太陽電池関連試料測定システム
【課題】 フォトルミネッセンス法による試料の特性の測定を好適に行うことが可能な太陽電池関連試料測定システムを提供する。
【解決手段】 ソーラシミュレータ10と、付加測定装置20とによって試料測定システム1Aを構成する。ソーラシミュレータ10は、試料Sを載置するステージ11と、白色光供給部13と、ハウジング部15とを有する。付加測定装置20は、本体部21と、測定光路上に挿入された測定位置及び測定光路を外れた待機位置の間で移動可能に構成されたPL測定ユニット22とを有する。また、PL測定ユニット22は、供給部13からの白色光を励起光へと変換する光学フィルタ23と、励起光が照射された試料Sから放出される被測定光を検出する被測定光検出部24と、フィルタ23及び検出部24を一体に保持するユニット枠部25とを有する。
【解決手段】 ソーラシミュレータ10と、付加測定装置20とによって試料測定システム1Aを構成する。ソーラシミュレータ10は、試料Sを載置するステージ11と、白色光供給部13と、ハウジング部15とを有する。付加測定装置20は、本体部21と、測定光路上に挿入された測定位置及び測定光路を外れた待機位置の間で移動可能に構成されたPL測定ユニット22とを有する。また、PL測定ユニット22は、供給部13からの白色光を励起光へと変換する光学フィルタ23と、励起光が照射された試料Sから放出される被測定光を検出する被測定光検出部24と、フィルタ23及び検出部24を一体に保持するユニット枠部25とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関連する試料の特性をフォトルミネッセンス法によって測定するための太陽電池関連試料測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化防止などの観点から、太陽電池の開発が盛んに行われている。そのような太陽電池の研究開発においては、例えば太陽電池での変換効率の向上等に関して、太陽電池の材料、セル、パネルなどの太陽電池に関連する試料の特性の測定、検査を行うことが重要となっている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−235903号公報
【特許文献2】特表2009−512198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池の開発において最も重要である変換効率の測定(I−V測定)では、太陽電池関連試料に対して、所定の波長スペクトル、所定の照射条件で擬似的な太陽光となる白色光を照射するソーラシミュレータが用いられている。この場合、太陽電池セルまたはモジュールなどの試料に対して、ソーラシミュレータによって白色光を照射するとともに、太陽電池セル上の電極に対してプローブ等を当てて、その電気的特性を測定する。
【0005】
このようなI−V特性などの試料の電気的特性の測定では、太陽電池セルの全体における全ての要因を含む測定結果が得られる。そのため、変換効率等の特性に問題があるセルが発見された場合、電気的特性測定の結果では、製造工程のどのプロセスにおける不具合であるのか、また、不良が発生している箇所の特定等を行うことができない。このような太陽電池セルの不良の原因究明を行うには、電気的測定以外の方法、例えばフォトルミネッセンス(PL)法、あるいはエレクトロルミネッセンス(EL)法が用いられる。
【0006】
フォトルミネッセンス測定(PL測定)の原理は、対象となる試料に、そのバンドギャップエネルギーEgよりも高いエネルギー(短い波長)の励起光を照射することにより、試料内でキャリア(電子または正孔)が発生し、PN接合近傍でキャリアが再結合する際の発光を検出する。このような方法では、得られたPL発光の2次元画像、またはPL発光の波長スペクトルなどから、材料内部の電子状態を観察することができる。
【0007】
ここで、太陽電池の評価は、通常、上記したように、ソーラシミュレータを用い、例えば、太陽光に近い波長スペクトルを有するAM1.5G等の白色光により、太陽光の強度に近い1SUNなどの条件下で行われている。一方、太陽電池の変換効率以外の物性、欠陥の検査を、PLイメージングやスペクトル測定などによって行う場合、そのようなPL測定は、通常、試料に対してレーザ光を照射することで実行される。
【0008】
フォトルミネッセンスを用いた太陽電池関連試料の検査については、材料物性的には、PL発光と太陽電池セルの特性との間に相関があることが示唆されている。すなわち、おおよそPL測定において発光が強いものが変換効率が高く、または欠陥箇所が少ない傾向がある。しかしながら、例えば化合物薄膜太陽電池であるCIGS(Cu、In、Ga、Seの化合物)太陽電池では、光に対する電気的な特性、及びPL発光に対する励起光強度にリニアリティが無い場合があるため、PL測定において変換効率と相関が取れるパラメータとして最適な励起光強度を選択することが難しい。
【0009】
また、レーザ光励起によるPL測定は、単一波長の光による励起となるため、白色光を用いる変換効率の測定とは絶対的に異なる励起光スペクトルとなる。試料に対する励起光源にレーザ光源を使用する場合、実用的な励起光波長は、レーザの材料等に起因した、例えば532nm、808nmなどの特定の波長であり、この場合の励起光波長は、必ずしも測定対象の試料に最適化されていない。
【0010】
例えば、測定対象の材料に対して適切ではない極端に短い波長(例えば355nm)の光を励起光として用いた場合、光の侵入長の問題により、表面付近でのPL測定の対象以外を含む情報のみが見えてしまい、目的である変換効率と相関が取れるデータとは、全く異なる現象を測定してしまう可能性がある。また、太陽電池に関しては、試料に照射する光に対しては、その照射角度、あるいは試料面でのユニフォミティなど、多岐にわたって厳密な要求事項があり、PLイメージングやスペクトル測定においても、要求事項に近い状態で測定を行うことが望まれる。
【0011】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、太陽電池に関連する試料について、フォトルミネッセンス法による試料の特性の測定を好適に行うことが可能な太陽電池関連試料測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明による太陽電池関連試料についての試料測定システムは、(1)太陽電池に関連する試料の特性を測定するためのソーラシミュレータと、(2)ソーラシミュレータを利用して、フォトルミネッセンス法による試料の測定を行うために用いられる付加測定装置とを備え、(3)ソーラシミュレータは、試料を載置する試料ステージと、試料に対して、擬似的な太陽光となる白色光を供給する白色光供給部と、試料ステージ及び白色光供給部を一体に保持するハウジング部とを有し、(4)付加測定装置は、ソーラシミュレータに対して所定位置に付加的に配置される測定装置本体部と、測定装置本体部に取り付けられ、ソーラシミュレータに対し、白色光供給部から試料ステージへの測定光路上に挿入された測定位置、及び測定光路を外れた待機位置の間で移動可能に構成されたフォトルミネッセンス測定ユニットとを有し、(5)フォトルミネッセンス測定ユニットは、フォトルミネッセンス測定ユニットを測定位置に配置したときに、白色光供給部から試料ステージへと供給される白色光を、所定の波長スペクトルを有する励起光へと変換する光学フィルタと、光学フィルタからの励起光が照射された試料から放出される被測定光を検出する被測定光検出部と、光学フィルタ及び被測定光検出部を一体に保持するとともに、測定位置及び待機位置の間で移動可能に測定装置本体部に取り付けられるユニット枠部とを有することを特徴とする。
【0013】
上記した太陽電池関連試料測定システムにおいては、太陽電池に関連する材料、セル、パネルなどの試料に擬似的な太陽光となる白色光を供給して検査を行うように構成されたソーラシミュレータに対し、フォトルミネッセンス測定ユニット(PL測定ユニット)を有する付加測定装置を付加的に設置する。また、PL測定ユニットを、白色光を励起光に変換する光学フィルタ(波長選択フィルタ)、試料からの光を検出する被測定光検出部、及びそれらを一体に保持するユニット枠部によって構成する。
【0014】
そして、ソーラシミュレータ、及び付加測定装置の装置本体部に対し、このPL測定ユニットが、ソーラシミュレータでの試料に対する白色光の供給、照射範囲によって規定される測定光路を含む測定位置と、測定光路を外れた待機位置との間で移動可能な構成とする。このような構成によれば、PL測定ユニットが待機位置に配置されている状態では、従来と同様のI−V特性測定などの電気的特性の測定が可能であるとともに、PL測定ユニットが測定位置に配置されている状態では、光学フィルタを通過した白色光の光成分を励起光として、試料についてのPL測定を行うことが可能となる。これにより、太陽電池に関連する試料について、フォトルミネッセンス法による試料の特性の測定を好適に行うことが可能となる。
【0015】
ここで、PL測定ユニットにおいて用いられる、試料からの被測定光を検出する検出部の構成については、被測定光検出部は、被測定光による2次元画像を取得する撮像装置を有する構成を用いることができる。このような構成では、PLイメージング測定による試料の特性の評価を行うことができる。
【0016】
あるいは、被測定光検出部は、被測定光を分光する分光器と、分光器によって分光された被測定光を検出する光検出器とを有する構成を用いることができる。このような構成では、分光された被測定光の各波長成分を1または複数の光検出器で検出することにより、PLスペクトル測定による試料の特性の評価を行うことができる。
【0017】
また、フォトルミネッセンス測定ユニットは、試料ステージ及び被測定光検出部の間に配置され、被測定光のうちで所定の波長範囲内の光成分を被測定光検出部へと選択的に通過させる第2の光学フィルタを有することが好ましい。このように、被測定光検出部の前段に第2の光学フィルタを設けることにより、試料からの光のうちで、試料の特性の評価に適した波長範囲の光成分のみを選択的に検出することができる。
【0018】
また、フォトルミネッセンス測定ユニットは、試料の通常画像の取得に用いられる照明装置を有する構成としても良い。ここで、PL測定ユニットが測定位置に配置されている状態では、光学フィルタが測定光路上に挿入されているために、ソーラシミュレータからの光は、被測定光検出部を構成するカメラ等で検出できる波長域の光を含まない場合がある。これに対して、上記のようにPL測定ユニットに照明装置を設けることにより、PL測定ユニットが測定位置に配置されている状態でも、試料のパターン画像などの通常画像を好適に取得することができる。
【0019】
また、上記の試料測定システムは、ソーラシミュレータ、及び付加測定装置に加えて、ソーラシミュレータ及び付加測定装置による試料のフォトルミネッセンス測定を制御する制御装置を備える構成としても良い。このような制御装置は、例えば付加測定装置に付属または内蔵された構成であっても良い。また、この場合、制御装置は、ソーラシミュレータにおいて、白色光供給部と試料ステージとの間に設けられているシャッタの動作を制御する構成としても良い。
【0020】
また、試料測定システムは、ソーラシミュレータに対して設けられ、試料の電気的特性の測定を行うための電気的特性測定装置をさらに備える構成としても良い。これにより、試料に対するPL測定に加えて、ソーラシミュレータを用いたI−V特性測定などの電気的特性の測定を好適に行うことができる。また、このような電気的特性測定装置は、例えばソーラシミュレータに付属または内蔵された構成であっても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明の太陽電池関連試料測定システムによれば、試料に白色光を供給して測定を行うソーラシミュレータに対し、PL測定ユニットを有する付加測定装置を設け、PL測定ユニットを、白色光を励起光に変換する光学フィルタ、被測定光検出部、及びユニット枠部によって構成するとともに、PL測定ユニットが、試料に対する測定光路を含む測定位置と、測定光路を外れた待機位置との間で移動可能な構成とすることにより、太陽電池に関連する試料について、フォトルミネッセンス法による試料の特性の測定を好適に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】太陽電池関連試料測定システムの一実施形態の構成を示す正面図である。
【図2】図1に示した試料測定システムの構成を示す正面図である。
【図3】図1に示した試料測定システムの構成を示す側面図である。
【図4】図1に示した試料測定システムの構成を示す斜視図である。
【図5】試料測定に用いられる白色光、励起光、及び試料からの被測定光の波長スペクトルを示すグラフである。
【図6】試料からの被測定光の波長スペクトルを示すグラフである。
【図7】試料測定方法の一例を示すフローチャートである。
【図8】試料測定方法の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面とともに本発明による太陽電池関連試料測定システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0024】
図1は、太陽電池関連試料測定システムの一実施形態の構成を示す正面図である。この図1においては、後述するフォトルミネッセンス測定ユニット(PL測定ユニット)が待機位置に配置されている状態を示している。また、図2は、図1に示した太陽電池関連試料測定システムの構成を示す正面図である。図3は、図1に示した試料測定システムの構成を示す側面図である。図4は、図1に示した試料測定システムの構成を示す斜視図である。これらの図2〜図4においては、PL測定ユニットが測定位置に配置されている状態を示している。また、各図において、図1〜図3では、試料測定システムの構成を模式的に示し、図4では、その構造の一例をやや具体的に示している。
【0025】
本実施形態による試料測定システム1Aは、太陽電池に関連する材料、セル、パネルなどの試料(以下、太陽電池関連試料、または単に試料という)Sに対して、その特性を検査、評価するための測定を行う太陽電池関連試料測定システムであり、ソーラシミュレータ10と、電気的特性測定装置19と、付加測定装置20と、制御装置30とを備えて構成されている。
【0026】
ソーラシミュレータ10は、太陽電池関連試料Sの特性を測定するためのものであり、試料ステージ11と、白色光供給部13と、ハウジング部15とを有している。また、測定対象の試料Sを載置する試料ステージ11は、ステージ駆動部12により、x軸方向、y軸方向(水平方向)、及びz軸方向(垂直方向)に移動して、ステージ11上の試料Sにおける測定位置、測定範囲を調整、設定することが可能に構成されている。
【0027】
白色光供給部13は、ステージ11上の試料Sに対して、太陽光に近い波長スペクトルを有する白色光を、所定の照射条件(照射範囲、照射角度、照射光強度分布など)によって、試料Sの特性測定用の擬似的な太陽光として供給する。白色光供給部13は、具体的には例えば、1または複数の光源と、光源からの光の光路、波長スペクトル等を調整する1または複数の光学素子を含む光学系とによって構成される。また、白色光供給部13とステージ11との間には、その測定光軸Ax上に、白色光供給部13から試料Sへの白色光の供給のON/OFFを切り換えるシャッタ14が設けられている。
【0028】
ハウジング部15は、試料ステージ11、及び白色光供給部13を一体に保持する。本実施形態においては、ハウジング部15は、上部ハウジング部16と、下部ハウジング部17とによって構成されている。上部ハウジング部16は、白色光供給部13及びシャッタ14を内部に収容するとともに、その下方に試料ステージ11に対向する開口部を有する箱状に構成されている。白色光供給部13からの白色光は、ON状態(開状態)のシャッタ14、及び上部ハウジング部16の下方の開口部を介し、光軸Axを含んで所定範囲に広がる測定光路によって、ステージ11上の試料Sへと供給される。
【0029】
下部ハウジング部17は、図4に示すように、上部ハウジング部16と、ハウジング底部18との間に4本の柱状部材を設けた構成となっており、その内部にある測定光路を含む空間に外部からアクセスすることが可能に構成されている。また、試料ステージ11、及びステージ駆動部12は、ハウジング底部18上に設置されている。
【0030】
このようなソーラシミュレータ10に対し、その近傍の所定位置に、付加測定装置20が設置されている。付加測定装置20は、ソーラシミュレータ10を利用して、フォトルミネッセンス(PL)法による太陽電池関連試料Sの測定を行うために用いられるものであり、測定装置本体部21と、フォトルミネッセンス(PL)測定ユニット22とを有している。測定装置本体部21は、ソーラシミュレータ10に対して所定位置(図1においては、ソーラシミュレータ10の下部ハウジング部17の右側の位置)に、付加的かつ固定的に配置されている。
【0031】
PL測定ユニット22は、測定装置本体部21に取り付けられるとともに、ソーラシミュレータ10に対し、白色光供給部13から試料ステージ11上の試料Sへの測定光路上に挿入された測定位置(図2〜図4)、及び測定光路を外れた待機位置(図1)の間で移動可能に構成されている。
【0032】
PL測定ユニット22は、測定光路を外れた待機位置に配置される場合、図1に示すように、本体部21の内部に格納された状態となる。また、PL測定ユニット22は、測定光路を含む測定位置(挿入位置)に配置される場合、図2〜図4に示すように、本体部21から、ソーラシミュレータ10の下部ハウジング部17の内部にある測定光路を含む空間に引き出されることで、測定光路上で、シャッタ14と試料ステージ11との間にある測定位置に挿入される。
【0033】
PL測定ユニット22は、図2〜図4に示すように、光学フィルタ23と、被測定光検出部24と、ユニット枠部25とを有している。光学フィルタ23は、PL測定ユニット22を測定位置に配置したときに、光軸Axを含む測定光路において、白色光供給部13から試料ステージ11へと供給される白色光のうちで、所定の波長範囲内の光成分を選択的に通過させることで、白色光を所定の波長スペクトルを有する励起光へと変換する波長選択フィルタである。
【0034】
この光学フィルタ23としては、ソーラシミュレータ10から発生する白色光からフォトルミネッセンスが発生する波長領域を取り除き、励起光波長領域を透過するフィルタであればよく、例えば、白色光のうちで短波長側の所定の波長範囲内の光成分を通過させ、長波長側の光成分をカットするショートパスフィルタ(SPF)を用いることができる。あるいは、光学フィルタ23として、所定の波長範囲内の光成分を通過させ、それよりも短波長側、及び長波長側の光成分をカットするバンドパスフィルタ(BPF)を用いても良い。
【0035】
被測定光検出部24は、光学フィルタ23を通過して生成された励起光を試料Sに照射したときに、励起光が照射された試料Sから放出されるPL発光を含む被測定光を検出する検出部である。この検出部24は、図3、図4に示すように、白色光供給部13及び光学フィルタ23から試料ステージ11への測定光路(白色光、励起光が通過する範囲)を外れた所定位置に設置されている。
【0036】
この被測定光検出部24の構成については、例えば、被測定光による2次元画像を取得する撮像装置(撮像カメラ)によって、検出部24を構成することができる。このような構成では、検出部24により、PLイメージング測定による試料Sの特性の評価を行うことができる。あるいは、被測定光を分光する分光器と、分光された被測定光を検出する光検出器とによって、検出部24を構成しても良い。このような構成では、検出部24において、分光器によって分光された被測定光の各波長成分を1または複数の光検出器で検出することにより、PLスペクトル測定による試料Sの特性の評価を行うことができる。
【0037】
PL測定ユニット22では、これらの光学フィルタ23、及び被測定光検出部24に対し、ユニット枠部25が設けられている。ユニット枠部25は、光学フィルタ23及び被測定光検出部24を一体に保持するとともに、上述した測定位置及び待機位置の間で移動可能なように、測定装置本体部21に取り付けられる。図4に示した構成例では、ユニット枠部25の側面にレール25aが設けられており、このレール25aと、本体部21の内側に設けられたレールとによって、ユニット枠部25を含むPL測定ユニット22が、水平方向(左右方向)に移動する構成となっている。
【0038】
また、本実施形態によるPL測定ユニット22では、ソーラシミュレータ10の試料ステージ11と、PL測定ユニット22の被測定光検出部24との間に、バンドパスフィルタ(BPF)26が設けられている。このバンドパスフィルタ26は、ステージ11上の試料Sからの被測定光のうちで、所定の波長範囲内の光成分(例えば、励起光照射による試料SからのPL発光を含む光成分)を被測定光検出部24へと選択的に通過させる第2の光学フィルタであり、検出部24の前面側(試料ステージ11側)に固定されている。なお、この第2の光学フィルタとしては、検出部24で検出すべき光成分の波長範囲に応じて、バンドパスフィルタ以外の波長選択フィルタを用いても良い。
【0039】
また、PL測定ユニット22では、光学フィルタ23よりも試料ステージ11側で、測定光路を外れた位置に、照明装置27が設けられている。この照明装置27は、PL測定ユニット22が測定位置に配置された状態で、試料Sの通常画像を取得する際に用いられるものであり、例えば、赤外LEDなどの赤外照明装置が用いられる。
【0040】
本実施形態による試料測定システム1Aでは、これらのソーラシミュレータ10、付加測定装置20に加えて、電気的特性測定装置19、及び制御装置30が設けられている。電気的特性測定装置19は、ソーラシミュレータ10に対して設けられ、図1に示すように、試料ステージ11上の試料Sと所定の配線によって接続されて、試料Sの電気的特性の測定、例えばI−V特性の測定を行う際に用いられる。なお、図2〜図4においては、電気的特性測定装置19の図示を省略している。
【0041】
また、制御装置30は、ソーラシミュレータ10及び付加測定装置20に接続されて設けられ、図2に示すように、ソーラシミュレータ10及び付加測定装置20の各部の動作を制御することで、それらによる試料Sに対するPL測定の実行を制御する。例えば、この制御装置30は、PL測定の実行状況に応じてソーラシミュレータ10に設けられているシャッタ14の動作を制御する。このように、シャッタ動作を制御する構成は、ソーラシミュレータ10がシャッタステータス出力等を有する場合に有効である。
【0042】
また、この制御装置30に対し、表示装置31、及び入力装置32が接続されている。表示装置31は、本測定システム1Aにおける太陽電池関連試料Sの特性の測定に関する情報を操作者に表示する。また、入力装置32は、測定に必要な情報、指示等の入力に用いられる。なお、図1、図3、図4においては、制御装置30、表示装置31、入力装置32の図示を省略している。
【0043】
本実施形態による太陽電池関連試料測定システム、及びそれによる試料測定方法の効果について説明する。
【0044】
図1〜図4に示した太陽電池関連試料測定システム1Aにおいては、試料Sに擬似的な太陽光となる白色光を供給して検査を行うように構成されたソーラシミュレータ10に対し、PL測定ユニット22を有する付加測定装置20を付加的に設置する。また、PL測定ユニット22を、白色光を励起光に変換する光学フィルタ23、試料Sからの被測定光を検出する被測定光検出部24、及びそれらを一体に保持するユニット枠部25によって構成する。
【0045】
そして、ソーラシミュレータ10、及び付加測定装置20の装置本体部21に対し、このPL測定ユニット22が、ソーラシミュレータ10での試料Sに対する白色光の供給範囲によって規定される測定光路を含む測定位置と、測定光路を外れた待機位置との間で移動可能な構成とする。このような構成によれば、PL測定ユニット22が待機位置に配置されている状態では、電気的特性測定装置19を用いて従来と同様のI−V特性測定などの電気的特性の測定が可能であるとともに、PL測定ユニット22が測定位置に配置されている状態では、光学フィルタ23を通過した白色光の光成分を励起光として、試料SについてのPL測定を行うことが可能となる。これにより、太陽電池関連試料Sについて、フォトルミネッセンス法による試料Sの特性の測定を含む各種の測定、検査を好適に行うことが可能となる。
【0046】
上記実施形態では、PL測定ユニット22において、試料ステージ11と被測定光検出部24との間に、被測定光のうちで所定の波長範囲内の光成分を選択的に通過させるバンドパスフィルタ26を設けている。このように検出部24の前段に、バンドパスフィルタ26などの光学フィルタを設けることにより、検出部24において、試料Sからの光のうちで、試料Sの特性の評価に適した波長範囲の光成分のみを選択的に検出することができる。例えば、被測定光検出部24に用いられる撮像装置が励起光の波長範囲の一部にも感度を有し、PL測定の妨げになるような場合には、このように光学フィルタ26を設けて励起光の波長範囲内の光成分をカットする構成が有効である。ただし、このようなフィルタ26については、不要であれば設けない構成としても良い。
【0047】
また、PL測定ユニット22は、試料Sの通常画像の取得に用いられる照明装置27を有している。ここで、PL測定ユニット22が測定位置に配置されている状態では、光学フィルタ23が測定光路上に挿入されているために、ソーラシミュレータからの光は、被測定光検出部を構成するカメラ等で検出できる波長域の光を含まない場合がある。これに対して、上記のようにPL測定ユニット22に照明装置27を設けることにより、PL測定ユニット22が測定位置に配置されている状態でも、試料Sのパターン画像などの通常画像を好適に取得することができる。ただし、このような照明装置27については、不要であれば設けない構成としても良い。
【0048】
また、上記実施形態では、試料測定システム1Aにおいて、PL測定を制御する制御装置30を設けている。このような制御装置30は、例えば付加測定装置20に付属または内蔵された構成であっても良い。また、この場合、制御装置30は、上述したように、ソーラシミュレータ10において、白色光供給部13と試料ステージ11との間に設けられているシャッタ14の動作を制御する構成としても良い。
【0049】
また、上記実施形態では、試料測定システム1Aにおいて、電気的特性測定装置19を設けている。これにより、試料Sに対するPL測定に加えて、ソーラシミュレータ10を用いたI−V特性測定などの電気的特性の測定を好適に行うことができる。また、このような電気的特性測定装置19は、例えばソーラシミュレータ10に付属または内蔵された構成であっても良い。
【0050】
図1〜図4に示した太陽電池関連試料測定システム1Aの構成、及び試料測定システム1Aを用いて実行されるPL測定について、さらに具体的に説明する。
【0051】
図5は、試料測定に用いられる白色光、励起光、及び試料からの被測定光の波長スペクトルを示すグラフである。図5のグラフ(a)、(b)、(c)において、それぞれ、横軸は光の波長(nm)を示し、縦軸は光の強度を示している。また、ソーラシミュレータ10については、AM1.5Gの条件で用いている。
【0052】
図5のグラフ(a)は、ソーラシミュレータ10の白色光供給部13から供給される白色光の波長スペクトルについて示している。このグラフにおいて、グラフA1は、ソーラシミュレータ10における白色光の波長スペクトルを示し、グラフA2は、実際の太陽光の波長スペクトルを示している。このような白色光は、PL測定において目的とするPLによる光が発生する波長領域にも光成分を有している。
【0053】
図5のグラフ(b)は、光学フィルタ23を通過して試料Sに照射される励起光の波長スペクトルについて示している。このグラフにおいて、グラフB1は、ソーラシミュレータ10における白色光に光学フィルタ23を適用した場合の波長スペクトルを示し、グラフB2は、太陽光に光学フィルタ23を適用した場合の波長スペクトルを示している。具体的には、ここでは、光学フィルタ23としてショートパスフィルタ(SPF)を用い、このフィルタ23を、ソーラシミュレータ10で供給される白色光の光束よりも大きいサイズのフィルタとして設置するとともに、PL発光が含まれる長波長側の波長範囲内の光成分をカットして、PL測定の励起光としている。
【0054】
図5のグラフ(c)は、グラフB1に示す励起光が照射された試料Sから放出された、PL発光による被測定光の波長スペクトルを示している。このようなPL発光を、被測定光検出部24によって検出することにより、試料Sの特性についての評価、検査を実行することができる。ここで、検出部24を撮像装置とし、PL発光の2次元画像を取得した場合には、試料Sの特性を反映したPL画像が得られる。また、検出部24を分光器+光検出器とした場合には、PL発光の波長スペクトルの情報などの様々な情報を得ることができる。なお、検出部24による被測定光の検出は、上述したように、必要に応じて、バンドパスフィルタ26などの光学フィルタを介して行われる。
【0055】
図6は、試料SからのPL発光を含む被測定光の波長スペクトルを示すグラフであり、横軸は光の波長(nm)を示し、縦軸は光の強度(a.u.)を示している。また、このグラフにおいて、グラフC1は、上記したソーラシミュレータ10+付加測定装置20の構成で、白色光から生成した励起光を用いた場合のPL発光の測定結果の波長スペクトルを示し、グラフC2は、波長810nmのレーザ光を励起光として用いた場合のPL発光の測定結果の波長スペクトルを示している。
【0056】
これらのグラフC1、C2から明らかなように、それぞれ白色光から生成した励起光、及びレーザ励起光を用いた場合のいずれにおいても、ほぼ同一のPL発光スペクトルが得られている。このことから、図1〜図4の試料測定システム1Aに示すように、ソーラシミュレータ10の白色光に対してPL測定ユニット22を適用する構成は、レーザ励起光を用いる構成と同様に、試料SのPL発光測定に有効であることがわかる。
【0057】
上記実施形態による試料測定システム1Aは、太陽電池の評価、検査等において行われている最も重要な測定である、ソーラシミュレータ10を用いたI−V特性測定などの電気的特性の測定に対して、そのような電気的測定の環境を破壊すること無く、測定位置と待機位置との間で移動可能なPL測定ユニット22を備えた付加測定装置20を追加的に設置するものである。
【0058】
このような構成によれば、電気的測定の前後で、PL測定ユニット22の移動によって測定システム1Aの機能を即座に切り替え、PLイメージングによって簡単に試料Sでの不良箇所を見つけ出す有効な手段を提供することができる。例えば、ソーラシミュレータ10を使用したI−V測定、あるいは変換効率の測定の延長線上でのPLイメージング、PLスペクトル測定等が可能となる。これにより、効率等の電気的特性の測定直後、または同時に、そのままPLイメージングにより、不具合部分の可視化を行うことができ、例えば、効率が悪い場合には、その原因等をその場で可視化して、特定することができる可能性がある。特に、太陽電池パネル等の大面積状態の試料Sでは、既に大面積用のソーラシミュレータを所有していれば、それをPL測定に適用することができる。
【0059】
また、ソーラシミュレータ10を用いたI−V測定では、測定装置に試料Sとなる太陽電池セルをセットし、リード線等が取り付けられていないセルに電極を接続する場合、そのハンドリング等に非常に神経を使うことになる。特に、多結晶Si太陽電池等の結晶系Si太陽電池は割れやすく、わずかな力でクラック等が入ってしまうため、ハンドリングは容易ではない。試料Sにクラックが入ると、当然、その変換効率を含む電気的な特性が悪化する。また、クラックが入っているセルを別な検査装置に再度セットすると、それによってクラックを成長させてしまう可能性がある。
【0060】
これに対して、I−V測定を行う測定装置であるソーラシミュレータ10に試料Sをセットした状態で、PLイメージングによってクラックの検出を行うことが可能であれば、問題点の把握が容易となる。I−V測定を行った後に、付加測定装置20のPL測定ユニット22をソーラシミュレータ10の測定光路に挿入するだけで、太陽電池セルのPLイメージング測定を行うことが可能な上記の試料測定システム1Aによれば、例えば上記のクラックの検出等において、非常に効率の良い不良解析が可能となる。
【0061】
また、ソーラシミュレータ10の白色光に光学フィルタ23を適用して励起光を生成する構成によれば、PL測定において、励起光強度、励起光スペクトル、さらには試料Sに対する励起光の照射ユニフォミティの問題点をも解決することが可能である。すなわち、PL測定において太陽電池関連試料Sに励起光を照射する場合、非常に高い光の均一性、照射角度の条件、光照射ムラや平行度に関する厳格な条件等が求められる。
【0062】
これに対して、ソーラシミュレータ10の本体から光が出射される部分に光学フィルタ23を挿入する上記構成では、励起光照射のユニフォミティは、励起光の元となる白色光を供給するソーラシミュレータ10側で実現が可能であり、例えば、矩形状の太陽電池セルに均一に励起光を照射するなど、理想的な条件での励起光の照射が可能である。また、このような構成では、様々なソーラシミュレータ10にレトロフィットすることが可能となり、また、PL測定ユニット22の移動によってフィルタ23の使用/不使用を選択することにより、これまでの用途に全く影響を与えないで、ソーラシミュレータ10をPL測定用の光源として使用することができる。
【0063】
また、ソーラシミュレータ10では、照射ムラや平行度に要求される条件を実現するために、ソーラシミュレータの内部にフライアイレンズという多レンズの光学部品が用いられる場合があるが、ソーラシミュレータから光が出射されている部分であっても、光束よりも小さい光学フィルタを挿入すると、試料Sへの照射面において均一かつ平行な光を得ることができない可能性がある。これに対して、PL測定ユニット22において、ソーラシミュレータ10から供給される白色光の光束よりも大きいサイズの光学フィルタ23を用いることにより、このような問題を回避することができる。
【0064】
上記の測定システム1Aは、フォトルミネッセンスという利点、すなわち、非接触、非破壊での測定が可能であるという利点を活かして、例えば、電極を取り付ける前の段階から、電極を取り付けた最終段階までの、様々な状態の太陽電池関連試料Sに対して適用することが可能である。これにより、各製造工程において、あらかじめ不良の原因となる要因を検出し、歩留まり、品質の改善に大きく寄与することができる。また、電極に不良があった場合に、PL測定によって不良の確認を行うことも可能となる。
【0065】
また、ソーラシミュレータ10の白色光を利用する上記構成では、太陽電池として変換効率等を評価する動作条件である波長スペクトル、光強度(1SUN)において、試料Sの内部の電子状態を観察することで、実際の動作条件に近い状態での測定となる。そのため、PL測定の結果として、電気的な変換効率等とより相関が取れる測定結果が得られることが期待できる。その理由としては、例えば、測定対象となる試料Sでの侵入長によって、試料Sの深さ方向についての問題が生じること、試料Sには必ずしも、光に対して電気的な出力が直線的であるとの保証が無いこと、直線性が無い試料に対して励起光強度が適切でない場合には、結果が逆転してしまう可能性があること、等が挙げられる。
【0066】
また、上記の測定システム1Aでは、ソーラシミュレータ10から供給される白色光のうちの長波長成分、例えば対象となる太陽電池材料のバンドギャップエネルギーEgよりも低いエネルギーの光成分は、SPFなどの光学フィルタ23によってカットして、試料Sには照射されない。このことは、PL測定においては、原理上、バンドギャップエネルギーEgよりも低いエネルギーの光は、PL測定の障害となる試料Sの温度上昇の原因となるだけであるので、長波長成分をカットすることによるPL測定への影響は少ない。
【0067】
また、上記の測定システム1Aは、安全面、コスト面などにおいても有効である。安全面については、例えば、波長808nmのCWレーザ光を励起光とし、12.5cm角等の単一セルにおいて、セル前面に対して均一に太陽光のパワーに近い1SUNなどの状態の出力を得ようとした場合、レーザ出力として数十WというClass4程度のレーザを使用する必要がある。この場合、レーザを完全に遮蔽した装置内で使用するか、レーザ管理区域内での使用が前提となる他、さらにその使用者も限定されるなど、測定装置の管理や運用面で多大な労力を要することとなる。
【0068】
これに対して、PL測定において、レーザ光源ではなく、ソーラシミュレータ10に使用されているランプ光源等を用いる構成によれば、安全基準等が厳しくないため、装置の導入が容易である。また、レーザ光励起による、特定波長での強いパワーによる試料Sのダメージが、白色光から生成される励起光を用いることで軽減されると予想される。
【0069】
また、コスト面については、太陽電池の製造現場等において、測定装置をフル稼働する場合、そのランニングコストが問題となるが、ランプ光源等の場合、レーザ光源に比べて低ランニングコストの実現が可能である。また、容易に予備のランプ光源を用意しておくことができることから、装置のダウンタイムによるロスも避けることができる。また、装置全体のコストも、レーザを用いたシステムに比べて低くすることができる。
【0070】
図1〜図4に示した試料測定システム1Aを用いた、太陽電池関連試料に対する測定、検査方法について、さらに説明する。
【0071】
図7は、試料測定方法の一例を示すフローチャートである。この図7では、ソーラシミュレータ10がシャッタステータス出力を有する場合の例を示している。図7に示す方法では、まず、PL測定ユニット22を付加測定装置20の本体部21内の待機位置に配置した状態で、ソーラシミュレータ10及び電気的特性測定装置19によって、試料SのI−V特性などの電気的特性の測定を行う(ステップS101)。
【0072】
次に、PL測定ユニット22を、光軸Ax及び測定光路を含む測定位置に移動させて、光学フィルタ23及び被測定光検出部24等を所定位置にセットする(S102)。そして、この状態で、ソーラシミュレータ10及びPL測定ユニット22を用いた試料Sに対するPL測定を開始する(S103)。
【0073】
ソーラシミュレータ10から出力されるシャッタステータスにより、測定光路上のシャッタ14が閉じているかを確認し(S104)、開いている場合にはシャッタ14を閉じる(S105)。続いて、被測定光検出部24での暗電流の測定を行う(S106)。ここで、検出部24に用いられる撮像装置、または光検出器等による測定結果には、暗電流と呼ばれるノイズが含まれる場合があり、また、信号ではない背景光についても測定結果から除去する必要がある。暗電流測定は、このようなノイズなどの不要な信号、データの除去のために行われる。
【0074】
続いて、ソーラシミュレータ10から出力されるシャッタステータスにより、シャッタ14が開いているかを確認し(S107)、閉じている場合にはシャッタ14を開く(S108)。そして、白色光供給部13から光学フィルタ23を介して、試料Sに励起光を照射して、得られるPL発光の測定データを被測定光検出部24によって取得する(S109)。PL測定が終了したら、シャッタ14を閉じて(S110)、取得されたPL測定データに対して、必要な解析、出力等の操作を行う(S111)。
【0075】
具体的なデータ解析としては、例えば、制御装置30において、PL測定で得られたデータから、暗電流測定で得られたデータを減算する処理を行い、ノイズが除去された測定データを生成する。そして、得られたPL発光の2次元画像データ、あるいは波長スペクトルデータ等を、表示装置31によって操作者に表示する。
【0076】
これらの操作を終了したら、必要に応じて、PL測定ユニット22を待機位置に移動させるなどの操作を行って(S112)、測定を終了する。なお、PL測定データの解析において、試料Sにおける不良箇所を同定するために、試料Sのパターン像と比較する必要がある場合には、ソーラシミュレータ10のシャッタ14を閉じ、赤外照明装置27を点灯してパターン像を取得する。
【0077】
図8は、試料測定方法の他の例を示すフローチャートである。この図8では、ソーラシミュレータ10がシャッタステータス出力を持たない場合の例を示している。図8に示す方法では、まず、PL測定ユニット22を付加測定装置20の本体部21内の待機位置に配置した状態で、ソーラシミュレータ10及び電気的特性測定装置19によって、試料SのI−V特性などの電気的特性の測定を行う(ステップS201)。
【0078】
次に、PL測定ユニット22を、光軸Ax及び測定光路を含む測定位置に移動させて、光学フィルタ23及び被測定光検出部24等を所定位置にセットする(S202)。そして、この状態で、ソーラシミュレータ10及びPL測定ユニット22を用いた試料Sに対するPL測定を開始する(S203)。
【0079】
ソーラシミュレータ10において、測定光路上のシャッタ14を閉じる操作を行い(S204)、シャッタの閉動作の完了まで待機する(S205)。続いて、被測定光検出部24での暗電流の測定を行う(S206)。続いて、ソーラシミュレータ10において、シャッタ14を開く操作を行い(S207)、シャッタの開動作の完了まで待機する(S208)。そして、試料Sに励起光を照射して、得られるPL発光の測定データを被測定光検出部24によって取得する(S209)。PL測定が終了したら、シャッタ14を閉じて(S210)、取得されたPL測定データに対して、必要な解析、出力等の操作を行う(211)。これらの操作を終了したら、必要に応じて、PL測定ユニット22を待機位置に移動させるなどの操作を行って(S212)、測定を終了する。
【0080】
本発明による太陽電池関連試料測定システムは、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、ソーラシミュレータ10、及び付加測定装置20のそれぞれの構成については、上記した構成に限らず、具体的には様々な構成を用いて良い。また、電気的特性測定装置19、制御装置30等については、不要であれば設けない構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、太陽電池に関連する試料について、フォトルミネッセンス法による試料の特性の測定を好適に行うことが可能な試料測定システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1A…太陽電池関連試料測定システム、S…太陽電池関連試料、Ax…測定光軸、10…ソーラシミュレータ、11…試料ステージ、12…ステージ駆動部、13…白色光供給部、14…シャッタ、15…ハウジング部、16…上部ハウジング部、17…下部ハウジング部、18…ハウジング底部、19…電気的特性測定装置、
20…付加測定装置、21…測定装置本体部、22…フォトルミネッセンス測定ユニット(PL測定ユニット)、23…光学フィルタ、24…被測定光検出部、25…ユニット枠部、26…バンドパスフィルタ、27…照明装置、30…制御装置、31…表示装置、32…入力装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関連する試料の特性をフォトルミネッセンス法によって測定するための太陽電池関連試料測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化防止などの観点から、太陽電池の開発が盛んに行われている。そのような太陽電池の研究開発においては、例えば太陽電池での変換効率の向上等に関して、太陽電池の材料、セル、パネルなどの太陽電池に関連する試料の特性の測定、検査を行うことが重要となっている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−235903号公報
【特許文献2】特表2009−512198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池の開発において最も重要である変換効率の測定(I−V測定)では、太陽電池関連試料に対して、所定の波長スペクトル、所定の照射条件で擬似的な太陽光となる白色光を照射するソーラシミュレータが用いられている。この場合、太陽電池セルまたはモジュールなどの試料に対して、ソーラシミュレータによって白色光を照射するとともに、太陽電池セル上の電極に対してプローブ等を当てて、その電気的特性を測定する。
【0005】
このようなI−V特性などの試料の電気的特性の測定では、太陽電池セルの全体における全ての要因を含む測定結果が得られる。そのため、変換効率等の特性に問題があるセルが発見された場合、電気的特性測定の結果では、製造工程のどのプロセスにおける不具合であるのか、また、不良が発生している箇所の特定等を行うことができない。このような太陽電池セルの不良の原因究明を行うには、電気的測定以外の方法、例えばフォトルミネッセンス(PL)法、あるいはエレクトロルミネッセンス(EL)法が用いられる。
【0006】
フォトルミネッセンス測定(PL測定)の原理は、対象となる試料に、そのバンドギャップエネルギーEgよりも高いエネルギー(短い波長)の励起光を照射することにより、試料内でキャリア(電子または正孔)が発生し、PN接合近傍でキャリアが再結合する際の発光を検出する。このような方法では、得られたPL発光の2次元画像、またはPL発光の波長スペクトルなどから、材料内部の電子状態を観察することができる。
【0007】
ここで、太陽電池の評価は、通常、上記したように、ソーラシミュレータを用い、例えば、太陽光に近い波長スペクトルを有するAM1.5G等の白色光により、太陽光の強度に近い1SUNなどの条件下で行われている。一方、太陽電池の変換効率以外の物性、欠陥の検査を、PLイメージングやスペクトル測定などによって行う場合、そのようなPL測定は、通常、試料に対してレーザ光を照射することで実行される。
【0008】
フォトルミネッセンスを用いた太陽電池関連試料の検査については、材料物性的には、PL発光と太陽電池セルの特性との間に相関があることが示唆されている。すなわち、おおよそPL測定において発光が強いものが変換効率が高く、または欠陥箇所が少ない傾向がある。しかしながら、例えば化合物薄膜太陽電池であるCIGS(Cu、In、Ga、Seの化合物)太陽電池では、光に対する電気的な特性、及びPL発光に対する励起光強度にリニアリティが無い場合があるため、PL測定において変換効率と相関が取れるパラメータとして最適な励起光強度を選択することが難しい。
【0009】
また、レーザ光励起によるPL測定は、単一波長の光による励起となるため、白色光を用いる変換効率の測定とは絶対的に異なる励起光スペクトルとなる。試料に対する励起光源にレーザ光源を使用する場合、実用的な励起光波長は、レーザの材料等に起因した、例えば532nm、808nmなどの特定の波長であり、この場合の励起光波長は、必ずしも測定対象の試料に最適化されていない。
【0010】
例えば、測定対象の材料に対して適切ではない極端に短い波長(例えば355nm)の光を励起光として用いた場合、光の侵入長の問題により、表面付近でのPL測定の対象以外を含む情報のみが見えてしまい、目的である変換効率と相関が取れるデータとは、全く異なる現象を測定してしまう可能性がある。また、太陽電池に関しては、試料に照射する光に対しては、その照射角度、あるいは試料面でのユニフォミティなど、多岐にわたって厳密な要求事項があり、PLイメージングやスペクトル測定においても、要求事項に近い状態で測定を行うことが望まれる。
【0011】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、太陽電池に関連する試料について、フォトルミネッセンス法による試料の特性の測定を好適に行うことが可能な太陽電池関連試料測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明による太陽電池関連試料についての試料測定システムは、(1)太陽電池に関連する試料の特性を測定するためのソーラシミュレータと、(2)ソーラシミュレータを利用して、フォトルミネッセンス法による試料の測定を行うために用いられる付加測定装置とを備え、(3)ソーラシミュレータは、試料を載置する試料ステージと、試料に対して、擬似的な太陽光となる白色光を供給する白色光供給部と、試料ステージ及び白色光供給部を一体に保持するハウジング部とを有し、(4)付加測定装置は、ソーラシミュレータに対して所定位置に付加的に配置される測定装置本体部と、測定装置本体部に取り付けられ、ソーラシミュレータに対し、白色光供給部から試料ステージへの測定光路上に挿入された測定位置、及び測定光路を外れた待機位置の間で移動可能に構成されたフォトルミネッセンス測定ユニットとを有し、(5)フォトルミネッセンス測定ユニットは、フォトルミネッセンス測定ユニットを測定位置に配置したときに、白色光供給部から試料ステージへと供給される白色光を、所定の波長スペクトルを有する励起光へと変換する光学フィルタと、光学フィルタからの励起光が照射された試料から放出される被測定光を検出する被測定光検出部と、光学フィルタ及び被測定光検出部を一体に保持するとともに、測定位置及び待機位置の間で移動可能に測定装置本体部に取り付けられるユニット枠部とを有することを特徴とする。
【0013】
上記した太陽電池関連試料測定システムにおいては、太陽電池に関連する材料、セル、パネルなどの試料に擬似的な太陽光となる白色光を供給して検査を行うように構成されたソーラシミュレータに対し、フォトルミネッセンス測定ユニット(PL測定ユニット)を有する付加測定装置を付加的に設置する。また、PL測定ユニットを、白色光を励起光に変換する光学フィルタ(波長選択フィルタ)、試料からの光を検出する被測定光検出部、及びそれらを一体に保持するユニット枠部によって構成する。
【0014】
そして、ソーラシミュレータ、及び付加測定装置の装置本体部に対し、このPL測定ユニットが、ソーラシミュレータでの試料に対する白色光の供給、照射範囲によって規定される測定光路を含む測定位置と、測定光路を外れた待機位置との間で移動可能な構成とする。このような構成によれば、PL測定ユニットが待機位置に配置されている状態では、従来と同様のI−V特性測定などの電気的特性の測定が可能であるとともに、PL測定ユニットが測定位置に配置されている状態では、光学フィルタを通過した白色光の光成分を励起光として、試料についてのPL測定を行うことが可能となる。これにより、太陽電池に関連する試料について、フォトルミネッセンス法による試料の特性の測定を好適に行うことが可能となる。
【0015】
ここで、PL測定ユニットにおいて用いられる、試料からの被測定光を検出する検出部の構成については、被測定光検出部は、被測定光による2次元画像を取得する撮像装置を有する構成を用いることができる。このような構成では、PLイメージング測定による試料の特性の評価を行うことができる。
【0016】
あるいは、被測定光検出部は、被測定光を分光する分光器と、分光器によって分光された被測定光を検出する光検出器とを有する構成を用いることができる。このような構成では、分光された被測定光の各波長成分を1または複数の光検出器で検出することにより、PLスペクトル測定による試料の特性の評価を行うことができる。
【0017】
また、フォトルミネッセンス測定ユニットは、試料ステージ及び被測定光検出部の間に配置され、被測定光のうちで所定の波長範囲内の光成分を被測定光検出部へと選択的に通過させる第2の光学フィルタを有することが好ましい。このように、被測定光検出部の前段に第2の光学フィルタを設けることにより、試料からの光のうちで、試料の特性の評価に適した波長範囲の光成分のみを選択的に検出することができる。
【0018】
また、フォトルミネッセンス測定ユニットは、試料の通常画像の取得に用いられる照明装置を有する構成としても良い。ここで、PL測定ユニットが測定位置に配置されている状態では、光学フィルタが測定光路上に挿入されているために、ソーラシミュレータからの光は、被測定光検出部を構成するカメラ等で検出できる波長域の光を含まない場合がある。これに対して、上記のようにPL測定ユニットに照明装置を設けることにより、PL測定ユニットが測定位置に配置されている状態でも、試料のパターン画像などの通常画像を好適に取得することができる。
【0019】
また、上記の試料測定システムは、ソーラシミュレータ、及び付加測定装置に加えて、ソーラシミュレータ及び付加測定装置による試料のフォトルミネッセンス測定を制御する制御装置を備える構成としても良い。このような制御装置は、例えば付加測定装置に付属または内蔵された構成であっても良い。また、この場合、制御装置は、ソーラシミュレータにおいて、白色光供給部と試料ステージとの間に設けられているシャッタの動作を制御する構成としても良い。
【0020】
また、試料測定システムは、ソーラシミュレータに対して設けられ、試料の電気的特性の測定を行うための電気的特性測定装置をさらに備える構成としても良い。これにより、試料に対するPL測定に加えて、ソーラシミュレータを用いたI−V特性測定などの電気的特性の測定を好適に行うことができる。また、このような電気的特性測定装置は、例えばソーラシミュレータに付属または内蔵された構成であっても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明の太陽電池関連試料測定システムによれば、試料に白色光を供給して測定を行うソーラシミュレータに対し、PL測定ユニットを有する付加測定装置を設け、PL測定ユニットを、白色光を励起光に変換する光学フィルタ、被測定光検出部、及びユニット枠部によって構成するとともに、PL測定ユニットが、試料に対する測定光路を含む測定位置と、測定光路を外れた待機位置との間で移動可能な構成とすることにより、太陽電池に関連する試料について、フォトルミネッセンス法による試料の特性の測定を好適に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】太陽電池関連試料測定システムの一実施形態の構成を示す正面図である。
【図2】図1に示した試料測定システムの構成を示す正面図である。
【図3】図1に示した試料測定システムの構成を示す側面図である。
【図4】図1に示した試料測定システムの構成を示す斜視図である。
【図5】試料測定に用いられる白色光、励起光、及び試料からの被測定光の波長スペクトルを示すグラフである。
【図6】試料からの被測定光の波長スペクトルを示すグラフである。
【図7】試料測定方法の一例を示すフローチャートである。
【図8】試料測定方法の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面とともに本発明による太陽電池関連試料測定システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0024】
図1は、太陽電池関連試料測定システムの一実施形態の構成を示す正面図である。この図1においては、後述するフォトルミネッセンス測定ユニット(PL測定ユニット)が待機位置に配置されている状態を示している。また、図2は、図1に示した太陽電池関連試料測定システムの構成を示す正面図である。図3は、図1に示した試料測定システムの構成を示す側面図である。図4は、図1に示した試料測定システムの構成を示す斜視図である。これらの図2〜図4においては、PL測定ユニットが測定位置に配置されている状態を示している。また、各図において、図1〜図3では、試料測定システムの構成を模式的に示し、図4では、その構造の一例をやや具体的に示している。
【0025】
本実施形態による試料測定システム1Aは、太陽電池に関連する材料、セル、パネルなどの試料(以下、太陽電池関連試料、または単に試料という)Sに対して、その特性を検査、評価するための測定を行う太陽電池関連試料測定システムであり、ソーラシミュレータ10と、電気的特性測定装置19と、付加測定装置20と、制御装置30とを備えて構成されている。
【0026】
ソーラシミュレータ10は、太陽電池関連試料Sの特性を測定するためのものであり、試料ステージ11と、白色光供給部13と、ハウジング部15とを有している。また、測定対象の試料Sを載置する試料ステージ11は、ステージ駆動部12により、x軸方向、y軸方向(水平方向)、及びz軸方向(垂直方向)に移動して、ステージ11上の試料Sにおける測定位置、測定範囲を調整、設定することが可能に構成されている。
【0027】
白色光供給部13は、ステージ11上の試料Sに対して、太陽光に近い波長スペクトルを有する白色光を、所定の照射条件(照射範囲、照射角度、照射光強度分布など)によって、試料Sの特性測定用の擬似的な太陽光として供給する。白色光供給部13は、具体的には例えば、1または複数の光源と、光源からの光の光路、波長スペクトル等を調整する1または複数の光学素子を含む光学系とによって構成される。また、白色光供給部13とステージ11との間には、その測定光軸Ax上に、白色光供給部13から試料Sへの白色光の供給のON/OFFを切り換えるシャッタ14が設けられている。
【0028】
ハウジング部15は、試料ステージ11、及び白色光供給部13を一体に保持する。本実施形態においては、ハウジング部15は、上部ハウジング部16と、下部ハウジング部17とによって構成されている。上部ハウジング部16は、白色光供給部13及びシャッタ14を内部に収容するとともに、その下方に試料ステージ11に対向する開口部を有する箱状に構成されている。白色光供給部13からの白色光は、ON状態(開状態)のシャッタ14、及び上部ハウジング部16の下方の開口部を介し、光軸Axを含んで所定範囲に広がる測定光路によって、ステージ11上の試料Sへと供給される。
【0029】
下部ハウジング部17は、図4に示すように、上部ハウジング部16と、ハウジング底部18との間に4本の柱状部材を設けた構成となっており、その内部にある測定光路を含む空間に外部からアクセスすることが可能に構成されている。また、試料ステージ11、及びステージ駆動部12は、ハウジング底部18上に設置されている。
【0030】
このようなソーラシミュレータ10に対し、その近傍の所定位置に、付加測定装置20が設置されている。付加測定装置20は、ソーラシミュレータ10を利用して、フォトルミネッセンス(PL)法による太陽電池関連試料Sの測定を行うために用いられるものであり、測定装置本体部21と、フォトルミネッセンス(PL)測定ユニット22とを有している。測定装置本体部21は、ソーラシミュレータ10に対して所定位置(図1においては、ソーラシミュレータ10の下部ハウジング部17の右側の位置)に、付加的かつ固定的に配置されている。
【0031】
PL測定ユニット22は、測定装置本体部21に取り付けられるとともに、ソーラシミュレータ10に対し、白色光供給部13から試料ステージ11上の試料Sへの測定光路上に挿入された測定位置(図2〜図4)、及び測定光路を外れた待機位置(図1)の間で移動可能に構成されている。
【0032】
PL測定ユニット22は、測定光路を外れた待機位置に配置される場合、図1に示すように、本体部21の内部に格納された状態となる。また、PL測定ユニット22は、測定光路を含む測定位置(挿入位置)に配置される場合、図2〜図4に示すように、本体部21から、ソーラシミュレータ10の下部ハウジング部17の内部にある測定光路を含む空間に引き出されることで、測定光路上で、シャッタ14と試料ステージ11との間にある測定位置に挿入される。
【0033】
PL測定ユニット22は、図2〜図4に示すように、光学フィルタ23と、被測定光検出部24と、ユニット枠部25とを有している。光学フィルタ23は、PL測定ユニット22を測定位置に配置したときに、光軸Axを含む測定光路において、白色光供給部13から試料ステージ11へと供給される白色光のうちで、所定の波長範囲内の光成分を選択的に通過させることで、白色光を所定の波長スペクトルを有する励起光へと変換する波長選択フィルタである。
【0034】
この光学フィルタ23としては、ソーラシミュレータ10から発生する白色光からフォトルミネッセンスが発生する波長領域を取り除き、励起光波長領域を透過するフィルタであればよく、例えば、白色光のうちで短波長側の所定の波長範囲内の光成分を通過させ、長波長側の光成分をカットするショートパスフィルタ(SPF)を用いることができる。あるいは、光学フィルタ23として、所定の波長範囲内の光成分を通過させ、それよりも短波長側、及び長波長側の光成分をカットするバンドパスフィルタ(BPF)を用いても良い。
【0035】
被測定光検出部24は、光学フィルタ23を通過して生成された励起光を試料Sに照射したときに、励起光が照射された試料Sから放出されるPL発光を含む被測定光を検出する検出部である。この検出部24は、図3、図4に示すように、白色光供給部13及び光学フィルタ23から試料ステージ11への測定光路(白色光、励起光が通過する範囲)を外れた所定位置に設置されている。
【0036】
この被測定光検出部24の構成については、例えば、被測定光による2次元画像を取得する撮像装置(撮像カメラ)によって、検出部24を構成することができる。このような構成では、検出部24により、PLイメージング測定による試料Sの特性の評価を行うことができる。あるいは、被測定光を分光する分光器と、分光された被測定光を検出する光検出器とによって、検出部24を構成しても良い。このような構成では、検出部24において、分光器によって分光された被測定光の各波長成分を1または複数の光検出器で検出することにより、PLスペクトル測定による試料Sの特性の評価を行うことができる。
【0037】
PL測定ユニット22では、これらの光学フィルタ23、及び被測定光検出部24に対し、ユニット枠部25が設けられている。ユニット枠部25は、光学フィルタ23及び被測定光検出部24を一体に保持するとともに、上述した測定位置及び待機位置の間で移動可能なように、測定装置本体部21に取り付けられる。図4に示した構成例では、ユニット枠部25の側面にレール25aが設けられており、このレール25aと、本体部21の内側に設けられたレールとによって、ユニット枠部25を含むPL測定ユニット22が、水平方向(左右方向)に移動する構成となっている。
【0038】
また、本実施形態によるPL測定ユニット22では、ソーラシミュレータ10の試料ステージ11と、PL測定ユニット22の被測定光検出部24との間に、バンドパスフィルタ(BPF)26が設けられている。このバンドパスフィルタ26は、ステージ11上の試料Sからの被測定光のうちで、所定の波長範囲内の光成分(例えば、励起光照射による試料SからのPL発光を含む光成分)を被測定光検出部24へと選択的に通過させる第2の光学フィルタであり、検出部24の前面側(試料ステージ11側)に固定されている。なお、この第2の光学フィルタとしては、検出部24で検出すべき光成分の波長範囲に応じて、バンドパスフィルタ以外の波長選択フィルタを用いても良い。
【0039】
また、PL測定ユニット22では、光学フィルタ23よりも試料ステージ11側で、測定光路を外れた位置に、照明装置27が設けられている。この照明装置27は、PL測定ユニット22が測定位置に配置された状態で、試料Sの通常画像を取得する際に用いられるものであり、例えば、赤外LEDなどの赤外照明装置が用いられる。
【0040】
本実施形態による試料測定システム1Aでは、これらのソーラシミュレータ10、付加測定装置20に加えて、電気的特性測定装置19、及び制御装置30が設けられている。電気的特性測定装置19は、ソーラシミュレータ10に対して設けられ、図1に示すように、試料ステージ11上の試料Sと所定の配線によって接続されて、試料Sの電気的特性の測定、例えばI−V特性の測定を行う際に用いられる。なお、図2〜図4においては、電気的特性測定装置19の図示を省略している。
【0041】
また、制御装置30は、ソーラシミュレータ10及び付加測定装置20に接続されて設けられ、図2に示すように、ソーラシミュレータ10及び付加測定装置20の各部の動作を制御することで、それらによる試料Sに対するPL測定の実行を制御する。例えば、この制御装置30は、PL測定の実行状況に応じてソーラシミュレータ10に設けられているシャッタ14の動作を制御する。このように、シャッタ動作を制御する構成は、ソーラシミュレータ10がシャッタステータス出力等を有する場合に有効である。
【0042】
また、この制御装置30に対し、表示装置31、及び入力装置32が接続されている。表示装置31は、本測定システム1Aにおける太陽電池関連試料Sの特性の測定に関する情報を操作者に表示する。また、入力装置32は、測定に必要な情報、指示等の入力に用いられる。なお、図1、図3、図4においては、制御装置30、表示装置31、入力装置32の図示を省略している。
【0043】
本実施形態による太陽電池関連試料測定システム、及びそれによる試料測定方法の効果について説明する。
【0044】
図1〜図4に示した太陽電池関連試料測定システム1Aにおいては、試料Sに擬似的な太陽光となる白色光を供給して検査を行うように構成されたソーラシミュレータ10に対し、PL測定ユニット22を有する付加測定装置20を付加的に設置する。また、PL測定ユニット22を、白色光を励起光に変換する光学フィルタ23、試料Sからの被測定光を検出する被測定光検出部24、及びそれらを一体に保持するユニット枠部25によって構成する。
【0045】
そして、ソーラシミュレータ10、及び付加測定装置20の装置本体部21に対し、このPL測定ユニット22が、ソーラシミュレータ10での試料Sに対する白色光の供給範囲によって規定される測定光路を含む測定位置と、測定光路を外れた待機位置との間で移動可能な構成とする。このような構成によれば、PL測定ユニット22が待機位置に配置されている状態では、電気的特性測定装置19を用いて従来と同様のI−V特性測定などの電気的特性の測定が可能であるとともに、PL測定ユニット22が測定位置に配置されている状態では、光学フィルタ23を通過した白色光の光成分を励起光として、試料SについてのPL測定を行うことが可能となる。これにより、太陽電池関連試料Sについて、フォトルミネッセンス法による試料Sの特性の測定を含む各種の測定、検査を好適に行うことが可能となる。
【0046】
上記実施形態では、PL測定ユニット22において、試料ステージ11と被測定光検出部24との間に、被測定光のうちで所定の波長範囲内の光成分を選択的に通過させるバンドパスフィルタ26を設けている。このように検出部24の前段に、バンドパスフィルタ26などの光学フィルタを設けることにより、検出部24において、試料Sからの光のうちで、試料Sの特性の評価に適した波長範囲の光成分のみを選択的に検出することができる。例えば、被測定光検出部24に用いられる撮像装置が励起光の波長範囲の一部にも感度を有し、PL測定の妨げになるような場合には、このように光学フィルタ26を設けて励起光の波長範囲内の光成分をカットする構成が有効である。ただし、このようなフィルタ26については、不要であれば設けない構成としても良い。
【0047】
また、PL測定ユニット22は、試料Sの通常画像の取得に用いられる照明装置27を有している。ここで、PL測定ユニット22が測定位置に配置されている状態では、光学フィルタ23が測定光路上に挿入されているために、ソーラシミュレータからの光は、被測定光検出部を構成するカメラ等で検出できる波長域の光を含まない場合がある。これに対して、上記のようにPL測定ユニット22に照明装置27を設けることにより、PL測定ユニット22が測定位置に配置されている状態でも、試料Sのパターン画像などの通常画像を好適に取得することができる。ただし、このような照明装置27については、不要であれば設けない構成としても良い。
【0048】
また、上記実施形態では、試料測定システム1Aにおいて、PL測定を制御する制御装置30を設けている。このような制御装置30は、例えば付加測定装置20に付属または内蔵された構成であっても良い。また、この場合、制御装置30は、上述したように、ソーラシミュレータ10において、白色光供給部13と試料ステージ11との間に設けられているシャッタ14の動作を制御する構成としても良い。
【0049】
また、上記実施形態では、試料測定システム1Aにおいて、電気的特性測定装置19を設けている。これにより、試料Sに対するPL測定に加えて、ソーラシミュレータ10を用いたI−V特性測定などの電気的特性の測定を好適に行うことができる。また、このような電気的特性測定装置19は、例えばソーラシミュレータ10に付属または内蔵された構成であっても良い。
【0050】
図1〜図4に示した太陽電池関連試料測定システム1Aの構成、及び試料測定システム1Aを用いて実行されるPL測定について、さらに具体的に説明する。
【0051】
図5は、試料測定に用いられる白色光、励起光、及び試料からの被測定光の波長スペクトルを示すグラフである。図5のグラフ(a)、(b)、(c)において、それぞれ、横軸は光の波長(nm)を示し、縦軸は光の強度を示している。また、ソーラシミュレータ10については、AM1.5Gの条件で用いている。
【0052】
図5のグラフ(a)は、ソーラシミュレータ10の白色光供給部13から供給される白色光の波長スペクトルについて示している。このグラフにおいて、グラフA1は、ソーラシミュレータ10における白色光の波長スペクトルを示し、グラフA2は、実際の太陽光の波長スペクトルを示している。このような白色光は、PL測定において目的とするPLによる光が発生する波長領域にも光成分を有している。
【0053】
図5のグラフ(b)は、光学フィルタ23を通過して試料Sに照射される励起光の波長スペクトルについて示している。このグラフにおいて、グラフB1は、ソーラシミュレータ10における白色光に光学フィルタ23を適用した場合の波長スペクトルを示し、グラフB2は、太陽光に光学フィルタ23を適用した場合の波長スペクトルを示している。具体的には、ここでは、光学フィルタ23としてショートパスフィルタ(SPF)を用い、このフィルタ23を、ソーラシミュレータ10で供給される白色光の光束よりも大きいサイズのフィルタとして設置するとともに、PL発光が含まれる長波長側の波長範囲内の光成分をカットして、PL測定の励起光としている。
【0054】
図5のグラフ(c)は、グラフB1に示す励起光が照射された試料Sから放出された、PL発光による被測定光の波長スペクトルを示している。このようなPL発光を、被測定光検出部24によって検出することにより、試料Sの特性についての評価、検査を実行することができる。ここで、検出部24を撮像装置とし、PL発光の2次元画像を取得した場合には、試料Sの特性を反映したPL画像が得られる。また、検出部24を分光器+光検出器とした場合には、PL発光の波長スペクトルの情報などの様々な情報を得ることができる。なお、検出部24による被測定光の検出は、上述したように、必要に応じて、バンドパスフィルタ26などの光学フィルタを介して行われる。
【0055】
図6は、試料SからのPL発光を含む被測定光の波長スペクトルを示すグラフであり、横軸は光の波長(nm)を示し、縦軸は光の強度(a.u.)を示している。また、このグラフにおいて、グラフC1は、上記したソーラシミュレータ10+付加測定装置20の構成で、白色光から生成した励起光を用いた場合のPL発光の測定結果の波長スペクトルを示し、グラフC2は、波長810nmのレーザ光を励起光として用いた場合のPL発光の測定結果の波長スペクトルを示している。
【0056】
これらのグラフC1、C2から明らかなように、それぞれ白色光から生成した励起光、及びレーザ励起光を用いた場合のいずれにおいても、ほぼ同一のPL発光スペクトルが得られている。このことから、図1〜図4の試料測定システム1Aに示すように、ソーラシミュレータ10の白色光に対してPL測定ユニット22を適用する構成は、レーザ励起光を用いる構成と同様に、試料SのPL発光測定に有効であることがわかる。
【0057】
上記実施形態による試料測定システム1Aは、太陽電池の評価、検査等において行われている最も重要な測定である、ソーラシミュレータ10を用いたI−V特性測定などの電気的特性の測定に対して、そのような電気的測定の環境を破壊すること無く、測定位置と待機位置との間で移動可能なPL測定ユニット22を備えた付加測定装置20を追加的に設置するものである。
【0058】
このような構成によれば、電気的測定の前後で、PL測定ユニット22の移動によって測定システム1Aの機能を即座に切り替え、PLイメージングによって簡単に試料Sでの不良箇所を見つけ出す有効な手段を提供することができる。例えば、ソーラシミュレータ10を使用したI−V測定、あるいは変換効率の測定の延長線上でのPLイメージング、PLスペクトル測定等が可能となる。これにより、効率等の電気的特性の測定直後、または同時に、そのままPLイメージングにより、不具合部分の可視化を行うことができ、例えば、効率が悪い場合には、その原因等をその場で可視化して、特定することができる可能性がある。特に、太陽電池パネル等の大面積状態の試料Sでは、既に大面積用のソーラシミュレータを所有していれば、それをPL測定に適用することができる。
【0059】
また、ソーラシミュレータ10を用いたI−V測定では、測定装置に試料Sとなる太陽電池セルをセットし、リード線等が取り付けられていないセルに電極を接続する場合、そのハンドリング等に非常に神経を使うことになる。特に、多結晶Si太陽電池等の結晶系Si太陽電池は割れやすく、わずかな力でクラック等が入ってしまうため、ハンドリングは容易ではない。試料Sにクラックが入ると、当然、その変換効率を含む電気的な特性が悪化する。また、クラックが入っているセルを別な検査装置に再度セットすると、それによってクラックを成長させてしまう可能性がある。
【0060】
これに対して、I−V測定を行う測定装置であるソーラシミュレータ10に試料Sをセットした状態で、PLイメージングによってクラックの検出を行うことが可能であれば、問題点の把握が容易となる。I−V測定を行った後に、付加測定装置20のPL測定ユニット22をソーラシミュレータ10の測定光路に挿入するだけで、太陽電池セルのPLイメージング測定を行うことが可能な上記の試料測定システム1Aによれば、例えば上記のクラックの検出等において、非常に効率の良い不良解析が可能となる。
【0061】
また、ソーラシミュレータ10の白色光に光学フィルタ23を適用して励起光を生成する構成によれば、PL測定において、励起光強度、励起光スペクトル、さらには試料Sに対する励起光の照射ユニフォミティの問題点をも解決することが可能である。すなわち、PL測定において太陽電池関連試料Sに励起光を照射する場合、非常に高い光の均一性、照射角度の条件、光照射ムラや平行度に関する厳格な条件等が求められる。
【0062】
これに対して、ソーラシミュレータ10の本体から光が出射される部分に光学フィルタ23を挿入する上記構成では、励起光照射のユニフォミティは、励起光の元となる白色光を供給するソーラシミュレータ10側で実現が可能であり、例えば、矩形状の太陽電池セルに均一に励起光を照射するなど、理想的な条件での励起光の照射が可能である。また、このような構成では、様々なソーラシミュレータ10にレトロフィットすることが可能となり、また、PL測定ユニット22の移動によってフィルタ23の使用/不使用を選択することにより、これまでの用途に全く影響を与えないで、ソーラシミュレータ10をPL測定用の光源として使用することができる。
【0063】
また、ソーラシミュレータ10では、照射ムラや平行度に要求される条件を実現するために、ソーラシミュレータの内部にフライアイレンズという多レンズの光学部品が用いられる場合があるが、ソーラシミュレータから光が出射されている部分であっても、光束よりも小さい光学フィルタを挿入すると、試料Sへの照射面において均一かつ平行な光を得ることができない可能性がある。これに対して、PL測定ユニット22において、ソーラシミュレータ10から供給される白色光の光束よりも大きいサイズの光学フィルタ23を用いることにより、このような問題を回避することができる。
【0064】
上記の測定システム1Aは、フォトルミネッセンスという利点、すなわち、非接触、非破壊での測定が可能であるという利点を活かして、例えば、電極を取り付ける前の段階から、電極を取り付けた最終段階までの、様々な状態の太陽電池関連試料Sに対して適用することが可能である。これにより、各製造工程において、あらかじめ不良の原因となる要因を検出し、歩留まり、品質の改善に大きく寄与することができる。また、電極に不良があった場合に、PL測定によって不良の確認を行うことも可能となる。
【0065】
また、ソーラシミュレータ10の白色光を利用する上記構成では、太陽電池として変換効率等を評価する動作条件である波長スペクトル、光強度(1SUN)において、試料Sの内部の電子状態を観察することで、実際の動作条件に近い状態での測定となる。そのため、PL測定の結果として、電気的な変換効率等とより相関が取れる測定結果が得られることが期待できる。その理由としては、例えば、測定対象となる試料Sでの侵入長によって、試料Sの深さ方向についての問題が生じること、試料Sには必ずしも、光に対して電気的な出力が直線的であるとの保証が無いこと、直線性が無い試料に対して励起光強度が適切でない場合には、結果が逆転してしまう可能性があること、等が挙げられる。
【0066】
また、上記の測定システム1Aでは、ソーラシミュレータ10から供給される白色光のうちの長波長成分、例えば対象となる太陽電池材料のバンドギャップエネルギーEgよりも低いエネルギーの光成分は、SPFなどの光学フィルタ23によってカットして、試料Sには照射されない。このことは、PL測定においては、原理上、バンドギャップエネルギーEgよりも低いエネルギーの光は、PL測定の障害となる試料Sの温度上昇の原因となるだけであるので、長波長成分をカットすることによるPL測定への影響は少ない。
【0067】
また、上記の測定システム1Aは、安全面、コスト面などにおいても有効である。安全面については、例えば、波長808nmのCWレーザ光を励起光とし、12.5cm角等の単一セルにおいて、セル前面に対して均一に太陽光のパワーに近い1SUNなどの状態の出力を得ようとした場合、レーザ出力として数十WというClass4程度のレーザを使用する必要がある。この場合、レーザを完全に遮蔽した装置内で使用するか、レーザ管理区域内での使用が前提となる他、さらにその使用者も限定されるなど、測定装置の管理や運用面で多大な労力を要することとなる。
【0068】
これに対して、PL測定において、レーザ光源ではなく、ソーラシミュレータ10に使用されているランプ光源等を用いる構成によれば、安全基準等が厳しくないため、装置の導入が容易である。また、レーザ光励起による、特定波長での強いパワーによる試料Sのダメージが、白色光から生成される励起光を用いることで軽減されると予想される。
【0069】
また、コスト面については、太陽電池の製造現場等において、測定装置をフル稼働する場合、そのランニングコストが問題となるが、ランプ光源等の場合、レーザ光源に比べて低ランニングコストの実現が可能である。また、容易に予備のランプ光源を用意しておくことができることから、装置のダウンタイムによるロスも避けることができる。また、装置全体のコストも、レーザを用いたシステムに比べて低くすることができる。
【0070】
図1〜図4に示した試料測定システム1Aを用いた、太陽電池関連試料に対する測定、検査方法について、さらに説明する。
【0071】
図7は、試料測定方法の一例を示すフローチャートである。この図7では、ソーラシミュレータ10がシャッタステータス出力を有する場合の例を示している。図7に示す方法では、まず、PL測定ユニット22を付加測定装置20の本体部21内の待機位置に配置した状態で、ソーラシミュレータ10及び電気的特性測定装置19によって、試料SのI−V特性などの電気的特性の測定を行う(ステップS101)。
【0072】
次に、PL測定ユニット22を、光軸Ax及び測定光路を含む測定位置に移動させて、光学フィルタ23及び被測定光検出部24等を所定位置にセットする(S102)。そして、この状態で、ソーラシミュレータ10及びPL測定ユニット22を用いた試料Sに対するPL測定を開始する(S103)。
【0073】
ソーラシミュレータ10から出力されるシャッタステータスにより、測定光路上のシャッタ14が閉じているかを確認し(S104)、開いている場合にはシャッタ14を閉じる(S105)。続いて、被測定光検出部24での暗電流の測定を行う(S106)。ここで、検出部24に用いられる撮像装置、または光検出器等による測定結果には、暗電流と呼ばれるノイズが含まれる場合があり、また、信号ではない背景光についても測定結果から除去する必要がある。暗電流測定は、このようなノイズなどの不要な信号、データの除去のために行われる。
【0074】
続いて、ソーラシミュレータ10から出力されるシャッタステータスにより、シャッタ14が開いているかを確認し(S107)、閉じている場合にはシャッタ14を開く(S108)。そして、白色光供給部13から光学フィルタ23を介して、試料Sに励起光を照射して、得られるPL発光の測定データを被測定光検出部24によって取得する(S109)。PL測定が終了したら、シャッタ14を閉じて(S110)、取得されたPL測定データに対して、必要な解析、出力等の操作を行う(S111)。
【0075】
具体的なデータ解析としては、例えば、制御装置30において、PL測定で得られたデータから、暗電流測定で得られたデータを減算する処理を行い、ノイズが除去された測定データを生成する。そして、得られたPL発光の2次元画像データ、あるいは波長スペクトルデータ等を、表示装置31によって操作者に表示する。
【0076】
これらの操作を終了したら、必要に応じて、PL測定ユニット22を待機位置に移動させるなどの操作を行って(S112)、測定を終了する。なお、PL測定データの解析において、試料Sにおける不良箇所を同定するために、試料Sのパターン像と比較する必要がある場合には、ソーラシミュレータ10のシャッタ14を閉じ、赤外照明装置27を点灯してパターン像を取得する。
【0077】
図8は、試料測定方法の他の例を示すフローチャートである。この図8では、ソーラシミュレータ10がシャッタステータス出力を持たない場合の例を示している。図8に示す方法では、まず、PL測定ユニット22を付加測定装置20の本体部21内の待機位置に配置した状態で、ソーラシミュレータ10及び電気的特性測定装置19によって、試料SのI−V特性などの電気的特性の測定を行う(ステップS201)。
【0078】
次に、PL測定ユニット22を、光軸Ax及び測定光路を含む測定位置に移動させて、光学フィルタ23及び被測定光検出部24等を所定位置にセットする(S202)。そして、この状態で、ソーラシミュレータ10及びPL測定ユニット22を用いた試料Sに対するPL測定を開始する(S203)。
【0079】
ソーラシミュレータ10において、測定光路上のシャッタ14を閉じる操作を行い(S204)、シャッタの閉動作の完了まで待機する(S205)。続いて、被測定光検出部24での暗電流の測定を行う(S206)。続いて、ソーラシミュレータ10において、シャッタ14を開く操作を行い(S207)、シャッタの開動作の完了まで待機する(S208)。そして、試料Sに励起光を照射して、得られるPL発光の測定データを被測定光検出部24によって取得する(S209)。PL測定が終了したら、シャッタ14を閉じて(S210)、取得されたPL測定データに対して、必要な解析、出力等の操作を行う(211)。これらの操作を終了したら、必要に応じて、PL測定ユニット22を待機位置に移動させるなどの操作を行って(S212)、測定を終了する。
【0080】
本発明による太陽電池関連試料測定システムは、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、ソーラシミュレータ10、及び付加測定装置20のそれぞれの構成については、上記した構成に限らず、具体的には様々な構成を用いて良い。また、電気的特性測定装置19、制御装置30等については、不要であれば設けない構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、太陽電池に関連する試料について、フォトルミネッセンス法による試料の特性の測定を好適に行うことが可能な試料測定システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1A…太陽電池関連試料測定システム、S…太陽電池関連試料、Ax…測定光軸、10…ソーラシミュレータ、11…試料ステージ、12…ステージ駆動部、13…白色光供給部、14…シャッタ、15…ハウジング部、16…上部ハウジング部、17…下部ハウジング部、18…ハウジング底部、19…電気的特性測定装置、
20…付加測定装置、21…測定装置本体部、22…フォトルミネッセンス測定ユニット(PL測定ユニット)、23…光学フィルタ、24…被測定光検出部、25…ユニット枠部、26…バンドパスフィルタ、27…照明装置、30…制御装置、31…表示装置、32…入力装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池に関連する試料の特性を測定するためのソーラシミュレータと、
前記ソーラシミュレータを利用して、フォトルミネッセンス法による前記試料の測定を行うために用いられる付加測定装置とを備え、
前記ソーラシミュレータは、
前記試料を載置する試料ステージと、
前記試料に対して、擬似的な太陽光となる白色光を供給する白色光供給部と、
前記試料ステージ及び前記白色光供給部を一体に保持するハウジング部とを有し、
前記付加測定装置は、
前記ソーラシミュレータに対して所定位置に付加的に配置される測定装置本体部と、
前記測定装置本体部に取り付けられ、前記ソーラシミュレータに対し、前記白色光供給部から前記試料ステージへの測定光路上に挿入された測定位置、及び前記測定光路を外れた待機位置の間で移動可能に構成されたフォトルミネッセンス測定ユニットとを有し、
前記フォトルミネッセンス測定ユニットは、
前記フォトルミネッセンス測定ユニットを前記測定位置に配置したときに、前記白色光供給部から前記試料ステージへと供給される前記白色光を、所定の波長スペクトルを有する励起光へと変換する光学フィルタと、
前記光学フィルタからの前記励起光が照射された前記試料から放出される被測定光を検出する被測定光検出部と、
前記光学フィルタ及び前記被測定光検出部を一体に保持するとともに、前記測定位置及び前記待機位置の間で移動可能に前記測定装置本体部に取り付けられるユニット枠部とを有することを特徴とする太陽電池関連試料測定システム。
【請求項2】
前記被測定光検出部は、前記被測定光による2次元画像を取得する撮像装置を有することを特徴とする請求項1記載の試料測定システム。
【請求項3】
前記被測定光検出部は、前記被測定光を分光する分光器と、前記分光器によって分光された前記被測定光を検出する光検出器とを有することを特徴とする請求項1記載の試料測定システム。
【請求項4】
前記フォトルミネッセンス測定ユニットは、前記試料ステージ及び前記被測定光検出部の間に配置され、前記被測定光のうちで所定の波長範囲内の光成分を前記被測定光検出部へと選択的に通過させる第2の光学フィルタを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の試料測定システム。
【請求項5】
前記フォトルミネッセンス測定ユニットは、前記試料の通常画像の取得に用いられる照明装置を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の試料測定システム。
【請求項6】
前記ソーラシミュレータ及び前記付加測定装置による前記試料のフォトルミネッセンス測定を制御する制御装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の試料測定システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ソーラシミュレータにおいて、前記白色光供給部と前記試料ステージとの間に設けられているシャッタの動作を制御することを特徴とする請求項6記載の試料測定システム。
【請求項8】
前記ソーラシミュレータに対して設けられ、前記試料の電気的特性の測定を行うための電気的特性測定装置を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の試料測定システム。
【請求項1】
太陽電池に関連する試料の特性を測定するためのソーラシミュレータと、
前記ソーラシミュレータを利用して、フォトルミネッセンス法による前記試料の測定を行うために用いられる付加測定装置とを備え、
前記ソーラシミュレータは、
前記試料を載置する試料ステージと、
前記試料に対して、擬似的な太陽光となる白色光を供給する白色光供給部と、
前記試料ステージ及び前記白色光供給部を一体に保持するハウジング部とを有し、
前記付加測定装置は、
前記ソーラシミュレータに対して所定位置に付加的に配置される測定装置本体部と、
前記測定装置本体部に取り付けられ、前記ソーラシミュレータに対し、前記白色光供給部から前記試料ステージへの測定光路上に挿入された測定位置、及び前記測定光路を外れた待機位置の間で移動可能に構成されたフォトルミネッセンス測定ユニットとを有し、
前記フォトルミネッセンス測定ユニットは、
前記フォトルミネッセンス測定ユニットを前記測定位置に配置したときに、前記白色光供給部から前記試料ステージへと供給される前記白色光を、所定の波長スペクトルを有する励起光へと変換する光学フィルタと、
前記光学フィルタからの前記励起光が照射された前記試料から放出される被測定光を検出する被測定光検出部と、
前記光学フィルタ及び前記被測定光検出部を一体に保持するとともに、前記測定位置及び前記待機位置の間で移動可能に前記測定装置本体部に取り付けられるユニット枠部とを有することを特徴とする太陽電池関連試料測定システム。
【請求項2】
前記被測定光検出部は、前記被測定光による2次元画像を取得する撮像装置を有することを特徴とする請求項1記載の試料測定システム。
【請求項3】
前記被測定光検出部は、前記被測定光を分光する分光器と、前記分光器によって分光された前記被測定光を検出する光検出器とを有することを特徴とする請求項1記載の試料測定システム。
【請求項4】
前記フォトルミネッセンス測定ユニットは、前記試料ステージ及び前記被測定光検出部の間に配置され、前記被測定光のうちで所定の波長範囲内の光成分を前記被測定光検出部へと選択的に通過させる第2の光学フィルタを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の試料測定システム。
【請求項5】
前記フォトルミネッセンス測定ユニットは、前記試料の通常画像の取得に用いられる照明装置を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の試料測定システム。
【請求項6】
前記ソーラシミュレータ及び前記付加測定装置による前記試料のフォトルミネッセンス測定を制御する制御装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の試料測定システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ソーラシミュレータにおいて、前記白色光供給部と前記試料ステージとの間に設けられているシャッタの動作を制御することを特徴とする請求項6記載の試料測定システム。
【請求項8】
前記ソーラシミュレータに対して設けられ、前記試料の電気的特性の測定を行うための電気的特性測定装置を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の試料測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図5】
【公開番号】特開2013−98407(P2013−98407A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241006(P2011−241006)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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