説明

太陽電池用封止材、太陽電池用封止膜、および太陽電池

【課題】 封止後の架橋によるゲル化分率を高くすることが可能な太陽電池用封止材を提供すること。
【解決手段】 酢酸ビニル単位の含有量が10〜35重量%であるエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)と、酢酸ビニル単位の含有量が40〜75重量%であるエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)からなり、A1/A2=99/1〜60/40(重量比)であるエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A)および架橋剤(B)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に用いられる封止材に関するものであって、さらに詳しくは封止後の架橋によるゲル化分率を高くすることが可能で、耐久性に優れた封止材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に絡み、太陽光がクリーンなエネルギー源として広く注目され、太陽電池の開発が盛んに行われている。
太陽電池は、通常、基板、封止膜、光電変換素子、封止膜、保護層をこの順で積層し、減圧で脱気して光電変換素子を封止した後、加熱加圧して封止膜を架橋硬化させて接着一体化することにより製造される。
【0003】
太陽電池においては、機械的な耐久性の確保の面、さらに湿気ないし水の透過による内部の導線や電極の発錆を防止する面から、上記封止膜により、高度な密着性及び接着強度で各部材が接着一体化されていることが極めて重要な要件となる。
【0004】
かかる封止膜は、封止材をシート化したもので、封止後に架橋させることによって耐久性を付与している。
【0005】
従来、封止材としては、酢酸ビニル単位の含有率が15〜30重量%のエチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)が用いられている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−177412号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に代表されるEVAを封止材として用いた封止膜では、耐久性の点で改善する余地があることが判明した。
封止膜の耐久性を向上させる為には、封止後の架橋によるゲル化分率を高くすることが必要である。
すなわち、本発明は、封止後の架橋によるゲル化分率を高くすることができる太陽電池用封止材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記実情に鑑み鋭意検討した結果、太陽電池用封止材として、酢酸ビニル単位の含有量が、10〜35重量%であるエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)と、40〜75重量%であるエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)を併用し、A1/A2=99/1〜60/40(重量比)とすることで、封止後の架橋によるゲル化分率の高い太陽電池用封止材が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、封止材に従来使用されている酢酸ビニル単位の含有量のエチレンー酢酸ビニル系共重合体に対し、これよりも酢酸ビニル単位の含有量の高いエチレンー酢酸ビニル系共重合体を配合したことを最大の特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の太陽電池用封止材は、封止後の架橋によってゲル化分率が高い架橋構造を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に特定されるものではない。
【0011】
<エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A)>
本発明は、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A)として、酢酸ビニル単位の含有量が比較的少ないエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)と酢酸ビニル単位の含有量が比較的多いエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)を併用するものである。
【0012】
<エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)>
エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)における酢酸ビニル単位の含有量は、通常10〜35重量%、好ましくは15〜30重量%、さらに好ましくは20〜30重量%である。酢酸ビニル単位の含有量が少なすぎると、製膜時の架橋性や加工性が低下する傾向になる。一方で、酢酸ビニル単位の含有量が多すぎると、分解・劣化しやすい傾向になる。
【0013】
エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)におけるメルトインデックス(MI)は、190℃,2160g荷重の条件で、通常0.1〜200g/10min、好ましくは1〜100g/10min、さらに好ましくは2〜50g/10minである。メルトインデックス(MI)が小さすぎると、加工性が低下する傾向になる。一方で、メルトインデックス(MI)が高すぎると、封止材としての強度が低下する傾向がある。
【0014】
上記エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)は、本発明の趣旨を疎外しない範囲で、不飽和カルボン酸またはその無水物を付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性体であってもよく、かかる不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸や、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸やその無水物、ハーフエステル等が挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好適に用いられる。
【0015】
本発明においては、更に本発明の趣旨を疎外しない範囲で、第二成分として、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を配合することも好ましく、かかる不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好適に用いられる。具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸 変性エチレン−アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−アクリル酸エチル共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
【0016】
<エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)>
エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)における酢酸ビニル単位の含有量は、通常40〜75重量%、好ましくは45〜70重量%、さらに好ましくは50〜65重量%である。酢酸ビニル単位の含有量が少なすぎると、製膜時の架橋性や加工性が低下する傾向になる。一方で、酢酸ビニル単位の含有量が多すぎると、分解・劣化しやすい傾向になる。
【0017】
エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)におけるメルトインデックス(MI)は、150℃,2160g荷重の条件で、通常1〜200g/10min、好ましくは2〜150g/10min、さらに好ましくは5〜100g/10minである。メルトインデックス(MI)が小さすぎると、加工性が低下する傾向になる。一方で、メルトインデックス(MI)が高すぎると、封止材としての強度が低下する傾向がある。
【0018】
上記エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)は、本発明の趣旨を疎外しない範囲で、不飽和カルボン酸またはその無水物を付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性体であってもよく、かかる不飽和カルボン酸又はその無水物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸や、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸やその無水物、ハーフエステル等が挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好適に用いられる。
【0019】
本発明においては、更に本発明の趣旨を疎外しない範囲で、第二成分として、不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を配合することも好ましく、かかる不飽和カルボン酸又はその無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好適に用いられる。具体的には、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸 変性エチレン−アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−アクリル酸エチル共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等から選ばれた1種または2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。
【0020】
エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)とエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)の重量比(A1/A2)は、通常99/1〜60/40、好ましくは95/5〜65/35、さらに好ましくは90/10〜70/30である。A2の比率が低すぎると、ゲル化分率を高める効果が得られない傾向がある。一方で、A2の比率が高すぎると、分解・劣化が起こりやすくなり、封止時の加工性が低下する傾向がある。
【0021】
<架橋剤(B)>
本発明の封止材に用いられる架橋剤としては、有機過酸化物、光重合開始剤などが挙げられ、なかでも有機過酸化物を用いることが好ましい。架橋剤により、エチレンー酢酸ビニル系共重合体の架橋硬化膜を得ることができ、太陽電池の封止性を高めることができる。
【0022】
前記有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば使用することができる。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。例えば、脂肪族系有機過酸化物として、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、芳香族系有機過酸化物として、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ジクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド等を用いることができる。
【0023】
中でも有機過酸化物として、脂肪族系有機過酸化物が好ましく、特に2,5−ジメチルー2,5−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサンが好適に用いられる。
【0024】
前記封止材において、架橋剤の含有量は、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)とエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)を併用したエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A)100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは1〜3重量部である。架橋剤の含有量が少なすぎると、架橋速度が低下する傾向がある。一方で、架橋剤の含有量が多すぎると、透明性、機械物性が低下する傾向がある。
【0025】
光重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタ−ルなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレ−トなどが使用できる。
【0026】
前記光重合開始剤として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が好適に用いられる。
【0027】
前記封止材において、光重合開始剤からなる架橋剤の含有量は、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)とエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)を併用したエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A)100重量部に対して、0.5〜5.0質量部であることが好ましい。
【0028】
<封止材>
本発明の封止材は、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)および架橋剤(B)を混合したものである。
かかる混合方法は特に限定されず、公知の方法で混合することができる。混合方法として、ドライブレンド、溶融混合などが挙げられるが、均一混合の観点から溶融混合が好ましい。かかる溶融混合には公知の手法を用いることが可能である。なかでも、押出機を用いることが加工性、経済性の点で好ましい。押出機の種類は特に限定されず、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等の一般的押出機が採用可能である。
溶融混合する際の押出機のバレル温度は通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃、特に好ましくは90〜100℃である。なお本発明において、押出機のバレル温度とは、押出機のバレルの表面温度を意味する。押出機のバレルが複数のセクションを有しており、個々のセクションが異なる温度に設定されている場合は、そのうちの最高温度をバレル温度とする。
【0029】
本発明の封止材は、さらに必要に応じて架橋助剤(C)、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を混合したものである。かかる添加剤の混合手法は、特に限定されず、上記エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)および架橋剤(B)の溶融混合時に同時に添加することが可能である。
【0030】
本発明の封止材は、さらに架橋助剤(C)を含んでいるのが好ましい。前記架橋助剤は、エチレンー酢酸ビニル系共重合体のゲル化分率を向上させ、封止材の接着性及び耐久性を向上させることができる。
【0031】
前記架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート等が好適に用いられる。
【0032】
前記封止材において、架橋助剤の含有量は、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)とエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)を併用したエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A)100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは1〜3重量部である。架橋助剤の含有量が少なすぎると、架橋速度が低下する傾向がある。一方で、架橋助剤の含有量が多すぎると、透明性、機械物性が低下する傾向がある。
【0033】
架橋剤(B)と架橋助剤(C)の重量比は、通常0.1〜10、好ましくは0.2〜5、さらに好ましくは0.3〜3である。
【0034】
さらに、本発明の封止材は、封止膜の種々の物性を改善する目的で、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、及び/又は酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0035】
本発明の封止材が前記シランカップリング剤を配合することにより、接着力を向上させることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0036】
本発明の封止材が前記紫外線吸収剤を配合することにより、照射された光などの影響によってエチレンー酢酸ビニル系共重合体が劣化し、黄変するのを抑制することができる。前記紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0037】
本発明の封止材が前記酸化防止剤を配合することにより、光安定性、熱安定性を一層向上させることができる。前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、イオウ系、リン系、アミン系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系等が挙げられる。
【0038】
前記シランカップリング剤、紫外線吸収剤、及び/又は酸化防止剤その他添加剤の含有量は、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)とエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)を併用したエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A)100重量部に対して、5重量部以下が好ましい。
【0039】
<封止膜>
本発明の封止膜は、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)とエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)の樹脂成分に、架橋剤(B)、必要に応じて添加される架橋助剤(C)、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を予めドライブレンドして直線状スリットを有するT−ダイ押出機のホッパーから供給し、加工温度:40〜130℃、圧力:0.1〜5MPaにてシート状に押出成形することにより、作製する事ができる。
また、本発明の封止膜は、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)、エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)、架橋剤(B)、必要に応じて添加される架橋助剤(C)、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を溶融混合したペレットを測り取り、圧縮成形機のプレス板上に置き、80〜110℃、0.1〜10MPaで1〜10分間プレスすることにより、作製する事ができる。
【0040】
本発明の封止膜の膜厚は特に限定されないが、0.1〜1mm程度が好ましい。
【0041】
<太陽電池>
本発明の封止膜を用いた太陽電池の構造は、特に制限されないが、基板と保護層との間に、前記太陽電池用封止膜を介在させた積層体を、加熱加圧することにより、架橋一体化させることにより光電変換素子を封止させた構造などが挙げられる。
【0042】
前記加熱加圧するには、例えば、前記積層体を、真空ラミネータで、温度70〜170℃、脱気時間1〜15分、プレス圧力0.1〜1気圧、プレス時間8〜45分で加熱圧着すればよい。かかる加熱加圧時に、エチレンー酢酸ビニル系共重合体を架橋させることにより、封止膜を介して、基板及び保護層を一体化させて、光電変換素子を封止することができる。
【0043】
本発明における基板としては、代表的にはガラスが挙げられるが、光を透過することができるものであれば使用でき、例えば、透明アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
【0044】
本発明における保護層としては、アルミ、ステンレス、スズ等、外部からの水蒸気の透過を防止する金属であれば特に限定されないが、経済面及び重量面からアルミが好ましい。
【0045】
本発明における光電変換素子としては、シリコン素子に限らず、光エネルギーを電気に変換できるものであれば使用可能である。
【0046】
なお、本発明の太陽電池は、上述した通り、封止材に特徴を有する。従って、前記封止材以外の部材については、従来公知の太陽電池と同様の構成を有していればよく、特に制限されない。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0048】
実施例1
<封止材の作製>
EVA樹脂(A)としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(A1)[エチレン含有量28モル%、MFR18g/10分(190℃、2160g)]とエチレン−酢酸ビニル共重合体(A2)[エチレン含有量55モル%、MFR43g/10分(150℃、2160g)]を、さらに架橋剤として2,5−ジメチルー2,5−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキサンを、架橋助剤としてイソシアヌル酸トリアリルを以下の比率でドライブレンドした。このドライブレンドした原料を二軸押出機(15mmφ、L/D60、テクノベル社製KZW15−60MG)に供給し、下記条件にて溶融混合を行った。
〔(A1)/(A2)溶融混合条件〕(A1:A2=90/10)
(A1)/ (A2)/架橋剤/架橋助剤 = 90/10/1.0/0.5
供給量 :2.0kg/hr
スクリュー構成 :フルフライト
スクリュー回転数 :200 r p m
ダイス :ストランドダイ(径3mmΦ:3穴)
ベント :全て閉
温度設定 :C 1 80 ℃ C 6 100 ℃
C 2 90 ℃ C 7 100 ℃
C 3 100 ℃ C 8 100 ℃
C 4 100 ℃ D 100℃
C 5 100 ℃
押出機出口に設けたストランドダイから溶融混合物をストランド状に押出し、ペレタイザーを用いてカッティングしてEVA樹脂組成物ペレット(直径3mm 、長さ5mmの円筒状) を得た。
【0049】
<封止膜の作製>
上記で得られたペレットを12gはかり取り、圧縮成形機(NFS−37、(株)神藤金属工業所製)のプレス板の上に置いた。100℃、5MPaで1分間プレスすることにより、封止膜を作製した。
【0050】
上記で得られた封止膜について、以下の評価を行った。
【0051】
<ゲル化分率評価>
上記で得られた封止膜を150℃、20分で熱架橋し、熱架橋後のサンプルシートを1g採取し、100mlのキシレンで8時間加熱還流を行い、不溶解部を60℃、20時間の真空乾燥を行った。真空乾燥後の重量(g)を測定し、ゲル化分率を下記式により算出した。

(ゲル化分率)={(真空乾燥後の重量)/1}×100
【0052】
実施例2
実施例1において、A1/A2=80/20とした以外は、実施例1と同様に封止膜を作製し、同様に評価した。
【0053】
実施例3
実施例1において、A1/A2=70/30とした以外は、実施例1と同様に封止膜を作製し、同様に評価した。
【0054】
実施例4
実施例1において、EVA樹脂(A)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(A2)の代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体(A2’)[エチレン含有量60モル%、MFR30g/10分(150℃、2160g)を用いた以外は、実施例1と同様にして封止膜を作製し、同様に評価した。
【0055】
実施例5
実施例4において、A1/A2’=80/20とした以外は、実施例4と同様に封止膜を作製し、同様に評価した。
【0056】
実施例6
実施例4において、A1/A2’=70/30とした以外は、実施例4と同様に封止膜を作製し、同様に評価した。
【0057】
比較例1 実施例1において、EVA樹脂(A)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(A2’) [エチレン含有量28モル%、MFR18g/10分(190℃、2160g)]を用いた以外は、実施例1と同様にして封止膜を作製し、同様に評価した。
【0058】
比較例2
比較例1において、EVA樹脂(A)として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(A4) [エチレン含有量42モル%、MFR70g/10分(190℃、2160g)]を用いた以外は、比較例1と同様に構造体を作製し、同様に評価した。
【0059】
ゲル化分率の評価結果を表1に示す。
[表1]

【0060】
表1からわかるように、酢酸ビニル単位の含有量が異なる2種のエチレンー酢酸ビニル共重合体を併用しない比較例1〜2に対して、酢酸ビニル単位の含有量が異なる2種のエチレンー酢酸ビニル共重合体を併用した実施例1〜6の方が、ゲル化分率を高くすることができ、併用効果があることを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の太陽電池用封止材は、酢酸ビニル単位の含有量が異なる2種のエチレンー酢酸ビニル系共重合体を併用することで、高いゲル化分率を達成することができることから、工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A)および架橋剤(B)を含む太陽電池用封止材であって、該エチレンー酢酸ビニル系共重合体(A)が、酢酸ビニル単位の含有量が10〜35重量%であるエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A1)と、酢酸ビニル単位の含有量が40〜75重量%であるエチレンー酢酸ビニル系共重合体(A2)からなり、A1/A2=99/1〜60/40(重量比)であることを特徴とする太陽電池用封止材。
【請求項2】
さらに架橋助剤(C)を含むことを特徴とする請求項1記載の太陽電池用封止材。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか記載の封止材を用いた太陽電池用封止膜。
【請求項4】
ゲル化分率が60%以上であることを特徴とする請求項3記載の太陽電池用封止膜。
【請求項5】
請求項3記載の太陽電池用封止膜を70〜170℃で熱架橋して封止することを特徴とする封止方法。
【請求項6】
請求項1〜2のいずれか記載の封止材を用いた太陽電池。






【公開番号】特開2013−115129(P2013−115129A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257928(P2011−257928)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】