を説明する。
【0066】
2−t−ブチルフェノール90g、p−ヒドロキシ安息香酸91g、塩化亜鉛105g、オキシ塩化燐170g、スルホレン120gおよびi−プロパノール2gを1リットルのガラス製4つ口フラスコに仕込み、50℃まで昇温する。その温度で2時間保温した後、水5リットル中に滴下した。水洗後、熱水に溶解して、活性炭処理後、冷却して再結晶、ろ過、乾燥を行うことにより、2,4’−ジヒドロキシ−3−t−ブチルベンゾフェノン7g得られた。
【0067】
(D)エチレン共重合体
(D−1)東ソー社製(ウルトラセン751、エチレン酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:28%、MFR:5.7)
(D−2)東ソー社製(ウルトラセン637−1、エチレン酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:20%、MFR:8.0)
(D−3)三井・デュポンポリケミカル社製(エバフレックスV523、エチレン酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル含有量:33%、MFR:14)
【0068】
(実施例1)
層状複合金属化合物100重量部に対して、化合物(C)50重量部を予め、3本ロールで混合し、エチレン共重合体90重量%と前記層状複合金属化合物と前記化合物10重量%をタンブラーミキサー(カワタ社製)に投入し温度25℃で3分間撹拌した後、二軸押出し機(日本プラコン社製)に投入し、溶融混錬し、押し出すことで蛍光体マスターバッチを得た。また、エチレン共重合体75重量%、架橋剤10重量%、架橋助剤10重量%、シランカップリング剤5重量%を二軸押出し機に投入し、溶融混錬し、押し出すことで架橋剤マスターバッチと、エチレン共重合体80重量%、紫外線吸収剤5重量%、光安定剤10重量%、酸化防止剤5重量%を架橋剤マスターバッチと同様の方法により安定化剤マスターバッチを得た。さらに得られた蛍光体マスターバッチとエチレン共重合体を表2の配合比率になるように配合したものを100重量部準備した。さらに蛍光体マスターバッチとエチレン共重合体の合計100重量部に対して、架橋剤マスターバッチ10重量部と、安定化剤マスターバッチ2重量部を配合し、これらをT−ダイ押出機に投入し、90℃にて押出し成形することで、太陽電池封止材12A、12B、16、18、19(厚さ0.5mm)を作製した。なお、太陽電池封止材中の架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤の種類は、下記の通りに用いている。
架橋剤:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート
架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート
シランカップリング剤:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
紫外線吸収剤:2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン
光安定剤:N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物
酸化防止剤:フェニルジイソデシルホスファイト
【0069】
【表2】

【0070】
(実施例2〜18)
それぞれ表2に示す配合となるように、層状複合金属化合物と化合物(C)の配合比を変えた蛍光体マスターバッチを作製し、実施例1と同様にして太陽電池封止材用樹脂組成物を調整して太陽電池封止材12A、12B、16、18、19を作成した。
【0071】
(比較例1〜8)
エチレン共重合体90重量部と表3に示す有機金属錯体10重量部をタンブラーミキサー(カワタ社製)に投入し温度20℃で3分間撹拌した後、二軸押出し機(日本プラコン社製)に投入し、溶融混錬し、押し出すことで蛍光体マスターバッチを得た。また、実施例1同様に架橋剤マスターバッチと、安定化剤マスターバッチを得た。得られた蛍光体マスターバッチと、架橋剤マスターバッチと、安定化剤マスターバッチと、さらに表4の配合とした以外は実施例1と同様にして、太陽電池封止材12A、12B、16、18、19を作成した。
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
実施例1〜18及び比較例1〜8で得られた試験片を以下の基準で評価し、評価結果を表5に示す。
【0075】
[波長変換効果]
図2に示すように、実施例1〜18及び比較例1〜8で得られた太陽電池封止材16を透明基板(ガラス 厚さ3mm)15、17とで挟んで積層した。その後、真空ラミネーターによる真空下で、150℃、5分間加熱、15分間加熱圧着して、封止材を架橋させ、試験用サンプル1を作製した。この試験用サンプル1の蛍光強度を日立ハイテク製分光蛍光光度計により測定した。
【0076】
[黄色性]
図2に示すように、実施例1〜18及び比較例1〜8で得られた太陽電池封止材16を透明基板(ガラス 厚さ3mm)15、17とで挟んで積層した。その後、真空ラミネーターによる真空下で、150℃、5分間加熱、15分間加熱圧着して、封止材を架橋させ、耐久試験用サンプル1を作製した。この耐久試験用サンプル1を加速試験により、光劣化による樹脂黄変を促進させた後、KURABO製コンピューターカラーマッチングシステムにより耐久試験前と試験後の黄色度の差を測定した。黄色度の差が小さい程、樹脂黄変が小さい。
【0077】
加速試験は、スーパーUVテスト機を使用して、耐久試験用サンプル1を温度63℃、湿度50%RH、放射照度100mW/cm2の環境下、10日間静置の条件で行った。
【0078】
[耐光性]
図2に示すように、実施例1〜18及び比較例1〜8で得られた太陽電池封止材16を、透明基板(ガラス 厚さ3mm)15、17とで挟んで積層した。その後、真空ラミネーターによる真空下で、150℃、5分間加熱、15分間加熱圧着して、封止材を架橋させ、耐久試験用サンプル2を作製した。この耐久試験用サンプル2を加速試験により光劣化を促進させた後、蛍光強度を蛍光光度計により測定し、初期の蛍光強度からの保持率を得た。
【0079】
加速試験は、スーパーUVテスト機を使用して、耐久試験用サンプルを温度63℃、湿度50%RH、放射照度100mW/cm2の環境下、1、5、10日間静置の条件で行った。
【0080】
[酸捕捉効果]
得られた太陽電池封止材18を用いて図3に示すように、真空ラミネーターによる真空下で、150℃、5分間加熱、15分間加熱圧着し、耐久試験用サンプル3を作製し、加速試験により酸発生の速度を促進させた後、酸発生量を測定した。
【0081】
加速試験は、耐久試験用サンプル0.5gを30gの精製水に浸漬し、温度85℃、湿度100%RHの環境下、1時間静置の条件で行い、その後、超音波洗浄を10分間かけ、水抽出液に含まれる酢酸量をイオンクロマトグラフィーにより定量した。
【0082】
[剥離強度]
得られた太陽電池封止材19を用いて図4に示すように耐加水分解ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ0.1mm)の保護部材20とで2層にした後、真空ラミネーターによる真空下で、150℃、5分間加熱、15分間加熱圧着し、耐久試験用サンプル4を作製した。そして耐久試験後の太陽電池封止材と保護部材との密着性を剥離試験により測定した。
【0083】
耐久試験は、耐久試験用サンプルを温度85℃、湿度85%RHの環境下、1000時間静置の条件で行った。
【0084】
太陽電池封止材と保護部材との剥離強度は、耐久試験用サンプルから幅25mmの短冊状に切り取り試験片とした。そして、試験片を引張り試験機を用いて引張速度50mm/minにて180°剥離することで剥離強度を測定した。経時剥離強度は、層状複合金属化合物と、化合物を配合していない比較例5の耐久試験前サンプルの剥離強度を100としたときの前記耐久試験後の剥離強度を示した。
【0085】
[透明性]
図2に示すように、実施例1〜18及び比較例1〜8で得られた太陽電池封止材16を透明基板(ガラス 厚さ3mm)15、17とで挟んで積層した。その後、真空ラミネーターによる真空下で、150℃、5分間加熱、15分間加熱圧着して、封止材を架橋させ、試験用サンプル2を作製した。この試験用サンプル2の全光線透過率をBYK−Gardner製ヘーズメーターにより測定した。
【0086】
[変換効率]
実施例1〜18及び比較例1〜8で得られた太陽電池封止材12A、12Bを用いて発電素子を挟み込み、図1に示すように透明基板(ガラス 厚さ3mm)11と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂/耐加水分解ポリエチレンテレフタレート/アルミ/耐加水分解ポリエチレンテレフタレートの4層(厚さ1.0mm)の保護部材14とで挟んで積層体にした。次いで、真空ラミネーターによる真空下で、150℃で5分間加熱、15分間加熱圧着して、封止材を架橋させ、耐久試験用サンプル4を作製した。試験は、スーパーUVテストにより、温度63℃、湿度50%RH、放射照度100mW/cm2の環境下、10日間静置の条件により行った。変換効率は、入光エネルギーと最適動作点での出力と、発電素子の面積から算出した。評価は、発電素子単体の変換効率を100として、サンプル試験前の変換効率(初期変換効率)と、試験後の変換効率(経時変換効率)を求めた。
【0087】
【表5】

【0088】
表5の結果より、実施例1〜18は、全ての評価項目において比較例を上回る優れた耐久性が得られた。特に特定の有機化合物および層状複合金属化合物を用いることで、一般的な有機金属錯体を用いた場合よりも、波長変換効果が持続し、経時でも変換効率が保持された。また、層状金属化合物を用いることで、樹脂劣化に伴う酸を捕捉し、経時における保護部材との密着性低下抑制や、変換効率の低下抑制ができるという驚くべき結果が得られた。
【符号の説明】
【0089】
11 透明基板
12A 表面太陽電池封止材
12B 裏面太陽電池封止材
13 発電素子
14 保護部材
15 透明基板
16 封止材
17 透明基板
18 封止材
19 封止材
20 保護部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状複合金属化合物(A)と、下記一般式(1)で表される化合物(C)と、エチレン共重合体(D)とを含むことを特徴とする太陽電池封止材用樹脂組成物。
一般式(1)
【化1】

(式中、R1はハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表す。R2、R3、R6、R7、R8は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表す。R4、R5、R9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいアルコキシ基、または置換基を有してもよいアミノ基を表す。)
【請求項2】
層状複合金属化合物(A)が、層状複合金属化合物(A)の焼成物(B)であることを特徴とする請求項1記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項3】
焼成物(B)が、層状複合金属化合物(A)を150〜850℃で熱処理されてなる焼成物であることを特徴とする請求項2記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項4】
層状複合金属化合物(A)が、ハイドロタルサイトであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項5】
層状複合金属化合物(A)が、下記一般式(2)または一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の太陽電池封止材用樹脂組成物。
Mg1-a・Ala(OH)2・Ann-a/n・cH2O 一般式(2)
(式中、0.2≦a≦0.35、0≦c≦1、An:n価の陰イオン)
(MdMg1-d1-e・Ale(OH)2・Ann-e/n・fH2O 一般式(3)
(式中、MはNi、Zn、Cu、およびCaより選ばれる金属を示し、d、eおよびfはそれぞれ式0≦d≦1、0.2≦e≦0.35、0≦f≦1、An:n価の陰イオン)
【請求項6】
少なくとも、請求項1〜5いずれか記載の太陽電池封止材用樹脂組成物を用いて成形してなる太陽電池封止材。
【請求項7】
エチレン共重合体(D)100重量部に対して、層状複合金属化合物(A)を3〜15量部、一般式(1)で表される化合物(C)を1〜10重量部含むことを特徴とする太陽電池封止材用マスターバッチ。
【請求項8】
エチレン酢酸ビニル共重合体と、請求項7記載の太陽電池封止材用マスターバッチとを用いて形成してなる太陽電池封止材。
【請求項9】
少なくとも、請求項6または8記載の太陽電池封止材を備えた太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−84801(P2013−84801A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224060(P2011−224060)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】