説明

太陽電池用バックシート用ポリマーシート及び太陽電池モジュール

【課題】経時でのひび割れ及び塗布形成されている塗布層の経時での剥離等を伴なう劣化が抑制された太陽電池用バックシート用ポリマーシートを提供する。
【解決手段】ポリマー支持体と、前記ポリマー支持体上に設けられ、紫外線吸収剤及びバインダーポリマーを含有する第1のポリマー層と、前記第1のポリマー層上に設けられ、バインダーポリマーを含み、紫外線吸収剤の含有量が1.0質量%以下である第2のポリマー層と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用バックシート用ポリマーシート及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、発電時に二酸化炭素の排出がなく環境負荷が小さい発電方式であり、近年急速に普及が進んでいる。
【0003】
太陽電池モジュールは、通常、太陽光が入射する側のガラスと、太陽光が入射する側とは反対側(裏面側)に配置される、いわゆるバックシートとの間に、太陽電池セルが挟まれた構造を有している。ガラスと太陽電池セルとの間、及び太陽電池セルとバックシートとの間は、一般に、それぞれEVA(エチレン−ビニルアセテート)樹脂などの封止剤により封止されている。
【0004】
バックシートは、太陽電池モジュールの裏面からの水分の浸入を防止する働きを有するものであり、コスト等の観点からポリエステルが用いられるようになってきている。ポリエステルを用いたバックシートとしては、例えばポリエステル支持体の太陽光が入射する側に、反射性能を持たせた着色層や封止材に対する易接着性の層を付与したものが知られている。例えば、ポリエステルフィルムと反射機能のある白色ポリエステルを積層したバックシートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ポリエステルを用いたバックシートは、機械強度が大きく安価である点で好適なものと考えられている。ところが、屋外などで長期に亘り紫外線等の光に曝される環境下では、紫外線等によりポリエステルが劣化してひび割れを生じたり、塗布形成されている塗布層が剥離する等の問題が生じる場合がある。
【0006】
このような問題に関連して、ポリエステル支持体に紫外線吸収剤を含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−118267号公報
【特許文献2】特開2009−188105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特に、太陽電池モジュールの太陽光が入射する側と反対側に配されるバックシートは、封止材を介してガラスに貼られた状態で経時するため、上記のような問題が起こりやすい。これは、一般にガラスに比べてポリエステルの熱膨張係数や吸湿膨張係数が大きいために、温湿度の変化により、バックシートに応力がかかりやすいためと考えられる。
【0009】
しかしながら、上記従来の技術のように、ポリエステル支持体に紫外線吸収剤を含ませる方法では、支持体表面付近の劣化を防止することができず、結果としてひび割れ、塗布層の剥離等の劣化を招き、劣化を十全に防止できるまでに至っていないのが実状である。
【0010】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、経時でのひび割れ及び塗布形成されている塗布層の経時での剥離等を伴なう劣化が抑制された太陽電池用バックシート用ポリマーシート、長期に亘り安定的な発電性能が得られる太陽電池モジュールを提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> ポリマー支持体と、前記ポリマー支持体上に設けられ、紫外線吸収剤及びバインダーポリマーを含有する第1のポリマー層と、前記第1のポリマー層上に設けられ、バインダーポリマーを含み、紫外線吸収剤の含有量がバインダーの総量に対して1.0質量%以下である第2のポリマー層と、を有する太陽電池用バックシート用ポリマーシートである。
【0012】
<2> 前記ポリマー支持体が、ポリエステルである前記<1>に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートである。
<3> 120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びの、保存前の破断伸びに対する比が50%以上である前記<1>又は前記<2>に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートである。
<4> 150℃で30分間熱処理したときの熱収縮率が−1%以上1%以下の範囲である前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートである。
なお、熱収縮率の正の値は縮みを表し、負の値は伸びを表す。
【0013】
<5> 前記第2のポリマー層が、前記バインダーポリマーとして、フッ素系ポリマー及びシリコーン系ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有する前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートである。
<6> 前記第1のポリマー層が、前記バインダーポリマーとして、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及びポリウレタン系ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有する前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートである。
<7> 前記第1のポリマー層及び前記第2のポリマー層の少なくとも一方は、更に、バインダーポリマーに対して0.5質量%以上50質量%以下の架橋剤を含有する前記<5>又は前記<6>に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートである。
<8> 前記架橋剤が、カルボジイミド系架橋剤又はオキサゾリン系架橋剤である前記<7>に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートである。
<9> 前記第1のポリマー層が、更に、0.5体積%以上50体積%以下の無機微粒子を含有する前記<1>〜前記<8>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートである。
<10> 前記第1のポリマー層の厚みLと前記第2のポリマー層の厚みLとの比率(L/L)が、0.13/1.0〜24/1.0である前記<1>〜前記<9>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートである。
<11> 前記<1>〜前記<10>のいずれか1つに記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートを備えた太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、経時でのひび割れ及び塗布形成されている塗布層の経時での剥離等を伴なう劣化が抑制された太陽電池用バックシート用ポリマーシートを提供することができる。また、
本発明によれば、長期に亘り安定的な発電性能が得られる太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】太陽電池モジュールの構成例を示す概略断面図である。
【図2】太陽電池モジュールの他の構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の太陽電池用バックシート用ポリマーシート及びこれを備えた太陽電池モジュールについて詳細に説明する。
【0017】
本発明の太陽電池用バックシート用ポリマーシートは、ポリマー支持体と、ポリマー支持体上に設けられ、紫外線吸収剤(以下、UV剤ともいう。)及びバインダーポリマーを含有する第1のポリマー層と、ポリマー支持体上の第1のポリマー層の上に更に設けられ、バインダーポリマーを含み、紫外線吸収剤(UV剤)の含有量が層中のバインダーの総量に対して1.0質量%以下である第2のポリマー層とを設けて構成されたものである。本発明の太陽電池用バックシート用ポリマーシートは、必要に応じて、下塗り層などの他の層を設けて構成することができる。
【0018】
本発明に係る太陽電池用バックシート用ポリマーシート(以下、単に「ポリマーシート」ともいう。)は、太陽電池の太陽光が入射する側と反対側に設けられる保護シートであるバックシート(以下、単に「バックシート」ともいう。)として機能させることができる。
また、本発明のポリマーシートは、ポリマー支持体、第1のポリマー層、及び第2のポリマー層のみで構成されていてもよいし、ポリマー支持体の面上又は各ポリマー層の面上に、必要に応じて、他の層(例えば、着色層、易接着性層等)を更に有していてもよい。他の層は1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0019】
本発明においては、ポリマー支持体上に支持体側から順に、紫外線吸収剤を含有する第1のポリマー層と実質的に紫外線吸収剤を含有しない〔UV剤含量≦1.0質量%(対第2のポリマー層中の全バインダー量)〕第2のポリマー層とを重ね、紫外線吸収剤を主に含むポリマー層上を、UV剤含量が少なく又は含まずバインダーポリマーを主に含むポリマー層で覆うようにすることで、紫外線吸収剤を含む層が直接、雨水等に触れることを防止することができるので、紫外線吸収剤を多く含有するポリマー層を表層に有する場合に比べて、長期経時でのポリマー支持体のひび割れや、支持体上に設けられた層の支持体などからの剥離等として現れる劣化を抑制することができる。これにより、屋外など水分や光、熱に曝されて常時過酷な環境下に置かれる太陽電池の用途に使用された場合でも、長期に亘り高い耐久性能を維持することができる。
【0020】
本発明のポリマーシートは、120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びの、保存前の破断伸びに対する比が50%以上であるものが好ましい(以下、当該条件により湿熱処理したポリマーシートの処理前後における破断伸びの保持率を、単に「破断伸び保持率」ともいう。)。破断伸び保持率が50%以上であることで、加水分解に伴う変化が抑えられ、長期使用の際に被着物との密着界面での密着状態が安定的に保持されることにより、経時での剥離等が防止される。これにより、例えば屋外等の高温、高湿環境や曝光下に長期に亘り置かれる場合でも、高い耐久性能を示す。
本発明における破断伸び保持率は、ポリマー支持体と第1のポリマー層と第2のポリマー層と(必要に応じて着色層等の他の層と)が設けられた形態での保持率である。
本発明のポリマーシートの破断伸び保持率は、上記同様の理由から、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0021】
前記破断伸度保持率[%]は、下記の測定方法で測定される破断伸びの測定値L及びLから下記式により求められる値である。
破断伸び保持率[%]=(L/L)×100
具体的には、ポリマーシートを幅10mm×長さ200mmに裁断して、測定用のサンプル片A及びBを用意する。このうち、サンプル片Aに対して、25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿を施し、テンシロン(ORIENTEC製、RTC−1210A)により、サンプル片の延伸長さ:10cm、引っ張り速度:20mm/分の条件にて引っ張り試験を行ない、得られたサンプル片Aの破断伸びをLとする。また別途、サンプル片Bに対して、120℃、100%RHの雰囲気で50時間湿熱処理を施し、サンプル片Aと同様に引っ張り試験を行ない、得られたサンプル片Bの破断伸びをLとする。
【0022】
また、本発明のポリマーシートは、150℃で30分間熱処理したときの熱収縮率が−1%以上1%以下の範囲であることが好ましい。一般にポリエステルは、ガラスに比べて、熱膨張係数や吸湿膨張係数が大きいために温湿度変化で応力がかかりやすく、ひび割れや層の剥がれを招来しやすい傾向があるが、熱収縮率が上記範囲内であることにより、長期に亘る経時でのひび割れの発生及び塗布形成された層の支持対等からの剥がれを効果的に防止することができる。
熱収縮率は、製膜したシート状のポリマーを80℃〜200℃程度の温度で熱処理するによって、上記範囲に調整することができる。
【0023】
−ポリマー支持体−
ポリマー支持体(基材)としては、ポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン、又はポリフッ化ビニルなどのフッ素系ポリマー等が挙げられる。これらの中では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステルが好ましく、中でも力学的物性やコストのバランスの点でポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0024】
ポリマー支持体として用いるポリエステル中のカルボキシル基含有量は55当量/トン(t;以下同様)以下が好ましく、より好ましくは35当量/t以下である。カルボキシル基含有量が55当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。これにより、120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びが、保存する前の破断伸びに対して50%以上である太陽電池用バックシート用ポリマーシートが得られる。
カルボキシル基含有量の下限は、ポリマー支持体上に形成される第1のポリマー層との間の接着性を保持する点から2当量/tが望ましい。
ポリエステル中のカルボキシル基含有量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)、固相重合により調整することが可能である。
【0025】
ポリマー支持体に用いるポリエステルを重合する際には、カルボキシル基含有量を所定の値以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、Ti系の化合物を触媒として用いることが好ましく、中でも特にTi系化合物が好ましい。
【0026】
ポリマー支持体を構成するポリエステルは、エステル化反応やエステル交換反応による重合の後に固相重合されてなるものが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含有量を達成することができる。固相重合は、重合後のポリエステルを真空中あるいは窒素ガス中で170℃〜240℃程度の温度で5〜100時間程度加熱して重合度を増大させる手法である。具体的には、固相重合には、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号等に記載の方法を適用することができる。
【0027】
本発明のポリマー支持体に用いるポリエステルは、機械強度の点から2軸延伸したものであることが好ましい。
ポリマー支持体の厚みは、25μm〜500μm程度が好ましく、25μm〜300μmがより好ましい。支持体の厚みが25μm以上であると、太陽電池用バックシートの支持体としての力学強度を有し、500μm以下、好ましくは300μm以下であるとコスト的及び加水分解耐性の点で有利である。また、本発明におけるポリエステルは、前記固相重合等によりカルボキシル基含有量を前記範囲とし、また既述のように第1及び第2のポリマー層が設けられるので、厚み125μm以上となる比較的厚い厚みの範囲でも、高い耐久性能を得ることができる。
【0028】
−第1のポリマー層−
本発明における第1のポリマー層は、少なくとも、紫外線吸収剤少なくとも一種と、バインダーポリマーの少なくとも一種とを含有し、必要に応じて、他の成分を用いて構成することができる。表層等の、第1のポリマー層より支持体から離れた位置に配される後述の第2のポリマー層ではなく、第2のポリマー層とポリマー支持体との間に配された第1のポリマー層に紫外線吸収剤を存在させることにより、長期に亘る紫外線による劣化が安定的に抑えられる。
【0029】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、紫外光を吸収して熱エネルギーに変換する化合物、フィルム等が紫外光を吸収、分解した際に発生したラジカルを捕捉し分解連鎖反応を抑制する材料などが挙げられる。これらの化合物を含有することで、長期間継続的に曝光下におかれた場合でも、強度劣化や剥離、色調変化等が防止される。
【0030】
紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、有機系、無機系のいずれの紫外線吸収剤を用いてもよく、これらを併用してもよい。紫外線吸収剤は、好ましくは耐湿熱性に優れておりポリマー層中に均一分散可能であることが望ましい。
【0031】
前記紫外線吸収剤の例としては、有機系の紫外線吸収剤として、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系等の紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系等の紫外線安定剤などが挙げられる。具体的には、例えば、
サリチル酸系の紫外線吸収剤として、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられる。
シアノアクリレート系の紫外線吸収剤として、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)等が挙げられる。
トリアジン系の紫外線吸収剤として、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
ヒンダードアミン系の紫外線安定剤として、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物等が挙げられる。
そのほか、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、及び2,4−ジ・t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどを挙げることができる。
【0032】
また、無機系の紫外線吸収剤として、例えば、二酸化チタン、酸化セリウム等の微粒子を挙げることができる。
【0033】
上記のうち、繰り返し紫外線吸収に対する耐性が高いという点で、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。なお、これらの紫外線吸収剤や紫外線安定剤は、単体でポリマー層に含ませてもよいし、有機系導電性材料や非水溶性樹脂に紫外線吸収能を有するモノマーを共重合させた形態で導入してもよい。
【0034】
紫外線吸収剤の第1のポリマー層中における含有量は、ポリマー層の全バインダー質量に対して、10質量%以上80質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下である。
紫外線吸収剤の含有量が10質量%以上であると、長期経時による劣化に伴なう支持体のひび割れや塗布形成等された層の剥離などを抑止でき、例えば塗布形成された塗布層等の密着力低下を抑止することができる。また、紫外線吸収剤の含有量が80質量%以下であると、塗布面状や湿熱経時後の接着性の点で有利である。
【0035】
(バインダーポリマー)
バインダーポリマーとしては、例えば、シリコーン系ポリマー(例えば、シリコーンとアクリルの複合ポリマー、シリコーンとポリエステルの複合ポリマー等)、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等をのポリエステル)、ポリウレタン系ポリマー(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート又はトルエンジイソシアネートとエチレングリコール又はプロピレングリコールからなるポリマー等)、アクリル系ポリマー(例えば、ホリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等を含有するポリマー)、ポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレンとアクリル酸またはメタクリル酸からなるポリマー等)等の公知のポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0036】
これらの中でも、ポリマー支持体(基材)及び後述の第2のポリマー層との間で高い接着性を確保する観点から、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、及びシリコーン系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、特にシリコーン系ポリマーがより好ましい。
【0037】
バインダーポリマーの第1のポリマー層中における含有量は、第1のポリマー層の全質量に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。バインダーポリマーの含有量が40質量%以上であると、充分な層の強度が得られ、95質量%以下であると、紫外線吸収剤を充分に添加できるため耐光性の点で有利である。
【0038】
(架橋剤)
第1のポリマー層は、前記バインダーポリマーを架橋するための架橋剤の少なくとも一種をさらに含有することが好ましい。
【0039】
前記架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。これらのうち、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤が好ましい。
【0040】
前記カルボジイミド系架橋剤の具体例としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−エチルカルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−プロピルカルボジイミド、N−tert−ブチル−N’−エチルカルボジイミド等が挙げられる。
また、上市されている市販品として、カルボジライトV−02−L2(日清紡績(株)製)などが挙げられる。
【0041】
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
また、上市されている市販品として、エポクロスWS−700、エポクロスK−2020E(いずれも日本触媒(株)製)などを用いることができる。
【0042】
架橋剤の第1のポリマー層中における含有量としては、層を構成するバインダーポリマーに対して、0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、0.5質量%以上50質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは5.0質量%以上30.0質量%以下である。架橋剤の含有量は、0.5質量%以上であると、ポリマー層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、100質量%以下、特に50質量%以下であると、ポリマー層を形成するための塗布液を調整したときの液のポットライフをより長く保つことができる。
【0043】
(他の添加剤)
本発明における第1のポリマー層は、必要に応じて、界面活性剤、フィラー等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0044】
−界面活性剤−
界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を含有する場合、その含有量は0.1〜10mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜3mg/mである。界面活性剤の含有量は、0.1mg/m以上であると、層形成する場合にハジキの発生を抑えて良好な層が得られ、10mg/m以下であると、ポリマー支持体及び第2のポリマー層との間の接着を良好に保つことができる。
【0045】
−無機微粒子(フィラー)−
フィラーとしては、コロイダルシリカ、二酸化チタン等の公知のフィラー(無機微粒子)を用いることができる。
無機微粒子の含有量は、第1のポリマー層中のバインダーポリマーに対して20質量%以下であるのが好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーの含有量が20質量%以下であると、下塗り層の面状がより良好に保てる。また、無機微粒子は、第1のポリマー層中に0.5体積%〜50体積%以下の範囲で含まれていることが好ましい。第1のポリマー層中の無機微粒子の含有量は、0.5体積%以上であると、湿熱経時後の接着性が良好であり、また50体積%以下であると、良好な面状が得られる点で有利である。無機微粒子の含有量は、1体積%以上15体積%の範囲がより好ましい。
【0046】
本発明における第1のポリマー層の厚みとしては、0.5〜4.0μmが好ましい。第1のポリマー層の厚みが0.5μm以上であると、より高い耐久性能が得られるほか、ポリマー支持体と第2のポリマー層との間の接着力が良好になる。また、第1のポリマー層の厚みが4.0μm以下であると、面状が良好で第2のポリマー層との間でより良好な接着性が得られる。すなわち、第1のポリマー層の厚みが0.5〜4.0μmの範囲内であることにより、ポリマー層の耐久性と面状とが両立し、ポリマー支持体と第2のポリマー層との間の接着性をより向上させることができる。第1のポリマー層の厚みは、特に1.0〜3.5μmの範囲がより好ましい。
【0047】
本発明においては、第1のポリマー層の厚みが1.0μm以上3.5μm以下の範囲であり、紫外線吸収剤の第1のポリマー層中における含有量が、第1のポリマー層の全バインダー量に対して、20質量%以上60質量%以下である場合がより好ましい。
【0048】
本発明における第1のポリマー層は、バインダーポリマー等を含む塗布液を調製し、この塗布液をポリマー支持体上に塗布し乾燥させることにより形成することができる。乾燥後、加熱する等して硬化させてもよい。塗布方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
塗布液に用いる溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。バインダーポリマーを水分散した水系塗布液を調製し、これを塗布する方法が好ましい。この場合、溶媒中の水の割合は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0049】
また、ポリマー支持体が2軸延伸フィルムである場合は、2軸延伸した後のポリマー支持体に第1のポリマー層を形成するための塗布液を塗布した後、塗膜を乾燥させてもよい。また、1軸延伸後のポリマー支持体に塗布液を塗布して塗膜を乾燥させた後に、1軸延伸の方向と異なる方向に延伸するようにしてもよい。更に、延伸前のポリマー支持体に塗布液を塗布して塗膜を乾燥させた後、2方向に延伸してもよい。
【0050】
−第2のポリマー層−
本発明における第2のポリマー層は、少なくとも、バインダーポリマーの少なくとも一種を含有し、紫外線吸収剤の含有量を全バインダー質量の1.0質量%以下として構成されたものである。第2のポリマー層は、必要に応じて他の成分を用いて構成することができる。紫外線吸収剤が主に含まれた第1のポリマー層が第2のポリマー層で保護された構造であることにより、紫外線吸収剤が含有された層のひび割れ等で促される劣化を効果的に防止することができる。これにより、長期間継続的に曝光下におかれた場合でも、強度劣化や剥離、色調変化等が防止される。
【0051】
第2のポリマー層は、本発明の効果を損なわない程度に紫外線吸収剤を含んでいてもよいが、その含有量を全バインダー質量の1.0質量%以下として紫外線吸収剤を実質的に含まないことが好ましく、紫外線吸収剤を含まない(0質量%)ことがより好ましい。すなわち、紫外線吸収剤の含有量が全バインダー質量の1質量%以下とは、紫外線吸収剤の含有を全く除外しないものの、紫外線吸収剤を積極的に含有しないことを意味する。
【0052】
(バインダーポリマー)
第2のポリマー層に含有されるバインダーポリマーとしては、例えば、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、等の公知のポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0053】
なお、前記フッ素系ポリマーを除く各ポリマーの詳細(具体例等)及び好ましい態様については、前記第1のポリマー層において記載した通りである。
【0054】
前記フッ素系ポリマーとしては、−(CFX−CX)−で表される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。なお、前記繰り返し単位において、X、X、及びXは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基を表す。
【0055】
フッ素系ポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと表すことがある。)、ポリフッ化ビニル(以下、PVFと表すことがある。)、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと表すことがある。)、ポリ塩化3フッ化エチレン(以下、PCTFEと表すことがある。)、ポリテトラフルオロプロピレン(以下、HFPと表すことがある。)などが挙げられる。
【0056】
フッ素系ポリマーは、一種のモノマーを単独重合したホモポリマーでもよいし、2種以上のモノマーを共重合したものでもよい。共重合したポリマーの例として、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロプロピレンとを共重合したコポリマー(P(TFE/HFP)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとを共重合したコポリマー(P(TFE/VDF)と略記する。)等を挙げることができる。
【0057】
さらに、−(CFX−CX)−の構造部分を有するフッ素系モノマーとそれ以外のモノマーとを共重合したポリマーでもよい。その例として、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(P(TFE/E)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体(P(TFE/P)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとビニルエーテルとの共重合体(P(TFE/VE)と略記する。)、テトラフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルとの共重合体(P(TFE/FVE)と略記する。)、クロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルとの共重合体(P(CTFE/VE)と略記する。)、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルとの共重合体(P(CTFE/FVE)と略記する。)等を挙げることができる。
【0058】
これらの中でも、温湿度変化や高い湿熱環境に曝されたときの耐久性能をより向上させる観点から、フッ素系ポリマー、アクリル系ポリマー及びシリコーン系ポリマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましく、フッ素系ポリマー又はシリコーン系ポリマーがより好ましい。
【0059】
フッ素系ポリマーは、有機溶剤に溶解して用いられるものでもよいし、ポリマー粒子として水に分散させて用いられるものでもよい。環境負荷が少ない点で後者が好ましい。フッ素系ポリマーの水分散物については、例えば特開2003−231722号公報、特開2002−20409号公報、特開平9−194538号公報等に記載されている。
【0060】
第2のポリマー層に含有されるバインダーポリマーとしては、フッ素系ポリマーを単独で含有した態様でもよいし、フッ素系ポリマーを含むあるいは含まない2種以上を併用した態様であってよい。具体的には、第2のポリマー層は、バインダーポリマーの全質量の50質量%を超えない範囲内において、フッ素系ポリマーと共に、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、シリコーン系ポリマー等のフッ素系ポリマー以外のポリマーを併用してもよい。フッ素系ポリマー以外のポリマーがバインダーポリマーの全質量の50質量%以下であることにより、バックシートとして用いた場合に良好な耐候性を発揮させることができる。
【0061】
バインダーポリマーの第2のポリマー層中における含有量は、第2のポリマー層の全質量に対して、50質量%以上95質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。バインダーポリマーの含有量は、50質量%以上であると、充分な耐久性が得られ、95質量%以下であると、充分な量の架橋剤や界面活性剤を添加できるので、膜強度や塗布面状の点で有利である。
【0062】
(架橋剤)
第1のポリマー層は、前記バインダーポリマーを架橋するための架橋剤の少なくとも一種をさらに含有することが好ましい。
前記架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。これらのうち、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤が好ましく、カルボジイミド系架橋剤がより好ましい。
【0063】
なお、架橋剤の詳細、特にカルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤の詳細及び好ましい態様については、前記第1のポリマー層において記載した通りである。
【0064】
架橋剤の第2のポリマー層中における含有量としては、層を構成するバインダーポリマーに対して、0.5質量%以上100質量%以下が好ましく、0.5質量%以上50質量%以下がより好ましく、さらにより好ましくは5.0質量%以上30質量%以下である。架橋剤の含有量は、0.5質量%以上であると、ポリマー層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、100質量%以下、特に50質量%以下であると、ポリマー層を形成するための塗布液を調整したときの液のポットライフをより長く保つことができる。
【0065】
(他の添加剤)
本発明における第2のポリマー層は、必要に応じて、界面活性剤、フィラー(無機微粒子)等の他の添加剤を含んでいてもよい。これらの詳細については、既述の通りである。
【0066】
本発明における第2のポリマー層の厚みとしては、0.5〜12μmが好ましい。第2のポリマー層の厚みが0.5μm以上であると、より高い耐久性能が得られる。また、第1のポリマー層の厚みが12μm以下であると、面状が良好で第2のポリマー層との間でより良好な接着性が得られる。第2のポリマー層の厚みは、特に1.0〜10μmの範囲がより好ましい。
【0067】
本発明における第2のポリマー層は、バインダーポリマー等を含む塗布液を調製し、この塗布液をポリマー支持体上に塗布し乾燥させることにより形成することができる。乾燥後、加熱する等して硬化させてもよい。塗布方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
塗布液に用いる溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。バインダーポリマーを水分散した水系塗布液を調製し、これを塗布する方法が好ましい。この場合、溶媒中の水の割合は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0068】
本発明においては、第1のポリマー層の厚みLと前記第2のポリマー層の厚みLとの比率(L/L)は、0.13/1.0〜24/1.0の範囲であることが好ましい。L/Lは、0.13/1.0以上の範囲であると湿熱経時後にも良好な接着性を維持することが可能であり、24/1.0以下の範囲であると充分な耐光性が得られ、面状が悪化することもない点で有利である。
中でも、L/Lは、0.29/1.0〜10.0/1.0の範囲がより好ましく、0.31/1.0〜4.0/1.0の範囲が更に好ましい。
【0069】
また、ポリマー支持体が2軸延伸フィルムである場合は、2軸延伸した後のポリマー支持体に第1のポリマー層を形成後、第2のポリマー層を形成するための塗布液を塗布し、乾燥させて形成してもよい。また、1軸延伸後のポリマー支持体に第1のポリマー層を形成後、さらに塗布液を塗布し乾燥させた後に1軸延伸の方向と異なる方向に延伸するようにしてもよい。更に、延伸前のポリマー支持体に塗布液を塗布して前記第1及び第2のポリマー層を形成した後に2方向に延伸してもよい。
【0070】
本発明の太陽電池用バックシート用ポリマーシートは、必要に応じて、着色層等の他の層を有してもよい。例えば、ポリマー支持体の前記第1及び第2のポリマー層が設けられた側とは反対側に着色層を設けることができる。
【0071】
−着色層−
着色層は、少なくとも顔料とバインダーを含有し、必要に応じて、さらに各種添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。
【0072】
着色層の機能としては、第1に、入射光のうち太陽電池セルを通過して発電に使用されずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げること、第2に、太陽電池モジュールを太陽光が入射する側(オモテ面側)から見た場合の外観の装飾性を向上すること、等が挙げられる。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側(ガラス基板側)から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシート用ポリマーシートに着色層を設けることによりバックシートの装飾性を向上させて見栄えを改善することができる。
【0073】
(顔料)
着色層は、顔料の少なくとも一種を含有することができる。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料を、適宜選択して含有することができる。
【0074】
着色層を、太陽電池に入射して太陽電池セルを通過した光を反射して太陽電池セルに戻す反射層として構成する場合、白色無機粒子を含むことが好ましい。白色無機粒子としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等の白色顔料が好ましい。中でも、二酸化チタンが好ましい。
【0075】
反射層を形成する場合、反射層中の白色無機粒子の含有量としては、バインダーポリマー及び白色無機粒子の合計質量に対して、30質量%〜90質量%の範囲が好ましく、より好ましい白色無機粒子の含有量の範囲は50〜85質量%である。白色無機粒子の反射層中の含有量は、30質量%以上であると良好な反射率が得られ、90質量%以下であることで太陽電池用バックシートの軽量化を図ることができる。
【0076】
顔料の着色層中における含有量は、2.5〜12g/mの範囲が好ましく、2.5〜8.5g/mの範囲がより好ましい。顔料の含有量が2.5g/m以上であると、必要な着色が得られ、反射率や装飾性を効果的に与えることができる。また、着色層中における顔料の含有量が12g/m以下であると、着色層の面状を良好に維持しやすく、膜強度により優れる。
【0077】
着色層を反射層として設ける場合、反射層中には、白色無機粒子を4〜12g/mの範囲で含有することが好ましい。白色無機粒子の含有量が4g/m以上であると、必要な反射率が得られ易く、含有量が12g/m以下であることでポリマーシートの軽量化が図れる。中でも、反射層中の白色無機粒子のより好ましい含量は、5〜11g/mの範囲である。
なお、反射層が2種類以上の白色無機粒子を含有する場合は、反射層中の全白色無機粒子の含有量の合計を4〜12g/mの範囲とすることが好ましい。
【0078】
顔料の平均粒径としては、体積平均粒径で0.03〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15〜0.5μm程度である。平均粒径が前記範囲内であると、光の反射効率が高い。体積平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0079】
着色層を構成するバインダーとしては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。これらの中でも、高い接着性を確保する観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。また。複合樹脂を用いてもよく、例えばアクリル/シリコーン複合樹脂も好ましいバインダーである。
バインダー成分の含有量は、顔料に対して、15〜200質量%の範囲が好ましく、17〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、15質量%以上であると、着色層の強度が充分に得られ、また200質量%以下であると、反射率や装飾性を良好に保つことができる。
【0080】
(添加剤)
着色層には、必要に応じて、架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
【0081】
前記架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。架橋剤の詳細、特にカルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤の詳細及び好ましい態様については、前記第1のポリマー層において記載した通りである。架橋剤の添加量は、層中のバインダー当たり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。
【0082】
前記界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の詳細及び好ましい態様については、前記第1のポリマー層において記載した通りである。界面活性剤を含有する場合の含有量は、0.1〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜5mg/mである。
【0083】
フィラーとしては、コロイダルシリカ、二酸化チタン等の公知のフィラーを用いることができる。フィラーの含有量は、着色層のバインダー当たり20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。
【0084】
着色層の形成は、顔料を含有するポリマーシートをポリマー支持体に貼合する方法、基材形成時に着色層を共押出しする方法、塗布による方法等により行なえる。具体的には、ポリマー支持体の表面に直にあるいは厚み2μm以下の下塗り層を介して、貼合、共押出し、塗布等することにより着色層を形成することができる。形成された着色層は、ポリマー支持体の表面に直に接した状態であっても、あるいは下塗り層を介して積層した状態であってもよい。
上記のうち、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。
【0085】
塗布による場合、塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーターなどの公知の塗布方法を利用することができる。塗布液は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよい。中でも、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。具体的には、例えば反射層を形成する場合、ポリマー支持体の前記第1及び第2のポリマー層が形成されていない側の面に、白色無機粒子、バインダー、及びその他必要に応じて含まれる成分を含有する反射層形成用塗布液を塗布することにより形成することができる。
【0086】
−易接着性層−
本発明の太陽電池用バックシート用ポリマーシートには、さらに易接着性層が(特に着色層の上に)設けられてもよい。易接着性層は、ポリマーシートを電池側基板(電池本体)の太陽電池素子(以下、発電素子ともいう)を封止する封止材と強固に接着するための層である。
【0087】
易接着性層は、バインダー、無機微粒子を用いて構成することができ、必要に応じて、さらに添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。易接着性層は、電池側基板の発電素子を封止するエチレン−ビニルアセテート(EVA;エチレン−酢酸ビニル共重合体)系封止材に対して、10N/cm以上(好ましくは20N/cm以上)の接着力を有するように構成されていることが好ましい。接着力が10N/cm以上であると、接着性を維持し得る湿熱耐性が得られやすい。
【0088】
なお、接着力は、易接着性層中のバインダー及び無機微粒子の量を調節する方法、バックシート用ポリマーシートの封止材と接着する面にコロナ処理を施す方法などにより調整が可能である。
【0089】
(バインダー)
易接着性層は、バインダーの少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられ、中でも耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。
【0090】
好ましいバインダーの例としては、ポリオレフィンの具体例としてケミパールS−120、S−75N(ともに三井化学(株)製)、アクリル樹脂の具体例としてジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬(株)製)、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の具体例としてセラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)とH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0091】
バインダーの易接着性層中における含有量は、0.05〜5g/mの範囲とすることが好ましい。中でも、0.08〜3g/mの範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、0.05g/m以上であると所望とする接着力が得られやすく、5g/m以下であるとより良好な面状が得られる。
【0092】
(無機微粒子)
易接着性層は、無機微粒子の少なくとも一種を含有することができる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
【0093】
無機微粒子の粒径は、体積平均粒径で10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径がこの範囲内であると、より良好な易接着性を得ることができる。粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0094】
無機微粒子の形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0095】
無機微粒子の含有量は、易接着性層中のバインダーに対して、5〜400質量%の範囲が好ましい。無機微粒子の含有量は、5質量%以上であると、湿熱雰囲気に曝されたときに良好な接着性が保持でき、400質量%以下であると、易接着性層の面状が良好である。中でも、無機微粒子の含有量は、50〜300質量%の範囲が好ましい。
【0096】
(架橋剤)
易接着性層には、架橋剤の少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適な架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。中でも、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、オキサゾリン系架橋剤が特に好ましい。
架橋剤の詳細、特にカルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤の詳細及び好ましい態様については、前記第1のポリマー層において記載した通りである。また、オキサゾリン基を有する化合物として、上市されている市販品としては、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS−500、同WS−700(いずれも(株)日本触媒製)等も使用可能である。
【0097】
架橋剤の易接着性層中における含有量としては、易接着性層中のバインダーに対して、5〜50質量%が好ましく、中でもより好ましくは20〜40質量%である。架橋剤の含有量は、5質量%以上であると、良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や接着性を保持することができ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保つことができる。
【0098】
(添加剤)
易接着性層には、必要に応じて、更に、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0099】
易接着性層の形成は、易接着性を有するポリマーシートを支持体に貼合する方法や、塗布による方法が挙げられる。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の塗布法を利用することができる。塗布液の調製に用いる塗布溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0100】
易接着性層の厚みには、特に制限はないが、通常は0.05〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であると必要な易接着性を好適に得ることができ、8μm以下であると面状がより良好になる。
また、本発明の易接着性層は、着色層の効果を低減させないために、透明であることが必要である。
【0101】
〜太陽電池用バックシート用ポリマーシートの製造方法〜
本発明の太陽電池用バックシート用ポリマーシートの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、下記工程により好適に製造することができる。すなわち、
本発明の太陽電池用バックシート用ポリマーシートの好ましい製造方法は、
(1)ポリマー支持体の少なくとも片面に、紫外線吸収剤及びバインダーポリマーを含有し、好ましくは溶媒の60質量%以上が水である塗布液(第1のポリマー層形成用の塗布液)を、ポリマー支持体の表面に直接あるいは他の層を介して塗布する工程と、
(2)ポリマー支持体上に塗布形成された塗布膜を乾燥させて第1のポリマー層を形成する工程と、
(3)前記第1のポリマー層の表面に直接、あるいは他の層を介して、バインダーポリマーを含み、紫外線吸収剤の含有量が1.0質量%以下である塗布液(第2のポリマー層形成用の塗布液)を塗布する工程と、
(4)前記第1のポリマー層上に塗布形成された塗布膜を乾燥させて、第2のポリマー層を形成する工程と、
を設けて構成することができる。
【0102】
また、前記第2のポリマー層を形成した後、少なくとも第2のポリマー層、好ましくは第2のポリマー層及び第1のポリマー層を硬化させることによって、湿熱経時後の接着性を高めることができる。
【0103】
本発明のポリマーシートは、既述のように、必要に応じて他の層(易接着性層等)を有していてもよい。この場合、本発明のポリマーシートの製造方法には、上記の工程に加えて、他の層を形成するための工程がさらに設けられてもよい。他の層の形成態様の例としては、例えば、(1)他の層を構成する成分を含有する塗布液を、ポリマー支持体上の表面(例えば、ポリマー支持体の第1及び第2のポリマー層が形成されている面とは反対の面)に塗布することにより形成する方法が挙げられ、その例としては、易接着性層、及び着色層の形成方法として既述した方法が挙げられる。
【0104】
ポリマーシートの具体例としては、ポリマーシートの第1及び第2のポリマー層が形成されている面とは反対の面に白色顔料を含有する反射層を塗設したもの、ポリマーシートの第1及び第2のポリマー層が形成されている面とは反対の面に着色顔料を含有する着色層を塗設したもの、ポリマーシートの第1及び第2のポリマー層が形成されている面とは反対の面に、ポリマーシート側から順に白色顔料を含有する反射層と易接着層を塗設したものなどを挙げることができる。
【0105】
また、他の層の形成態様の他の例としては、(2)他の層として所望される機能を発揮する層を1層又は2層以上有するシートやフィルムを被形成面に貼合する方法が挙げられる。
前記(2)の方法で用いられるシートやフィルムは、他の層を1層又は2層以上有するシートやフィルムである。ポリマーシートの具体例としては、ポリマーシートの第1及び第2のポリマー層が形成されている面とは反対の面に白色顔料を含有するポリマーフィルムを貼合したもの、ポリマーシートの第1及び第2のポリマー層が形成されている面とは反対の面に着色顔料を含有する着色フィルムを貼合したもの、ポリマーシートの第1及び第2のポリマー層が形成されている面とは反対の面にアルミニウム薄膜と白色顔料を含有するポリマーフィルムを貼合したもの、ポリマーシートの第1及び第2のポリマー層が形成されている面とは反対の面に無機バリア層を有するポリマーフィルムと白色顔料を含有するポリマーフィルムを貼合したもの、等が挙げられる。
【0106】
<太陽電池モジュール>
図1は、本発明の太陽電池モジュールの構成の一例を概略的に示している。この太陽電池モジュール10は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子20を、太陽光が入射する透明性の基板24とバックシート(既述の本発明の太陽電池用バックシート用ポリマーシート)5との間に配置し、基板24とバックシート5との間をエチレン−ビニルアセテート系封止材22で封止して構成されている。本実施形態のバックシート5は、ポリマー支持体16の一方の面側に支持体側から順に第1のポリマー層14とポリマー層14に接して第2のポリマー層12とが設けられ、他方の面側(太陽光が入射する側)に、他の層として白色の反射層18が設けられている。
【0107】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0108】
透明性の基板24は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0109】
太陽電池素子20としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【0110】
このような構成を有する太陽電池モジュール10は、太陽光が入射する側の反対側となる裏面側に、紫外線吸収剤(UV剤)を含有する第1のポリマー層がバインダーポリマーを主成分に含み実質的にUV剤を含まない第2のポリマー層で保護された積層構造が設けられており、長期に亘る経時でも、ひび割れ等の発生が抑えられ、支持体/塗布層間などの界面の接着性を保って剥離の発生も抑えられ、優れた長期耐久性を示す。これにより、屋外でも長期に亘って安定的に用いることが可能になる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0112】
(実施例1)
<ポリマーシートの作製>
−ポリエステルの合成−
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
【0113】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。添加後5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してコバルト元素換算値が30ppm、マンガン元素換算が15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してチタン元素換算値が5ppmとなるように添加した。前記チタンアルコキシド化合物には、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]に記載の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)を用いた。その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。
【0114】
その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力に到達するまでの時間はともに60分とした。そのまま3時間反応を続け、その後反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、得られたポリマー溶融物を冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリエチレンテレフタレート(PET)のペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を得た。
【0115】
−固相重合−
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行なった。
【0116】
−支持体の作製−
上記のように固相重合を経た後のペレットを、285℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約2.5mmの未延伸ベースを作製した。その後、90℃で縦方向に3倍に延伸し、更に120℃で横方向に3.3倍に延伸した。こうして、厚み250μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート基材(ポリマー支持体;PET−1)を得た。
【0117】
−顔料分散物の調製−
下記組成中の各成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施して、顔料分散物として二酸化チタン分散物を調製した。
<二酸化チタン分散物の組成>
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm)・・・40質量%
(タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分:100質量%)
・ポリビニルアルコール水溶液(10質量%) ・・・8.0質量%
(PVA−105、(株)クラレ製)
・界面活性剤 ・・・0.5質量%
(デモールEP、花王(株)製、固形分:25質量%)
・蒸留水 ・・・51.5質量%
【0118】
−裏面ポリマー層1の形成−
(1)裏面ポリマー層1形成用塗布液の調製
下記組成中の各成分を混合し、裏面ポリマー層1(第1のポリマー層)形成用の塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・セラネートWSA−1070(バインダー、B−1)・・・484質量部
(アクリル/シリコーン系バインダー、DIC(株)製、固形分:40質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤、H−1) ・・・77質量部
(エポクロスWS700、(株)日本触媒製、固形分:25質量%)
・界面活性剤 ・・・19質量部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・上記の二酸化チタン分散物(紫外線吸収剤) ・・・194質量部
・無機微粒子 ・・・97質量部
(アエロジルOX−50(日本アエロジル(株)製)の20質量%水分散物)
・蒸留水 ・・・129質量部
【0119】
(2)裏面ポリマー層1の形成
得られた裏面ポリマー層1形成用の塗布液を、上記で得た2軸延伸ポリエチレンテレフタレート基材の一方の面に、バインダー量が塗布量で3.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが約3μmの裏面ポリマー層1(第1のポリマー層)を形成した。このとき、裏面ポリマー層1に含まれる無機微粒子(二酸化チタン分散物由来の二酸化チタンは含まない。)の比率は11.3体積%であった。
【0120】
−裏面ポリマー層2−
(1)裏面ポリマー層2形成用塗布液の調製
下記組成中の各成分を混合し、裏面ポリマー層2(第2のポリマー層)形成用の塗布液を調製した。
<塗布液の組成>
・セラネートWSA−1070(バインダー、B−1)・・・323質量部
(アクリル/シリコーン系バインダー、DIC(株)製、固形分:40質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤、H−1) ・・・52質量部
(エポクロスWS700、(株)日本触媒製、固形分:25質量%)
・界面活性剤 ・・・32質量部
(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・蒸留水 ・・・594質量部
【0121】
(2)裏面ポリマー層2の形成
得られた裏面ポリマー層2形成用の塗布液を、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート基材の片面に設けられている裏面ポリマー層1の上に、バインダー量が塗布量で2.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み約2μmの裏面ポリマー層2(第2のポリマー層)を形成した。
【0122】
以上のようにして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート基材(PET基材)上に第1のポリマー層と第2のポリマー層が順次積層されてなるポリマーシートを作製した。
【0123】
<太陽電池モジュールの作製>
上記のようにして作製したポリマーシートをバックシートとして用い、図2に示す構造になるように、基板24上の太陽電池素子20を包埋する透明充填剤(EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体;封止剤))22に貼り合わせ、30cm角の太陽電池モジュールを作製した。このとき、バックシート5aを、その第1のポリマー層14と第2のポリマー層12が設けられていない側のポリマーシート16の表面が、太陽電池素子を包埋している透明充填剤22と接するように貼り付け、モジュールとした。
この太陽電池モジュールは、上記より得られたポリマーシートを備えているため、長期に亘って安定的な発電性能を発揮させることができる。
【0124】
−評価−
上記に引き続いて、得られたポリマーシートについて、下記の評価を実施した。評価結果は、下記表1〜表2に示す。
(1)破断伸び保持率
得られたポリマーシートについて、以下の測定方法により得られた破断伸びの測定値L及びLに基づいて、下記式で示される破断伸び保持率(%)を算出した。実用上許容できるものは、破断伸び保持率が50%以上のものである。
破断伸び保持率(%)=L/L×100
<破断伸びの測定>
ポリマーシートを幅10mm×長さ200mmに裁断して、測定用のサンプル片A及びBを用意した。サンプル片Aに対して、25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿した後、テンシロン(ORIENTEC製、RTC−1210A)で引っ張り試験を行なった。なお、延伸されるサンプル片の長さは10cm、引っ張り速度は20mm/分とした。この操作で得られるサンプル片Aの破断伸びをLとする。
別途、サンプル片Bに対して、120℃、100%RHの雰囲気で50時間湿熱処理した後、サンプル片Aと同様にして引っ張り試験を行なった。このときのサンプル片Bの破断伸びをLとする。
【0125】
(2)熱収縮
得られたポリマーシートを25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿した。その後、カミソリを用いて、ポリマーシート表面に約30cm間隔で平行な2つのキズをつけて、この間隔Lを測定した。キズを付した測定用サンプルを150℃で30分間保持することにより熱処理した。熱処理後の測定用サンプルを25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿してから2つのキズの間隔Lを測定した。
得られたL、Lから下記式を用いて収縮率を計算した。
収縮率[%]=(L−L)/L×100
前記収縮率は、ポリマーシートの長手方向と幅方向について測定、計算を行ない、これらの平均値をポリマーシートの収縮率とした。なお、収縮率の単位は[%]で、数値が正の時は縮みを、負の時は伸びを表す。
【0126】
(3)面状
得られたポリマーシートの面状(表面性状)を目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。このうち、ランク4及び5が実用上許容可能な範囲である。
<評価基準>
5:ムラやハジキが全くみられなかった。
4:ムラが極僅かにみられたが、ハジキ、異物は確認できなかった。
3:ムラがややみられたが、ハジキ、異物は確認できなかった。
2:ムラがはっきり確認され、一部(10個/m未満)にハジキ、異物がみられた。
1:ムラがはっきり確認され、ハジキ、異物が10個/m以上みられた。
【0127】
(4)接着性
−4.1.湿熱経時前−
得られたポリマーシートの第1のポリマー層の表面に片刃のカミソリで、縦横それぞれ6本ずつ3mm間隔にキズをつけ、25マスのマス目を形成した。この上にマイラーテープ(ポリエステル粘着テープ)を貼り付け、次いでマイラーテープを手動で、ポリマーシート表面に沿って180°方向に引っ張って剥離した。このとき、剥離されたマス目の数によって、バック層の接着力を下記の評価基準にしたがってランク分けした。
なお、評価ランク4〜5が、実用上許容可能な範囲である。
<評価基準>
5:剥離したマス目はなかった(0マス)
4:剥離したマス目が0マスから0.5マス未満
3:剥離したマス目が0.5マス以上2マス未満
2:剥離したマス目が2マス以上10マス未満
1:剥離したマス目が10マス以上
【0128】
−4.2.湿熱経時後(湿熱耐久性)−
得られたポリマーシートを120℃、100%RHの環境条件下で48時間保持した後、25℃、60%RHの環境下において1時間調湿した。その後、前記「4.1.湿熱経時前」の評価と同様の方法で、ポリマー層の接着力を評価した。
【0129】
−4.3.曝光処理後(耐光性)−
超エネルギー照射試験機(スガ試験機(株)製)を用いて700W/m強度の紫外光を48時間、上記で得られたポリマーシートに対し照射した後、前記「4.1.湿熱経時前」の評価と同様の方法で、裏面ポリマー層1と支持体との間の接着性を評価した。
【0130】
(実施例2)
実施例1において、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート基材の作製時における温度を285℃から315℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚み250μmのポリマー支持体(PET−2)を作製し、ポリマーシートを作製すると共に、太陽電池モジュールを作製し、評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0131】
(実施例3〜4、比較例1〜3)
実施例1において、裏面ポリマー層1のバインダー種と紫外線吸収剤量とを、下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマーシートを作製すると共に、太陽電池モジュールを作製し、評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0132】
(実施例5〜13)
実施例1において、裏面ポリマー層1に用いる架橋剤の種類と量を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマーシートを作製すると共に、太陽電池モジュールを作製し、評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0133】
(実施例14〜17)
実施例1において、裏面ポリマー層1の無機微粒子の量(10質量%)を、下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマーシートを作製すると共に、太陽電池モジュールを作製し、評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0134】
(実施例18〜20)
実施例1において、裏面ポリマー層1の紫外線吸収剤の種類と量を、下記表2に示すように変更したこと以外、実施例1と同様にして、ポリマーシートを作製すると共に、太陽電池モジュールを作製し、評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。
【0135】
(実施例21〜28)
実施例1において、裏面ポリマー層2のバインダーをB−1からB−4に代えあるいは代えないでさらに架橋剤の種類、量を下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマーシートを作製すると共に、太陽電池モジュールを作製し、評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。
【0136】
(実施例29〜32)
実施例1において、裏面ポリマー層1の膜厚を下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマーシートを作製すると共に、太陽電池モジュールを作製し、評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。
【0137】
(実施例33〜38)
実施例1において、裏面ポリマー層2の膜厚を下記表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマーシートを作製すると共に、太陽電池モジュールを作製し、評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。なお、実施例34では、更に、裏面ポリマー層2の架橋剤をH−2に変更した。
【0138】
(比較例4)
実施例1において、裏面ポリマー層2を設けない以外は、実施例1と同様にして、ポリマーシートを作製すると共に、太陽電池モジュールを作製し、評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。
【0139】
(比較例5)
実施例1において、裏面ポリマー層1、裏面ポリマー層2における紫外線吸収剤(U−1)の添加量をそれぞれ全バインダーに対して20質量%、30質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、ポリマーシートを作製すると共に、太陽電池モジュールを作製し、評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
前記表1〜表2中の「%」は、以下の通りである。
UV剤及び架橋剤の含有量は、各層中のバインダーポリマーの全質量に対する比率を表し、無機微粒子の含有量は、裏面ポリマー層1中に占める体積比率を表す。
【0143】
前記表1〜表2に示すように、実施例では、破断伸び保持率及び熱収縮率が良好であり、高温高湿の湿熱環境下や照射下に曝された場合でも、ひび割れの発生は認められず、また塗布形成されたポリマー層の接着性の大きな低下もみられず、剥離に対する耐性は良好であった。
これに対し、比較例では、曝光下に曝された際のポリマー層の接着性低下が著しく、剥離耐性の点で大きく劣っていた。
【符号の説明】
【0144】
5,5a・・・太陽電池用バックシート
10・・・太陽電池モジュール
12・・・含フッ素ポリマー層
14・・・下塗り層
16・・・ポリマー支持体
18・・・反射層
20・・・太陽電池素子
22・・・封止材
24・・・透明性の基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー支持体と、
前記ポリマー支持体上に設けられ、紫外線吸収剤及びバインダーポリマーを含有する第1のポリマー層と、
前記第1のポリマー層上に設けられ、バインダーポリマーを含み、紫外線吸収剤の含有量がバインダーの総量に対して1.0質量%以下である第2のポリマー層と、
を有する太陽電池用バックシート用ポリマーシート。
【請求項2】
前記ポリマー支持体が、ポリエステルである請求項1に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシート。
【請求項3】
120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びの、保存前の破断伸びに対する比が50%以上である請求項1又は請求項2に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシート。
【請求項4】
150℃で30分間熱処理したときの熱収縮率が−1%以上1%以下の範囲である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシート。
【請求項5】
前記第2のポリマー層が、前記バインダーポリマーとして、フッ素系ポリマー及びシリコーン系ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシート。
【請求項6】
前記第1のポリマー層が、前記バインダーポリマーとして、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及びポリウレタン系ポリマーから選ばれる少なくとも一種を含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシート。
【請求項7】
前記第1のポリマー層及び前記第2のポリマー層の少なくとも一方は、更に、バインダーポリマーに対して0.5質量%以上50質量%以下の架橋剤を含有する請求項5又は請求項6に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシート。
【請求項8】
前記架橋剤が、カルボジイミド系架橋剤又はオキサゾリン系架橋剤である請求項7に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシート。
【請求項9】
前記第1のポリマー層が、更に、0.5体積%以上50体積%以下の無機微粒子を含有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシート。
【請求項10】
前記第1のポリマー層の厚みLと前記第2のポリマー層の厚みLとの比率(L/L)が、0.13/1.0〜24/1.0である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシート。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート用ポリマーシートを備えた太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−69769(P2012−69769A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213786(P2010−213786)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】