説明

太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルム

【課題】長期に亘って強度を維持することのできる、優れた耐候性、耐層間剥離および耐加水分解性を備える、太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムおよび太陽電池裏面保護膜の提供。
【解決手段】表層(A)と基材層(B)から構成される太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムにおいて、表層(A)をルチル型酸化チタン粒子10〜30重量%およびポリエステル70〜90重量%からなるポリエステル組成物で構成し、基材層(B)をルチル型酸化チタン粒子0.1〜4重量%およびポリエステル96〜99.9重量%からなるポリエステル組成物で構成し、基材層(B)をフィルム総厚みの70%〜97%の厚さ、積層フィルムのポリエステルの重量平均分子量が42300以上47000未満、COOH末端基濃度が6〜30当量/トン、積層フィルムの全層平均のルチル型酸化チタン粒子含有率が3〜8重量%とすることにより、長期に亘り強度を維持することのできる、優れた耐候性、耐層間剥離および耐加水分解性を備える太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いた太陽電池裏面保護膜に関し、詳しくは、優れた耐候性、耐層間剥離および耐加水分解性を備える太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いた太陽電池裏面保護膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムは、クリーンエネルギーを利用する発電手段の一つとして、普及が進んでいる。太陽電池モジュールは、例えば実開平6−38264号公報に記載があるように、一般的には、受光側のガラス基板と裏面保護膜との間に複数の板状太陽電池素子を挟み、内部の隙間に封止樹脂を充填した構造をとる。
【0003】
また、太陽電池の裏面側の保護膜として、ポリエステルフィルムを用いることが知られている(特開2001−148497号公報、特開2001−257372号公報、特開2003−60218号公報)。これらのポリエステルフィルムは、長期使用における耐加水分解性が未だに不十分であることから改良が試みられ、高分子量のポリエチレンテレフタレートフィルムを用いること(特開2002−26354号公報)、オリゴマー含有量の少ないポリエチレンテレフタレートフィルムを用いること(特開2002−100788号公報、特開2002−134770号公報、特開2002−134771号公報)、2,6−ナフタレンジカルボン酸含有のポリエステルフィルムを用いること(特開2007−007885号公報、特開2006−306910号公報)が提案されている。さらに、太陽光の電換効率に有利な高い反射率を備えた白色ポリエステルフィルムも提案されている(特開2002−26354号公報、特開2006−270025号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−38264号公報
【特許文献2】特開2001−148497号公報
【特許文献3】特開2001−257372号公報
【特許文献4】特開2003−60218号公報
【特許文献5】特開2002−26354号公報
【特許文献6】特開2002−100788号公報
【特許文献7】特開2002−134770号公報
【特許文献8】特開2002−134771号公報
【特許文献9】特開2007−007885号公報
【特許文献10】特開2006−306910号公報
【特許文献11】特開2002−270025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ポリエチレンテレフタレートフィルムは耐加水分解性のみならず耐候性に乏しいために、これらの改良された技術をもってしても太陽電池裏面保護膜として長期にわたり実用的な強度を保持することは未だに困難である。また、高反射率の期待できる白色ポリエチレンテレフタレートフィルムは、耐加水分解性に乏しいうえに、フィルムの凝集強度が低いため他の素材と接着して積層体としたときに層間でデラミネーションが発生することがある。そして、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を含有するポリエステルフィルムは、耐加水分解性は向上するが紫外線による劣化が起こりやすく、耐候性に乏しい。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、長期に亘って強度を維持することのできる、優れた耐候性、耐層間剥離および耐加水分解性を備える、太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムおよび太陽電池裏面保護膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等はかかる従来技術の有する問題点を解決するために鋭意検討した結果、以下に述べる手段を見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、第一に、表層(A)と基材層(B)から構成された積層フィルムであって、表層(A)は基材層(B)の少なくとも一方の面に設けられ、表層(A)はルチル型酸化チタン粒子10〜30重量%およびポリエステル70〜90重量%からなるポリエステル組成物で構成され、基材層(B)はルチル型酸化チタン粒子0.1〜4重量%およびポリエステル96〜99.9重量%からなるポリエステル組成物で構成され、かつ、基材層(B)がフィルム総厚みの70%〜97%の厚さを有し、積層フィルムのポリエステルの重量平均分子量が42300以上47000未満であり、積層フィルムのポリエステルのCOOH末端基濃度が6〜30当量/トンであり、積層フィルムの全層平均のルチル型酸化チタン粒子含有率が3〜8重量%であることを特徴とする太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長期に亘って強度を維持することのできる、優れた耐候性、耐層間剥離および耐加水分解性を備える、太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムおよび太陽電池裏面保護膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
層構成
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、表層(A)と基材層(B)から構成され、表層(A)は基材層(B)の少なくとも一方の面に設けられる。
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、耐候性と耐加水分解性を両立させるために、好ましくは、表層(A)は基材層(B)の両方の面に設けられ、表層(A)/基材層(B)/表層(A)の三層からなる構成をとる。
【0012】
この三層構成の場合、ポリエステルフィルムの耐候性を向上させる観点からルチル型酸化チタンの含有率が高い表層(A)層を積層フィルムの両表層とし、耐加水分解性を向上させる観点からルチル型酸化チタンの含有率が低い基材層(B)を芯層に配置する。そして、本発明では表層(A)/基材層(B)/表層(A)の三層構成をとり、このように対称な積層構成とすることにより、フィルムの反り返りがなく、製膜時や加工時の取り扱い性に優れる太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0013】
上記の三層構成の場合、基材層(B)の厚みはフィルム総厚みの70%〜95%、好ましくは80%〜95%である。基材層(B)の厚みが70%未満であるとフィルムの耐加水分解性に劣り強伸度保持率が低下し劣化が速くなる。他方、95%を超えると相対的に表層(A)の厚みが薄くなりフィルムに十分な耐候性が得られず紫外線によるフィルム変色や機械的強度の低下が大きくなる。なお、表層の合計厚みは、2つの表層の厚みの合計である。
【0014】
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、耐候性、耐加水分解性および他積層材との接着性を鼎立させる観点から、好ましくは表層(A)は基材層(B)の一方の面に設けられ、表層(A)/基材層(B)の二層からなる構成をとる。
【0015】
この二層構成の場合、本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムを太陽電池裏面保護膜として用いるときには、ポリエステルフィルムの耐候性を向上させるとともに太陽電池を紫外線から保護する観点から酸化チタン粒子の含有率が高い表層(A)が太陽電池モジュールの外側になるように配置し、耐加水分解性および他積層材との接着性を向上させる観点から酸化チタン粒子の含有率が低い基材層(B)をモジュールの内側になるように配置する。
【0016】
上記の二層構成の場合、基材層(B)の厚みはフィルム総厚みの70%〜97%、好ましくは80%〜97%である。基材層(B)の厚みが70%未満であるとフィルムの耐加水分解性に劣り強伸度保持率が低下し劣化が速くなる。他方、97%を超えると相対的に表層(A)の厚みが薄くなりフィルムに十分な耐候性が得られず紫外線によるフィルム変色や機械的強度の低下が大きくなる。
【0017】
ポリエステル
本発明におけるポリエステルとしては、熱可塑性ポリエステルを用い、好ましくは熱可塑性の芳香族ポリエステルを用いる。この芳香族ポリエステルとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートを用いることができる。これらは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。複数のポリマーのブレンドであってもよい。
【0018】
これらポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが、フィルムとしての特性が良好で好ましく、ポリエチレンテレフタレートは安価であり特に好ましい。
【0019】
ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーを用いる場合、共重合成分としては、例えばイソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4′―ジフェニルジカルボン酸といった芳香族ジカルボン酸成分、例えば1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1,6―ヘキサンジオールといったジオール成分を例示することができる。共重合成分の割合は、結果としてポリマー融点が245〜280℃、好ましくは250〜280℃の範囲になる割合である。ポリマー融点が245℃より低いと耐熱性が低下し、280℃より高いと生産性の点で好ましくない。
【0020】
ポリエステルの固有粘度は、好ましくは0.68dl/g以上、さらに好ましくは0.70〜0.95dl/gである。固有粘度が0.68dl/g未満ではフィルムの重量平均分子量を47000〜65000の範囲に調整することが困難であり、また、フィルムがデラミネーションを起こしやすく好ましくない。0.95dl/gより高いと溶融粘度が高いため溶融押出しが困難になり、また重合時間が長く不経済であり好ましくない。
【0021】
ルチル型酸化チタン粒子
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、表層(A)および基材層(B)に、ルチル型酸化チタン粒子を含有する。酸化チタンの結晶形態には、ルチル型とアナターゼ型があるが、本発明では、ルチル型酸化チタン粒子を用いる。ルチル型酸化チタン粒子を用いることで、フィルムの紫外線劣化を抑制し、光線を長時間照射したときのフィルム変色や機械的強度の低下を少なくすることができる。
【0022】
ルチル型酸化チタン粒子の平均粒径は、好ましくは0.1〜5.0μm、特に好ましくは0.1〜3.0μmである。0.1μm未満であると分散性が悪くなり、粒子の凝集が起こるため、均一なフィルムを得ることができず好ましくない。他方、5.0μmを超えるとフィルムの延伸性が悪くなり好ましくない。
【0023】
ルチル型酸化チタン粒子をポリエステル中に分散含有させ、ルチル型酸化チタン粒子を含有するポリエステル組成物にする方法として、各種の方法を用いることができる。その代表的な方法として、下記の方法を挙げることができる。(ア)ポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前にルチル型酸化チタン粒子を添加もしくは重縮合反応開始前に添加する方法。(イ)ポリエステルにルチル型酸化チタン粒子を添加し、溶融混練する方法。(ウ)上記(ア)または(イ)の方法においてルチル型酸化チタン粒子を多量添加したマスターペレットを製造し、これらとルチル型酸化チタン粒子を含有しないポリエステルとを混練して所定量のルチル型酸化チタン粒子を含有させる方法。(エ)上記(ウ)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
【0024】
ルチル型酸化チタン粒子の含有率
表層(A)は、この層を構成するポリエステル組成物100重量%あたりルチル型酸化チタン粒子を10〜30重量%、好ましくは14〜25重量%含有する。10重量%未満であるとフィルムに十分な耐候性が得られず紫外線による劣化が起こり易い。他方、30重量%を超えると基材層(B)との密着性に乏しく積層界面から層間剥離が生じるだけでなく、フィルムの耐加水分解性が低下し、早く劣化する。
【0025】
表層(A)を基材層(B)の一方の面に設けた二層構成の場合、基材層(B)は層を構成するポリエステル組成物100重量%あたりルチル型酸化チタン粒子を0.4〜3重量%、好ましくは1〜2重量%含有する。0.4重量%未満であると表層(A)との密着性に乏しく積層界面から層間剥離が生じる。他方、3重量%を超えるとフィルムの耐加水分解性に劣り強伸度保持率が低下して劣化が速いだけでなく他積層材との接着性にも劣る。
【0026】
表層(A)を基材層(B)の両方の面に設けた三層構成の場合、基材層(B)は層を構成するポリエステル組成物100重量%あたりルチル型酸化チタン粒子を0.1〜4重量%、好ましくは0.4〜4重量%、さらに好ましくは1〜3重量%含有する。0.1重量%未満であると表層(A)との密着性に乏しく積層界面から層間剥離が生じる。
【0027】
全層平均のルチル型酸化チタン粒子の含有率
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、全層平均のルチル型酸化チタン粒子含有率が3〜8重量%、好ましくは4〜6重量%である。全層平均のルチル型酸化チタン粒子含有率(重量%)は、下記式で定義される。
全層平均のルチル型酸化チタン粒子含有率(重量%)
=表層(A)のルチル型酸化チタン粒子含有率(重量%)×(表層(A)の厚み/フィルム総厚み)+基材層(B)のルチル型酸化チタン粒子含有率(重量%)×(基材層(B)の厚み/フィルム総厚み)
【0028】
全層平均のルチル型酸化チタン粒子含有率が3重量%未満であると、耐加水分解性には優れるが耐候性に乏しく紫外線による変色や機械特性低下が大きくなる。他方、8重量%を超えると耐候性には優れるが耐加水分解性に乏しく、強伸度保持率が低下する。
【0029】
積層ポリエステルフィルム
本発明においては、積層ポリエステルフィルムのポリエステルの重量平均分子量が47000〜65000であることが肝要である。重量平均分子量が47000未満であるとフィルムの耐熱性、耐加水分解性、耐候性、他積層材との接着性が不十分となる。重量平均分子量が高い方が耐熱性、耐加水分解性および接着性は良好となるが、重量平均分子量が65000を超えると、ルチル型酸化チタン粒子を含有させた組成物をフィルムとすることが困難となる。積層ポリエステルフィルムのポリエステルの好ましい重量平均分子量は52000〜60000である。
【0030】
本発明において積層ポリエステルフィルムのポリエステルのCOOH末端基濃度は6〜25当量/トン、さらに好ましくは6〜20当量/トンである。COOH末端基濃度が25当量/トンを超えると、フィルムの耐加水分解性に劣り、強伸度保持率が低下し、劣化が速くなる。他方、6当量/トン未満のフィルムを得るためには、それ以上にCOOH末端基濃度の少ないポリエステルを原料とする必要があり、原料の固相重合時間が長くかかり不経済である。
【0031】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、層間の密着性と生産性の観点から、共押出法で製造されていることが好ましい。
表層(A)を基材層(B)の一方の面に設けた二層構成の場合、表層(A)が基材層(B)の一方の面に設けられた積層ポリエステルフィルムを得るためには、2台の押出機を準備し、一方に表層(A)を構成する組成物、他方に基材層(B)を構成する組成物を仕込む。それぞれの押出機で溶融した原料を、例えば積層ブロックや口金内で表層(A)/基材層(B)の二層構成に積層し、口金から吐出することで未延伸積層シートを得る。未延伸積層シートは、二軸延伸して積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0032】
表層(A)を基材層(B)の両方の面に設けた三層構成の場合、表層(A)が基材層(B)の両方の面に設けられた積層ポリエステルフィルムを得るためには、2台の押出機を準備し、一方に表層(A)を構成する組成物、他方に基材層(B)を構成する組成物を仕込む。それぞれの押出機で溶融した原料を、例えば積層ブロックや口金内で表層(A)/基材層(B)/表層(A)の三層構成に積層し、口金から吐出することで未延伸積層シートを得る。二軸延伸して積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0033】
添加剤
表層(A)および/または基材層(B)のポリエステル組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、従来公知の添加剤を含有してもよい。この添加剤としては、例えば、酸化防止剤、末端封止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤を挙げることができる。酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系化合物を、熱安定剤としては、例えばリン系化合物を、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物を例示することができる。
【0034】
ポリエステルフィルムの耐加水分解性は、フィルムのポリエステル中のCOOH末端基濃度が低いほど優れたものになるため、耐加水分解性をさらに向上する目的で末端封止剤をポリエステル組成物に含有させることは非常に効果的である。この末端封止剤としては、従来公知のカルボジイミド化合物の単量体および/または重合体、オキサゾリン化合物の単量体および/または重合体を用いることができる。
【0035】
なかでも、カルボジイミド化合物の重合体が好ましく、芳香族カルボジイミド化合物の重合体、すなわち芳香族ポリカルボジイミドが特に好ましい。
カルボジイミド重合体の分子量は、好ましくは2000〜40000であり、この範囲の分子量の芳香族ポリカルボジイミドが特に好ましい。
【0036】
末端封止剤を用いる場合、基材層(B)のポリエステルの重量を基準に0.1〜2重量%の量で含有させることが好ましい。この範囲で含有させることで効果的に耐加水分解性を向上させることができる。基材層(B)のみにポリカルボジイミドを含有させると、加工工程でのブリードアウトによる工程汚染を少なくすることができて好ましい。
【0037】
耐加水分解性
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、温度85℃、湿度85%RHの環境下において3000時間エージング後の伸度保持率が50%以上であることが好ましい。温度85℃、湿度85%RHの環境下において3000時間のエージングは、概ね30年間の屋外暴露状態に相当する加水分解性を検査する加速試験の一つであり、上記伸度保持率が50%未満である場合は、耐加水分解性の不足により劣化を引き起こす可能性があり太陽電池裏面保護膜用フィルムとして好ましくない。伸度保持率を50%以上とするためにはフィルムの層構成、各層の樹脂組成および積層フィルムの重量平均分子量を本発明の範囲内とすることにより達成できる。
【0038】
耐候性
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、表層(A)側からの紫外線照射前後において、表層(A)のイエローインデックスの変化ΔYIが、好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である耐候性を備える。この範囲のΔYIを備えることで、光に対して特に良好な耐候性を得ることができ、長期間にわたり太陽電池を保護することができる。
【0039】
このΔYIは、高圧水銀ランプを用い200W/m2の照射強度で10時間フィルムに紫外線照射する前後でのフィルムのYI値の変化量であり、日本電色工業製自動色差計(SE−Σ90型)を用いて測定した、紫外線照射前後のフィルムのYI値から、下記式で算出される。
ΔYI=照射後のYI値−照射前のYI値
【0040】
また、本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、紫外線照射前の破断伸度を基準とした、紫外線照射後の破断伸度保持率が好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。この破断伸度保持率を備えることで、十分な耐候性を備え、太陽電池裏面保護膜用フィルムとして太陽電池を長期間にわたり保護することができる。
【0041】
フィルムの製造方法
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、積層フィルムのポリエステルの重量平均分子量が47000〜65000であり、COOH末端基濃度が6〜25当量/トンであるが、積層フィルムを構成する各層のポリエステルの全てが必ずしもこの条件を満足する必要はなく、積層フィルム全体としてこの条件を満足すればよい。
【0042】
積層ポリエステルフィルムのポリエステルの重量平均分子量を47000〜65000とし、COOH末端基濃度を6〜25当量/トンとするためには、フィルムの製造に用いる原料ポリエステルとして、例えば、固有粘度0.68〜0.95、かつCOOH末端基濃度が3〜30当量/トンのポリエステルを用いればよい。COOH末端基濃度が3〜30当量/トンのポリエステルは、例えば固相重合を施すことによって得ることができる。
【0043】
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、この原料ポリエステルを 用いて、従来公知の製膜方法に準拠して製造することができる。以下、その一例としてポリエステルおよびポリエステルに酸化チタン粒子を含有させたマスターペレットを用いて製造する方法を説明する。以下、ガラス転移温度をTg、融点をTmという。
【0044】
先ず、ポリエステルとマスターペレットとを所定の配合比にブレンドし表層(A)に用いるポリエステル組成物と、基材層(B)に用いるポリエステル組成物を用意する。必要に応じて乾燥させた後、各々を別々の押出機で270〜290℃の温度で溶融混合し、フィードブロックを用いた同時多層押出し法により、未延伸積層シートを製造する。
【0045】
表層(A)を基材層(B)の一方の面に設けた二層構成の場合、表層(A)を構成するポリマーの溶融物と基材層(B)を構成するポリマーの溶融物とを、フィードブロックを用いて表層(A)/基材層(B)となるように二層に積層し、スリットダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。溶融混合する温度が270℃未満では樹脂の溶融が不充分で押出機への負荷が高くなり、不適切である。他方、290℃を超えると樹脂の劣化が進み、結果としてフィルムの耐加水分解性が低下し好ましくない。
【0046】
表層(A)を基材層(B)の両方の面に設けた三層構成の場合、表層(A)を構成するポリマーの溶融物と基材層(B)を構成するポリマーの溶融物とを、フィードブロックを用いて表層(A)/基材層(B)/表層(A)となるように三層に積層し、スリットダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。溶融混合する温度が270℃未満では樹脂の溶融が不充分で押出機への負荷が高くなり、不適切である。他方、290℃を超えると樹脂の劣化が進み、結果としてフィルムの耐加水分解性が低下し好ましくない。
【0047】
次に、得られた未延伸積層シートを、少なくとも1軸方向、好ましくは二軸方向に延伸する。延伸は、逐次二軸延伸でもよく、同時二軸延伸でもよい。逐次二軸延伸する場合、スリットダイより押出されたポリマーは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸積層シートとする。この未延伸積層シートを、ロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸積層フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのTg以上の温度、さらにはTg〜(Tg+70℃)とするのが好ましい。
【0048】
縦延伸後のフィルムは、続いて、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これらの処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのTgより高い温度から始める。そしてTgより(5〜70)℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。
【0049】
表層(A)を基材層(B)の一方の面に設けた二層構成の場合、延伸倍率は、縦方向、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)ともに、好ましくは3.0〜4.2倍、さらに好ましくは3.2〜4.0倍である。3.0倍未満とするとフィルムの厚み斑の良好なフィルムが得られない。また、基材層(B)の凝集強度は高くなるが、耐加水分解性に劣るフィルムとなり好ましくない。他方、4.2倍を超えると耐加水分解性は良いが基材層(B)の凝集強度が低くなり好ましくない。
【0050】
表層(A)を基材層(B)の両方の面に設けた三層構成の場合、延伸倍率は、縦方向、横方向ともに、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜4.2倍である。2.5倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず好ましくなく、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。
【0051】
横延伸後のフィルムは両端を把持したまま(Tm−20℃)〜(Tm−100℃)で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させると寸法安定性が良くなる。これより高い温度で熱処理するとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。また、これより低い温度で熱処理すると熱収縮率が大きくなることがあり好ましくない。
【0052】
二軸延伸後の積層ポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは20〜350μm、さらに好ましくは40〜250μm、特に好ましくは50〜200μmである。20μm未満であると耐候性が低下して好ましくなく、他方、350μmを超えると不経済なだけである。
【0053】
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムのうえに太陽電池素子の封止樹脂を設ける場合、フィルムと封止樹脂との接着性を向上させる目的で、フィルムの基材層(B)のうえに易接着性のコーティング層を設けてもよい。コーティング層の構成材としては、ポリエステルフィルムとEVAの双方に優れた接着性を示す材を用いることが好ましく、この材として、例えばポリエステル樹脂やアクリル樹脂を例示することができ、これらの樹脂にさらに架橋成分を含有させることが好ましい。
【0054】
コーティング層の塗設は、一般的な既知のコーティング方法を用いることができるが、好ましくは、延伸可能なポリエステルフィルムに前述のコーティング層の構成成分を含む水性液を塗布した後、乾燥、延伸し、熱処理するインラインコーティング法で行う。このとき、フィルムの上に形成されるコーティング層の厚さは0.01〜1μmであることが好ましい。
【0055】
太陽電池裏面保護膜
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層フィルムは、水蒸気バリア層を積層した積層体として太陽電池裏面保護膜とすることが好ましい。この積層体は、JIS Z0208−73に従い測定される水蒸気の透過率が5g/(m2・24h)以下であることが好ましい。
水蒸気バリア層としては、水蒸気バリア性を有するフィルムや箔を用いてもよく、金属酸化物の蒸着膜や塗布膜を用いてもよい。
【0056】
水蒸気バリア性を有するフィルムとしては、例えばポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニリデンコートフィルム、ポリフッ化ビニリデンコートフィルムや、無機酸化物の蒸着薄膜を設けたフィルム、金属の蒸着薄膜を設けたフィルムを用いることができる。無機酸化物の蒸着薄膜を設けたフィルムとしては、酸化ケイ素蒸着フィルム、酸化アルミニウム蒸着フィルムを例示することができ、金属の蒸着薄膜を設けたフィルムとしては、アルミニウム蒸着フィルムを例示することができる。
【0057】
水蒸気バリア性を有する箔としては、アルミニウム箔、銅箔を例示することができる。
水蒸気バリア層として水蒸気バリア性を有するフィルムや箔を用いる場合、水蒸気バリア性を有するフィルムや箔は、接着剤を介して太陽電池裏面保護膜用積層フィルムの少なくとも一方の面に積層されることが好ましい。
また、水蒸気バリア層として、無機酸化物の蒸着薄膜や塗布膜、金属の蒸着薄膜を用いてもよい。無機酸化物の蒸着薄膜や塗布膜には、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウムを用いることができ、金属の蒸着薄膜には、例えばアルミニウムを用いることができる。
【0058】
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムに無機酸化物の蒸着薄膜層を積層した太陽電池裏面保護膜は、水蒸気バリア性に優れるので好ましい。
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、単独で用いてもよく、2枚以上を貼り合わせ用いてもよい。また、絶縁特性を向上させる目的で別の透明ポリエステルフィルムと貼り合わせて用いてもよく、耐久性を向上させる目的で、ポリフッ化ビニルなどの高耐候性樹脂からなるフィルムと貼り合わせてもよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。評価方法を示す。
(1)フィルム厚み
フィルムの試料をエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0060】
(2)各層の厚み
フィルムから試料を三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、平均厚みを求めた。
【0061】
(3)ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)
フィルムの試料について示差走査熱量装置TA Instruments製 MDSC Q100を用い、昇温速度20℃/分でガラス転移点および融解ピークを求めた。なお、サンプル量はポリエステル原料の測定の場合は10mg、ポリエステルフィルムの測定の場合は20mgとした。
【0062】
(4)固有粘度(IV)
フィルムの試料を、重量比6:4のフェノール:テトラクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃の温度にて測定した。フィルムについては、溶媒に溶解後、遠心分離機により酸化チタン粒子等のフィラーを取り除き、35℃の温度にて測定した。
【0063】
(5)COOH末端基濃度
フィルムの試料10mgをHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール):重クロロホルム=1:3の混合溶媒0.5mlに溶解してイソプロピルアミンを数滴添加し、1H−NMR法(50℃、600MHz)により定量した。
【0064】
(6)耐加水分解性
85℃、85%RHの雰囲気にフィルムを3000時間エージングした後、ASTM−D61Tによりフィルムの破断伸度を測定し、エージング前の破断伸度を100%にしたときの比(破断伸度保持率)を算出し、下記の基準で評価した。
◎:破断伸度保持率が80%を超える
○:破断伸度保持率が50%以上80%未満
△:破断伸度保持率が30%以上50%未満
×:破断伸度保持率が30%未満
【0065】
(7)耐候性(変色)
高圧水銀ランプ(東芝製 TOS CURE 401)を用いて、フィルムに200W/m2の照射強度で10時間紫外線照射を行った。予め測定しておいた紫外線照射前のフィルムのYI値と、紫外線照射前のフィルムのYI値を用いて、ΔYIを下記式に従い算出し、下記の基準で耐光性を評価した。なお、イエローインデックスのYI値は、日本電色工業製自動色差計(SE−Σ90型)を用いて測定し、フィルムが二層積層フィルムである場合は、表層(A)の面について測定した。
ΔYI=照射後のYI値−照射前のYI値
○:ΔYIが5未満
△:ΔYIが5以上10未満
×:ΔYIが10以上
【0066】
(8)耐候性(機械的特性)
高圧水銀ランプ(東芝製 TOS CURE 401)を用いて、フィルムに200W/mの照射強度で10時間紫外線照射を行った後、ASTM−D61Tによりフィルムの破断伸度を測定し、紫外線照射前の破断伸度を100%にしたときの比(破断伸度保持率)を算出し、下記の基準で評価した。紫外線照射は、フィルムが二層積層フィルムである場合には表層(A)の面に対して行った。
○:破断伸度保持率が50%以上
△:破断伸度保持率が30以上50%未満
×:破断伸度保持率が30%未満
【0067】
(9)耐熱性
フィルムの長手方向に100mm長、幅方向に10mm幅に切り出した短冊状の試料を、180℃、500時間乾熱処理した後、ASTM−D61Tによりフィルムの長手方向の破断伸度を測定し、処理前試料の破断伸度を100%にしたときの比(破断伸度保持率)を算出し、下記基準にて耐熱性を評価した。なお、耐熱性は破断伸度保持率の高いものが良好である。
○:破断伸度保持率が50%以上
×:破断伸度保持率が50%未満
【0068】
(10)層間のデラミ性
フィルムの試料の表層(A)にカッターにて3mm間隔のクロスカットを25個入れた後、表面にセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製CT405AP−18)を貼り付け、ゴムローラーを用いて圧着させた。次に、該試料を両面テープで固定し、セロテープ(登録商標)を手で90°方向に強制的に剥離し、剥離度合いを目視で観察し、5回平均値を以下の基準で判断した。
なお、○と◎が合格である。
◎:非常に良好(剥離面積2マス以下)
○:良好 (剥離面積2マス以上5マス未満)
△:やや劣る (剥離面積5マス以上)
【0069】
(11)無機微粒子の平均粒径
原料に用いる無機微粒子について、HORIBA製LA−750パーティクルサイズアナライザー(Particle Size Analyzer)を用いて平均粒径を測定した。50マスパーセントに相当する粒径を読み取り、この値を平均粒径とした。
【0070】
(12)押出性
押出性は以下の基準で評価した。
○:押出が容易である。
×:押出負荷が高く、フィルム作成に時間、コストがかかる。
【0071】
(13)重量平均分子量
積層ポリエステルフィルム3mgに、HFIP:クロロホルム(1:1)0.5mlを加えて溶解(一晩)させ、不溶物をメンブレンフィルター0.45μmでろ過し、GPC分析を行った。測定機器、条件は以下のとおりである。
GPC:HLC−8020 東ソー製
検出器:UV−8010 東ソー製
カラム:TSK−gelGMHHR・M×2 東ソー製
移動相:HPLC用クロロホルム
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:UV(254nm)
注入量:200μl
較正曲線用試料:ポリスチレン(Polymer Laboratories製EasiCal“PS−1”)
【0072】
(参考例1)ポリエチレンテレフタレートの製造(PET−a)
エステル交換反応容器にジメチルテレフタレートを100重量部、エチレングリコールを61重量部、酢酸マグネシウム四水塩を0.06重量部仕込み、150℃に加熱して溶融し撹拌した。反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成するメタノールを反応容器外へ留出させた。メタノールの留出が終了したらトリメチルリン酸を0.02重量部添加した。トリメチルリン酸を添加した後、三酸化アンチモンを0.03重量部添加し、反応物を重合装置に移行した。ついで重合装置内の温度を235℃から290℃まで90分間かけて昇温し、同時に装置内の圧力を大気圧から100Paまで90分間かけて減圧した。重合装置内容物の撹拌トルクが所定の値に達したら装置内を窒素ガスで大気圧に戻して重合を終了した。重合装置下部のバルブを開いて重合装置内部を窒素ガスで加圧し、重合の完了したポリエチレンテレフタレートをストランド状にして水中に吐出した。ストランドはカッターによってチップ化した。このようにして固有粘度が0.65dl/gであるポリエチレンテレフタレートのポリマーを得た。これをPET−aと称する。
【0073】
(参考例2)ポリエチレンテレフタレートの製造(PET−b)
参考例1で得られたポリマー(PET−a)を150〜160℃で3時間予備乾燥した後、210℃、100トール、窒素ガス雰囲気下で7時間固相重合を行った。固相重合後の固有粘度は0.85dl/gであった。これをPET−bと称する。
【0074】
(参考例3)ポリエチレンテレフタレートの製造(PET−c)
参考例1で得られたポリマー(PET−a)を150〜160℃で3時間予備乾燥した後、210℃、100トール、窒素ガス雰囲気下で12時間固相重合を行った。固相重合後の固有粘度は0.93dl/gであった。これをPET−cと称する。
【0075】
(参考例4)ポリエチレンテレフタレートの製造(PET−d)
参考例1で得られたポリマー(PET−a)を150〜160℃で3時間予備乾燥した後、210℃、100トール、窒素ガス雰囲気下で3時間固相重合を行った。固相重合後の固有粘度は0.73dl/gであった。これをPET−dと称する。
【0076】
(参考例5)ポリエチレンテレフタレートの製造(PET−e)
参考例1で得られたポリマー(PET−a)を150〜160℃で3時間予備乾燥した後、210℃、100トール、窒素ガス雰囲気下で14時間固相重合を行った。固相重合後の固有粘度は0.98dl/gであった。これをPET−eと称する。
【0077】
(参考例6)
参考例1で得られたPET−aを60重量部と、テイカ株式会社製ルチル型酸化チタン粒子JR301(平均粒径0.3μm)を40重量部とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPET−fと称する。
【0078】
(参考例7)
参考例2で得られたPET−bを60重量部と、テイカ株式会社製ルチル型酸化チタン粒子JR301(平均粒径0.3μm)を40重量部とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPET−gと称する。
【0079】
(参考例8)
参考例3で得られたPET−cを60重量部と、テイカ株式会社製ルチル型酸化チタン粒子JR301(平均粒径0.3μm)を40重量部とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPET−hと称する。
【0080】
(参考例9)
参考例4で得られたPET−dを60重量部と、テイカ株式会社製ルチル型酸化チタン粒子JR301(平均粒径0.3μm)を40重量部とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPET−iと称する。
【0081】
(参考例10)
参考例5で得られたPET−eを60重量部と、テイカ株式会社製ルチル型酸化チタン粒子JR301(平均粒径0.3μm)を40重量部とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPET−jと称する。
【0082】
(参考例11)
参考例2で得られたPET−bを60重量部と、堺化学工業株式会社製沈降性硫酸バリウム粒子300R(平均粒径0.7μm)を40重量部とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPET−kと称する。
【0083】
(参考例12)
参考例2で得られたPET−bを80重量部、ポリカルボジイミド化合物としてラインケミー製スタバックゾールP−100を20重量部とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPET−lと称する。
【0084】
参考実施例1
表層(A)は、参考例2で得られたPET−bと参考例7で得られたPET−gをルチル型酸化チタン粒子含有率が20重量%となるように混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、押出し機1に供給し280℃で溶融押出しした。基材層(B)は、参考例2で得られたPET−bと参考例7で得られたPET−gを酸化チタン粒子含有率が2重量%となるように混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、押出し機2に供給し280℃で溶融押出しした。それぞれの押出し機で溶融した樹脂組成物を、二層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままスリットダイよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを100℃にて長手方向(縦方向)に3.4倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.7倍延伸した。その後テンター内で220℃に加熱された雰囲気中で熱固定を行い、横方向に3%の幅入れを行い、室温まで冷やして太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの層構成は表1、物性は表2のとおりであった。表中、「PET」はポリエチレンテレフタレート、「酸化チタン」はルチル型酸化チタン粒子(平均粒径0.3μm)、「硫酸バリウム」は硫酸バリウム粒子(平均粒径0.7μm)を表す。
【0085】
参考実施例2〜5、参考例1および比較例1〜2、4〜5
表層(A)および基材層(B)のルチル型酸化チタン粒子含有率を表1に示すとおりに変更した以外は参考実施例1と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの層構成は表1、物性は表2のとおりであった。
【0086】
比較例6
参考例2で得られたPET−bと参考例7で得られたPET−gをルチル型酸化チタン粒子含有率が14重量%となるように混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した。乾燥の終了したチップを押出し機2に供給し280℃で溶融押出した後、スリットダイよりシート状に成形した。延伸以降は参考実施例1と同様にして太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの物性は表2のとおりであった。
【0087】
参考実施例6〜7および参考例2、比較例8
表層(A)および基材層(B)の膜厚みを表1に示すとおりに変更した以外は参考実施例1と同様にして太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの物性は表2のとおりであった。
【0088】
参考実施例8
表層(A)および基材層(B)の樹脂組成物を、それぞれ参考例3で得られたPET−cと参考例8で得られたPET−hとの混合で得る以外は、参考実施例1と同様にして太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのルチル型酸化チタン粒子含有率および層構成は表1、物性は表2のとおりであった。
【0089】
参考実施例9
表層(A)、基材層(B)の樹脂組成物をそれぞれ参考例4で得られたPET−dと参考例9で得られたPET−iの混合で行う以外は参考実施例1と同様にして太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのルチル型酸化チタン粒子含有率および層構成は表1、物性は表2のとおりであった。
【0090】
実施例1
表層(A)、基材層(B)の樹脂組成物をそれぞれ参考例1で得られたPET−aと参考例6で得られたPET−fの混合で行う以外は参考実施例1と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのルチル型酸化チタン粒子含有率および層構成は表1、物性は表2のとおりであった。
【0091】
比較例10
表層(A)、基材層(B)の樹脂組成物をそれぞれ参考例5で得られたPET−eと参考例10で得られたPET−jの混合で行う以外は参考実施例1と同様にして太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのルチル型酸化チタン粒子含有率および層構成は表1、物性は表2のとおりであった。
【0092】
比較例11
表層(A)、基材層(B)の樹脂組成物をそれぞれ参考例2で得られたPET−bと参考例11で得られたPET−kの混合で行う以外は参考実施例1と同様にして太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの硫酸バリウム粒子の含有率および層構成は表1、物性は表2のとおりであった。
【0093】
参考実施例10
基材層(B)の樹脂組成物を参考例2で得られたPET−bと参考例7で得られたPET−gと参考例12で得られたPET−lの混合で行う以外は参考実施例1と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのルチル型酸化チタン粒子と添加剤の含有率および層構成は表1、物性は表2のとおりであった。表中、「P100」はポリカルボジイミド化合物(ラインケミー製スタバックゾールP−100)である。
【0094】
参考実施例11 太陽電池裏面保護膜の作成例
厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製‘テイジンテトロンフィルムNS−12’)に酸化珪素(SiO2)を蒸着し800オングストロームの厚さの酸化珪素膜蒸着フィルムを得た。該蒸着フィルムを市販のウレタン系接着剤(東洋モートン社製アドコード AD−76P1)を介して参考実施例1の白色ポリエステルフィルムの基材層(B)側にドライラインネートした。上記接着剤は、主剤10重量部に対し硬化剤1重量部の割合で混合し、酢酸エチルで30重量%に調整し、蒸着フィルムの非蒸着面にグラビアロール法で溶剤乾燥後の塗布厚みが5μmとなるように塗布した。乾燥温度は100℃とした。また、ラミネートの条件はロールラミネーターで60℃の温度で1kg/cmの圧力で行い、硬化条件は60℃で3日間とした。得られたフィルムは、優れた耐候性、耐加水分解性、さらには積層体のフィルム間でのデラミネーションが起こりにくい太陽電池裏面保護膜であった。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
参考実施例12
表層(A)は、参考例2で得られたPET−bと参考例7で得られたPET−gをルチル型酸化チタン粒子含有率が20wt%となるように混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、押出し機1に供給し280℃で溶融押出しした。基材層(B)は、参考例2で得られたPET−bと参考例7で得られたPET−gをルチル型酸化チタン粒子含有率が2wt%となるように混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、押出し機2に供給し280℃で溶融押出しした。それぞれの押出し機で溶融した樹脂組成物を、三層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままスリットダイよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを100℃にて長手方向(縦方向)に3.4倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.7倍延伸した。その後テンター内で220℃に加熱された雰囲気中で熱固定を行い、横方向に3%の幅入れを行い、室温まで冷やして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの層構成は表3、物性は表4に記載のとおりであった。
【0098】
参考実施例13〜16、参考例3および比較例12〜13、15〜16
表層(A)および基材層(B)のルチル型酸化チタン粒子含有率を表3に示すとおりに変更した以外は参考実施例12と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの層構成は表3、物性は表4のとおりであった。
【0099】
比較例17
参考例2で得られたPET−bと参考例7で得られたPET−gをルチル型酸化チタン粒子含有率が14wt%となるように混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した。乾燥の終了したチップを押出し機2に供給し280℃で溶融押出した後、スリットダイよりシート状に成形した。延伸以降は参考実施例12と同様にして単層白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの物性は表4のとおりであった。
【0100】
参考実施例17〜18、参考例4および比較例19
表層(A)および基材層(B)の膜厚みを表3に示すとおりに変更した以外は参考実施例12と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの物性は表4のとおりであった。
【0101】
参考実施例19
表層(A)、基材層(B)の樹脂組成物をそれぞれ参考例3で得られたPET−cと参考例8で得られたPET−hの混合で行う以外は参考実施例12と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのルチル型酸化チタン粒子含有率および層構成は表3、物性は表4のとおりであった。
【0102】
参考実施例20
表層(A)、基材層(B)の樹脂組成物をそれぞれ参考例4で得られたPET−dと参考例9で得られたPET−iの混合で行う以外は参考実施例12と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのルチル型酸化チタン粒子含有率および層構成は表3、物性は表4のとおりであった。
【0103】
実施例2
表層(A)、基材層(B)の樹脂組成物をそれぞれ参考例1で得られたPET−aと参考例6で得られたPET−fの混合で行う以外は参考実施例12と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのルチル型酸化チタン粒子含有率および層構成は表3、物性は表4のとおりであった。
【0104】
比較例21
表層(A)、基材層(B)の樹脂組成物をそれぞれ参考例5で得られたPET−eと参考例10で得られたPET−jの混合で行う以外は参考実施例12と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのルチル型酸化チタン粒子含有率および層構成は表3、物性は表4のとおりであった。
【0105】
比較例22
表層(A)、基材層(B)の樹脂組成物をそれぞれ参考例2で得られたPET−bと参考例11で得られたPET−kの混合で行う以外は参考実施例12と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの硫酸バリウム粒子の含有率および層構成は表3、物性は表4のとおりであった。
【0106】
参考実施例21
基材層(B)の樹脂組成物を参考例2で得られたPET−bと参考例7で得られたPET−gと参考例12で得られたPET−lの混合で行う以外は参考実施例12と同様にして白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムのルチル型酸化チタン粒子と添加剤の含有率および層構成は表3、物性は表4のとおりであった。表中、「P100」はポリカルボジイミド化合物(ラインケミー製スタバックゾールP−100)である。
【0107】
参考実施例22 太陽電池裏面保護膜の作成例
厚み12μmの二軸配向ポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製‘テイジンテトロンフィルムNS−12’)に酸化珪素(SiO2)を蒸着し800オングストロームの厚さの酸化珪素膜蒸着フィルムを得た。該蒸着フィルムを市販のウレタン系接着剤(東洋モートン社製アドコード AD−76P1)を介して参考実施例12の白色ポリエステルフィルムの基材層(B)側にドライラインネートした。上記接着剤は、主剤10重量部に対し硬化剤1重量部の割合で混合し、酢酸エチルで30重量%に調整し、蒸着フィルムの非蒸着面にグラビアロール法で溶剤乾燥後の塗布厚みが5μmとなるように塗布した。乾燥温度は100℃とした。また、ラミネートの条件はロールラミネーターで60℃の温度で1kg/cmの圧力で行い、硬化条件は60℃で3日間とした。この例では、優れた耐候性、耐加水分解性、さらには積層体のフィルム間でのデラミネーションが起こりにくい太陽電池裏面保護膜を得ることができた。
【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルムは、太陽電池裏面保護膜として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層(A)と基材層(B)から構成された積層フィルムであって、表層(A)は基材層(B)の少なくとも一方の面に設けられ、表層(A)はルチル型酸化チタン粒子10〜30重量%およびポリエステル70〜90重量%からなるポリエステル組成物で構成され、基材層(B)はルチル型酸化チタン粒子0.1〜4重量%およびポリエステル96〜99.9重量%からなるポリエステル組成物で構成され、かつ、基材層(B)がフィルム総厚みの70%〜97%の厚さを有し、積層フィルムのポリエステルの重量平均分子量が42300以上47000未満であり、積層フィルムのポリエステルのCOOH末端基濃度が6〜30当量/トンであり、積層フィルムの全層平均のルチル型酸化チタン粒子含有率が3〜8重量%であることを特徴とする太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
表層(A)は基材層(B)の一方の面に設けられ、基材層(B)はルチル型酸化チタン粒子0.4〜3重量%およびポリエステル97〜99.6重量%からなるポリエステル組成物で構成される、請求項1に記載の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
表層(A)は基材層(B)の両方の面に設けられ、基材層(B)がフィルム総厚みの70%〜95%の厚さを有する、請求項1に記載の太陽電池裏面保護膜用積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2013−10363(P2013−10363A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221377(P2012−221377)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2011−507200(P2011−507200)の分割
【原出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】