説明

太陽電池用インターコネクタ材料、太陽電池用インターコネクタ、およびインターコネクタ付き太陽電池セル

【課題】銅を実質的に含有せず比較的安価であり、かつ、はんだ付けの熱履歴による、皮膜の割れや剥離などの不具合の発生が有効に防止された太陽電池用インターコネクタ材料、および太陽電池用インターコネクタを提供すること。
【解決手段】Al基材表面に、基材側から順に、0.2μm以上の厚みのNiめっき層、およびSnめっき層を有することを特徴とする太陽電池用インターコネクタ材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用インターコネクタ材料、太陽電池用インターコネクタ、およびインターコネクタ付き太陽電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池用インターコネクタは、主として、結晶Siからなる太陽電池セル間を繋ぎ、太陽電池セルが変換した電気エネルギーを集電する役割を果たす配線材である。近年、このような太陽電池用のインターコネクタ材として、平角銅線を、はんだ溶融めっきで被覆してなる、はんだ被覆平角銅線が使用されている。
【0003】
しかしながら、このようなはんだ被覆平角銅線を、太陽電池用のインターコネクタ材として使用した場合には、次のような問題がある。すなわち、はんだ被覆平角銅線と、太陽電池セルとをはんだ付けにより接合した際における熱履歴により、はんだに含まれるSnが、平角銅線を構成するCu内に拡散してしまい、Cu−Snの金属間化合物が生成してしまい、このようなCu−Snの金属間化合物は脆く、そのため、カーケンダルボイド(空孔)の生成やクラックの原因となり、品質的に劣るという問題がある。
【0004】
これに対し、たとえば、特許文献1では、平角アルミ基材に、銅めっきを施し、これをはんだ溶融めっきで被覆してなる太陽電池用のインターコネクタ材が提案されている。一方で、この特許文献1では、平角アルミ基材に、銅めっきを施すものであるが、銅は高価であるため、銅を使用しない、より安価なインターコネクタ材が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−49666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、銅を実質的に含有せず比較的安価であり、かつ、はんだ付けの熱履歴による、皮膜の割れや剥離などの不具合の発生が有効に防止された太陽電池用インターコネクタ材料、および太陽電池用インターコネクタを提供することにある。また、本発明は、このような太陽電池用インターコネクタを用いて得られるインターコネクタ付き太陽電池セルを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、Al基材表面に、基材側から順に、0.2μm以上の厚みのNiめっき層、およびSnめっき層を有する太陽電池用インターコネクタ材料により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、Al基材表面に、基材側から順に、0.2μm以上の厚みのNiめっき層、およびSnめっき層を有することを特徴とする太陽電池用インターコネクタ材料が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、上記の太陽電池用インターコネクタ材料のSnめっき層の表面にはんだ層を形成することにより得られ、Al基材表面に、基材側から順に、Sn−Ni合金層、およびはんだ層を有することを特徴とする太陽電池用インターコネクタが提供される。
本発明の太陽電池用インターコネクタにおいて、前記Sn−Ni合金層は、前記Niめっき層および前記Snめっき層に、前記はんだ層を形成する際における熱により拡散を起こさせることにより形成されたものであり、高周波グロー放電発光分光分析法により分析した際の前記Sn−Ni合金層のNi強度と、熱拡散前の前記Niめっき層のNi強度との比が、「Sn−Ni合金層のNi強度/熱拡散前のNiめっき層のNi強度」で、0.15以上であることが好ましい。
本発明の太陽電池用インターコネクタにおいて、前記Sn−Ni合金層が、前記Al基材表面を覆うように、連続的に形成されていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明によれば、上記いずれかの太陽電池用インターコネクタを太陽電池セルに接続してなることを特徴とするインターコネクタ付き太陽電池セルが提供される。
本発明のインターコネクタ付き太陽電池セルにおいて、前記太陽電池用インターコネクタと前記太陽電池セルとが、はんだ付けに接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、銅を実質的に使用する必要が無く、そのため、比較的安価であり、しかも、はんだ付けの熱履歴による、皮膜の割れや剥離などの不具合の発生が有効に防止された太陽電池用インターコネクタ材料、および太陽電池用インターコネクタ、ならびに、このような太陽電池用インターコネクタを用いて得られるインターコネクタ付き太陽電池セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ材料100の構成を示す図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ200の構成を示す図である。
【図3】図3は、熱拡散前のNiめっき層20の厚みを0.2μm未満とした太陽電池用インターコネクタ200aの構成を示す図である。
【図4】図4(A)は、実施例2の太陽電池用インターコネクタ試料の断面写真、図4(B)は、比較例1の太陽電池用インターコネクタ試料の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
<太陽電池用インターコネクタ材料>
図1は、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ材料100の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ材料100は、Al基材10の両面に、Niめっき層20、およびSnめっき層30を、この順に形成されてなる。
【0015】
Al基材10を構成するアルミニウム板としては、特に限定されず、純アルミニウム板や、JIS規格の1000系、2000系、3000系、5000系、6000系、7000系のいずれのアルミニウム合金板も用いることができるが、なかでも、1000系のO材が特に好ましい。Al基材10の厚みは、特に限定されず、太陽電池用インターコネクタとして十分な導電性が確保できるような厚みとすればよいが、好ましくは0.1〜0.5mmである。
【0016】
Niめっき層20は、Al基材10上に、ニッケルめっきを施すことにより形成される。Al基材10上に、Niめっき層20を形成する方法としては、特に限定されないが、Al表面上に、Niめっき層を直接設けることは困難であるため、あらかじめ、Zn層を置換めっきによって形成した後、その上にNiめっき層を形成するのが好ましい。以下、下地層としてZn層を形成する方法について、説明する。
【0017】
まず、Al基材10を構成する純アルミニウム板またはアルミニウム合金板について、脱脂処理を行ない、次いで、酸性エッチングおよびスマット除去を行った後、Znの置換めっきを行なう。Znの置換めっきは、硝酸浸漬処理、第一Zn置換処理、硝酸亜鉛剥離処理、第二Zn置換処理の各工程を経ることにより行なわれる。この場合、各工程の処理後には水洗処理を実施する。なお、第一Zn置換処理および第二Zn置換処理により形成されるZn層は、Niめっきを施す際にわずかに溶解する。そのため、Zn層は、Niめっき後の状態における皮膜量が、好ましくは5〜500mg/mの範囲、より好ましくは30〜300mg/mの範囲となるように形成することが望ましい。なお、Zn層の皮膜量は、処理液中のZnイオンの濃度および第二Zn置換処理において処理液中に浸漬する時間を適宜選択することで調整することができる。
【0018】
次いで、下地層としてのZn層の上に、Niめっきを施すことで、Niめっき層20を形成する。Niめっき層20は、電気めっき法または無電解めっき法のいずれのめっき法を用いて形成してもよい。Niめっき層20の厚みは、0.2μm以上であり、好ましくは0.2〜3.0μm、より好ましくは0.5〜2.0μmである。Niめっき層20は、後述するように、太陽電池用インターコネクタ材料100を構成するSnめっき層30上に、はんだ層を形成した際に、はんだ層を形成する際における熱により、Snめっき層30と拡散することで、Ni−Sn合金層を形成することとなる層である。
【0019】
Snめっき層30は、Niめっき層20上に、Snめっきを行なうことにより形成される。Snめっき層30は、電気めっき法または無電解めっき法のいずれのめっき法を用いて形成してもよい。Snめっき層30の厚みは、好ましくは0.5〜3.0μmである。Snめっき層30の厚みが薄すぎると、Snめっき層30上にはんだ層を形成する際における、はんだ濡れ性が低下し、良好なはんだ層を形成し難くなる。一方、Snめっき層30の厚みが厚すぎると、厚みを増加させることによる、はんだ濡れ性の向上効果が飽和してしまうため、コスト的に不利となる。
【0020】
<太陽電池用インターコネクタ>
図2は、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ200の構成を示す図である。本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ200は、図1に示す太陽電池用インターコネクタ材料100を用い、太陽電池用インターコネクタ材料100のSnめっき層30上に、はんだ層50を形成することにより製造され、図2に示すように、Al基材10の両面に、Sn−Ni合金層40、およびはんだ層50を、この順に形成されてなる。
【0021】
はんだ層50は、図1に示す太陽電池用インターコネクタ材料100を構成するSnめっき層30上に、溶融はんだめっきを施すことにより形成することができる。なお、本実施形態においては、溶融はんだめっきにより、はんだ層50を形成することにより、はんだ層50を形成した際における熱により、図1に示す太陽電池用インターコネクタ材料100を構成するNiめっき層20とSnめっき層30との間で拡散が起こり、これにより、図2に示すように、はんだ層50の下に、Sn−Ni合金層40が形成されることとなる。
【0022】
なお、はんだ層50を形成する際における、溶融はんだめっきの浴温は、好ましくは140〜300℃であり、より好ましくは180〜250℃である。また、溶融はんだめっきを行なう際にける浸漬時間は、好ましくは3〜15秒である。溶融はんだめっきの浴温が低すぎる場合や、溶融はんだめっきを行なう際にける浸漬時間が短すぎる場合には、はんだ層50の形成が不十分となり、一方、溶融はんだめっきの浴温が高すぎる場合や、溶融はんだめっきを行なう際にける浸漬時間が長すぎる場合には、はんだ層50に含まれるSn成分が、Al基材10まで拡散してしまい、AlとSnとの間で固溶硬化が起こってしまい、Sn−Ni合金層40の割れや、剥離が発生してしまう場合がある。
【0023】
はんだ層50の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10〜30μm、より好ましくは15〜30μmである。
【0024】
Sn−Ni合金層40は、上述したように、はんだ層50を形成する際に、図1に示す太陽電池用インターコネクタ材料100を構成するNiめっき層20とSnめっき層30との間で拡散が起こることにより形成される合金層である。本実施形態においては、Sn−Ni合金層40を構成することとなる熱拡散前のNiめっき層20の厚みを0.2μm以上、好ましくは0.2〜3.0μm、より好ましくは0.5〜2.0μmとしているため、熱拡散後のSn−Ni合金層40を、Al基材10の表面を覆うように、連続的に形成することができる。すなわち、熱拡散後のSn−Ni合金層40を途切れ部分の無いような態様で形成することができる。
【0025】
一方で、熱拡散前のNiめっき層20の厚みを0.2μm未満とした場合には、図3に示すように、はんだ層50を形成した際に形成される熱拡散後のSn−Ni合金層40aには、途切れ部分41が発生してしまう。そして、途切れ部分41が発生した場合には、この途切れ部分41を起点として、Al基材10とSn−Ni合金層40aとの密着性が低下してしまい、Sn−Ni合金層40aの割れや剥離が生じやすくなるという不具合や、加工時等に発生したクラックを介して、腐食物が進入した場合に、この途切れ部分41において腐食物に起因する電位差が生じてしまい、腐食が進行してしまうという不具合が生じてしまうこととなる。
【0026】
これに対して、本実施形態によれば、Sn−Ni合金層40を構成することとなる熱拡散前のNiめっき層20の厚みを0.2μm以上とすることにより、熱拡散後のSn−Ni合金層40を、Al基材10の表面を覆うように、連続的に形成することができ、これにより、上記問題を有効に解決できるものである。なお、熱拡散前のNiめっき層20の厚みが厚すぎると、厚みを増加させることによる効果が飽和してしまうため、コスト的に不利となる。
【0027】
また、本実施形態においては、高周波グロー放電発光分光分析法により分析した際のSn−Ni合金層40のNi強度が、熱拡散前のNiめっき層20のNi強度に対して、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率で、0.15以上であることが好ましく、より好ましくは0.18以上、さらに好ましくは0.34以上である。なお、該比率の上限は、1以下である。
【0028】
「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率を上記範囲とすることにより、Sn−Ni合金層40中に含有されるSn成分のAl基材10中への拡散を防止することができ、これにより、Sn成分が、Al基材10中に拡散することにより引き起こされる不具合、すなわち、AlとSnとの間で固溶硬化が起こってしまい、Sn−Ni合金層40の割れや剥離が発生してしまうという不具合を有効に防止することができる。一方、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率が低過ぎると、すなわち、Sn−Ni合金層40中のNi含有割合が少なく、Sn含有割合が多過ぎると、Sn−Ni合金層40中のSn成分が、Al基材10中に拡散してしまい、AlとSnとの間で固溶硬化が起こってしまい、Sn−Ni合金層40の割れや剥離が発生してしまう場合がある。
【0029】
なお、本実施形態において、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」は、たとえば、高周波グロー放電発光分光分析装置を用いて、Sn−Ni合金層40および熱拡散前のNiめっき層20を、Arプラズマによりスパッタリングしながら測定を行い、Sn−Ni合金層40中および熱拡散前のNiめっき層20中において、それぞれ最もNi強度が高かった部分のデータを、それぞれ、Sn−Ni合金層40のNi強度、および熱拡散前のNiめっき層20のNi強度として求め、これらを用いて、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」を算出することができる。
【0030】
また、本実施形態において、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率を上記範囲とする方法としては、特に限定されるものではないが、たとえば、熱拡散前のNiめっき層20の厚みを0.2μm以上とし、はんだ層50を形成する際における、溶融はんだめっきの浴温、および溶融はんだめっきを行なう際にける浸漬時間を上述した範囲に制御する方法などが挙げられる。
【0031】
なお、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ200としては、図3に示すように、Al基材10の上に、直接、Sn−Ni合金層40が形成されている構成に代えて、Al基材10の上に、Niめっき層20を介して、Sn−Ni合金層40が形成されているような構成であってもよい。特に、熱拡散前のNiめっき層20の厚みや、はんだ層50を形成する際における、溶融はんだめっきの浴温、および溶融はんだめっきを行なう際にける浸漬時間によっては、Niめっき層20中へのSn成分の拡散が完全に進行しない場合もある。そのため、このような場合には、Al基材10と、Sn−Ni合金層40との間に、Niめっき層20が残存することとなる。
【0032】
本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200は、はんだ層50を形成した際における熱により、厚み0.2μm以上のNiめっき層と、Snめっき層30との間で拡散が起こることにより形成されるSn−Ni合金層40を備えるものであるため、はんだ付けの熱履歴による、Sn−Ni合金層40の割れや剥離などの不具合の発生を有効に防止することができる。しかも、本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200は、銅を実質的に含有しないものであり、そのため、比較的安価であり、コスト的にも有利なものである。
【0033】
そのため、本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200を用い、太陽電池用インターコネクタ200と、太陽電池セルとをはんだ付けにより接続することにより得られるインターコネクタ付き太陽電池セルは、品質的に良好であり、しかも、コスト的にも優れたものである。
【0034】
なお、このような本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200としては、たとえば、長尺のAl板(コイル)の両面に、上述した方法にしたがい、Sn−Ni合金層40、およびはんだ層50を、この順に形成したものを、必要な幅にスリットすることにより得ることができる。このようにして得られる太陽電池用インターコネクタ200は、上下面に、Sn−Ni合金層40、およびはんだ層50が形成されている一方で、厚み方向を形成する面(スリット面)には、これらSn−Ni合金層40、およびはんだ層50が形成されていないこととなる。
【0035】
あるいは、本実施形態の太陽電池用インターコネクタ200としては、たとえば、平角Al線の表面全面に、上述した方法にしたがい、Sn−Ni合金層40、およびはんだ層50を形成することにより得ることもできる。そして、この場合には、得られる太陽電池用インターコネクタ200は、上述した方法とは異なり、スリット工程を経ないため、上述した特許文献1(特開2006−49666号公報)に記載のインターコネクタと同様に、上下面および厚み方向を形成する面のいずれにも、Sn−Ni合金層40、およびはんだ層50が形成されたものとなる。
【0036】
なお、本実施形態に係る太陽電池用インターコネクタ200のサイズは、特に限定されないが、厚みが、通常、0.1〜0.7mm、好ましくは0.1〜0.5mmであり、幅が、通常、0.5〜10mm、好ましくは1〜6mmであり、また、長さについては、太陽電池の配列等に応じて適宜設定すればよい。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0038】
<実施例1>
Al基材10を形成するための材料として、A1100系のO材を準備した(厚さ0.3mm、幅40mm、長さ120mm)。そして、Al基材を、アルカリ液で脱脂し、次いで硫酸中でエッチング処理を施し、次いで硝酸中で脱スマット処理を施した後、水酸化ナトリウム:150g/L、ロッシェル塩:50g/L、酸化亜鉛:25g/L、塩化第一鉄1.5g/Lを含む処理液中に浸漬して第一Zn置換処理を行った。次いで、第一Zn置換処理を行ったAl基材を、400g/Lの硝酸水溶液中に浸漬して置換析出したZnを除去した後、第一Zn置換処理で用いた処理液と同じ処理液中に、10秒間浸漬することで第二Zn置換処理を行うことで、100mg/mの皮膜量で、Al基材上にZn層を形成した。
【0039】
次いで、Zn層を形成したAl基材10について下記条件にてニッケルめっきを行い、Zn層上に、厚さ0.2μmのNiめっき層20を形成した。
浴組成:硫酸ニッケル250g/L、塩化ニッケル45g/L、ほう酸30g/L
pH:3〜5
浴温:60℃
電流密度:1〜5A/dm
【0040】
次いで、Niめっき層20を形成したAl基材10について、下記条件にてスズめっきを行い、Niめっき層上に、厚さ0.5μmのSnめっき層30を形成することで、図1に示す太陽電池用インターコネクタ材料100を得た。
浴組成:硫酸第一錫30g/L、硫酸70ml/L、適量の光沢剤および酸化防止剤
pH:1〜2
浴温:40℃
電流密度:5〜10A/dm
【0041】
次いで、得られた太陽電池用インターコネクタ材料100を、浴温を200℃に調整したSn−Pbはんだからなる溶融はんだめっき槽に、3秒間浸漬することで、厚み20μmのはんだ層50を形成することで、図2に示す太陽電池用インターコネクタ200を製造した。なお、本実施例で製造した太陽電池用インターコネクタ200は、スリット前のものであり、そのサイズは、幅40mm、長さ120mmであり、太陽電池の配列等に併せて、スリットすることにより、太陽電池用インターコネクタとして適宜使用可能なものである。そして、得られた太陽電池用インターコネクタ材料100および太陽電池用インターコネクタ200を用いて、以下の方法にしたがい、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率、およびSn−Ni合金層40の連続性の評価を行った。
【0042】
「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率は、次の方法により測定した。すなわち、まず、高周波グロー放電発光分光分析装置(GDS−3860、リガク社製)を用いて、高周波電力:40W、フォトマル電圧(Ni):370Vの条件で、Sn−Ni合金層40および熱拡散前のNiめっき層20を、Arプラズマによりスパッタリングしながら測定を行った。そして、得られた測定データから、Sn−Ni合金層40中および熱拡散前のNiめっき層20中において、それぞれのNi強度のピーク値を得て、それぞれを、Sn−Ni合金層40のNi強度、および熱拡散前のNiめっき層20のNi強度として、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」を算出した。結果を表1に示す。
【0043】
また、Sn−Ni合金層40の連続性は、太陽電池用インターコネクタ200の断面を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)(JSM−6330F、日本電子社製)により観察を行なうことにより評価した。電界放出形走査電子顕微鏡による観察の結果、Sn−Ni合金層40に、図3に示すような途切れ部分、すなわち、はんだ層50が、直接、Al基材10表面に接触している部分(Al基材10表面において、Niの含有割合が実質的にゼロである部分)が観察された場合には、Sn−Ni合金層40の連続性「無し」と判断し、そのような途切れ部分が観察されなかった場合には、Sn−Ni合金層40の連続性「有り」と判断した。結果を表1に示す。
【0044】
<実施例2〜4>
Niめっき層20の厚みを、それぞれ、0.5μm(実施例2)、1μm(実施例3)、および1.5μm(実施例4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用インターコネクタ材料100および太陽電池用インターコネクタ200を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
<実施例5>
はんだ層50を形成する際の溶融はんだめっき槽の温度を200℃から250℃に変更し、はんだ層50を厚み20μmで形成した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用インターコネクタ材料100および太陽電池用インターコネクタ200を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
<実施例6〜8>
Niめっき層20の厚みを、それぞれ、0.5μm(実施例6)、1μm(実施例7)、および1.5μm(実施例8)に変更した以外は、実施例5と同様にして、太陽電池用インターコネクタ材料100および太陽電池用インターコネクタ200を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
<比較例1,2>
Niめっき層20の厚みを、それぞれ、0.1μm(比較例1)、および0.15μm(比較例2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池用インターコネクタ材料100および太陽電池用インターコネクタ200を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
<比較例3,4>
Niめっき層20の厚みを、それぞれ、0.1μm(比較例3)、および0.15μm(比較例4)に変更した以外は、実施例5と同様にして、太陽電池用インターコネクタ材料100および太陽電池用インターコネクタ200を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、Niめっき層20の厚みを0.2μm以上とした実施例1〜8においては、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率がいずれも高く、また、いずれも、Sn−Ni合金層40が、Al基材10表面を覆うように連続的に形成されており、図3に示すような途切れ部分は確認されなかった。
【0051】
一方、Niめっき層20の厚みを0.2μm未満とした比較例1〜4においては、「Sn−Ni合金層40のNi強度/熱拡散前のNiめっき層20のNi強度」の比率がいずれも低く、また、いずれも、Sn−Ni合金層40に途切れ部分が確認され、Sn−Ni合金層40は連続性を有しないものであった。
【0052】
ここで、図4(A)に、実施例2の太陽電池用インターコネクタ試料の断面写真を、図4(B)に、比較例1の太陽電池用インターコネクタ試料の断面写真を、それぞれ示す。図4(A)からも確認できるように、実施例2においては、Sn−Ni合金層40に途切れ部分が存在せず、Sn−Ni合金層40が、Al基材10表面を覆うように連続的に形成されていることが確認できる。その一方で、比較例1においては、Sn−Ni合金層40に途切れ部分が存在し、Sn−Ni合金層40は連続性を有しないものであることが確認できる。
【符号の説明】
【0053】
100…太陽電池用インターコネクタ材料
200…太陽電池用インターコネクタ
10…Al基材
20…Niめっき層
30…Snめっき層
40…Sn−Niめっき層
50…はんだ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al基材表面に、基材側から順に、0.2μm以上の厚みのNiめっき層、およびSnめっき層を有することを特徴とする太陽電池用インターコネクタ材料。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池用インターコネクタ材料のSnめっき層の表面にはんだ層を形成することにより得られ、
Al基材表面に、基材側から順に、Sn−Ni合金層、およびはんだ層を有することを特徴とする太陽電池用インターコネクタ。
【請求項3】
前記Sn−Ni合金層は、前記Niめっき層および前記Snめっき層に、前記はんだ層を形成する際における熱により拡散を起こさせることにより形成されたものであり、
高周波グロー放電発光分光分析法により分析した際の前記Sn−Ni合金層のNi強度と、熱拡散前の前記Niめっき層のNi強度との比が、「Sn−Ni合金層のNi強度/熱拡散前のNiめっき層のNi強度」で、0.15以上であることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池用インターコネクタ。
【請求項4】
前記Sn−Ni合金層は、前記Al基材表面を覆うように、連続的に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の太陽電池用インターコネクタ。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の太陽電池用インターコネクタを太陽電池セルに接続してなることを特徴とするインターコネクタ付き太陽電池セル。
【請求項6】
前記太陽電池用インターコネクタと前記太陽電池セルとが、はんだ付けに接続されていることを特徴とする請求項5に記載のインターコネクタ付き太陽電池セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−65640(P2013−65640A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202489(P2011−202489)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】