説明

太陽電池素子の電極形成用導電性ペースト

【課題】発電特性の向上に寄与しうる太陽電池素子の電極形成用導電性ペーストを提供すること。
【解決手段】比表面積が0.8〜3.0m2/gで、タップ密度が2〜6g/cm3で、平均粒径が0.1〜5.0μmで、且つ灼熱減量が0.05〜0.30%である銀粒子と、有機バインダと、溶剤と、ガラスフリットとを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池素子の電極形成用導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な太陽電池素子は、図4に示すように、半導体基板21、拡散層22、反射防止層23、裏面電極24および表面電極25を備えている。
【0003】
この太陽電池素子は、例えば、以下のように製造される。シリコンからなる半導体基板21の受光面側(表面側)に、不純物の拡散層22と、窒化シリコン、酸化シリコンまたは酸化チタンなどからなる絶縁性の反射防止層23とが順次形成される。ここで、半導体基板21は、例えば、ホウ素などの半導体不純物を1×1016〜1018原子/cm3程度含有することにより、比抵抗1.5Ωcm程度の一導電型(例えば、p型)を呈するようにしたものである。単結晶シリコンの場合は引き上げ法などによって形成され、多結晶シリコンの場合は鋳造法などによって形成される。多結晶シリコンは、大量生産が可能で製造コスト面で単結晶シリコンよりも有利である。半導体基板21は、例えば、引き上げ法や鋳造法によって形成されたインゴットを100ないし300μm程度の厚みにスライスすることにより得られる。
【0004】
拡散層22は、半導体基板21の受光面に、リンなどの不純物を拡散させることにより形成される、半導体基板21の逆の導電型(例えば、n型)を呈する領域である。この拡散層22は、例えば、半導体基板21を炉中に配置して、オキシ塩化リン(POCl3)などの中で加熱することによって形成される。
【0005】
反射防止層23は、反射防止機能と併せて太陽電池素子の保護のために拡散層22の受光面側に形成されるものである。反射防止層23が窒化シリコン膜の場合、例えば、シラン(SiH4)とアンモニア(NH3)の混合ガスをグロー放電分解でプラズマ化して堆積させるプラズマCVD法などで形成される。例えば、反射防止層23は半導体基板21との屈折率差などを考慮して、屈折率が1.8〜2.3程度になるようにされ、0.05μmないし1.0μm程度の厚みに形成される。
【0006】
半導体基板21の表面には表面電極25が形成され、裏面には裏面電極24が形成される。表面電極25は、導電性粒子と、有機バインダと、溶剤と、ガラスフリットと、必要に応じて添加される物質とを含む導電性ペーストを印刷し、乾燥し、焼成することにより形成される。裏面電極24も導電性ペーストを印刷し、乾燥し、焼成することにより形成されるが、表面電極25と同一の導電性ペーストを用いる必要はない。特に、表面電極25はファイヤースルーの役割を担っており、適切な組成と焼成条件の選択は太陽電池の特性を高める上で重要である。このファイヤースルーとは、焼成の際、導電性ペーストに含まれているガラスフリットが反射防止層23に作用して当該層を溶解除去し、その結果、表面電極25と拡散層22が接触し、表面電極25と拡散層22のオーミック接続を得ることをいう。表面電極25と拡散層22との間で安定なオーミック接続が得られないと、太陽電池の直列抵抗が高くなって曲線因子(FF)が小さくなる傾向にある。太陽電池の変換効率は、開放電圧と短絡電流密度とFFとを乗じることにより得られるので、FFが小さくなると変換効率は低下してしまう。
【0007】
太陽電池における発電効率を高めるためには、上記FF値、すなわち、変換効率を向上させることが極めて重要である。例えば、この目的を達成するため、特許文献1には、比表面積が0.20〜0.60m2/gである銀粒子と、ガラスフリットと、樹脂バインダーと、シンナーとを含む太陽電池受光面電極用ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−235082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、ペースト中に比表面積が0.20〜0.60m2/gである銀粒子を含むことによって発電特性を向上させることができると記載されているが、単に銀粒子の比表面積を規定するだけでは現実に発電特性を向上させることは難しい。また、0.20〜0.60m2/gという比表面積の数値は太陽電池素子の電極形成用に用いられる銀粒子の中では比較的小さく、一般に比表面積が小さいと、焼成した際に銀粒子の焼結が進みにくいため、電気抵抗値が下がりにくい。特に、太陽電池のようなタクトタイムの短い焼成が要求される用途において、電気抵抗値が下がりにくいという傾向が顕著になる。また、比表面積の数値が小さいということは銀粒子が相対的に大きいということを意味するので、特許文献1記載のペーストでは、ファインラインパターンの印刷が難しくなるという欠点もある。
【0010】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、上記のような欠点のない、発電特性の向上に寄与しうる太陽電池素子の電極形成用導電性ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の太陽電池素子の電極形成用導電性ペーストは、比表面積が0.8〜3.0m2/gで、タップ密度が2〜6g/cm3で、平均粒径が0.1〜5.0μmで、且つ灼熱減量が0.05〜0.30%である銀粒子と、有機バインダと、溶剤と、ガラスフリットとを含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発電特性の向上に寄与しうる太陽電池素子の電極形成用導電性ペーストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】太陽電池素子の一例の断面図である。
【図2】図2(a)は図1の太陽電池素子の受光面側の平面図、図2(b)は図1の太陽電池素子の反受光面側の平面図である。
【図3】太陽電池モジュールの一例を示す断面図である。
【図4】一般的な太陽電池素子の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)銀粒子
銀粒子の配合量は導電性ペースト全体に対して65ないし95重量%であるのが好ましい。65重量%未満では銀粒子の配合量が少なすぎて焼成して得られる受光面電極の固有抵抗が上昇するという不都合があり、95重量%を超えると印刷性が悪くなり、物理的な接着強度が不足するという不都合があるからである。
【0015】
銀粒子の形状は、鱗片状、球形状、フレーク状、不定形状またはこれらを混合したものでもよい。要するに、銀粒子の形状は特定のものに限定されない。
【0016】
銀粒子の比表面積は0.8〜3.0m2/gであることが好ましい。銀粒子の比表面積が0.8m2/g未満であると、焼成時に焼結が進みにくく、電気抵抗値が下がりにくい。また、ファインラインパターンの印刷をする上で不利である。一方、一般に粒子の小さいものほど凝集しやすいため、銀粒子の比表面積が3.0m2/gを超えると、粒子同士の凝集が激しくなり、非常にかさばって、電極形成時に十分な電極の緻密性を確保することができず、電気抵抗値が下がらない。仮に銀粒子がペースト中に分散していたとしても、比表面積が3.0m2/gを超えるような銀粒子は非常に高価であり、太陽電池素子の電極形成用には適していない。比表面積はBET法で測定することができる。
【0017】
銀粒子のタップ密度は2〜6g/cm3であることが好ましい。銀粒子のタップ密度が2g/cm3未満であると、電極形成時の電極の緻密性が低く、十分に電気抵抗値を下げることができないという不都合な点がある。銀粒子のタップ密度の上限値は高ければ高いほど好ましいが、市販で入手できる銀粒子のタップ密度は現実的に6g/cm3以下である。タップ密度は、15gの試料をタップ密度測定用試験管に充填し、タッピング装置にて1000回タッピング後の銀粉の体積と重量より測定することができる。
【0018】
銀粒子の平均粒径は、焼結特性に影響を与えるので(粒径の大きい銀粒子は粒径の小さい銀粒子よりもゆっくりとした速度で焼結される)、0.1〜5.0μmが好ましい。0.1μm未満であると焼結速度が速すぎ、物理的な接着強度が不足するという不都合がある。5.0μmを超えると、粒子同士の凝集が激しくなり、ペースト中での分散性および印刷性が悪くなり、電気抵抗値が下がらず、かつ細いラインを印刷するのが困難になるという不都合がある。本願発明において、平均粒径とは、レーザ回折式粒度測定機(例えば、ハネウエル−日機装社製)を用いてレーザ回折法により粒径を測定した場合において、小径側から累積50%の粒径をいう。
【0019】
銀粒子の灼熱減量は0.05〜0.30%であることが好ましい。灼熱減量とは、当業者において「Igロス」と呼ばれているものである。このIgロスは、銀粒子を一定温度に加熱処理(例えば、100℃で2時間)することによって銀粒子から水分を取り除いておき、その水分を取り除いた銀粒子を高温(例えば、1000℃)に加熱することによる加熱処理前後の重量変化から求めることができる。例えば、水分を取り除いた銀粒子の重量をW0とし、高温に加熱した後の銀粒子の重量をW1とした場合、Igロスは、〔(W0−W1)/W0〕×100%となる。このことから、Igロスは、銀粒子中に存在する有機成分や揮発成分の含有量を表していると考えることができる。有機成分や揮発成分はペーストの焼成時に銀粒子の焼結を妨げ、電気抵抗値を高くすることから、Igロスの数値は小さいほど好ましい。太陽電池素子の電極形成用に用いられる銀粒子の場合、Igロスが0.30%以下で電極の電気抵抗値を下げることができ、より好ましくは0.25%以下、さらに好ましくは0.20%以下である。上記粉体特性(比表面積、タップ密度、平均粒径)を満たし、かつIgロスが0.05%未満である市販の銀粒子を入手することは困難であるから、Igロスの下限値は0.05%である。
(2)ガラスフリット
本発明で使用可能なガラスフリットは、導電性ペーストが750ないし950℃で焼成されたときに、反射防止層を浸食し、適切に半導体基板への接着が行われるように、300ないし550℃の軟化点を有するものが好ましい。軟化点が300℃より低いと、焼成が進んで本発明の効果を十分に得ることができないという不都合がある。一方、軟化点が550℃より高いと、焼成時に十分な溶融流動が起こらないため、十分な接着強度が得られないという不都合がある。例えば、ガラスフリットとしては、Bi系ガラス、Bi23−B23−ZnO系ガラス、Bi23−B23系ガラス、Bi23−B23−SiO2系ガラス、Ba系ガラス、BaO−B23−ZnO系ガラスなどを用いることができる。
【0020】
ガラスフリットの形状は限定されず、球状でも、不定形状でもよい。
【0021】
ガラスフリットの配合量は導電性ペースト全体に対して0.1ないし10重量%であるのが好ましい。0.1重量%未満では接着強度が不十分となる場合がある。10重量%を超えると、ガラスの浮きや後工程での半田付け不良が生じることがある。
(3)有機バインダ
有機バインダとしては、限定されるものではないが、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族系石油樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、キシレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイソブチル系樹脂等を用いることができる。
【0022】
有機バインダの配合量は導電性ペースト全体に対して0.1ないし30重量%であるのが好ましい。0.1重量%未満では、十分な接着強度を確保することができない。一方、30重量%を超えると、ペーストの粘度上昇により印刷性が低下する。
(4)溶剤
溶剤としては、限定されるものではないが、ヘキサン、トルエン、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジアセトンアルコール、ターピネオール、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
【0023】
溶剤の配合量は導電性ペースト全体に対して1ないし40重量%であるのが好ましい。それらの範囲外であると、ペーストの印刷性が低下するからである。
(5)分散剤
ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸などの分散剤を導電性ペーストに配合することができる。なお、分散剤は一般的なものであれば、有機酸に限定されるものではない。これら分散剤の配合量は導電性ペースト全体に対して0.05ないし10重量%であるのが好ましい。0.05重量%未満であるとペーストの分散性が悪くなるという不都合があり、10重量%を超えると焼成によって得られる受光面電極の固有抵抗が上昇するという不都合がある。
(6)その他の添加剤
本発明においては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、消泡剤、粘度調整剤などの各種添加剤を本発明の効果を妨げない範囲において配合することができる。
(7)太陽電池素子の製造方法
太陽電池素子の製造方法について詳しく説明する。
【0024】
図1は、太陽電池素子の一例の断面の構造を示す概略図である。図2(a)は図1の太陽電池素子の受光面側(表面)の平面図、図2(b)は図1の太陽電池素子の反受光面側(裏面)の平面図である。
【0025】
シリコン基板1は、単結晶または多結晶シリコンなどからなる。このシリコン基板1は、ボロンなどの一導電型半導体不純物を含有し、比抵抗は、例えば、1.0ないし2.0Ωcm程度である。単結晶シリコン基板の場合には引き上げ法などによって形成され、多結晶シリコン基板の場合には鋳造法などによって形成される。引き上げ法や鋳造などによって形成されたシリコンのインゴットを200μm以下、好ましくは150μm以下の厚みにスライスしてシリコン基板1とする。なお、以下の説明においてはp型シリコン基板を用いて説明を行うが、n型シリコン基板を用いてもかまわない。
【0026】
このシリコン基板1は、そのスライス面を清浄化するために、表面をNaOHやKOH、またはフッ酸やフッ硝酸等で微量エッチングされる。
【0027】
その後、光入射面となるシリコン基板表面(受光面)側に、ドライエッチングやウエットエッチングなどを用いて、光反射率低減機能を有する凹凸面(粗面)を形成することが好ましい。
【0028】
次に、n型拡散層2を形成する。n型化ドーピング元素としては、リンを用いるのが好ましく、シート抵抗が40ないし100Ω/□程度のn+型とする。これにより、p型シリコン基板1との間にpn接合部が形成される。
【0029】
n型拡散層2はシリコン基板の受光面に形成されるものであり、ペースト状態にしたP25を塗布して熱拡散させる塗布熱拡散法、ガス状態にしたPOCl3を拡散源とした気相熱拡散法、およびP+イオンを直接拡散させるイオン打ち込み法などによって形成される。このn型拡散層2は、0.3ないし0.5μm程度の深さに形成される。
【0030】
なお、拡散を予定しない部位にも拡散領域が形成された場合、後でエッチングによって除去すればよい。後記するように、裏面(反受光面)のBSF領域をアルミニウムペーストによって形成する場合は、p型ドープ剤であるアルミニウムを十分な濃度で十分な深さまで拡散させることができるので、浅いn型拡散層の影響は無視することができるので、裏面側に形成されたn型拡散層を特に除去する必要はない。
【0031】
n型拡散層2の形成方法は上記に限定されるものではなく、例えば、薄膜技術を用いて、水素化アモルファスシリコン膜や、微結晶シリコン膜を含む結晶質シリコン膜などを形成してもよい。さらに、p型シリコン基板1とn型拡散層2との間にi型シリコン領域(図示せず)を形成してもよい。
【0032】
次に、反射防止層3を形成する。反射防止層3の材料としては、SiNx膜(Si34を中心にして組成xには幅がある)、TiO2膜、SiO2膜、MgO膜、ITO膜、SnO2膜、ZnO膜などを用いることができる。その厚さは、適当な入射光に対して無反射条件を再現できるよう、半導体材料に対して適宜選択することができる。例えば、シリコン基板1に対しては、屈折率は1.8ないし2.3程度、厚みは500ないし1000Å程度にすればよい。
【0033】
反射防止層3の製法としては、CVD法、蒸着法またはスパッタ法などを用いることができる。
【0034】
次に、BSF(Back Surface Field)層4を形成することが好ましい。ここで、BSF層とは、シリコン基板1の裏面側に一導電型半導体不純物が高濃度に拡散されてなる領域をいい、キャリヤの再結合による変換効率の低下を防ぐ役割を果たすものである。不純物元素としては、ボロンやアルミニウムを用いることができ、不純物元素濃度を高濃度にしてp+型とすることによって後記する裏面電極6との間にオーミック接続を得ることができる。
【0035】
BSF層4の製法としては、BBr3を拡散源とした熱拡散法を用いて800ないし10000℃程度で形成することができる。熱拡散法を用いる場合は、すでに形成してあるn型拡散層2には酸化膜などの拡散バリアをあらかじめ形成しておくことが好ましい。他の製法として、アルミニウムを用いる場合、アルミニウム粉末および有機ビヒクルを含むアルミニウムペーストを塗布した後、600ないし850℃程度で焼成してアルミニウムをシリコン基板1に向けて拡散する方法を用いることができ、この方法によると塗布面への所望の拡散領域を形成できるとともに、裏面側の不要な拡散層の除去を必要としない。しかも、焼成されたアルミニウムはそのまま裏面電極の集電電極として利用することもできる。
【0036】
次に、図2(a)に示すバスバー電極5aおよびフィンガー電極5bからなる表面電極5と、図2(b)に示すバスバー電極6aおよび集電電極6bからなる裏面電極6とを、シリコン基板1の表面側および裏面側に形成する。
【0037】
表面電極5は、シリコン基板1上に公知の塗布法を用いて本発明の太陽電池素子の電極形成用導電性ペーストを塗布し、ピーク温度が700ないし950℃程度で数十秒ないし数十分間焼成することにより形成できる。
【0038】
裏面電極6は、図2(b)に示すように、銀粉末とアルミニウム粉末と有機バインダと溶剤とガラスフリットを含む銀−アルミニウムペーストを塗布・焼成して形成されるバスバー電極6aと、アルミニウム粉末と有機バインダと溶剤とガラスフリットを含むアルミニウムペーストをシリコン基板1の略全面に塗布・焼成して形成される集電電極6bとを、一部が重なるように構成してもよい。
【0039】
なお、表面電極および裏面電極について、それぞれの電極形成用ペーストを塗布・乾燥した後、同時に焼成すれば、製造工程を減らすことができるので好ましい。各ペースト塗布の順序は特に限定されるものではない。
【0040】
導電性ペーストによる電極形成パターンは、太陽電池素子から効率よく集電するために、一般的に用いられているパターン、例えば、表面電極の場合であれば、図2(a)に示すように、櫛形パターンを採用することができる。
(8)太陽電池モジュールの製造方法
上記のようにして製造した太陽電池素子を用いて太陽電池モジュールを製造する方法の一例について説明する。
【0041】
図3に示すように、配線11によって、隣接している太陽電池素子12の表面電極と裏面電極とを接続し、透明の熱可塑性樹脂などからなる表側充填材13と透明の熱可塑性樹脂などからなる裏側充填材14によって太陽電池素子12を挟み込み、さらに、表側充填材13の上側にガラスからなる透明部材15を配し、裏側充填材14の下側に機械特性に優れたポリエチレンテレフタレートなどのシートを耐候性に優れたポリフッ化ビニルのフィルムで覆った裏面保護材16を配し、これらの積層部材を適切な真空炉で脱気し、加熱・押圧して一体化することが好ましい。また、複数の太陽電池素子12が直列接続されている場合、複数の素子の中の最初の素子と最後の素子の電極の一端を出力取出部である端子ボックス17に出力取出配線18によって接続することが好ましい。さらに、太陽電池モジュールは、通常長期にわたって野外に放置されるため、アルミニウムなどからなる枠体によって周囲を保護することが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更や修正が可能である。
(1)半導体ウエハの準備
厚さが200μmで、外形が20mm×20mmの大きさで、比抵抗が1.5Ωcmの多結晶シリコンのp型シリコン基板の表面にn型拡散層が形成され、さらに、n型拡散層の上にSiNxの反射防止層が形成された半導体ウエハを準備した。
(2)導電性ペーストの調製
a.BSF層と裏面集電電極形成用の導電性ペースト
アルミニウム粉末と、エチルセルロース(有機バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール モノイソブチレート(溶剤)と、Bi23−B23−ZnO系ガラスフリットとを3本ロールミルで混合することによりペースト状にして、BSF層と裏面集電電極形成用の導電性ペーストを得た。
b.裏面バスバー電極形成用の導電性ペースト
銀粉末と、アルミニウム粉末と、エチルセルロース(有機バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール モノイソブチレート(溶剤)と、Bi23−B23系ガラスフリットとを3本ロールミルで混合することによりペースト状にして、裏面バスバー電極形成用の導電性ペーストを得た。
c.表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペースト
以下の表1に示すような特性を有するAg粉末86重量部と、軟化点が約530℃のBa系ガラスフリット1重量部と、エチルセルロース1重量部(有機バインダ)と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール モノイソブチレート11重量部(溶剤)と、ステアリン酸0.5重量部(分散剤)と、1重量部のステアリン酸Mgと、2重量部のTeO2とを配合したものを3本ロールミルで混合することによりペースト状にし、さらに、後記するスクリーン印刷時のペーストの粘度が約300Pa・sとなるように、上記有機溶剤を適宜添加して調製した。このようにして、表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストを得た。
【0043】
【表1】

【0044】
(3)導電性ペーストの印刷
上記(2)aのように調製した導電性ペーストを、(1)のように準備した半導体ウエハの裏面側の略全面にスクリーン印刷により塗布し、その導電性ペーストの上に、図2(b)の6aに示すような形状となるように(2)bのように調製した導電性ペーストをスクリーン印刷により塗布し、150℃で5分間乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。
【0045】
次に、(1)のように準備した半導体ウエハの表面側に、図2(a)の5aおよび5bに示すような形状となるように(2)cのように調製した導電性ペーストをスクリーン印刷により塗布し、150℃で5分間乾燥を行った後、自然放冷により室温まで冷却した。(4)焼成
以上のように導電性ペーストを塗布した半導体ウエハを、BTU社製のモデルPV309で4ゾーンの加熱ゾーンがある高速焼成炉に挿入して、Datapaq社の温度ロガーで半導体ウエハ表面の最高温度を確認しながら、その表面最高温度を焼成温度として、800℃の焼成温度で1分間焼成した。この焼成過程において、半導体ウエハの裏面側に塗布したアルミニウムが半導体ウエハ側に拡散することにより、図1の4に示すようなBSF層が形成され、同時に図1の6bに示すような集電電極が形成されるのである。
(5)電気特性の評価
以上のようにして作製した表面バスバー電極と表面フィンガー電極形成用の導電性ペーストの比抵抗を、図2(a)に示すように、多数のフィンガー電極の中で、ある1本の表面フィンガー電極5bについて、焼成後の当該表面フィンガー電極5bにおける距離D(cm)、その距離D(cm)間の電気抵抗値R(μΩ)、焼成後の当該表面フィンガー電極5bのペースト膜厚t(cm)および焼成後の当該表面フィンガー電極5bの幅W(cm)に基づいて、下式より求めた。
【0046】
比抵抗(μΩ・cm)=[R(μΩ)×t(cm)×W(cm)]/[D(cm)]
=R×t×W/D(μΩ・cm)
また、ペースト焼成後に得た太陽電池素子試験片のFF値と変換効率については、共進電機株式会社製の商品名KST−15Ce−1sのテスターと、関西科学機器社製の商品名XES−502Sのソーラーシミュレーターとを用いて、電圧−電流曲線からFF値と変換効率を求めた。表1には、本発明の実施例1ないし4と比較例のペーストの比抵抗と、FF値と、変換効率を示す。
【0047】
表1に示すように、本発明の実施例1ないし4は、本発明の範囲内の適正な数値の比表面積とタップ密度と平均粒径と灼熱減量を有する銀粒子を含有しているので、導電性ペーストの比抵抗が低く、太陽電池素子試験片のFF値と変換効率が高い。
【0048】
一方、比較例1ないし13は、比表面積とタップ密度と平均粒径と灼熱減量の中の少なくとも1つの特性値が本発明の範囲を外れているので、導電性ペーストの比抵抗が高く、太陽電池素子試験片のFF値と変換効率は低い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、太陽電池素子の電極形成用導電性ペーストとして好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 シリコン基板
2 n型拡散層
3 反射防止層
4 BSF層
5 表面電極
5a 表面バスバー電極
5b 表面フィンガー電極
6 裏面電極
6a 裏面バスバー電極
6b 裏面集電電極
11 配線
12 太陽電池素子
13 表側充填材
14 裏側充填材
15 透明部材
16 裏面保護材
17 端子ボックス
18 出力取出配線
21 半導体基板
22 拡散層
23 反射防止層
24 裏面電極
25 表面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が0.8〜3.0m2/gで、タップ密度が2〜6g/cm3で、平均粒径が0.1〜5.0μmで、且つ灼熱減量が0.05〜0.30%である銀粒子と、有機バインダと、溶剤と、ガラスフリットとを含有することを特徴とする太陽電池素子の電極形成用導電性ペースト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−181538(P2011−181538A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41357(P2010−41357)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(397059571)京都エレックス株式会社 (43)
【Fターム(参考)】