説明

太陽電池用ポリマーシート及び太陽電池モジュール

【課題】加熱圧着および/または湿熱経時に供されても反りにくく、かつ、ポリマー層が封止材および/または支持体から剥離しにくい太陽電池用バックシート及びその製造方法、並びに歩留まりの大きい太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】第1のポリマー層と、第2のポリマー層と、ポリマー支持体とをこの順に配置して含む太陽電池用ポリマーシートであって、前記第1のポリマー層がフッ素ポリマー及びシリコーンポリマーからなる群より選択されるポリマーを含有し、前記第1のポリマー層が前記第2のポリマー層と接し、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との界面の粗さ(Rz)が、0.2μm〜3.0μmの範囲である前記ポリマーシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用ポリマーシート及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、一般に、太陽光が入射するガラスまたはフロントシートの上に/封止剤/太陽電池素子/封止剤/バックシートがこの順に積層された構造を有している。具体的には、太陽電池素子は一般にエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の樹脂(封止材)で包埋し、更にこの上に太陽電池用保護シートを貼り付けた構造に構成される。また、この太陽電池用保護シートとしては、従来、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが使用されている。
【0003】
一般的なPETフィルムは太陽電池用保護シート、その中でも特に最外層となる太陽電池用のバックシートとして長期間使用した際に、太陽電池上で剥がれが発生しやすく、PETフィルム単層のバックシートでは、屋外等の風雨に曝されるような環境下に長期間置かれるとバックシートとEVA等の封止材との間で剥がれを生じやすい。この耐候性における問題への対処を期して、従来、主として耐候性フィルムをPETなどの基材フィルムの最外層側に張り合わせた積層体タイプのバックシートが用いられていた。張り合わせ方式の積層体の中でも最も汎用されていたのは、ポリフッ化ビニルフィルム等のフッ化炭素系ポリマーフィルムであった。
【0004】
フッ化炭素系ポリマーフィルムを積層体タイプの太陽電池用バックシートとして用いた場合、ポリエステルフィルムとフッ化炭素系ポリマーフィルムとの層間の密着性(接着性)が弱く、特に長期間使用すると層間剥離しやすい問題があった。これに対し、近年、フッ化炭素系ポリマーを含む組成物をPET基材フィルム上に塗布した塗布型バックシートが開発されてきた(特許文献1〜5参照)。例えば、特許文献2等には、特定の厚みのポリエチレンテレフタレート支持体と、含フッ素ポリマー層である耐候性層を塗布により積層したポリマーシートが開示されている。
【0005】
一方、耐候性層の他、太陽電池用バックシートには、様々な他の機能層も積層されてきている。例えば、特許文献6にはバックシートに酸化チタン等の白色無機微粒子を添加し、光反射性能を持たせた白色層を積層し、セルを素通りした光を乱反射ししてセルに戻すことで発電効率を向上させる方法等が記載されている。更に、バックシートとEVA封止材との間の強固な接着を得るために、バックシートの最表層に易接着層などのポリマー層を設ける場合がある。白色のポリエチレンテレフタレートフィルムの上に熱接着層を設ける技術が特許文献6に記載されている。以上のような機能を付与するためには、バックシートは、基材ポリマー上に他の機能を有する各種機能層が積層された構造になる。
基材ポリマー自体を多層化しようとする方法も知られている。例えば、特許文献1には、3層構造のポリマー支持体と、フッ化炭素系樹脂とを含有する積層フィルムが開示されている。前記特許文献1では、3層構造のポリマー支持体を用いており、層構成が多層化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−95640号公報
【特許文献2】特開2010−53317号公報
【特許文献3】特開2007−35694号公報
【特許文献4】国際公開第2008/143719号パンフレット
【特許文献5】特開2010−053317号公報
【特許文献6】特開2003−060218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように多層化が進む傾向にある太陽電池用保護シートは、積層数が増すに連れて、ますます各層間の密着性の不十分さの問題が生じやすくなってきている。
【0008】
さらに近年では、太陽電池の発電効率をより高める観点や集積して設置してコストを低減させる観点などから、屋外などの過酷な場所で太陽電池を利用することが求められており、太陽電池の長寿命化に伴って高温高湿環境での長期保存性を改善することが求められている。
【0009】
しかしながら、前記文献のいずれにおいても、高温高湿環境での長期保存性に関しては、何ら検討されていない。
【0010】
このような状況のもと、本発明者らが、特許文献2に記載の積層フィルムや、特許文献1に記載の積層構造の支持体を用いてその密着性を検討した。その結果、この積層フィルムや積層構造の支持体は、通常の環境下では層間の密着性についてはある程度問題が生じにくいものの、屋外などでの使用を想定した加速試験に供した場合において、高温高湿環境下で湿熱経時したときにポリマー層間の密着性が低下するとの知見が得られた。従って、特許文献1及び特許文献2等の前掲の先行技術文献に記載されるような従来の積層フィルムや積層構造の支持体は、近年太陽電池に求められる高温高湿環境での長期保存性の観点からは、未だ不十分であることがわかった。特に、積層数を増やす程、高湿熱環境下に適さない接着剤層が増えるため、経時劣化により接着層が剥離してしまう傾向があり、長寿命化を想定した場合には、更なる改良の余地があることがわかった。
更に、フッ素ポリマー及びシリコーンポリマーなどのポリマーを含有するポリマー層を、他のポリマー層に隣接させて設ける場合における層間接着性については、更なる改良が求められる。
【0011】
本発明は上記の実情を考慮してなされたものである。本発明は、支持体上に設けられたポリマー層間の密着性が高く、湿熱環境下における耐久性に優れた太陽電池用ポリマーシート、並びに、該太陽電池用ポリマーシートを備えて長期に亘って安定した発電効率を有する太陽電池モジュールを提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
〔1〕 第1のポリマー層と、第2のポリマー層と、ポリマー支持体とをこの順に配置して含む太陽電池用ポリマーシートであって、
前記第1のポリマー層がフッ素ポリマー及びシリコーンポリマーからなる群より選択されるポリマーを含有し、
前記第1のポリマー層が前記第2のポリマー層と接し、
前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との界面の粗さ(Rz)が、0.2μm〜3.0μmの範囲である太陽電池用ポリマーシート。
〔2〕 前記第2のポリマー層がシリコーンポリマーを含有する〔1〕に記載のポリマーシート。
〔3〕 前記第2のポリマー層が、体積平均粒径が0.2μm〜1.5μmの範囲である粒子を含有する〔1〕又は〔2〕に記載のポリマーシート。
〔4〕 前記第2のポリマー層が、体積平均粒径が0.3μm〜0.6μmの範囲である粒子を含有する〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のポリマーシート。
〔5〕 前記第2のポリマー層が、二酸化チタン粒子を含有する〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のポリマーシート。
〔6〕 前記第1のポリマー層及び前記第2のポリマー層が、塗布により形成された層である〔1〕〜〔5〕のいずれか1項にポリマーシート。
〔7〕前記第1のポリマー層が最外層である〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載のポリマーシート。
〔8〕 末端封止剤を、ポリマー支持体を構成するポリマーの全質量に対して0.1質量%〜10質量%含有する〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載のポリマーシート。
〔9〕 ポリマー支持体が無機粒子または有機粒子である微粒子を含有し、微粒子の平均粒径が0.1μm〜10μmであり、且つ微粒子の含有量がポリマー支持体の全質量に対して0質量%〜50質量%である〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載のポリマーシート。
〔10〕 ポリマー支持体を構成するポリマーを含む未延伸シートを供給すること、
未延伸シートを第一の方向に延伸すること、
第一の方向に延伸されたシートの、少なくとも一表面の上に、下塗り層形成用組成物を付与すること、及び
下塗り層形成用組成物が付与されたシートを、第一の方向に直交する方向に延伸すること、
を含む、ポリマー支持体及び下塗り層の形成工程;及び
下塗り層の上に第2のポリマー層と第1のポリマー層とをこの順に配置する工程、
を含む、〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のポリマーシートを製造する方法。
〔11〕 ポリマー支持体の表面をコロナ処理、火炎処理、グロー放電処理からなる群より選択される方法で処理することを含む、〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のポリマーシートを製造する方法。
〔12〕 太陽光が入射する透明性のフロント基板と、前記フロント基板の一方の面上に設けられ、太陽電池素子及び前記太陽電池素子を封止する封止材を有するセル構造部分と、前記セル構造部分の前記フロント基板が位置する側と反対側に設けられ、前記封止材と隣接して配置された、〔1〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のポリマーシートであるバックシートと、を備えた太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支持体上に設けられたポリマー層間の密着性が高く、湿熱環境下における耐久性に優れた太陽電池用ポリマーシート、並びに、該太陽電池用ポリマーシートを備えて長期に亘って安定した発電効率を有する太陽電池モジュールを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】太陽電池モジュールの構成例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の太陽電池用保護シート及びその製造方法について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書における数値範囲の表示は、当該数値範囲の下限値として表示される数値を最小値として含み、当該数値範囲の上限値として表示される数値を最大値として含む範囲を示す。
組成物中のある成分の量について言及する場合において、組成物中に当該成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に別途定義しない限り、当該量は、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
「工程」との語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用を達成する工程であれば、本用語に含まれる。
【0016】
<太陽電池用ポリマーシート>
本発明の一実施形態である太陽電池用ポリマーシート(以下、単に「ポリマーシート」とも称する。)は、ポリマー支持体上に、フッ素ポリマー及びシリコーンポリマーから選択される少なくとも1種を含有する第1のポリマー層と、前記第1のポリマー層の前記ポリマー支持体側に隣接する第2のポリマー層とを有し、前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との界面の粗さ(Rz)が、0.2μm〜3.0μmの範囲である太陽電池用ポリマーシートである。
本発明の一実施形態であるポリマーシートは、太陽電池発電モジュールを構成するバックシートとして好適に用いられる。
【0017】
第1のポリマー層と第2のポリマー層との界面に特定の範囲の粗さを持たせて界面面積を増やすことで、当該ポリマー層間の密着性を高め、湿熱環境下における優れた耐久性を得うる。
【0018】
ここで、第1のポリマー層と第2のポリマー層との界面の粗さを示すための指標である「Rz」は、以下の測定方法により定められる。
【0019】
−Rzの測定方法−
測定対象のポリマーシートをその平面に対して垂直方向に切断した断面において、観察箇所5点を、隣り合う観察箇所の間隔を3cmとして選択し、これら観察箇所5点の断面を走査型電子顕微鏡(商品名:S4700、株式会社日立製作所製)を用いて倍率6000倍〜10000倍で撮影する。得られた5点の断面写真において、ポリマー支持体と第2のポリマー層との界面から、第2のポリマー層と第1のポリマー層との界面迄の最大距離と最小距離の差が最大となる長さを測定し、5点における該長さの平均値をRzとする。
【0020】
Rzは0.2μm〜3.0μmの範囲に設定される。Rzが0.2μm以上であると、支持体上に設けられたポリマー層間の密着性の湿熱環境下における耐久性が高くなり得る。Rzが3.0μm以下であると、第1のポリマー層が十分な厚さを有するため第一のポリマー層の性能が満たされ得、第1のポリマー層と第2のポリマー層との間の十分な密着性を確保し得、また湿熱環境下における耐久性も高くなり得る。
【0021】
第1のポリマー層と第2のポリマー層との界面の粗さ(Rz)を、0.2μm〜3.0μmの範囲に制御するための方法の好ましい例としては、第2のポリマー層に特定の粒径を有する粒子を含有させる方法、第2のポリマー層に凹凸付きの転写ロールにより粗さを転写した後に第1のポリマー層を積層する方法が挙げられる。
【0022】
Rzを制御するために第2のポリマー層が含有しうる粒子としては、支持体上に設けられたポリマー層間の密着性を高め得、湿熱環境下における耐久性が優れ得る観点から、体積平均粒径が0.2μm〜1.5μmの範囲である粒子(以下、適宜「特定粒子」と称する。)が好ましく、体積平均粒径が0.3μm〜0.6μmの範囲である粒子がより好ましい。
【0023】
特定粒子の体積平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0024】
特定粒子は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよい。
特定粒子である無機粒子としては、例えば、酸化チタン(例えば、二酸化チタン)、ITO等の金属酸化物の粒子、ガラスビーズ、コロイダルシリカ等の粒子が好適に挙げられる。該無機粒子としては、市販品を適用することもでき、例えば、タイペーク(登録商標)CL95、タイペーク(登録商標)PF−691、タイペーク(登録商標)CR−60−2(以上、石原産業(株)製)などが挙げられる。
特定粒子である有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA))、ポリスチレン等のポリマー粒子が好適に挙げられる。該有機粒子としては、市販品を適用することもでき、例えば、MP−2000(商品名、総研化学(株)製)などが挙げられる。
【0025】
特定粒子の形状については、特に限定されず、球形、円柱形、フレーク状粉体、中空粒子、多孔質粒子、不定形粒子、針状などが挙げられる。安定してRzを制御できる観点からは、球状であることが好ましい。
【0026】
ある実施形態では、特定粒子は、白色顔料として機能する無機粒子であることが、着色層として機能も兼ね、積層数を減らしポリマーシート全体としての湿熱環境下での密着性を高める観点から好ましい。かかる観点からは、特定粒子の中でも、二酸化チタン粒子であることが特に好ましい。
【0027】
第2のポリマー層において、Rzを制御するために含有される特定粒子の含有量は、第2のポリマー層の主バインダーに対して0質量%より大きく25質量%以下であることが好ましく、3〜20質量%が更に好ましく、5〜10質量%が特に好ましい。特定粒子の含有量が第2のポリマー層の主バインダーに対して25質量%以下であると、第2のポリマー層の面状をより良好に保ち得る。ここで、第2のポリマー層における主バインダーとは、第2のポリマー層に含まれるバインダーのうち含有量が最も多いバインダーである。
【0028】
上記の他、第2のポリマー層についての好適な態様については後述する。
【0029】
以下、ポリマーシートにおける各構成要素に関して、ポリマー支持体、第1のポリマー層、第2のポリマー層、層構成、及びポリマーシートの特性の順に、更に詳細に説明をする。
【0030】
(ポリマー支持体)
本発明の一実施形態であるポリマーシートは、ポリマー支持体を含む。
ポリマー支持体は、単層であり、かつ厚みが220μm以上のポリマー支持体であることが好ましい。
【0031】
ポリマー支持体(基材)を構成するポリマーとしては、ポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン、又はポリフッ化ビニルなどのフッ化炭素系ポリマー等が挙げられる。これらの中では、ポリエステルが好ましく、中でも力学的物性やコストのバランスの点でポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0032】
ポリマー支持体として用いるポリエチレンテレフタレートのカルボキシル基含有量は2当量/t〜35当量/tが好ましく、5当量/t〜25当量/tが更に好ましく、7当量/t〜25当量/tが特に好ましい。カルボキシル基含有量は2当量/t〜35当量/tとすることで、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。
なお、「当量/t」とは、1t当たりのモル当量を表す単位である。
【0033】
ポリマー支持体に用いるポリエステルを重合する際には、カルボキシル基含有量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、及び/又はTi系の化合物を触媒として用いることが好ましく、中でも特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624号、特許第3335683号、特許第3717380号、特許第3897756号、特許第3962226号、特許第3979866号、特許第3996871号、特許第4000867号、特許第4053837号、特許第4127119号、特許第4134710号、特許第4159154号、特許第4269704号、特許第4313538号各公報等に記載の方法を適用できる。
【0034】
ポリマー支持体は、チタン触媒下で重合されたポリマーを含むことがより好ましい。
【0035】
ポリマー支持体を構成するポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含有量を達成し得る。固相重合は、プレポリマーである重合後のポリエステルを真空中あるいは窒素ガス中で170℃〜240℃程度の温度で5時間〜100時間程度加熱して重合度を増大させる手法である。具体的には、固相重合には、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号等に記載の方法を適用することができる。
【0036】
ポリマー支持体に用いるポリエステルは、機械強度の点から二軸延伸したものであることが好ましい。
【0037】
ポリマー支持体は、延伸後に180℃〜220℃の温度で熱処理されてなることが好ましく、190℃〜215℃の温度で熱処理されてなることが更に好ましく、195℃〜215℃の温度で熱処理されてなることが特に好ましい。熱処理温度を180℃以上とすることが、延伸後のポリマー支持体の歪みを緩和させてポリマー支持体の寸度変化を改善する観点から好ましく、220℃以下とすることが、延伸後のポリマー支持体の歪みを緩和させたときにポリマーの配向が進み過ぎないように制御してポリマー支持体の耐加水分解性と寸度変化を同時に改善する観点から好ましい。
【0038】
ポリマー支持体を構成するポリマーは、固層重合されてなることが好ましい。前記固層重合としては、例えば、プレポリマーであるポリマーを耐真空容器に投入し、容器内を真空にし、攪拌しながら反応させる重合方法が挙げられる。
【0039】
〜厚み〜
ポリマー支持体の厚みは、220μm以上であり、220μm〜250μmであることが好ましい。
【0040】
ポリマー支持体の表面は必要に応じてコロナ処理、火炎処理、グロー放電処理のような方法で処理されていてもよく処理されていなくてもよい。ある実施形態においては、ポリマー支持体の表面をコロナ処理、火炎処理、グロー放電処理からなる群より選択される方法で処理し、当該処理されたポリマー支持体の表面の上に第2のポリマー層と第1のポリマー層とをこの順に配置することができる。
コロナ放電処理は、通常誘導体を被膜した金属ロール(誘電体ロール)と絶縁された電極間に高周波、高電圧を印加して、電極間の空気の絶縁破壊を生じさせることにより、電極間の空気をイオン化させて、電極間にコロナ放電を発生させる。そして、このコロナ放電の間を、支持体を通過させることにより行う。
ある実施形態において、コロナ放電処理の条件は、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランス1〜3mm、周波数1〜100kHz、印加エネルギー0.2〜5kV・A・分/m程度であることが好ましい。
【0041】
グロー放電処理は、真空プラズマ処理またはグロー放電処理とも呼ばれる方法で、低圧雰囲気の気体(プラズマガス)中での放電によりプラズマを発生させ、基材表面を処理する方法である。ここで用いる低圧プラズマはプラズマガスの圧力が低い条件で生成する非平衡プラズマである。この低圧プラズマ雰囲気内に被処理フィルムを置くことによりグロー放電処理を実施し得る。
グロー放電処理において、プラズマを発生させる方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電等が挙げられる。放電に用いる電源は直流でも交流でもよい。交流を用いる場合は30Hz〜20MHz程度の範囲が好ましい。交流を用いる場合には50又は60Hzの商用の周波数を用いてもよいし、10〜50kHz程度の高周波を用いてもよい。また、13.56MHzの高周波を用いる方法も好ましい。
グロー放電処理で用いるプラズマガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、水蒸気ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスが挙げられ、酸素ガス、または、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスが好ましい。ある実施形態では、酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガスを使用することが望ましい。酸素ガスとアルゴンガスを用いる場合、両者の比率は、分圧比で酸素ガス:アルゴンガス=100:0〜30:70位、より好ましくは、90:10〜70:30位が好ましい。また、特に気体を処理容器に導入せず、リークにより処理容器にはいる大気や被処理物から出る水蒸気などの気体をプラズマガスとして用いる方法も好ましい。
プラズマガスの圧力としては、非平衡プラズマ条件が達成される低圧が必要である。具体的なプラズマガスの圧力としては、0.005〜10Torr、より好ましくは0.008〜3Torr程度の範囲が好ましい。プラズマガスの圧力が0.005Torr以上であると十分な接着性改良効果を望み得、10Torr以下であると電流が増大による放電の不安定化を防ぎ得る。
【0042】
プラズマ出力は、処理容器の形状や大きさ、電極の形状などにより一概には言えないが、100〜2500W程度が好ましく、500〜1500W程度がより好ましい。
ある実施形態において、グロー放電処理の処理時間は0.05〜100秒が好ましく、より好ましくは0.5〜30秒程度である。処理時間が0.05以上であると十分な接着性改良効果を望み得、100秒以下であると被処理フィルムの変形や着色等を防ぎ得る。
グロー放電処理の放電処理強度は、プラズマ出力と処理時間によるが、0.01kV・A・分/m〜10kV・A・分/mの範囲が好ましく、0.1〜7kV・A・分/mがより好ましい。放電処理強度を0.01kV・A・分/m以上とすることで充分な接着性改良効果が得られ、10kV・A・分/m以下とすることで被処理フィルムの変形や着色等を避けることができる。
【0043】
グロー放電処理では、あらかじめ被処理フィルムを加熱しておくことも好ましい。この方法により、加熱を行わなかった場合に比べ、短時間で良好な接着性が得られる。加熱の温度は40℃〜被処理フィルムの軟化温度+20℃の範囲が好ましく、70℃〜被処理フィルムの軟化温度の範囲がより好ましい。加熱温度を40℃以上とすることで充分な接着性の改良効果が得られる。また、加熱温度を被処理フィルムの軟化温度以下とすることで処理中に良好なフィルムの取り扱い性が確保できる。
真空中で被処理フィルムの温度を上げる具体的方法としては、赤外線ヒーターによる加熱、熱ロールに接触させることによる加熱などが挙げられる。
【0044】
ポリマー支持体は、末端封止剤を含有してもよくしなくてもよい。末端封止剤を含有するポリマー支持体は、向上した耐加水分解性(耐候性)を有し得る。
ポリマー支持体は、無機粒子または有機粒子を含有してもよくしなくてもよい。無機粒子または有機粒子含有するポリマー支持体は、向上した光の反射率(白色度)を有し得る。
【0045】
(末端封止剤)
ある実施形態において、ポリマー支持体は、ポリマー支持体を構成するポリマーの全質量に対して0.1質量%〜10質量%以下の末端封止剤を含んでもよく含まなくてもよい。ある実施形態において、末端封止剤の含有量は好ましくは0.2質量%〜5質量%、より好ましくは0.3質量%〜2質量%であり得る。
【0046】
ポリマーの加水分解は、末端カルボキシル基等から生じる水素イオンの触媒効果により加速されるため、耐加水分解性(耐候性)を向上させるには、末端カルボキシル基と反応する末端封止剤を添加することが有効であり得る。末端封止剤の含有量が上記範囲内であると、末端封止剤がポリマーに対し可塑剤として作用してポリマー支持体の力学強度、耐熱性が低下することを回避し得る。
【0047】
末端封止剤としてはエポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、カーボネート化合物等が挙げられる。PETと親和性が高く末端封止能の高いカルボジイミドが好ましい。
【0048】
末端封止剤(特にカルボジイミド末端封止剤)は高分子量であると、溶融製膜中の揮散を低減できる。分子量は重量平均分子量で200〜10万が好ましく、より好ましくは2000〜8万、さらに好ましくは1万〜5万である。末端封止剤(特にカルボジイミド末端封止剤)の重量平均分子量が5万以下であるとポリマー中に均一分散し易く耐候性改良効果を充分に発現し得る。前記重量平均分子量が1万以上であると、押出及び/又は製膜中の揮散を抑制し得、耐候性向上効果を発現し得る。
【0049】
カルボジイミド末端封止剤
カルボジイミド末端封止剤はカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物である。カルボジイミド化合物には一官能性カルボジイミドと多官能性カルボジイミドがある。一官能性カルボジイミドとしては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミドおよびジ−β−ナフチルカルボジイミドなどが挙げられる。好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドである。
【0050】
多官能性カルボジイミドとしては、重合度3〜15のカルボジイミドが好ましく用いられる。具体的には、1,5−ナフタレンカルボジイミド、4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド、4,4’−ジフェニルジメチルメタンカルボジイミド、1,3−フェニレンカルボジイミド、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンカルボジイミド、2,6−トリレンカルボジイミド、2,4−トリレンカルボジイミドと2,6−トリレンカルボジイミドの混合物、ヘキサメチレンカルボジイミド、シクロヘキサン−1,4−カルボジイミド、キシリレンカルボジイミド、イソホロンカルボジイミド、イソホロンカルボジイミド、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−カルボジイミド、メチルシクロヘキサンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドおよび1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−カルボジイミドなどを例示することができる。
【0051】
カルボジイミド化合物は、熱分解によりイソシアネート系ガスを発生するため、末端封止剤は耐熱性の高いカルボジイミド化合物であることが好ましい。耐熱性を高めるためには、カルボジイミド化合物の分子量(重合度)が高いほど好ましく、またカルボジイミド化合物の末端が耐熱性の高い構造であることが好ましい。カルボジイミド化合物は一度熱分解を起こすとさらなる熱分解を起こし易くなるため、ポリマー支持体製造においてはポリマーの押出温度をなるべく低温下にするなどの工夫を行い得る。
【0052】
ある実施形態において、末端封止剤のカルボジイミド化合物は、環状構造を持つものが好ましい(例えば、特開2011−153209に記載のもの)。これらは低分子量でも上記高分子量カルボジイミド同等の効果を発現し得る。これはポリマーの末端カルボキシル基と環状のカルボジイミドが開環反応し、一方がこの末端カルボキシル基と反応、開環した他方が他の末端カルボキシル基と反応し高分子量化するため、イソシアネート系ガスの発生を抑制し得るためである。
【0053】
ある実施形態においては、環状構造を持つカルボジイミド化合物である末端封止剤は、カルボジイミド基の第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含むものであることが好ましい。ある実施形態においては、末端封止剤は、芳香環に隣接したカルボジイミド基を少なくとも1個有し、前記芳香環に隣接したカルボジイミド基の第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている環状構造を含むカルボジイミド(芳香族環状カルボジイミドとも言う)であることが好ましい。
芳香族環状カルボジイミドは、環状構造を複数有していてもよい。
芳香族環状カルボジイミドは分子内に2つ以上のカルボジイミド基の第一窒素と第二窒素とが連結基により結合した環構造を有さない芳香族カルボジイミドであること、すなわち単環であるものも好ましく用いることができる。
【0054】
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有するが、例えば、スピロ環など、分子中に複数の環状構造を有する場合にはスピロ原子に結合するそれぞれの環状構造中に1個のカルボジイミド基を有していれば、化合物として複数のカルボジイミド基を有していてよい。環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に、10〜15が好ましい。
【0055】
ここで、環状構造中の原子数とは、環状構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば原子数は8、50員環であれば原子数は50である。環状構造中の原子数が8以上であると、環状カルボジイミド化合物が安定性を維持し得、保管、使用に適し得る。反応性の観点からは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、合成上困難によるコスト上昇を抑制し得る観点からは、環状カルボジイミド化合物は50以下であることが好ましい。かかる観点より環状構造中の原子数の範囲は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、さらに好ましくは10〜15であり得る。
【0056】
前記環状構造を持つカルボジイミド封止剤の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。但し、本発明は以下の具体例により限定されるものではない。
【0057】
【化1】

【0058】
エポキシ末端封止剤
エポキシ末端封止剤はエポキシ化合物である。エポキシ化合物の好ましい例としては、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。
【0059】
グリシジルエステル化合物の具体例としては、安息香酸グリシジルエステル、t−Bu−安息香酸グリシジルエステル、P−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステルおよびピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが挙げられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0060】
また、グリシジルエーテル化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエ−テル、O−フェニルグリシジルエ−テル、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ブタン、1,6−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4−ビス(β,γ−エポキシプロポキシ)ベンゼン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−エトキシエタン、1−(β,γ−エポキシプロポキシ)−2−ベンジルオキシエタン、2,2−ビス−[р−(β,γ−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどのビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテルなどが挙げられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0061】
オキサゾリン系末端封止剤
オキサゾリン系末端封止剤はオキサゾリン化合物である。オキサゾリン化合物としては、ビスオキサゾリン化合物が好ましく、具体的には、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4’−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−9,9’−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)および2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等を例示することができる。これらの中では、ポリエステルとの反応性の観点から、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)が最も好ましく用いられる。さらに、上記で挙げたビスオキサゾリン化合物は本発明の目的を達成する限り、一種を単独で用いても、二種以上を併用してもどちらでもよい。
【0062】
このような末端封止剤はポリマー支持体を構成するポリマー中に練り込む等の方法により導入される。末端封止剤とポリマー分子とを直接接触させて反応させることにより上記効果を得うる。末端封止剤をPET上の塗布層に添加しても、ポリマーと末端封止剤は反応しない。
【0063】
(無機粒子または有機粒子を混合させたポリマー支持体)
ポリマー支持体を構成するポリマー中には無機粒子または有機粒子である微粒子を含有させることができる。これにより光の反射率(白色度)を向上させ太陽電池の発電効率を向上し得る。微粒子の平均粒径は0.1μm〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜5μm、さらに好ましくは0.15μm〜1μmであり得、含有量はポリマー全質量に対して、0質量%〜50質量%、好ましくは1質量%〜10質量%、さらに好ましくは2質量%〜5質量%であり得る。粒子の平均粒径が0.1μm〜10μmであると、ポリマー支持体の白色度を50以上とし易い。粒子の含有量が1質量%以上であると、白色度を50以上とし易い。粒子の含有量が50質量%以下であるとポリマー支持体の重量が大きくなり過ぎず、加工などにおいて取り扱い易い。なお、ここで言う平均粒径、含有量は、ポリマー支持体が多層構造の場合、各層の平均値に基づく加重平均値を指す。即ち、平均粒径は、(各層の粒子径の平均値)×(各層の厚み/全層の厚み)を層ごとに算出し、総和としたものを指し、含有量は、(各層の粒子含有量の平均値)×(各層の厚み/全層の厚み)を層ごとに算出し、総和としたものを指す。
【0064】
なお、微粒子の平均粒径は電顕法により求める。具体的には、以下の方法による。
微粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーする。次いで、ランダムに選んだ少なくとも200個以上の微粒子について、各粒子の外周をトレースする。画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定する。測定値の平均を平均粒径とする。
【0065】
微粒子は無機粒子または有機粒子いずれか一方でもよく、両者併用しても良い。これにより光の反射率を向上させ太陽電池の発電効率を向上し得る。好適に使用される無機粒子としては、例えば、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、炭酸カルシウム、珪酸アルミ、リン酸カルシウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化ランタン、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸鉛、硫化亜鉛、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウムおよびフッ化カルシウム等を挙げることができるが、特に二酸化チタン、硫酸バリウムが好ましい。なお、酸化チタンはアナターゼ型、ルチル型の何れでもよい。また、微粒子表面にアルミナやシリカ等を用いて無機表面処理を施してもよいし、シリコン系化合物あるいはアルコール等を用いて有機表面処理を施してもよい。
【0066】
これらの微粒子のなかでも二酸化チタンが好ましく、ポリマー支持体がこれを含有することによりポリマーシートは光照射下でも優れた耐久性を奏し得る。具体的には、63℃、50%Rh、照射強度100mW/cmで100時間UV照射した場合、破断伸び保持率が好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上であり得る。本実施形態のポリマーシートは光分解や劣化が抑制され得るため、屋外で用いられる太陽電池の裏面保護膜としてより好適である。
【0067】
二酸化チタンにはルチル型結晶構造をもつものとアナターゼ型結晶構造をもつものが存在する。ある実施形態において、ポリマー支持体にはルチル型二酸化チタンを主体とする微粒子を添加することが好ましい。アナターゼ型は紫外線の分光反射率が非常に大きいのに対し、ルチル型は紫外線の吸収率が大きい(分光反射率が小さい)という特性を有している。本発明者は、二酸化チタンの結晶形態におけるこうした分光特性の違いに着目し、ルチル型二酸化チタンの紫外線吸収性能を利用することで、太陽電池裏面保護用ポリマーシートにおいて、耐光性を向上させることができることを見い出した。本実施形態では、他の紫外線吸収剤を実質的に添加しなくても優れた光照射下でのフィルム耐久性を得うる。そのため、紫外線吸収剤のブリードアウトによる汚染や密着性の低下のような問題が生じにくい。
【0068】
ここで微粒子が「ルチル型二酸化チタンを主体とする」とは、全二酸化チタン粒子質量に対する、全二酸化チタン粒子中のルチル型二酸化チタンの質量が、50質量%を超えていることを意味する。また、全二酸化チタン粒子質量に対する、全二酸化チタン粒子中のアナターゼ型二酸化チタン量が10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%以下である。アナターゼ型二酸化チタンの含有量が上記上限値以下であると、全二酸化チタン粒子中に占めるルチル型二酸化チタン量を確保し得るので、紫外線吸収性能を確保し得る。アナターゼ型二酸化チタンは光触媒作用が強いため、この作用によってもポリマーシートの耐光性を低下させる傾向にある。ルチル型二酸化チタンとアナターゼ型二酸化チタンとは、X線構造回折や分光吸収特性により区別することができる。
【0069】
ルチル型二酸化チタン微粒子の表面にはアルミナやシリカ等を用いて無機表面処理を施してもよいし、シリコン系化合物あるいはアルコール等を用いて有機表面処理を施してもよい。ルチル型二酸化チタンをポリエステル組成物に配合する前に、精製プロセスを用いて、粒径調整、粗大粒子除去等を行ってもよい。精製プロセスの工業的手段としては、例えばジェットミル、ボールミル等の粉砕手段、乾式もしくは湿式の遠心分離等の分級手段などが挙げられる。
【0070】
ポリマー支持体に含有し得る有機微粒子は、製膜中の熱に耐えるものが好ましい。例えば架橋型樹脂からなる微粒子、具体例としてはジビニルベンゼンで架橋したポリスチレンからなる微粒子等が挙げられる。微粒子のサイズや添加量は無機微粒子のサイズや添加量と同様である。
【0071】
ポリマー支持体中へ微粒子を添加する方法として、従来から公知の各種の方法を用いることができる。その代表的な方法を以下に挙げる。
(1)ポリマー支持体を構成するポリマーの合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に微粒子を添加、もしくは重縮合反応開始前に微粒子を添加する方法。
(2)ポリマーに微粒子を添加し、溶融混練する方法。
(3)上記(1)、(2)の方法において微粒子を多量に添加したマスターペレット(またはマスターバッチ(MB)とも言う)を製造し、これらと微粒子を含有しないポリマーにとを混練して、得られた産物中に所定量の微粒子を含有させる方法。
(4)上記(3)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
ある実施形態では、事前にポリエステル樹脂と微粒子を押出機で混合しておくことを含むマスターバッチ法(MB法:上記(3))が好ましい。また、事前に乾燥させていないポリマーと微粒子を押出機に投入し、水分や空気などを脱気しながらMBを作製する方法を採用することもできる。また、好ましくは、事前に少しでも乾燥したポリマーを用いてMBを作製することにより、ポリマーの酸価上昇を抑えられる。このような方法としては、脱気しながら押出する方法や、十分乾燥したポリマーにより脱気をせずに押出する方法などが挙げられる。
【0072】
例えば、MBを作製する場合は投入するポリマーはあらかじめ乾燥により水分率を低減させることが好ましい。乾燥条件としては、好ましくは100℃〜200℃、より好ましくは120℃〜180℃において、1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは6時間以上乾燥する。これにより、ポリエステル樹脂の水分量を好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下になるように十分乾燥する。予備混合の方法は特に限定されず、バッチによる方法でもよいし、単軸もしくは二軸以上の混練押出機によっても良い。脱気しながらMBを作製する場合は、250℃〜300℃、好ましくは270℃〜280℃の温度でポリマーを融解し、予備混練機に一つ、好ましくは2以上の脱気口を設け、0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上の連続吸引脱気を行い、混合機内の減圧を維持すること等の方法を採用することが好ましい。
【0073】
ある実施形態において、ポリマー支持体は、内部に微細な空洞(ボイド)を多数含有してもよい。これにより、より高い白色度を好適に得ることができる。その場合の見かけ比重は0.7以上1.3以下、好ましくは0.9以上1.3以下、より好ましくは1.05以上1.2以下である。見かけ比重が0.7以上であると、ポリマーシートに腰が備わり太陽電池モジュール作製時の加工が容易となり得る。見かけ比重が1.3以下であるとポリマーシート重量が小さいため太陽電池の軽量化に資し得る。
【0074】
上記の微細な空洞は、前記微粒子および/もしくは後述のポリマー支持体を構成するポリマーに非相溶の熱可塑性樹脂に由来して形成することができる。なお、微粒子もしくはポリマーに非相溶の熱可塑性樹脂に由来する空洞とは前記微粒子もしくは前記熱可塑性樹脂のまわりに空洞が存在することを言い、例えばポリマー支持体の電子顕微鏡による断面写真などで確認することができる。
【0075】
空洞形成のためにポリマー支持体中に添加し得る樹脂は、ポリマー支持体を構成するポリマーと非相溶な樹脂が好ましく、これにより光を散乱させ光反射率を上げることができる。ポリマー支持体を構成するポリマーがポリエステルである場合、好ましい非相溶な樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、およびフッ素系樹脂などが挙げられる。これらの非相溶樹脂は、単独重合体であっても共重合体であってもよく、さらには2種以上の非相溶樹脂を併用してもよい。これらの中でも、表面張力の小さなポリプロピレンやポリメチルペンテンのようなポリオレフィン樹脂やポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリメチルペンテンがさらに好ましい。ポリメチルペンテンは相対的にポリエステルとの表面張力差が大きく、かつ融点が高いため、ポリエステル製膜工程においてポリエステルとの親和性が低くボイド(空洞)を形成し易い。
【0076】
ポリマー支持体が非相溶樹脂を含有する場合は、その量は、ポリマー支持体全体に対して0重量%〜30重量%であり、より好ましくは1重量%〜20重量%、さらに好ましくは2重量%〜15重量%の範囲である。含有量が30重量%以下であると、ポリマー支持体全体の見かけ密度を確保し得るため、延伸時にフィルム破れ等が生じ難く、良好な生産性を得うる。
微粒子を添加する場合、微粒子の平均粒径は0.1μm〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜5μm、さらに好ましくは0.15μm〜1μmの微粒子である。平均粒径が0.1μm以上であると反射率(白色度)を確保し得、平均粒径が10μm以下であるとボイドによる力学強度低下を回避し得る。微粒子の含有量はポリマー支持体全質量に対して、0〜50質量%、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは2〜5質量%含まれる。含有量が50質量%以下であるとボイドによる力学強度低下を回避し得る。ポリマー支持体を構成するポリマーがポリエステルである場合、好ましい微粒子としてポリエステルと親和性の低いものが挙げられ、具体的には硫酸バリウム等が挙げられる。
【0077】
白色ポリマー支持体、すなわち微粒子含有等の手段によりなる空洞を含有するポリマー支持体は、単層または2層以上の多層からなる積層構成であっても構わない。積層構成としては、白色度の高い(ボイドや微粒子の多い層)と白色度の低い層(ボイドや微粒子の少ない層)を組み合わせることが好ましい。ボイドや微粒子の多い層で光の反射効率を高くできるが、ボイド、微粒子による力学強度の低下(脆化)が発生し易く、これを補うために白色度の低い層と組み合わせることが好ましい。このため白色度の高い層はポリマー支持体の外層に用いることが好ましく、ポリマー支持体の片面に使用してもよく、ポリマー支持体の両面に使用しても良い。二酸化チタンを微粒子として用いた高白色層をポリマー支持体の外層に用いると、二酸化チタンがUV吸収能を有することからポリマー支持体の耐光性を向上する効果を得うる。
【0078】
白色度の高い層は、微粒子含有によりなる層である場合、層全体の質量に対する微粒子の含有量が5質量%以上50質量%以下のものが好ましく、6質量%以上20質量%以下がより好ましい。白色度の高い層が空洞形成によりなる層である場合、白色度の高い層の見かけ比重は0.7以上1.2以下が好ましく、より好ましくは0.8以上1.1以下である。一方、白色度の低い層は、微粒子含有によりなる層である場合、層全体の質量に対する微粒子の含有量が0質量%以上5質量%未満のものが好ましく、より好ましくは1質量%以上4質量%以下がより好ましい。白色度の高い層が空洞形成によりなる層である場合、白色度の低い層は見かけ比重が0.9以上1.4以下でありかつ高白色層より高い見かけ比重を有することが好ましく、より好ましくは見かけ比重が1.0以上1.3以下でかつ高白色層より高い見かけ比重を有する。低白色層は微粒子や空洞を含まないものでも構わない。
【0079】
白色ポリマー支持体が有し得る好ましい積層構成として、高白色層/低白色層、高白色層/低白色層/高白色層、高白色層/低白色層/高白色層/低白色層、高白色層/低白色層/高白色層/低白色層/高白色層などが挙げられる。
【0080】
積層構成中における各層の厚み比は特に限定されるものではないが、各層の厚みは全層厚みの1%以上99%以下が好ましく、より好ましくは2%以上95%以下である。この範囲以内であると、上記反射効率向上、耐光(UV)性付与の効果を得やすい。ポリマー支持体の全層の厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常20μm〜500μm、好ましくは25μm〜300μmの範囲である。
積層構成を有するポリマー支持体を製造するための積層方法としては、溶融押出機を2台または3台以上用いた、いわゆる共押出法が好ましく用いられる。
【0081】
ある実施形態では、白色ポリマー支持体の白色度を増すためにチオフェジイル等の蛍光増白剤を用いることも好ましい。好ましい添加量は白色ポリマー支持体の全質量に対して0.01質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上0.3質量%以下である。0.01質量%以上であると光線反射率向上の効果が得易く、1質量%以下であると押出しでの熱分解による黄変で反射率が低下することを回避し得る。このような蛍光増白剤としては、例えばイーストマンコダック社製OB−1(商品名)等を用いることができる。
【0082】
ある実施形態では、白色ポリマー支持体は、照度:100mW/cm、温度:60℃、相対湿度:50%RH、照射時間:48時間で紫外線照射した後の黄色み変化量(Δb値)が5未満であることが好ましい。Δb値はより好ましくは4未満であり、さらに好ましくは3未満である。これにより太陽光の照射を長時間受けたとしても色変化を少なくできる点で有用である。このような効果は、ポリマーシートをバックシートとして太陽電池セルに積層した太陽電池モジュールにおいて、特にポリマーシート側から照射を受けた際に顕著に現れる。
【0083】
(第1のポリマー層)
本発明の第一の実施形態のポリマーシートは、フッ素ポリマー及びシリコーンポリマーからなる群より選択される少なくとも1つを含有する第1のポリマー層を含む。
第1のポリマー層は、耐候性層として機能しうる層である。
【0084】
〜バインダー〜
第1のポリマー層は、フッ素ポリマー及びシリコーンポリマーからなる群より選択される少なくとも1つを主バインダーとして構成される。ここで、第1のポリマー層における主バインダーとは、第1のポリマー層に含まれるバインダーのうち含有量が最も多いバインダーである。
【0085】
第1のポリマー層においては、フッ素ポリマー及びシリコーンポリマーからなる群より選択されるポリマーは1種だけ使用されてもよいし、フッ素ポリマー及びシリコーンポリマーからなる群より選択されるポリマーが2種類以上併用されてもよい。フッ素ポリマー及びシリコーンポリマーを併用する場合においては、フッ素ポリマー及びシリコーンポリマーのいずれか一方から2種以上のポリマーを選択して併用してもよいし、フッ素ポリマー及びシリコーンポリマーの双方から1種又は2種以上を選択して併用してもよい。
【0086】
以下に、前記フッ素ポリマー及びシリコーンポリマーから選択される少なくとも1種のポリマーを含有する第1のポリマー層について具体的に説明する。
【0087】
−フッ素ポリマー−
第1のポリマー層が含有しうるフッ素ポリマーとしては、−(CFX−CX)−で表される繰り返し単位を有するポリマーであれば特に制限はない(但し、X、X、Xは水素原子、フッ素原子、塩素原子又は炭素数1から3のパーフルオロアルキル基を示す。)。
【0088】
フッ素ポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(以降、PTFEと表す場合がある。)、ポリフッ化ビニル(以降、PVFと表す場合がある。)、ポリフッ化ビニリデン(以降、PVDFと表す場合がある。)、ポリ塩化3フッ化エチレン(以降、PCTFEと表す場合がある)、ポリテトラフルオロプロピレン(以降、HFPと表す場合がある。)などがある。
【0089】
フッ素ポリマーは、単独のモノマーを重合したホモポリマーでもよいし、2種類以上を共重合したものでもよい。この例として、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロプロピレンを共重合したコポリマー(P(TFE/HFP)と略記)、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンを共重合したコポリマー(P(TFE/VDF)と略記)等を挙げることができる。
【0090】
さらに、第1のポリマー層に用いるポリマーとしては、−(CFX−CX)−で表されるフッ化炭素系モノマーと、それ以外のモノマー(非フッ素含有モノマー)とを共重合したポリマーでもよい。フッ化炭素系モノマーの具体例としては、4フッ化エチレン、塩化3フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフロロプロピレン、フッ素含有アルキルビニルエーテル(例:パーフロロエチルビニルエーテル)、フッ素含有エステル等(パーフロロブチルメタクリレート等)がある。非フッ素含有モノマーの具体例としてはエチレン、アルキルビニルエーテル(例:エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル)、カルボン酸(例:アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシブチメビニルエーテル等)がある。フッ素ポリマーがフッ化炭素系モノマーと非フッ素含有モノマーとの)とを共重合したポリマーである場合、フッ素ポリマーの全質量に対するフッ素含有モノマーの含有量は30質量%〜98質量%が好ましく、より好ましくは40〜80質量%である。フッ素含有モノマーの割合が30質量%以上であると十分な耐久性を得うる。また重合の安定性の観点からは98質量%以下であることが好ましい。
フッ化炭素系モノマーと非フッ素含有モノマーとの)とを共重合したポリマーの例としてテトラフルオロエチレンとエチレンとを共重合してなる共重合体(P(TFE/E)と略記)、テトラフルオロエチレンとプロピレンとを共重合してなる共重合体(P(TFE/P)と略記)、テトラフルオロエチレンとビニルエーテルとを共重合してなる共重合体(P(TFE/VE)と略記)、テトラフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルとを共重合してなる共重合体(P(TFE/FVE)と略記)、クロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルとを共重合してなる共重合体(P(CTFE/VE)と略記)、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロビニルエーテルとを共重合してなる共重合体(P(CTFE/FVE)と略記)、テトラフルオロエチレンとエチレンとアクリル酸とを共重合してなる共重合体、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとを共重合してなる共重合体、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとエチレンとを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロエチルビニルエーテルとを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロエチルビニルエーテルとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体、フッ化ビニリデンとメチルメタクリレートとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体、フッ化ビニルとエチルアクリレートとアクリル酸とを共重合してなる共重合体、等を挙げることができる。
このなかで、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロエチルビニルエーテルとを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとパーフロロエチルビニルエーテルとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとを共重合してなる共重合体、クロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体、フッ化ビニリデンとメチルメタクリレートと/メタクリル酸とを共重合してなる共重合体、及びフッ化ビニルとエチルアクリレートとアクリル酸とを共重合してなる共重合体が好ましい。
中でもクロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとを共重合してなる共重合体、及びクロロトリフルオロエチレンとエチルビニルエーテルとメタクリル酸とを共重合してなる共重合体がさらに好ましい。
上記フッ素系ポリマーとしては市販されているものも使用し得る。市販品の具体例としては、ルミフロン(登録商標)LF200(旭硝子株式会社製)、ゼッフル(登録商標)GK570(ダイキン工業株式会社製)、オブリガードSW0011F(商品名、AGCコーテック株式会社製)等がある。
フッ素系ポリマーの分子量はポリスチレン換算重量平均分子量で2000〜1000000程度であり得、3000〜300000程度が好ましい。
【0091】
フッ素ポリマーとしてはポリマーを有機溶剤に溶解して用いられ得るものでも、ポリマー微粒子を水に分散して用いられ得るものでもよい。環境負荷が小さい点からは後者が好ましい。フッ素ポリマーの水分散物については、例えば特開2003−231722号公報、特開2002−20409号公報、特開平9−194538号公報等に記載されている。
【0092】
−シリコーンポリマー−
第1のポリマー層が含有しうるシリコーンポリマーは、分子中に(ポリ)シロキサン構造を有するポリマーである。ここで「シロキサン構造」とは少なくとも1つのシロキサン結合を含む構造を意味する。「ポリシロキサン構造」とは複数のシロキサン結合が連続してなる構造を意味する。「(ポリ)シロキサン構造」との語はシロキサン構造とポリシロキサン構造をその範囲に包含する。「ポリマーが分子中にシロキサン構造を有する」および「ポリマーが分子中に(ポリ)シロキサン構造を有する」との表現は、ポリマーがその分子内にシロキサン構造またはポリシロキサン構造を含むことを意味する。
ある好適な態様においてシリコーンポリマーは、(ポリ)シロキサン構造として、下記一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位を有する。

【0093】
【化2】



【0094】
前記一般式(1)において、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。ここで、RとRとは同一でも異なってもよく、複数のR及びRは各々、互いに同一でも異なってもよい。nは、1以上の整数を表す。
【0095】
ポリマー中の(ポリ)シロキサンセグメントである「−(Si(R) (R)−O)−」の部分(一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位)において、R及びRは同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
【0096】
「−(Si(R)(R)−O)−」は、線状、分岐状あるいは環状の構造を有する各種の(ポリ)シロキサンに由来する(ポリ)シロキサンセグメントである。
【0097】
及びRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0098】
及びRで表される「1価の有機基」は、Si原子と共有結合可能な基であり、無置換でも置換基を有してもよい。前記1価の有機基は、例えば、アルキル基(例:メチル基、エチル基など)、アリール基(例:フェニル基など)、アラルキル基(例:ベンジル基、フェニルエチルなど)、アルコキシ基(例:メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)、アリールオキシ基(例;フェノキシ基など)、メルカプト基、アミノ基(例:アミノ基、ジエチルアミノ基など)、アミド基等が挙げられる。
【0099】
中でも、隣接層との接着性及び湿熱環境下での耐久性の点で、R、Rとしては各々独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、無置換の又は置換された炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基)、無置換の又は置換されたフェニル基、無置換の又は置換されたアルコキシ基、メルカプト基、無置換のアミノ基、アミド基が好ましく、より好ましくは、湿熱環境下での耐久性の点で、無置換の又は置換されたアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)である。
【0100】
前記nは、1〜5000であることが好ましく、1〜1000であることがより好ましい。
【0101】
シリコーンポリマー中における「−(Si(R)(R)−O)−」の部分(一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位)の具体例としてはジメチルジメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/γ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/ビニルトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/2−ヒドロキシエチルトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/ジフェニル/ジメトキシシランγ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物等がある。これらの中ではジメチルジメトキシシラン/γ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/ジフェニル/ジメトキシシランγ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物等が好ましい。
シリコーンポリマー中における「−(Si(R)(R)−O)−」の部分(一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位)の含有量は、シリコーンポリマーの全質量に対して、15質量%〜85質量%であることが好ましく、20質量%〜80質量%の範囲がより好ましい。(ポリ)シロキサン構造単位の含有量は、15質量%以上であると、第1のポリマー層表面の強度が向上し、引っ掻きや擦過、飛来した小石等の衝突で生じる傷の発生が防止され得、また第2のポリマー層などの隣接材料との接着性に優れ得る。傷の発生抑止により耐候性が向上し、熱や水分が与えられて劣化しやすい剥離耐性、形状安定性、並びに湿熱環境下に曝されたときの接着耐久性が効果的に高められる。また、(ポリ)シロキサン構造単位の比率が85質量%以下であると、液を安定に保つことができる。これらの効果は、(ポリ)シロキサン構造単位の含有量が20質量%〜80質量%の範囲にある場合に、より顕著となり得る。
【0102】
シリコーンポリマーが、(ポリ)シロキサン構造単位と他の構造単位とを有する共重合ポリマーである場合、ある好適な実施形態においてシリコーンポリマーは、その分子鎖中に前記一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位を15質量%〜85質量%と、非シロキサン系構造単位を質量比率で85質量%〜15質量%とを含み得る。このような共重合ポリマーを含有することにより、第1のポリマー層の膜強度が向上し、引っ掻きや擦過等による傷の発生を防ぎ、支持体をなすポリマー基材との接着性、すなわち熱や水分が与えられて劣化しやすい剥離耐性、形状安定性、並びに湿熱環境下での耐久性を、従来に比べて飛躍的に向上させ得る。
シリコーンポリマーが、(ポリ)シロキサン構造単位と他の構造単位とを有する共重合ポリマーである場合、シリコーンポリマー中における「−(Si(R)(R)−O)−」の部分(一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位)の分子量はポリスチレン換算重量平均分子量で30000〜1000000程度であり得、50000〜300000程度が好ましい。
【0103】
前記共重合ポリマーとしては、シロキサン化合物(ポリシロキサンをその範囲に含む)と、非シロキサン系モノマー又は非シロキサン系ポリマーから選ばれる化合物とが共重合し、前記一般式(1)で表される(ポリ)シロキサン構造単位と非シロキサン系の構造単位とを有するブロック共重合体であることが好ましい。この場合、シロキサン化合物及び共重合される非シロキサン系モノマー又は非シロキサン系ポリマーは、それぞれ一種単独でもよく、二種以上であってもよい。
【0104】
前記(ポリ)シロキサン構造単位と共重合する非シロキサン系構造単位(非シロキサン系モノマー又は非シロキサン系ポリマーに由来)は、シロキサン構造を有していないこと以外は特に制限されるものではなく、任意のモノマーに由来の構造単位または任意のポリマーに由来のポリマーセグメントのいずれであってもよい。ポリマーセグメントの前駆体である重合体(前駆ポリマー)としては、例えば、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体等の各種の重合体等が挙げられる。
中でも、調製が容易なこと及び耐加水分解性に優れる点から、ビニル系重合体及びポリウレタン系重合体が好ましく、ビニル系重合体が特に好ましい。
【0105】
前記ビニル系重合体の代表的な例としては、アクリル系重合体、カルボン酸ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体、フルオロオレフィン系重合体等の各種の重合体が挙げられる。中でも、設計の自由度の観点から、アクリル系重合体が特に好ましい。アクリル系重合体を構成するモノマーとしてはアクリル酸のエステル(例:エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等)又はメタクリル酸のエステル(例:メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等)から成るポリマーを挙げることができる。さらに、モノマーとしてアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのカルボン酸、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられ、中でもエチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等が好ましい。
アクリル系重合体の具体例としては、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−ビドロキシエチルメタアクリレート/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/2−ビドロキシエチルメタアクリレート/メタクリル酸/γ−メタクリロキシトリメトキシシラン共重合体、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/グリシジルメタクリレート/アクリル酸共重合体等が挙げられる。
非シロキサン系構造単位を構成するポリマーセグメントの前駆体である重合体は、一種単独でもよいし、2種以上の併用であってもよい。さらに個々のポリマーはホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。
非シロキサン系構造単位を構成するポリマーセグメントの前駆体である重合体の分子量はポリスチレン換算重量平均分子量で3000〜1000000程度であり得、5000〜300000程度がより好ましい。
【0106】
非シロキサン系構造単位をなす前駆ポリマーは、酸基及び中和された酸基の少なくとも1つ並びに/又は加水分解性シリル基を含有するものが好ましい。このような前駆ポリマーのうち、ビニル系重合体は、例えば、(a)酸基を含むビニル系単量体と加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系単量体とを、これらと共重合可能な単量体と共重合させる方法、(2)予め調製した水酸基並びに加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系重合体にポリカルボン酸無水物を反応させる方法、(3)予め調製した酸無水基並びに加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含むビニル系重合体を、活性水素を有する化合物(水、アルコール、アミン等)と反応させる方法などの各種方法を利用して調製することができる。
【0107】
前駆ポリマーは、例えば、特開2009−52011号公報の段落番号0021〜0078に記載の方法を利用して製造して入手することができる。
【0108】
シリコーンポリマーは単独で用いてもよいし、他のポリマーと併用してもよい。他のポリマーを併用する場合、第一のポリマー層における(ポリ)シロキサン構造を含むポリマーの含有量は、第一のポリマー層に含まれる全バインダー量の30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上である。(ポリ)シロキサン構造を含むポリマーの含有量が30質量%以上であることで、層表面の強度向上を図り、引っ掻きや擦過等による傷の発生が防止され得ると共に、ポリマー基材との接着性及び湿熱環境下での耐久性により優れ得る。
【0109】
シリコーンポリマーの分子量は、5,000〜100,000が好ましく、10,000〜50,000がより好ましい。
【0110】
シリコーンポリマーの調製には、(i)前駆ポリマーと、前記一般式(1)で表される構造単位を有するポリシロキサンとを反応させる方法、(ii)前駆ポリマーの存在下に、前記R及び/又は前記Rが加水分解性基である前記一般式(1)で表される構造単位を有するシラン化合物を加水分解縮合させる方法、等の方法を利用することができる。
前記(ii)の方法で用いられるシラン化合物としては、各種シラン化合物が挙げられるが、アルコキシシラン化合物が特に好ましい。
前記(i)の方法によりシリコーンポリマーを調製する場合、例えば、前駆ポリマーとポリシロキサンの混合物に、必要に応じて水と触媒を加え、20℃〜150℃程度の温度で30分〜30時間程度(好ましくは50℃〜130℃で1〜20時間)反応させることにより調製することができる。触媒としては、酸性化合物、塩基性化合物、金属含有化合物等の各種のシラノール縮合触媒を添加することができる。
また、前記(ii)の方法によりシリコーンポリマーを調製する場合、例えば、前駆ポリマーとアルコキシシラン化合物の混合物に、水とシラノール縮合触媒とを添加して、20℃〜150℃程度の温度で30分〜30時間程度(好ましくは50℃〜130℃で1時間〜20時間)加水分解縮合を行なうことにより調製することができる。
【0111】
シリコーンポリマーの好ましい例としては、(ポリ)シロキサン構造単位がジメチルジメトキシシラン/γ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物、ジメチルジメトキシシラン/ジフェニル/ジメトキシシランγ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物のいずれかからなり、(ポリ)シロキサン構造単位と共重合するポリマー構造部分がエチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートメチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれるモノマー成分からなるアクリルポリマーである複合ポリマーが挙げられ、より好ましい例としては(ポリ)シロキサン構造単位がジメチルジメトキシシラン/γ−メタクリロキシトリメトキシシランの加水分解縮合物を含有する加水分解縮合物とメチルメタクリレート、エチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸から選ばれるモノマー成分からなるアクリルポリマーである複合ポリマーが挙げられる。
【0112】
また、シリコーンポリマーとして、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、DIC(株)製のセラネートシリーズ〔例えば、セラネート(登録商標)WSA1070(ポリシロキサン構造単位の含有量が30質量%のアクリル/シリコーン系樹脂)、セラネート(登録商標)WSA1060(ポリシロキサン構造単位の含有量が75質量%)等〕、旭化成ケミカルズ(株)製のH7600シリーズ(H7650,H7630,H7620等、いずれも商品名)、JSR(株)製の無機・アクリル複合エマルジョンなどを使用することができる。
【0113】
−その他のバインダー−
また、第1のポリマー層には、全バインダーの50質量%を超えない範囲でアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂などの、前記フッ素ポリマー及びシリコーンポリマー以外の樹脂を併用してもよい。
【0114】
第1のポリマー層の全質量に対する、フッ素ポリマー及び/又はシリコーンポリマーの含有量は、60質量%〜95質量%が好ましく、75質量%〜95質量%が更に好ましく、80質量%〜93質量%が特に好ましい。
【0115】
第1のポリマー層は、必要に応じて、架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加して形成されてもよく添加せずに形成されてもよい。
【0116】
〜架橋剤〜
第1のポリマー層に用いることができる前記架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤等を挙げることができる。この中でカルボジイミド系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤が好ましい。カルボジイミド系架橋剤の例としては例えばカルボジライト(登録商標)V−02−L2(日清紡績(株)製)、オキサゾリン系架橋剤の例としては例えばエポクロス(登録商標)WS−700、エポクロス(登録商標)K−2020E(いずれも日本触媒(株)製)などがある。
【0117】
第1のポリマー層は、隣接する第2のポリマー層との密着性向上の観点から、前記架橋剤による架橋構造を含むことが好ましい。
【0118】
第1のポリマー層が架橋剤による架橋構造を含む場合、第1のポリマー層は、前記第1のポリマー層が含有する主バインダーの質量に対して0.5質量%〜50質量%の架橋剤による架橋構造を含むことが好ましく、3質量%〜30質量%の架橋剤による架橋構造を含むことがより好ましく、5質量%〜20質量%の架橋剤による架橋構造を含むことがさらに好ましい。
架橋剤の添加量が、0.5質量%以上であると、第1のポリマー層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保てる。
【0119】
架橋剤による架橋構造としては、前記カルボジイミド系架橋剤又はオキサゾリン系架橋剤由来の架橋構造が好ましい。
【0120】
〜界面活性剤〜
第1のポリマー層に用いることができる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤等の公知の界面活性剤を用いることができる。
第1のポリマー層に界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1mg/m〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5mg/m〜5mg/mである。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、15mg/m以下であると、接着を良好に行ない得る。
【0121】
〜フィラー〜
第1のポリマー層には、更に、フィラーを添加してもよい。フィラーとしてはコロイダルシリカ、二酸化チタンなどの公知のフィラーを用いることができる。フィラーの添加量は、第1のポリマー層に含有されるバインダーの全質量に対して20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーの添加量が20質量%以下であると、第1のポリマー層の面状がより良好に保てる。
【0122】
〜厚み〜
本発明における第1のポリマー層の厚みは0.8μm〜12μmの範囲が好ましく、特に1.0μm〜10μm程度の範囲が好ましい。
【0123】
〜位置〜
本発明の一実施形態であるポリマーシートは、第1のポリマー層の上にさらに別の層を一層以上有してもよいが、保護シートの耐久性の向上、軽量化、薄型化、低コスト化などの観点から、前記第1のポリマー層がポリマーシートの最外層であることが好ましい。
【0124】
〜形成方法〜
第1のポリマー層は、第1のポリマー層を構成する各成分を含む塗布液を、後述する第2のポリマー層上に塗布して塗膜を乾燥させることにより形成することができる。乾燥後、塗膜を加熱するなどして硬化させてもよい。塗布方法や塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
塗布液に用いる溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
但し、フッ素ポリマー、シリコーンポリマー等のバインダー等を水分散した水系塗布液を形成して、これを塗布に使用する方法が好ましい。この場合、溶媒の全質量に対する水の含有量は60質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上である。第1のポリマー層を形成する塗布液に含まれる溶媒の60質量%以上が水であれば、環境負荷が小さくなるので好ましい。
【0125】
(第2のポリマー層)
本発明の一実施形態であるポリマーシートは、前記第1のポリマー層の前記ポリマー支持体側に接する第2のポリマー層を有する。前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との界面の粗さ(Rz)が、0.2μm〜3.0μmの範囲である。
【0126】
第2のポリマー層は、バインダーとして機能するポリマーを少なくとも含有する層であることが好ましい。第2のポリマー層は、前記ポリマー支持体と、前記第1のポリマー層との接着性を高める層、即ち、いわゆる下塗り層として機能する層であってもよい。以下に第2のポリマー層について具体的に説明する。
【0127】
〜体積平均粒径が0.2μm〜1.5μmの範囲である粒子(特定粒子)〜
第2のポリマー層は、既述のごとく、界面の粗さ(Rz)を制御する観点から、体積平均粒径が0.2μm〜1.5μmの範囲である粒子(特定粒子)を含有することが好ましい。
【0128】
第2のポリマー層に適用しうる特定粒子の種類及び含有量などの詳細については、既述の通りである。
【0129】
〜バインダー〜
第2のポリマー層を主に構成するバインダー(結着樹脂)としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及び/又はシリコーン樹脂(シリコーンポリマー)等を用いることができる。
これらの中でも、前記ポリマー支持体(基材)及び前記第1のポリマー層との高い接着性を確保する観点から、ポリオレフィン、アクリル樹脂、及びシリコーン樹脂(シリコーンポリマー)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、耐候性(紫外線、湿熱などへの耐久性)の観点からは、シリコーン樹脂(シリコーンポリマー)を含むことがより好ましい。また。バインダーとしては、複合樹脂を用いてもよく、例えばアクリル/シリコーン複合樹脂も好ましいバインダーである。
【0130】
第2のポリマー層が好適に含有しうるシリコーンポリマーとして、具体的には、第1のポリマー層が含有しうるシリコーンポリマーと同様のものを好適に適用することができる。
【0131】
〜その他の添加剤〜
第2のポリマー層は、必要に応じて、架橋剤、界面活性剤、特定粒子以外の他のフィラー等を添加して形成されてもよく添加せずに形成されてもよい。
【0132】
〜架橋剤〜
第2のポリマー層に含まれていてもよい架橋剤は、その好適態様及び具体例も含め、第1のポリマー層に含まれていてもよい架橋剤と同様である。
【0133】
第2のポリマー層は、前記架橋剤による架橋構造を含むことが好ましい。
【0134】
前記第2のポリマー層が架橋剤による架橋構造を含む場合、第2のポリマー層は、前記第2のポリマー層が含有する主バインダーの質量に対して0.5質量%〜50質量%の架橋剤による架橋構造を含むことが好ましく、3質量%〜30質量%の架橋剤による架橋構造を含むことが更に好ましく、5質量%〜20質量%の架橋剤による架橋構造を含むことがさらに好ましい。架橋剤の添加量が、前記第2のポリマー層の主バインダーに対して0.5質量%以上であると、第2のポリマー層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保てる。
【0135】
架橋剤による架橋構造は、前記カルボジイミド架橋剤又はオキサゾリン架橋剤由来の架橋構造であることが好ましい。
【0136】
〜界面活性剤〜
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1mg/m〜10mg/mが好ましく、より好ましくは0.5mg/m〜3mg/mである。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、10mg/m以下であると、ポリマー支持体及び第1のポリマー層との接着を良好に行なうことができる。
【0137】
〜他のフィラー〜
第2のポリマー層には、更に、本発明の効果を損ねない範囲において、前記特定粒子には含まれない他のフィラーを更に添加してもよい。該フィラーとしては白色顔料が好ましく、コロイダルシリカ又は二酸化チタンがより好ましく、二酸化チタンがさらに好ましい。
【0138】
〜厚み〜
第2のポリマー層の厚みは0.05μm〜10μmであることが好ましい。第2のポリマー層の厚みが0.05μm以上であれば耐久性が十分となり得、前記ポリマー支持体と前記第1のポリマー層との接着力を十分に確保し得る。一方、第2のポリマー層の厚みが10μm以下であると面状が悪化し難く、前記第1のポリマー層との接着力も十分となり得る。前記第2のポリマー層の厚みが0.05μm〜10μmの範囲にあると第2のポリマー層の耐久性と面状を両立し得、ポリマー支持体と第1のポリマー層との接着性を高めることができ、特に1.0μm〜10μm程度の範囲が好ましい。
【0139】
〜形成方法〜
第2のポリマー層は、バインダー等の各成分を含む塗布液を前記ポリマー支持体上に塗布して塗膜を乾燥させることにより形成することができる。乾燥後、塗膜を加熱するなどして硬化させてもよい。塗布方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
塗布液に用いる溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。バインダーを水分散した水系塗布液を形成して、これを塗布する方法が好ましい。この場合、溶媒の全質量に対する水の含有量は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0140】
ポリマー支持体が二軸延伸フィルムである場合は、二軸延伸した後のポリマー支持体に第2のポリマー層を形成するための塗布液を塗布した後、塗膜を乾燥させてもよいし、1軸延伸後のポリマー支持体に塗布液を塗布して塗膜を乾燥させた後に、初めの延伸と異なる方向に延伸する方法でもよい。さらに、延伸前のポリマー支持体に塗布液を塗布して塗膜を乾燥させた後に2方向に延伸してもよい。
【0141】
ポリマーシートは、必要に応じて、第1のポリマー層及び第2のポリマー層以外の第3の層を一つまたは複数有してもよく有しなくてもよい。例えば、前記ポリマー支持体と前記第2のポリマー層との間に、下塗り層を設けることができる。また例えば、前記ポリマー支持体の前記第1のポリマー層が設けられている側とは反対側に、着色層を設けることができる。
【0142】
(下塗り層)
下塗り層の厚みは、2μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.005μm〜2μmであり、更に好ましくは0.01μm〜1.5μmである。厚みが0.005μm以上であると、塗布ムラの発生を回避し易く、2μm以下であると、ポリマー支持体がベタつくのを回避し得、良好な加工性を得うる。
【0143】
下塗り層は、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる1種類以上のポリマーを含有することが好ましい。
【0144】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン共重合体が好ましい。前記ポリオレフィン樹脂としては市販品を用いてもよく、例えば、アローベース(登録商標)SE−1013N、アローベース(登録商標)SD−1010、アローベース(登録商標)TC−4010、アローベース(登録商標)TD−4010(ユニチカ(株)製)、ハイテックS3148、ハイテックS3121、ハイテックS8512(全て商品名、東邦化学(株)製)、ケミパール(登録商標)S−120、ケミパール(登録商標)S−75N、ケミパール(登録商標)V100、ケミパール(登録商標)EV210H(三井化学(株)製)などを挙げることができる。ある実施形態では、低密度ポリエチレン、アクリル酸エステル、無水マレイン酸の三元共重合体である、アローベース(登録商標)SE−1013N(ユニチカ(株)製)を用いることが好ましい。
【0145】
アクリル樹脂としては、例えば、ホリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等を含有するポリマー等が好ましい。アクリル樹脂としては市販品を用いてもよく、例えば、AS−563A(商品名、ダイセルフアインケム(株)製)を好ましく用いることができる。
【0146】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等が好ましい。ポリエステル樹脂としては市販品を用いてもよく、例えば、バイロナール(登録商標)MD−1245(東洋紡(株)製)を好ましく用いることができる。
ポリウレタン樹脂としては、例えば、カーボネート系ウレタン樹脂が好ましく、例えば、スーパーフレックス(登録商標)460(第一工業製薬(株)製)を好ましく用いることができる。
【0147】
これらの中でも、ポリマー支持体および前記白色層との接着性を確保する観点から、ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。これらのポリマーは単独で用いても2種以上併用して用いてもよい。2種以上併用する場合は、アクリル樹脂とポリオレフィン樹脂の組合せが好ましい。
【0148】
下塗り層は、架橋剤を含有すると、下塗り層の耐久性を向上することができる。架橋剤としては、エポキシ架橋剤、イソシアネート架橋剤、メラミン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤等を挙げることができる。ある実施形態では、下塗り層に含まれる架橋剤が、オキサゾリン架橋剤であることが好ましい。オキサゾリン基を有する架橋剤として、エポクロス(登録商標)K2010E、エポクロス(登録商標)K2020E、エポクロス(登録商標)K2030E、エポクロス(登録商標)WS−500、エポクロス(登録商標)WS−700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等を利用することができる。
【0149】
架橋剤の添加量は、下塗り層を構成するバインダーの全質量に対して0.5質量%〜30質量%が好ましく、より好ましくは5質量%〜20質量%であり、さらに好ましくは3質量%以上15質量%未満である。特に架橋剤の添加量は、0.5質量%以上であると、下塗り層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、30質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保て、15質量%未満であると塗布面状を改良できる。
【0150】
下塗り層は、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤を含有することが好ましい。下塗り層に用いることができる界面活性剤の範囲は前記白色層に用いることができる界面活性剤の範囲と同様である。中でもノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0151】
界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1mg/m〜10mg/mが好ましく、より好ましくは0.5mg/m〜3mg/mである。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、10mg/m以下であると、ポリマー支持体前記白色層との接着を良好に行なうことができる。
【0152】
ポリマー支持体の、下塗り層が設けられた面上に、第2のポリマー層と第1のポリマー層とをこの順に配置し得る。
【0153】
ポリマー支持体の第1のポリマー層が設けられている側とは反対側に、着色層を設けてもよく設けなくてもよい。
【0154】
(着色層)
着色層は、少なくとも顔料とバインダーを含有し、必要に応じて、さらに各種添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。
【0155】
着色層の機能としては、第1に、入射光のうち太陽電池セルを通過して発電に使用されずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げること、第2に、太陽電池モジュールを太陽光が入射する側(オモテ面側)から見た場合の外観の装飾性を向上すること、等が挙げられる。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側(ガラス基板側)から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシート用ポリマーシートに着色層を設けることによりバックシートの装飾性を向上させて見栄えを改善することができる。
【0156】
〜顔料〜
着色層は、顔料の少なくとも一種を含有することができる。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、及び/又はフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料を、適宜選択して含有することができる。
【0157】
着色層を、太陽電池に入射して太陽電池セルを通過した光を反射して太陽電池セルに戻す反射層として構成する場合、前記顔料の中でも白色顔料を用いることが好ましい。前記白色顔料としては、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等が好ましく、二酸化チタンがより好ましい。
【0158】
顔料の着色層中における含有量は、2.5g/m〜10.5g/mの範囲が好ましい。顔料の含有量が2.5g/m以上であると、必要な着色が得られ、反射率や装飾性を効果的に与えることができる。また、着色層中における顔料の含有量が9.5g/m以下であると、着色層の面状を良好に維持しやすく、膜強度により優れる。中でも、顔料の含有量は、4.5〜9.0g/mの範囲がより好ましい。
【0159】
顔料の平均粒径としては、体積平均粒径で0.2μm〜1.5μmが好ましく、より好ましくは0.3〜0.6μm程度である。平均粒径が前記範囲内であると、光の反射効率が高い。平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔商品名、(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0160】
前記着色層を構成するバインダーとしては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。これらの中でも、高い接着性を確保する観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。また。複合樹脂を用いてもよく、例えばアクリル/シリコーン複合樹脂も好ましいバインダーである。
前記バインダー成分の含有量は、顔料に対して、15質量%〜200質量%の範囲が好ましく、17質量%〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、15質量%以上であると、着色層の強度が充分に得られ、また200質量%以下であると、反射率や装飾性を良好に保つことができる。
【0161】
〜添加剤〜
前記着色層には、必要に応じて、架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
【0162】
(易接着性層)
ポリマーシートには、さらに易接着性層が設けられていることも好ましい。易接着性層は、特に着色層の上に設けられることが好ましい。易接着性層は、太陽電池ポリマーシートを電池側基板(電池本体)の太陽電池素子(以下、発電素子ともいう)を封止する封止材(好ましくはEVA)と強固に接着するための層である。
【0163】
易接着性層は、バインダー、無機微粒子を用いて構成することができ、必要に応じて、さらに添加剤などの他の成分を含んで構成されてもよい。易接着性層は、電池側基板の発電素子を封止するエチレン−ビニルアセテート(EVA)共重合体系封止材に対して、10N/cm以上(好ましくは20N/cm以上)の接着力を有するように構成されていることが好ましい。接着力が10N/cm以上であると、接着性を維持し得る湿熱耐性が得られやすい。
【0164】
なお、接着力は、易接着性層中のバインダー及び無機微粒子の量を調節する方法、太陽電池保護シートの封止材と接着する面にコロナ処理を施す方法などにより調整が可能である。
【0165】
〜バインダー〜
易接着性層は、バインダーの少なくとも一種を含有することができる。
【0166】
易接着性層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられ、中でも耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。
【0167】
好ましいバインダーの例としては、ポリオレフィンの具体例としてケミパール(登録商標)S−120、ケミパール(登録商標)S−75N(ともに三井化学(株)製)、アクリル樹脂の具体例としてジュリマー(登録商標)ET−410、ジュリマー(登録商標)SEK−301(ともに日本純薬(株)製)、アクリルとシリコーンとの複合樹脂の具体例としてセラネート(登録商標)WSA1060、セラネート(登録商標)WSA1070(ともにDIC(株)製)とH7620、H7630、H7650(ともに商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0168】
バインダーの易接着性層中における含有量は、0.05g/m〜5g/mの範囲とすることが好ましい。中でも、0.08g/m〜3g/mの範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、0.05g/m以上であると所望とする接着力が得られやすく、5g/m以下であるとより良好な面状が得られる。
【0169】
〜微粒子〜
易接着性層は、無機微粒子の少なくとも一種を含有することができる。
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
【0170】
前記無機微粒子の粒径は、体積平均粒径で10nm〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20nm〜300nm程度である。粒径がこの範囲内であると、より良好な易接着性を得ることができる。粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔商品名、(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0171】
無機微粒子の形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0172】
無機微粒子の含有量は、易接着性層中のバインダーに対して、5質量%〜400質量%の範囲とする。無機微粒子の含有量は、5質量%未満であると、湿熱雰囲気に曝されたときに良好な接着性が保持できず、400質量%を超えると、易接着性層の面状が悪化する。
中でも、無機微粒子の含有量は、50質量%〜300質量%の範囲が好ましい。
【0173】
〜架橋剤〜
易接着性層には、架橋剤の少なくとも一種を含有することができる。
易接着性層に好適な架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤等の架橋剤を挙げることができる。中でも、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、オキサゾリン系架橋剤が特に好ましい。
【0174】
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく用いられる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロス(登録商標)K2010E、エポクロス(登録商標)K2020E、エポクロス(登録商標)K2030E、エポクロス(登録商標)WS−500、エポクロス(登録商標)WS−700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
【0175】
架橋剤の前記易接着性層中における含有量としては、前記易接着性層中のバインダーに対して、5質量%〜50質量%が好ましく、中でもより好ましくは20質量%〜40質量%である。架橋剤の含有量は、5質量%以上であると、良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や接着性を保持することができ、50質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保つことができる。
【0176】
〜添加剤〜
前記易接着性層には、必要に応じて、更に、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
【0177】
〜易接着性層の形成方法〜
易接着性層の形成は、易接着性を有するポリマーシートを支持体に貼合する方法や、塗布による方法が挙げられる。中でも、塗布による方法は、簡便であると共に、均一性で薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の塗布法を利用することができる。塗布液の調製に用いる塗布溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0178】
〜物性〜
前記易接着性層の厚みには、特に制限はないが、通常は0.05μm〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であると必要な易接着性を好適に得ることができ、8μm以下であると面状がより良好になる。また、本発明の易接着性層は、着色層の効果を低減させないために、実質的に透明である。
【0179】
<太陽電池用ポリマーシートの製造方法>
本発明の一実施形態であるポリマーシートを製造する方法は特に限定されるものではないが、以下の製造方法により好適に製造することができる。
すなわち、本発明の一実施形態であるポリマーシートの製造方法は、ポリマー支持体を用意することと、第2のポリマー層を支持体上に形成すること(第2のポリマー層形成工程)と、第1のポリマー層を前記第2のポリマー層上に形成すること(第1のポリマー層形成工程)と、を含む。
【0180】
第1及び第2のポリマー層は、前記ポリマー支持体上に、塗布により形成されることが好ましい。即ち、第1及び第2のポリマー層が、塗布により形成される場合、第2のポリマー層の形成は、前記第2のポリマー層を塗布することと、前記第2のポリマー層上に塗布した塗布液を乾燥させることとを含み、第1のポリマー層の形成は、前記第2のポリマー層を塗布することと、前記第2のポリマー層上に塗布した塗布液を乾燥させることとを含む。
第2のポリマー層上に第1のポリマー層を形成する前に、第2のポリマー層の表面に対して、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、グロー放電処理、火炎処理などの表面処理を行ってもよい。
また、前記第1のポリマー層を形成した後、該第1のポリマー層を硬化させれば、湿熱経時後の接着性を高めることができる。
【0181】
本発明の一実施形態のポリマーシートは、既述のように、第1及び第2のポリマー層以外にも、必要に応じて第3の層(易接着性層等)を1つまたは複数有していてもよい。従って、本発明の一実施形態のポリマーシートの製造方法は、上記の必須の工程に加えて、第3の層を形成する工程を1つまたは複数有していてもよい。
第3の層を形成する工程の実施態様としては、例えば、(1)第3の層を構成する成分を含有する塗布液を被形成面(例えば、ポリマーシートにおける前記ポリマー支持体の、第2のポリマー層や第1のポリマー層が形成されている面とは反対の面)に塗布することにより形成する方法が挙げられ、その例としては、易接着性層、及び着色層の形成方法として既述した方法が挙げられる。
このような方法で形成された本発明の一実施形態のポリマーシートの具体例としては、ポリマーシートの第1のポリマー層が形成されている面とは反対の面に白色顔料を含有する反射層を塗設したもの、ポリマーシートの第1のポリマー層が形成されている面とは反対の面に着色顔料を含有する着色層を塗設したもの、ポリマーシートの第1のポリマー層が形成されている面とは反対の面に、白色顔料を含有する反射層と易接着層とを塗設したものなどを挙げることができる。
【0182】
第3の層を形成する工程の実施態様の例としては、(2)第3の層として所望される機能を発揮する層を1層又は2層以上有するシートを被形成面に貼合する方法も挙げられる。
上記(2)の方法が適用された場合において用いられるシートは、第3の層を1層又は2層以上有するシートであり、その例としては、例えば、ポリマーシートの第1のポリマー層が形成されている面とは反対の面に白色顔料を含有するポリマーフィルムを貼合したもの、ポリマーシートの第1のポリマー層が形成されている面とは反対の面に着色顔料を含有する着色フィルムを貼合したもの、ポリマーシートにおける第1のポリマー層が形成されている面とは反対の面にアルミニウム薄膜と白色顔料を含有するポリマーフィルムとを貼合したもの、ポリマーシートにおける第1のポリマー層が形成されている面とは反対の面に無機バリア層を有するポリマーフィルムと白色顔料を含有するポリマーフィルムとを貼合したものの如き構成のシートが挙げられる。
【0183】
第3の層を形成する工程の実施態様の例としては、前述のように、ポリマー支持体と前記第2のポリマー層との間に、下塗り層を設けることも挙げられる。
【0184】
下塗り層を設ける方法には、公知のコーティング方法が適宜採択される。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、スプレーあるいは刷毛を用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。また、ポリマー支持体を下塗り層形成用水性液に浸漬して行ってもよい。
【0185】
ある実施形態においては、コスト低減の観点から、下塗り層は、下塗り層形成用組成物を、ポリマー支持体製造工程内でポリマー支持体にコーティングする、いわゆるインラインコート法により塗布することを含む方法で形成されることが好ましい。
本実施形態の具体例としては、下塗り層を含むポリマー支持体の作製において、(1)ポリマー支持体を構成するポリマーを含む未延伸シートを供給すること、(2)未延伸シートの、下塗り層が形成されるべき面に対して平行な一方向(第一の方向)に、未延伸シートを延伸すること(第一延伸)、(3)第一の方向に延伸されたシートの少なくとも一表面の上に、下塗り層形成用組成物を付与すること、及び、(4)下塗り層形成用組成物が付与されたシートを、第一の方向に対して下塗り層形成面内で直交する方向に延伸すること(第二延伸)、を少なくとも含む方法が挙げられる。
より具体的には、例えば、(1)’ポリマー支持体を構成するポリマーを、押し出し、静電密着法等を併用しつつ冷却ドラム上にキャストして未延伸シートを得、(2)’未延伸シートを縦方向(MD)に延伸し、(3)’当該縦方向延伸済シートの一表面に下塗り層形成用水性液を塗布し、(4)’下塗り層形成用水性液塗布済みシートを横方向(TD)に延伸するなどの方法を使用することができる。
このように、未延伸シートを予め少なくとも一回一方向に延伸し、下塗り層形成用組成物を付与し、その後に当該方向に対して直交する方向に少なくとも一回延伸する工程によってポリマー支持体と下塗り層とを形成することにより、ポリマー支持体と下塗り層との密着性が向上し、下塗り層の均一性を高め、且つ下塗り層をより薄膜状となし得る。
【0186】
下塗り層形成時の乾燥、熱処理の条件は、塗布層の厚み、装置の条件にもよるが、コート後直ちに第二延伸工程に送入し、第二延伸工程の予熱ゾーンあるいは第二延伸ゾーンで乾燥させることが好ましい。このような場合、乾燥、熱処理は通常50℃〜250℃程度で行う。
なお、下塗り層の表面及びポリマー支持体の表面にコロナ放電処理、その他の表面活性化処理を施してもよい。
【0187】
下塗り層形成用組成物として使用し得る水性塗布液中の固形分濃度は、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。固形分濃度の下限は1質量%が好ましく、より好ましくは3質量%、さらに好ましくは5質量%である。上記範囲により、面状が良好な下塗り層を形成することができる。
【0188】
ポリマー支持体の、下塗り層が設けられた面上に、第2のポリマー層と第1のポリマー層とをこの順に形成することができる。
【0189】
<太陽電池モジュール>
本発明の一実施形態の太陽電池モジュールは、既述の本発明の一実施形態のポリマーシートをバックシートとして設けて構成されている。
好ましい形態として、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性のフロント基板と既述の本発明の一実施形態のバックシートとの間に配置し、該フロント基板とバックシートとの間で太陽電池素子をエチレン−ビニルアセテート系等の封止材で封止、接着して構成されている太陽電池モジュールが挙げられる。すなわち、フロント基板とバックシートとの間に、太陽電池素子及び前記太陽電池素子を封止する封止材を有するセル構造部分が設けられている。
【0190】
図1は、本発明の一実施形態の太陽電池モジュールの構成の一例示的態様を概略的に示している。この太陽電池モジュール10は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子20を、太陽光が入射する透明性のフロント基板24と既述の本発明の一実施形態のポリマーシートからなる保護シートとの間に配置し、該基板と保護シートとの間をエチレン−ビニルアセテート系封止材22で封止して構成されている。本例示の実施形態の保護シートにおいては、ポリマー支持体16の一方の面側に第2のポリマー層14に接して第1のポリマー層12が設けられ、他方の面側(太陽光が入射する側)に、第3の層として、白色の反射層18が設けられているが、白色の反射層18を例えば、ポリマー支持体16と、易接着層(不図示)の間に配置してもよい。ある実施形態においては、太陽電池モジュールにおける前記第2のポリマー層が前記反射層の機能も備えることが、積層数を減らして太陽電池保護シート全体の密着性の湿熱耐久性を高める観点から好ましい。
【0191】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、太陽電池保護シート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0192】
透明性の基板24は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0193】
太陽電池素子20としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【0194】
このような構成の太陽電池モジュール10であれば、裏面側に第2のポリマー層を介して最外層となるフッ素ポリマーを含有する第1のポリマー層が設けられており、高い耐久性を有するとともに高い接着性が保たれるため、屋外でも長期にわたって使用することができる。
【実施例】
【0195】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0196】
本発明における第1のポリマー層と第2のポリマー層との界面の粗さを評価する指標である「Rz」は、前記の測定方法により求めた。なお、以下の実施例及び比較例において、「Rz」とある表記は、いずれも当該測定方法により求めた、第1のポリマー層と第2のポリマー層との界面の粗さ(Rz)を示す。
【0197】
[実施例1]
−ポリエチレンテレフタレートの合成−
高純度テレフタル酸〔三井化学社製〕100kgとエチレングリコール〔日本触媒社製〕45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給した。供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してそれぞれ30ppm、15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。前記チタンアルコキシド化合物は、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1に合成方法が記載されているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)を用いた。チタンアルコキシド化合物を添加した5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
−固相重合−
重合したポリエチレンテレフタレートのペレットを、下記方法(バッチ法)で固相重合に供した。
すなわち、ペレットを耐真空容器に投入した後、容器内を真空にし、撹拌しながら、210℃で20時間保持して固相重合した。
【0198】
(ポリマー支持体の作製)
上記で得られたペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmの未延伸ポリマー支持体を作製した。その後、該未延伸ポリマー支持体を、90℃で縦方向に3.4倍に延伸し、更に120℃で横方向に4.5倍に延伸することにより二軸延伸を実施し、200℃で30秒熱固定した後、190℃で10秒熱緩和し、厚み240μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)であるポリマー支持体を作製した。
【0199】
(第2のポリマー層の形成)
−第2のポリマー層用塗布液の調製−
下記に示す各成分を混合し、第2のポリマー層用塗布液を調製した。
・ポリシロキサン−アクリルハイブリッドラテックス 39.6質量%
(セラネート(登録商標)WSA−1070、DIC(株)製、固形分40質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル 1.5質量%
(ナロアクティー(登録商標)CL−95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・カルボジイミド化合物 4.9質量%
(カルボジライト(登録商標)V−02−L2、日清紡、固形分:20質量%)
・オキサゾリン化合物 1.7質量%
(エポクロス(登録商標)WS700、日本触媒化学工業(株)製、固形分:25質量%)
・下記にて調製した特定粒子分散液 49.4質量%
・蒸留水 全体で100質量%となるように添加
【0200】
<<特定粒子分散液の調製>>
・二酸化チタン粒子(白色顔料、体積平均粒径0.3μm) 45.6質量%
(タイペーク(登録商標)CL95、石原産業(株)製、固形分100質量%)
・ポリビニルアルコール 22.8質量%
(商品名:PVA−105、(株)クラレ製、固形分10質量%)
・界面活性剤 5.5質量%
(デモール(登録商標)EP、花王(株)製、固形分25質量%)
・蒸留水 全体で100質量%となるように添加
【0201】
上記処方の各成分を混合し、ダイノミル型分散器により分散処理を施し、特定粒子分散液を調製した。
【0202】
−第2のポリマー層の塗布−
上記にて得られた第2のポリマー層の塗布液をコロナ放電による表面処理を施したPETフィルムの片面に塗布し、塗膜を170℃で120秒間乾燥して、厚さ8.5μmの第2のポリマー層を形成した。
【0203】
(第1のポリマー層の形成)
下記に示す各成分を混合し、第1のポリマー層用塗布液を調製した。
−フッ素ポリマーを含有する第1のポリマー層用塗布液の調製−
・クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル共重合体 34.5質量%
(フッ素ポリマー、オブリガート(登録商標)SW0011F、AGCコーテック(株)製、固形分39質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル 1.5質量%
(ナロアクティー(登録商標)CL−95、三洋化成工業、固形分:1質量%)
・カルボジイミド化合物 6.2質量%
(カルボジライト(登録商標)V−02−L2、日清紡、固形分:20質量%)
・シリカゾル 0.4質量%
(スノーテックス(登録商標)UP、日産化学工業(株)製、固形分20質量%)
・シランカップリング剤 7.6質量%
(商品名:TSL8340、モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアル社、固形分1質量%)
・ポリオレフィンワックス分散物 20.8質量%
(ケミパール(登録商標)W950 三井化学製、固形分5質量%)
・蒸留水 全体で100質量%となるように添加
【0204】
−第1のポリマー層の塗布−
上記にて得られた第1のポリマー層用塗布液を、コロナ放電による表面処理を施した第2のポリマー層の上に塗布し、塗膜を170℃で120秒間乾燥させることにより、厚さ1.6μmの第1のポリマー層を形成して、実施例1のポリマーシートを作製した。
実施例1のポリマーシートにおけるRzは、0.5μmであった。
【0205】
[実施例2]
実施例1において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(二酸化チタン粒子)を体積平均粒径が0.2μmのもの(タイペーク(登録商標)PF−691、石原産業(株)製、固形分100%)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例2のポリマーシートを作製した。
実施例2のポリマーシートにおけるRzは0.2μmであった。
【0206】
[実施例3]
実施例1において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(二酸化チタン粒子)を体積平均粒径が0.6μmのものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例3のポリマーシートを作製した。
実施例3のポリマーシートにおけるRzは1.2μmであった。
【0207】
[実施例4]
実施例1において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(二酸化チタン粒子)を体積平均粒径が1.5μmのものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例4のポリマーシートを作製した。
実施例4のポリマーシートにおけるRzは3.0μmであった。
【0208】
[実施例5]
実施例1において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(二酸化チタン粒子)を、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子(以下、PMMA粒子と称する、)(商品名:MP−2000、総研化学(株)製、体積平均粒径0.3μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例5のポリマーシートを作製した。
実施例5のポリマーシートにおけるRzは0.5μmであった。
【0209】
[実施例6]
実施例5において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(PMMA粒子)を体積平均粒径が0.2μmのものに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例6のポリマーシートを作製した。
実施例6のポリマーシートにおけるRzは0.2μmであった。
【0210】
[実施例7]
実施例5において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(PMMA粒子)を体積平均粒径が0.6μmのものに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例7のポリマーシートを作製した。
実施例7のポリマーシートにおけるRzは1.2μmであった。
【0211】
[実施例8]
実施例5において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(PMMA粒子)を体積平均粒径が1.5μmのものに変更した以外は、実施例5と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例8のポリマーシートを作製した。
実施例8のポリマーシートにおけるRzは3.0μmであった。
【0212】
[実施例9]
実施例1において、第1のポリマー層に用いたフッ素ポリマーをシリコーンポリマー(セラネート(登録商標)WSA1070、DIC(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例9のポリマーシートを作製した。
実施例9のポリマーシートにおけるRzは0.5μmであった。
【0213】
[実施例10]
実施例2において、第1のポリマー層のフッ素ポリマーをシリコーンポリマー(セラネート(登録商標)WSA1070、DIC(株)製)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例10のポリマーシートを作製した。
実施例10のポリマーシートにおけるRzは0.2μmであった。
【0214】
[実施例11]
実施例3において、第1のポリマー層に用いたフッ素ポリマーをシリコーンポリマー(セラネート(登録商標)WSA1070、DIC(株)製)に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例11のポリマーシートを作製した。
実施例11のポリマーシートにおけるRzは1.2μmであった。
【0215】
[実施例12]
実施例4において、第1のポリマー層に用いたフッ素ポリマーをシリコーンポリマー(セラネート(登録商標)WSA1070、DIC(株)製)に変更した以外は、実施例4と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例12のポリマーシートを作製した。
実施例12のポリマーシートにおけるRzは3.0μmであった。
【0216】
[実施例13]
実施例5において、第1のポリマー層に用いたフッ素ポリマーをシリコーンポリマー(セラネート(登録商標)WSA1070、DIC(株)製)に変更した以外は、実施例5と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例13のポリマーシートを作製した。
実施例13のポリマーシートにおけるRzは0.5μmであった。
【0217】
[実施例14]
実施例6において、第1のポリマー層に用いたフッ素ポリマーをシリコーンポリマー(セラネート(登録商標)WSA1070、DIC(株)製)に変更した以外は、実施例6と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例14のポリマーシートを作製した。
実施例14のポリマーシートにおけるRzは0.2μmであった。
【0218】
[実施例15]
実施例7において、第1のポリマー層に用いたフッ素ポリマーをシリコーンポリマー(セラネート(登録商標)WSA1070、DIC(株)製)に変更した以外は、実施例7と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例15のポリマーシートを作製した。
実施例15のポリマーシートにおけるRzは1.2μmであった。
【0219】
[実施例16]
実施例8において、第1のポリマー層に用いたフッ素ポリマーをシリコーンポリマー(セラネート(登録商標)WSA1070、DIC(株)製)に変更した以外は、実施例8と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、実施例16のポリマーシートを作製した。
実施例16のポリマーシートにおけるRzは3.0μmであった。
【0220】
[実施例17]
実施例1において、未延伸ポリマー支持体をMD方向に3.4倍に延伸した後に、下記組成を有する下塗り層塗布液を塗布し、その後にTD方向への4.5倍の延伸を実施してポリマー支持体を作成した以外は、実施例1と同様の方法で実施例17のポリマーシートを作製した。延伸後の下塗り層の厚みは0.1μmであった。
実施例17のポリマーシートにおけるRzは0.5μmであった。
<下塗り層塗布液>
・ポリオレフィンバインダー … 24.12質量部
(アローベース(登録商標)SE−1013N、ユニチカ(株)製、濃度20質量%)
・オキサゾリン系架橋剤 … 3.90質量部
(エポクロス(登録商標)WS−700、日本触媒(株)製、濃度25質量%)
・フッ素系界面活性剤 … 0.19質量部
(ナトリウム=ビス(3、3、4、4、5、5、6、6−ノナフルオロ)=2−スルホナイトオキシスクシナート、三協化学(株)製、濃度1質量%)
・蒸留水 … 71.80質量部
【0221】
[実施例18〜21]
実施例1において、ポリエチレンテレフタレートの合成およびポリマー支持体の作製方法を以下で示す方法で行う以外は、実施例1と同様に実施例18〜21のポリマーシートを作製した。
実施例18〜21のポリマーシートにおけるRzはいずれも0.5μmであった。
<ポリエチレンテレフタレートの合成>
エステル交換反応容器にジメチルテレフタレートを100質量部、エチレングリコールを61質量部、酢酸マグネシウム四水塩を0.06質量部仕込み、150℃に加熱して溶融し撹拌した。反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成するメタノールを反応容器外へ留出させた。メタノールの留出が終了したらトリメチルリン酸を0.02質量部添加した。トリメチルリン酸を添加した後、三酸化アンチモンを0.03質量部添加し、反応物を重合装置に移行した。ついで重合装置内の温度を235℃から290℃まで90分かけて昇温し、同時に装置内の圧力を大気圧から100Paまで90分かけて減圧した。重合装置内容物の撹拌トルクが所定の値に達したら装置内を窒素ガスで大気圧に戻して重合を終了した。重合装置下部のバルブを開いて重合装置内部を窒素ガスで加圧し、重合の完了したポリエチレンテレフタレートをストランド状にして水中に吐出した。ストランドはカッターによってチップ化した。このようにして固有粘度IV=0.58、酸価(AV)=12のPETを得た。これをPET−Aとした。
<ポリエステルの固相重合>
PET−Aを150℃〜160℃で3時間予備乾燥した後、100トール、窒素ガス雰囲気下、205℃で25時間固相重合を行いPET−Bを得た。
<ポリエステルと末端封止剤を含むマスターペレットの製造>
90質量部のPET−Bと、末端封止剤として10質量部の下記化合物とをブレンドし、得られた混合物を二軸混練機に供給して280℃で溶融混練し、これをストランド状に水中吐出し、カッターで裁断しチップ化した。これをPET−Cとした。
【化3】


<ポリエステルフィルムの製膜>
PET−BとPET−Cとを180℃で3時間乾燥させた後、末端封止材の含有量が表1に示す量となるように混合し押出機に投入し280℃で混練した。混練物をギアポンプ及び濾過器を通した後、Tダイから静電印加をかけた25℃の冷却ドラム上に押出し、冷却固化し未延伸シートを得た。該未延伸ポリマー支持体を、90℃で縦方向に3.4倍に延伸し、更に120℃で横方向に4.5倍に延伸することにより二軸延伸に供し、200℃で30秒熱固定した後、190℃で10秒熱緩和し、厚み240μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)であるポリマー支持体を作製した。
【0222】
[実施例21]
実施例1において、ポリエチレンテレフタレート樹脂の全質量に対して50質量%の分画を、事前に120℃、約8時間10−3torr下で乾燥した。これに前述の電顕法による測定値に基づく平均粒径0.3μmを有するルチル型二酸化チタンを、前記分画と同質量混合し、得られた混合物をベント式二軸押出機に供給して、混練りして脱気しながら275℃で押出し、微粒子(酸化チタン)含有ペレットを調製した以外は、実施例1と同様の方法で実施例21のポリマーシートを作製した。
実施例21のポリマーシートにおけるRzは0.5μmであった。
【0223】
[実施例22]
実施例1において、PETフィルムの表面処理を、コロナ放電に代えて、以下で示すグロー放電処理で実施した以外は、実施例1と同様の方法で実施例22のポリマーシートを作製した。
実施例22のポリマーシートにおけるRzは0.5μmであった。
<グロー放電処理>
ポリエチレンテレフタレートフィルムを、加熱ローラーを用いて145℃に加熱した後、処理雰囲気圧力 0.2Torr、放電周波数 30kHz、出力 5000w、放電処理強度 4.2kV・A・分/m の条件にてグロー放電処理に供した。
【0224】
[比較例1]
実施例1において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(二酸化チタン粒子)を、ポリシロキサン−アクリルハイブリッドラテックスに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、比較例1のポリマーシートを作製した。
比較例1のポリマーシートにおけるRzは0.05μmであった。
【0225】
[比較例2]
実施例1において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(二酸化チタン粒子)を体積平均粒径が0.1μmのものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、比較例2のポリマーシートを作製した。
比較例2のポリマーシートにおけるRzは0.1μmであった。
【0226】
[比較例3]
実施例1において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(二酸化チタン粒子)を体積平均粒径が2.0μmのものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、比較例3のポリマーシートを作製した。
比較例3のポリマーシートにおけるRzは3.6μmであった。
【0227】
[比較例4]
実施例13において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(PMMA粒子)をポリシロキサン−アクリルハイブリッドラテックスに変更した以外は、実施例13と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、比較例4のポリマーシートを作製した。
比較例4のポリマーシートにおけるRzは0.05μmであった。
【0228】
[比較例5]
実施例13において、第2のポリマー層に用いた特定粒子(PMMA粒子)を体積平均粒径が0.1μmのものに変更した以外は、実施例13と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、比較例5のポリマーシートを作製した。
比較例5のポリマーシートにおけるRzは0.1μmであった。
【0229】
[比較例6]
実施例13において、第2のポリマー層に用いた(PMMA粒子)を体積平均粒径が2.0μmのものに変更した以外は、実施例13と同様の方法で、ポリマー支持体上に第2のポリマー層及び第1のポリマー層を形成し、比較例6のポリマーシートを作製した。
比較例6のポリマーシートにおけるRzは3.6μmであった。
【0230】
(評価)
上記の実施例及び比較例で作製されたポリマーシートについて、下記の評価を行なった。評価結果を表1に示す。
【0231】
−接着性の評価−
(1)湿熱経時前(Fresh)の密着性
実施例1〜16及び比較例1〜6で得られた各ポリマーシートの第1及び第2のポリマー層が形成されている側の表面に、カミソリを用いて3mm間隔で縦横それぞれ6本ずつの傷をつけ、25マスのマス目を形成した。この上に幅20mmのマイラーテープ(日東電工株式会社製ポリエステルテープ)を貼って、180°方向にすばやく引っ張って剥離した。このとき、剥離したマス目の数によって、ポリマー層の密着性を下記の基準に従って評価しランク付けを行った。
<評価基準>
5:全く剥離が起こらない
4:剥離したマス目はないが、キズ部分が僅かに剥離している。
3:剥離したマス目が1マス未満である。
2:剥離したマス目が1マス以上5マス未満である。
1:剥離したマス目が5マス以上である。
実用上許容されるのは、評価ランク3〜5に分類されるものである。
【0232】
(2)湿熱経時後の密着性
実施例1〜16及び比較例1〜6で得られた各ポリマーシートを、プレッシャークッカー試験の環境(120℃、100%RH、且つ1.2Mpaの環境)の下で、60時間静置させた。
実施例1〜16及び比較例1〜6で得られた各ポリマーシートを、ダンプヒート試験の環境(85℃且つ85%RHの環境)の下で、2000時間静置させた。
プレッシャークッカー試験及びダンプヒート試験において静置後の各ポリマーシートについて、第1及び第2のポリマー層が形成されている側の表面に、カミソリを用いて3mm間隔で縦横それぞれ6本ずつの傷をつけ、25マスのマス目を形成した。この上に幅20mmのマイラーテープ(日東電工株式会社製ポリエステルテープ)を貼って、180°方向にすばやく引っ張って剥離した。このとき、剥離したマス目の数によって、ポリマー層の密着性を前記「(1)湿熱経時前の密着性」の評価と同じ評価基準に従ってランク付けを行った。
【0233】
【表1】

【0234】
表1に示されるように、実施例の各ポリマーシートは、湿熱経時前(Fresh)、湿熱経時後のいずれにおいても、密着性に優れたものであることがわかる。
なお、表1中、比較例3及び比較例6のポリマーシートについての湿熱経時後の密着性評価の結果である「1」とは、第2のポリマー層に含有される粒子が、湿熱経時後において、最表層である第1のポリマー層に突き出てしまうことによる膜はがれが生じていることを示す。
【0235】
[実施例23]
−太陽電池用バックシートの作製−
<下塗層用塗布液の調製>
−下塗層の調製−
下記組成中の成分を混合し、下塗層用塗布液を調製した。
<下塗層用塗布液の組成>
・ポリエステル樹脂 1.7質量%
(バイロナール(登録商標)MD−1200、東洋紡(株)製、固形分:17質量%)
・ポリエステル樹脂 3.8質量%
(商品名:ペスレジンA−520、高松油脂(株)製、固形分:30質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル 1.5質量%
(ナロアクティー(登録商標)CL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・無機酸化物フィラー 1.6質量%
(スノーテックス(登録商標)C、日産化学(株)製、固形分:20質量%)
・カルボジイミド化合物 4.3質量%
(カルボジライト(登録商標)V−02−L2、日清紡(株)製、固形分:10質量%、架橋剤)
・蒸留水 87.1質量%
【0236】
<白色顔料層用塗布液の調製>
−白色顔料分散物の調製−
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施した。
<顔料分散物の組成>
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm) 44.9質量%
(タイペーク(登録商標)R−780−2、石原産業(株)製、固形分100質量%)
・ポリビニルアルコール 8.0質量%
(商品名:PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10質量%)
・界面活性剤(デモール(登録商標)EP、花王(株)製、固形分:25質量%) 0.5質量%
・蒸留水 46.6質量%
【0237】
−白色顔料層用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、白色顔料層用塗布液を調製した。
<白色顔料層用塗布液の組成>
・上記の顔料分散物 70.9質量%
・ポリオレフィン樹脂水分散液 19.2質量%
(バインダー:アローベース(登録商標)SE−1010、ユニチカ製、固形分:20質量%)
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル 3.0質量%
(ナロアクティー(登録商標)CL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・オキサゾリン化合物 6.9質量%
(エポクロス(登録商標)WS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%、架橋剤)
【0238】
<バックシートの作製>
前記下塗層用塗布液を、上記にて作製した実施例1のポリマーシートの第1及び第2のポリマー層が設けられている側の反対側に塗布した。その後、180℃で1分間乾燥させて、塗設量が0.1g/mの下塗層(厚み:0.1μm)を形成した。
更に、乾燥させた下塗層の上に、二酸化チタン量が8.5g/mになるように前記白色顔料層用塗布液を塗布し、塗膜を180℃で1分間乾燥させて、白色顔料層(反射層)(厚み:10μm)を形成した。
【0239】
以上のようにして、実施例1で得られたポリマーシートを用いた太陽電池用バックシートを作製した。
【0240】
−太陽電池モジュールの作製−
厚さ3mmの強化ガラスと、第一のEVAシート(商品名:SC50B、三井化学ファブロ(株)製)と、結晶系太陽電池セルと、第二のEVAシート(商品名:SC50B、三井化学ファブロ(株))と、実施例1のバックシートとをこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ(日清紡(株)製、真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、強化ガラスと、第一のEVAシートと、結晶系太陽電池セルと、第二のEVAシートと、バックシートとを接着させた。このとき、上記にて作製したバックシートを、その白色顔料層(反射層)を形成した側が第二のEVAシートと接触するように配置した。また、接着方法は、以下の通りである。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンにて150℃で30分間、接着処理を施した。
【0241】
このようにして、結晶系の太陽電池モジュールを作製した。作製した太陽電池モジュールを発電運転したところ、太陽電池として良好な発電性能を示した。
【0242】
[実施例24〜38]
実施例2〜22で作製したポリマーシートを用い、それぞれ実施例23と同様にしてバックシートを作製し、該バックシートを用いて、実施例24〜44の太陽電池モジュールを作製した。
作製した太陽電池モジュールを用いて発電運転をしたところ、いずれも太陽電池として良好な発電性能を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー層と、第2のポリマー層と、ポリマー支持体とをこの順に配置して含む太陽電池用ポリマーシートであって、
前記第1のポリマー層がフッ素ポリマー及びシリコーンポリマーからなる群より選択されるポリマーを含有し、
前記第1のポリマー層が前記第2のポリマー層と接し、
前記第1のポリマー層と前記第2のポリマー層との界面の粗さ(Rz)が、0.2μm〜3.0μmの範囲である太陽電池用ポリマーシート。
【請求項2】
前記第2のポリマー層がシリコーンポリマーを含有する請求項1に記載のポリマーシート。
【請求項3】
前記第2のポリマー層が、体積平均粒径が0.2μm〜1.5μmの範囲である粒子を含有する請求項1又は請求項2に記載のポリマーシート。
【請求項4】
前記第2のポリマー層が、体積平均粒径が0.3μm〜0.6μmの範囲である粒子を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項5】
前記第2のポリマー層が、二酸化チタン粒子を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項にポリマーシート。
【請求項6】
前記第1のポリマー層及び前記第2のポリマー層が、塗布により形成された層である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項7】
前記第1のポリマー層が最外層である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項8】
末端封止剤を、ポリマー支持体を構成するポリマーの全質量に対して0.1質量%〜10質量%含有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項9】
ポリマー支持体が無機粒子または有機粒子である微粒子を含有し、微粒子の平均粒径が0.1μm〜10μmであり、且つ微粒子の含有量がポリマー支持体の全質量に対して0質量%〜50質量%である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のポリマーシート。
【請求項10】
ポリマー支持体を構成するポリマーを含む未延伸シートを供給すること、
未延伸シートを第一の方向に延伸すること、
第一の方向に延伸されたシートの、少なくとも一表面の上に、下塗り層形成用組成物を付与すること、及び
下塗り層形成用組成物が付与されたシートを、第一の方向に直交する方向に延伸すること、
を含む、ポリマー支持体及び下塗り層の形成工程;及び
下塗り層の上に第2のポリマー層と第1のポリマー層とをこの順に配置する工程、
を含む、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のポリマーシートを製造する方法。
【請求項11】
ポリマー支持体の表面をコロナ処理、火炎処理、グロー放電処理からなる群より選択される方法で処理することを含む、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のポリマーシートを製造する方法。
【請求項12】
太陽光が入射する透明性のフロント基板と、前記フロント基板の一方の面上に設けられ、太陽電池素子及び前記太陽電池素子を封止する封止材を含むセル構造部分と、前記セル構造部分の前記フロント基板が位置する側と反対側に設けられ、前記封止材と接して配置された、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のポリマーシートであるバックシートと、を備えた太陽電池モジュール。

【図1】
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【公開番号】特開2013−38414(P2013−38414A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158924(P2012−158924)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】