説明

太陽電池用表面保護シート

【課題】防湿性が極めて高く、かつ環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物からなる防湿フィルムの真空ラミネーションにおいて封止性を向上させた太陽電池用表面保護シートを提供する。
【解決手段】(1)環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物であって、周波数1Hzで測定した150℃における溶融粘度が2000Pa・s以上、15000Pa・s未満である樹脂組成物からなり、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が1.0[g/m2・日]以下である防湿フィルム、及び(2)基材フィルムの片面に無機薄膜層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))の値が前記環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物からなる防湿フィルム(1)の値の10%以下である防湿フィルム、を有する太陽電池用表面保護シートであって、前記防湿フィルム(1)及び防湿フィルム(2)を接着剤を介して積層してなることを特徴とする太陽電池用表面保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用セルの表面透明保護部材として用いられる表面保護シートに関し、特に、防湿性と耐候性、封止適性を兼備する透明フィルムよりなる太陽電池用表面保護シート、特に真空ラミネーションなど加熱工程での発泡による光線透過率の低下を防止しかつ高い防湿性を得ることができる前面保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や環境汚染の防止等の面から、太陽光を直接電気エネルギーに変換する太陽電池が注目され、開発が進められている。太陽電池は受光面側より前面保護シートと裏面保護シートとの間にエチレン−酢酸ビニル共重合体やポリエチレン、ポリプロピレンフィルムなどの封止膜により太陽電池用セルを封止した構成とされている。
このような太陽電池は、通常、前面保護シート、封止材 、発電素子、封止材及び裏面保護シートをこの順で積層し、加熱溶融させることにより接着一体化することで製造される。太陽電池の前面保護シート及び/又は裏面保護シートである表面保護シートとしては、紫外線に対する耐久性に優れることが要求されるが、加えて、湿気ないし水の透過による内部の導線や電極の発錆を防止するために、防湿性に優れることが極めて重要な要件となる。このため、従来は、表面側透明保護部材としてガラス板が用いられている。しかし、ガラス板は耐光性、防湿性に優れる反面、重量が重く、また、衝撃に弱く割れ易いという欠点がある。この問題に対して、たとえば特許文献1では透明樹脂フィルムを用いることにより、重さ及び衝撃による破損の問題を解決し、また耐候性、防湿性が良好な樹脂フィルムを組み合わせることにより太陽電池の耐久性の向上に有効な太陽電池用前面保護シートが提案されている。
しかしながら、特許文献1記載の太陽電池用前面保護シートにおいて、接着剤を用いて耐候層と防湿層を張り合わせる場合、接着剤を厚くすることは生産性の観点から難しく、太陽電池受光面への落下物により防湿層が破損し防湿機能を劣下させてしまうことがあった。
【0003】
一方、接着剤を用いず、太陽電池用封止材に一般に用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体を耐候層と防湿層を張り合わせるフィルムとして封止材と組み合わせて、前面保護シートに使用し太陽電池への落下物による防湿機能の劣下を防ぐ方法が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、エチレン−酢酸ビニル共重合体を使用する場合、通常、これに耐熱性を付与することを主な目的として有機過酸化物などの架橋剤を用いた架橋が行われるため、架橋にともなう表面外観悪化や防湿フィルムの劣下が生じる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体には、長期間における使用に際して、エチレン−酢酸ビニル共重合体の加水分解等により発生する酢酸、架橋剤、架橋助剤などに起因して、前面保護シート内のフィルムや接着剤を劣下させ層内界面での剥離が発生する問題があった。
また、環状オレフィン系樹脂組成物を封止材として使用し封止材に防湿性を付与する提案(特許文献3)もなされており、耐候層と防湿層間の柔軟フィルムとして環状オレフィン系樹脂組成物を使用し環状オレフィン系樹脂組成物の防湿性と防湿フィルムとの組み合わせによる、より高い防湿性能の獲得が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3978911号公報
【特許文献2】特許第3978912号公報
【特許文献3】特開2009−79101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献3においては、各種素子を封止する際の封止性に関する記載や示唆はなく、特に、光発電素子を封止する際の最も一般的な温度領域である150℃付近での樹脂組成物の流動性や好適な溶融粘度などに関する記載は全くみられない。太陽電池封止材において、封止の際の溶融粘度は重要な特性の一つである。例えば、150℃における溶融粘度が高すぎると、封止工程において、光発電素子の細部にまで樹脂がまわりきらず、光発電素子を十分に封止できない恐れがある。より高温で封止したり、封止圧力を高めれば流動性が高まり、封止性の問題は解決するが、その反面、光発電素子やハンダ付けされた配線が高温で変質したり、封止する際の圧力で破壊されるなどの問題が発生することがある。一方、該溶融粘度が低すぎると、封止工程において、樹脂がモジュールの周辺に流れ出てしまい、所望の厚みが得られず、歩留まりが低下するなどの問題が発生しやすくなる。
【0006】
また、本発明の太陽電池用表面保護シートにおいては、シート暴露面側からの水蒸気の透過に対しては高い防湿性を発揮するが、表面保護シートの防湿フィルム基材の側面からの水蒸気の進入に対しては防湿性を発揮することができない。通常、防湿フィルムの基材の厚みは12〜50μmであり表面保護シートの面積と比較すれば僅かであるが、高防湿性が求められる用途においては、この端面からの水蒸気の進入は重要な課題となる。従って防湿性を有する環状ポリオレフィン系樹脂組成物のフィルムが真空ラミネーション工程において下部の太陽電池素子のみならず、表面保護シートの無機蒸着層の基材フィルムの側面へも十分回り込み、端面からの水蒸気の侵入を防止できる封止適性を有することが,高い防湿性を獲得する太陽電池用表面保護シートとして望ましい。
【0007】
すなわち、本発明は、防湿性が極めて高く、かつ環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物からなる防湿フィルムの真空ラミネーションにおいて封止性を向上させた太陽電池用表面保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、無機薄膜層を有する防湿性フィルムと、環状オレフィン系重合体を含む特定の粘度を示す樹脂組成物からなる防湿フィルムとを組み合わせることにより、高い防湿性を獲得し、かつ太陽電池モジュールの形成が比較的容易で、封止の際の流動性、透明性に優れた太陽電池用表面保護シートを提供することにある。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物であって、周波数1Hzで測定した150℃における溶融粘度が2000Pa・s以上、15000Pa・s未満である樹脂組成物からなり、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が1.0[g/m2・日]以下である防湿フィルム、及び(2)基材フィルムの片面に無機薄膜層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))の値が前記環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物からなる防湿フィルム(1)の値の10%以下である防湿フィルム、を有する太陽電池用表面保護シートであって、前記防湿フィルム(1)及び防湿フィルム(2)を接着剤を介して積層してなることを特徴とする太陽電池用表面保護シートに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物からなる防湿フィルムと無機薄膜層が基材フィルムに積層された防湿フィルムとを組み合わせることにより、防湿性が極めて高く、かつ環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物からなる防湿フィルムのラミネーション温度近傍での溶融粘度を最適化することにより真空ラミネーションにおいて封止性を向上させた太陽電池用表面保護シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明者は、(1)環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物であって、周波数1Hzで測定した150℃における溶融粘度が2000Pa・s以上、15000Pa・s未満である樹脂組成物からなる防湿フィルム(以下、「環状オレフィン防湿フィルム」ということがある)を、(2)基材フィルムの片面に無機薄膜層を有し、その水蒸気透過率の値が前記環状オレフィン防湿フィルムの値の10%以下である高防湿性の防湿フィルムとドライラミネート加工により貼り合わせた場合、後述する防湿性の測定環境である40℃、90%RHにおいて、環状オレフィン防湿フィルムが外層である場合、環状オレフィン防湿フィルムにより積層体への水蒸気の進入が抑制され、内面側の無機薄膜層を有する防湿フィルム(2)においては測定環境と比べ低湿度状態が形成される。この低湿度状態は無機薄膜層を有する防湿フィルム(2)への水分吸着を著しく減少させ、その結果無機薄膜層を有する高防湿フィルム(2)への水分の透過がより減少し、表面保護シートの防湿性が上昇する。
【0012】
以上のように、本発明によれば、本発明の太陽電池用表面保護シートは、高防湿性の防湿フィルム同士の貼り合わせにも関わらず、太陽電池用表面保護シート全体の防湿性が著しく向上し、かつ環状オレフィン防湿フィルムの使用により真空ラミネート時の封止適性に優れた太陽電池用表面保護シートが実現可能であることを見出した。
【0013】
<太陽電池用表面保護シート>
本発明の太陽電池用表面保護シートは、(1)環状オレフィン系防湿フィルム、及び(2)基材フィルムの片面に無機薄膜層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))の値が前記防湿フィルムの値の10%以下である防湿フィルム、を有するものである。
以下、各構成層について説明する。
【0014】
[(1)環状オレフィン防湿フィルム]
本発明の表面保護シートにおける環状オレフィン防湿フィルムは、環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物であって、周波数1Hzで測定した150℃における溶融粘度が2000Pa・s以上、15000Pa・s未満である樹脂組成物からなり、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が1.0[g/m2・日]以下である、防湿性及び透明性を有するフィルムである。該環状オレフィン防湿フィルムは、環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有するフィルムである。
この環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物からなる層を用いることにより、湿気、水の透過による太陽電池の内面側を保護することができ、また、高い透明性を確保することにより発電効率の向上が達成できる。
【0015】
(環状オレフィン系重合体)
本発明で用いる環状オレフィン系重合体としては、主として以下の(A)〜(C)の3種の構成を挙げることが出来る。
(A):直鎖状オレフィン成分と下記一般式(1)で表される環状オレフィン成分とからなる環状オレフィン系ランダム共重合体
(B):下記一般式(1)で表される環状オレフィンから選ばれる1種以上の環状オレフィン成分からなる開環重合体もしくはその水素化物
(C):上記(A)と(B)との混合物
【0016】
【化1】

【0017】
(上記一般式(1)中、それぞれR1〜R12は水素原子又は炭化水素基であって、同一であっても異なっていても良い。また、R5とR10、又はR11とR12とは一体化して2価の炭化水素基を形成しても良い。また、R3又はR10と、R11又はR12とは互いに環を形成しても良い。nは0又は正の整数であって、nが2以上のとき、R5〜R8の各々が複数ある場合には、これらはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。)
【0018】
ここで、上記一般式(1)で表される環状オレフィンの例としては、下記式(2)のビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)及びその誘導体、例えば、ノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、6−n−ブチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン等を挙げることができる。
【0019】
【化2】

【0020】
また、上記一般式(1)で表される環状オレフィンの例として下記式(3)のテトラシクロ−3−ドデセン及びその誘導体、例えば、8−メチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−ヘキシルテトラシクロ−3−ドデセン、10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン等を挙げることができる。
【0021】
【化3】

【0022】
前記構成(A)の環状オレフィン系ランダム共重合体は、直鎖状オレフィン成分と上記一般式(1)で表される環状オレフィン成分との共重合体であり、流動性、透明性、及び水蒸気バリア性などの点で、本発明において好適に用いられる。前記環状オレフィン成分に共重合させる直鎖状オレフィン成分としては、炭素数2〜20のα−オレフィンが好適に用いられ、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1などが挙げられる。本発明においては、工業的な入手しやすさや諸特性、経済性の観点から直鎖状オレフィン成分としては、エチレンが好適に用いられ、環状オレフィン成分としては、ノルボルネンあるいは、テトラシクロドデセンが好適に用いられる。共重合する環状オレフィン成分と直鎖状オレフィン成分はそれぞれ1種を単独で、又は2種以上を組み合わせても構わない。
【0023】
前記環状オレフィン系ランダム共重合体における環状オレフィン成分の含有量(モル%)は特に限定されるものではないが、エチレン―ノルボルネンランダム共重合体を例に挙げると、ノルボルネン成分は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上であり、かつ、好ましくは60モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。該範囲にあれば、太陽電池封止材として適用する際の溶融粘度や力学特性、経済性などに優れるため好ましい。
【0024】
本発明に用いる環状オレフィン系重合体としては、前記構成(B)にかかる一般式(1)で表される環状オレフィンから選ばれる1種以上の環状オレフィン成分からなる開環重合体もしくはその水素化物を用いることも出来る。環状オレフィン開環重合体は、環内の二重結合に水添することで、熱に対してより安定になり、押出機によるフィルム化などの加熱成形が容易になる。また、側鎖に嵩高い官能基(例えばシクロヘキサン)を付与することで、非晶性となり、透明性などの物性を示すようになる。
【0025】
さらに、本発明に用いる環状オレフィン系重合体としては、前記(C)にかかる混合物、すなわち(A)前記環状オレフィン系ランダム共重合体と、前記(B)一般式(1)で表される環状オレフィンから選ばれる1種以上の環状オレフィン成分からなる開環重合体もしくはその水素化物を混合した混合物を用いることが出来る。この場合、前記環状オレフィン系ランダム共重合体と前記環状オレフィン開環重合体又はその水素化物との混合質量比率は特に限定されるものではない。
【0026】
環状オレフィン系重合体の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭61−120816号公報、特開昭61−115912号公報、特開昭61−115916号公報、特開昭61−271308号公報、特開昭61−272216号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報等に記載されている公知の方法に準じて製造することができる。
【0027】
(環状オレフィン系重合体を含有する樹脂組成物)
次に、本発明においては、前記環状オレフィン系重合体を含有する樹脂組成物の150℃における溶融粘度は、2000Pa・s以上、15000Pa・s未満であることが重要である。ここで、溶融粘度は次の方法により測定した値である。すなわち、レオメーターを用いて、周波数:1Hz、歪:0.5%、降温速度:3℃/分の条件で、φ18mmパラレルプレート上にのせた試料(厚み0.3mm)の溶融粘度(η*)の温度分散を230℃から120℃まで測定し、得られたデータから150℃における溶融粘度を求めることができる。
【0028】
環状オレフィン系重合体を含有する樹脂組成物の150℃における溶融粘度が上記範囲内にあれば、通常用いられる封止圧力、すなわち、大気圧(約0.1MPa)程度の圧力で光発電素子の細部にまで樹脂が回り込み十分封止でき、また、封止工程において、樹脂がモジュールの周辺に流れ出てしまうなどの問題が発生し難く、良好な太陽電池モジュールを得ることができるため好ましい。
【0029】
上記観点から、本発明に用いられる環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物の150℃における溶融粘度は、好ましくは3000Pa・s以上、さらに好ましくは4000Pa・s以上であって、かつ、好ましくは14000Pa・s未満、さらに好ましくは13000Pa・s未満である。
【0030】
上記溶融粘度は、用いる樹脂組成物の分子量や分岐構造などに強く影響される。すなわち、分子量を例に挙げると、分子量が高いものほど該溶融粘度が高くなり、逆に、分子量が低いものほど該溶融粘度が低くなる傾向にある。樹脂組成物の樹脂としては前記溶融粘度範囲内の樹脂を使用すればよく、単独でも2種以上組み合わせて使用することもできる。しかしながら、工業的には環状オレフィン系重合体の市販グレード数は限られており、必ずしも所望の分子量、言い換えれば、所望の溶融粘度を有するグレードが入手できるわけではない。そこで、本発明においては、溶融粘度の異なる2種以上の環状オレフィン系重合体を混合して、前記溶融粘度の範囲内として用いることができる。例えば、実施例で示すように、150℃における溶融粘度が本発明で規定する範囲外の環状オレフィン系重合体を混合することにより、所望の溶融粘度になるように調整したものも使用できる。具体的には、150℃における溶融粘度が、15000Pa・s以上の環状オレフィン系重合体に溶融粘度がより低い環状オレフィン系重合体を混合して、本発明で規定する範囲内の樹脂組成物を得ることができる。150℃における溶融粘度が17000Pa・sである環状オレフィン系重合体と、150℃における溶融粘度が100Pa・s以下である環状オレフィン系重合体を用いる場合であれば、前者の樹脂組成物における質量百分率が99〜55質量%であることが好ましく、95〜60質量%であることがより好ましい。
【0031】
また、環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物には、必要に応じて、各種の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、光拡散剤、造核剤、顔料、難燃剤、変色防止剤などが挙げられる。本発明では、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることが好ましい。また、本発明においては、樹脂組成物に架橋剤や架橋助剤を添加する必要はないが、添加することを排除するものではなく、例えば、高度の耐熱性を要求される場合は、架橋剤及び/又は架橋助剤を配合しても良い。
【0032】
シランカップリング剤は、封止材の保護材(ガラス、樹脂製のフロントシート、バックシートなど)や光発電素子等に対する接着性を向上させるのに有用であり、その例としては、ビニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基のような不飽和基、アミノ基、エポキシ基など共に、アルコキシ基のような加水分解可能な基を有する化合物をあげることができる。シランカップリング剤の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを例示することができる。本発明においては、接着性が良好であり、黄変などの変色が少ないことなどからγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく用いられる。該シランカップリング剤の添加量は、樹脂組成物100質量%に対し、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上であり、かつ、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下添加するのが良い。また、シランカップリング剤と同様に、有機チタネート化合物などのカップリング剤も有効に活用できる。
【0033】
酸化防止剤としては、種々の市販品が適用でき、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子フェノール系、硫黄系、ホスファイト系など各種タイプのものを挙げることができる。モノフェノール系としては、例えば、2,6−ジ‐tert‐ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどを挙げることができる。ビスフェノール系としては、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’ −チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[{1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,9,10−テトラオキサスピロ]5,5−ウンデカンなどを挙げることができる。
【0034】
高分子フェノール系としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ビドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキスフェニル)プロピオネート}メタン、ビス{(3,3’−ビス−4’−ヒドロキシ−3’tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グルコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジーtert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トリフェノール(ビタミンE)などを挙げることができる。
【0035】
硫黄系としては、ジラウロイルチオジプロピネート、ジリミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオプロピオネートなどを挙げることができる。
【0036】
ホスファイト系としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(モノ及び/又はジ)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどを挙げることができる。本発明においては、酸化防止剤の効果、熱安定性、経済性等からフェノール系及びホスファイト系の酸化防止剤が好ましく用いられ、両者を組み合わせて、用いることがさらに好ましい。該酸化防止剤の添加量は、樹脂組成物100質量%に対し、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上であり、かつ、通常1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下添加することが良い。
【0037】
紫外線吸収剤としては、種々の市販品が適用でき、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
【0038】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。またトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどを挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどを挙げることができる。該紫外線吸収剤の添加量は、樹脂組成物の100質量%に対し、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上であり、かつ通常2.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下添加することが良い。
【0039】
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定化剤は、紫外線吸収剤のようには紫外線を吸収しないが、紫外線吸収剤と併用することによって、著しい相乗効果を示す。ヒンダードアミン系以外にも光安定化剤として機能するものはあるが、着色している場合が多く太陽電池用保護シートには好ましくない。
【0040】
ヒンダードアミン系光安定化剤としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパレート、2−(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などを挙げることができる。該ヒンダードアミン系光安定化剤の添加量は、樹脂組成物100質量%に対し、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上であり、かつ、通常0.5質量%以下、好ましくは0.3質量%以下添加するのが良い。
【0041】
(環状オレフィン防湿フィルム)
環状オレフィン防湿フィルムの水蒸気透過率は、例えば結晶シリコンを用いた光発電素子を用いた太陽電池モジュールの場合のように、光発電素子が水分によって劣化しない発電素子を用いたものにおいては、あまり重視されないこともあるが、たとえばCIGS系光発電素子や有機系発電素子のように、発電効率や耐久性などが水分に影響されやすい光発電素子を用いた太陽電池モジュールの場合は、例えば40℃、湿度90%における水蒸気透過率が、1g/(m2・日)以下であることが好ましく、0.6g/(m2・日)以下であることがさらに好ましい。ここで、現在最もよく用いられているEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)では25〜35g/(m2・日)程度、エチレン−α−オレフィン共重合体では、3〜5g/(m2・日)程度である。
【0042】
環状オレフィン防湿フィルムの厚みとしては、高い防湿性を得る観点から、好ましくは12〜700μm、より好ましくは、25〜500μmである。また、本発明において、環状オレフィン防湿フィルムとしては、可視光透過率が、85%以上、好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上であって、入射する太陽光を透過する性質を有することが望ましいものである。
【0043】
[(2)無機薄膜層を有する防湿フィルム]
本発明の表面保護シートは、基材フィルムの片面に無機薄膜層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))の値が前記(1)環状オレフィン防湿フィルムの値の10%以下であるものである防湿フィルム(以下、「防湿フィルム(2)」ということがある)を有する。
上記防湿フィルム(2)においては、無機薄膜層により、湿気、水の透過から太陽電池の内面側を保護することができ、また、高い透明性を確保することにより発電効率の向上を達成できる。
【0044】
防湿フィルム(2)において上記無機薄膜層を有する基材としては、透明熱可塑性高分子フィルムが好ましく、その材料としては、通常の包装材料に使用しうる樹脂であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体などのポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリレート樹脂、生分解性樹脂などが挙げられる。これらの中では、フィルム物性、コストなどの点から、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンが好ましい。中でも、フィルム物性の点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
【0045】
また、上記基材は、公知の添加剤、例えば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有することができる。
上記基材としての熱可塑性高分子フィルムは、上記の原料を用いて成形してなるものであるが、基材として用いる際は、未延伸であってもよいし延伸したものであってもよい。また、他のプラスチック基材と積層されていてもよい。
かかる基材は、従来公知の方法により製造することができ、例えば、原料樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、多層ダイを用いることにより、1種の樹脂からなる単層フィルム、1種の樹脂からなる多層フィルム、多種の樹脂からなる多層フィルム等を製造することができる。
【0046】
この未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、フィルムの流れ(縦軸)方向又はフィルムの流れ方向とそれに直角な(横軸)方向に延伸することにより、少なくとも一軸方向に延伸したフィルムを製造することができる。延伸倍率は任意に設定できるが、150℃熱収縮率が、0.01〜5%、更には0.01〜2%であることが好ましい。中でもフィルム物性の点から、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムや、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレートと他のプラスチックの共押出二軸延伸フィルムが好ましい。
【0047】
なお、上記基材には、無機薄膜との密着性向上のため、アンカーコート剤を塗布することし、アンカーコート層を設けることが好ましい。アンカーコート剤としては、溶剤性又は水性のポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル変性樹脂、ビニルアルコール樹脂、ビニルブチラール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ニトロセルロース樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、メチレン基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコーン樹脂及びアルキルチタネート等を単独、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。また、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、安定剤、潤滑剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤等を含有したり、それらを上記樹脂と共重合させたものを使用することができる。
【0048】
アンカーコート層の形成方法としては、公知のコーティング方法が適宜採択される。例えば、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクタコーター、スプレイあるいは刷毛を用いたコーティング方法等の方法がいずれも使用できる。また、基材を樹脂液に浸漬して行ってもよい。塗布後は、80〜200℃程度の温度での熱風乾燥、熱ロール乾燥などの加熱乾燥や、赤外線乾燥などの公知の乾燥方法を用いて溶媒を蒸発させることができる。また、耐水性、耐久性を高めるために、電子線照射による架橋処理を行う事もできる。また、アンカーコート層の形成は、基材の製造ラインの途中で行う方法(インライン)でも、基材製造後に行う(オフライン)方法でも良い。
【0049】
防湿フィルムとしては、該基材にアルミニウム等の金属のコーティング膜を形成したものも使用できるが、太陽電池に適用した場合、電流がリークする等の恐れがない点から、シリカ、アルミナ等の無機酸化物のコーティング膜が好ましく用いられる。
上記無機薄膜層の形成方法としては、蒸着法、コーティング法などの方法がいずれも使用できるが、ガスバリア性の高い均一な薄膜が得られるという点で蒸着法が好ましい。この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、あるいは化学気相蒸着(CVD)などの方法が含まれる。物理気相蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどが挙げられ、化学気相蒸着法としては、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。
【0050】
無機薄膜層を構成する無機物質としては、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、水素化炭素等、あるいはこれらの酸化物、炭化物、窒化物またはそれらの混合物が挙げられるが、好ましくは酸化珪素、酸化アルミニウム、水素化炭素を主体としたダイアモンドライクカーボンである。特に、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウムは、高いガスバリア性が安定に維持できる点で好ましい。
【0051】
無機薄膜層の厚さは、高い防湿性能の発現と透明性の点から、40〜1000nmであることが好ましく、40〜800nmがより好ましく、40〜600nmが更に好ましい。また、上記基材フィルムの厚さは、一般に5〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から8〜50μmが好ましく、12〜25μmが更に好ましい。従って、上記防湿フィルムの厚さは、一般に6〜100μm程度であり、生産性や取り扱いやすさの点から9〜50μmが好ましく、12〜25μmが更に好ましい。
【0052】
また同時に、表面保護シートとして高い水蒸気透過率を得るためには、防湿フィルム(2)として、環状オレフィン防湿フィルムの10倍以上の防湿性能、すなわち、環状オレフィン防湿フィルムの水蒸気透過率の値の10%以下の値の水蒸気透過率を有する高防湿フィルムの使用が望ましく、前記環状オレフィン防湿フィルムの水蒸気透過率(WTR(A))に対する防湿フィルムの水蒸気透過率(WTR(B))の比が[(WTR(B)/WTR(A))×100](%)で10%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましく3%以下である。上記比率を10%以下とすることで、得られる表面保護シートは、高い防湿性を示す
なお、上記環状オレフィン防湿フィルム及び防湿フィルム(2)の各々の水蒸気透過率の調整は、環状オレフィン防湿フィルムについては、その環状オレフィン含有量とシート厚さ等により、また、防湿フィルムについては、無機薄膜層の厚さ、無機酸化物の酸化数等を適宜調整することにより行うことができる。
【0053】
[表面保護シート]
本発明の表面保護シートは、前記(1)環状オレフィン防湿フィルム及び前記防湿フィルム(2)を有する。
本発明の表面保護シートは、その40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(L))が、[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]の値より低い値であることが好ましい。
接着剤を用いて環状オレフィン防湿フィルム及び防湿フィルム(2)を積層した積層体において、使用する接着剤に防湿フィルムの防湿性を低下させている要因である無機薄膜表面内の欠陥を補強するなどの防湿性を向上させる効果がない場合、積層体の防湿性は各々の防湿フィルム又は防湿フィルムの防湿性への寄与から直列的に導き出されると考えられる。すなわち、得られる表面保護シートの40℃、90%RHにおける理論水蒸気透過率Wは、1/W=1/WTR(A)+1/WTR(B) と表され、W=[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]として理論的に求めることができる。
【0054】
本発明の表面保護シートは、その水蒸気透過率(WTR(L))が、理論値である上記W=[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]の値より低い値とすることができ、極めて防湿性に優れた表面保護シートである。このことは、環状オレフィン防湿フィルムと高防湿フィルム(2)の組み合わせによる本発明の表面保護シートが優れた防湿性向上効果を有することを意味する。本発明によれば、高価でかつ加工プロセスにおいて防湿性を損ないやすい高防湿性のフィルムを複数枚使用することなく、比較的安価で取り扱いの容易な低防湿性のフィルムと組み合わせることにより大きな防湿性向上効果を得ることが可能となる。
上記観点から、表面保護シートの水蒸気透過率(WTR(L))は、上記理論値Wの値の80%以下であることがより好ましい。具体的には、たとえば,前記環状オレフィン防湿フィルムの水蒸気透過率WTR(A)が0.5[g/m2・日]、前記防湿フィルム(2)の水蒸気透過率WTR(B)が0.015[g/m2・日]であれば,40℃、90%RHにおける表面保護シートの水蒸気透過率(WTR(L))は、好ましくは0.012[g/m2・日]以下、より好ましくは0.011[g/m2・日]以下である。
【0055】
本発明の表面保護シートにおいては、前記環状オレフィン防湿フィルムに、防湿フィルム(2)を積層するが、その際、防湿性、無機薄膜層と基材の密着性の点から、前記環状オレフィン防湿フィルムと、防湿フィルム(2)の無機薄膜面とを合わせて接着剤を用いて積層することが好ましい。また、前記環状オレフィン防湿フィルムの防湿フィルム(2)積層面の反対側の面には耐候性フィルムを貼り合わせ、これを暴露面することが長期の防湿性能の維持の観点から好ましい。
【0056】
防湿フィルム(2)の基材側を環状オレフィン防湿フィルムと貼り合せる場合、水蒸気は防湿フィルムの基材側より浸透するため基材強度が加水分解により低下し、それにより無機薄膜層の基材への密着性が損なわれ防湿性が著しく低下することがある。
また防湿フィルム(2)を暴露面である耐候性フィルムと貼り合わせる場合、表面保護シートへの落下物などにより蒸着層が破損し防湿性が低下する恐れがある。
本発明の太陽電池用表面保護シートにおいては、上記環状オレフィン防湿フィルムと防湿フィルム(2)は、層間強度を確保するとの観点から、接着剤を用いて貼り合わせることが好ましく、上記環状オレフィン防湿フィルムと防湿フィルム(2)の間に接着剤層を有することが好ましい。
【0057】
使用できる接着剤としては、上記観点から、ポリウレタン系接着剤が好ましく用いられ、接着剤の主剤として具体的には、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオールあるいはポリエステルポリオールを含む組成物などが挙げられるが、熱安定性、湿度安定性などの観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリウレタンポリオールのうち少なくとも1つを含むものがより好ましい。
【0058】
本発明における太陽電池用表面保護シートは、前記環状オレフィン防湿フィルム側に耐加水分解性や耐候性に優れた耐候性フィルムを、防湿フィルム(2)側に封止材との密着性や耐電圧などを確保する目的で背面フィルムなどを備えることが好ましく、暴露側から、耐候性フィルム、環状オレフィン防湿フィルム、防湿フィルム(2)、必要に応じ背面フィルムの順に積層することが好ましい。また、本発明においては、太陽電池用表面保護シートの層間強度を確保する観点から、耐候性フィルム、環状オレフィン防湿フィルム、防湿フィルム及び背面フィルムは、それぞれ前記接着剤を介して積層されたものであることが好ましい。
表面保護シートの厚みは、防湿性の確保,耐衝撃特性の確保と製造工程における取り扱い易さから、300〜1000μmであることが好ましく、400〜800μmがより好ましく、500〜700μmが更に好ましい。
【0059】
[耐候性フィルム]
本発明の太陽電池用表面保護シートは、更に無機薄膜層の保護のために耐加水分解性や耐候性を備え、長期の耐久性を付与するために、好ましくは、環状オレフィン防湿フィルムに耐候性フィルムが積層されたものであることが好ましい。
耐候性フィルムは、耐候性を有するものであれば限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3−フッ化塩化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィルム、或いは、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂に紫外線吸収剤を練り込んだ樹脂組成物を成膜したものが好ましく用いられる。
【0060】
長期耐久性の観点からは、上記樹脂としては、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体(ETFE)、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体(FEP)がより好ましく用いられる。
耐候性フィルムとしては、真空ラミネーション時や高温高湿時の温度・湿度変化においてもその特性変化が小さいことが好ましいことから、例えば、ポリエチレンナフタレートなどの低収縮性耐候基材の使用や、収縮率が大きいポリエチレンテレフタレートフィルムやフッ素系フィルムであっても、事前の熱処理による低収縮率化等が行われたフィルムの使用が好ましい。
【0061】
長期耐候性とフィルム収縮率のいずれも考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂に紫外線吸収剤を塗布及び練り込んだ樹脂組成物を成膜したものが好ましく用いられる。
また、太陽電池用表面保護シートへの使用を考えると可撓性に富み、耐熱性、防湿性、紫外線耐久性に優れる性能を有する耐候性フィルムであることが望ましく、フッ素系フィルムや前記の紫外線吸収剤を塗布及び練り込んだ耐加水分解性ポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0062】
前記耐候性フィルムの厚さは、一般に20〜200μm程度であり、フィルムの取り扱いやすさとコストの点から20〜100μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。
【0063】
[背面フィルム]
本発明の太陽電池用表面保護シートは、好ましくは、前記防湿フィルム(2)に、好ましくは接着剤を介して貼合される背面フィルムを有することが好ましい。
太陽電池モジュールは発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで、その使用温度が85〜90℃程度まで昇温する為、背面フィルムの融点が使用温度以下であると背面フィルムは軟化し動作中に本来の太陽電池素子を保護する機能が失われる。従って背面フィルムとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、酪酢酸セルロース(CAB)などの樹脂に紫外線吸収剤や着色剤を練り込んだ樹脂組成物を成膜したものが好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
前記背面フィルムは、太陽電池用表面保護シートへの使用を考えると、可撓性に富み、紫外線、加湿耐久性に優れることが望ましく、主にポリプロピレン(PP)樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂のいずれか1つ又は複数の樹脂からなるものが好ましく、これらの樹脂を50質量%以上含有するものであることが好ましい。
【0065】
なお、上記紫外線吸収剤としては、前述の耐候性フィルムに含有される紫外線吸収剤と同様のものが使用できる。また、着色剤としては、酸化チタン、炭酸カルシウムなどが使用できる。上記樹脂は前記列挙した樹脂の1種を単独で用いることもできるが2種以上組合せて使用することもできる。
背面フィルムの厚さは、一般に25〜300μm程度であり、フィルムの取り扱いやすさとコストの点から好ましくは50〜300μm、より好ましくは50〜250μmである。
【0066】
<太陽電池モジュール、太陽電池の製造方法>
本発明の太陽電池表面保護シートは、真空ラミネーションなど加熱工程での発泡による光線透過率の低下を防止しかつ高い防湿性を得ることができる点から、太陽電池前面保護シートとして使用することが好ましい。
本発明の表面保護シートを用いて太陽電池モジュール及び/又は太陽電池を製造するには、公知の方法により作製すれば良い。
【0067】
本発明の表面保護シートを使用し、太陽電池素子を封止材とともに固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができ、好ましくは、本発明の表面保護シートである前面保護シートと、封止材と、太陽電池素子と、公知の裏面保護シートとを用いて作製された太陽電池モジュールが挙げられる。具体的には、上部保護材(本発明の表面保護シート)/封止材(封止樹脂層)/太陽電池素子/封止材(封止樹脂層)/下部保護材の構成のもの、下部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部保護材(本発明の表面保護シート)を形成させるような構成のもの、上部保護材(本発明の表面保護シート)の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。
【0068】
本発明の表面保護シートを用いて作製された太陽電池モジュールを構成する各部材については、特に限定されるものではないが、封止材としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体を挙げることができる。下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単層もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレスなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの単層もしくは多層の保護材を挙げることができる。本発明の表面保護シートである前面保護シートおよび/又は下部の保護材の表面には、封止材や他の部材との接着性を向上させるためにプライマー処理やコロナ処理など公知の表面処理を施すことができる。
【0069】
本発明の表面保護シートを用いて作製された太陽電池モジュールを既述した本発明の表面保護シートである前面保護シート/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のような構成のものを例として説明する。太陽光受光側から順に、本発明の表面保護シートである前面保護シート、封止樹脂層、太陽電池素子、封止樹脂層、バックシートが積層されてなり、さらに、バックシートの下面にジャンクションボックス(太陽電池素子から発電した電気を外部へ取り出すための配線を接続する端子ボックス)が接着されてなる。太陽電池素子は、発電電流を外部へ電導するために配線により連結されている。配線は、バックシートに設けられた貫通孔を通じて外部へ取り出され、ジャンクションボックスに接続されている。
【0070】
太陽電池モジュールの製造方法としては、公知の製造方法が適用でき、特に限定されるものではないが、一般的には、本発明の表面保護シートである前面保護シート、封止樹脂層、太陽電池素子、封止樹脂層、下部保護材の順に積層する工程と、それらを真空吸引し加熱圧着する工程を有する。また、バッチ式の製造設備やロール・ツー・ロール式の製造設備なども適用することができる。
【0071】
本発明の表面保護シートを用いて作製された太陽電池モジュールは、適用される太陽電池のタイプとモジュール形状により、モバイル機器に代表される小型太陽電池、屋根や屋上に設置される大型太陽電池など屋内、屋外に関わらず各種用途に適用することができる。本発明の表面保護シートは、化合物系発電素子太陽電池モジュール又はフレキシブル太陽電池モジュールの表面保護部材に好適に用いられる。
【0072】
本発明の太陽電池モジュール及び/又は太陽電池は、この太陽電池用表面保護シート、封止材、発電素子、封止材、裏面保護シートを、常法に従って、真空ラミネーターで、温度が好ましくは130〜180℃、より好ましくは130〜150℃、脱気時間2〜15分、プレス圧力0.5〜1atm 、プレス時間が好ましくは8〜45分、より好ましくは10〜40分で加熱加圧圧着することにより容易に製造することができる。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例及び比較例により本発明は制限を受けるものではない。なお、種々の物性の測定および評価は次のようにして行った。
【0074】
(物性測定)
(1) 無機薄膜層を有する防湿フィルム、環状オレフィンからなる防湿フィルム及び表面保護シートの防湿性能
無機薄膜層を有する防湿フィルム、環状オレフィンからなる防湿フィルムについては、防湿フィルム作製後、一週間40℃保管後の時点で、また、表面保護シートについては、ドライラミネートによる貼合と養生により得られた各表面保護シートをJIS Z 0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に順じ、次の手法で評価した。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の防湿フィルム及び表面保護シートをそれぞれ2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、72時間以上の間隔でおよそ200日目まで質量測定し、4日目以降の経過時間と袋重量との回帰直線の傾きから水蒸気透過率(g/m2・日)を算出した。
【0075】
(2)封止時の流動性(溶融粘度)
レオメーター(Rheology社製、型式:レオメーターMR−300T)を用いて、周波数:1Hz、歪:0.5%、降温速度:3℃/分の条件で、φ18mmパラレルプ
レート上にのせた環状オレフィンシート試料(厚み0.3mm)の溶融粘度(η*)の温度分散を230℃から120℃まで測定し、得られたデータから150℃における溶融粘度を求めた。
【0076】
(3)封止適性
厚み3mmの白板ガラス(サイズ:150mm×150mm)2枚の間に表面保護シートを配置し、これを真空ラミネーター((株)エヌ・ピー・シー社製、商品名:LM30×30)を用いて、150℃、30分、圧力0.1MPaの条件で積層プレスした試料を作製し、その外観を観察し、以下の評価基準に従って評価した。
(○)表面保護シート中の環状オレフィンシートを構成する樹脂組成物が防湿フィルムの周辺に十分回り込み、樹脂抜け等がなく、防湿フィルムの周囲を十分封止し良好な積層体が得られた場合
(×)表面保護シート中の環状オレフィンシートを構成する樹脂組成物が防湿フィルムの周辺に回り込みきらず、端面封止が不十分である、あるいは、封止樹脂がガラスの周囲から流れ出し、表面保護シート中の防湿フィルム端部の環状オレフィンシート樹脂の厚みが非常に薄い(0.05mm以下)状態の場合
【0077】
(構成フィルム)
<耐候性フィルム>
旭硝子(株)製(ETFE)系フィルム、商品名:アフレックス 50N 1250 NT(厚み:50μm)を使用した。
【0078】
<防湿フィルム>
防湿フィルムB-1
基材フィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン(株)製、商品名:「Q51C12」)を用い、そのコロナ処理面に、下記のコート液を塗布乾燥して厚さ0.1μmのコート層を形成した。
次いで、真空蒸着装置を使用して1.33×10-3Pa(1×10-5Torr)の真空下でSiOを加熱蒸発させ、コート層上に厚さ40nmのSiOx(x=1.5)無機薄膜層を有する防湿フィルムB-1を得た。作製した防湿フィルムB-1の防湿性能は0.015[g/m2・日]であった。
【0079】
コート液
日本合成(株)製、商品名:「ゴーセノール」(ケン化度:97.0〜98.8mol%、重合度:2400)のポリビニルアルコール樹脂220gをイオン交換水2810gに加え加温溶解した水溶液に、20℃で攪拌しながら35%塩酸645gを加えた。次いで、10℃でブチルアルデヒド3.6gを攪拌しながら添加し、5分後に、アセトアルデヒド143gを攪拌しながら滴下し、樹脂微粒子を析出させた。次いで、60℃で2時間保持した後、液を冷却し、炭酸水素ナトリウムで中和し、水洗、乾燥し、ポリビニルアセトアセタール樹脂粉末(アセタール化度75mol%)を得た。
また、架橋剤としてイソシアネート樹脂(住友バイエルウレタン(株)製「スミジュールN−3200」)を用い、水酸基に対するイソシアネート基の当量比が1:2になるように混合した。
【0080】
防湿フィルムB-2
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムにシリカを蒸着した三菱樹脂(株)製、商品名:テックバリアLXを使用した。また上述の方法で測定した防湿性能は0.20[g/(m2・日)]であった。
【0081】
<接着剤と接着剤塗液>
ポリウレタンポリオール成分を含む主剤としてロックペイント(株)製、商品名:HD1013を使用し、脂肪族系のヘキサメチレンジイソシアナート成分を含む硬化剤としてロックペイント(株)製、商品名:H62を使用し、質量比で10:1となるように混合し、固形分濃度が30%となるように酢酸エチルで希釈して接着剤塗液を調製した。
【0082】
<環状オレフィン防湿フィルム>
環状オレフィン防湿フィルムCOC-1
環状オレフィン系重合体として、エチレン−ノルボルネンランダム共重合体(ポリプラスチックス(株)社製、商品名:TOPAS 9506X1、150℃における溶融粘度:16600Pa・s、ノルボルネン含有量:22モル%)を80質量%と、溶融粘度が異なるエチレン−ノルボルネンランダム共重合体(ポリプラスチックス(株)社製、商品名:TOPAS TM、150℃における溶融粘度:100Pa・s以下、ノルボルネン含有量:28モル%)を20質量%からなる樹脂組成物をあらかじめ二軸押出機で混合し、次いで、Tダイを備えた32mm単軸押出機を用いて設定温度260℃で溶融混練し、20℃のキャストロールで急冷製膜することにより厚みが0.3mm(溶融粘度測定用)、0.5mmのシート状の環状オレフィン防湿フィルムCOC-1を得た。上述の方法で測定した防湿性能は0.50[g/(m2・日)]であった。
【0083】
環状オレフィン防湿フィルムCOC-2
環状オレフィン系重合体として、エチレン−ノルボルネンランダム共重合体(ポリプラスチックス(株)社製、商品名:TOPAS 9506X1、150℃における溶融粘度:16600Pa・s、ノルボルネン含有量:22モル%、)をTダイを備えた32mm単軸押出機を用いて設定温度260℃で溶融混練し、20℃のキャストロールで急冷製膜することにより厚みが0.3mm(溶融粘度測定用)、0.5mmのシート状の環状オレフィン防湿フィルムCOC-2を得た。上述の方法で測定した防湿性能は0.50[g/(m2・日)]であった。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例1
耐候性フィルムに接着剤塗液を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、0.5mmの環状オレフィン防湿フィルムCOC-1を接着剤面に向けてドライラミネートによって貼合した。
その後、積層フィルムの環状オレフィン防湿フィルムCOC-1に接着剤塗液を固形分6g/m2となるよう塗布乾燥し、防湿フィルムB-1の無機蒸着膜を向けて貼合し、40℃x5日間養生し、厚み574μmの表面保護シートD-1を作製し防湿性と封止適性を測定した。結果を表2に示す。
【0086】
比較例1
実施例1で環状オレフィン防湿フィルムCOC-1を厚さ0.5mmの環状オレフィン防湿フィルムCOC-2としたこと以外は実施例1と同様に厚み574μmの表面保護シートD-2を作製し防湿性と封止適性を測定した。結果を表2に示す。
【0087】
比較例2
防湿フィルムB-1を防湿フィルムB-2としたこと以外は実施例1と同様に厚み574μmの表面保護シートD-3を作成し防湿性と封止適性を測定した。結果を表2に示す。
【0088】
比較例3
エチレン―酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)社製、商品名:EVAFLEX EV150、酢酸ビニル含有量:33質量%、以下EVAと略する)を100質量部と、過酸化物架橋剤1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(アルケマ吉冨(株)社製、商品名ルペロックス331)を1.25質量部からなる樹脂組成物とし、Tダイを備えた32mm単軸押出機を用いて設定温度95℃で溶融混練し、20℃のキャストロールで急冷製膜することにより厚みが0.5mmのシートを得た。作製したEVAシートを環状オレフィン防湿フィルムCOC-1の代わりに用いて実施例1と同様に厚み574μmの積層防湿フィルムD-4を作製し防湿性と封止適性を測定した。結果を表2に示す。
また上述の方法で測定したEVAの防湿性は20[g/(m2・日)]であった。
【0089】
【表2】

【0090】
このように、本発明の構成を有する実施例1の表面保護シートは、その40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(L))が、使用する環状オレフィン防湿フィルムや防湿フィルム(2)の防湿性WTR(A)、WTR(B)と比較して、顕著に優れた防湿性能を示すのみならず、当該防湿性WTR(A),WTR(B)から理論的に導き出される[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]の理論値Wと比較しても、想定以上に優れた防湿性を示すものであることが明らかであった。
また、実施例1の表面保護シートは、当該表面保護シート中の環状オレフィンシートを構成する樹脂組成物が防湿フィルムの周辺に十分回り込み、樹脂抜け等がなく、防湿フィルム(2)の周囲を十分封止し良好な積層体が得られ、端面封止が十分であった。さらに、封止樹脂がガラスの周囲から流れ出すこともなく、表面保護シート中の防湿フィルム端部の環状オレフィンシート樹脂の厚みを保っており、封止適性に優れたものであった。
一方、環状オレフィン防湿フィルム(1)として、本発明規定の溶融粘度範囲外の樹脂組成物を使用した比較例1や、環状オレフィンを使用せずエチレン―酢酸ビニル共重合体を使用した比較例3の表面保護シートは、封止樹脂が太陽電池セルの周辺に回り込みきらず、封止が不十分であったり(比較例1)、封止樹脂がガラスの周囲から流れ出し、ガラス板と太陽電池セルの間の封止樹脂の厚みが非常に薄くなったり(比較例3)して、封止性に劣ることが明らかとなった。
また、防湿フィルム(2)として、本発明規定の水蒸気透過率の範囲外の防湿フィルムを使用した比較例2については、封止適正はあったものの、その水蒸気透過率(L)が、理論的に導き出される理論値Wより劣るものであった。
すなわち、本発明品である実施例1の表面保護シートは、予想以上の優れた防湿性能を示し、且つ、防湿フィルムの基材フィルム端部の封止適性も有することから、太陽電池モジュールの構成部材として優れたものであることが明らかとなった。
以上の点から、実施例1の表面保護シートは、前面保護シートとして使用されることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物であって、周波数1Hzで測定した150℃における溶融粘度が2000Pa・s以上、15000Pa・s未満である樹脂組成物からなり、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(A))が1.0[g/m2・日]以下である防湿フィルム、及び(2)基材フィルムの片面に無機薄膜層を有し、40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(B))の値が前記環状オレフィン系重合体を含む樹脂組成物からなる防湿フィルム(1)の値の10%以下である防湿フィルム、を有する太陽電池用表面保護シートであって、前記防湿フィルム(1)及び防湿フィルム(2)を接着剤を介して積層してなることを特徴とする太陽電池用表面保護シート。
【請求項2】
40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(L))が、[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]の値より低い値である請求項1記載の太陽電池用表面保護シート。
【請求項3】
40℃、90%RHにおける水蒸気透過率(WTR(L))が、[WTR(A)×WTR(B)]/[WTR(A)+WTR(B)]の80%以下である請求項2記載の太陽電池用表面保護シート。
【請求項4】
環状オレフィン系重合体が、直鎖状オレフィン成分と下記一般式(1)で表される環状オレフィン成分とからなる環状オレフィン系ランダム共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用表面保護シート。
【化1】

(上記一般式(1)中、それぞれR1〜R12は水素原子又は炭化水素基であって、同一であっても異なっていても良い。また、R5とR10、又はR11とR12とは一体化して2価の炭化水素基を形成しても良い。また、R3又はR10と、R11又はR12とは互いに環を形成しても良い。nは0又は正の整数であって、nが2以上のとき、R5〜R8の各々が複数ある場合には、これらはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。)
【請求項5】
耐候性フィルム、前記防湿フィルム(1)、及び前記防湿フィルム(2)を暴露側からこの順に有する請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用表面保護シート。
【請求項6】
前記防湿フィルム(1)と、前記防湿フィルム(2)の無機薄膜層面とを合わせて積層する請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池用表面保護シート。
【請求項7】
化合物系発電素子太陽電池モジュール又はフレキシブル太陽電池モジュールの表面保護部材に用いられる請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用表面保護シート。

【公開番号】特開2012−209371(P2012−209371A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72841(P2011−72841)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】