説明

太陽電池封止用シリコーン組成物

【解決手段】(A)下記式
aR’bSiO(4-a-b)/2
(Rはアルケニル基、R’は一価炭化水素基、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3である。)
で表される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を合計2個以上有するケイ素原子を含有しない有機化合物、
(D)付加反応触媒
を含有する太陽電池封止用シリコーン組成物。
【効果】本発明の太陽電池封止用シリコーン組成物は、透明性が高く、ガラス基板に加え、テドラー(登録商標、ポリフッ化ビニル樹脂)などのフッ素系樹脂やPEN樹脂といったバックシート表層に良好に接着し、太陽電池封止材として好適に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止用シリコーン組成物に関するものであり、更に詳述すると、ガラス基板や、バックシートを構成するテドラー(登録商標、ポリフッ化ビニル樹脂)といったフッ素系樹脂やポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂に良好に接着する太陽電池封止用シリコーン組成物及び該組成物の硬化物で太陽電池セルが封止された太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、太陽光発電はクリーンエネルギー中で最も有効でかつ期待される技術であり、急速に一般に普及し始めている。太陽電池は、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、球状シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、ヘテロ結合太陽電池、CIGS系太陽電池、CdTe太陽電池、色素増感太陽電池、有機半導体太陽電池、量子ドット太陽電池など数多くの種類を有する。現在は、古くから開発され、変換効率が高い単結晶シリコン太陽電池や多結晶シリコン太陽電池が最も広く使用されている。
【0003】
単結晶、多結晶シリコン太陽電池において、いわゆるスーパーストレートタイプの太陽電池モジュールは、ガラスとバックシートの間に封止材で包まれた太陽電池セルストリングスが配置された構造を有する。バックシートは、汚染防止、水蒸気透過防止といったセル及び封止材を保護する目的と、ガラス面から入射する光を反射させ、セルに再入射させる、「光の有効利用」という目的のために使用され、フッ素系樹脂と金属箔の積層体からなるものが数多く市販されている。太陽電池封止材は、太陽電池セルの保護及び固定を目的としているが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が最も使用されている。真空ラミネータを使用すれば、ガラス・EVA・セル及びバックシートを積層し、加熱ラミネートを行うだけで、簡便にEVAで封止された太陽電池モジュールを形成することが可能である。
【0004】
しかし、EVAは400nm未満の光を吸収し、長期間紫外光に暴露されると、化学的、物理的な劣化を引き起こす。また、EVAには接着付与材が添加されているもののガラス基板への接着性は不十分である。更に、EVAは高い弾性率を有する材料であるため、封止された太陽電池モジュールは温められたり冷やされたりすることにより、ガラス基板や太陽電池セルとの間に大きな応力がかかり、接着が弱い部分があればそこから徐々に剥離する。この剥離は水分の浸入を引き起こし、太陽電池セルの腐食も引き起こす。
【0005】
低弾性率でガラス基板への接着信頼性が高い材料の一例として、シリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂は耐熱性・UV耐性に非常に優れ、その高い透明性も維持されることからLED用封止材を一例とする光学用途に多く使用されている。また、高温−低温状態の弾性率変化も小さいことから、薄く、表面積の大きい太陽電池セル封止材への適用も有効であると考えられる。
【0006】
しかし、従来の高透明シリコーン樹脂は、エポキシ基やアルコキシシリル基を有する接着付与材を添加していたが、バックシートの表層として挙げられるテドラー(登録商標、ポリフッ化ビニル樹脂)といったフッ素系樹脂やPEN樹脂に良好に接着しなかった。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−152183号公報
【特許文献2】特公昭63−46783号公報
【特許文献3】特表2007−527109号公報
【特許文献4】特開2008−169386号公報
【特許文献5】特開2006−249327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ガラスに加え、バックシート表層として挙げられるテドラー(登録商標、ポリフッ化ビニル樹脂)等のフッ素系樹脂やPEN樹脂に良好に接着する、透明性の高い太陽電池封止用付加硬化型シリコーン組成物及び太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を合計2個以上有し、ケイ素原子を含有しない有機化合物を付加反応硬化型シリコーン組成物に添加することにより、シリコーン組成物がテドラー(登録商標、ポリフッ化ビニル樹脂)などのフッ素系樹脂やPEN樹脂といったバックシート表層に良好に接着することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記太陽電池封止用シリコーン組成物及び太陽電池モジュールを提供する。
〈1〉 (A)下記平均組成式
aR’bSiO(4-a-b)/2
(式中、Rはアルケニル基、R’は脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、a、bは、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3を満たす数である。)
で表される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して
ケイ素原子に結合した水素原子が0.4〜2.5倍モルとなる量、
(C)1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を合計2個以上有するケイ素原子を含有しない有機化合物 0.1〜10質量部、
(D)付加反応触媒 触媒量
を含有することを特徴とする太陽電池封止用シリコーン組成物。
〈2〉 前記(C)成分が、下記式
【化1】

(上記式中で、Xは炭素数1〜20の酸素原子を含んでもよい二価炭化水素基であり、Yは水素原子又はメチル基を示す。)
で示される有機化合物である〈1〉記載の太陽電池封止用シリコーン組成物。
〈3〉 (B)成分の少なくとも一部が、1分子中にエポキシ基及び/又はアルコキシ基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである〈1〉又は〈2〉記載の太陽電池封止用シリコーン組成物。
〈4〉 〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載の太陽電池封止用シリコーン組成物の硬化物によって封止された太陽電池を接続してなる太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0012】
本発明の太陽電池封止用シリコーン組成物は、透明性が高く、ガラス基板に加え、テドラー(登録商標、ポリフッ化ビニル樹脂)などのフッ素系樹脂やPEN樹脂といったバックシート表層に良好に接着し、太陽電池封止材として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の太陽電池封止用シリコーン組成物について詳細に説明する。
【0014】
[(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン]
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で表され、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するものである。
aR’bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rはアルケニル基、R’は脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、a、bは、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3を満たす数である。)
【0015】
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、この組成物の主剤(ベースポリマー)であり、1分子中に平均2個以上(通常2〜50個)、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個程度のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する。(A)成分のオルガノポリシロキサンのアルケニル基Rとしては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。(A)成分のアルケニル基の結合位置としては、例えば、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が挙げられる。
【0016】
(A)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基R’としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられるが、耐UV特性に鑑みると特にメチル基であることが好ましい。
【0017】
このような(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状構造等が挙げられるが、基本的に主鎖がジオルガノシロキサン単位(D単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサン、又はこの直鎖状のジオルガノポリシロキサンと分岐鎖状あるいは三次元網状のオルガノポリシロキサンの混合物であることが好ましい。
【0018】
この場合、レジン状(分岐鎖状、三次元網状)のオルガノポリシロキサンとしては、アルケニル基とSiO4/2単位(Q単位)及び/又はR’’SiO3/2(T単位)(R’’はR又はR’であり、R及びR’は上記と同じである。以下同様。)を含有するオルガノポリシロキサンであれば特に制限されないが、SiO4/2単位(Q単位)と、RR’2SiO1/2単位やR’3SiO1/2単位等のM単位からなり、M/Qのモル比が0.6〜1.2であるレジン状オルガノポリシロキサンや、上記T単位とM単位及び/又はR’’2SiO2/2で示されるD単位からなるレジン状オルガノポリシロキサン等が例示される。
【0019】
直鎖状オルガノポリシロキサンとレジン状オルガノポリシロキサンの好ましい配合割合は、質量比で好ましくは60:40〜100:0、特に好ましくは80:20〜100:0である。レジン状のオルガノポリシロキサンの上記割合が多すぎると、粘度が高くなり、取り扱い性が低下するおそれがある。なお、レジン状オルガノポリシロキサンを配合する場合、直鎖状オルガノポリシロキサン:レジン状オルガノポリシロキサン=99以下:1以上、特には97以下:3以上の質量比とすることが好ましい。
【0020】
aは、0<a≦2、好ましくは0.001≦a≦1、bは、0<b<3、好ましくは0.5≦b≦2.5、a+bは、0<a+b≦3、好ましくは0.5≦a+b≦2.7を満たす数である。
【0021】
(A)成分の23℃における粘度は、得られるシリコーンゴムの物理的特性が良好であり、また、組成物の取扱作業性が良好であることから、100〜500,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に400〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。直鎖状オルガノポリシロキサンにレジン状オルガノポリシロキサンを併用する場合は、レジン状オルガノポリシロキサンは直鎖状オルガノポリシロキサンに溶解するため、混合して均一な状態での粘度とする。なお、本発明において、粘度は回転粘度計により測定することができる。
【0022】
このような(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R13SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R122SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:R2SiO1.5で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
【0023】
ここで、上記式中のR1はアルケニル基以外の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。また、上記式中のR2はアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基などが挙げられる。
【0024】
[(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
本発明の組成物に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、1分子中に少なくとも2個(通常、2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば、3〜150個程度)、より好ましくは3〜100個程度のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を含有するものであり、直鎖状、分岐状、環状、或いは三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【0025】
c3dSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基、又はアルコキシ基であり、c及びdは、0<c<2、0.8≦d≦2かつ0.8<c+d≦3となる数であり、好ましくは0.05≦c≦1、1.5≦d≦2かつ1.8≦c+d≦2.7となる数である。また、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、2〜100個、特に3〜50個が好ましい。)
【0026】
式中、R3の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、前記のR’として例示したものと同様のものが挙げられるほか、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が挙げられるが、代表的なものは炭素数が1〜10、特に炭素数が1〜7のものであり、好ましくはメチル基等の炭素数1〜3の低級アルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、エポキシ基含有一価炭化水素基、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、特に好ましくはメチル基、エポキシ基含有一価炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基である。
【0027】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8−ペンタメチルペンタシクロシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン等のシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等;R32(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR33SiO1/2単位、R32SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はR3SiO3/2単位を含み得るシリコーンレジン(但し、R3は前記と同じである。)などの他、これらの例示化合物においてメチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換したものなどが挙げられ、更には下記式
【化2】

(式中、R3は前記と同じであり、s、tはそれぞれ0以上の整数である。)
等で表されるものが挙げられる。
【0028】
本発明の組成物に用いるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の方法で得ることができ、例えば、一般式:R3SiHCl2及びR32SiHCl(式中、R3は前記と同じである。)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを(共)加水分解し、或いは該クロロシランと一般式:R33SiCl及びR32SiCl2(式中、R3は前記と同じである。)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを組み合わせて共加水分解し、縮合することにより得ることができる。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、このように(共)加水分解縮合して得られたポリシロキサンを平衡化したものでもよい。
【0029】
また、接着性をより向上させるために、(B)成分の少なくとも一部に、1分子中にエポキシ基及び/又はアルコキシ基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることが好ましい。例えば、下記式
【化3】

で示されるエポキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンや、下記式
【化4】

(式中、R4はメチル基、エチル基等のアルキル基であり、mは0以上、特に2〜20の整数、nは2以上、特に2〜20の整数、p、q、rは1以上、特に1〜5の整数である。)
及び下記式
【化5】

等が例示される。
1分子中にエポキシ基及び/又はアルコキシ基を含有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサンと1分子中にエポキシ基及び/又はアルコキシ基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合割合は、質量比で100:0〜0:100、好ましくは10:90〜90:10である。
【0030】
(B)成分の配合量は、(A)成分のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対してケイ素原子に結合した水素原子が0.4〜2.5倍モル、特に0.7〜1.8倍モルとなる量であり、通常(A)成分100質量部に対し0.5〜50質量部、特に1〜30質量部である。
【0031】
[(C)1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を合計2個以上有する有機化合物]
(C)成分は、(A)成分とヒドロシリル化反応により付加反応する化合物である。(C)成分を添加することによりテドラー(登録商標、ポリフッ化ビニル樹脂)などのフッ素系樹脂やPENといったバックシート表層に良好に接着させることが可能となる。(C)成分は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を1分子中に2個以上、好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜4個、特に好ましくは2個有するものである。
【0032】
(C)成分は、上記要件を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、下記一般式
【化6】

(上記式中で、Xは炭素数1〜20の酸素原子を含んでもよい二価炭化水素基であり、Yは水素原子又はメチル基を示す。)
【0033】
Xとしては、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状アルカン、単環、多環、芳香環を有する二価炭化水素基が例示され、これらの基は酸素原子が介在した、ケトン構造、エステル構造、エーテル構造等を含んでもよい。好ましくは、下記構造である。
【化7】

【化8】

【0034】
(C)成分の有機化合物としては、例えば以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化9】

【化10】

【0035】
これらは、市販品を使用することができる。
【0036】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部である。0.1質量部未満の場合、テドラー(登録商標、ポリフッ化ビニル樹脂)といったフッ素系樹脂やPEN樹脂といったバックシートに対する接着性が不十分となり、10質量部より多い場合、シリコーン組成物が濁る場合がある。
(C)成分は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0037】
[(D)付加反応触媒]
本発明に用いる付加(ヒドロシリル化)反応触媒は、前記アルケニル基とケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)との付加反応を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として白金族金属系触媒等の周知の触媒が挙げられる。
【0038】
この白金族金属系触媒としては、ヒドロシリル化反応触媒として公知のものが全て使用できる。例えば、白金黒、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・yH2O、H2PtCl6・yH2O、NaHPtCl6・yH2O、KHPtCl6・yH2O、Na2PtCl6・yH2O、K2PtCl4・yH2O、PtCl4・yH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・yH2O(式中、yは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。これらの中で、好ましいものとして、相溶性の観点及び塩素不純物の観点から、塩化白金酸をシリコーン変性したものが挙げられ、具体的には、例えば塩化白金酸をテトラメチルジビニルジシロキサンで変性した白金触媒が挙げられる。添加量は、触媒量でいいが、白金原子にして(A)成分に対し、質量換算で0.1〜500ppm、好ましくは0.5〜100ppm、より好ましくは1〜50ppmである。
【0039】
また、本組成物には接着性を更に向上させるためにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤等が例示される。シランカップリング剤を配合する場合、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部、特に0.5〜10質量部であることが好ましい。
【0040】
また、本発明の太陽電池封止用シリコーン組成物には、上記した成分以外に、目的に応じて各種の添加剤、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化バナジウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化マンガン等の金属酸化物及びその複合物、石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、カーボン、中空ガラス、中空樹脂、また金、銀、銅などの導電性を有する無機粉末、メッキ粉末等の無機充填剤を添加することができ、また目的とする特性を損なわない限り、変色を抑えるための酸化防止剤や耐熱剤、及び顔料、難燃剤、可塑剤、反応制御剤等を添加してもよい。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0041】
本発明の組成物は、通常の付加硬化型シリコーンゴム組成物と同様に、1液組成物でも使用直前に混合する2液組成物でもよいが、加熱硬化のサイクル性、すなわち短時間硬化が重視されることから2液組成物とすることが好ましい。この際、2液を混合しても直後に反応しないような各種ヒドロシリル化反応抑制剤を配合することができる。反応抑制剤としては、従来から公知のものを使用することができ、例えばアセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上含有する化合物、アルキニル基を含有する化合物や、トリアリルイソシアヌレートやその変性品などが挙げられる。反応抑制剤を使用する場合の添加量は、その構造や成形条件により異なるが、通常(A)成分100質量部に対して0.001〜5質量部、特に0.01〜2質量部である。
【0042】
本発明の太陽電池封止用シリコーン組成物の製造方法としては、例えば(A)〜(D)成分及びその他任意成分をプラネタリーミキサー、品川ミキサー等の混合機で混合する方法等が挙げられる。2液型とする場合は、(B)成分を含む組成物と、(D)成分を含む組成物とに分けて調製することができる。
また、本発明の太陽電池封止用シリコーン組成物は、通常60〜180℃、特に80〜120℃で1分〜1時間、特に3〜30分間加熱することで硬化及び接着が達成される。
【0043】
特に、本発明のシリコーン組成物を用いて太陽電池を封止し、カバーガラスとバックシートとの間に固定することで太陽電池モジュールを得ることができる。この場合、バックシートとしては、ポリフッ化ビニル樹脂(テドラー(登録商標))等のフッ素系樹脂や、PEN樹脂等を表層に有するバックシートが好ましく用いられる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、粘度はBL型回転粘度計により測定した23℃における値を示す。
【0045】
[実施例1〜4、比較例1〜6]
下記の原料を使用し、検討を行った。なお、実施例1〜4、比較例1〜6いずれも、無色透明の硬化物が得られた。また、下記式中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0046】
(A−1)下記平均組成式
【化11】

(ここで、s≒600)
で示される、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度が5,000mPa・sであるジメチルポリシロキサン
(A−2)SiO4/2単位、Me3SiO1/2単位及びViMe2SiO1/2単位で構成され、SiO4/2に対してMe3SiO1/2及びViMe2SiO1/2のモル比が0.8で、ビニル基量が0.085モル/100gであるシリコーンレジン
(B)1分子中に平均10個のケイ素原子に結合した水素原子を含有する、粘度が5mPa・sで水素ガス発生量が350ml/gであるメチルハイドロジェンポリシロキサン
(C−1)
【化12】

(C−2)
【化13】

(D)塩化白金酸から誘導した、テトラメチルビニルジシロキサンを配位子として有する白金触媒(白金原子量:1.0質量%)
(B−1)
【化14】

(B−2)
【化15】

(B−3)
【化16】

(E−1)γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(E−2)アリルメタクリレート
(E−3)アクリル酸エチル
(F)エチニルシクロヘキサノール(付加反応制御剤)
【0047】
(実験方法)
下記表1、2に示される成分を2液に分割したシリコーン組成物を作製した。具体的には、(A−1)、(A−2)及び(D)を混合したPart−Aと、(A−1)、(A−2)、(B)、(B−1)、(B−2)、(B−3)、(C)、(E)及び(F)を混合したPart−Bを作製した。このPart−AとPart−Bを素早く混合し、減圧脱泡を行った。その後、ガラス、バックシートX(表層;テドラー(登録商標、ポリフッ化ビニル樹脂))、バックシートY(表層;PEN:ポリエチレンナフタレート)を被着体として厚み2mmのせん断接着力測定片を作製した。なお、硬化条件は100℃/1時間加熱硬化である。これらの測定片について、オートグラフを用いて50mm/分の速度で引っ張ったときの引っ張りせん断接着力及び凝集破壊率の測定を行った。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式
aR’bSiO(4-a-b)/2
(式中、Rはアルケニル基、R’は脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、a、bは、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3を満たす数である。)
で表される1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(A)成分のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して
ケイ素原子に結合した水素原子が0.4〜2.5倍モルとなる量、
(C)1分子中にアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を合計2個以上有するケイ素原子を含有しない有機化合物 0.1〜10質量部、
(D)付加反応触媒 触媒量
を含有することを特徴とする太陽電池封止用シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(C)成分が、下記式
【化1】

(上記式中で、Xは炭素数1〜20の酸素原子を含んでもよい二価炭化水素基であり、Yは水素原子又はメチル基を示す。)
で示される有機化合物である請求項1記載の太陽電池封止用シリコーン組成物。
【請求項3】
(B)成分の少なくとも一部が、1分子中にエポキシ基及び/又はアルコキシ基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項1又は2記載の太陽電池封止用シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の太陽電池封止用シリコーン組成物の硬化物によって封止された太陽電池を接続してなる太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2013−112719(P2013−112719A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258667(P2011−258667)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】