説明

太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに太陽電池モジュール

【課題】湿熱環境下での長期に亘る層間接着性(特にバックシートの構成基材と太陽電池セルが配された電池側基板(例えばEVA等の封止材)との間の接着耐久性)に優れ、低廉に製造される太陽電池用バックシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリマー基材と、ポリマー基材の一方面に、着色剤を含有する着色層と、金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含有する金属含有層と、ポリマー基材の他方面に、分子中に一般式(1)で表される質量割合が15〜85質量%のシロキサン構造単位と質量割合が85〜15質量%の非シロキサン系構造単位とを有する複合ポリマーを含有する複合ポリマー層とを有している〔R〜R:H、ハロゲン原子、1価の有機基(複数のR、Rは各々互いに同一でも異なってもよい)、n:1以上の整数〕。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、発電時に二酸化炭素の排出がなく環境負荷が小さい発電方式であり、近年急速に普及が進んでいる。
【0003】
太陽電池モジュールは、通常、太陽光が入射する側のオモテ面ガラスと、太陽光が入射する側とは反対側(裏面側)に裏面保護用シートとして配置される、いわゆるバックシートとの間に、太陽電池セル(太陽電池素子)が挟まれた構造を有している。オモテ面ガラスと太陽電池セルとの間、及び太陽電池セルとバックシートとの間には、それぞれEVA(エチレン−ビニルアセテート)樹脂などの封止材を配して封止されている。
【0004】
バックシートは、太陽電池モジュールの裏面からの水分の浸入を防止する働きを有するもので、従来はガラスやフッ素樹脂等が用いられていたが、近年では、コスト等の観点からポリエステルなどをはじめ種々の樹脂材料が検討されている。裏面保護用シートとして設けられるバックシートは、単なる保護用途としての樹脂シートに留まらず、絶縁性や水分に対するバリア性、着色(意匠性や光反射性等)、各層間の接着性(密着)、寸法安定性、長期に亘る耐久性など、種々の機能が付与されていることが好ましい。
場合がある。このうち、太陽電池モジュールが備えるべき性能として、電池性能、外観、及び長期耐久性に対する要求は高い。
【0005】
バックシートに付与される機能として、例えば、酸化チタン等の白色無機粒子を含有させてバックシートに光を反射させる反射機能を持たせることがある。これは、モジュールの太陽光が照射されるオモテ面から入射した太陽光のうち、電池セルを素通りした光を乱反射して、再びセルに戻すことによって発電効率を高め、電池性能の向上に寄与する。このような機能を有する例として、白色無機微粒子が添加された白色ポリエチレンテレフタレートフィルムが開示されている(例えば、特許文献1〜2参照)。また、白色顔料を含有する白色インキ層を有する裏面保護シートの例が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、バックシートに装飾性(意匠性)が要求される場合がある。装飾機能を持たせた例として、黒色顔料であるペリレン系顔料を添加して意匠性を改善した太陽電池用バックシートが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、前記機能として、接着機能を有していることも不可欠である。以上のような機能を付与するため、バックシートには、支持基材に所望とする機能を有する層が重層された構造が提案されており、種々の機能を持つシートを支持体に貼り合わせる方法が広く採られている。例えば、複数の樹脂フィルムの貼り合わせによりバックシートを形成する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。バックシートが重層構造に形成されている場合、各層間に強固な接着性が得られないときには、水分や熱の影響で剥がれやすく、長期での耐久性を保持できない。
【0008】
また、支持体に色々な機能を持つ層を塗布する方法も開示されている(例えば、特許文献2,3,5参照)。更には、白色ポリエステルフィルムに帯電防止剤及びシリコーン化合物を含有する塗布層が設けられた反射板用白色ポリエステルフィルムや、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル共重合体、シロキサン化合物を含有する接着層が有機フィルム上に積層された太陽電池用バックシートに関する開示もある(例えば、特許文献6〜7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−060218号公報
【特許文献2】特開2006−210557号公報
【特許文献3】特開2007−128943号公報
【特許文献4】特開2002−100788号公報
【特許文献5】特開2010−212496号公報
【特許文献6】特開2008−189828号公報
【特許文献7】特開2008−282873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、バックシートを構成する各層の接着性(密着)については、従来の技術のみでは必ずしも充分な性能が得られるに至っていない。すなわち、
上記従来の技術のうち、複数のシートを互いに貼り合わせてバックシートを形成する方法では、コスト高になるほか、貼り合わせに用いられる接着剤が経時で劣化しやすく、徐々に接着性の低下を招く傾向にある。これは、特に高温高湿環境下に曝された場合に顕著に現れる。その一方で、バックシートは、一般に屋外等の水分や熱、光に直接曝される環境下に置かれることが多く、従って長期耐久性の観点から、このような環境条件下でも長期に亘り接着性を安定的に保持できる性能が求められる。
【0011】
また、従来から塗布による方法も知られているものの、上記従来の構成では、温湿度条件が比較的高い湿熱環境において長期間良好な接着性を保つことは難しい。そのため、貼り合わせより低廉に作製され、しかも、光反射性や意匠性等の諸機能と、温湿度に依存しない長期に亘る接着性とが両立された太陽電池用のバックシートは、未だ提供されるに至っていない。
【0012】
また上記のように、シリコーン化合物やシロキサン化合物を含む層が設けられたポリエステルフィルムやバックシートも提案されているが、前者では、帯電防止剤として含有されるカチオンポリマーの耐久性が悪い。また、後者では、シロキサン化合物以外の樹脂や共重合体の耐久性が悪い。そのため、温湿度が比較的高い湿熱環境下において、長期間安定的に接着性を維持することは困難である。
【0013】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、高温高湿環境(以下、湿熱環境ともいう)下で経時させたときの層間接着性(特に湿熱環境に曝される最外層の接着性)に優れ、低廉に製造される太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに長期に亘って安定した発電性能を発揮する太陽電池モジュールを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> ポリマー基材と、ポリマー基材の一方面に、着色剤を含有する着色層と、金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含有する金属含有層と、ポリマー基材の他方面に、分子中に下記一般式(1)で表される質量割合が15〜85質量%のシロキサン構造単位と質量割合が85〜15質量%の非シロキサン系構造単位とを有する複合ポリマーを含有する複合ポリマー層と、を有する太陽電池用バックシートである。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(1)において、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表し、RとRとは同一でも異なってもよい。nは、1以上の整数を表す。複数のR及びRは各々、互いに同一でも異なってもよい。
【0017】
<2> 着色剤を含むポリマー基材と、ポリマー基材の一方面に、金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含有する金属含有層と、ポリマー基材の他方面に、分子中に一般式(1)で表される質量割合が15〜85質量%のシロキサン構造単位と質量割合が85〜15質量%の非シロキサン系構造単位とを有する複合ポリマーを含有する複合ポリマー層と、を有する太陽電池用バックシートである。
<3> 着色剤が顔料である前記<1>又は前記<2>に記載の太陽電池用バックシートである。
<4> 着色剤が白色又は黒色の顔料である前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートである。
<5> 着色層が塗布により形成された前記<1>、前記<3>、又は前記<4>に記載の太陽電池用バックシートである。
<6> 金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分が、箔板状のアルミニウムである前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートである。
<7> 金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分が、アルミニウム酸化物又はケイ素酸化物である前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートである。
<8> 金属含有層が、気相成膜により形成された前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートである。
<9> ポリマー基材は、末端封止剤をポリマー全質量に対して0.1質量%〜10質量%の範囲で含有する前記<1>〜前記<8>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートである。
【0018】
<10> ポリマー基材は、表面がコロナ処理、火炎処理、及びグロー放電処理からなる群より選択される方法で処理されている前記<1>〜前記<9>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートである。
<11> 複合ポリマー層は、更に、複合ポリマーを架橋する架橋剤由来の構造部分を含む前記<1>〜前記<10>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートである。
<12> 架橋剤が、カルボジイミド化合物又はオキサゾリン化合物である前記<11>に記載の太陽電池用バックシートである。
<13> 複合ポリマー層中における、複合ポリマーに対する架橋剤由来の構造部分の質量比率が1〜30質量%である前記<11>又は前記<12>に記載の太陽電池用バックシートである。
<14> 非ポリシロキサン系構造単位が、アクリル系構造単位である前記<1>〜前記<13>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートである。
<15> 金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含有する金属含有層をポリマー基材上に形成する工程と、分子中に一般式(1)で表される質量割合が15〜85質量%のシロキサン構造単位と質量割合が85〜15質量%の非シロキサン系構造単位とを有する複合ポリマーを含有する複合ポリマー層をポリマー基材上に塗布により形成する工程とを有する、前記<1>〜前記<14>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシートの製造方法である。
<16> ポリマー基材を構成するポリマーを含む未延伸の樹脂シートを製膜する製膜工程と、樹脂シートを第1の方向に延伸する第1の延伸工程と、第1の方向に延伸された樹脂シートの少なくとも一方面に、塗布により下塗り層を形成する下塗り層形成工程と、下塗り層が形成された樹脂シートを、第1の方向と直交する第2の方向に延伸する第2の延伸工程と、を有する前記<15>に記載の製造方法である。
<17> 前記<1>〜前記<14>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート、又は前記<15>又は前記<16>に記載の太陽電池用バックシートの製造方法により製造された太陽電池用バックシートを備えた太陽電池モジュールである。
【0019】
太陽電池モジュールは、太陽光が入射する透明性のフロント基板と、フロント基板の上に設けられ、太陽電池素子及び太陽電池素子を封止する封止材を有するセル構造部分と、セル構造部分のフロント基板が位置する側と反対側に設けられ、封止材と隣接して配置された、前記<1>〜前記<14>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート又は前記<15>又は前記<16>に記載の太陽電池用バックシートの製造方法により製造された太陽電池用バックシートと、を備えた構成であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高温高湿環境下で経時させたときの層間接着性(特に湿熱環境に曝される最外層の接着性)に優れ、低廉に製造される太陽電池用バックシート及びその製造方法が提供される。また、
本発明によれば、長期に亘って安定した発電性能を発揮する太陽電池モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の態様に係る太陽電池用バックシートの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の態様に係る太陽電池用バックシートの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びにこれを用いた太陽電池モジュールについて詳細に説明する。
【0023】
<太陽電池用バックシート及びその製造方法>
本発明の太陽電池用バックシートは、太陽電池素子(太陽電池セル)が封止材で封止された電池側基板(好ましくは封止剤)と接触させて配置される太陽電池用裏面保護シートであり、着色剤と金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分とポリマーを用いた機能性要素(すなわち着色剤や金属成分を含む機能性の層やポリマー基材)と、特定のシロキサン構造単位を有する複合ポリマーを含む複合ポリマー層とを有している。具体的には、(1)本発明の第1の態様の太陽電池用バックシートは、
ポリマー基材と、
ポリマー基材の一方面に設けられた、着色剤を含有する着色層と、金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含有する金属含有層と、
ポリマー基材の他方面に設けられた、分子中に以下に示す一般式(1)で表される特定のシロキサン構造単位(ポリマー全質量に対して15〜85質量%)及び非シロキサン系構造単位(ポリマー全質量に対して85〜15質量%)を有する複合ポリマーを含有する複合ポリマー層と、
で構成されている。
また、(2)本発明の第2の態様の太陽電池用バックシートは、
着色剤を含むポリマー基材と、
ポリマー基材の一方面に設けられた、金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含有する金属含有層と、
ポリマー基材の他方面に設けられた、分子中に下記一般式(1)で表される質量割合が15〜85質量%のシロキサン構造単位と質量割合が85〜15質量%の非シロキサン系構造単位とを有する複合ポリマーを含有する複合ポリマー層と、
で構成されている。
これらの太陽電池用バックシートは、必要に応じて、更に、複合ポリマー層以外の他の層が設けられた構成を有していてもよい。
【0024】
太陽電池用バックシートに求められる諸機能のうち、特に電池性能、外観、及び長期耐久性は、太陽電池の長期性能を確保する上で重要であるが、従来から提案されている技術の多くは、耐候性のフィルムや着色フィルムを接着剤で貼り合わせ、耐久性や意匠性を付与している。貼り合わせに用いられる接着剤は、湿熱環境で劣化し易い場合があり、また貼合はコスト的に有利とも言い難い。
また、貼り合わせ以外には、フッ素含有樹脂等を用いた溶剤系塗布液で耐候性の層を塗布形成する技術が知られている。フッ素含有樹脂等を用いた塗布では、塗膜自身が耐性である分の耐久性の向上効果は期待されるが、その接着性を湿熱環境下で安定的に保ち難く、比較的短期間のうちに剥がれを生じてしまう傾向がある。
上記のような事情のもと、本発明においては、特に着色に関わる機能(光反射性や意匠性(外観)等)及び/又は防湿機能をそなえた機能性要素である着色層や金属含有層、着色等されたポリマー基材と、接着性(密着)が良好で耐候性に優れる複合ポリマー層とを設けた構成とする。具体的には、バックシートを支持するポリマー基材又はその一方面に設けられる層に、着色剤や金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含めて機能性を持たせると共に、ポリマー基材の他方面に、バックシートの構成層である複合ポリマー層を設け、この複合ポリマー層を、分子内に非シロキサン系構造単位と(ポリ)シロキサン構造単位を含む特定の複合ポリマーを用いて好ましくは塗布形成することで、湿熱環境下での耐久性に劣る接着剤量が低減され、ひいては熱や水分による劣化が抑えられる。
これにより、諸機能を付与しながら、熱や水分に長時間曝される湿熱環境下において、長期に亘り接着強度を高く保つことができ、長期耐久性を確保することができる。また、太陽電池モジュールを作製したときには、良好な発電性能が得られると共に、長期に亘り発電効率を安定に保つことができる。
ここで、上記の諸機能には、太陽電池セルを素通りした入射光を反射してセルに戻すことで発電効率を高める光反射機能や、意匠性付与(外観良化)機能、設置環境中の水分に対する耐湿機能が含まれる。また、太陽電池用バックシートとしては、上記に加え、帯電防止性、寸法安定性、絶縁性などの機能を有していることが好ましい。
本明細書中において、上記のような機能を有する層を総じて「機能性層」ともいう。
【0025】
本発明の太陽電池用バックシート(以下、単に「バックシート」ともいう。)は、図1に示すように、ポリマー基材11の一方面に、第1の機能性層(1)(例えば金属含有層)13と、第2の機能性層(例えば着色層)15とを有し、他方面に複合ポリマー層17を有する態様(第1の態様)、又は図2に示すように、着色剤を含めて機能性が付与されたポリマー基材21の一方面に、機能性層(1)として金属含有層13を有し、他方面に複合ポリマー層27を有する態様(第2の態様)に構成することができる。
【0026】
具体的には、本発明の第1の態様は、少なくとも、支持基材としてのポリマー基材である樹脂フィルム(又はシート)と、この上に機能性層として配置される、着色剤含有の着色層と、金属及び/又は金属化合物を含めて防湿性を示す防湿性層とで構成されてもよい。この場合、着色剤として、例えば白色系顔料を用いたときには、光反射性が付与されたバックシートが得られ、また例えば黒色系顔料を用いたときには、黒色層で外観(意匠性)が改善されたバックシートが得られる。着色層や金属含有層には、更に絶縁性、帯電防止性、寸法安定性などの他の機能をも持たせることができる。この場合、絶縁性は、ポリマー基材の厚みを適宜調節することにより付与することができる。帯電防止性は、例えば、アンチモンドープ酸化スズ(TWU-1、三菱マテリアル電子化成(株)製)などを含めることにより付与することができる。また、寸法安定性は、ポリマーの熱収縮に影響するため、ポリマー基材となるフィルム成膜後の熱処理により調節することができる。
これにより、さらに他の機能をも発揮する着色層や防湿性層が得られる。この場合、機能性層は、着色剤を含む着色層及び/又は金属等を含む防湿性層とともに帯電防止層等を重ねて2層以上に構成されていてもよい。
【0027】
また、本発明の第2の態様では、着色剤をポリマー中に練りこむ等により着色剤(例えば顔料)がポリマー中に分散された着色剤含有の着色フィルム又はシート(板状の着色ポリマー基材)と、金属及び/又は金属化合物(例えば金属酸化物)を含む防湿性が付与された防湿性層とで構成されてもよい。着色剤として、例えば白色系顔料を用いたときには、光反射機能を持つポリマー基材が得られ、また例えば黒色系顔料を用いたときには、バックシート外観における装飾性(意匠性)が改善されたポリマー基材が得られる。この場合、溶融押出機等で溶融混練される溶融樹脂中に顔料等や金属等を混合して押出し、フィルム(又はシート)状に成形する等により作製することができる。
【0028】
更に、本発明におけるポリマー基材には、着色及び防湿性以外に、絶縁性、帯電防止性、寸法安定性などの他の機能を持たせることもできる。
【0029】
着色層や金属含有層は、
(1)着色剤や金属及び/又は金属化合物などを含む塗布液の塗布により形成された塗布層、又は、
(2)着色剤や金属及び/又は金属化合物などを含むフィルムもしくはシート、又は箔板を貼合して形成される層
(3)気相成膜された層
のいずれに構成されてもよい。中でも、着色剤を含有する着色層は、接着性の点で(1)で構成されていることが好ましく、金属及び/又は金属化合物を含有する金属含有層は、(3)で構成されていることが好ましい。
【0030】
前記(1)において、塗布により層形成する場合、着色された着色層を設けるときには、本発明のバックシートは、樹脂フィルム(又はシート)等の板状のポリマー基材と、機能性層として、該基材上に塗布形成された顔料等の着色剤を含有する着色層とを含む重層構造であってもよい。この場合、ポリマー基材上に、顔料等の着色剤が分散含有された塗布液を所望の方法で塗布、乾燥させて着色層を形成することにより作製することができる。
【0031】
(着色層)
着色層は、少なくとも着色剤を含有し、さらにバインダーや界面活性剤等の他の成分を用いて構成されている。
【0032】
着色剤としては、顔料及び染料等を用いることができ、耐候性の点で顔料が好ましい。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料を、適宜選択して含有することができる。
【0033】
顔料のうち、機能性層を、太陽電池のオモテ面から入射して太陽電池セルを通過した光を反射して太陽電池セルに戻す反射層として構成する場合、白色系顔料が好ましい。白色系顔料としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等の無機顔料が好ましい。
また、外観を良くするため機能性層に意匠性を付与する場合、顔料として黒色系顔料が好ましい。黒色系顔料としては、カーボンブラック等の無機顔料が好ましい。
【0034】
顔料の機能性層中における含有量は、2.5〜8.5g/mの範囲が好ましい。顔料の含有量が2.5g/m以上であると、必要な着色が得られ、反射率や装飾性を効果的に与えることができる。また、顔料の機能性層中における含有量が8.5g/m以下であると、機能性層の面状を良好に維持しやすく、膜強度により優れる。中でも、顔料の含有量は、4.5〜8.0g/mの範囲がより好ましい。
【0035】
顔料の平均粒径としては、体積平均粒径で0.03〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15〜0.5μm程度である。平均粒径が前記範囲内であると、白色系顔料を用いた系では光の反射効率が高く、また黒色系顔料を用いたときには意匠性に優れる。平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0036】
塗布層である着色層の厚みは、特に制限されるものではないが、塗膜の強度を確保しつつ、効果的に反射率や装飾性を付与する観点から、2〜30μmの範囲が好ましく、より好ましくは4〜20μmである。
【0037】
また、防湿性を付与した機能性層を設ける場合は、本発明のバックシートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等にシリカ又はアルミナ等の無機酸化物をコーティングした透明フィルム、あるいはこの透明フィルム2枚をそのコーティング面同士を貼り合わせてなる積層フィルム等を備えたものが挙げられる。
【0038】
塗布は、例えば、グラビアコータやロールコータ、バーコータ等を利用した塗布方法により好適に行なえる。
【0039】
前記(2)において、貼合により層形成する場合、着色された機能性層を設けるときには、本発明のバックシートは、樹脂フィルム(又はシート)等の板状のポリマー基材と、機能性層として、顔料等の着色剤を含有する板状の着色ポリマー基材とを含む重層構造であってもよい。
ここでの着色ポリマー基材には、顔料等の着色剤をポリマー中に練り込んで板状に成形したもの等が含まれる。例えば、溶融押出機で溶融混練される溶融ポリマー中に顔料等の着色剤を添加して溶融押出し、フィルム(又はシート)状に成形等することで作製されたものでもよい。着色ポリマー基材としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、東レ(株)製のルミラーE20(白色ポリエチレンテレフタレート)、ルミラーX20(黒色ポリエチレンテレフタレート)等を用いることができる。
【0040】
板状の着色ポリマー基材の厚みは、貼り合わせられるポリマー基材の厚みにも依存するため、特に制限されるものではないが、10〜400μmの範囲が好ましい。
【0041】
また、ポリマー基材上に金属含有層を設けることにより防湿性を付与する場合、本発明のバックシートは、板状のポリマー基材と、機能層として金属薄板や金属層とを含む重層構造とすることができる。金属薄板としては、箔板状のアルミニウム(例えばアルミニウム箔)を設けて構成されたものでもよい。また、金属層としては、金属及び/又は金属化合物を気相成膜(例えば化学蒸着)してなる水蒸気バリア層(例えば、金属蒸着膜や金属酸化物の蒸着膜)を設けて構成することができる。
【0042】
(金属含有層)
金属としては、成膜したときに水分透過が抑えられ、好ましくは40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が0.005g/m/day以下であるものから選択される。金属の例としては、防湿性の点で、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等からなる群より選ばれる1以上が挙げられる。また、金属化合物としては、例えば、酸化アルミニウム(Al)等のアルミニウム酸化物、酸化ケイ素(SiO、SiO等のSiO)等のケイ素酸化物、酸化インジウム(InO)等が挙げられる。
水蒸気透過率は、より好ましくは0.001g/m/day以下である。
【0043】
金属含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などの気相成膜法が適している。具体的には、特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号等の公報に記載の形成方法を採用することができる。
【0044】
貼り合わせによる場合、金属含有層は、例えば所望の機能を持つフィルム(又はシート)を接着剤で接着させることにより設けられる。接着剤は、特に制限されるものではなく、例えば、主剤に硬化剤を混合して得られる接着剤(例:主剤であるLX660(K)(DIC(株)製)に硬化剤としてKW75(DIC(株)製)を混合した2液熱硬化型のウレタン系接着剤)等を用いることができる。
【0045】
貼合形成する金属含有層の厚みは、貼り合わせられるポリマー基材の厚みにも依存するため、特に制限されるものではなく、着色や防湿等の程度により適宜選択されるものである。例えば、気相成膜される金属含有層の厚みは、その水蒸気に対する防湿性の点で、10nm以上500nmが好ましい。
【0046】
貼り合わせによる場合も、本発明におけるポリマー基材には、更に、絶縁性、帯電防止性、寸法安定性などの他の機能を付与することができる。この場合、上記のように、ポリマー基材中又は着色層や金属含有層中に例えば帯電防止剤等を併用するほか、本発明における着色層や金属含有層とは別に、例えば着色層や金属含有層の上に更に帯電防止剤等を含有する層が重層されてもよい。
【0047】
本発明のバックシートの1つの例は、ポリマー基材側からみて、水蒸気バリア層(金属含有層)/反射層(白色層)又は意匠性層(黒色層)(いずれも着色層)の重層構造を有する構成である。
【0048】
−ポリマー基材−
本発明のバックシートは、ポリマー基材を設けて構成されている。
ポリマー基材を形成するポリマー成分としては、ポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、又はポリフッ化ビニルなどのフッ素系ポリマー等が挙げられる。これらの中では、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、シンジオタクチックポリスチレンが好ましく、コストや機械強度などの点から、ポリエステルが好ましい。
【0049】
ポリマー基材(支持基材)に用いられるポリエステルとしては、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを挙げることができる。このうち、力学的物性やコストのバランスの点で、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
【0050】
ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。
【0051】
本発明におけるポリエステルを重合する際には、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、アンチモン(Sb)系、ゲルマニウム(Ge)系、チタン(Ti)系の化合物を触媒として用いることが好ましく、中でも特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物をTi元素換算値が1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲となるように触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の使用量がTi元素換算で前記範囲内であると、ポリエステルに存在する末端カルボキシル基を下記範囲に調整することが可能であり、ポリマー基材の耐加水分解性を低く保つことができる。
【0052】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624号、特許第3335683号、特許第3717380号、特許第3897756号、特許第3962226号、特許第3979866号、特許第3996871号、特許第4000867号、特許第4053837号、特許第4127119号、特許第4134710号、特許第4159154号、特許第4269704号、特許第4313538号等に記載の方法を適用できる。
【0053】
ポリエステル中のカルボキシル基含量は、55当量/t(トン;以下同様)以下が好ましく、より好ましくは35当量/t以下である。カルボキシル基含量の下限は、ポリエステルに形成される層(例えば着色層)との間の接着性を保持する点で、2当量/tが望ましい。カルボキシル基含量が55当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。
ここで、「カルボキシル基含量」は、ポリエステルがその分子構造の末端に有するカルボンキシ基(−COOH)の量を意味する。なお、「当量/t」は、1トンあたりのモル当量を表す。
ポリエステル中のカルボキシル基含量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)により調整することが可能である。
本明細書におけるカルボキシル基含量は、H. A. Pohl, Anal. Chem. 26 (1954) p.2145に記載の方法にしたがって、滴定法にて測定される値である。
【0054】
本発明におけるポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含量を達成することができる。固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固相重合には、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号等に記載の方法を適用することができる。
【0055】
固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0056】
ポリエステルをポリマー成分とするポリエステル基材は、例えば、上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出を行なった後、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸した2軸延伸フィルムであることが好ましい。
さらに、必要に応じて180〜230℃で1〜60秒間の熱処理を行なったものでもよい。
【0057】
具体的には、以下のようにして、PETフィルムを成形することができる。
固相重合工程を経た後のポリエステルを溶融混練し、口金(押出ダイ)から押出すこと(溶融押出工程)により、PETフィルムを成形することが好ましい。
【0058】
本発明の製造方法では、溶融押出工程において、PET樹脂を、押出し機を用いて溶融することができる。
溶融押出工程では、押出機に投入された原料樹脂をシリンダ内で溶融混練し、樹脂をシート状に溶融押出す。押出機による溶融混練は、溶融樹脂を押し出すためのスクリュを備えた従来公知の押出機(好ましくは二軸スクリュを備えた二軸押出機)を用い、所望とする樹脂(好ましくはポリエステル樹脂)を得るために必要な条件を設定して行なえる。押出機は、一般にスクリュの数により単軸と多軸とに大別される。多軸の押出機としては、二軸押出機(二軸スクリュ押出機)が好適である。また、押出機は、小型ないし大型のいずれの装置でもよい。熱分解による末端COOHの発生をより抑制できる点で、押出し機内を窒素置換して行なうのがより好ましい。
溶融温度は、250℃〜320℃が好ましく、260℃〜310℃がより好ましく、270℃〜300℃がさらに好ましい。
【0059】
溶融されたPET樹脂の溶融樹脂(メルト)は、ギアポンプ、濾過器等を通して、押出ダイからシート状に押出して製膜されること(製膜工程)が好ましい。このとき、単層で押出してもよいし、多層で押出してもよい。溶融押出しされたメルトは、支持体上で冷却され、固化されてシート状に成形されることが好ましい。支持体としては、特に制限はなく、通常の溶融製膜に用いられる冷却ロールを用いることができる。
【0060】
製膜工程では、溶融押出工程で溶融押出された樹脂を冷却し、樹脂シートを製膜することができる。本工程では、例えば、溶融体(メルト)を、ギアポンプ、フィルタを通した後、ダイから冷却(チル)ロールに押し出す。これを冷却固化することで、未延伸シートが得られる。なお、溶融体(メルト)は、静電印加法を用いて冷却ロールに密着させることができる。
【0061】
冷却ロール自体の温度は、10℃〜80℃が好ましく、より好ましくは15℃〜70℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。さらに、溶融樹脂(メルト)と冷却ロールとの間で密着性を高め、冷却効率を上げる観点からは、冷却ロールにメルトが接触する前に静電気を印加しておくことが好ましい。
【0062】
帯状に吐出された溶融樹脂(メルト)の固化後(延伸前)の厚みは、2600μm〜6000μmの範囲であることで、その後の延伸を経て、厚み260μm〜400μmのポリエステルフィルムを得ることができる。メルトの固化後の厚みは、3100μm〜6000μmの範囲が好ましく、より好ましくは3300μm〜5000μmであり、さらに好ましくは3500μm〜4500μmの範囲である。固化後延伸前の厚みが6000μm以下であることで、メルト押出し中に皺が発生し難く、ムラの発生が抑えられる。また、固化後延伸前の厚みが2600μm以上であることが、メルトの腰が弱いために発生するチルロール(固化するための冷却ロール)への密着むらを抑制し、フィルムのむら低減の観点から好ましい。
【0063】
本発明の製造方法では、上記の製膜工程の後に、作製された押出フィルム(未延伸フィルム)を延伸する工程を含んでいてもよい。本発明の製造方法では、基材は、機械強度の点から2軸延伸したものであることが好ましい。
【0064】
本発明の製造方法では、延伸工程として、下塗り層を形成する工程の前後に、第1の延伸工程と第2の延伸工程の2つの延伸工程を有する態様が好ましい。
第1の延伸工程では、製膜された樹脂シートを第1の方向に延伸する。第1の方向は、シート長手方向(MD)又は該方向に直交するシート幅方向(TD)のいずれでもよいが、第1の延伸工程では、MDに延伸(いわゆる縦延伸)されることが好ましい。
また、後述の下塗り層形成工程を経た後、さらに第2の延伸工程が設けられる。この第2の延伸工程では、下塗り層が塗布形成された樹脂シートを、第1の方向と直交する第2の方向に延伸する。第2の方向は、シート長手方向(MD)又は該方向に直交するシート幅方向(TD)のいずれでもよいが、第2の延伸工程ではTDに延伸(いわゆる横延伸)されることが好ましい。
【0065】
第1の延伸工程と第2の延伸工程との間には、第1の方向に延伸された樹脂シートの少なくとも一方面に下塗り層を塗布形成する下塗り層形成工程が設けられる。
下塗り層形成工程では、上記のように、下塗り層用塗布液をポリマー基材に塗布することにより下塗り層を好適に形成することができる。下塗り層形成用の塗布液を塗布するための塗布法や塗布液の調製に用いる溶媒等については、既述の通りである。
【0066】
このように、第1の延伸工程を経た樹脂シートに下塗り層を形成した後、更に第2の延伸工程を経ることで、下塗り層と樹脂シートとの間の密着性を向上させることができる。
本発明においては、上記のように、延伸を2方向に行なうことで、ポリエステル分子が二軸配向された二軸延伸フィルムが形成されることが好ましい。機械強度の点から、2軸延伸したものであることが好ましい。
【0067】
ポリマー基材(特にポリエステル基材)の厚みは、25〜300μm程度が好ましい。厚みは、25μm以上であると力学強度が良好であり、300μm以下であるとコスト及び耐加水分解性の点で有利である。
特にポリエステル基材は、厚みが増すに伴なって耐加水分解性が悪化し、長期使用時の耐久性が低下する傾向にあり、本発明においては、厚みが120μm以上300μm以下であって、かつポリエステル中のカルボキシル基含量が2〜35当量/tである場合に、より湿熱耐久性の向上効果が奏される。
【0068】
本発明では、ポリマー樹脂中に着色剤として無機粒子又は有機粒子(以下、総じて「微粒子」ともいう。)を混合することができる。これにより、光の反射率(白色度)を向上させ太陽電池の発電効率を上げたり、意匠性を付与することができる。
【0069】
微粒子の平均粒径は、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmであり、さらに好ましくは0.15〜1μmである。微粒子の含有量は、ポリマー全質量に対して、0〜50質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、さらに好ましくは2〜5質量%である。微粒子の平均粒径が0.1〜10μmであると、ポリマー基材の白色度を50以上としやすい。また、微粒子の含有量が1質量%以上であると、白色度を50以上としやすい。微粒子の含有量が50質量%以下であると、ポリマー基材の重量が大きくなり過ぎず、加工などでの取り扱いにより優れる。なお、ここでいう平均粒径、含有量は、ポリマー基材が多層構造の場合、各層の平均値を指す。即ち、平均粒径は、(各層の粒子径の平均値)×(各層の厚み/全層の厚み)を層ごとに算出し、総和としたものを指し、含有量は、(各層の粒子含有量の平均値)×(各層の厚み/全層の厚み)を層ごとに算出し、総和としたものを指す。
【0070】
なお、微粒子の平均粒径は、電顕法により求められる。具体的には、以下の方法による。
微粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーする。次いで、ランダムに選んだ少なくとも200個以上の微粒子について、各粒子の外周をトレースする。画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定する。その測定値の平均値を平均粒径とする。
【0071】
微粒子は、無機粒子又は有機粒子いずれでもよく、両者を併用してもよい。これにより、光の反射率を向上させ太陽電池の発電効率を向上させることができる。好適に使用される無機粒子としては、例えば、湿式及び乾式シリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、珪酸アルミ、リン酸カルシウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム及びフッ化カルシウム等を挙げることができる。特に二酸化チタン、硫酸バリウムが好ましい。なお、酸化チタンはアナターゼ型、ルチル型の何れでもよい。また、微粒子表面にアルミナやシリカ等を用いて無機処理を施してもよいし、シリコン系あるいはアルコール系等を用いて有機処理を施してもよい。
【0072】
これらの粒子の中でも、二酸化チタンが好ましい。ポリマー基材がこれを含有することにより、ポリマー基材は光照射下でも優れた耐久性を奏することができる。具体的には、63℃、50%Rh、照射強度100mW/cmで100時間UV照射した場合、破断伸び保持率が好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上であり得る。本発明におけるポリマー基材は、光分解や劣化が抑制されるため、屋外で用いられる太陽電池の裏面保護膜としてより好適である。
【0073】
二酸化チタンには、ルチル型結晶構造を有するものとアナターゼ型結晶構造を有するものが存在する。本発明におけるポリマー基材にルチル型二酸化チタンを主体とする微粒子を添加することが好ましい。アナターゼ型は、紫外線の分光反射率が非常に大きいのに対し、ルチル型は紫外線の吸収率が大きい(分光反射率が小さい)という特性を有している。本発明者は、二酸化チタンの結晶形態におけるこうした分光特性の違いに着目し、ルチル型二酸化チタンの紫外線吸収性能を利用することで、太陽電池裏面保護用バックシートにおいて、耐光性を向上させることができる。これにより、他の紫外線吸収剤を実質的に添加しなくても、光照射下でのフィルム耐久性に優れる。そのため、紫外線吸収剤のブリードアウトによる汚染や密着性の低下のような問題が生じにくい。
【0074】
なお、上記の通り、本発明における二酸化チタン粒子はルチル型二酸化チタンを主体とするものであるが、ここでの「ルチル型二酸化チタンを主体とする」とは、全二酸化チタン粒子中のルチル型二酸化チタン量が50質量%を超えていることを意味する。また、全二酸化チタン粒子中のアナターゼ型二酸化チタン量が10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%以下である。アナターゼ型二酸化チタンの含有量が上記上限値以下であると、全二酸化チタン粒子中に占めるルチル型二酸化チタン量を確保することができ、紫外線吸収性能を良好に保てる。アナターゼ型二酸化チタンは光触媒作用が強いため、この作用を考慮して耐光性の低下を抑制することができる。ルチル型二酸化チタンとアナターゼ型二酸化チタンとは、X線構造回折や分光吸収特性により区別することができる。
【0075】
ルチル型二酸化チタン微粒子の表面は、アルミナやシリカ等の無機処理が施されてもよいし、シリコン系あるいはアルコール系等の有機処理が施されてもよい。ルチル型二酸化チタンをポリエステル組成物に配合する前に、精製プロセスを用いて、粒径調整、粗大粒子除去を行なってもよい。精製プロセスの工業的手段としては、例えばジェットミル、ボールミル等の粉砕手段、例えば乾式もしくは湿式の遠心分離等の分級手段を適用することができる。
【0076】
ポリマー基材に含有し得る有機粒子は、製膜中の熱に耐えるものが好ましい。例えば架橋型樹脂からなる微粒子、具体的な例としてジビニルベンゼンで架橋したポリスチレンからなる微粒子等が挙げられる。微粒子のサイズや添加量は、無機粒子の場合と同様である。
【0077】
ポリマー基材中へ微粒子を添加する方法は、従来から公知の各種の方法を用いることができる。その代表的な方法を以下に挙げる。
(1)ポリマー基材を構成するポリマーがポリエステルの場合、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に微粒子を添加、もしくは重縮合反応開始前に微粒子を添加する方法。
(2)ポリマー基材を構成するポリマーがポリエステルの場合、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルに微粒子を添加し、溶融混練する方法。
(3)上記(1)、(2)の方法において、微粒子を多量に添加したマスターペレット(又はマスターバッチ(MB)ともいう。)を製造し、これらと微粒子を含有しないポリエチレンテレフタレート等のポリエステルとを混練して、所定量の微粒子を含有させる方法。
(4)上記(3)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
この中では、事前にポリエステル樹脂と微粒子を押出機で混合しておくマスターバッチ法(MB法:上記(3))が好ましい。また、事前に乾燥させていないポリマー(例えばポリエステル樹脂)と微粒子を押出機に投入し、水分や空気などを脱気しながらMBを作製する方法を採用することもできる。さらに、好ましくは、事前に少しでも乾燥したポリエステル樹脂を用いてMBを作製することにより、ポリエステルの酸価上昇が抑えられる。このような方法としては、脱気しながら押出する方法や、十分乾燥したポリエステル樹脂により脱気をせずに押出する方法などが挙げられる。
【0078】
例えば、MBを作製する場合は投入するポリマー(例えばポリエステル樹脂)は、あらかじめ乾燥により水分率を低減させることが好ましい。乾燥条件としては、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃において、1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは6時間以上乾燥する。これにより、ポリエステル樹脂の水分量を好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下になるように十分乾燥する。予備混合の方法は、特に限定されず、バッチによる方法でもよいし、単軸もしくは二軸以上の混練押出機によってもよい。脱気しながらMBを作製する場合は、250℃〜300℃、好ましくは270℃〜280℃の温度でポリエステル樹脂を融解し、予備混練機に一つ、好ましくは2以上の脱気口を設け、0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上の連続吸引脱気を行い、混合機内の減圧を維持すること等の方法を採用することが好ましい。
【0079】
ポリマー基材は、内部に微細な空洞(ボイド)を多数含有してもよい。これにより、より高い白色度を好適に得ることができる。その場合の見かけ比重は0.7以上1.3以下、好ましくは0.9以上1.3以下、より好ましくは1.05以上1.2以下である。見かけ比重が0.7以上であると、ポリマー基材に腰が備わり太陽電池モジュール作製時の加工が良好に行なえる。見かけ比重が1.3以下であると、ポリマー基材の重量が大き玖なり過ぎないため、太陽電池を軽量化することができる。
【0080】
上記の微細な空洞は、微粒子及び/又は後述のポリマー基材を構成するポリマーに非相溶の熱可塑性樹脂に由来して形成することができる。なお、微粒子もしくはポリマーに非相溶の熱可塑性樹脂に由来する空洞とは、微粒子もしくは熱可塑性樹脂のまわりに空洞が存在することをいい、例えばポリマー基材の電子顕微鏡による断面写真などで確認することができる。
【0081】
空洞形成のためにポリマー基材中に添加し得る樹脂は、ポリマー基材を構成するポリマーと非相溶な樹脂(非相溶樹脂)が好ましい。これにより、光を散乱させ光反射率を上げることができる。好ましい非相溶な樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、及びフッ素系樹脂などが好適に挙げられる。これらの非相溶樹脂は、単独重合体であっても共重合体であってもよく、更には2種以上の非相溶樹脂を併用してもよい。これらの中でも、表面張力の小さいポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂やポリスチレン系樹脂が好ましく、さらにはポリメチルペンテンが最も好ましい。該ポリメチルペンテンは相対的にポリエステルとの表面張力差が大きく、かつ融点が高いため、ポリエステル製膜工程においてポリエステルとの親和性が低くボイド(空洞)を形成し易く、非相溶樹脂として特に好ましいものである。
【0082】
ポリマー基材が非相溶樹脂を含有する場合は、その量は、ポリマー基材全体に対して、0〜30質量%であり、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜15質量%の範囲である。含有量が30質量%以下であると、ポリマー基材全体の見かけ密度を確保することができ、延伸時にフィルム破れ等が生じ難く、生産性を良好に保てる。
微粒子を添加する場合、微粒子の平均粒径は0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.15〜1μmの微粒子である。平均粒径が0.1μm以上であると、反射率(白色度)が保たれ、平均粒径が10μm以下であると、ボイドによる力学強度低下を回避することができる。微粒子の含有量は、ポリマー基材全質量に対して、0〜50質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、更に好ましくは2〜5質量%である。含有量が50質量%以下であると、反射率(白色度)が良好に保たれ、ボイドによる力学強度低下を回避することができる。好ましい微粒子としては、ポリエステルと親和性の低いものが挙げられ、具体的には硫酸バリウム等が挙げられる。
【0083】
白色ポリマー基材、すなわち微粒子含有等により空洞形成されたポリマー基材(例えばポリエステルフィルム)は、単層又は2層以上の多層からなる積層構成であってもよい。積層構成としては、白色度の高い(ボイドや微粒子の多い層)と白色度の低い層(ボイドや微粒子の少ない層)を組み合わせることが好ましい。ボイドや微粒子の多い層で光の反射効率を高くできるが、ボイド、微粒子による力学強度の低下(脆化)が発生し易い。これを補うため、白色度の低い層と組み合わせることが好ましい。このため、白色度の高い層はポリマー基材の外層に用いることが好ましく、ポリマー基材の片面に使用してもよく、ポリマー基材の両面に使用してもよい。また、二酸化チタンを微粒子として用いた高白色層をポリマー基材の外層に用いると、二酸化チタンがUV吸収能を有することからポリマー基材の耐光性向上効果が得られる。
【0084】
白色度の高い層が微粒子を含有している層である場合、微粒子量は5質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは6質量%以上20質量%以下である。白色度の高い層が空洞の形成された層である場合、白色度の高い層の見かけ比重は0.7以上1.2以下が好ましく、より好ましくは0.8以上1.1以下である。一方、白色度の低い層が微粒子を含有している層である場合、微粒子量は0質量%以上5質量%未満が好ましく、より好ましくは1質量%以上4質量%以下である。白色度の低い層が空洞の形成された層である場合、白色度の低い層の見かけ比重が0.9以上1.4以下であり、かつ高白色層より高密度のものが好ましく、より好ましくは見かけ比重が1.0以上1.3以下であり、かつ高白色層より高密度のものである。低白色層は、微粒子や空洞を含まないものでも構わない。
白色ポリマー基材の好ましい積層構成としては、高白色層/低白色層、高白色層/低白色層/高白色層、高白色層/低白色層/高白色層/低白色層、高白色層/低白色層/高白色層/低白色層/高白色層などが挙げられる。
積層構成における各層の厚み比は、特に限定されるものではないが、各層の厚みは全層厚みの1%以上99%以下が好ましく、より好ましくは2%以上95%以下である。この範囲以内であると、反射効率の向上、耐光(UV)性付与の効果が得られやすい。ポリマー基材の全層の厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常20〜500μm、好ましくは25〜300μmの範囲である。
積層構成を有するポリマー基材の積層方法は、2台又は3台以上の溶融押出機を用いた、いわゆる共押出法が好ましく用いられる。
【0085】
白色ポリマー基材の白色度を増すためにチオフェジイル等の蛍光増白剤を用いることも好ましい。好ましい添加量は、白色ポリマー基材の全質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上0.3質量%以下である。添加量が0.01質量%以上であると、光線反射率向上の効果が得られやすい。また、添加量が1質量%以下であると、押出しでの熱分解による黄変で反射率が低下することを回避できる。このような蛍光増白剤としては、例えばイーストマンコダック社製のOB−1(商品名)等を用いることができる。
【0086】
白色ポリマー基材は、照度:100mW/cm、温度:60℃、相対湿度:50%RH、照射時間:48時間で紫外線照射した後の黄色み変化量(Δb値)が5未満であることが好ましい。Δb値は、より好ましくは4未満であり、さらに好ましくは3未満である。これにより、太陽光の照射を長時間受けたとしても色変化を少なくできる点で有用である。このような効果は、ポリマー基材を含むバックシートを太陽電池セルに積層した太陽電池モジュールにおいて、特にバックシート側から光照射を受けた際に顕著に現れる。
【0087】
また、カーボンブラックなどの黒色系の顔料を同様に添加することにより、黒色のポリマー基材を得ることができる。
【0088】
(末端封止剤)
ポリマー基材は、ポリマー樹脂に対して0〜10質量%の範囲で末端封止剤を含みあるいは含まない構成とすることができる。末端封止剤の含有量は、0質量%を超10質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.2質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.3質量%〜2質量%である。
【0089】
ポリエステルなどのポリマーの加水分解は、末端カルボン酸等から生じる水素イオン(H)の触媒効果により加速されるため、耐加水分解性(耐候性)を向上させるには、末端カルボキシル基と反応する末端封止剤を添加することが有効である。従って、末端封止剤の含有量が上記範囲内であると、末端封止材がポリマーに対し可塑剤として作用してポリマー基材の力学強度、耐熱性が低下するのを回避することができる。
【0090】
末端封止剤としては、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、カーボネート化合物等が挙げられる。中でも、PETと親和性が高く末端封止能の高いカルボジイミド化合物が好ましい。
【0091】
末端封止剤(特にカルボジイミド化合物)は、高分子量であると、溶融製膜中の揮散を低減できる。分子量は、重量平均分子量で200〜10万が好ましく、より好ましくは2000〜8万、さらに好ましくは1万〜5万である。末端封止剤(特にカルボジイミド化合物)の重量平均分子量が10万以下であると、ポリエステル中に均一分散しやすく、耐候性改良効果が良好に発現する。一方、重量平均分子量が200以上であると、押出し、製膜中に揮散しにくく、耐候性向上効果が得られやすい。
【0092】
〜カルボジイミド系末端封止剤〜
カルボジイミド系末端封止剤は、カルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物である。このカルボジイミド化合物は、一官能性カルボジイミドと多官能性カルボジイミドとがある。
一官能性カルボジイミドとしては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド及びジ−β−ナフチルカルボジイミドなどが挙げられる。特に好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドである。
【0093】
また、多官能性カルボジイミドとしては、重合度3〜15のカルボジイミドが好ましく用いられる。具体的には、1,5−ナフタレンカルボジイミド、4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド、4,4’−ジフェニルジメチルメタンカルボジイミド、1,3−フェニレンカルボジイミド、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンカルボジイミド、2,6−トリレンカルボジイミド、2,4−トリレンカルボジイミドと2,6−トリレンカルボジイミドの混合物、ヘキサメチレンカルボジイミド、シクロヘキサン−1,4−カルボジイミド、キシリレンカルボジイミド、イソホロンカルボジイミド、イソホロンカルボジイミド、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−カルボジイミド、メチルシクロヘキサンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−カルボジイミドなどを例示することができる。
【0094】
カルボジイミド化合物は、熱分解によりイソシアネート系ガスが発生するため、耐熱性の高いカルボジイミド化合物が好ましい。耐熱性を高めるためには、分子量(重合度)が高いほど好ましく、カルボジイミド化合物の末端が耐熱性の高い構造であることが好ましい。また、カルボジイミド化合物は、一度熱分解を起こすと更なる熱分解を起こし易くなるため、ポリエステル等のポリマーの押出温度をなるべく低温下にするなどの工夫を行なうことが好ましい。
【0095】
末端封止剤として用いるカルボジイミド化合物は、環状構造を有するものが好ましく、例えば特開2011−153209号公報に記載の化合物が挙げられる。これらは、低分子量でも、上記した高分子量のカルボジイミド化合物と同等の効果を発現する。これは、ポリエステル等のポリマーの末端カルボキシル基と環状のカルボジイミドが開環反応し、一方がこのポリエステルと反応、開環した他方が他のポリエステルと反応し高分子量化するため、イソシアネート系ガスが発生することを抑制するためである。
【0096】
環状構造を持つカルボジイミド化合物である末端封止剤は、カルボジイミド基を有し、その第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含む化合物であることが好ましい。さらに、末端封止剤は、芳香環に隣接したカルボジイミド基を少なくとも1個有し、芳香環に隣接したカルボジイミド基の第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含むカルボジイミド(芳香族環状カルボジイミドともいう。)であることがより好ましい。
芳香族環状カルボジイミドは、環状構造を複数有していてもよい。
芳香族環状カルボジイミドは分子内に2つ以上のカルボジイミド基の第一窒素と第二窒素とが連結基により結合した環構造を有さない芳香族カルボジイミドであること、すなわち単環であるものも好ましく用いることができる。
【0097】
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよい。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に、10〜15が好ましい。
【0098】
ここで、環状構造中の原子数とは、環状構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば原子数は8であり、50員環であれば原子数は50である。環状構造中の原子数が8以上であると、環状カルボジイミド化合物の安定性が保たれ、保管、使用に適する。また、反応性の観点からは、環員数の上限値に関して特別の制限はないが、原子数が50以下である環状カルボジイミド化合物は、合成上困難であることによるコスト上昇が抑えられる点で好ましい。かかる観点から、環状構造中の原子数は、10〜30が好ましく、10〜20がより好ましく、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0099】
環状構造を有するカルボジイミド化合物の具体例として、以下の化合物が挙げられる。但し、本発明は、以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0100】
【化2】

【0101】
〜エポキシ系末端封止剤〜
エポキシ系末端封止剤は、エポキシ化合物より選択される。エポキシ化合物の好ましい例としては、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
【0102】
グリシジルエステル化合物の具体例としては、安息香酸グリシジルエステル、t−Bu−安息香酸グリシジルエステル、P−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル及びピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0103】
また、グリシジルエーテル化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエ−テル、O−フェニルグリシジルエ−テル、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ブタン、1,6−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ベンゼン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−エトキシエタン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−ベンジルオキシエタン、2,2−ビス−[р−(β,γ−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン及び2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテルなどが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0104】
〜オキサゾリン系末端封止剤〜
オキサゾリン系末端封止剤は、オキサゾリン化合物より選択される。オキサゾリン化合物としては、ビスオキサゾリン化合物が好ましく、具体的には、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4’−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−9,9’−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)及び2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等を例示することができる。これらの中では、ポリエステルとの反応性の観点から、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)が最も好ましく用いられる。さらに、上記で挙げたビスオキサゾリン化合物は、本発明の目的を達成する限り、一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0105】
このような末端封止剤は、ポリマー基材を構成するポリマー中に練り込む等の方法により導入することができる。すなわち、末端封止剤とポリマー分子とを直接接触させて反応させることにより、上記効果が得られる。末端封止剤をPET上の塗布層に添加しても、ポリエステル等のポリマーと末端封止剤は反応しない。
【0106】
ポリマー基材の表面は、必要に応じてコロナ処理、火炎処理、グロー放電処理のような表面処理を行なってもよい。これらの表面処理を施すことで、湿熱環境下に曝された場合の接着性をさらに高めることができる。中でも特に、コロナ処理、グロー放電処理を行なうことで、より優れた接着性の向上効果が得られる。
これらの表面処理は、ポリマー基材(例えばポリエステル基材)表面にカルボキシル基や水酸基が増加することにより接着性が高められるが、架橋剤(特にカルボキシル基と反応性の高いオキサゾリン系もしくはカルボジイミド系の架橋剤)を併用した場合により強力な接着性が得られる。これは、コロナ処理、グロー放電処理による場合により顕著である。
【0107】
コロナ放電処理は、通常誘導体を被膜した金属ロール(誘電体ロール)と絶縁された電極間に高周波、高電圧を印加して、電極間の空気の絶縁破壊を生じさせることにより、電極間の空気をイオン化させて、電極間にコロナ放電を発生させる。そして、このコロナ放電の間を、ポリマー基材を通過させることにより行なう。
ある実施形態において、コロナ放電処理の条件は、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランス1〜3mm、周波数1〜100kHz、印加エネルギー0.2〜5kV・A・分/m程度であることが好ましい。
【0108】
グロー放電処理は、真空プラズマ処理又はグロー放電処理とも呼ばれる方法で、低圧雰囲気の気体(プラズマガス)中での放電によりプラズマを発生させ、基材表面を処理する方法である。ここで用いる低圧プラズマは、プラズマガスの圧力が低い条件で生成する非平衡プラズマである。この低圧プラズマ雰囲気内に被処理フィルムを置くことにより、グロー放電処理を実施し得る。
グロー放電処理において、プラズマを発生させる方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電等が挙げられる。放電に用いる電源は直流でも交流でもよい。交流を用いる場合は30Hz〜20MHz程度の範囲が好ましい。交流を用いる場合には、50Hz又は60Hzの商用の周波数を用いてもよいし、10Hz〜50kHz程度の高周波を用いてもよい。また、13.56MHzの高周波を用いる方法も好ましい。
グロー放電処理で用いるプラズマガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、水蒸気ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスが挙げられ、特に、酸素ガス、又は酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスが好ましい。具体的には、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用することが望ましい。酸素ガスとアルゴンガスを用いる場合、両者の比率としては、分圧比で酸素ガス:アルゴンガス=100:0〜30:70位、より好ましくは、90:10〜70:30位が好ましい。また、特に気体を処理容器に導入せず、リークにより処理容器にはいる大気や被処理物から出る水蒸気などの気体をプラズマガスとして用いる方法も好ましい。
プラズマガスの圧力としては、非平衡プラズマ条件が達成される低圧が必要である。具体的なプラズマガスの圧力としては、0.005〜10Torr、より好ましくは0.008〜3Torr程度の範囲が好ましい。プラズマガスの圧力が0.005Torr以上であると、良好な接着性改良効果が得られ、逆に10Torr以下であることで電流増大による放電の不安定化を防ぐことができる。
【0109】
プラズマ出力としては、処理容器の形状や大きさ、電極の形状などにより一概にはいえないが、100〜2500W程度が好ましく、500〜1500W程度がより好ましい。
グロー放電処理の処理時間は、0.05〜100秒が好ましく、0.5〜30秒程度がより好ましい。処理時間が0.05秒以上であると、良好な接着性改良効果が得られ、逆に処理時間が100秒以下であると、被処理フィルムの変形や着色等を防ぐことができる。
グロー放電処理の放電処理強度は、プラズマ出力と処理時間によるが、0.01〜10kV・A・分/mの範囲が好ましく、0.1〜7kV・A・分/mがより好ましい。
放電処理強度が0.01kV・A・分/m以上であることで、良好な接着性改良効果が得られる。また、放電処理強度が10kV・A・分/m以下であることで、被処理フィルムの変形や着色等を避けることができる。
【0110】
グロー放電処理では、あらかじめポリマー基材を加熱しておくことも好ましい。この方法により、加熱を行わなかった場合に比べ、短時間で良好な接着性が得られる。加熱の温度は40℃〜被処理フィルムの軟化温度+20℃の範囲が好ましく、70℃〜被処理フィルムの軟化温度の範囲がより好ましい。加熱温度を40℃以上とすることで充分な接着性の改良効果が得られる。また、加熱温度を被処理フィルムの軟化温度以下とすることで処理中に良好なフィルムの取り扱い性が確保できる。真空中で被処理フィルムの温度を上げる具体的方法としては、赤外線ヒーターによる加熱、熱ロールに接触させることによる加熱などが挙げられる。
【0111】
(複合ポリマー層)
本発明における複合ポリマー層は、ポリマー基材に直接又は他の層を介して設けられる層であり、塗布法により形成された塗布層であるのが好ましい。この複合ポリマー層は、分子中に以下に示す一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位を有する特定の複合ポリマーを用いて構成されている。本発明における複合ポリマー層は、複合ポリマーを含むことで、長期に亘る耐湿熱性に優れると共に、ポリマー基材との接着性、及びさらに他の隣接層が設けられるときには該他の隣接層間における接着性に優れる。複合ポリマー層は、適用する用途や場合に応じて、更に他の成分を用いて構成することができる。
【0112】
本発明における複合ポリマー層は、例えば、外部環境に曝される最外層、つまり太陽光が直接入射するオモテ面と反対側の裏面の最外層(バックシートの太陽電池セルが配された電池側基板が配置されている側の反対側の最表層)として好適に用いられる。また、複合ポリマー層は、例えば、オモテ面側から入射し太陽電池セル(セル構造部分)を素通りした光を再びセルに戻して発電効率を高める反射層として構成されてもよい。この場合、白色顔料等の着色剤を更に用いて構成することができる。
ポリマー基材上に2層以上の複合ポリマー層を設ける場合、複合ポリマー層/光反射性の複合ポリマー層(白色層)/ポリマー基材の重層構造に構成されてもよい。反射層のバックシート内での接着性、密着性により優れる。
【0113】
−複合ポリマー−
本発明における複合ポリマー層は、分子中に下記一般式(1)で表される質量割合が15〜85質量%の(ポリ)シロキサン構造単位と質量割合が85〜15質量%の非シロキサン系構造単位とを含む複合ポリマーの少なくとも一種を含有する。この複合ポリマーを含有することにより、支持体であるポリマー基材や層間の接着性、すなわち熱や水分が与えられて劣化しやすい剥離耐性、形状安定性を従来に比べて飛躍的に向上させることができる。
【0114】
本発明における複合ポリマーは、(ポリ)シロキサンと少なくとも一種のポリマーとが共重合したブロック共重合体である。(ポリ)シロキサン、及び共重合されるポリマーは、一種単独でもよく、二種以上であってもよい。
本発明において、「シロキサン構造」とは少なくとも1つのシロキサン結合を含む構造を意味する。「ポリシロキサン構造」とは、複数のシロキサン結合が連続してなる構造を意味する。「(ポリ)シロキサン構造」との語は、シロキサン構造とポリシロキサン構造をその範囲に含み、「ポリマーが分子中にシロキサン構造を有する」及び「ポリマーが分子中に(ポリ)シロキサン構造を有する」の表現は、ポリマーがその分子内にシロキサン構造又はポリシロキサン構造を含むことを意味する。
【0115】
【化3】

【0116】
一般式(1)において、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。ここで、RとRとは同一でも異なってもよく、複数のR及びRは各々、互いに同一でも異なってもよい。nは、1以上の整数を表す。
【0117】
複合ポリマー中の(ポリ)シロキサンセグメントである「−(Si(R) (R)−O)−」の部分(一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位)において、R及びRは同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
【0118】
「−(Si(R) (R)−O)−」は、線状、分岐状あるいは環状の構造を有する各種の(ポリ)シロキサンに由来する(ポリ)シロキサンセグメントである。
【0119】
及びRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0120】
及びRで表される「1価の有機基」は、Si原子と共有結合可能な基であり、無置換でも置換基を有してもよい。1価の有機基は、例えば、アルキル基(例:メチル基、エチル基など)、アリール基(例:フェニル基など)、アラルキル基(例:ベンジル基、フェニルエチルなど)、アルコキシ基(例:メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)、アリールオキシ基(例;フェノキシ基など)、メルカプト基、アミノ基(例:アミノ基、ジエチルアミノ基など)、アミド基等が挙げられる。
【0121】
中でも、ポリマー基材などの隣接材料との接着性及び湿熱環境下での耐久性の点で、R、Rとしては各々独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、無置換の又は置換された炭素数1〜4のアルキル基(特にメチル基、エチル基)、無置換の又は置換されたフェニル基、無置換の又は置換されたアルコキシ基(例:メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基)、メルカプト基、無置換のアミノ基、アミド基が好ましく、より好ましくは、湿熱環境下での耐久性の点で、無置換の又は置換されたアルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基)である。
【0122】
nは、1〜5000であることが好ましく、1〜1000であることがより好ましい。
【0123】
シリコーンポリマー中における「−(Si(R)(R)−O)−」の部分(一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位)の具体例としては、ジメチルジメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/γ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/ビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/2−ヒドロキシエチルトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/ジフェニル/ジメトキシシランγ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物等がある。これらの中では、ジメチルジメトキシシラン/γ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/ジフェニル/ジメトキシシランγ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物等が好ましい。
【0124】
複合ポリマー中における「−(Si(R) (R)−O)−」の部分(一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位)の含有比率は、複合ポリマーの全質量に対して15〜85質量%であり、その中でもポリマー基材との接着性及び湿熱環境下での耐久性の点で、20〜80質量%の範囲が好ましい。ポリシロキサン部位の比率は、15質量%未満であるとポリマー基材との接着性及び湿熱環境下に曝された際の接着耐久性が劣り、85質量%を超えると液が不安定になる。
このとき、非シロキサン系構造単位の含有比率は、85〜15質量%である。
このような共重合ポリマーを含有することにより、層強度が向上し、引っ掻きや擦過等による傷の発生を防ぎ、ポリマー基材との接着性、すなわち熱や水分が与えられて劣化しやすい剥離耐性、形状安定性、並びに湿熱環境下での耐久性を、従来に比べて飛躍的に向上させ得る。
シリコーンポリマーが、(ポリ)シロキサン構造単位と他の構造単位とを有する共重合ポリマーである場合、シリコーンポリマー中における「−(Si(R)(R)−O)−」の部分(一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位)の分子量はポリスチレン換算重量平均分子量で5000〜300000程度であり、10000〜150000程度が好ましい。
【0125】
また、シロキサン構造単位と共重合している非シロキサン系構造単位(ポリマーに由来の構造部分)は、シロキサン構造を有していないこと以外は特に制限されるものではなく、任意のポリマーに由来のポリマーセグメントのいずれであってもよい。ポリマーセグメントの前駆体である重合体(前駆ポリマー)としては、例えば、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体等の各種の重合体等が挙げられる。調製が容易なこと及び耐加水分解性に優れる点から、ビニル系重合体及びポリウレタン系重合体が好ましく、ビニル系重合体が特に好ましい。
【0126】
ビニル系重合体の代表的な例としては、アクリル系重合体、カルボン酸ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体、フルオロオレフィン系重合体等の各種の重合体が挙げられる。中でも、設計の自由度の観点から、アクリル系重合体(すなわち非シロキサン系構造単位としてアクリル系構造単位)が特に好ましい。アクリル系重合体を構成するモノマーとしてはアクリル酸のエステル(例:エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等)又はメタクリル酸のエステル(例:メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等)から成るポリマーを挙げることができる。さらに、モノマーとしてアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのカルボン酸、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられ、中でもエチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等が好ましい。
アクリル系重合体の具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−ビドロキシエチルメタアクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/2−ビドロキシエチルメタアクリレート/メタクリル酸/γ−メタクリロキシトリメトキシシラン共重合体、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/グリシジルメタクリレート/アクリル酸共重合体等が挙げられる。
なお、非シロキサン系構造単位を構成する重合体は、一種単独でもよいし、2種以上の併用であってもよい。さらに、個々のポリマーは、ホモポリマーであっても、コポリマーであってもよい。
非シロキサン系構造単位を構成するポリマーセグメントの前駆体である重合体の分子量はポリスチレン換算重量平均分子量で5000〜300000程度であり、10000〜150000程度が好ましい。
【0127】
また、非シロキサン系構造単位をなす前駆ポリマーは、酸基及び中和された酸基の少なくとも1つ並びに/又は加水分解性シリル基を含有するものが好ましい。このような前駆ポリマーのうち、ビニル系重合体は、例えば、(a)酸基を含むビニル系単量体と加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系単量体とを、これらと共重合可能な単量体と共重合させる方法、(2)予め調製した水酸基並びに加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系重合体にポリカルボン酸無水物を反応させる方法、(3)予め調製した酸無水基並びに加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系重合体を、活性水素を有する化合物(水、アルコール、アミン等)と反応させる方法などの各種方法を利用して調製することができる。
【0128】
このような前駆ポリマーは、例えば、特開2009−52011号公報の段落番号0021〜0078に記載の方法を利用して製造、入手することができる。
【0129】
本発明における複合ポリマー層は、バインダーとして、複合ポリマーを単独で用いてもよいし、他のポリマーと併用してもよい。他のポリマーを併用する場合、本発明における複合ポリマーの比率は、全バインダーの30質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上である。複合ポリマーの比率が30質量%以上であることにより、ポリマー基材との接着性及び湿熱環境下での耐久性により優れる。
【0130】
複合ポリマーの分子量は、5000〜300000程度であり、10000〜150000程度が好ましい。
【0131】
複合ポリマーの調製には、(i)前駆ポリマーと、一般式(1)〔−(Si(R) (R)−O)−〕の構造を有する(ポリ)シロキサンとを反応させる方法、(ii)前駆ポリマーの存在下に、R及び/又はRが加水分解性基である「−(Si(R) (R)−O)−」の構造を有するシラン化合物を加水分解縮合させる方法、等の方法を利用することができる。
(ii)の方法で用いられるシラン化合物としては、各種シラン化合物が挙げられるが、アルコキシシラン化合物が特に好ましい。
【0132】
(i)の方法により複合ポリマーを調製する場合、例えば、前駆ポリマーとポリシロキサンの混合物に、必要に応じて水と触媒を加え、20〜150℃程度の温度で30分〜30時間程度(好ましくは50〜130℃で1〜20時間)反応させることにより調製することができる。触媒としては、酸性化合物、塩基性化合物、金属含有化合物等の各種のシラノール縮合触媒を添加することができる。
また、(ii)の方法により複合ポリマーを調製する場合、例えば、前駆ポリマーとアルコキシシラン化合物の混合物に、水とシラノール縮合触媒を添加して、20〜150℃程度の温度で30分〜30時間程度(好ましくは50〜130℃で1〜20時間)加水分解縮合を行なうことにより調製することができる。
【0133】
複合ポリマーの好ましい例としては、(ポリ)シロキサン構造単位がジメチルジメトキシシラン/γ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/ジフェニル/ジメトキシシランγ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物のいずれかからなり、(ポリ)シロキサン構造単位と共重合するポリマー構造部分がエチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートメチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれるモノマー成分からなるアクリルポリマーである複合ポリマーが挙げられ、より好ましい例としては(ポリ)シロキサン構造単位がジメチルジメトキシシラン/γ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物とメチルメタクリレート、エチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれるモノマー成分からなるアクリルポリマーである複合ポリマーが挙げられる。
【0134】
また、(ポリ)シロキサン構造を有するポリマーは、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、DIC(株)製のセラネートシリーズ(例えば、セラネートWSA1070、同WSA1060等)、旭化成ケミカルズ(株)製のH7600シリーズ(H7650,H7630,H7620等)、JSR(株)製の無機・アクリル複合エマルジョンなどを使用することができる。
【0135】
(ポリ)シロキサン構造を有するポリマーの複合ポリマー層中における含有比率としては、0.2g/m超15g/m以下の範囲とする。ポリマーの含有比率が0.2g/m以下であると、ポリマーの比率が少な過ぎ、外力を受けて発生する傷が抑えられない。また、ポリマーの含有比率が15g/mを超えると、ポリマーの比率が多過ぎて、複合ポリマー層の硬化が不十分となる。
上記範囲の中では、複合ポリマー層の表面強度の観点から、0.5g/m〜10.0g/mの範囲が好ましく、1.0g/m〜5.0g/mの範囲がより好ましい。
【0136】
−架橋剤−
本発明においては、複合ポリマー層が、複合ポリマー間を架橋する架橋剤由来の構造部分を有していることが好ましい。つまり、複合ポリマー層は、複合ポリマー間を架橋しうる架橋剤を用いて構成することができる。架橋剤で架橋されることにより、湿熱経時後の接着性、具体的には湿熱環境下に曝された場合のポリマー基材に対する接着、及び層間の接着をより向上させることができる。
【0137】
架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。架橋剤の中でも、カルボジイミド系化合物やオキサゾリン系化合物などの架橋剤が好ましい。
【0138】
オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく用いられる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS−500、同WS−700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
【0139】
カルボジイミド系架橋剤の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド等を挙げることができる。また、特開2009−235278号公報に記載のカルボジイミド化合物も好ましい。具体的には、カルボジイミド系架橋剤として、カルボジライトSV−02、カルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−04、カルボジライトE−01、カルボジライトE−02(いずれも日清紡ケミカル(株)製)等の市販品も利用できる。
【0140】
また、複合ポリマー層中における、架橋剤由来の構造部分の複合ポリマーに対する質量割合としては、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。架橋剤の含有割合は、1質量%以上であると、複合ポリマー層の強度、及び湿熱経時後の接着性に優れ、30質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保てる。
【0141】
本発明のバックシートにおいては、複合ポリマー層は、該層が上記のように複合ポリマーを含むことで、ポリマー基材に対する接着が良化し、層間の接着性が良化する。さらに、湿熱環境下での劣化耐性(接着耐久性)に優れている。このことから、ポリマー基材から最も離れた位置に配された最外層として設けられることも好ましい。具体的には、例えば、太陽電池素子を備えた電池側基板と対向する側(オモテ側)とは反対側(裏側)に配置されるバック層などである。
【0142】
複合ポリマー層は、1層のみ設けられてもよいし、複数の複合ポリマー層が形成されてもよい。
複合ポリマー層の1層の厚みとしては、通常は0.3μm〜22μmが好ましく、0.5μm〜15μmがより好ましく、0.8μm〜12μmの範囲が更に好ましく、1.0μm〜8μmの範囲が特に好ましく、2〜6μmの範囲が最も好ましい。複合ポリマー層の厚みが0.3μm以上、更には0.8μm以上であることで、湿熱環境下に曝されたときに複合ポリマー層表面から内部に水分が浸透し難く、複合ポリマー層とポリマー基材との界面に水分が到達し難くなることで接着性が顕著に改善される。また、複合ポリマー層の厚みが22μm以下、更には12μm以下であると、複合ポリマー層自身が脆弱になり難く、湿熱環境下に暴露したときに複合ポリマー層の破壊が生じにくくなることで接着性が改善される。
【0143】
本発明における複合ポリマー層は、複合ポリマーと、複合ポリマーのポリマー分子間が架橋剤で架橋された架橋構造を有し、該架橋剤由来の構造部分の複合ポリマーに対する比率が1〜30質量%であって、複合ポリマー層の厚みが0.8μm〜12μmである場合が特に湿熱経時後の接着性に対する向上効果に優れる。
【0144】
〜バック層〜
本発明における複合ポリマー層をバック層として構成する場合、複合ポリマーに加え、必要に応じて、さらに各種添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。電池側基板(=太陽光が入射する側の透明性の基板(ガラス基板等)/太陽電池素子を含む素子構造部分)/太陽電池用バックシートの積層構造を有する太陽電池において、バック層は支持基材をなすポリマー基材の電池側基板と対向する側と反対側に配される裏面保護層であり、1層構造でもよいし、2層以上を積層した構造であってもよい。複合ポリマーを含むことで、ポリマー基材に対する接着や、バック層が2層以上からなる場合の層間における接着が良化するとともに、更には湿熱環境下での劣化耐性が得られる。そのため、本発明における複合ポリマー層であるバック層が、ポリマー基材から最も離れた最外層として配置された形態が好ましい。
【0145】
バック層を2層以上設ける場合は、両方のバック層が複合ポリマー、又は複合ポリマーと架橋剤との双方を含む複合ポリマー層であってもよく、一方のみのバック層が複合ポリマー、又は複合ポリマーと架橋剤との双方を含む複合ポリマー層であってもよい。
中でも、湿熱環境下における接着耐久性を改善する観点から、少なくとも、ポリマー基材と接するバック層(第1のバック層)が複合ポリマー、又は複合ポリマーと架橋剤との双方を含む複合ポリマー層で構成されていることが好ましい。なお、この場合、ポリマー基材上の第1のバック層の更に上に設けられる第2のバック層は、一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位と非ポリシロキサン構造単位を含有する複合ポリマーを含まなくてもよいが、その場合は樹脂単独の空隙のない均一膜を形成してポリマーと顔料との間の空隙からの水分侵入を防ぎ、湿熱環境下での接着性を高める観点から、ポリシロキサンの単独重合体をも含まないことが好ましい。
【0146】
バック層中に含むことができる他の成分については、後述するように、界面活性剤、フィラー等が挙げられる。また、着色層に用いられる顔料を含んでもよい。これらの他の成分及び顔料の詳細、好ましい態様については、後述する。
【0147】
〜着色層〜
本発明における複合ポリマー層を着色層(好ましくは反射層)として構成する場合、複合ポリマーに加え、さらに顔料を含有することができる。着色層は、必要に応じて、さらに各種添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。
複合ポリマー層が着色層に構成される場合、顔料の少なくとも一種を含有することができる。顔料としては、既述のポリマー基材を構成する機能性層に用いることができる顔料と同様のものを使用することができ、顔料の種類や平均粒径などの詳細及び好ましい態様も同様である。顔料の着色層中における含有量は、2.5〜8.5g/mの範囲が好ましく、4.5〜8.0g/mの範囲がより好ましい。顔料の含有量が2.5g/m以上であると、必要な着色が得られ、反射率や装飾性を効果的に与えることができる。顔料の含有量が8.5g/m以下であると、着色層の面状を良好に維持しやすく、膜強度により優れる。
【0148】
複合ポリマー層を着色層として構成する場合、バインダー成分(複合ポリマーを含む)の含有量は、顔料に対して、15〜200質量%の範囲が好ましく、17〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、15質量%以上であると、着色層の強度が充分に得られ、また200質量%以下であると、反射率や装飾性を良好に保つことができる。
【0149】
−添加剤−
本発明の複合ポリマー層には、必要に応じて、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を添加する場合の添加量は、0.1〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜5mg/mである。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、15mg/m以下であると、接着を良好に行なうことができる。
【0150】
本発明における複合ポリマー層には、更に、フィラーを添加してもよい。フィラーの添加量は、複合ポリマー層のバインダー当たり20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーの添加量が20質量%以下であると、複合ポリマー層の面状がより良好に保てる。
【0151】
(下塗り層)
本発明の太陽電池用バックシートには、ポリマー基材と複合ポリマー層との間に下塗り層を設けてもよい。下塗り層の厚みは、厚み2μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.05μm〜2μmであり、更に好ましくは0.1μm〜1.5μmである。厚みが2μm以下であると、面状を良好に保つことができる。また、厚みが0.05μm以上であることにより、必要な接着性を確保しやすい。
【0152】
下塗り層は、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂から選ばれる1種類以上のポリマーを含有する層であるのが好ましい。
【0153】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン共重合体が好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、アローベース(登録商標)SE−1013N、アローベース(登録商標)SD−1010、アローベース(登録商標)TC−4010、アローベース(登録商標)TD−4010(ともにユニチカ(株)製)、ハイテックS3148、ハイテックS3121、ハイテックS8512(ともに東邦化学(株)製)、ケミパール(登録商標)S−120、ケミパール(登録商標)S−75N、ケミパール(登録商標)V100、ケミパール(登録商標)EV210H(ともに三井化学(株)製)などを挙げることができる。その中でも、本発明では、低密度ポリエチレン、アクリル酸エステル、無水マレイン酸の三元共重合体である、アローベース(登録商標)SE−1013N(ユニチカ(株)製)を用いることが好ましい。
【0154】
アクリル樹脂としては、例えば、ホリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等を含有するポリマー等が好ましい。アクリル樹脂としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、AS−563A(商品名;ダイセルフアインケム(株)製)を好ましく用いることができる。
【0155】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等が好ましい。ポリエステル樹脂としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、バイロナール(登録商標)MD−1245(東洋紡(株)製)を好ましく用いることができる。
また、ポリウレタン樹脂としては、例えば、カーボネート系ウレタン樹脂が好ましく、例えば、スーパーフレックス(登録商標)460(第一工業製薬(株)製)を好ましく用いることができる。
【0156】
これらの中でも、ポリマー基材及び白色層との接着性を確保する観点から、ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。また、これらのポリマーは、一種単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、アクリル樹脂とポリオレフィン樹脂の組み合わせが好ましい。
【0157】
下塗り層は、架橋剤を含有すると、下塗り層の耐久性を向上することができる点でより好ましい。架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。その中でも、本発明におけるポリマー基材は、下塗り層における架橋剤がオキサゾリン系架橋剤であることが好ましい。オキサゾリン系架橋剤は、オキサゾリン基を有する架橋剤であり、例えば、エポクロス(登録商標)K2010E、エポクロス(登録商標)K2020E、エポクロス(登録商標)K2030E、エポクロス(登録商標)WS−500、エポクロス(登録商標)WS−700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等を利用することができる。
【0158】
架橋剤の添加量は、下塗り層を構成するバインダーに対して0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以上15質量%未満である。特に、架橋剤の添加量が0.5質量%以上であると、下塗り層の強度及び接着性を保持しながら、充分な架橋効果が得られる。また、架橋剤の添加量が30質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保て、15質量%未満であると塗布面状をより改良できる。
【0159】
下塗り層は、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤を含有することが好ましい。下塗り層に用いることができる界面活性剤の範囲は、白色層に用いることができる界面活性剤の範囲と同様である。中でも、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
界面活性剤を含有する場合、その含有量は0.1〜10mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜3mg/mである。界面活性剤の含有量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、10mg/m以下であると、ポリマー基材と白色層との接着を良好に行なうことができる。
【0160】
下塗り層を塗布形成する方法としては、公知のコーティング方法が適宜採択される。コーティング方法としては、例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、スプレーあるいは刷毛を用いたコーティング方法等の方法がいずれも適用可能である。また、下塗り層の形成は、ポリマー基材を下塗り層形成用の調整液に浸漬して行なってもよい。また、コストの観点からは、下塗り層形成用の調整液を、ポリマー基材を構成する樹脂シートの製造工程内において樹脂シートにコーティングする、いわゆるインラインコート法により塗布する態様によって、下塗り層が形成された樹脂フィルムが製造される態様が好ましい。
具体的には、例えば、原料樹脂を溶融混練して樹脂を溶融押出し、溶融押出された樹脂を(例えば静電密着法等を併用しつつ冷却ドラム上にキャストすることで)冷却し樹脂シートを製膜する製膜工程と、樹脂シートを第1の方向(例えばシート長手方向(MD:Machine Direction;以下同様)に延伸する第1の延伸工程と、一方向に延伸された樹脂シートの少なくとも一方面に下塗り層を塗布形成する下塗り層形成工程と、下塗り層が塗布形成された樹脂シートを、第1の方向と直交する第2の方向(例えば長手方向と直交する幅方向(TD:Transverse Direction;以下同様)に延伸する第2の延伸工程とを有する方法などにより、下塗り層を有する樹脂フィルムは好適に製造される。
また、コーティング時の乾燥、熱処理の条件は、塗布の厚み、装置の条件にもよるが、コーティング後直ちに直角方向の延伸工程に送入し、延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましい。このような場合、乾燥、熱処理は、通常50℃〜250℃程度で行なわれる。
なお、下塗り層が形成されるポリマー基材の表面には、コロナ放電処理や他の表面活性化処理が施されてもよい。
【0161】
上記の溶融押出工程、製膜工程、第1及び第2の延伸工程、及び下塗り層形成工程の詳細については、既述の通りである。
【0162】
下塗り層形成用の塗布液中の固形分濃度は、30質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは10質量%以下である。固形分濃度の下限は1質量%が好ましく、さらに好ましくは3質量%、特に好ましくは5質量%である。固形分濃度が上記範囲にあることで、面状が良好な下塗り層を形成することができる。
【0163】
また、ポリマー基材の第1のポリマー層が設けられている側とは反対側に、着色層を設けることができる。
【0164】
〜物性〜
着色層に顔料として白色顔料を添加して反射層とする場合、着色層が設けられている側の表面における550nmの光反射率は、75%以上であることが好ましい。なお、光反射率とは、表面から入射した光が反射層で反射して再び該表面から出射した光量の入射光量に対する比率である。ここでは、代表波長光として、波長550nmの光が用いられる。
光反射率が75%以上であると、セルを素通りして内部に入射した光を効果的にセルに戻すことができ、発電効率の向上効果が大きい。着色剤の含有量を2.5〜30g/mの範囲で制御することにより、光反射率を75%以上に調整することができる。
【0165】
(他の機能層)
本発明の太陽電池用バックシートは、ポリマー基材と複合ポリマー層以外に他の機能層を有していてもよい。他の機能層として、易接着性層が設けられてもよい。
【0166】
[フッ素含有樹脂層]
本発明における複合ポリマー層の上には、さらに他の機能性層として、フッ素ポリマーを含有するフッ素含有樹脂層を設けて構成されてもよい。
フッ素含有樹脂層に用いられるフッ素ポリマーとしては、−(CFX−CX)−で表される繰り返し単位を有するポリマーであれば特に制限はない(但し、X、X、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子又は炭素数1から3のパーフルオロアルキル基を示す。)。
【0167】
フッ素ポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(以降、PTFEと表す場合がある。)、ポリフッ化ビニル(以降、PVFと表す場合がある。)、ポリフッ化ビニリデン(以降、PVDFと表す場合がある。)、ポリ塩化3フッ化エチレン(以降、PCTFEと表す場合がある)、ポリテトラフルオロプロピレン(以降、HFPと表す場合がある。)などがある。
【0168】
フッ素ポリマーは、単独のモノマーを重合したホモポリマーでもよいし、2種類以上を共重合したものでもよい。この例として、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロプロピレンを共重合したコポリマー(P(TFE/HFP)と略記)、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンを共重合したコポリマー(P(TFE/VDF)と略記)等を挙げることができる。
【0169】
さらに、フッ素含有樹脂層に用いるポリマーとしては、−(CFX−CX)−で表されるフッ化炭素系モノマーと、それ以外のモノマー(非フッ素含有モノマー)とを共重合したポリマーでもよい。フッ化炭素系モノマーの具体例としては、4フッ化エチレン、塩化3フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフロロプロピレン、フッ素含有アルキルビニルエーテル(例:パーフロロエチルビニルエーテル)、フッ素含有エステル等(パーフロロブチルメタクリレート等)がある。非フッ素含有モノマーの具体例としてはエチレン、アルキルビニルエーテル(例:エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル)、カルボン酸(例:アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシブチメビニルエーテル等)がある。フッ素ポリマーがフッ化炭素系モノマーと非フッ素含有モノマーとの)とを共重合したポリマーである場合、フッ素ポリマーの全質量に対するフッ素含有モノマーの含有量は30質量%〜98質量%が好ましく、より好ましくは40〜80質量%である。フッ素含有モノマーの割合が30質量%以上であると十分な耐久性を得うる。また重合の安定性の観点からは98質量%以下であることが好ましい。
フッ化炭素系モノマーと非フッ素含有モノマーとの)とを共重合したポリマーの例としてテトラフルオロエチレンとエチレンとを共重合してなる共重合体(P(TFE/E)と略記)、テトラフルオロエチレンとプロピレンとを共重合してなる共重合体(P(TFE/P)と略記)、テトラフルオロエチレンとビニルエーテルとを共重合してなる共重合体(P(TFE/VE)と略記)、テトラフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルとを共重合してなる共重合体(P(TFE/FVE)と略記)、クロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルとを共重合してなる共重合体(P(CTFE/VE)と略記)、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルとを共重合してなる共重合体(P(CTFE/FVE)と略記)、テトラフルオロエチレンとエチレンとアクリル酸とを共重合してなる共重合体、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなる共重合体、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとエチレンとを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロエチルビニルエーテルとを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロエチルビニルエーテルとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体、フッ化ビニリデンとメチルメタクリレートとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体、フッ化ビニルとエチルアクリレートとアクリル酸とを共重合してなる共重合体、等を挙げることができる。
この中で、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロエチルビニルエーテルとを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロエチルビニルエーテルとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体、フッ化ビニリデンとメチルメタクリレートと/メタクリル酸とを共重合してなる共重合体、及びフッ化ビニルとエチルアクリレートとアクリル酸とを共重合してなる共重合体が好ましい。
中でも、クロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとを共重合してなる共重合体、及びクロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体がさらに好ましい。
上記フッ素系ポリマーとしては、市販されているものも使用し得る。市販品の具体例としては、ルミフロン(登録商標)LF200(旭硝子株式会社製)、ゼッフル(登録商標)GK570(ダイキン工業株式会社製)、オブリガードSW0011F(商品名、AGCコーテック株式会社製)等がある。
フッ素系ポリマーの分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で2000〜1000000程度であり得、3000〜300000程度が好ましい。
【0170】
フッ素ポリマーとしてはポリマーを有機溶剤に溶解して用いられ得るものでも、ポリマー微粒子を水に分散して用いられ得るものでもよい。環境負荷が小さい点からは後者が好ましい。フッ素ポリマーの水分散物については、例えば特開2003−231722号公報、特開2002−20409号公報、特開平9−194538号公報等に記載されている。
【0171】
[易接着性層]
本発明のバックシートには、ポリマー基材の上にさらに易接着性層が設けられていてもよい。易接着性層は、バックシートを電池側基板(電池本体)の太陽電池素子(以下、発電素子ともいう)を封止する封止材と強固に接着するための層である。
【0172】
易接着性層は、バインダー、無機微粒子を用いて構成することができ、必要に応じて、さらに添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。易接着性層は、電池側基板の発電素子を封止するエチレン−ビニルアセテート(EVA;エチレン−酢酸ビニル共重合体)系封止材に対して、10N/cm以上(好ましくは20N/cm以上)の接着力を有するように構成されていることが好ましい。接着力が10N/cm以上であると、接着性を維持し得る湿熱耐性が得られやすい。
【0173】
なお、接着力は、易接着性層中のバインダー及び無機微粒子の量を調節する方法、バックシートの封止材と接着する面にコロナ処理を施す方法などにより調整が可能である。
【0174】
−バインダー−
易接着性層は、バインダーの少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられ、中でも耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。
【0175】
好ましいバインダーの例としては、ポリオレフィンの具体例としてケミパールS−120、S−75N(ともに三井化学(株)製)、アクリル樹脂の具体例としてジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬(株)製)、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の具体例としてセラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)とH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0176】
バインダーの易接着性層中における含有量は、0.05〜5g/mの範囲とすることが好ましい。中でも、0.08〜3g/mの範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、0.05g/m以上であると所望とする接着力が得られやすく、5g/m以下であるとより良好な面状が得られる。
【0177】
−微粒子−
易接着性層は、無機微粒子の少なくとも一種を含有することができる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
【0178】
無機微粒子の粒径は、体積平均粒径で10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径がこの範囲内であると、より良好な易接着性を得ることができる。粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0179】
無機微粒子の形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0180】
無機微粒子の含有量は、易接着性層中のバインダーに対して、5〜400質量%の範囲とする。無機微粒子の含有量は、5質量%未満であると、湿熱雰囲気に曝されたときに良好な接着性が保持できず、400質量%を超えると、易接着性層の面状が悪化する。
中でも、無機微粒子の含有量は、50〜300質量%の範囲が好ましい。
【0181】
−架橋剤−
易接着性層には、架橋剤の少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適な架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。中でも、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、オキサゾリン系架橋剤が特に好ましい。オキサゾリン系架橋剤の具体例については、既述の複合ポリマー層の項で説明した具体例と同様のものが挙げられる。
【0182】
架橋剤の易接着性層中における含有量としては、易接着性層中のバインダーに対して、5〜50質量%が好ましく、中でもより好ましくは20〜40質量%である。架橋剤の含有量は、5質量%以上であると、良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や接着性を保持することができ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保つことができる。
【0183】
−添加剤−
本発明における易接着性層には、必要に応じて、更に、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0184】
〜易接着性層の形成方法〜
易接着性層の形成は、易接着性を有するポリマーシートを基材に貼合する方法や、塗布による方法が挙げられる。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の塗布法を利用することができる。塗布液の調製に用いる塗布溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0185】
易接着性層の厚みには、特に制限はないが、通常は0.05〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であると必要な易接着性を好適に得ることができ、8μm以下であると面状がより良好になる。
また、本発明の易接着性層は、着色層の効果を低減させないために、透明であることが必要である。
【0186】
〜物性〜
また、本発明の太陽電池用バックシートは、120℃、100%RHの雰囲気下に48時間保存した後の層間接着力が、保存前の層間接着力に対して、75%以上であることが好ましい。本発明の太陽電池用バックシートは、既述の通り、所定の複合ポリマー層を有することにより前記保存後にも保存前の75%以上の接着力が得られる。これにより、作製された太陽電池モジュールは、バックシートの剥がれやそれに伴なう発電性能の低下が抑制され、長期耐久性がより向上する。
【0187】
<太陽電池用バックシートの製造>
本発明の太陽電池用バックシートは、上記のように、ポリマー基材の上に本発明における複合ポリマー層と、着色層、金属含有層、必要に応じて易接着性層を形成することができる方法であればいずれの方法により作製されてもよい。本発明においては、金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含有する金属含有層をポリマー基材上に形成する工程と、分子中に既述の一般式(1)で表される質量割合が15〜85質量%のシロキサン構造単位と質量割合が85〜15質量%の非シロキサン系構造単位とを有する複合ポリマー及び好ましくは架橋剤を含有する塗布液(及び必要に応じて易接着性層用塗布液等)を塗布し、少なくとも1層の複合ポリマー層をポリマー基材上に形成する工程とを設けて作製する方法(本発明の太陽電池用バックシートの製造方法)により好適に作製することができる。
なお、複合ポリマー層用塗布液は、既述のように少なくとも複合ポリマーを含有する塗布液であり、さらにカルボジイミド系化合物及びオキサゾリン系化合物から選ばれる架橋剤を含有することが好ましい。ポリマー基材、及び各塗布液を構成する複合ポリマー、架橋剤、着色剤、金属及び金属化合物、並びに他の成分などの詳細については、太陽電池用バックシートの項にて既述した通りである。
【0188】
好適な塗布法も既述の通りであり、例えば、グラビアコータやロールコータ、バーコータを利用した塗布方法を適用することができる。また、本発明における塗布工程では、ポリマー基材の表面に直にあるいは厚み2μm以下の下塗り層を介して、複合ポリマー層用塗布液を塗布し、ポリマー基材上に複合ポリマー層(例えば着色層(好ましくは反射層)やバック層)を形成することができる。
【0189】
複合ポリマー層の形成は、ポリマーシートをポリマー基材に貼合する方法、ポリマー基材形成時に複合ポリマー層を共押出しする方法、塗布による方法等により行なえる。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましく、有機溶媒が水に混合した水系の混合溶媒でもよい。塗布による場合、塗布方法としては、例えば、グラビアコータ、ロールコータ、バーコータなどを用いた公知の塗布方法を利用することができる。
【0190】
塗布液は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよい。中でも、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0191】
複合ポリマー層用塗布液としては、これに含まれる溶媒中の50質量%以上、好ましくは60質量%以上が水である水系塗布液であることが好ましい。水系塗布液は、環境負荷の点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、環境負荷が特に小さくなる点で有利である。複合ポリマー層用塗布液中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の90質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0192】
塗布後は、所望の条件で乾燥を行なう乾燥工程が設けられてもよい。
【0193】
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池モジュールは、既述の本発明の太陽電池用バックシート、又は既述の太陽電池用バックシートの製造方法により製造された太陽電池用バックシートを設けて構成されている。本発明の好ましい形態として、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性のフロント基板と既述の本発明の太陽電池用バックシートとの間に配置し、該フロント基板とバックシートとの間で太陽電池素子をエチレン−ビニルアセテート系等の封止材で封止、接着して構成されている。すなわち、フロント基板とバックシートとの間に、太陽電池素子及び太陽電池素子を封止する封止材を有するセル構造部分が設けられている。
【0194】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0195】
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0196】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0197】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0198】
−ポリマー基材の作製−
(1)ポリエチレンテレフタレート支持体(PET)の作製
[工程1]−エステル化−
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒化学工業(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
【0199】
[工程2]−ポリマーペレットの作製−
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマー中においてコバルト元素換算値、マンガン元素換算値がそれぞれ30ppm、15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマー中においてチタン元素換算値が5ppmとなるように添加した。その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマー中においてリン元素換算値が5ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
但し、チタンアルコキシド化合物には、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)を用いた。
【0200】
[工程3]−フィルム状ポリマー基材の作製−
以上のようにして得られたペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmの未延伸PETシートを作製した。その後、この未延伸PETシートを90℃で縦方向に3倍に延伸し、更に120℃で横方向に3.3倍に延伸した。このようにして、厚み300μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体(PET)を得た。得られたPETのカルボキシル基含量は、38当量/tであった。
【0201】
なお、得られたペレットについて、H. A. Pohl, Anal. Chem. 26 (1954) 2145に記載の方法にしたがって、滴定法にて末端COOH基量を測定した。具体的には、ペレットをベンジルアルコールに205℃で溶解し、フェノールレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノール/ベンジルアルコール溶液で滴定し、その適定量から末端カルボン酸基量(当量/t;=末端COOH量)を算出した。
【0202】
(2)ポリフェニレンエーテル支持体(PPE)の作製
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物(ノリルN300、SABICイノベーションプラスチックス(株)製)を用い、押出キャスト法(シリンダー温度:270〜300℃)にて溶融押出してシート状に成形し、厚み240μmのシートを作製した。その後、テンター装置を使用して乾燥機(機内温度:180℃)中にてシートに熱処理を施した。このようにして、ポリフェニレンエーテル支持体(PPE)を作製した。
【0203】
(3)シンジオタクチックポリスチレン支持体(SPP)の作製
シンジオタクチックポリスチレン樹脂(ザレック 30A、出光石油化学(株)製)90部に、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体(SBS)の水素添加物(タフテック1052、旭化成工業(株)製)10部を添加し、マスターペレットを作製した。これを用い、押出キャスト法(シリンダー温度:270〜300℃)にて溶融押出してシート状に成形し、厚み50μmのシートを作製した。その後、テンター装置を使用して乾燥機(機内温度:180℃)中にてシートに熱処理を施した。このようにして、シンジオタクチックポリスチレン支持体(SPP)を作製した。
【0204】
(4)白色ポリフッ化ビニル支持体(白色PVF)の作製
ポリフッ化ビニル、ジメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、及び二酸化チタンを混合し、110℃に加熱しながら攪拌して均一な溶液とした。この溶液を、あらかじめ80℃に加熱しておいたオーブン中で、ガラス板上に0.1mmのキャスト厚になるように流延した後、直ちに30℃の水中に投入し、白色のポリフッ化ビニル支持体(白色PVF)を作製した。
【0205】
−ポリマーの合成−
(合成例−1):複合ポリマー水分散物P−1の合成
撹拌装置、滴下ロートを備え、窒素ガス置換した反応容器に、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル(PNP)81部、イソプロピルアルコール(IPA)360部、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)110部、及びジメチルジメトキシシラン(DMDMS)71部を仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら80℃に昇温した。
次いで、この反応容器内に同温度で、メチルメタクリレート(MMA)260部、n−ブチルメタクリレート(BMA)200部、n−ブチルアクリレート(BA)110部、アクリル酸(AA)30部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)19部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート31.5部(TBPO)、及びPNP部31.5部からなる混合物を4時間かけて滴下した。その後、同温度で2.5時間加熱撹拌を行ない、重量平均分子量が29,300の、カルボキシル基と加水分解性シリル基を含むアクリル系ポリマーの溶液を得た。
次いで、これに脱イオン水54.8部を加え、16時間加熱撹拌を継続してアルコキシシランを加水分解し、さらにアクリル系ポリマーと縮合させることにより、不揮発分(NV)=56.3質量%、溶液酸価=22.3mgKOH/gの、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーに由来する部位とポリシロキサン部位とを有する複合ポリマーの溶液を得た。
次に、この溶液に同温度で、撹拌しながらトリエチルアミン42部を添加して10分間撹拌を行なった。これにより、含有されるカルボキシル基の100%が中和された。
その後、同温度で脱イオン水1250.0部を1.5時間かけて滴下して転相乳化させた後、50℃に昇温して30分間撹拌を行なった。次いで、内温40℃で3.5時間をかけて、有機溶剤とともに水の一部分を減圧下除去した。こうして固形分濃度が42質量%、平均粒子径が110nmの、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーに由来する部位とポリシロキサン部位とを含む複合ポリマー水分散物P−1を得た。
水分散物P−1の複合ポリマーは、ポリシロキサン部位が約25%であり、アクリル系ポリマー部分が約75%であった。
【0206】
(合成例−2):複合ポリマー水分散物P−2の合成
複合ポリマー水分散物P−1の合成(合成例−1)において、用いるモノマー量を下記量に変更したこと以外は、合成例−1と同様にして、複合ポリマー水分散物P−2を合成した。すなわち、
用いるモノマーの比率は、フェニルトリメトキシシラン(PTMS):210部、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS):166部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS):24部、メチルメタクリレート(MMA):200部、n−ブチルメタクリレート(BMA):100部、n−ブチルアクリレート(BA)70部、アクリル酸(AA)30部とした。
水分散物P−2の複合ポリマーは、ポリシロキサン部位が約50%であり、アクリル系ポリマー部分が約50%であった。
【0207】
(合成例−3):複合ポリマー水分散物P−3の合成
複合ポリマー水分散物P−1の合成(合成例−1)において、用いるモノマー量を下記量に変更したこと以外は、合成例−1と同様にして、複合ポリマー水分散物P−3を合成した。すなわち、
用いるモノマーの比率は、フェニルトリメトキシシラン(PTMS):320部、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS):244部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS):36部、メチルメタクリレート(MMA):90部、n−ブチルメタクリレート(BMA):60部、n−ブチルアクリレート(BA):20部、アクリル酸(AA):30部とした。
水分散物P−3の複合ポリマーは、ポリシロキサン部位が約75%であり、アクリル系ポリマー部分が約25%であった。
【0208】
(合成例−4):複合ポリマー水分散物P−4の合成
複合ポリマー水分散物P−1の合成(合成例−1)において、用いるモノマー量を下記量に変更したこと以外は、合成例−1と同様にして、複合ポリマー水分散物P−4を合成した。すなわち、
用いるモノマーの比率は、フェニルトリメトキシシラン(PTMS):60部、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS):25部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS):15部、メチルメタクリレート(MMA):300部、n−ブチルメタクリレート(BMA):220部、n−ブチルアクリレート(BA):150部、アクリル酸(AA):30部とした。
水分散物P−4の複合ポリマーは、ポリシロキサン部位が約13%であり、アクリル系ポリマー部分が約87%であった。
【0209】
(合成例−5):複合ポリマー水分散物P−5の合成
複合ポリマー水分散物P−1の合成(合成例−1)において、用いるモノマー量を下記量に変更したこと以外は、合成例−1と同様にして、複合ポリマー水分散物P−5を合成した。すなわち、
用いるモノマーの比率は、フェニルトリメトキシシラン(PTMS):336部、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS):320部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS):40部、メチルメタクリレート(MMA):44部、n−ブチルメタクリレート(BMA):30部、n−ブチルアクリレート(BA):10部、アクリル酸(AA):20部とした。
水分散物P−5の複合ポリマーは、ポリシロキサン部位が約87%であり、アクリル系ポリマー部分が約87%であった。なお、この水分散物は、合成後に少量の凝集が発生しており、水分散物P−1〜P−4に比べて、安定性が若干劣っていた。
【0210】
(実施例1)
−ポリマー層の形成−
(1)ポリマー層形成用塗布液の調製
下記組成中の各成分を混合し、ポリマー層形成用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・シリコーン系バインダー ・・・362.3部
(既述の複合ポリマー水分散物P−1、固形分量:40質量%に調整)
・カルボジイミド化合物(架橋剤) ・・・36.2部
(カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:40質量%)
・界面活性剤 ・・・24.2部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・滑剤(ポリエチレンワックス) ・・・3.6部
(ケミパールW950、三井化学(株)製、固形分:40質量%)
・マット剤(ポリメチルメタクリレート粒子) ・・・1.1部
(MP−1000(平均粒子径:0.4μm)、綜研化学(株)製)
・蒸留水 ・・・572.6部
【0211】
(2)ポリマー層の形成
ポリマー基材としてPETを用い、PETの一方の面にポリマー層形成用塗布液を、バインダー塗布量が2.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、耐候性層として乾燥厚みが約2μmのポリマー層を形成した。
【0212】
−機能性層の形成−
次に、PET(ポリマー基材)の耐候性層が形成されていない側の面に、厚さ50μmの白色のポリエチレンテレフタレート(ルミラーE20、東レ(株)製;白色PET)を以下に示す条件で貼合し、機能性層(光反射層)を形成した。
【0213】
接着剤として、LX660(K)(DIC(株)製;主剤)にKW75(DIC(株)製;硬化剤)10部を混合した2液熱硬化型ウレタン系接着剤を用いた。PETの耐候性層が形成されていない側の面に接着剤を塗布し、その上に白色PETを重ね、真空ラミネータ(真空ラミネート機、日清紡(株)製)でホットプレスして接着した。接着は、80℃で3分間の真空引きの後、2分間加圧することにより行なった。接着後の接着剤層の厚みは、約5μmであった。その後、得られたサンプルを40℃で4日間保持して反応を完了させ、バックシートとした。
【0214】
−評価1−
得られたバックシートについて、耐候性層の接着性及び反射率の評価を行なった。評価結果を下記表1に示す。
【0215】
(1)接着性(密着)
得られたバックシートを25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿した。その後、バックシートのポリマー層の表面にカミソリを用いて3mm間隔で縦横それぞれ6本ずつの傷をつけた。その上に、幅20mmのマイラーテープを貼って、180°方向にすばやく剥離した。このとき、剥離は、120℃、100%RHの湿熱条件下に90時間経時する前後のバックシートについて行なった。剥離後、バックシートから剥がれたマス目の数をカウントし、以下の評価基準にしたがって評価した。なお、実用上許容されるのは、ランク3〜5に分類されるものである。下記表1において、湿熱経時前を「フレッシュ」、湿熱経時後を「湿熱経時」として表す。
<評価基準>
5:全く剥離が起こらなかった。
4:剥離したマス目はゼロであるが、キズ部分が僅かに剥離していた。
3:剥離したマス目が1マス未満であった。
2:剥離したマス目が1マス以上5マス未満であった。
1:剥離したマス目が5マス以上であった。
【0216】
(2)反射率
得られたバックシートについて、分光光度計(ΜV−3100、島津製作所(株)製)を用い、反射スペクトルを測定した。ベースラインは、硫酸バリウム粉体を押し固めたリファレンス板を用いて設定した。得られたスペクトルから、波長550nmにおける反射率をそのバックシートの代表反射率とした。
【0217】
(実施例2〜3)
実施例1において、耐候性層形成用塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1(シリコーン系バインダー)を、下記表1に示すように、複合ポリマー水分散物P−2又はP−3(いずれも固形分量を40質量%に調整)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0218】
(比較例1〜2)
実施例1において、耐候性層形成用塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1(シリコーン系バインダー)を、下記表1に示すように、複合ポリマー水分散物P−4又はP−5(いずれも固形分量を40質量%に調整)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0219】
(比較例3)
実施例1において、耐候性層形成用塗布液の塗布により形成した耐候性層を厚さ50μmのETFEフィルム(ネオフロンEF−0050、ダイキン工業(株)製)に代え、PETの一方の面に下記条件にてコロナ処理を施した後、実施例1における機能性層の形成方法と同様の方法でETFEフィルムを貼り合わせるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
<コロナ処理>
・装置:ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデル
・電極と誘電体ロールとのギャップクリアランス:1.6mm
・処理周波数:9.6kHz
・処理速度:10m/分
・処理強度:0.75kV・A・分/m
【0220】
(実施例4)
実施例1において、耐候性層にも白色を付与するため、以下に示すように、PETの一方の面にポリマー層形成用塗布液を塗布する前に、該PETの一方の面に下記の白色樹脂層形成用塗布液を塗布し、乾燥させて白色樹脂層を形成することで、ポリマー層と白色樹脂層の2層からなる耐候性層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0221】
−耐候性層の形成−
(1)白色樹脂層の形成
−二酸化チタン分散物の調製−
下記組成中の各成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施して、二酸化チタン分散物を調製した。
<二酸化チタン分散物の組成>
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.28μm) ・・・40質量%
(タイペークCR95、石原産業(株)製、固形分:100質量%)
・ポリビニルアルコール水溶液(固形分:10質量%)・・・20質量%
(PVA−105、(株)クラレ製)
・界面活性剤 ・・・0.5質量%
(デモールEP、花王(株)製、固形分:25質量%)
・蒸留水 ・・・39.5質量%
【0222】
−白色樹脂層の形成−
下記組成中の成分を混合し、白色樹脂層形成用塗布液を調製した。得られた白色樹脂層形成用塗布液を、PETの一方の面にバインダー塗布量が4.7g/m、二酸化チタン塗布量が5.6g/mとなるように塗布し、170℃で2分間乾燥して乾燥厚み5.7μmの白色樹脂層を形成した。
<白色樹脂層形成用塗布液の組成>
・既述の二酸化チタン分散液 ・・・298.5部
・ポリオレフィンバインダー ・・・568.7部
(アローベースSE−1013N、ユニチカ(株)製、濃度20質量%)
・ノニオン界面活性剤 ・・・23.4部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、濃度1質量%)
・オキサゾリン系架橋剤 ・・・58.4部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、濃度25質量%)
・蒸留水 ・・・51.0部
【0223】
(2)ポリマー層の形成
続いて、PETの一方の面に形成された白色樹脂層の上に、実施例1で調製したポリマー層形成用塗布液を、バインダー塗布量が2.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが約2μmのポリマー層を形成した。
【0224】
(実施例5)
実施例4において、機能性層の形成に用いた厚さ50μmの白色PET(ルミラーE20、東レ(株)製)を用いず、PETの耐候性層が形成されていない側の面に、実施例4の白色樹脂層形成用塗布液を、バインダー塗布量が4.7g/m、二酸化チタン塗布量が5.6g/mとなるように塗布し、170℃で2分間乾燥して乾燥厚み5.7μmの白色樹脂層を形成して機能性層としたこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0225】
(実施例6)
実施例5において、ポリマー基材として用いた既述のPETを、以下のように作製した下塗り層付PETに代えたこと以外は、実施例1と同様に太陽電池用ポリマーシートを作製した。
<下塗り層付PET>
既述の「(1)ポリエチレンテレフタレート支持体(PET)の作製」において、作製した未延伸PETシートをMD方向に3.4倍に延伸した後、このPETシートの耐光性層側に、下記の下塗り層塗布液を塗布し、その後さらにTD方向に4.5倍に延伸した。このとき、下塗り層の厚みは、0.1μmであった。
<下塗り層塗布液の組成>
・ポリオレフィンバインダー ・・・24.12部
(アローベースSE−1013N、ユニチカ(株)製、濃度:20質量%)
・オキサゾリン系架橋剤 ・・・3.90部
(エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、濃度:25質量%)
・フッ素系界面活性剤 ・・・0.19部
(ナトリウム=ビス(3、3,4,4,5,5,6,6−ノナフルオロ)=2−スルホナイトオキシスクシナート、三協化学(株)製、濃度:1質量%)
・蒸留水 ・・・71.80部
【0226】
(実施例7)
実施例5において、ポリマー基材として用いたPETの合成及びポリマー基材の作製方法を以下に示す方法に代えたこと以外は、実施例5と同様にして、太陽電池用ポリマーシートを作製した。
【0227】
<ポリエチレンテレフタレートの合成>
エステル交換反応容器にジメチルテレフタレートを100質量部、エチレングリコールを61質量部、酢酸マグネシウム四水塩を0.06質量部仕込み、150℃に加熱して溶融し撹拌した。反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成するメタノールを反応容器外へ留出させた。メタノールの留出が終了したらトリメチルリン酸を0.02質量部添加した。トリメチルリン酸を添加した後、三酸化アンチモンを0.03質量部添加し、反応物を重合装置に移行した。ついで重合装置内の温度を235℃から290℃まで90分かけて昇温し、同時に装置内の圧力を大気圧から100Paまで90分かけて減圧した。重合装置内容物の撹拌トルクが所定の値に達したら装置内を窒素ガスで大気圧に戻して重合を終了した。重合装置下部のバルブを開いて重合装置内部を窒素ガスで加圧し、重合の完了したポリエチレンテレフタレートをストランド状にして水中に吐出した。ストランドはカッターによってチップ化した。このようにして固有粘度IV=0.58、酸価(AV)=12のPETを得た。これをPET−Aとした。
【0228】
<ポリエステルの固相重合>
PET−Aを150〜160℃で3時間予備乾燥した後、100トール、窒素ガス雰囲気下、205℃で25時間固相重合を行いPET−Bを得た。
【0229】
<ポリエステルと末端封止剤を含むマスターペレットの製造>
PET−Bを90質量部と、末端封止剤として下記のカルボジイミド系化合物A10質量部とを混合した。この混合物を2軸混練機に供給して280℃で溶融混練し、ストランド状に水中吐出した後、カッターで裁断してチップ化した。これをPET−Cとした。
【0230】
【化4】

【0231】
<ポリエステルフィルムの製膜>
PET−BとPET−Cとを180℃で3時間乾燥させた後、末端封止材がポリマー樹脂に対して1質量%となるように混合しの押出し機に投入し280℃で混練した。この後、ギアポンプ、濾過器を通した後、Tダイから静電印加をかけた25℃の冷却ドラム上に押出し、冷却固化し未延伸シートを得た。その後、該未延伸ポリマー基材を、90℃で縦方向に3.4倍に延伸し、更に120℃で横方向に4.5倍に二軸延伸し、200℃で30秒熱固定した後、190℃で10秒熱緩和し、厚み240μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)であるポリマー基材を作製した。
【0232】
(実施例8)
実施例5において、PETフィルムを以下で示すグロー放電処理を行なったこと以外は、実施例5と同様にして、太陽電池用ポリマーシートを作製した。
<グロー放電処理>
ポリエチレンテレフタレートフィルムは、事前に加熱ローラーを用いて145℃に加熱した後、処理雰囲気圧力:0.2Torr、放電周波数:30kHz、出力:5000w、理強度:4.2kV・A・分/mにて表面処理を行なった。
【0233】
(比較例4)
比較例3において、ETFEフィルムを既述の白色PVFに代えて耐候性層とすると共に、白色PETを既述の白色PVFに代えて、この白色PVFを、PET(ポリマー基材)の白色PVFが貼合されない面に比較例3と同様の条件にてコロナ処理を施した後、実施例1における機能性層の形成方法と同様の方法で貼合し、機能性層(光反射層)を形成したこと以外は、比較例3と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0234】
(実施例9〜10)
実施例1において、ポリマー基材として用いたPETをPPE又はSPPに代え、ポリマー基材の両面に比較例3と同様の条件にてコロナ処理を施したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0235】
【表1】



【0236】
表1に示すように、実施例1〜3では、比較例1〜3に比べて、湿熱経時による耐候性層の接着性の変化が小さく抑えられており、いずれも良好な接着性を示した。また、機能性層に白色を付与したことで良好な反射性が得られており、いずれの耐候性層も反射率に対する影響はみられなかった。
【0237】
また、表1に示すように、塗布により層形成を行なう実施例4〜8では、バックシートとして典型的な貼合により形成される比較例4と比較して、耐候性層の接着性が著しく良化した。また、実施例4〜8では、反射率も比較例4より高い値が得られた。
ポリマー基材を変更した実施例9〜10においても、実施例1とほぼ同様の結果が得られており、耐候性層の接着性は比較例1〜3に比べて良好であった。
【0238】
(実施例11)
実施例1において、機能性層(光反射層)として設けた白色PETを、厚さ50μmの黒色のポリエチレンテレフタレート(ルミラーX20、東レ(株)製;黒色PET)に代え、意匠性を高めた機能性層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、接着性の評価を行なった。また、下記の方法により、光学濃度(O.D.)を評価した。評価結果は、下記表2に示す。
【0239】
−評価2−
(3)光学濃度
得られたバックシートについて、マクベス光学濃度計により、可視光域(380−700nm)での光学濃度(O.D.)を測定した。
【0240】
(実施例12)
実施例1において、機能性層(光反射層)として設けた白色PETを用いず、PETの耐候性層が形成されていない側の面に、下記組成の黒色樹脂層形成用塗布液を、バインダー塗布量が1.45g/mになるように塗布し、160℃で1分間乾燥させて乾燥厚み1.3μmの黒色樹脂層を形成して機能性層としたこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製した。また、実施例1、10と同様にして、接着性、光学濃度(O.D.)の評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。
【0241】
−黒色樹脂層形成用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、黒色樹脂層形成用塗布液を調製した。
<黒色樹脂層形成用塗布液の組成>
・カーボンブラック水分散液 ・・・159.0部
(大日精化(株)製 MF−5630ブラック 固形分31.5%)
・アクリル樹脂水性分散体A ・・・333.0部
(固形分:30質量%)
・オキサゾリン化合物 ・・・100.0部
(日本触媒(株)製、エポクロスWS700、固形分25質量%)
・界面活性剤 ・・・100.0部
(三洋化成工業(株)製、ナロアクティーCL−95の1質量%水溶液)
・蒸留水 ・・・全体が1000部になるように添加
【0242】
(比較例5)
実施例11において、ポリマー層形成用塗布液を塗布して形成したポリマー層を、耐加水分解PETに代え、PET(ポリマー基材)の一方の面に比較例3と同様の条件にてコロナ処理を施して耐加水分解PETを貼合し、耐候性層としたこと以外は、実施例11と同様にして、バックシートを作製した。また、実施例11と同様にして、接着性、光学濃度(O.D.)の評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。
【0243】
なお、耐加水分解PETとして、下記のポリエチレンテレフタレート支持体を用いた。すなわち、
実施例1の「(1)ポリエチレンテレフタレート支持体(PET)の作製」と同様にして、工程1〜工程2を行なってペレットを得た後、このペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行なった。そして、固相重合を経た後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmの未延伸ベースを作製した。その後、90℃で縦方向に3倍に延伸し、更に120℃で横方向に3.3倍に延伸し、厚み300μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体とした。得られた2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体のカルボキシル基含量は、30当量/tであった。
【0244】
【表2】



【0245】
(実施例13)
実施例1において、機能性層として設けた白色PETをSiO蒸着フィルムに代え、PET(ポリマー基材)の耐候性層が形成されていない側の面に比較例3と同様の条件にてコロナ処理を施してSiO蒸着フィルムを貼合し、機能性層としたこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、接着性の評価を行なった。また、下記の方法により、水蒸気透過率を評価した。評価結果は、下記表3に示す。
なお、SiO蒸着フィルムには、特開2006−297737号公報の段落0081〜0082に記載の方法により、厚み100μmのPETフィルム上に酸化ケイ素(SiO)層が形成されたフィルム(水蒸気透過率0.005g/m/day以下)を用いた。
【0246】
−評価3−
(4)水蒸気透過率
バックシートを直径10cmに切り出した後、湿度1%のオートドライデシケーター内で3日間以上調湿した。その後、水蒸気透過率測定装置Model 7001(Illinois社製)を用いて、バックシートの水蒸気透過率を測定した。
【0247】
(実施例14〜15、比較例6〜7)
実施例13において、耐候性層形成用塗布液の調製に用いた複合ポリマー水分散物P−1(シリコーン系バインダー)を、下記表3に示すように、複合ポリマー水分散物P−2〜P−5(いずれも固形分量を40質量%に調整)に代えたこと以外は、実施例13と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表3に示す。
【0248】
(比較例8)
実施例13において、耐候性層形成用塗布液の塗布により形成した耐候性層を、厚さ50μmのETFEフィルム(ネオフロンEF−0050、ダイキン工業(株)製)に代え、PETの一方の面に比較例3と同様の条件にてコロナ処理を施した後、実施例1における機能性層の形成方法と同様の方法でETFEフィルムを貼り合わせるようにしたこと以外は、実施例13と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表3に示す。
【0249】
(実施例16〜17)
実施例13において、機能性層として設けたSiO蒸着フィルムを、酸化アルミニウム(Al)蒸着フィルム、又は厚み30μmのアルミニウム箔(Al箔)に代えたこと以外は、実施例13と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表3に示す。
なお、Al蒸着フィルムには、特開2006−297737号公報の段落0081〜0082に記載の方法において、ターゲットをSiからAlに代えて、厚み100μmのPETフィルム上に酸化アルミニウム(Al)が形成されたフィルム(水蒸気透過率0.005g/m/day以下)を用いた。
【0250】
(実施例18)
実施例13において、防湿性に加えて光反射性を付与するため、SiO蒸着フィルム上にさらに厚さ50μmの白色のポリエチレンテレフタレート(ルミラーE20、東レ(株)製;白色PET)を貼り合わせ、2層からなる機能性層を形成したこと以外は、実施例13と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表3に示す。
【0251】
(実施例19)
実施例13において、PETの一方の面において、実施例4と同様にして白色樹脂層形成用塗布液を塗布し、乾燥させて白色樹脂層を形成し、この白色樹脂層上にさらにポリマー層形成用塗布液を塗布し、乾燥させてポリマー層を形成することで、2層からなる耐候性層を設けると共に、PETの他方の面に形成されたSiO蒸着フィルム上に、さらに実施例4と同様の白色樹脂層形成用塗布液を塗布し、乾燥させて白色樹脂層を形成することで、2層からなる機能性層を設けたこと以外は、実施例13と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表3に示す。
【0252】
(比較例9)
比較例8において、ETFEフィルムを白色PVFに代えて耐候性層とすると共に、SiO蒸着フィルム上に、さらに白色PVFを貼り合わせたこと以外は、比較例8と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表3に示す。
なお、SiO蒸着フィルム上への白色PVFの貼合には、接着剤として、LX660(K)(DIC(株)製;主剤)にKW75(DIC(株)製;硬化剤)10部を混合した2液熱硬化型ウレタン系接着剤を用いた。
【0253】
【表3】



【0254】
表3に示すように、実施例13〜19では、機能性層に防湿性や光反射性を付与する層を形成したが、この機能性層の付与に依らず、比較例6〜9に比べて、湿熱経時による耐候性層の接着性の変化が小さく抑えられており、いずれも良好な接着性を示した。また、実施例における水蒸気透過率は、性能が良好であることが確認され、耐候性層による影響はみられなかった。
【0255】
(実施例20)
実施例1において、耐候性層として形成したポリマー層の上に、更に、フッ素含有樹脂層用塗布液を、バインダー塗布量が1.3g/mになるように塗布し、170℃で2分間乾燥させて、乾燥厚みが約1.6μmのフッ素含有樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、接着性の評価を行なった。評価結果は、下記表4に示す。
【0256】
−フッ素含有樹脂層用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、フッ素含有樹脂層用塗布液を調製した。
<フッ素含有樹脂層用塗布液の組成>
・クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル共重合体 ・・・34.5質量%
(オブリガート SW0011F、AGCコーテック、固形分:39質量%;フッ素系ポリマー)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・1.5質量%
(ナロアクティーCL−95、三洋化成工業、固形分:1質量%)
・カルボジイミド化合物 ・・・6.2質量%
(カルボジライト V−02−L2、日清紡、固形分:20質量%)
・シリカゾル ・・・0.4質量%
(スノーテックス−ΜP、日産化学工業(株)製、固形分20質量%)
・シランカップリング剤 ・・・7.6質量%
(TSL8340、モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアル社、固形分:1質量%)
・ポリオレフィンワックス分散物 ・・・20.8質量%
(ケミパールW950、三井化学(株)製、固形分:5質量%)
・蒸留水 ・・・全体で100質量%となるように添加
【0257】
(比較例10)
実施例1において、複合ポリマー水分散物P−1(シリコーン系バインダー)を用いた耐候性層形成用塗布液を、実施例20のフッ素含有樹脂層用塗布液に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、接着性の評価を行なった。評価結果は、下記表4に示す。
【0258】
(実施例21〜22)
実施例1において、光反射性に加えて帯電防止性又は電池側基板の封止材(EVA)との接着性を付与するため、PETの耐候性層が形成されていない面に設けた白色PET上に、さらに帯電防止フィルム(エスペットフィルムT4100、東洋紡(株)製)、又はエチレンビニルアセテート(EVA)シート(厚み:100μm)を貼り合わせ、2層からなる機能性層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表4に示す。
なお、帯電防止フィルム又はEVAシートの貼合には、接着剤として、LX660(K)(DIC(株)製;主剤)にKW75(DIC(株)製;硬化剤)10部を混合した2液熱硬化型ウレタン系接着剤を用いた。
【0259】
(実施例23)
実施例9において、ポリマー基材として用いたPPEをSiO蒸着フィルムに代え、
機能性層の形成に用いた厚さ50μmの白色PET(ルミラーE20、東レ(株)製)を用いず、PETの耐候性層が形成されていない側の面に、実施例4の白色樹脂層形成用塗布液を、バインダー塗布量が4.7g/m、二酸化チタン塗布量が5.6g/mとなるように塗布し、170℃で2分間乾燥して乾燥厚み5.7μmの白色樹脂層を形成して機能性層としたこと以外は、実施例9と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表4に示す。
なお、SiO蒸着フィルムには、特開2006−297737号公報の段落0081〜0082に記載の方法により、厚み100μmのPETフィルム上に酸化ケイ素を形成したフィルム(水蒸気透過率0.005g/m/day以下)を用いた。
【0260】
(実施例24)
−ポリマー基材の準備−
ポリマー基材として、白色顔料を含有する白色のポリエチレンテレフタレート(ルミラーE20、東レ(株)製、厚さ50μm;白色PET)を用意した。
【0261】
−プライマー層の形成−
(1)プライマー層形成用塗布液の調製
下記組成中の成分を混合し、プライマー層形成用塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・ポリエステルバインダー ・・・47.7部
(バイロナールMD−1245、東洋紡(株)製、固形分濃度:30質量%)
・PMMA微粒子 ・・・10.0部
(MP−1000、綜研化学(株)製、固形分濃度:5質量%)
・ノニオン界面活性剤 ・・・15.0部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分濃度:1質量%)
・蒸留水 ・・・927.3部
【0262】
(2)プライマー層の形成
ポリマー基材として用意した白色PETの一方の面に、上記のプライマー層形成用塗布液を、バインダー塗布量が0.12g/mとなるよう塗布し、180℃で2分間乾燥させて、プライマー処理を実施した。
【0263】
−ポリマー層の形成−
白色PETのプライマー処理面に、実施例1のポリマー層形成用塗布液を、バインダー塗布量が2.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、耐候性層として乾燥厚みが約2μmのポリマー層を形成した。
以上のようにして、耐候性層/ポリマー基材の重層構造からなるバックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表4に示す。
【0264】
(実施例25)
実施例1において、機能性層の形成に用いた厚さ50μmの白色PET(ルミラーE20、東レ(株)製)を用いず、PETの耐候性層が形成されていない側の面に実施例4の白色樹脂層形成用塗布液を、バインダー塗布量が4.7g/m、二酸化チタン塗布量が5.6g/mとなるように塗布し、170℃で2分間乾燥して乾燥厚み5.7μmの白色樹脂層を形成して機能性層としたこと以外は、実施例1と同様にして、バックシートを作製し、同様の評価を行なった。評価結果は、下記表4に示す。
【0265】
【表4】



【0266】
表4に示すように、耐候性層にフッ素含有樹脂層が単独で形成された比較例10の形態では、耐候性層の接着性が必ずしも充分でなかった。これに対し、複合ポリマーを含有する複合ポリマー層と共にフッ素含有樹脂層を設けて重層構造とした実施例20の形態では、より良好な接着性が得られた。
また、実施例21〜25に示すように、防湿性や着色以外の機能性を付与した形態や、ポリマー基材として防湿性と光反射性をそなえた着色フィルムを使用した形態、表面処理としてプライマー処理を施した形態などに構成した場合にも、耐候性層の接着性には影響せず、湿熱経時による耐候性層の接着性の変化が小さく抑えられ、いずれも良好な接着性を示した。
【0267】
(実施例26〜50)
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、結晶系太陽電池セル(多結晶3バスバーセル、156mm×156mm、Qセルズ(株)製)と、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のSC50B)と、実施例1〜25で作製したバックシートのいずれかとをこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ(日清紡(株)製、真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、EVAと接着させた。このとき、実施例1〜25で作製したバックシートを、その機能性層がEVAシートと接触するように配置した。また、接着方法は、以下の通りである。
<接着方法>
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンにて150℃で30分間、本接着処理を施した。
以上のようにして、結晶系の太陽電池モジュールを作製した。
【0268】
作製された太陽電池モジュールの各々について、ソーラーシミュレータにより発電性能を調べたところ、いずれも太陽電池として良好な発電性能を示した。また、これらモジュールを85℃/85%RHの条件で1000時間経時させた後に、湿熱経時前と性能比較をしたところ、いずれも最大取出電力の変化は2%以内であった。
【符号の説明】
【0269】
11・・・ポリマー基材
13,15,23・・・機能性層
21・・・機能性のポリマー基材
17,27・・・複合ポリマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー基材と、
前記ポリマー基材の一方面に、着色剤を含有する着色層と、金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含有する金属含有層と、
前記ポリマー基材の他方面に、分子中に下記一般式(1)で表される質量割合が15〜85質量%のシロキサン構造単位と質量割合が85〜15質量%の非シロキサン系構造単位とを有する複合ポリマーを含有する複合ポリマー層と、
を有する太陽電池用バックシート。
【化1】


〔式中、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表し、RとRとは同一でも異なってもよい。nは、1以上の整数を表す。複数のR及びRは各々、互いに同一でも異なってもよい。〕
【請求項2】
着色剤を含むポリマー基材と、
前記ポリマー基材の一方面に、金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含有する金属含有層と、
前記ポリマー基材の他方面に、分子中に下記一般式(1)で表される質量割合が15〜85質量%のシロキサン構造単位と質量割合が85〜15質量%の非シロキサン系構造単位とを有する複合ポリマーを含有する複合ポリマー層と、
を有する太陽電池用バックシート。
【化2】


〔式中、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表し、RとRとは同一でも異なってもよい。nは、1以上の整数を表す。複数のR及びRは各々、互いに同一でも異なってもよい。〕
【請求項3】
前記着色剤が顔料である請求項1又は請求項2に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項4】
前記着色剤が白色又は黒色の顔料である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項5】
前記着色層が塗布により形成された請求項1、請求項3、又は請求項4に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項6】
前記金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分が、箔板状のアルミニウムである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項7】
前記金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分が、アルミニウム酸化物又はケイ素酸化物である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項8】
前記金属含有層が、気相成膜により形成された請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項9】
前記ポリマー基材は、末端封止剤をポリマー全質量に対して0.1質量%〜10質量%の範囲で含有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項10】
前記ポリマー基材は、表面がコロナ処理、火炎処理、及びグロー放電処理からなる群より選択される方法で処理されている請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項11】
前記複合ポリマー層は、更に、複合ポリマーを架橋する架橋剤由来の構造部分を含む請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項12】
前記架橋剤が、カルボジイミド化合物又はオキサゾリン化合物である請求項11に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項13】
前記複合ポリマー層中における、前記複合ポリマーに対する前記架橋剤由来の構造部分の質量比率が1〜30質量%である請求項11又は請求項12に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項14】
前記非ポリシロキサン系構造単位が、アクリル系構造単位である請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項15】
金属及び金属化合物からなる群より選ばれる成分を含有する金属含有層をポリマー基材上に形成する工程と、
分子中に前記一般式(1)で表される質量割合が15〜85質量%のシロキサン構造単位と質量割合が85〜15質量%の非シロキサン系構造単位とを有する複合ポリマーを含有する複合ポリマー層をポリマー基材上に塗布により形成する工程と、
を有する、請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシートの製造方法。
【請求項16】
ポリマー基材を構成するポリマーを含む未延伸の樹脂シートを製膜する製膜工程と、
前記樹脂シートを第1の方向に延伸する第1の延伸工程と、
前記第1の方向に延伸された樹脂シートの少なくとも一方面に、塗布により下塗り層を形成する下塗り層形成工程と、
前記下塗り層が形成された樹脂シートを、前記第1の方向と直交する第2の方向に延伸する第2の延伸工程と、
を有する請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート、又は請求項15又は請求項16に記載の太陽電池用バックシートの製造方法により製造された太陽電池用バックシートを備えた太陽電池モジュール。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−58747(P2013−58747A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180671(P2012−180671)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】