説明

太陽電池用積層フィルム

【課題】高温・多湿などの過酷な自然環境下で長時間使用しても機械的性質の低下や接着性の低下が抑制された、熱可塑性ポリエステルからなる太陽電池用積層フィルムを提供する。
【解決手段】基材層およびその両側に設けられた表層からなる延伸された積層フィルムであり、表層は、カルボジイミド化合物を実質的に含有しない熱可塑性ポリエステルからなる厚み3.0μm以上の層であり、基材層は、カルボジイミド化合物を含有する熱可塑性ポリエステル組成物からなる層であり、基材層の熱可塑性ポリエステル組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対してカルボジイミド化合物を0.3〜2.5重量部を含有し、温度85℃、湿度85%RHの環境における4000時間エージング前後での伸度保持率が40%以上であることを特徴とする太陽電池用積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池用積層フィルムに関する。さらに詳しくは、耐加水分解性向上剤としてカルボジイミド化合物を含有する安価で耐加水分解性に優れるフィルムでありながら、カルボジイミド化合物のブリードアウトが防止された太陽電池用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池モジュールを用いる太陽光発電システムは、クリーンエネルギーを利用する発電手段の一つとして普及が進んでいる。太陽電池モジュールの構造は、例えば特開2007−129014号公報に記載があるように、一般的には、受光側の透明前面基板と、充填材、太陽電池素子、充填材および太陽電池裏面保護膜を順に積層し、これらを真空吸引して加熱圧着するラミネーション法にて製造される。
【0003】
透明前面基板や裏面保護膜は、主として太陽電池モジュールの保護機能を有し、機械的特性に優れ、かつ耐候性、耐熱性および耐加水分解性等の諸特性を備えていることが必要とされている。現在、このような太陽電池裏面保護膜として、強度特性に優れたプラスチックシートが使用され、中でもフッ素系樹脂フィルムが広く用いられている。
しかしながら、このようなフッ素系樹脂フィルムは、耐候性、耐熱性、耐加水分解性に優れるものの、ガスバリア性に乏しく、シートの腰が弱いという欠点がある。また、廃棄処理方法によっては環境負荷の懸念があることや、高コストである点も課題である。
【0004】
これに対し特開2006−261189号公報や特開2009−188105号公報では二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの使用が提案されている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたものは、比較的安価であるが耐熱性や耐加水分解性が不十分である。太陽電池用フィルムには、とりわけ耐加水分解性向上の要求が高く、これまでにも種々の提案がなされてきた。例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸含有のポリエステルフィルムを用いること(特開2007−007885号公報、特開2006−306910号公報)が提案されているが、これらは耐加水分解性には優れるものの紫外線による劣化変色が大きいうえに、ポリエチレンテレフタレートフィルムに比べて高価であるため一般的な応用には至っていない。また、高分子量のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いること(特開2002−26354号公報)、オリゴマー含有量の少ないポリエチレンテレフタレートフィルムを用いること(特開2002−100788号公報、特開2002−134770号公報、特開2002−134771号公報)が提案されているが、耐加水分解性は従来に比べ改善するもののフッ素系樹脂フィルムに比べると劣り、高寿命が要求される太陽電池モジュールに適用するにはさらなる改善が必要であった。
【0005】
さらに、特開2007−302878号公報に耐加水分解性向上剤としてエポキシ化脂肪酸アルキルエステルやエポキシ化脂肪酸グリセリンエステルを添加したポリエステルフィルムが開示されているが、これら耐加水分解性向上剤は反応性が低く効果の小さいものであった。また、特開2002−187965号公報にはカルボジイミド系化合物の単量体または重合体を添加したポリエステルフィルムが開示されているが、耐加水分解性は向上するものの、完全に高分子量化できずに残存しているカルボジイミドの低分子量成分などがフィルムからブリードアウトして充填材や接着剤からの剥離が発生したり、さらにはフィルム製造工程や加工工程においてイソシアネートや他の副生成物および分解物によるガスが発生し、このガスが粘膜を刺激して健康被害をもたらすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−129014号公報
【特許文献2】特開2006−261189号公報
【特許文献3】特開2009−188105号公報
【特許文献4】特開2007−007885号公報
【特許文献5】特開2006−306910号公報
【特許文献6】特開2002−026354号公報
【特許文献7】特開2002−100788号公報
【特許文献8】特開2002−134770号公報
【特許文献9】特開2002−134771号公報
【特許文献10】特開2007−302878号公報
【特許文献11】特開2002−187965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題点に注目してなされたものであり、その課題は上記の従来技術における問題点を克服し、耐加水分解性に優れた太陽電池用積層フィルムを提供することにある。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、高温・多湿などの過酷な自然環境下で長時間使用しても機械的性質の低下や接着性の低下が抑制された、熱可塑性ポリエステルからなる太陽電池用積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、かかる従来技術の有する問題点を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、基材層およびその両面に設けられた表層からなる延伸された積層フィルムであり、表層は、カルボジイミド化合物を実質的に含有しない熱可塑性ポリエステルからなる厚み3.0μm以上の層であり、基材層は、カルボジイミド化合物を含有する熱可塑性ポリエステル組成物からなる層であり、基材層の熱可塑性ポリエステル組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対してカルボジイミド化合物を0.3〜2.5重量部を含有し、温度85℃、湿度85%RHの環境における4000時間エージング前後での伸度保持率が40%以上であることを特徴とする太陽電池用積層フィルムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高温・多湿などの過酷な自然環境下で長時間使用しても機械的性質の低下や接着性の低下が抑制された、熱可塑性ポリエステルからなる太陽電池用積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
[積層フィルム]
本発明の太陽電池用積層フィルムは、基材層およびその両側に設けられた表層からなる延伸された積層フィルムである。表層が3.0μm以上の厚みを有することが肝要である。
【0013】
耐加水分解性を付与するために用いられるカルボジイミド化合物は、例えそれが高分子量のものであっても、低分子量の成分を一部含んでいる。このため、基材層がフィルムの表面に露出した構造としたのでは、低分子量の成分がフィルムの表面にブリードアウトすることになる。太陽電池用フィルムには、通常、EVA(エチレンビニルアセテート)などの充填材層や、保護膜を積層するための接着剤層を設けるが、カルボジイミド化合物の低分子量成分のブリードアウトがあると、接着剤層との接着性を低下させることになる。本発明ではこのブリードアウトを防ぐために、カルボジイミド化合物を実質的に含有しない表層を、基材層の両面に設ける。ブリードアウトを防ぐために表層の厚みを3.0μm以上、好ましくは5.0μm以上とする。表層の厚みの上限は例えば12.0μm程度、さらに例えば10.0μm程度である。なお、表層がカルボジイミド化合物と実質的に含有しないとは、全く含有しないか、含有するとしても表面へのカルボジイミド成分のブリードアウトが起こらない程度の含有量であることを意味する。例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対してカルボジイミド化合物が0.05重量部以下であれば、実質的に含有しないということができる。表層にはカルボジイミド成分が全く含有されてないことが好ましい。
【0014】
通常、カルボジイミド化合物を含有するポリエステル組成物を溶融押出する場合にはイソシアネート系の分解ガスが発生し、これが粘膜を刺激して作業環境を悪化させるが、本発明においては、基材層の両面を3.0μm以上の厚みの表層で覆う構造であり、刺激性ガスの発生が抑制され、好適な作業環境のもとで製造することができる。
【0015】
なお、表層の厚みは二軸延伸後の厚みであり、押出直後の延伸前における積層シートの表層の厚みは、延伸倍率が面積倍率で例えば9倍である場合は27μm以上、例えば8倍である場合は24μm以上である。
【0016】
積層フィルムに、耐加水分解性を付与するためには、基材層が厚いほうが有利なため、ブリードアウトを十分に防止し、耐加水分解性に優れた積層フィルムを得る観点からは、表層と基材層の厚みの比率を、表層/基材層/表層=1/6/1〜1/12/1の範囲とすることが好ましい。
【0017】
本発明の太陽電池用積層フィルムの厚みは、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは40〜250μm、特に好ましくは50〜200μmである。なお、これらは二軸延伸後の厚みである。
【0018】
[表層]
表層は、カルボジイミド化合物を実質的に含有しない熱可塑性ポリエステルからなる。
【0019】
[熱可塑性ポリエステル]
本発明の太陽電池用積層フィルムを構成する熱可塑性ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とからなる熱可塑性ポリエステルを用いる。
【0020】
芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4‘−ジフェニルジカルボン酸を例示することができる。ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールを例示することができる。
【0021】
熱可塑性ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。なお、熱可塑性ポリエステルはホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよく、これらのブレンドであってもよいが、耐加水分解性の観点から好ましくはホモポリマーを使用する。また、表層と基材層の熱可塑性ポリエステルは異なる種類のものでも、同一のものでも構わない。
【0022】
本発明の太陽電池用積層フィルムの原料に用いる熱可塑性ポリエステルの極限粘度数は、いずれの層についても好ましくは0.60〜0.90dl/g、さらに好ましくは0.65〜0.85dl/gである。耐加水分解性の観点からはフィルムの熱可塑性ポリエステルの極限粘度数が高い方が良く、そのためには極限粘度数の高い熱可塑性ポリエステル原料を用いてフィルムを製造することが必要であるが、他方で、原料の極限粘度数が高すぎると樹脂の溶融粘度が高いために溶融押出しが困難になり、また原料の重合時間が長く不経済であり、産業上好ましくない。したがって、フィルムの耐加水分解性と生産性のバランスを考慮し、好ましい範囲は上述のとおりである。なお、ポリエチレンテレフタレートの極限粘度数は、重量比が6:4のフェノール:テトラクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃での測定値から求めた値である。
【0023】
[基材層]
基材層は、カルボジイミド化合物を含有する熱可塑性ポリエステル組成物からなる層である。熱可塑性ポリエステル組成物の熱可塑性ポリエステルとしては、上述の熱可塑性ポリエステルを用いることができる。基材層の熱可塑性ポリエステルは、表層の熱可塑性ポリエステルと同じであってもよく、異なってもよい。
【0024】
[カルボジイミド化合物]
本発明の太陽電池用積層フィルムの基材層には耐加水分解性向上剤として、カルボジイミド化合物が含有される。カルボジイミド化合物として、好ましくはビスカルボジイミドまたは芳香族ポリカルボジイミドを用いる。なかでも耐加水分解性向上の効果の大きいものとして、R−N=C=N−R’で表されるビスカルボジイミドを用いることが好ましい。ここで、RおよびR’は、炭素数が4〜20の置換または未置換のアルキル基および/またはアリール基である。RおよびR’が置換基を有する場合、置換基はハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、水酸基、アルキルおよびアルコキシ基から選ばれる。RとR’は同一であってもよく、異なってもよい。
【0025】
カルボジイミド化合物の具体例として、ドイツのライン・ケミー社(Rhein−Chemie)が『Stabaxol P』の商品名で製造している2,4−ジイソシアナート−1,3,5−トリス(1−メチルエチル)の2,6−ジイソプロピルジイソシアナートとの共重合体や、『Stabaxol P100』の商品名で製造しているベンゼン−2,4−ジイソシアナート−1,3,5−トリス(1−メチルエチル)ホモポリマーなどの芳香族ポリカルボジイミドを例えば用いることができる。ビスカルボジイミドの具体例として、ライン・ケミー社が『Stabaxol 1』の商品名で製造する2,2’,6,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドを例えば用いることができる。好ましいカルボジイミド化合物の具体例は『Stabaxol P100』である。
【0026】
カルボジイミド化合物は、基材層の熱可塑性ポリエステル組成物中に、熱可塑性ポリエステル100重量部あたり0.3〜2.5重量部、好ましくは0.6重量部〜1.5重量部含有される。含有量が0.3重量部未満であると耐加水分解性向上剤としての効果が不十分であり、フィルムを温度85℃、湿度85%RHの環境下において4000時間エージングした場合に、エージング前の40%以上の伸度保持率を維持することができない。他方、含有量がl2.5重量%を超えても効果が飽和し不経済なだけでなく、熱可塑性ポリエステルが増粘することにより生産効率が低下したり、フィルムが黄色く着色したり、過剰なカルボジイミド同士が反応してフィルム中で異物になるなどの悪影響が出る。
【0027】
カルボジイミド化合物をフィルムに添加する方法として、高濃度のカルボジイミド化合物を含有するマスターバッチを製造し、このマスターバッチとカルボジイミド化合物を含有しない熱可塑性ポリエステルとを溶融混練して所定量のカルボジイミド化合物含有量に調整された組成物を製造する方法が好ましい。マスターバッチのカルボジイミド化合物の濃度は、ポリエステル樹脂85重量部に対してカルボジイミド15重量部の比が最も好適である。その他の方法として、カルボジイミド化合物を加熱して液状に溶融し、基材層の押出機の途中で直接添加する方法を用いることもできる。
【0028】
[フィルムの極限粘度数および末端カルボキシル基濃度]
本発明の太陽電池用積層フィルムは、フィルムの熱可塑性ポリエステルの極限粘度数が0.56〜0.74dl/gであることが好ましい。この範囲の極限粘度数であることによって、十分な耐加水分解性を備えながら、原料の重合時間が長くなったりフィルムの製造工程において原料の溶融粘度が高いために生産効率が低くなったりすることがなく好ましい。
【0029】
本発明の太陽電池用積層フィルムは、フィルムの熱可塑性ポリエステルの末端カルボキシル基濃度が、好ましくは20当量/トン以下、さらに好ましくは17当量/トン以下、特に好ましくは15当量/トン以下である。この範囲の末端カルボキシル基濃度であることで、フィルムの耐加水分解性が劣ることがなく、高温・多湿の条件下において長時間使用してもフィルムの機械的性質が低下することがない。
【0030】
[耐加水分解性]
本発明の太陽電池用積層フィルムは、温度85℃、湿度85%RHの環境における4000時間エージング前後での伸度保持率が40%以上である温度85℃、湿度85%RHの環境における4000時間のエージングは、概ね40年間の屋外暴露状態に相当する耐加水分解性を検査する加速試験であり、このエージング前後での伸度保持率が40%未満であると、耐加水分解性の不足により屋外での長期使用において劣化を引き起こし機械的性質が低下する可能性がある。
【0031】
このエージング前後での伸度保持率を40%以上とするためには、基材層にカルボジイミド化合物を含有させ、積層フィルムのポリエステルの極限粘度数および末端カルボキシル基濃度を所定の範囲とし、本発明に記載の製造条件にて製造すればよい。
【0032】
[接着性]
本発明の太陽電池用積層フィルムは、EVA(エチレンビニルアセテート)との接着強度が15〜20N/15mmの範囲で、さらに温度85℃、湿度85%RHの環境下で1000時間のエージングの後も10N/15mm以上の接着強度を維持していることが好ましい。この接着性は、カルボジイミド化合物を実質的に含有しない表層を3.0μm以上の厚みで設けることで達成できる。他方、表層の厚みが3.0μm未満であると、基材層から低分子量成分のブリードアウトすることになり、この1000時間エージング後の接着強度を10N/15mm以上に維持することが困難であり、太陽電池用積層フィルムとして不向きである。
【0033】
[添加剤]
本発明の太陽電池用積層フィルムには、表面を滑らせハンドリング性を良好にするために滑剤を配合してもよい。滑剤としては、有機物、無機物いずれを用いてもよく、無機物の滑剤としては、例えば酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素、アルミナの粒子を挙げることができる。これらの粒子は、板状、球状いずれの形状をとる粒子であってもよいが、滑剤の中には水分を吸着し易いものや配位し易いものがあり、滑剤により持ち込まれた水分がフィルムの分子量を低下させ、耐加水分解性に悪影響を与えるため、吸着水や配位水の少ない構造、組成のものが好ましく、好ましくは真球状シリカを用いる。分散性と滑り性の観点から、これらの粒子は、好ましくは平均粒径0.1〜5.0μm、さらに好ましくは0.2〜4.0μmのものを用いる。耐加水分解性の観点から添加量はなるべく少ない方が好ましく、好ましくは表層のみに添加し、表層の熱可塑性ポリエステル100重量部に対して0.1重量部以下の範囲とする。
【0034】
本発明の太陽電池用積層フィルムには、必要に応じてさらに性能を上げるために、従来公知の各種添加剤を含有してもよく、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤を添加することができる。酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール化合物を、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物を例示することができる。
【0035】
本発明の太陽電池用積層フィルムは、必要に応じて白色、黒色、青色などに着色してもよい。太陽電池保護膜のうち特に太陽電池裏面保護膜用に用いられる場合に、太陽光の表面反射を増大させ、太陽電池の電換効率を高める目的で白色に着色したものが好ましい。また、意匠性を重視する建築分野への適用では、建築物のデザインに合せ黒色や青色に着色したフィルムが好ましい。着色は例えば着色剤を含有することで行うことができる。
【0036】
添加剤としての滑剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐電防止剤、難燃剤、着色剤は、積層フィルムの少なくとも一層に配合してもよく、積層フィルムのうえに塗布層を設け、塗布層に配合してもよい。
【0037】
[太陽電池保護膜]
本発明の太陽電池用積層フィルムは、一枚で太陽電池保護膜として使用してもよく、他のフィルムとの複合体として用いてもよい。一枚で太陽電池保護膜として使用する場合には、本発明の太陽電池用積層フィルムのうえに太陽電池素子の封止樹脂層が設けられる。複合体として使用する場合には、例えば、絶縁特性を向上させる目的で別のポリエステルフィルムと貼り合せてもよく、さらに耐久性を向上させる目的でポリフッ化ビニルなどの高耐候性樹脂からなるフィルムと貼り合せてもよい。
【0038】
フィルムと封止樹脂や接着剤との接着性を向上させる目的で、本発明の太陽電池用積層フィルムに易接着性コーティングを施してもよい。用いられる接着剤にはエポキシ系やウレタン系の接着剤が多く用いられ、封止樹脂はほとんどがEVA(エチレンビニルアセテート)である。このため、易接着性コーティングの構成材としては、ポリエステルフィルムと接着剤、ポリエステルフィルムとEVAの双方に優れた接着性を示す材であることが好ましく、例えばポリエステル樹脂やアクリル樹脂を例示することができ、さらに架橋成分を含有することが好ましい。コーティングは一般的な既知のコーティング方法を用いることができる。好ましくは、延伸可能なポリエステルフィルムに、前述のコーティング層の構成成分を含む水性液を塗布した後、乾燥、延伸し、熱処理するインラインコーティング法で行う。このとき、フィルムの上に形成された塗膜の厚さは0.01〜1μmであることが好ましい。
【0039】
また、太陽電池保護膜として用いる際には、水蒸気バリア性を付与する目的で水蒸気バリア層を積層することが好ましい。この構成の太陽電池保護膜は、JIS Z0208−73に従い測定される水蒸気の透過率が5g/(m・24h)以下であることが好ましい。かかる水蒸気バリア層としては、水蒸気バリア性を有するフィルムや箔を用いることができる。フィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニリデンコートフィルム、ポリフッ化ビニリデンコートフィルム、酸化ケイ素蒸着フィルム、酸化アルミニウム蒸着フィルム、アルミニウム蒸着フィルムを例示することができ、箔としては、アルミニウム箔、銅箔を例示することができる。
【0040】
また、本発明の太陽電池用積層フィルムには、直接水蒸気バリア層をコートしてもよく、蒸着してもよい。これらの水蒸気バリア層は、本発明のポリエステルフィルムのEVA接着面の反対側に積層したり、また、さらにその外側に別の樹脂フィルムを積層して、複数のフィルムで挟みこむ構造としてもよい。
【0041】
[製造方法]
本発明の太陽電池用積層フィルムを製膜する原料として用いる熱可塑性ポリエステルの製造方法について説明する。ここでは、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルの製造方法を例に説明する。まず、テレフタル酸ジメチルに代表される芳香族ジカルボン酸エステルとエチレングリコールをエステル交換反応により反応させた後に重縮合反応を行う方法を採る。この製造過程において、発生するアルコールを除去させつつエステル交換反応を実施した後、リン酸化合物を添加して実質的にエステル交換反応を完了させ、次いで得られた反応生成物にアンチモン化合物、チタン化合物などの金属触媒を添加し、重縮合反応を行う。より高い耐加水分解性のポリエステルフィルムを得るために、熱可塑性ポリエステルの極限粘度数を高くし、末端カルボキシル基濃度を低くすることが重要であり、このため、ポリエステルには固相重合を施すことが好ましい。
【0042】
本発明の太陽電池用積層フィルムは、従来公知の製膜法に準拠して製造することができる。以下にその一例として、表層および基材層がともにポリエチレンテレフタレートの組成物で構成される場合について示す。なお、ポリマーの融点をTm、ガラス転移温度をTcと表記することがある。
【0043】
まず、ポリエステル原料およびカルボジイミド化合物など添加剤のマスターチップを表層と基材層の別々に準備し、所定の配合比にブレンドした後、必要に応じて乾燥する。続いて各々の原料を別々の押出機で280〜300℃の温度で溶融混合し、フィードブロックを用いた同時多層押出し法により、多層の未延伸シートを製造する。すなわち表層(A)を構成するポリマーの溶融物と基材層を構成するポリマーの溶融物とを、フィードブロックを用いて表層/基材層/表層となるように3層に積層し、スリットダイに展開して押出しを実施する。このとき、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。溶融混合する温度が280℃未満では樹脂の溶融が不充分で押出機への負荷が高くなり不適切である。他方、300℃を超えると樹脂の劣化が進み、結果としてフィルムの耐加水分解性が低下し好ましくない。
【0044】
次に、得られた未延伸積層シートを、少なくとも1軸方向、好ましくは二軸方向に延伸する。延伸は、逐次二軸延伸でもよく、同時二軸延伸でもよい。例えば逐次二軸延伸を説明すると、スリットダイより押出されたポリマーは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸積層シートとなる。この未延伸積層シートを、ロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)以上の温度、さらにはTg〜(Tg+70℃)とするのが好ましい。縦延伸後のフィルムは、続いて、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度から始める。そして(Tg+5)℃〜(Tg+70)℃まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。延伸倍率は、縦方向、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)ともに、好ましくは2.8〜4.5倍、さらに好ましくは3.0〜4.0倍である。2.8倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなるだけでなく、耐加水分解性が向上せず好ましくない。他方、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。
【0045】
横延伸後のフィルムは両端を把持したまま(Tm−15)〜(Tm−55)℃で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させると寸法安定性が良くなる。(Tm−15)℃より高い温度で熱処理するとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなって好ましくない。また、(Tm−55)℃より低い温度で熱処理すると熱収縮率が大きくなるだけでなく、フィルムがデラミネーションを起こしやすくなり、太陽電池用積層フィルムとして不向きである。
【0046】
さらに、(Tm−55)℃以下の温度における熱収縮量を調整する方法として、熱固定後フィルム温度を常温に戻す過程で把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させることができる(特開昭57−57628号公報)。弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは1.0〜4.0%、さらに好ましくは1.2〜3.5%の速度ダウンを実施してフィルムを弛緩(この値を「弛緩率」という)して、弛緩率をコントロールすることによって縦方向の熱収縮率を調整する。横方向の寸法安定性を高める方法としては、両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。測定および評価の方法を以下に示す。
【0048】
(1)フィルムの厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0049】
(2)極限粘度数(IV)
重量比が6:4のフェノール:トリクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃の温度にて測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量(g/100ml)、Kはハギンス定数である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示す。
【0050】
(3)層構成
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、平均厚みを求めた。
【0051】
(4)末端カルボキシル基濃度
試料10mgをHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール):重クロロホルム=1:3の混合溶媒0.5mlに溶解してイソプロピルアミンを数滴添加し、H−NMR法(50℃、600MHz)により定量した。
【0052】
(5)耐加水分解性
フィルムの縦方向に100mm長、横方向に10mm幅に切り出した短冊状の試料片を、温度85℃、湿度85%RHに設定した環境試験機内に4000時間放置した。その後試料片を取り出し、試料の縦方向の破断伸度を5回測定し、平均値を求めた。引張試験は東洋ボールドウィン社製(商品名「テンシロン」)を用いて行い、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minにて実施した。5点の平均値を、環境試験機内での4000時間放置前の破断伸度5点の平均値で割った値を破断伸度保持率[%]とし、下記基準にて耐加水分解性を評価した。なお、耐加水分解性は破断伸度保持率の高いものを良好と判断した。
破断伸度保持率[%]
=(処理時間4000時間後の破断伸度)/(処理前の破断伸度)×100
◎:破断伸度保持率が60%以上
○:破断伸度保持率が40%以上60%未満
×:破断伸度保持率が40%未満
【0053】
(6)接着強度(初期値)
フィルムを200mm×200mmのサイズにサンプリングし、太陽電池用ガラス板(AGC社製白板ガラス、200mm×200mm角、3mm厚)とEVAシート(サンビック製Ultra Pearl PV Standard Cure Type、170mm×170mm角、厚み600μm)とフィルムサンプルをこの順に重ねて、日清紡製小型真空ラミネーター(PVL0202S)を用いてラミネートして積層サンプルとした。続いてこの積層サンプルを温度150℃のオーブン内で30分間エージングした。その後、フィルム側から15mm幅でスリットを入れ、引張試験機を用いて未接着部のフィルムを挟んで、剥離角180°、引張速度100mm/minの速度で接着強度を測定した(単位はN/15mm)。下記の基準で評価した。
◎:接着強度が20N/15mm以上か、フィルム片が破断した
○:接着強度が15N/15mm以上、20N/15mm未満
×:接着強度が15N/15mm未満
【0054】
(7)接着強度(湿熱処理後)
上記(6)と同様の方法でサンプルを作成して、温度85℃、湿度85%RHの雰囲気にサンプルを1000時間保持した後、同様に180°剥離して接着強度を測定した(単位はN/15mm)。下記の基準で評価した。
◎:接着強度が15N/15mm以上か、フィルム片が破断した
○:接着強度が10N/15mm以上、15N/15mm未満
×:接着強度が10N/15mm未満
【0055】
(8)溶融押出性
押出性は以下のように評価した。
○:押出が容易である。
×:押出負荷が高く、フィルム作成に時間、コストがかかる。
【0056】
(参考例1)ポリエチレンテレフタレートの製造(PET−a)
エステル交換反応容器にテレフタル酸ジメチルを100重量部、エチレングリコールを60重量部、酢酸マグネシウム四水塩を0.06重量部仕込み、150℃に加熱して溶融し撹拌した。反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成するメタノールを反応容器外へ留出させた。メタノールの留出が終了したらフェニルホスホン酸を添加し、エステル交換反応を終了させた。その後反応物を重縮合装置に移行し、酸化アンチモンを添加した。ついで重合装置内の温度を235℃から290℃まで90分かけて昇温し、同時に装置内の圧力を大気圧から100Paまで90分かけて減圧した。重合装置内容物の撹拌トルクが所定の値に達したら装置内を窒素ガスで大気圧に戻して重合を終了した。重合装置下部のバルブを開いて重合装置内部を窒素ガスで加圧し、重合の完了したポリエチレンテレフタレートをストランド状にして水中に吐出した。ストランドはカッターによってチップ化した。このようにして固有粘度が0.60dl/g、末端カルボキシル基濃度が17当量/トンであるポリエチレンテレフタレートのポリマーを得た。これをPET−aと称する。
【0057】
(参考例2)ポリエチレンテレフタレートの製造(PET−b)
参考例1で得られたポリマー(PET−a)を150〜160℃で3時間予備乾燥した後、210℃、100トール、窒素ガス雰囲気下で7時間固相重合を行った。固相重合後の極限粘度は0.76dl/g、末端カルボキシル基濃度は10当量/トンであった。これをPET−bと称する。
【0058】
(参考例3)ポリエチレンテレフタレートの製造(PET−c)
参考例1で得られたポリマー(PET−a)を150〜160℃で3時間予備乾燥した後、210℃、100トール、窒素ガス雰囲気下で12時間固相重合を行った。固相重合後の極限粘度は0.90dl/g、末端カルボキシル基濃度は7当量/トンであった。これをPET−cと称する。
【0059】
(参考例4)ポリエチレンテレフタレートの製造(PET−d)
参考例2で得られたポリマー(PET−b)85重量部とライン・ケミー社製芳香族ポリカルボジイミド『Stabaxol P100』を15重量部とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPET−dと称する。
【0060】
(参考例5)ポリエチレンテレフタレートの製造(PET−e)
参考例2で得られたポリマー(PET−b)60重量部と堺化学株式会社製ルチル型酸化チタン粒子TCR−52(平均粒径0.2μm)を40重量部とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPET−eと称する。
【0061】
[実施例1〜3、実施例5]
表1に示した表層(A)、基材層(B)のポリエステル原料をそれぞれ別々の回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、別々の押出し機に供給し280℃で溶融押出し、三層フィードブロックを用いて合流させた後、その積層状態を保持したままスリットダイよりシート状に成形した。各層の厚みの比率は各押出機に供給する原料の量で調整し、(A)層/(B)層/(A)層を10%/80%/10%の比率とした。さらにこのシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを100℃にて長手方向(縦方向)に3.5倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.7倍延伸した。その後テンター内で220℃に加熱された雰囲気中で約10秒間熱固定を行い、横方向に4%の幅入れを行い、続いて両端を切り落して長手方向に2.5%の弛緩率で弛緩した後、室温まで冷やして、厚み50μmの積層フィルムを得た。
【0062】
【表1】

【0063】
[実施例4]
未延伸フィルムを得るところまでは実施例1と同様に実施した。その後、未延伸フィルムを100℃にて長手方向(縦方向)に2.9倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.1倍延伸した。その後テンター内で220℃に加熱された雰囲気中で約30秒間熱固定を行い、横方向に3%の幅入れを行い、続いて両端を切り落して長手方向に2.0%の弛緩率で弛緩した後、室温まで冷やして厚み188μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2のとおりであった。
【0064】
[比較例1]
基材層(B)の原料の配合比を変える以外は実施例1と同様に行い、厚み50μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2のとおりであった。カルボジイミドの添加量が少なく、耐加水分解性向上の効果が見られなかった。
【0065】
【表2】

【0066】
[比較例2]
基材層(B)の原料の配合比を変える以外は実施例1と同様に行い、厚み50μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2のとおりであった。カルボジイミドの添加量が多すぎたため、樹脂の溶融粘度が高くなり、押出に時間がかかった。
【0067】
[比較例3]
フィルムの厚みを25μmとする以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2のとおりであった。表層(A)の厚みが薄かったため、高温下で基材層(B)から低分子量成分がブリードアウトし、EVAとの接着強度を低下させたため、太陽電池用積層フィルムとしては不向きであった。
【0068】
[比較例4]
各層の厚み比率を(A)層/(B)層/(A)層=5%/90%/5%とする以外は実施例1と同様にして厚み50μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2のとおりであった。比較例3と同様に、表層(A)の厚みが薄かったため、高温下で基材層(B)から低分子量成分がブリードアウトし、EVAとの接着強度を低下させたため、太陽電池用積層フィルムとしては不向きであった。
【0069】
[比較例5]
各層の厚み比率を(A)層/(B)層/(A)層=30%/40%/30%とする以外は実施例1と同様にして厚み50μmの積層フィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2のとおりであった。フィルム中に占める基材層(B)の厚みが薄く、耐加水分解性が高くない表層(A)の厚みが厚かったことにより、フィルム全体としては耐加水分解性に劣り、太陽電池用積層フィルムとしては不向きであった。
【0070】
[比較例6]
基材層(B)のみの単層フィルムとし、延伸以降は実施例1と同様の条件で厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2のとおりであった。基材層(B)から低分子量成分がブリードアウトするのを防ぐ層がないため、高温下においてEVAとの接着強度が低下し、太陽電池用積層フィルムとしては不向きであった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の太陽電池用積層フィルムは、太陽電池の部材として有用であり、高温・多湿などの過酷な自然環境下で長時間使用しても機械的性質の低下や充填材等との接着性の低下が抑制されており、太陽電池裏面保護膜として、あるいは太陽電池裏面保護膜を構成するフィルムとして特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層およびその両面に設けられた表層からなる延伸された積層フィルムであり、表層は、カルボジイミド化合物を実質的に含有しない熱可塑性ポリエステルからなる厚み3.0μm以上の層であり、基材層は、カルボジイミド化合物を含有する熱可塑性ポリエステル組成物からなる層であり、基材層の熱可塑性ポリエステル組成物は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対してカルボジイミド化合物を0.3〜2.5重量部を含有し、温度85℃、湿度85%RHの環境における4000時間エージング前後での伸度保持率が40%以上であることを特徴とする太陽電池用積層フィルム。
【請求項2】
カルボジイミド化合物が、ビスカルボジイミドまたは芳香族ポリカルボジイミドである、請求項1記載の太陽電池用積層フィルム。

【公開番号】特開2011−222580(P2011−222580A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86951(P2010−86951)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】